当連結会計年度におけるわが国の経済は、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって景気の緩やかな回復基調が継続しました。
一方世界経済においては、米国、ヨーロッパ地域においても景気の回復基調が継続しましたが、中国等の新興国の成長の鈍化や英国のEU離脱問題、米国における政策動向による影響等、海外経済の不確実性から、依然としてわが国の景気が下押しされるリスクも存在する状況で推移しました。
このような状況下において、当連結会計年度における経営成績の概況につきましては、以下のとおりとなりました。
国内における産業システム事業の売上は、医療用カメラの販売が第3四半期まで堅調に推移していたメディカル市場で、第4四半期での販売が次世代の4K動向の見定め等による影響で減少したことにより、前年同期の売上を若干下回りました。また、ジェネリック医薬品の普及率向上により見込まれた製薬業界の設備投資の増加が、今年度から来年度以降へ持ち越された影響等により検査市場の売上が前年同期を下回り、セキュリティ市場でも同様に前年同期の売上を下回りました。放送システム事業における国内販売は、デジタルハイビジョン設備の更新需要を背景に、放送システムの売上が増加するとともに、官公庁向けにヘリコプターテレビシステム等の伝送システムも売上を伸ばしましたが、第3四半期まで好調に推移していた放送用カメラの販売が、放送市場での4K、8K動向の見定め等による設備計画の延期等の影響により、第4四半期で大きく減少したこともあり、前年同期の売上高を下回りました。
一方、北米地域では、軌道に乗り始めた医療用カメラの販売が好調に推移しましたが、第3四半期に引続き売上比率の高い放送市場での設備計画の延期等の状況が改善されず、放送用カメラシステムの販売が低調に推移したことにより、売上が減少しました。欧州地域では、前年同期に売上を伸ばした医療用カメラ、モニタの販売が、第3 四半期まで平年レベルでの推移を見せていたものの、第4四半期で販売増に転じるとともに、放送用カメラシステムの販売も第3四半期に引続き堅調に推移しましたが、為替が円高傾向で推移した影響を受け前年同期の売上を下回りました。また、アジア地域では、第3四半期に引続き中国、韓国で放送用カメラ等、放送機器の販売が増加したことにより、前年同期の売上を上回りました。
この結果、アジア地域での売上は増加しましたが、国内、北米地域、欧州地域での売上が減少したことにより、連結売上高は前年同期と比べ、7.2%減の227億74百万円となりました(前年同期売上高245億35百万円)。
損益面につきましては、売上高の減少のほか、新技術案件への対応や市場での価格競争等の影響による高コスト案件の納入により売上原価率が上昇するとともに、今後期待される次世代放送設備の需要増加等に備え、次年度以降の事業展開の機動性を高めるべく、棚卸資産の大幅圧縮による評価損を計上したことにより、営業損益は前年同期と比べ35億96百万円減少し、営業損失32億32百万円(前年同期営業利益3億64百万円)となりました。
経常損益につきましては、為替差損等の営業外費用を計上し、経常損失34億1百万円(前年同期経常利益2億81 百万円)となりました。
最終損益につきましては、米国連結子会社の不動産の売却、コーポレート・ガバナンス方針に基づく政策保有株式の一部売却、確定拠出年金への移行といった施策を実行し、当該収益を特別利益に計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は27億38百万円(前年同期親会社株主に帰属する当期純利益2億43百万円)となりました。
当連結会計期間の営業活動によるキャッシュ・フローについては、税金等調整前当期純損失27億3百万円を計上し、減価償却費7億39百万円、退職給付に係る負債の減少額32億10百万円、売上債権の減少額23億97百万円、たな卸資産の減少額29億32百万円等により、26億89百万円の収入となりました(前年同期比14億19百万円の収入増加)。
投資活動によるキャッシュ・フローについては、有形固定資産の取得による支出1億95百万円、有形固定資産の売却による収入3億56百万円、投資有価証券の売却による収入9億21百万円、貸付金の回収による収入2億48百万円、関係会社出資金の払込による支出3億30百万円等により、9億9百万円の収入となりました(前年同期比14億76百万円の収入増加)。
財務活動によるキャッシュ・フローについては、短期借入金の純増額8億42百万円、長期借入れによる収入15億円、長期借入金の返済による支出6億70百万円、社債の発行による収入8億円、社債の償還による支出2億円等により、19億74百万円の収入となりました(前年同期比20億1百万円の収入増加)。
以上の結果により、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ55億34百万円増加し、90億72 百万円となりました。
当連結会計年度における生産実績は次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
情報通信機器 |
20,755 |
△5.2 |
(注) 1 金額は、販売価格によっています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
当連結会計年度における受注状況は次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
情報通信機器 |
27,593 |
1.2 |
16,136 |
42.6 |
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
当連結会計年度における販売実績は次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
情報通信機器 |
22,774 |
△7.2 |
(注) 1 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合
|
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
|
販売高(百万円) |
割合(%) |
販売高(百万円) |
割合(%) |
|
|
日本放送協会 |
3,780 |
15.4 |
2,282 |
10.0 |
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
当社グループは、「絶え間ない革新により、お客様から満足と信頼を頂く製品・サービスを提供し続けることを通し、社会に貢献します。その実現に携わる全ての人々が生き甲斐と働き甲斐を見いだすことのできる企業であり続けます。」を経営理念に掲げ、意思決定・判断の基軸となる価値観を「顧客満足」に置いています。
当社グループのビジョン、すなわち目指す姿は「情報通信と画像のプロフェッショナル」であり、その中心的な実現手段として「デジタル・ネットワーク・ソリューション」による新たな顧客満足の創造やお客様の問題解決を図ることを目指しています。
顧客の悩みこそ開発プランの源泉であると考え、顧客からの情報や知識を積極的に吸収して、より高度な技術力と卓越した開発力を磨き続け、「プロが満足し得る製品やサービスを提供する会社」として存在し続けることを目指します。
当社グループを取り巻くビジネス環境は、中長期の視点では国内外での4K、8Kシステムの本格導入、放送のデジタル化投資や、安心・安全の確保によるセキュリティ需要、医療用映像機器の高画質、高精細化需要、ジェネリック医薬品の普及率拡大による検査機需要等が高まっていくことが見込まれます。
こうした状況の中、当社グループは、当期を初年度とする3ヵ年中期経営計画「New Ikegami Way」を平成28年5月に発表し、その計画達成を目指して活動して参りました。しかし、当期につきましては、「1業績等の概要(1)業績」で報告のとおり、売上高の減少のほか、新技術案件への対応や市場での価格競争等の影響を受けた高コスト案件の納入による売上原価率の上昇、また、今後期待される次世代放送設備の需要増加等に備え、次年度以降の事業展開の機動性を高めるため、棚卸資産の大幅圧縮による評価損を計上したこともあり、数値計画を大きく下回る結果となりました。
当期の計画に対する実績の状況は以下のとおりです。
(単位:百万円)
|
|
平成29年3月期 |
||
|
計画値 |
実績値 |
達成率 |
|
|
売上高 |
25,000 |
22,774 |
91.1% |
|
営業利益 |
300 |
△3,232 |
― |
|
経常利益 |
300 |
△3,401 |
― |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
250 |
△2,738 |
― |
平成30年3月期においては、より一層厳しさが増すと思われる価格競争や製品技術・開発競争に打ち勝ち、多様化するお客様の要求に対応するため、技術力強化の加速、産業システム事業強化、海外事業の強化を推し進め、それぞれの市場、地域ごとにお客様の要求に合致した製品をタイムリーに供給することで、業績の黒字転換を最優先課題として取り組み、安定して利益を創出できる健全なる経営基盤を確立して参ります。当面は厳しい事業環境が続くことが予想されますが、中期経営計画「New Ikegami Way」の2ヵ年目となる次期の数値目標達成と最終年度への更なる飛躍を目指し、事業構造の転換を進めて参ります。
1) 「New Ikegami Way」の目指すべき姿
① 事業ポートフォリオ再構築、事業構造転換を図り産業システム事業を次世代の成長の柱に育成する。
② 放送システム事業は確実に利益創出できる安定事業へと脱皮させる。
③ 海外事業の抜本的構造改革を断行し、真のグローバル企業に成長・発展する。
④ 技術のIkegamiとして質の高いエンジニア集団を形成し、更なる技術優位性を確立する。
⑤ 製品セグメントの選択と集中を図り、高付加価値製品の開発投入により利益を増出する。
2) 主要戦略
① 成長戦略
・技術力高度化(技術優位性の確立)
コア技術であるIP&T(Image:撮像、Process:画像処理、Transmission:伝送)の徹底強化によりIP・高圧縮伝送・超解像他の更なる高度な技術の獲得とアライアンスによる外部リソースの有効活用により市場優位性の高い差異化製品およびシステムを提供していきます。
・放送システム事業の先進的取り組み加速
当社のベース事業として放送局・官公庁・公営競技等のハイエンド市場に投入できる先進的技術製品の開発および、東京オリンピック・パラリンピックを控え4K、8Kの本格的普及に向けた取り組みを加速すると共に高度なトータルシステムソリューションの提案強化に取り組んでいきます。
・産業システム事業の強化
当社の次世代成長の柱と位置付け、MS(メディカルソリューション)事業、IS(インスペクションソリューション)事業、SS(セキュリティソリューション)事業の産業システム3事業の比率を高め成長・拡大していくことで事業構造転換を強力に推進していきます。
・海外事業推進
アジア地域の販売を強化し、放送システム事業の更なる拡大を図り、合わせて産業システム事業のグローバル展開を推進し、売上、利益を拡大させるため地域にマッチした戦略製品の開発を進めます。特にMS事業をグローバル事業の柱としていくため既存分野はもとより新分野参入を推進していきます。
② 最適生産構造の追求
内製化とアウトソーシングの最適・効率的生産体制を追求し、品質の絶対確保と更なるコストダウンの両立を図っていきます。
③ 経営基盤の安定化推進
次世代の経営を担う戦略的な人財採用の継続と教育制度の強化推進による人財育成を行っていきます。
絶え間ない業務品質向上(Quality Innovation)の推進によるスピーディーでチャレンジ精神旺盛な企業風土の醸成を行っていきます。
積極的な財務施策による効果的資金活用と財務基盤の強化を図ります。
当社グループは、映像技術を核とした事業基盤の確立に努め、幅広い分野においてメーカーの使命である最先端技術やノウハウを集積した製品・システムを提供し続けています。特に、製品やシステムの提供に際しては、開発・生産・受注・納入という一連の「もの作り」や「販売」のプロセスだけでは表現し得ない多くのノウハウ・専門知識・情報、そして顧客や取引先等のステークホルダーとの間に築かれた信頼感で形成された緊密な関係等を有しており、その面を深化し続けていくことこそが、結果として当社グループの企業価値を高めていくことになると確信しています。
また、逆に、進歩の早い技術変革をリードし続けるために、将来の技術のトレンドを常に意識し、経営資源の集中的再配分により、当社グループが得意とする技術要素を追求することは当然のことながら、必要に応じて関係各社と業務提携を行うなど、顧客のニーズを具現化するための施策に積極的に取り組んでいくことが、中長期的に見て、株主共同の利益創出の源泉になると考えています。
当社取締役会は、上記の顧客や取引先等のステークホルダーとの信頼関係の維持が確保されない当社株式の大量取得行為を行う者や、短期的な投資リターンを追い求めて上記顧客ニーズを具現化するための施策に積極的でない者は、当社の財務および事業の方針の決定をする者として適当でないと考えています。
当社は、上記基本方針に基づき、企業価値ひいては株主共同の利益を害する大量買付行為を防止するための取り組みとして、平成19年5月18日より「大規模買付ルール」を導入し、2年ごとの定時株主総会での決議を経て、現在も導入しています。
大規模買付ルールは、当社株式の大量買付が行われる場合の手続を明確にし、株主の皆さまが適切な判断をするために必要かつ十分な情報と時間を確保するとともに、買付者との交渉の機会を確保することにより、当社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させることを目的としています。
当社取締役会は、上記取り組みにつきまして、2年ごとの定時株主総会の決議をとるなどの株主意思を確認するための手続が保障されており、また、客観的合理性ある発動要件が定められ、かつ発動時に独立した特別委員会に諮問するなどの客観的手続が定められていることから、上記基本方針に沿うものであって株主共同の利益を損なうものでなく、かつ会社役員の地位の維持を目的としたものではないと判断しています。
大規模買付ルールの内容は下記当社ホームページよりご参照願います。
<http://www.ikegami.co.jp/company/fs-9>
買収防衛策
当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項には、以下のようなものがあります。
本項においては、将来に関する事項も含まれておりますが、当該事項は本資料の提出日現在において判断したものです。
当社グループは国内のみならず米国、欧州、アジア、中近東、ロシア等の地域で商品を供給しています。従ってこれらの国または地域の経済状況や政治的要因、法的規制等により当社グループの販売活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
また当社グループの取引には外貨建てのものが含まれています。そのため当社グループは為替予約等により為替相場の変動リスクをヘッジしていますが、そのリスクを全て排除することは不可能であり、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが行う各事業において、競争の激化による製品価格の低下が進んでおり、今後もより一層の厳しい競争が予想されます。当社グループもコスト削減努力など収益性の改善に全力で取り組んで参りますが、予想よりも急激に競争が激化した場合、各事業の収益面において悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは他の会社またはグループとの連携により、より付加価値の高い商品を提供できると考えています。しかしながら、関係各社との連携において不具合が生じる等、予期せぬ事態が発生した場合には、事業の展開に遅れが生じる等の悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは設計から製造・検査に至るまで、製品の品質および安全性には細心の注意を払っています。しかしながら製品の品質面でのリスクを全て排除するのは不可能であり、製造物責任(PL)問題を提起される可能性があります。またその他にも製品の不具合による賠償など品質や安全面での問題を提起される可能性も考えられ、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは新製品の開発を積極的に行っていますが、製品開発に遅れが生じた場合、製品の市場への投入が遅れ、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは顧客情報や取引先の情報等の重要情報について、社内での情報管理を徹底し、情報漏洩の防止に万全を期しています。しかしながら、そのリスクを全て排除するのは不可能であり、情報漏洩による信用の低下、訴訟等によるコスト増加等が起こる可能性があります。
当社グループは神奈川県藤沢市、栃木県宇都宮市に生産の拠点をおいており、これらの地域で地震等の大規模災害が発生した場合や、テロ災害、火災事故の発生、新型ウィルスの蔓延等により被害を受ける可能性があります。また、当該拠点エリアにおいて計画停電等が実施された場合、生産活動に支障が出る可能性があります。
(8) 財務制限条項に関するリスク
当社グループは、資金需要に対する機動性と安定性の確保および資金効率向上を図ることを目的に、取引銀行3 行とコミットメントライン契約等を締結しています。これらには純資産の減少および経常損失の計上に関する財務制限条項が付されています。これに抵触し、借入先の請求に基づき借入金の返済を求められた場合、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 継続企業の前提に関する重要事象等
当社グループは、当連結会計年度において経常損失を計上したことにより、当社が取引銀行3行との間で締結しているコミットメントライン契約等の財務制限条項に抵触することとなりました。
当該状況により、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在していますが、「7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(3)継続企業の前提に関する重要事象等について」に記載のとおり、当該事象または状況を解消するための対応策をとり、また、事業運営を進めるための十分な運転資金を有しているので、継続企業の前提に関する重要な不確実性はないものと判断しています。
該当事項はありません。
当社グループは、顧客に満足して頂ける製品を創造するために常に技術を磨き、「技術の池上」と評価を頂けるよう、積極的に研究開発活動を行っています。 研究開発は、主に技術開発センター(川崎市)で要素技術・機能開発を行い、プロダクトセンター(宇都宮市)とシステムセンター(藤沢市)で、製品化開発を行っています。 また、グループ外企業との分業と連携により、自社のコア技術開発とスピードある製品開発を実現しています。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、19億9百万円です。
(1)放送システム事業関連
放送システム事業関連では、デジタル放送番組素材の撮影取材、中継伝送、編集制作、放送番組の送出・基幹網伝送に注力して、番組制作機器、有線/無線中継機器およびネットワーク機器の研究開発を行っています。 また、総務省の推進する4K・8Kロードマップを重視した研究、製品開発に取り組んでいます。
放送用カメラ・モニタでは、今年度、以下の開発成果がありました。
4K放送カメラは、昨年度製品化した4KシステムカメラUHK-430に、今年度HD/4Kのサイマル出力オプション機能を追加し、4K放送におけるHDR(High Dynamic Range)と従来のHD放送との両立を可能にしました。これにより、HDから4Kへの映像制作環境の移行期のシステム構築に寄与します。また、従来4本のケーブルで伝送していた4K映像信号をケーブル1本で伝送できる12G SDI(12Gbps Serial Digital Interface)を業界に先駆けて放送カメラに搭載しました。これにより、2018年の冬季オリンピック開催に向けた韓国での4K需要に対応しました。今後、国内・海外の4K番組制作の要求にこの12G SDI技術で応えていきます。
HD放送カメラでは、4K映像に伴うHDRへの高まりから、HDRに対応した高機能カメラ「HDK-73」を開発し、米国で開催された世界最大規模の放送機器展NAB2017に出展し注目を集めました。今後、国内・海外の放送局をはじめ、プロダクション、公共施設、学校などへの販売を進めていきます。また今年度、小型・軽量の超高感度多目的HDTVカメラ「HDL-F3000」の販売を開始し、ヘリコプター搭載用途を中心に、官公庁、放送局からの受注を獲得しています。
放送モニタでは、放送市場がHDから4K、さらに8Kと高精細化が進むことに伴い、表示系ヒューマンインタフェースとしてのモニタの重要性は増しています。当社では従来の運用性を踏襲しつつ、4K、8K時代に求められる新たな機能に対応したモニタの製品開発を進めています。 今年度は、HDRに対応した4K対応モニタを11月に開催された国際放送機器展に参考出展し、来場されたお客様から幅広い貴重なご意見を頂きました。これらの貴重なご意見を基に製品化を進めています。
放送映像音声スタジオ機器・システムでは、今年度、以下の開発成果がありました。
4K地上波放送で先行する韓国市場に対し、高信頼性が要求される4Kマスタースイッチャ(放送番組送出の最終段スイッチャ)を開発しました。映像の入出力インタフェースには4K映像を同軸1本で伝送できる12G SDIを採用し、従来のHDマスタースイッチャと同等の設置、運用を実現しています。本製品は韓国の放送局2局(KBS、SBS)へ納入し、2017年2月にスタートした4K地上波放送で運用されています。今後、韓国国内で進む放送局の4K化を支える装置として寄与します。
大型スイッチャ「MuPS-4000」は映像制作において大幅な機能強化を実施しました。具体的には実写映像とコンピュータグラフィック映像の合成に新たな技術を導入し、より自然な合成映像を実現しました。また、番組毎に異なったスイッチャの設定を登録する「番組データ(番組制作におけるシーン別設定データ)」を100から500登録に増枠し、映像制作現場での生放送時の運用性を改善しました。さらに、フレーム周波数50Hz圏内の海外映像制作への対応、および4K映像フォーマットにも対応を図り、各種2K/4K映像フォーマットでの映像制作を可能としました。これらの機能拡充により、民放東京キー局の番組制作サブスタジオに2式を納入、お客様から高評価を得ています。今後は2018年に韓国で開催予定の冬期オリンピックの4K映像制作での需要に応えていきます。小型スイッチャ「CSS-400」では、動画ファイル機能を加えCGワイプ機能を実現しました。この機能により、小型でありながらもスポーツ中継での活用が可能となり、システム受注に貢献しています。
好評を得ていたシステム周辺機器「OnePackシリーズ」は3G SDIに対応し、高品位な映像が求められる昨今のスタジオサブシステムおよび中継車の映像制作システムに組み込まれ活用されています。
無線伝送・通信機器では、今年度、以下の開発成果がありました。
官公庁向けに、低コスト化と機能追加を両立した15GHz帯ヘリコプターテレビ基地局用FPU受信機「PF-158E」を開発し、販売を開始しました。同時に、送信出力を3Wへアップし通信距離を大幅に伸ばしたヘリコプター機上FPU「PF-64H」を開発しました。両製品は他社製品との差別化を図ることで、順調な受注に結びついています。
放送局向けには、ヘリコプター機上FPU「PF-67H」を開発し、納入を開始しました。「PF-67H」は、従来の機能・性能を維持しつつ、従来比約50%の小型軽量化を実現したことから、好評を頂いています。
海外向けFPUとして、韓国の番組素材伝送規格に完全準拠したデジタル変復調方式を開発し、韓国向けFPUを製品化しました。 これは、韓国におけるFPU用周波数帯の移行とチャネル間隔変更(2016年)への対応を図った製品で、順調に販売を伸ばしています。
その他、放送関連のトピックスとして、2016年に開催されたリオデジャネイロ・オリンピックおよびパラリンピックで、日本放送協会(NHK)による世界初8Kスーパーハイビジョンの中継放送では、弊社の8Kスーパーハイビジョン中継車「SHC-1」(2015年10月納入)および現行HD(2K)カメラと同等の運用を実現させ小型軽量化した8Kスーパーハイビジョンカメラ(SHK-810) 6台が貢献しました。
(2)産業システム事業関連
セキュリティ機器関連では、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた監視カメラの需要拡大基調の中、当社のフルHDネットワークカメラの出荷量は前年度比220%に増加し、アナログシステムからIPネットワークシステムへの移行が急速に進んでいます。
昨年度、フルHDネットワークカメラとして、ボックス型「IPD-BX300」、ドーム型「IPD-DM300」、バレット型「IPD-BL300」、耐衝撃屋外ドーム型「IPD-VR300」、屋内パンチルト・ミニドーム型「IPD-PT200」、屋外コンビネーションドーム型「IPD-SP200T」、屋内コンビネーションドーム型「IPD-SP200U」の7機種、ネットワークレコーダとして、ネットワークレコーダ「INR-1008P/1016P」、システムネットワークレコーダ「INR-2000/3000」および統合ソフトウェアの製品ラインアップ化を達成しました。このラインアップにより小規模から大規模までのフルHDネットワーク監視システムの構築が可能となり、販売を促進しています。
このような中で今年度は、当社納入実績が多い公共・社会インフラ市場において、多数のIPカメラを操作し映像を切り替える「タッチパネル操作器」、IPカメラ映像をデコードしPCレスで分割表示が可能な「分割表示装置」などの周辺機器を開発するとともに、IPネットワークを統合管理するシステムソフトウェアのブラウザ表示、状態監視等の機能アップ開発を実施しました。これにより、顧客の多様化する様々な要求に対応できるため、販売拡大を推進していきます。
また、経済産業省資源エネルギー庁からの受託事業として、日本原子力研究開発機構と耐放射線性カメラの共同研究を進め、本研究成果である耐放射線センサーと耐放射線性カメラの実験機を発表致しました。今後は、小型化の研究開発を進め、原子炉、核燃料再処理工場、放射性廃棄物貯蔵施設での監視システムの活用を目指していきます。
メディカル機器関連では、微細手術の高度化を支える映像装置の研究開発を進めています。
昨年度は、高感度4K出力カメラ「MKC-704KHD」と、高解像度4Kカメラ「MKC-750UHD」を製品化しました。今年度は、モニタの製品化を重点的に進めました。
手術顕微鏡用、術野カメラシステム用、外来診察用等で用いられるHDモニタのラインアップを充実させました。診察室や省スペースでの利用が期待される21型「MLW-2124C」をはじめ、医療で求められる画質と色再現性を追求しDCI 98%、Adobe 99%を実現させた24型モニタ「MLW-2424C」を製品化しました。 また、市場で主流となる26型では、「MLW-2624C」、「MLW-2627C」、「MLW-2627C 3D」の3機種をラインアップしました。「MLW-2624C」は、低コストで汎用性を重視した製品で、SDI信号の他DVI信号やRGB信号等のマルチ表示機能により、手術室を主に様々な医療現場での利用を可能としました。「MLW-2627C」はSDI×2やDVI×2などの同一HDデジタル信号のマルチ表示機能を持ち、業界最高峰の900cd/㎡を実現し、明るい環境での視認性の向上を図った手術室向け最高機種のモニタです。「MLW-2627C 3D」は手術室向けの高輝度3D映像表示用モニタで、3D使用時400cd/㎡、2D使用時850cd/㎡の高輝度映像を実現しました。医療業界で発展する3D映像のアウトプットモニタとして貢献しています。
今後も高精細な新型モニタのラインアップを開発するとともに、高感度4K出力カメラ「MKC-704KHD」や、高解像度4Kカメラ「MKC-750UHD」をはじめとする当社医療用映像機器の組み合わせにより、メディカル市場へ向けたソリューションを提供していきます。
検査機器関連では、お客様の製品品質の向上を支えるために、画像処理とメカトロニクスを融合した検査装置システムの研究開発を行い、事業拡大に努めています。
主要製品である錠剤検査装置TIE-9000シリーズ関連では、患者の高齢化に伴う錠剤医薬品の識別改善の要求に応えて、非接触型のインクジェット錠剤印刷装置「TIE-9000P」の研究開発を進めてきました。 更に今年度は、インターフェックスジャパン2016で、錠剤検査装置「TIE-9000」との連動モデルとして発表し、分離・連動の両方が可能な錠剤印刷・検査として注目を集めました。政府の後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進方針による錠剤医薬品の需要増に応えるべく、検査性能の向上と新機能の開発を進め、更なるソリューションの提供を継続していきます。
平面検査装置では、昨年度開発した高速搬送と高精度検出を両立させる16,000画素、850MHz高速ラインカメラを搭載した検査機器を、2016年4月に開催された高機能フィルム展にPIE-650平面検査装置として発表し今年度4式を納入しました。今後、業界最速・高解像度の平面検査装置として機能強化を進め、お客様へ新たなソリューションを提供していきます。
また、今後の事業領域拡大に向け、新たな検査手法について大学との共同研究および他企業とアライアンスを積極的に進めています。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当連結会計年度末の総資産は、286億74百万円であり、前連結会計年度末に比べ12億92百万円減少しました。流動資産は、現金及び預金の増加、受取手形及び売掛金、仕掛品等の減少等により、前連結会計年度末に比べ1億49 百万円減の239億61百万円となりました。固定資産は、工具、器具及び備品、投資有価証券の減少等により、前連結会計年度末に比べ11億42百万円減の47億13百万円となりました。
負債総額は175億51百万円であり、前連結会計年度末に比べ9億78百万円増加しました。流動負債は、短期借入金、未払金の増加等により前連結会計年度末に比べ30億5百万円増の124億99百万円となりました。固定負債は、社債、長期借入金、長期未払金の増加、退職給付に係る負債の減少等により、前連結会計年度末に比べ20億26百万円減の50億52百万円となりました。
純資産については、前連結会計年度末に比べ22億71百万円減少し、111億22百万円となりました。これは主として、親会社株主に帰属する当期純損失計上による利益剰余金の減少によるものです。
この結果、自己資本比率は、38.8%(前連結会計年度末44.7%)となりました。
「1 業績等の概要 (1) 業績、および (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(3) 継続企業の前提に関する重要事象等について
当社グル-プは、当連結会計年度において、営業損失32億32百万円、経常損失34億1百万円および親会社株主に帰属する当期純損失27億38百万円を計上したことに伴い、主要取引金融機関との間で締結しているコミットメントライン契約等の財務制限条項に抵触したことにより、継続企業の前提に関する重要事象等が存在します。当連結会計年度において、営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失を計上した理由は、売上高の大幅な減少により、第3四半期までの高コスト案件による収益悪化が挽回できなかったことに加え、今後期待される次世代放送設備の需要増加等に備え、次年度以降の事業展開の機動性を高めるべく、コスト構造改革の一環として、棚卸資産の大幅圧縮による評価損を売上原価に計上したことによります。
当該事象等を解消するための具体的な対応策として、4K、8K製品ラインアップの強化拡充による放送市場のシステム更新需要の確実な取り込み、メディカル市場におけるOEM販売の海外展開強化、その他各市場・地域ごとのニーズに対応したグローカリゼーション製品の開発・供給等、中期経営計画の施策を遂行し目標を達成することにより、収益性を高め経営基盤を強化して参ります。
なお、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは26億89百万円のプラスとなり、手元資金残高は90億72百万円と潤沢な残高になっています。翌期に支払予定を迎える確定拠出年金制度への移行に係る資金の調達も完了したことから、事業運営を進めるための資金について安定的に確保しています。財務制限条項については、全貸付人より期限の利益喪失請求を行わないことにつき同意を得ています。
上記の内容により、継続企業の前提に関する重要な不確実性はないものと判断しています。