第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、社会における当社グループの存在意義(パーパス)を『「技術」のチカラで、あなたをしあわせに。』と定め、「卓越した技術と匠の技で社会が求める新たな価値を創造し、持続可能な社会インフラ構築の一翼を担い、広く世の中に貢献し、社会から必要とされる企業であり続ける。」ことを目指して参ります。
 そして、創業理念「技術の向上、開発へのたゆまざる意欲と不屈の精神を支えとし、使って喜ばれる製品を作り出し、世の中に寄与してゆく。その実現に向け、常に努力し、責任を以て事に当たる社員を育てる。」をベースに、以下の4つの経営ビジョンを基本方針として定めています。

・絶え間ない技術の研鑽に努め、時代を先取りした技術革新に果敢に挑戦し続け、技術優位性の確立により、「Ikegami Way」を追求してゆく

・「Ikegami Way」の追求により、顧客ニーズを逸早く具現化し、常に顧客満足と社会の信頼と期待に応え、安定した経営基盤の構築を図る

・その対価を、全てのステークホルダーへの確実なる還元と将来への成長投資の原資とすべく好循環サイクルを確立し、進化させ続け、グローバル企業として成長・発展し、グローバルでの社会貢献を目指す

・その実現に携わる全ての人々が生き甲斐と働き甲斐を見出すことのできる企業であり続ける

 

(2) 目標とする経営指標

当社を取り巻く事業環境において、中国経済の停滞継続や中国国内の医療業界での反腐敗運動が長期化しております。また、国内における物価上昇の継続による個人消費への影響や、米国の通商政策等を背景とした景気の下振れリスクが存在し、金融資本市場の変動等の影響にも引き続き注意が必要な状況です。

こうした状況のなか当社グループは、放送システム事業におきましては、次世代新技術の獲得・活用を通じ、IPをはじめとする高度なトータルシステムソリューションの提案力を強化し、更新需要の確実な取り込みを推進して参ります。また、4Kカメラシステムや、新製品のIPエクステンションユニット「IPX-100」および4K/HDマルチパーパスカメラ「UHL-X40」の販売促進により、シェア拡大を目指して参ります。
 産業システム事業につきましては、セキュリティー事業において、防衛省をはじめとする公共性の高い官公庁や鉄道、プラント市場等を最注力領域と位置づけ、売上規模の拡大を図って参ります。メディカル事業では、引き続き海外を中心とした内視鏡および顕微鏡用カメラの新規OEM顧客の獲得に加え、新規事業領域への参入を推進して参ります。なお、中国市場における医療用カメラの販売につきましては、官公立病院における入札状況は回復傾向にある一方で、中国経済の停滞継続や今後の米国との関税動向等が懸念される状況です。引き続き、現地医療機器メーカーとの商談を継続し、密なるコンタクトを図って参ります。さらに、検査装置事業においては、医薬市場向けの錠剤検査装置や錠剤印刷装置等のシェア拡大に加え、労働人口減少に伴う検査自動化ニーズへの対応を進め、医薬市場以外も含む事業規模の拡大を目指して参ります。

2026年3月期の通期連結業績の目標とする経営指標は、現時点において以下のとおりです。

(単位:百万円)

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主に帰属

する当期純利益

21,500

400

250

200

 

注意事項

上記の業績見通しは、当社グループが現時点で合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績は重要なリスク要因や不確実な要素等により異なる可能性があります。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループを取り巻く事業環境は、中長期の視点では国内外での4Kシステムの需要増加と、放送技術の高度化に伴う設備投資、更には高精細を目指した8Kシステムへの期待、安心・安全の確保によるセキュリティー需要、医療用映像機器の高画質、高精細化需要、品質、安全性の確保による検査工程の自動化要求等が高まっていくことが見込まれます。

こうした環境の中、当社グループは、4つの経営の基本方針に基づき、以下に掲げる中長期的な成長戦略を確実に達成することで対処すべき課題を解決し、更なる事業の発展と企業価値の向上を実現して参ります。

 

(4) 会社の対処すべき課題

産業システム事業の注力事業領域への成長・拡大戦略と放送システム事業の事業規模安定確保に向けた戦略を推進し、更なる売上高の拡大と利益の増出を目指す。

 ◆産業システム事業

  ・SS(セキュリティーソリューション事業)

高収益市場である「安全保障(防衛・公共)」「安心安全(鉄道・流通)」「環境(プラント)」への注力とOEM展開による安定した売上高規模・利益体質の構築に取組む。

特に、防衛市場を最注力領域として、防衛市場向けの研究開発・販売を強化し、売上規模の更なる拡大を目指す。

・IS(インスペクションソリューション事業)

医薬市場においては、ジェネリック医薬品の使用促進や安定供給に向けた生産効率化および品質向上の需要を確実に取り込み、さらには労働人口の減少に伴う検査の自動化ニーズの高まりを背景に、新たな市場の開拓にも注力し、事業拡大を目指す。

・MS(メディカルソリューション事業)

画像処理技術の高度化や差異化機能開発により、医療用カメラの更なる更新需要促進と新たな需要喚起を図るとともに、既存の硬性鏡カメラ、顕微鏡カメラ以外の新たな医療分野への参入を推進する。主力の海外OEM事業については、ヨーロッパおよび中国市場に続き、北米市場の開拓と、またインド太平洋地域(アジア+中東)の人口増加と経済発展に伴う医療器新市場発掘に向けた活動を強化してゆく。

 

◆放送システム事業

・IP対応製品(ソフトウェアスイッチャー・システム統合管理ソフトウェア等)の開発を強化するとともに、次世代新技術の習得・活用により高度なトータルシステムソリューションの提案強化に取組むことで、お客様の更新需要を確実に取り込み、全社の基盤事業として事業の安定化を確立する。また、コアコンピタンスであるSI力を活かし、放送局市場以外への事業拡大を図る。

・海外市場においては、エリアマーケティング戦略を強化・推進し、次世代4Kカメラシステムの販売促進により、シェア拡大と事業の安定化を図る。

 

コア技術の進化と深耕、外部リソースの有効活用・アライアンス、更にはM&Aも視野に、既存事業のバリューアップと事業領域の更なる拡大を推進する。

成長戦略推進のための人材および成長事業への積極的な投資を実現する。

④地政学的リスクへ対応するため、サプライチェーンの多様化を推進する。

⑤ESG経営の推進により、企業価値の向上と持続的な成長・発展を追求する。

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社グループは、持続可能性の観点から企業価値を継続的に向上させるため、サステナビリティ推進を強化しております。
 気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、社会課題の解決・社会貢献等、サステナビリティ課題への対応を含むサステナビリティ全般について、担当取締役を委員長とする各種委員会を設置し、戦略策定や施策展開の計画や進捗管理を行っています。
 施策の実施・進捗管理については、内部監査室の監査の後、取締役で構成する経営会議へ報告を行い、経営会議はその進捗状況をモニタリングし、監督しています。
 また、当社では、取締役会・経営会議への報告機関として、担当取締役を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティに配慮した事業活動を、より一層の能動的な取り組みへと進化させて参ります。

 


 

(※)取締役会には、年1回、必要あるときは随時、サステナビリティ関連の各種施策の進捗状況を報告し、取締役会からの監視・監督を受けることになります。

 

(2) 戦略

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針は、以下のとおりです。

 

 

① 人材育成方針

当社グループは、経営ビジョンにおいて「その実現に携わるすべての人々が生き甲斐と働き甲斐を見出すことのできる企業であり続ける」と掲げております。

その働き甲斐、生き甲斐を見出すためには、最大の経営資源といえる人材の一人ひとりが、仕事を通じて輝けるように、意識、組織、風土を醸成して参ります。

そのため、採用時はもとより、入社後において次の人材像を望む姿としています。

・ 失敗を恐れず何事にもチャレンジする好奇心旺盛な人材

・ 情熱を持って自分の仕事を最後までやり抜く責任感ある人材

・ 環境の変化に応じて、柔軟な発想で行動し自分の役割を達成できる人材

また、当社グループは、性別や国籍、新卒採用や中途採用といった採用方法の違い等に関わらず、公正、公平な選考により、当グループが望む人材像の実現について、最適と思われる人材を採用します。

また、多様性のある社員が持つ多様な能力を遺憾なく発揮できるように、適切かつ有効な方法をもって人材の確保および育成を行います。

 

② 社内環境整備方針

当社グループは、性別、国籍、年齢、職歴、障害など多様性に富む従業員が、各々の生活環境、生活スタイルに合わせた働きやすい柔軟な仕組みを選択でき、ワークライフバランス推進に資する社内環境を整備いたします。

更に、職場の安全と心身の健康を守るとともに、人権を尊重し、差別のない健全な職場環境の確保に取り組んでいます。

特にセクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティハラスメント等については、人権を侵害し職場環境を毀損する行為であるため、職場でのコンプライアンス遵守を実現するため教育・研修を実施し、発生の予防を図ります。

問題発生時には迅速に対応し、解決と再発防止のために適切な処置を行います。

 

(3) リスク管理

当社グループでは、リスク管理を内部統制のための重要な要素として認識しています。

当社グループは、経営戦略と並行し、重大なリスクに対する対応力を高めるために必要な措置を講じています。

具体的施策として、第一に、各部門のリスク管理能力を引き上げると同時に、全社の重要な事業リスクを把握・識別する体制を整えるために、コンプライアンス担当取締役を委員長とするRC(リスク・コンプライアンス)委員会を設置しています。

第二に、社内外の環境影響監視機関としてEMS連絡会を設置しています。EMS連絡会は、ISO14001・環境マネジメントシステムに基づき、環境関連法令順守、社内外の環境課題、環境目標、緊急事態発生時の対応等を全社的に検討し、環境経営を推進するうえでのモニタリングを行っています。

第三に、2023年度から「サステナビリティ委員会」が気候関連リスクをはじめサステナビリティ全般の管理機能を担い、原則として6ヶ月に1回、必要あるときは随時開催し、各種リスクに関する分析、対策の立案と推進、進捗管理等を実践しています。

(4) 指標及び目標

当社グループでは、上記「(2) 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いています。当該指標に関する目標および実績は、以下のとおりです。

指標

目標(2028年3月期)

実績(当連結会計年度)

女性社員比率

25%

23%

管理職の中途採用者比率

16%以上

23%

年次有給休暇取得率

70%以上

74%

社内リスク・コンプライアンス研修のeラーニング受講率

100%

100%

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 事業等のリスク

① 国際情勢について

当社グループは国内のみならず米国、欧州、アジア、中近東、ロシア等の地域で商品を供給しています。従って、これらの国または地域の経済状況や地政学的要因、法的規制等により当社グループの販売活動に影響を及ぼす可能性があります。特に、ウクライナ情勢の長期化や、中東地域の混迷などにより、資源価格をはじめとした過度の物価上昇によるインフレが世界経済への悪影響を及ぼした場合、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、こうしたリスクが顕在化した場合、その影響を最小限に留めるため、米国、ドイツ、シンガポールの現地法人との連携を密にし、各地域の情勢を的確に把握するとともに、サプライチェーンの強化を図って参ります。また、国際情勢の変化に伴う為替相場の変動リスクにも備え、為替予約等によりリスクの最小化に努めて参ります。

 

② 災害・事故について

当社グループでは、工場における生産活動に関し、労働安全衛生に配慮するとともに、環境マネジメントシステムISO14001の認証を取得し、地球環境に配慮した生産活動に努めております。また、首都圏における大規模地震の発生などにより本社機能が麻痺した場合に指揮命令系統を早期に確立するための震災マニュアルも策定しています。しかしながら、不測の大規模地震や台風等の自然災害による生産設備の被害、工場における事故、製品輸送・外部倉庫保管中の事故等、不測の事態が発生するリスクが考えられます。これらの事象は、工場の操業や顧客への供給に支障が生じることで、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 品質リスク

① 品質について

当社グループは設計から製造・検査に至るまで、製品の品質および安全性には細心の注意を払っています。しかしながら、製品の品質面でのリスクを全て排除するのは不可能であり、製造物責任(PL)問題を提起される可能性があります。また、その他にも製品の不具合による賠償など品質や安全面での問題を提起される可能性も考えられ、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、こうしたリスクに備え、製品の設計段階からデザインレビューを実施するともに、製品化の前段階での品質、性能評価試験を徹底しています。また、製品として出荷前に品質管理部門での出荷前テストを綿密に実施しています。

 

② 製品開発について

当社グループは、国内外の市場へ向けた新製品、新技術の開発を進めておりますが、各事業において、市場で競合する各社との競争の激化により、製品競争力が相対的に低下し、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、こうしたリスクが発生しないよう、常に次世代技術の習得・獲得・活用に注力し、各事業において市場でのマーケティング戦略の立案・実行による製品開発へのフィードバックを徹底します。

 

 

(3) コンプライアンス・リスク

 当社グループは、事業の遂行にあたって、国内はもとより、事業を展開する各国において、当該国の法的規制の適用を受けています。これらの法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受けたりお客様からの信頼を失ったりする可能性があります。当社グループでは、コンプライアンスの取り組みを横断的に統括するRC委員会を設置し、具体的な計画を策定、実行することで、リスクの未然防止に努めています。また、リスクマネジメントやコンプライアンスに関する研修を通じ、従業員へ法令順守の意識醸成と徹底を推進し、違反や社会規範に反した行為等の発生可能性を低減するよう努めています。

 

(4) 財務制限条項に関するリスク

 当社グループは、資金需要に対する機動性と安定性の確保および資金効率向上を図ることを目的に、取引銀行3 行とコミットメントライン契約等を締結しています。これらには純資産の減少および経常損失の計上に関する財務制限条項が付されています。これに抵触し、借入先の請求に基づき借入金の返済を求められた場合、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりです。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度におけるわが国の経済は、雇用・所得環境が改善する下で各種政策の効果もあり、緩やかな回復が続きました。
 一方で、世界経済は、欧米における高金利水準の継続や中国経済の停滞に伴う影響のほか、米国の通商政策をはじめとする政策動向、中東情勢、金融資本市場の変動等への懸念から、依然として先行き不透明な状況が続いています。
 
 このような事業環境のもと、当社グループの当連結会計年度の経営成績の概要は次のとおりです。
 
 売上高につきましては、前年同期比4.0%減収の207億34百万円となりました(前年同期売上高216億3百万円)。
 
 損益面につきましては、営業損益は前年同期比で5億40百万円減の営業利益2億54百万円(前年同期営業利益7億94百万円)、経常損益は前年同期比で6億11百万円減の経常利益2億90百万円(前年同期経常利益9億2百万円)、最終損益につきましては、前年度期比で4億43百万円減の親会社株主に帰属する当期純利益2億35百万円(前年同期親会社株主に帰属する当期純利益6億79百万円)となりました。
 
 当連結会計年度の売上高は、放送システム事業では、国内において中継車システムや前年同期に大型案件で大きく伸長した映像制作用機器の販売が低調に推移した一方で、公営競技場向けの放送カメラや、官公庁向けをはじめとする伝送システムおよび無線通信装置の販売が好調に推移しました。海外では、東アジア地域で放送用カメラシステムの大型案件の納入が寄与し売上を伸ばすともともに、欧州地域でも前年同期並みに推移しましたが、北米地域で政権交代後の政策動向に対する不確実性から放送市場での設備投資が先送りされ、放送カメラの販売が減少した結果、前年同期の売上高を若干下回りました。
 産業システム事業でも、国内ではメディカル事業で医療用カメラの販売が順調に推移し、セキュリティー事業では、プラント市場や鉄道市場向けの監視カメラシステムの販売が増加したほか、検査装置事業でも、後発医薬品の安定供給に向けた生産能力の増強を背景に製薬会社の設備投資が活発化し、医薬市場向けの錠剤検査装置本体や錠剤印刷装置の消耗品(インク等)の販売が伸長しました。加えて、産業市場向けの触媒検査システムの納入や平面検査装置の販売増も寄与し、売上高は前年同期を大幅に上回りました。一方海外において、特にメディカル事業の注力市場である中国における年度を通じた反腐敗運動の継続や景気低迷、更には今後の米国との関税動向等が中国医療機器メーカーの経営判断に大きく影響したこともあり、想定していた売上高を大幅に下回ったことが影響し、産業システム事業全体の売上高は前年同期を下回りました。
 
 当連結会計年度の損益につきましては、売上高の減少と併せ、特に収益性の高い中国向け医療用カメラの納入が来期以降に延期となったことによる大幅な減益が影響し、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益ともに前年同期比で減益となりました。
 
 

 

 

生産、受注および販売の実績は、次のとおりです。

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績は次のとおりです。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

情報通信機器

15,397

△0.7

 

(注) 前連結会計年度は、販売価格によっておりましたが、利益率の変動による影響を避けるため、製造原価による金額に変更をしています。なお、前連結会計年度の製造原価による金額は、15,499百万円です。

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績は次のとおりです。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

情報通信機器

21,879

2.3

18,596

6.6

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績は次のとおりです。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

情報通信機器

20,734

△4.0

 

(注) 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

日本放送協会

2,141

9.9

2,655

12.8

 

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末の総資産は、288億41百万円であり、前連結会計年度末に比べ17億71百万円減少しました。流動資産は、現金及び預金や仕掛品の減少、売掛金や原材料及び貯蔵品の増加等により、前連結会計年度末に比べ17億45百万円減の235億43百万円となりました。固定資産は、システムセンター新棟建設にかかる建設仮勘定の計上に伴う有形固定資産の増加、投資その他の資産の減少等により、前連結会計年度末に比べ26百万円減の52億98百万円となりました。

 
 負債総額は151億83百万円であり、前連結会計年度末に比べ17億41百万円減少しました。流動負債は、支払手形及び買掛金や電子記録債務、賞与引当金の減少、短期借入金の増加等により、前連結会計年度末に比べ14億58百万円減の109億54百万円となりました。固定負債は、長期借入金の減少等により、前連結会計年度末に比べ2億83百万円減の42億29百万円となりました。 
 
 純資産については、前連結会計年度末に比べ29百万円減少し、136億57百万円となりました。これは、利益剰余金が43百万円増加したものの、その他の包括利益累計額合計が78百万円減少したこと等によるものです。

この結果、自己資本比率は、47.4%(前連結会計年度末44.7%)となりました。

 

 

翌連結会計年度につきましては、世界情勢における地政学的リスクや、金融資本市場の変動等の影響が存在する先行き不透明な環境の継続が見込まれるなか、高品質かつ安定的な製品供給を維持すると共に、長期的視野のもと、在庫の適正化による資金負担の削減と原価低減の推進に注力して参ります。
 当社グループは、前述の2026年3月期の業績目標を達成すべく、売上高の確保と、さらなる利益創出を目指し、資金の流動性も確保しつつ、更なる財務基盤の強化を図って参ります。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローについては、税金等調整前当期純利益2億91百万円を計上し、減価償却費5億6百万円、賞与引当金の減少4億22百万円、売上債権の増加8億86百万円、仕入債務の減少26億39百万円等により、35億25百万円の支出となりました(前年同期比64億81百万円の支出増加)。
 
 投資活動によるキャッシュ・フローについては、有形固定資産の取得による支出3億22百万円、定期預金の預入による支出3億76百万円、定期預金の払戻による収入2億45百万円等により、5億27百万円の支出となりました(前年同期比2億51百万円の支出減少)。
 
 財務活動によるキャッシュ・フローについては、短期借入金の純増加額15億50百万円、長期借入による収入16億98百万円、長期借入金の返済による支出15億98百万円、社債の償還による支出2億円、配当金の支払額1億93百万円等により、11億5百万円の収入となりました(前年同期比13億52百万円の収入増加)。

 

(4) 資金の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの資金需要は、主に製品製造のための材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費のほか、設備の新設、改修に係る投資となります。放送市場におけるデジタルハイビジョン設備の更新需要の納入に係る仕入代金の資金需要が継続すると共に、成長戦略の収益源泉となるセキュリティー機器関連、メディカル機器関連、検査・画像処理関連等の産業システム事業の生産設備および仕入代金の資金需要があります。これらの資金需要の財源については、自己資金のほか、金融機関からの借入により調達することとしています。
 資金の流動性については、前述の製品の納入に係る仕入代金の他、突発的な資金需要に対しても機動的に資金を調達できるよう金融機関との間で総額40億円のコミットメントライン契約を締結しており、流動性リスクに備えています。

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いていますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

当社グループが行う重要な見積りは以下のものです。

 

①貸倒引当金

 当社グループの売上高は季節的変動が著しく、第4四半期連結会計期間に売上が集中する傾向にあります。この期間の売上債権の回収は翌連結会計年度に行われることから、貸倒引当金の会計上の見積りは重要なものとなります。

 当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しています。

 当社グループは、適切な与信管理を行い、一般債権の貸倒実績率が低い状況で推移していますが、売上増加により期末時の債権が増加したり、多額の貸倒れが発生した場合、貸倒引当金の金額が増加する可能性があります。

 

 

②投資(有価証券)の評価・減損

 当社グループは、取引先との中長期的な取引・関係維持、シナジー創出等、企業価値の維持・発展等を目的として、この目的に合致した株式を保有しています。これらの株式には、取引所に上場されている上場株式と上場されていない非上場株式があります。

 当社グループは、保有株式の評価については、上場株式は取引所の市場価格、非上場株式は取得価額で行っています。

 保有株式の減損については、上場株式においては、個別銘柄毎に市場価格と取得価額を比較して50%以上下落した場合は、合理的な反証がない限り著しい下落とみなし減損処理を行い、2期連続して下落幅が30%以上50%未満の範囲で推移した場合、市況および銘柄固有の要因分析を行い、今後の回復可能性を判断して減損処理を行っています。また、非上場株式においては、個別銘柄毎に1株あたり純資産額と取得価額を比較して50%以上下落した場合は、今後の回復可能性を判断して減損処理を行っています。

 保有目的が合致しなくなった場合、その株式を売却する場合があります。また、市況悪化や投資先の業績悪化により、保有株式の減損処理を行う場合があります。

 

③固定資産の減損

 当社グループは、固定資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理を行っています。

 当社グループの業績の悪化や事業再編、固定資産の用途変更など、固定資産の回収可能性を著しく低下させる変化が生じた場合、減損処理を行う可能性があります。

 

④繰延税金資産の回収可能性

 当社グループは、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」の分類に応じて、会計上の資産・負債の金額と税務上の資産・負債の金額との差額および税務上の繰越欠損金(一時差異等)に係る税金の額から将来の会計期間において回収が見込まれない税金の額を控除して繰延税金資産に計上しています。

 回収の見込額は課税所得に影響を受けるため、業績の悪化により将来の課税所得の減少が見込まれる場合、繰延税金資産の減少および法人税等調整額の増加となる可能性があります。また、税制改正により将来の法定実効税率に変更が生じた場合、繰延税金資産の計上額に影響を与え、法人税等調整額が変動する可能性があります。

 

⑤退職給付関係 

 当社グループは、従業員の退職給付に充てるため、非積立型確定給付制度(退職一時金制度)および確定拠出制度を採用しています。このうち退職一時金制度においては、原則法による数理計算をしています。数理計算の計算基礎には、割引率、予定死亡率、予定退職率、予想昇給率があります。

 数理計算による退職給付債務の見込額と実際の退職給付債務の金額との差額は、未認識数理計算上の差異として翌期以降費用処理していますので、翌期以降の費用に影響があります。

 退職給付関係の計上額等は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」に記載しています。

 

⑥製品保証引当金

 当社グループは、製品のアフターサービスに伴う費用の支出に備えるため、過去の実績率に基づいて算出した見積額および特定の製品に対する個別に算出した発生見込額を計上しています。

 当社グループは、設計から製造・検査に至るまで、製品の品質および安全性には細心の注意を払っています。また、製品として出荷前に品質管理部門での出荷前テストを綿密に実施しています。

 しかしながら、出荷後に想定外の不良が発生することで、多くの修理費用が発生した場合、製品保証引当金の金額が増加する可能性があります。

 

 

⑦棚卸資産の評価

 当社は、製品、仕掛品については個別法による原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)、原材料については移動平均法による原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)により評価していますが、連結子会社は、主として先入先出法による低価法を採用しています。

 棚卸資産の評価および算定については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)(棚卸資産の評価)」に記載しています。

 

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、お客様に満足して頂ける製品を創造するために常に技術を磨き、「技術の池上」と評価を頂けるよう、積極的に研究開発活動を行っています。研究開発は、プロダクトセンター(宇都宮市)とシステムセンター(藤沢市)において、事業毎に要素技術開発・機能開発・製品化開発を行っています。 また、グループ外企業との分業と連携により、自社のコア技術開発とスピードある製品開発を実現しています。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、1,413百万円です。

 

(1) 放送システム事業関連

放送システム事業関連では、番組制作から放送番組の送出・基幹網伝送に渡るデジタル放送機器に注力した研究開発を進めています。特に総務省の推進する超高精細映像技術4K・8Kのロードマップを重視した撮影機器、有線/無線中継機器、ネットワーク機器、および将来を見据えた新しい制作のワーキングスタイルに着目した研究開発に取り組んでいます。

 

放送用カメラでは、今年度、以下の開発成果がありました。

 

放送システムにおいてMoIP(Media over IP)対応機材の需要が高まるなか、4K/HD放送用カメラ(UNICAM XEシリーズおよびUnicam HDシリーズ)をMoIPシステム対応とするエクステンションユニット「IPX-100」を開発しました。「IPX-100」は2Uハーフラックサイズと小型ながらMoIPゲートウェイ機能およびJPEG-XS機能を搭載し、柔軟なMoIPシステム構築を実現します。

また、グローバルシャッター方式の高画質CMOSセンサーを搭載した、3板方式の4K/HDマルチパーパスカメラ「UHL-X40」を開発しました。独自の光学系分離構造により、撮像部分の超小型・軽量化を実現しています。これにより、リモコン雲台に設置してのスタジオ内無人運用や、屋外ハウジングに収容して情報カメラとして運用するなど、高画質を求める幅広い用途への活用を可能としました。

 

放送映像・音声スタジオ機器では、今年度、以下の開発成果がありました。

 

4K対応SDI小型ルーティングスイッチャー「UHSM-4020」を開発しました。既に製品リリースしている大型「UHSM-220220」と中型「UHSM-120120」に新たな小型タイプがラインナップに加わり、小規模なシステム構築においても最適なソリューション提供が可能となりました。また、大型、中型の製品と同様にマルチビューワ機能やダウンストリームキー機能を搭載できるため、ルーティング用途のみならず、該当機能に特化した単体製品としての構成も可能になりました。

また、4K対応SDIシステム周辺機器「OnePackⅡシリーズ」の新たなラインナップとして、アナログ映像の分配モジュールや、アナログ/デジタル音声の分配および変換モジュール、デジタル音声のセレクタモジュールを開発しました。この機能モジュールは旧製品「OnePackシリーズ」でも提供して参りましたが、今後は4K対応可能な「OnePackⅡシリーズ」の筐体に集約することで、省スペースかつ低コストのシステム構築のソリューションを提供して参ります。

さらに、4K対応SDIビデオスイッチャー「MuPS-5000シリーズ」、およびルーティングスイッチャー「UHSMシリーズ」の新たな機能として、放送システム機器の制御に採用され始めたオープンプロトコル(TSLやEmber+等)対応の外部インターフェースを開発しました。これにより、他社機器との相互通信が容易となり、映像システム構築を行う多くのシステムインテグレーターに向けて、単体販売を強力に推進して参ります。

 

放送システムにおいては、今年度、以下の開発成果がありました。

 

池上独自のソリューションである ignis(イグニス)の展開を開始しました。ignisは昨年のInter BEE 2024で新発表した、MoIP対応のトータルシステムソリューションの総称となり、システム統合管理ソリューション「ignis mc」と、ソフトウェアベースでメディア信号処理を行う「ignis mp」の2つから構成されます。

「ignis mc (Management and Control)」は放送システムの構築から設定・運用・操作そして機器監視までを統一した環境として提供するソリューションです。従来のベースバンドシステムやMoIPとのハイブリッドシステム構築にも対応可能です。また、複数のシステムを統合管理し、放送機器のリソースシェアにも対応しています。

「ignis mp (Media Processing Platform)」は汎用サーバ上で映像・音声などのメディア信号処理を行うソフトウェアプラットフォームで、スイッチャ機能やマルチビューワ機能をはじめ、さまざまな機能をソフトウェアで実現しました。複数の映像・音声信号をサーバ上で並列処理することで、従来と同様の番組制作を行うことを実現します。

ignis(イグニス)は、「ignis mc」と「ignis mp」を組み合わせることで、ネットワークの特性を活かした柔軟な構成、拡張性、さらに信頼性の高いシステム構築を実現しています。

既にMBC南日本放送様よりご発注を頂き、2026年5月に納入の予定です。

今後のMoIP需要の増加とお客様からの多様なご要望に応え、ignis(イグニス)によるソリューションを提供して参ります。

 

無線伝送・通信機器では、今年度、以下の開発成果がありました。

 

放送局向けFPU受信基地局の更新需要を見込み、ARIB STD-B12規格に対応したTSL装置「PF-912」の開発を行いました。このTSL装置は、従来のARIB STD-B11規格に対応したTSL装置「PF-911」にシリアル伝送機能を追加したもので、本線信号の伝送以外に、多様化されるFPU受信基地局の監視情報も同時に伝送することが可能になります。

デジタルFPU/TSLは導入から15年以上が経過し更新時期を迎えており、その更新需要に向け、新規格への対応や性能向上に留まらず、小型化を含む環境負荷低減も目指し製品開発を継続して、各放送局への積極的な販売活動を行って参ります。

 
 

(2) 産業システム事業関連

 セキュリティー機器関連では、様々な顧客ニーズに対応したシステム、ソリューション提供のための開発を進めています。
 
 ヘリコプターテレビ電送システム向けに、撮影映像と同期して撮影画角情報を地図上に表示するシステムを開発しました。撮像映像の画角が地図上にマッピングされることで、災害発生時など、迅速な映像位置確認と状況伝達に貢献して参ります。

鉄道市場では、メンテナンスで好評を得ている昇降式モニターハウジングの技術をベースに、カメラハウジングやその他の駅構内の機器を対象とした昇降装置の開発を進めました。

今後も人々の安全安心を守る監視システムの自動化、高度化、省人化を目指した製品開発を継続して参ります。

 
 メディカル機器関連では、医療現場に求められる映像装置の研究開発を進めています。
 
 好評を得ていましたメディカルデジタルビデオレコーダー「MDR-600HD」の後継機として、「MDR-600HD-A」を開発しました。従来機種の基本機能・性能を継承しつつ、性能面では録画時間を2倍に、機能面ではネットワーク機能を標準搭載とする等のブラッシュアップを図りました。今後とも医療現場の要望に応えた開発を進め貢献して参ります。

また、弊社は医療機器の安全および品質確保に向け、既に認証を取得しているISO13485(医療機器に関する品質マネジメントシステム)に加え、IEC62304(医療機器ソフトウェアのライフサイクル)への対応を進めて参りました。今後は本規格対応により、米国や欧州地域での販売強化を促進して参ります。

今後も差異化技術を追求し機能・性能の改善を図り、低侵襲手術を始めとした医療技術の向上、発展に貢献して参ります。

 
  検査機器関連では、客先製品の品質向上に加え、省人化に貢献する検査装置システムの研究開発を行い、事業拡大に努めています。

 

国内医薬品市場は3年連続で売上の過去最高額を更新し、医薬品増産に向けた設備投資計画が進んでいます。これに伴い、弊社の錠剤検査能力70万錠/1Hの業界最高水準処理能力を誇る錠剤外観検査装置TIE-10000の需要も高く、納入台数も好調に推移しております。このような状況の中、TIE-10000の更なる利便性強化に向け、リモートメンテナンス機能や運用における支援機能などユーザーサポート面での機能強化を実施いたしました。より幅広いニーズに応えられるよう機能強化を継続し、今後も医薬品の品質向上に貢献して参ります。

産業市場では、更なる省力化に向けたソリューションとして、平面枚葉検査装置(PIE-650M)を中核に、検査の前後工程で必要となる検査対象の受け渡しや検査品の仕分けを、ロボットアームにより実現しました。今後も省力化による生産能力の向上に貢献して参ります。

また、ケミカル市場向けに、新たに粉体検査装置「POIE-8000CA type i」を開発しました。医薬品向けの末・顆粒剤検査装置「POIE-8000CA」の性能を継承し、粉体に混入した細かな毛髪(φ30μm×3mm以上)や、微細な異物(φ50μm以上)等を検出する能力を実現しています。今後、化粧品を含む化学原料市場への販売促進に向け、関連する展示会をはじめ、訴求活動を開始しております。

今後、AI/IoT技術を活用し、さらなる製品価値向上に向け開発を推進して参ります。