当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは1933年の創業以来、「経営理念」として次の3点を掲げて企業活動を行っております。
創業以来、パワーエレクトロニクスの分野において、社会が必要とする製品をメーカーとして真摯に提供し続けることを実践しております。当社グループは、産業用の用途とともに、社会インフラに欠かせない電力エネルギーを高効率に変換する技術を培い、パワー半導体並びに小型カスタム電源から大型電源機器までを開発・製造しております。当社グループは、これからの地球の未来を支える電気、その姿を効率よく、自在にカタチを変えることでクリーンエネルギー社会の実現に向け貢献してまいります。
当社グループは、中期のありたい姿を次のように掲げております。
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中期のありたい姿 : Global Power Solution Partner (グローバル・パワー・ソリューション・パートナー) ・創業以来の強みのパワーエレクトロニクス関連技術は世界トップレベルまで磨かれている ・パワーエレクトロニクス関連技術を武器にお客様の困りごとを徹底的に掘り起こし解決している ・目線はグローバル。全地球規模で事業を展開している ・誠実さと品質に対し抜群の信頼感を社会から得ている |
(2) 経営環境
カーボンニュートラルや脱炭素社会の推進に伴い、企業は環境規制の強化や再生可能エネルギーへの転換、エネルギー効率化への投資が求められています。各国政府が温室効果ガス排出削減の目標を設定し、それに基づく規制や法令が次々と導入されているため、企業はこれらの規制に対応する必要があります。そのため、従来の化石燃料依存のエネルギーシステムから再生可能エネルギーシステムへの転換、電力消費の効率化やエネルギー管理の高度化が求められています。省エネルギー技術やスマートグリッドの導入も進展しています。
当社グループは、こうした急速に変化する事業環境に対応するため、創業当時から培ってきた電力損失を最適化する技術を駆使し、電力使用時や蓄電時に発生する損失を低減する革新的な電気回路を開発しております。この技術を活かし、脱炭素社会の実現に貢献するため、太陽光発電システム用パワーコンディショナーや蓄電システム用・燃料電池用インバーターなどの電源機器を開発しております。また、これらの電源機器を支えるコアデバイスとして、高電圧・大電流パワー半導体や高効率次世代化合物パワー半導体の開発にも注力しております。当社グループは、事業活動を通じて社会課題を解決し、持続的な成長を実現するとともに、社会的な責任を果たしてまいります。
(3) 中期経営計画
[基本方針]
「自己資本利益率(ROE)10%以上」の実現のため、中期経営計画「CF26」(2025年3月期から2027年3月期)を策定し、「Global Power Solution Partnerの実現に向けた経営改革の3年」と位置づけ、戦略的投資と無形資産への投資により事業成長と収益性向上を目指しております。具体的には、カーボンニュートラルに貢献する製品開発や高性能デバイスの開発により省エネルギーと電力の安定供給に貢献し、顧客の付加価値を向上させるソリューション提供を行います。また、環境負荷の軽減や事業継続マネジメントの強化を通じてサステナビリティ戦略を推進し、投下資本を最大限に活用して株主資本コストを超える自己資本利益率(ROE)を目指し、収益性と投下資本回転率の改善を図ります。さらに、株主還元の充実やコーポレート・ガバナンスの強化も推進してまいります。

(4) 中期経営計画の重点項目
① 半導体事業
SiC※製品は高効率な電力変換効果とCO2削減効果を持ち、その需要が急増しています。これらの高性能デバイスは省エネルギーと電力の安定供給に大きく貢献するため、これを基本として次の施策を推進いたします。
(a) 従来の建設関連、産業用設備に加えて新たにインフラ市場(モビリティ、再生可能エネルギー・蓄エネルギー、データセンターなど)に注力し、バランスの取れた業界戦略を目指す
(b) SiC製品の拡充と製品特性に基づく地域ごとの適切なグローバル展開
※ SiC(シリコンカーバイド)は、シリコンと炭素からなる化合物半導体です。従来のシリコン半導体に比べエネルギー効率の向上や小型化が期待されています。
② 電源機器事業
当社グループは持続可能な経営を重視し、カーボンニュートラルに貢献する製品開発や環境負荷の軽減に取り組
んでおります。これにより、社会課題への対応と顧客ニーズを両立させ、競争力を高めることを目指しております。特に、エネルギーマネジメント分野では系統安定化技術を駆使して、当社の地位をさらに強固にする施策を推進いたします。
(a) 新エネルギー分野の製品開発と表面処理用電源のグローバルシェア拡大
(b) 設計の標準化の取り組み
(c) 資本業務提携先との協業
(d) 小型電源で新たな市場を開拓(情報インフラ、急速充電器、半導体製造装置など)
③ サステナビリティ戦略
(a) 生産活動における環境負荷の軽減:地球環境への配慮を通じて、企業としての社会的な責任を果たすため、エネルギー効率を向上させ、CO2排出量を削減いたします。さらに、廃棄物の削減の推進、再生可能エネルギーの導入などを計画しております。
(b) ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進と人材育成:多様な背景を持つ人材を積極的に採用し、その能力や視点を活かすことで、イノベーションの源泉となることを目指します。また、教育や研修を通じて、従業員のスキルアップやキャリアの発展を支援いたします。これにより、企業全体の生産性向上や社員の満足度の向上を実現し、持続可能な人材育成を進めます。
(c) 事業継続マネジメント(BCM):災害や危機が発生した際でも、迅速かつ適切な対応を可能とし、企業のリスク管理と事業継続能力の向上を目指します。
④ 財務戦略
投下資本を最大限に活用し、株主資本コストを超える自己資本利益率(ROE)を達成することを目指します。収益性と投下資本回転率の改善も重要な目標であり、総資産営業利益率(ROA)の目標水準を達成することを目指します。さらに、株主還元の充実も重要な取り組みとしております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 基本的な考え方
当社グループは、2023年4月に当社グループの存在意義・志として以下のとおりパーパスを制定いたしました。このパーパスに則り、事業を通じて社会課題解決に貢献することで、企業価値の向上と持続可能な社会の実現を目指します。また、当社グループの事業活動が社会や地球環境に与える影響に十分配慮して行動するとともに、ステークホルダーの皆様との信頼を築くように努めてまいります。
(2)ガバナンス体制
当社グループは、サステナビリティを巡る課題への取り組みは、中長期的な企業価値の向上の観点から経営の重要課題であると認識しております。基本的な方針は取締役会で決定し、具体的な取り組みは、経営企画会議で議論を行い、施策などの検討を行っております。各施策は、関連する委員会が横断的な連携を図りながら推進しております。
(3)リスク管理
企業を取り巻くリスクが多様化しているなか、当社グループの事業に伴うさまざまなリスクを明確にし、その発生防止に係る管理体制の整備、影響を最小限に抑えるための対応等に取り組みます。また、リスクが現実のものとなった場合には、経営トップの指揮のもと迅速・適切な対応を図ることを基本としております。
当社は、取締役経営企画本部長を委員長とする内部統制委員会を設置しております。リスクマネジメント規程に基づき、内部統制委員会が会社の主要リスクの管理・対応に取り組んでおり、必要に応じて取締役会に報告する仕組みを構築しております。また、内部統制委員会は、各部門やグループ会社と連携し、リスクの洗い出し、リスク分析・評価、リスク軽減対策の検討と実行を行っております。さらに、専門委員会として全社品質会議、環境管理推進委員会、輸出管理委員会、情報セキュリティ委員会、安全衛生委員会、人材開発会議がそれぞれの分野におけるリスク管理に取り組んでおります。全社主要リスクとしては、自然災害リスク、コンプライアンスリスク、品質リスク、金融リスク、システムリスク、環境リスク、ビジネス戦略リスク、労務リスク、財務リスク、政治リスク、社会リスクが把握されており、それぞれのリスクに対する適切な対策を検討しております。
(4)戦略
[マテリアリティの取り組み]
当社グループは、ステークホルダーの関心度や影響度、当社グループの事業に直接関連する重要な要素を評価し、当社グループが優先的に取り組むべき7つのマテリアリティを特定いたしました。
なお、詳細については、
① 脱炭素社会、環境保護に貢献
当社グループは、創エネ、蓄エネ、省エネに貢献できるパワー半導体技術と電力変換・制御技術を融合させ、パワーエレクトロニクス製品の創造に根差した技術並びに新製品の開発で成長してまいりました。一方で経営理念である「社会に価値ある製品を」の姿勢は不変であり、脱炭素社会の実現に向けて世界中が取り組むなか、当社グループとして新しい価値を提供することが重要であると考えております。
当社グループは、脱炭素社会の実現や環境負荷を低減する製品の設計・開発に積極的に取り組んでおりま
す。
[開発事例(エネルギーソリューション)]
創エネ分野:太陽光パワーコンディショナー、燃料電池用パワーコンディショナー、水素発生装置
蓄エネ分野:蓄電システム、充放電装置
省エネ分野:無停電電源装置、表面処理用電源、各種設備用電源、各種パワー半導体
② インフラ整備と産業発展に貢献
近年、地震や台風によって大規模かつ長期的な停電が発生し、企業活動に大きな損失をもたらしています。当社グループは、パワーエレクトロニクスの技術をベースにバックアップ電源を開発し、社会インフラを支えています。一方、国内トップシェアである表面処理用電源は、自動車・二輪車等の輸送機器、産業機械をはじめ、精密機器、コンピューターや通信機等の電子部品やプリント基板などのめっき加工に使用されており、産業の成長を支えてきました。今後もさらなる技術力で産業の成長を後押しいたします。
③ 安心・安全の提供とサービスの向上
当社グループのパワー半導体や電源機器は産業機器向け製品であり、お客様の生産工程の設備電源やインフラを支えるバックアップ電源など、お客様の産業機器に組み込まれて活躍しているため、高い品質と安全性が求められます。お客様に信頼・安心していただける品質を提供することはその先の社会貢献や地球環境保全に大きく関わることを常に意識しながら、品質向上への努力を重ねております。
さらに、大型の電源機器を長く安全にご使用いただくためには、日頃からの保守点検が不可欠であると考え
ております。当社グループは、保守点検や修理などのサポートまで、トータルソリューションの提供を加速させてまいります。
④ モノづくりと品質の強化
当社グループは、創エネ、蓄エネ、省エネに貢献すべく、電力変換技術、制御技術、パワー半導体技術の3
つの基幹技術を融合させ、産業用パワーエレクトロニクス市場向けの商品開発を手掛けております。創業以来、常に時代の要請に応え、高機能・高付加価値製品へ導いてきた軌跡は、さらなる技術の進化を呼び起こし、新しい時代を切り拓く原動力となっております。
[知財戦略]
当社グループは、経営理念「社会に価値ある製品を」のもと、総合的なエネルギー変換・制御技術と半導体技術を融合させた、パワーエレクトロニクス製品の創造に根ざした技術並びに製品開発を手掛けております。特に、地球環境保全に役立つ技術開発とその応用製品は重要で、次の10年を支える新規技術、新規回路、新規製法、斬新的な意匠等の発明に注力しております。
2024年4月現在の特許保有件数は国内152件、海外136件ですが、出願中の件数は増加しております。特に重要案件に関する新技術確立は順調に進捗しております。
また、新たにノウハウ伝承の器としての特許活用を掲げ、先端分野で得られる重要な情報を特許として抽
出する従来のアプローチに加え、詳細に記述された「実施例」を教材として活用する取り組みを追加いたしました。これにより当社の強みが世代を超えて伝承され、お客様の安心につながる「三社電機らしさ」が定着していくものと確信しております。
⑤ 生産活動における環境負荷の軽減
当社グループでは、地球環境の保全は「次世代への責務」と考え、事業活動による環境負荷の低減は最重要課題のひとつであると認識し、地球環境の保全活動を加速させております。
[推進体制]
当社グループは、環境保全活動を推進する体制として、環境統括責任者のもと、環境管理推進委員会を設置しております。環境保全活動に関わる取り組みは、環境管理推進委員会が立案し、経営企画会議及び内部統制委員会で協議し、取締役会で決定しております。
環境管理推進委員会は、各事業所・各部の責任者で構成されており、品質環境企画室が事務局を担っております。
[CO2排出量削減の取り組み]
グループ全社で2030年までにCO2排出量(SCOPE1・2)を46%削減(2013年度対比)、2050年にはカーボンニュートラルとすることを目標とし、以下のような設備投資などを計画的に行ってまいります。
・岡山工場、子会社に太陽光発電設備を設置
・本社空調設備をガス設備から電気へ
・岡山工場の空調設備を更新
・子会社建物・施設の照明LED化
・再生可能エネルギー電気の購入
今後、SCOPE3においてCO2排出量削減の目標を設定するため、現状把握に努めてまいります。
⑥ ダイバーシティ推進と人材育成
[2030年の目指す姿]
当社グループは、経営理念のひとつに「社員に幸福と安定を」を掲げており、社員が幸福であることは、企業が成長発展するための最も重要な経営基盤のひとつと考えております。さらに、当社グループが持続的に成長するためには、「自ら考え行動する」人材が不可欠と考え、社員の主体性を引き出すことを大切に考えております。
「社員の成長が会社の成長につながる」という基本方針のもと、互いに磨きあい自らを高める組織風土と、活き活きと働ける職場づくりを推進し、社員の成長と会社の成長の同時実現を目指してまいります。
[基本的な考え方]
「ダイバーシティ」の推進については、人材の多様性を進めること自体を目的とするのではなく、多様性に富む人材が個々の能力を発揮できるような職場の構造・風土に転換することによって、市場対応力を高めガバナンスの健全化を図るといった組織にとってのメリットにつながることと認識し、社内の意識改革を進めております。特にグローバル事業を拡大していくにあたっては、性別、年齢、国籍、障がいの有無等に関わらない多様な考えや価値観を受け入れ、強みを活かすマネジメントが喫緊の課題であると考えております。また、さまざまなバックグラウンドを持つ人材を積極的に採用し、その能力や視点を活かすことで、イノベーションを促進したいと考えております。同時に、教育や研修を通じて、従業員のスキルアップやキャリアの発展をサポートいたします。さらに、階層別育成プログラムを含む人材育成体系を充実させ、人材基盤の強化を図ります。当社グループは、労務構成を踏まえた人員計画と採用計画に基づき、新卒採用と中途採用を継続的に行い、若手人材の早期育成と定着に向けた取り組みも行っております。加えて、資格取得を奨励するなど、人材育成に関する取り組みを実施しております。
[女性の管理職への登用]
ダイバーシティ&インクルージョン推進活動の意義や目的に対する従業員の理解が深まり、女性管理職候補が継続的に生まれる土壌と人材プールができあがることをゴールとし、2016年度より女性活躍推進活動を進めております。特に女性の活躍が非常に重要となるとの考えから、性別に関係なくチャレンジできる風土づくりに取り組んでいくとともに、女性管理職候補の育成のためのスキルアップ研修を実施するほか、その上司も含めた意識改革推進、活躍の場を広げるためのジョブローテーション実施など、さまざまな方向から女性社員の育成に取り組んでおります。KPIとしては、女性管理職の目標値を定め、継続的に育成を行っており、今後は、キャリア意識の啓発やマネジメントスキルの向上等、女性責任者登用を展望した取り組みを推進してまいります。
[グローバル人材の育成と登用]
海外における事業の拡大、新市場への成長投資のためにグローバル人材の育成と登用を積極的に進めてまいります。グローバル人材の育成として社員の意識をより海外に向けるために海外トレーニー制度を導入し、今後、若手を中心に積極的にグローバルな環境での経験機会を増やしてまいります。子会社では1名の外国人を役員として選任しており、外国人の管理職は、46名おります。また、支店では1名の外国人を支店長として登用しております。外国人については、管理職登用の目標値は現在設定しておりませんが、当社グループは、成長戦略における海外事業拡大に向けてグローバル人材の育成及び確保に向けた取り組みを行っており、今後も継続して取り組みを行うなかで、目標設定についても検討してまいります。
[中途入社者の積極的採用と登用]
現社員における中途採用者比率は43.9%であり、管理職に占める比率は38.0%であります。中途採用者比率及びその管理職に占める比率は一定の水準を達していると判断しておりますが、今後も人材多様性の推進のために積極的にキャリア人材を採用していく方針であります。
[社内環境整備]
女性の活躍推進に向けて取り組みを継続してきた成果もあり、2021年「えるぼし」3つ星及び2022年「くるみん」認証を取得いたしましたが、引き続き、女性リーダー育成や働きやすい職場づくりに取り組んでまいります。育児休業制度は2歳到達までの取得を可能としております。時短勤務は、これまでの小学校3年生までから小学校卒業までに延長しております。男性の育児休業取得について2023年度の取得率は75%で、社内ホームページに男性の育児休業についてのコーナーを開設するとともに管理職向けeラーニングの実施、制度対象者への個別制度説明等、育児休業が取得しやすい環境づくりに継続して取り組んでおります。適正な労働時間管理や残業時間削減の取り組みを継続的に実施し、男女を問わずすべての社員が仕事と生活のバランスが取れた働き方ができるよう、環境整備を行います。
[主な指標及び目標]
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項目 |
2024年3月期 実績 |
目指す姿 |
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中途採用者の採用・管理職比率 |
中途採用43.9%、管理職38.0% |
中途採用40%以上、管理職35%以上 |
(注)対象範囲:株式会社三社電機製作所
⑦ 事業継続マネジメント(BCM)の強化
災害や危機が発生した際でも、迅速かつ適切な対応を可能とし、企業のリスク管理と事業継続能力の向上を目指します。具体的には、近年、増加している自然災害やサイバーセキュリティの脅威に対処するため、リスク評価とビジネスインパクト分析の実施、BCMポリシーと計画の策定、意識向上とトレーニングを推進する計画であります。
経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のものがあります。文中の将来に関する事項は本有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において、当社グループが判断したものであります。
なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容については、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。
(1) 経済環境の変動によるリスク
当社グループは、経営理念のもと、パワーエレクトロニクスの分野に経営資源を集中・特化し、特にパワー半導体技術と電源機器技術の融合により、地球環境への負荷の軽減を最終的に目指して、エネルギーの効率使用、省エネルギー・省資源及びクリーンエネルギーの活用を実現する製品開発を行い、事業基盤の拡大に取り組んでおります。
当社グループは、特定の地域、産業に偏らない販売戦略をとっておりますが、貿易規制、伝染病や感染症によるパンデミック、経済状況の変化、民間設備投資動向やインフラ整備の動向に影響を受けるところが大きく、世界経済の景気後退や需要の縮小は、当社グループの受注高・受注価格に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業リスク・戦略リスク
① 品質リスク(製造物責任)
当社グループは、品質管理基準に基づき、開発段階から出荷に至る全ての段階で製品の品質向上に最善の努力を行っておりますが、リコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコスト発生の可能性があるとともに当社グループの評価に重大な影響を与え、それにより売上が減少するなど業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 製品開発リスク
当社グループは、お客様のニーズを的確に捉え、魅力的な製品をタイムリーにお客様に届けるよう、活動を強化しておりますが、開発の遅れやタイムリーな供給ができなかった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 他社との提携等の継続可能性
当社グループは、販売拡大のため当社グループに優位性のある商品については、OEM供給あるいは受託生産の形で一部の事業分野において共同で事業活動を行っております。当社グループは、相手先企業のニーズに応えるため、技術開発及び品質向上に努めておりますが、経営環境の変化を受け相手先企業の要因により、協業関係が継続できなくなる場合もあり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 素材価格の変動
当社グループの電源機器事業は、銅、鉄鋼及び樹脂等の素材が含まれる部品を多く使用しております。当社グループは、コストダウン、生産性の向上、経費圧縮などに取り組んでおりますが、素材関係の市況が急激に変動した場合、引き合いから受注・引き渡しまでに期間を要するため、製品価格への転嫁が遅れることにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 部品調達リスク
当社グループの製品には、社外から調達する電子部品等が数多く使用されておりますが、5G関連や車載の部品などの需要増加から電子部品等の調達のリードタイムが長期化し、適時に調達ができなくなる可能性があります。また、一部の部材については、海外から調達していますが、各国の通関の政策次第で調達できなくなる可能性もあります。加えて、テロや地域紛争、国際関係の悪化による治安、情勢不安などによる運航リスク、原油価格の高騰などによる輸送コストの上昇、コンテナ需給の逼迫による輸送遅延や輸送コストの上昇などのリスクがあります。
当社グループは、主要部品に関する代替調達先の検討を進め、サプライチェーンの寸断によるリスクを最小限とするよう努めておりますが、調達困難な状況が長期化した場合、また、想定を超えた事象が発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
⑥ 生産委託先(外注先)の経営状況変動によるリスク
当社グループは、半導体製品の組み立て工程や電源機器製品の生産を外注先に委託している場合がありますが、生産委託先の経営状況の変動により、外注コストの増加や販売に必要な生産数量の確保ができなくなる可能性があります。当社グループとしては、生産委託先との連携を図り経営状況の変化を早期に確認することに併せて、生産委託先を適宜見直すなどリスクを最小限とするよう努めておりますが、リスクが顕在化した場合や外注先の倒産等予期せぬ事態が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
⑦ 国際情勢に関するリスク
当社グループは、中期経営計画のテーマのひとつとして積極的にグローバル展開を推進しており、販売拠点及び生産拠点を海外に展開しております。
当社グループは、地政学的リスク/カントリーリスクに対し海外営業統括部及び海外子会社による地政学的リスク/カントリーリスクに関する情報収集や案件ごとにその回避策を講じるなどにより対応しておりますが、各国における社会情勢、政治・経済、文化・宗教、現地の法令・制度や規制等、また、戦争・暴動・テロ・伝染病・感染症等による社会的混乱、地震・台風等の自然災害などさまざまなリスクが顕在化した場合には、原油価格の高騰などによる輸送コストの上昇、工場の操業停止や債権回収不能など業績に影響を与える可能性があります。
⑧ 競合に関するリスク
当社グループの製品は、国内外において他社との競争にさらされております。当社グループは、継続的に開発投資を行い、さらなる品質向上に取り組むとともに、原材料の現地調達率の向上、生産コストの削減、また、保守サービス対応力の強化などに取り組み、競合他社との差別化を図っておりますが、予想以上の価格競争激化による販売価格の低下が業績に影響を与える可能性があります。
⑨ 情報セキュリティにおけるリスク
当社グループは、事業を通じてお客様や取引先の個人情報や機密情報を入手することがあります。これらの情報は、サイバー攻撃等による不正アクセスや改ざん・破壊、紛失、漏洩等がないようにグループ全体でセキュリティの強化や委託先の管理、従業員教育を実施するなど、管理体制を構築しております。
しかしながら、想定を超えるサイバー攻撃、人為的ミスや盗難等により、これらの情報の流出、破壊もしくは改ざんまたは情報システムの停止等が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 人材確保
当社グループが競争力を維持し、将来にわたり発展するためには、優秀な人材を継続的に確保する必要があります。当社グループでは、雇用制度の充実や教育訓練制度等を通じて人材確保と育成に努めておりますが、近年、日本の生産人口減少を背景に有能な人材の獲得競争は激しくなっております。当社グループが人材を確保できない場合には、事業の拡大にも支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。
⑪ 知的財産に関するリスク
当社グループは、知的財産は競争力の源泉であり経営資源の最も重要なもののひとつと考え、知的財産を権利化、管理、活用することにより、企業価値やブランド価値の維持・向上を図っています。グローバルに事業を展開するなかで、当社グループの知的財産権が侵害される可能性があり、こうした場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。このため、当社グループは、継続的に模倣品の情報を収集し、適切な対策を行うこととしております。
また、当社グループは第三者の知的財産権を侵害しないように留意し、製品開発においては事前に調査を行っておりますが、万一、当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償請求等の訴えを起こされる可能性や対価の支払等が発生し、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 環境リスク
① 法的規制
当社グループは、当社及び子会社並びに代理店を通じて海外で製品を販売しておりますが、欧州においてはRoHS指令(特定有害物質の使用規制)、中国においては中国版RoHS指令等の規制を受けております。当社グループはこれらの法令を遵守するための法令に適合した品質管理基準に基づいた品質管理を実施し事業活動を行うとともに、法規制の改正動向を早期に把握するよう努めておりますが、予測できない事態によりこれらの規制を遵守できなかった場合や、今後法的規則等が改正され、その対応のための費用負担などが増大したり、あるいはこれらの法改正等に充分に対応できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 化学物質管理
当社グループは、生産活動において各種化学物質を多数使用しております。その取扱いには、標準書・手順書に従い万全の対策を講じておりますが、万一、化学物質の社外流出事故が発生した場合には、社会的信用の失墜、補償・対策費用の支出、生産活動の停止等により、業績に影響を与える可能性があります。
③ その他の環境規制・気候変動関連等
当社グループは、廃棄物削減、大気汚染防止、水質汚濁防止などの環境規制の適用を受けております。また、温室効果ガスの排出削減に向けた取り組みが全世界的に強化されております。そのため、当社グループは、地球環境の保全は「次世代への責務」と考え、環境負荷の低減を最重要課題のひとつとして多くの経営資源を投入し、環境整備に努めております。しかしながら、事故や自然災害より不測の環境汚染が生じる場合、また、予期しない規制等が設けられ、対応が遅れた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(4) 金融リスク
① 為替レートの変動
当社グループの生産活動、営業活動及び調達活動は、全世界を対象にしております。そのため、為替のバランスを図ることに努めておりますが、差額として生じた外貨建債権債務については、為替相場の変動によるリスクをヘッジする目的で、常時為替予約等で対策を講じております。
しかし、為替予約、為替バランスを図ることにより為替相場変動の影響を緩和することは可能であっても、影響を全て排除することは不可能であり、業績に少なからず影響を及ぼす可能性があります。
また、各主要市場に販売子会社を設立しているため、連結財務諸表作成上、各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は円換算しており、換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨の価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受け、業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 金利の変動
当社グループは、金利の変動リスクを回避するための対策を講じておりますが、金利の変動は、業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 株価の下落
当社グループは、株式を保有しておりますが、今後の株価の下落により保有株式の評価損の計上が必要になる等、業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループは、株式の保有の継続、縮減については当社グループの便益となるか否かを精査したうえで取締役会において審議することを政策保有方針としております。
(5)財務リスク
① 長期性資産の減損
当社グループは、多額の有形固定資産等の長期性資産を保有しております。これら長期性資産の連結貸借対照表計上額について、当該資産から得られる将来キャッシュ・フローによって、資産の残存価額を回収できるかどうかを定期的に検討しております。
キャッシュ・フローを生み出さない場合は、減損を認識しなければならない可能性があります。
② 退職給付債務
当社グループは、日本の会計基準に従い、退職給付債務を処理しております。しかし、退職給付費用及び退職給付債務等の計算に関する事項(割引率、長期期待運用収益率等)で、実際の結果が前提条件と異なる場合、前提条件が変更された場合及び今後年金資産の運用環境の悪化があった場合は数理計算上の差異が発生いたします。これらの場合、再び退職給付債務の発生等、退職給付費用及び計上される債務に影響を及ぼす可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産に関して将来の回収可能性を十分に検討し回収可能な額を計上しております。今後、経営状況の悪化等により一時差異等が、将来減算される期間における課税所得により回収できないと判断された場合には、法人税等調整額が増加し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 会計制度、税制等の変更
当社グループが、予期しない会計基準や税制の新たな導入、変更により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、税務申告における税務当局との見解の相違により、当社グループに予想以上の税負担が生じる可能性があります。
当社グループとしては、適時に専門家より制度改正に関する情報を入手し、適切な対応に努めてまいります。
(6)自然リスクやパンデミック
当社グループの製造拠点、営業拠点等が地震等の自然災害によって多大な損害を受けたり、伝染病や感染症によるパンデミック等により、通常の事業活動が困難になった場合、工場の操業停止や配送が遅延する可能性があります。さらに、当社グループが直接的に損害を受けなくても、お客様や取引先が損害を受けることにより生産・物流・販売等が計画どおりに実行できない可能性があります。
当社グループは、地震災害が発生した場合の迅速な初期対応の推進及び業務を早期に復旧継続させるため、安否確認システムの導入、防災訓練の実施、BCP(事業継続計画)の策定を行っております。しかし、実際に発生した場合には、当社グループの生産拠点での操業の中断、施設等の損害、多額の復旧費用などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況
① 財政状態及び経営成績の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における世界経済は、資源価格の高騰、欧米各国による金融引き締め、中国における景気の低迷が長期化するなど景気の先行きへの不透明感が続きました。国内は新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類に移行したことにより、経済・社会活動は正常化が進みましたが、エネルギー価格や原材料価格の高騰、円安による物価の上昇など厳しい経営環境が続くとともに、日本銀行によるマイナス金利政策の解除の影響は不透明で先行きについては予断を許さない状況です。
このような状況のなか、当連結会計年度は中期経営計画「CG23」(2022年3月期~2024年3月期)の最終年度となり、新エネルギー分野や環境分野の製品開発など、中期経営計画に掲げた重点施策を着実に推進してまいりました。業績面では前年度までの好調な受注分が当年度に寄与したこと、特に電源機器事業においては大型案件が寄与したことで売上、利益ともに大きく伸長いたしました。
以上の結果、売上高は310億5百万円(前期比10.4%増加)となりました。営業利益は34億7百万円(前期比109.1%増加)、経常利益は34億7千3百万円(前期比110.3%増加)、法人税等調整額(益)5億7千1百万円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は29億5千5百万円(前期比138.0%増加)となりました。
[セグメント別の状況]
(a) 半導体事業
当事業においては、上半期の売上高は前年度までの受注分が寄与したことで堅調でしたが、当連結会計年度からの受注状況が低調に推移したことで下半期の売上高は前期比で減収となりました。パワーモジュールは汎用インバーター向け、各種の電源機器向けなどは増収となりましたが、エアコン向けやFAサーボ向けなどが減収となりました。パワーディスクリートは温水便座向けなどの民生用を中心に減収となりました。地域別では、中国は年間を通じて低調に推移した一方、東南アジアは商流変化によるウエハ・チップの取扱量の増加もあり、増収となりました。国内は下半期に入り減収となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は、79億2百万円(前期比3.0%減少)となりました。セグメント利益は価格改定の効果や為替差益などによる増益要因はあったものの、減収の影響により2億7千1百万円(前期比46.8%減少)となりました。
(b) 電源機器事業
当事業においては、売上高はあらゆる製品群で堅調に推移いたしました。特に、第3四半期連結会計期間において計上された、一般産業用電源に分類される国立研究開発法人産業技術総合研究所向けのパワーコンディショナーの評価用大型電源(以下、評価用電源)の売上高が事業全体の売上高を大きく押し上げる結果となりました。このほか精密表面処理分野の需要に応じて表面処理用電源も増収となったほか、溶接機、無停電電源装置(UPS)などのインバーター、小型電源などが堅調に推移いたしました。地域別では、国内は評価用電源の効果もあり増収となりましたが、海外は中国景況感の悪化並びに素材加工用などの大型の需要を取り込めなかったことから減収となりました。
以上の結果、当セグメントの売上高は231億3百万円(前期比15.9%増加)となりました。セグメント利益は増収や販売構成の変化による限界利益率の改善などにより、31億3千5百万円(前期比180.3%増加)となりました。
② 財政状態の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態の概要は次のとおりであります。
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総資産 |
353億3千4百万円 |
(前年同期差+62億5千1百万円) |
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流動資産 |
273億9千3百万円 |
(前年同期差+48億8千2百万円) |
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現預金 |
58億2千5百万円 |
(前年同期差+18億6千5百万円) |
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売上債権 |
124億3千9百万円 |
(前年同期差+25億8千4百万円) |
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在庫 |
88億7千4百万円 |
(前年同期差+7億9千7百万円) |
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その他資産 |
2億8千4百万円 |
(前年同期差▲3億6千4百万円) |
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固定資産 |
79億4千1百万円 |
(前年同期差+13億6千8百万円) |
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総負債 |
109億1百万円 |
(前年同期差+28億8千3百万円) |
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仕入債務 |
42億5千5百万円 |
(前年同期差+ 4百万円) |
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その他負債 |
66億4千5百万円 |
(前年同期差+28億7千9百万円) |
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純資産 |
244億3千2百万円 |
(前年同期差+33億6千7百万円) |
資産の部の主な変動要因は以下のとおりとなります。
(流動資産)
主に現金及び預金が18億6千5百万円、電子記録債権が27億1千万円それぞれ増加したことにより、流動資産合計で48億8千2百万円増加いたしました。
(固定資産)
主に半導体製造設備の導入に伴い、建設仮勘定が6億1百万円増加したこと及び繰延税金資産が3億5千3百万円増加した結果、固定資産合計で13億6千8百万円増加いたしました。
負債の部の主な変動要因は以下のとおりとなります。
当社グループの所要資金調達のため、短期借入金が10億円増加したこと及び未払法人税等が6億5千5百万円増加したことなどにより、負債合計で28億8千3百万円増加いたしました。
純資産の部の主な変動要因は以下のとおりとなります。
主に親会社株主に帰属する当期純利益29億5千5百万円により、33億6千7百万円増加いたしました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における当社グループのキャッシュ・フローの概要は次のとおりであります。
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営業キャッシュ・フロー |
23億3百万円 |
(前年同期差+25億1百万円) |
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投資キャッシュ・フロー |
▲10億9千7百万円 |
(前年同期差▲2億9千8百万円) |
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財務キャッシュ・フロー |
4億8千8百万円 |
(前年同期差+6億7千7百万円) |
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、58億2千5百万円となり、前連結会計年度に比べ18億6千5百万円の増加となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動においては23億3百万円の収入(前期は1億9千8百万円の支出)となりました。
これは主に税金等調整前当期純利益34億7千3百万円が増加要因として寄与したものの、減少要因として売上債権の増加23億3千1百万円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動においては10億9千7百万円の資金の支出(前期は7億9千9百万円の支出)となりました。
これは主に有形固定資産の取得による支出8億8千2百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動においては4億8千8百万円の資金の収入(前期は1億8千9百万円の支出)となりました。
これは主に増加要因として短期借入金の増加が10億円あったものの、減少要因として配当金の支払による支出4億2千6百万円などがあったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の状況
(a) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前期比(%) |
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半導体事業(百万円) |
6,164 |
86.0 |
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電源機器事業(百万円) |
21,964 |
128.5 |
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合計(百万円) |
28,128 |
116.0 |
(注) 金額は販売価格によっております。
(b) 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
受注金額 (百万円) |
前期比(%) |
受注残高 (百万円) |
前期比(%) |
|
半導体事業 |
5,697 |
62.7 |
3,854 |
63.6 |
|
電源機器事業 |
16,688 |
60.4 |
15,083 |
70.2 |
|
合計 |
22,386 |
61.0 |
18,938 |
68.7 |
(注) 金額は販売価格によっております。
(c) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前期比(%) |
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半導体事業(百万円) |
7,902 |
97.0 |
|
電源機器事業(百万円) |
23,103 |
115.9 |
|
合計(百万円) |
31,005 |
110.4 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等に状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループの経営成績等の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績の状況
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売上高 |
310億5百万円 |
(前期 280億8千8百万円) |
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営業利益 |
34億7百万円 |
(前期 16億2千9百万円) |
|
営業利益率 |
11.0%(前期 5.8%) |
|
|
親会社株主に帰属する当期純利益 29億5千5百万円(前期 12億4千1百万円) |
||
セグメント別の経営成績の概況と前年同期からの増減の要因は、以下のとおりであります。
(a)半導体事業
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売上高 |
79億2百万円 |
(前期 81億4千6百万円) |
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営業利益 |
2億7千1百万円 |
(前期 5億1千万円) |
|
営業利益率 |
3.4%(前期 6.3%) |
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〔半導体事業利益増減要因〕
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売上減少による要因 |
▲2億9百万円 (為替変動による売上増加を控除) |
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限界利益率の良化による要因 |
6千9百万円 |
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固定費増加による要因 |
▲3億1千7百万円 |
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在庫の変動による要因 |
1億2千5百万円 |
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為替変動による要因 |
9千3百万円 |
売上高は、中国経済の景況感悪化及び顧客の在庫調整局面が下期より顕著となったことから前期より2億4千3百万円減少いたしました。セグメント利益は、価格改定の効果や為替の影響などの増益要因はありましたが、減収と固定費増加の影響をカバーできず、営業利益は前期より2億3千8百万円減少し2億7千1百万円となりました。
(b)電源機器事業
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売上高 |
231億3百万円 |
(前期 199億4千1百万円) |
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営業利益 |
31億3千5百万円 |
(前期 11億1千8百万円) |
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営業利益率 |
13.5%(前期 5.6%) |
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〔電源機器事業利益増減要因〕
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売上増加による要因 |
14億9千5百万円 (為替変動による売上増加を控除) |
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限界利益率の悪化による要因 |
16億9千7百万円 |
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固定費増加による要因 |
▲9億9千9百万円 |
|
在庫の変動による要因 |
6千7百万円 |
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為替変動による要因 |
▲2億4千3百万円 |
売上高は、大型案件(パワーコンディショナー評価用電源)の納入に加えて精密表面処理分野の需要伸長による表面処理用電源、各種小型組込み電源などが堅調に推移し、前期比31億6千1百万円の増収となりました。増収による影響に加えて比較的付加価値の高い製品の販売構成が増加したことから限界利益率が良化し、固定費の増加や為替影響による利益を押し下げる要因をカバーし、営業利益は前期より20億1千6百万円改善し、31億3千5百万円となりました。
② 当連結会計年度末の財政状態の分析
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ62億5千1百万円増加し、353億3千4百万円となりました。これは主に現金及び預金が18億6千5百万円、電子記録債権が27億1千万円、商品及び製品が8億9千2百万円それぞれ増加したことによるものです。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ28億8千3百万円増加し、109億1百万円となりました。これは主に短期借入金10億円、未払法人税等が6億5千5百万円それぞれ増加したことによるものです。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ33億6千7百万円増加し、244億3千2百万円となりました。これは主に利益剰余金が25億2千8百万円増加したことによるものであります。
この結果、連結自己資本比率は、前連結会計年度末の72.4%に対して当連結会計年度末では69.1%と3.3ポイント減少いたしました。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、成長投資の実行と安定的な事業運営を行うため、資金効率を向上させ、事業運営に必要な流動性と資本の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。資金の源泉は、主として営業活動によるキャッシュ・フローであり、必要に応じた金融機関からの調達などの調達手段を柔軟に検討してまいります。なお、当連結会計年度末での現金及び現金同等物の残高は58億2千5百万円であり、有利子負債残高として短期借入金が10億円があります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。
連結財務諸表の作成に際し、貸倒債権、棚卸資産、受注損失、固定資産、税効果会計、法人税等、退職給付債務、アフターサービス、偶発事象や訴訟等に関して判断を行い、継続して評価を行っております。なお、見積り及び判断は、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる要因に基づき行っており、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。」
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因
「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑥ 経営戦略の現状と見通し
「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(合弁会社の設立)
当社は、2023年12月26日開催の取締役会において、日東工業株式会社、株式会社FAプロダクツ、徳倉建設株式会社との共同出資により、合弁会社を設立することを目的として、株式譲渡契約書及び合弁契約書を同日付で締結することを決議し、当該決議に基づき株式譲渡契約書及び合弁契約書を締結いたしました。
1.株式取得の理由
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギーの導入が加速するなか、蓄電池をはじめとした分散型電源を有効的に活用する重要性、期待が益々高まっています。日東工業株式会社、株式会社FAプロダクツ、株式会社三社電機製作所、徳倉建設株式会社は、各社の保有する事業のなかで環境負荷低減に寄与する製品、サービスを進めておりましたが、統合的なエネルギーマネジメントを提供するために、4社のノウハウを集結した新たな価値を生み出す企業を立ち上げることで、お客様へより付加価値の高いサービスを提供することが可能と判断し、合弁会社を設立することといたしました。
2.合弁会社(新会社)の概要
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(1)名称 |
EMソリューションズ株式会社 |
|
(2)所在地 |
東京都港区 |
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(3)代表者の役職・氏名 |
代表取締役CEO 真野 貴明 |
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(4)事業内容 |
再生可能エネルギー導入のコンサルティング及び開発、施工、販売 |
|
(5)資本金 |
40百万円 |
|
(6)従業員数 |
23名 |
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(7)事業開始 |
2024年3月1日 |
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(8)出資比率 |
日東工業株式会社 50.1% 株式会社FAプロダクツ 20.0% 株式会社三社電機製作所 20.0% 徳倉建設株式会社 9.9% |
当社グループは「社会に価値ある製品を」を第一に掲げる経営理念のもと、新たに策定したパーパス「パワーエレクトロニクスと創造力で社会を前進させる。」を実践すべく生産活動に取り組んでおります。
マテリアリティは地球環境問題への対応、エネルギー問題、労働力問題の解決であり、長年培ったパワーエレクトロニクス技術により磨きをかけ、脱炭素に向けた電化推進や電力利用の高度化に貢献いたします。提供しようとする製品は電力用半導体デバイスと、それらを応用する各種電力変換機器並びにその制御システムであり、同領域のトップ技術集団として市場に向けた価値を提供してまいります。
当社グループが目指す姿は「Global Power Solution Partner(グローバル・パワー・ソリューション・パートナー)」であり、グローバルな視点を持って製品の開発にあたるとともに、顧客に寄り添い課題を解決できる技術開発を目指しております。電力用半導体製品の開発、電源機器システム製品の開発、並びに先行技術調査などを担当する技術企画グループで構成する研究開発体制とし、中期経営計画と連動した技術マスタープラン、ロードマップを策定しながら、新技術・新製品の先行調査を行います。半導体製品の開発グループでは、半導体チップのデザインをはじめ、モジュール商品の開発、そのプロセス技術開発を行い、電源機器製品の開発グループでは、電力変換技術、デジタル制御技術などを応用した小型から大型までの各種電源機器製品、個別受注製品の設計・開発を行っております。
電源機器と半導体の研究・開発グループが常に密接な情報交流機会を得ることで総合力を発揮し、再生可能エネルギー発電用パワーコンディショナーをはじめ、お客様の価値増大を実現する特徴ある製品開発を可能にしております。
業務提携先との技術交流も進みつつあり、双方のリソースを活用した新しい技術や商品開発についても検討を進めております。
当連結会計年度の研究開発費は
(1)半導体事業
(a) 大電力パワー半導体素子(パワーモジュール等)
各種インバーター機器の小型化並びに省エネルギーへの貢献が期待される、ワイド・バンド・ギャップ半導体SiC-MOSを搭載したパワーモジュールを開発し、製造・販売を開始いたしました。
SiCの特長である高温環境下での低損失性能を遺憾なく発揮できるトランスファ・モールド技術を採用したモジュールとなっており、電圧定格1200V、電流定格150Aのタイプは、自社の大容量電源にも搭載して電源設備の小型・高効率化に貢献、また高周波加熱分野でも多く採用が始まりました。ディスクリートタイプの製品も市場投入しており、さらに高電圧に対応できる1700V・電流定格300Aのモジュール製品もまもなく販売を開始いたします。
また、高い信頼性が要求されるインフラ用途のインバーター機器、エレベーターやサーボドライブ等に対応する各種サイリスタ、ダイオード等、高信頼性、低損失デバイスの開発・品揃えを図りつつあります。
(b) 環境負荷軽減対応技術開発
市場要求である環境負荷軽減への取り組みの一環として、半導体製品の完全鉛フリー化を推進しており、鉛フリーの製品比率を高めております。
従来RoHS指令の適用除外項目であった高温鉛はんだを含まない製造プロセスの研究や、各種モジュール製品の信頼性性能を高めつつ、鉛フリー化を実現する研究も継続的に実施しております。
半導体事業に係る研究開発費は
(2)電源機器事業
(a) 新エネルギー関連
電力の自由化や電力システムの改革が進むなか、社会全体として効率的なエネルギー利用に資するエネルギーインフラの基盤構築に向けて参画してきた経済産業省の「バーチャル・パワー・プラント(仮想発電所)構築実証事業」では、一定の効果が確認され、当社のエネルギーマネジメント技術のひとつとして蓄積されました。
再生可能エネルギーの普及拡大・事業化に向けたさまざまな課題への対応には引き続き取り組んでおり、電力系統に接続されるパワーコンディショナーや蓄電池などのエネルギー機器の性能や信頼性を評価するためのシミュレーター電源なども開発し、各研究機関や試験期間に納入しております。
SDGsにも「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」との目標が掲げられており、クリーンな電力の利用を拡大できるエネルギーマネジメント技術の確立を進めてまいります。
(b) エネルギー、インフラ関連
昨今多発する災害発生時に起こる停電対策として、事業継続計画(BCP)対応機能を有した蓄電池システムの開発を行っております。エネルギーの効率的運用・消費を行うピークカット/ピークシフト機能や、停電時に装置停止状態でもシステムが起動し、特定負荷に電源供給が可能となるコールドスタート機能等を搭載しています。
その他、装置の高効率化、小型化を目指した燃料電池用各種パワーコンディショナーの開発や、多数のパワーコンディショナーを系統に接続する際に、系統に悪影響を与える可能性を解消するための疑似同期発電機機能など系統連系技術の先行開発にも取り組んでおります。
(c) 生産設備関連
めっきなどの金属表面処理工程で使用される当社独自の直流電源装置は市場から絶大な支持を得ていますが、リリース中の新シリーズでは、電力変換効率を業界最高レベルにまで引き上げ、使用電力の削減を図っております。また、電子部品の生産に寄与する超高精細めっきに供する多出力型電源や高速PR(PR電解法めっき用)電源を開発し高精度で劣化のないメッキ工程を実現、グローバルに提供しております。
そのほか、多くの熱処理工程を安全かつ高精度に制御する当社の電力調整ユニットをモデルチェンジし、電気炉運転の信頼性を高めるとともに設置面積を削減いたしました。溶接機向け電源に関しては、国内や北米のお客様向けに競争力ある製品を投入し、溶接機電源事業の拡大を図ってまいります。
電源機器事業に係る研究開発費は