当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは1933年の創業以来、「経営理念」として次の3点を掲げて企業活動を行っております。
創業以来、パワーエレクトロニクスの分野において、社会が必要とする製品をメーカーとして真摯に提供し続けることを実践しております。当社グループは、産業用の用途とともに、社会インフラに欠かせない電力エネルギーを高効率に変換する技術を培い、パワー半導体並びに小型カスタム電源から大型電源機器までを開発・製造しております。当社グループは、これからの地球の未来を支える電気、その姿を効率よく、自在にカタチを変えることでクリーンエネルギー社会の実現に向け貢献してまいります。
当社グループは、中期のありたい姿を次のように掲げております。
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中期のありたい姿 : Global Power Solution Partner (グローバル・パワー・ソリューション・パートナー) ・創業以来の強みのパワーエレクトロニクス関連技術は世界トップレベルまで磨かれている ・パワーエレクトロニクス関連技術を武器にお客様の困りごとを徹底的に掘り起こし解決している ・目線はグローバル。全地球規模で事業を展開している ・誠実さと品質に対し抜群の信頼感を社会から得ている |
(2) 経営環境
カーボンニュートラルや脱炭素社会の実現に向けた取り組みが世界的に加速する中、企業には一層厳格な環境規制への対応や、再生可能エネルギーの導入拡大、エネルギー利用の最適化が求められています。日本国内でも、GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた政策が具体化しつつあり、電力インフラの強靭化やエネルギーマネジメントの高度化などが重要なテーマとなっています。また、世界的な電力需給のひっ迫やエネルギー価格の変動もあり、エネルギー効率を高める技術への期待が一段と高まっています。
こうした急速な事業環境の変化に対応するため、当社グループは、創業以来培ってきた電力損失を最適化する技術を活かし、電力使用時や蓄電時に発生するエネルギーロスを低減する革新的な電源回路を開発しております。この技術を活かし、脱炭素社会の実現に貢献するため、太陽光発電システム用パワーコンディショナーや蓄電システム用・燃料電池用インバーターなどの電源機器を開発しております。また、これらの電源機器を支えるコアデバイスとして、高電圧・大電流対応のパワー半導体や、次世代化合物パワー半導体(SiC)の開発にも注力しております。
当社グループは、「CF26」の中期経営計画のもと、これらの開発を加速させることで、脱炭素社会の実現に貢献するとともに、事業活動を通じて社会課題を解決し、持続的な成長と企業価値の向上を目指してまいります。
(3) 中期経営計画
[基本方針]
「自己資本利益率(ROE)10%以上」の実現のため、中期経営計画「CF26」(2025年3月期から2027年3月期)を策定し、「Global Power Solution Partnerの実現に向けた経営改革の3年」と位置づけ、戦略的投資と無形資産への投資により事業成長と収益性向上を目指しております。具体的には、カーボンニュートラルに貢献する製品開発や高性能デバイスの開発により省エネルギーと電力の安定供給に貢献し、顧客の付加価値を向上させるソリューション提供を行います。また、環境負荷の軽減や事業継続マネジメントの強化を通じてサステナビリティ戦略を推進し、投下資本を最大限に活用して株主資本コストを上回る自己資本利益率(ROE)を目指し、収益性と投下資本回転率の改善を図ります。さらに、株主還元の充実やコーポレート・ガバナンスの強化も推進してまいります。

(4) 中期経営計画の重点項目
① 半導体事業
SiC※製品は高効率な電力変換とCO2削減効果を持ち、その需要が急増しています。これらの高性能デバイスは省エネルギーと電力の安定供給に大きく貢献するため、これを基本として次の施策を推進いたします。
(a) 従来の建設関連、産業用設備に加えて新たにインフラ市場(モビリティ、再生可能エネルギー・蓄エネルギー、データセンターなど)に注力し、バランスの取れた業界戦略を目指す
(b) SiC製品の拡充と製品特性に基づく地域ごとの適切なグローバル展開
※ SiC(シリコンカーバイド)は、シリコンと炭素からなる化合物半導体です。従来のシリコン半導体に比べエネルギー効率の向上や小型化が期待されています。
② 電源機器事業
当社グループは持続可能な経営を重視し、カーボンニュートラルに貢献する製品開発や環境負荷の軽減に取り組
んでおります。これにより、社会課題への対応と顧客ニーズを両立させ、競争力を高めることを目指しております。特に、エネルギーマネジメント分野では系統安定化技術を駆使して、当社の地位をさらに強固にする施策を推進いたします。
(a) 新エネルギー分野の製品開発と表面処理用電源のグローバルシェア拡大
(b) 設計の標準化の取り組み
(c) 資本業務提携先との協業
(d) 小型電源で新たな市場を開拓(情報インフラ、急速充電器、半導体製造装置など)
③ サステナビリティ戦略
(a) 生産活動における環境負荷の軽減:地球環境への配慮を通じて、企業としての社会的な責任を果たすため、エネルギー効率を向上させ、CO2排出量を削減いたします。さらに、廃棄物の削減の推進、再生可能エネルギーの導入などを計画しております。
(b) ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進と人材育成:多様な背景を持つ人材を積極的に採用し、その能力や視点を活かすことで、イノベーションの源泉となることを目指します。また、教育や研修を通じて、従業員のスキルアップやキャリアの発展を支援いたします。これにより、企業全体の生産性向上や社員の満足度の向上を実現し、持続可能な人材育成を進めます。
(c) 事業継続マネジメント(BCM):災害や危機が発生した際でも、迅速かつ適切な対応を可能とし、企業のリスク管理と事業継続能力の向上を目指します。
④ 財務戦略
投下資本を最大限に活用し、株主資本コストを超える自己資本利益率(ROE)を達成することを目指します。顧客の付加価値向上に貢献することによる収益性の向上と投下資本回転率の改善が重要な目標であり、総資産営業利益率(ROA)の目標水準を達成することを目指します。さらに、株主還元の充実も重要な取り組みとしております。
(5) 当連結会計年度の取り組み
半導体事業:
・高電圧と大電流に対応できるため、従来よりも大きなエネルギーを効率的に扱うことができるSiC-MOSFETモジュール及びディスクリートを開発
電源機器事業:
・さまざまな種類・容量の蓄電デバイスの安全性や性能評価が可能なモジュール型蓄電池試験・評価用電源を開発
・大容量パワーコンディショナー系統連系シミュレーター電源装置開発
2024年3月に福島再生可能エネルギー研究所(FREA)に納入し、実証実験に活用されています。
・愛知県豊橋市の「豊橋マイクログリッド※」に蓄電池DC/DCコンバーター、太陽光発電用のDC/DCコンバーターなどを納入
※災害で広域停電が起こるような状況になったとき、小さな地域単位で電気の自給自足ができるようにするエネルギーシステム
サステナビリティ・経営基盤:
・CO2排出量削減目標達成に向けて以下の設備投資を実行
岡山工場と子会社社屋の屋上に太陽光発電設備を導入、本社空調設備をガスから電気へ
・「三社電機グループ人権方針」を策定
・次世代リーダー、管理職マネジメント強化のため外部研修を実施
・一般生成AIサービスの社内運用開始
(6) 次年度の重点施策
半導体事業:
・インフラ市場への販売拡大(特に再生可能エネルギー、新エネルギー分野)
・SiC製品の新規用途開拓(電鉄・モビリティ、再生可能エネルギー・新エネルギー、通信インフラ、サーボなど)とラインアップ拡充
電源機器事業:
・新エネルギー関連製品の開発
・表面処理用電源の用途開拓による販路拡大
・試験・評価用電源の拡販
・無停電電源装置(UPS)の販売強化
・オーダー品の標準化推進
・長期修繕契約の締結推進による受注拡大
サステナビリティ・経営基盤:
・サプライチェーンのCO2排出量(Scope3)の見える化
・生成AIを活用した社内業務の効率化推進
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 基本的な考え方
当社グループは、2023年4月に当社グループの存在意義・志として以下のとおりパーパスを制定いたしました。このパーパスに則り、事業を通じて社会課題解決に貢献することで、企業価値の向上と持続可能な社会の実現を目指します。また、当社グループの事業活動が社会や地球環境に与える影響に十分配慮して行動するとともに、ステークホルダーの皆様との信頼を築くように努めてまいります。
(2)ガバナンス体制
当社グループは、サステナビリティを巡る課題への取り組みは、中長期的な企業価値の向上の観点から経営の重要課題であると認識しております。基本的な方針は取締役会で決定し、具体的な取り組みは、経営企画会議で議論を行い、施策などの検討を行っております。各施策は、関連する委員会が横断的な連携を図りながら推進しております。
(3)リスク管理
企業を取り巻くリスクが多様化しているなか、当社グループの事業に伴うさまざまなリスクを明確にし、その発生防止に係る管理体制の整備、影響を最小限に抑えるための対応等に取り組みます。また、リスクが現実のものとなった場合には、経営トップの指揮のもと迅速・適切な対応を図ることを基本としております。
当社は、取締役社長を委員長とする内部統制委員会を設置しております。リスクマネジメント規程に基づき、内部統制委員会が会社の主要リスクの管理・対応に取り組んでおり、必要に応じて取締役会に報告する仕組みを構築しております。また、内部統制委員会は、各部門やグループ会社と連携し、リスクの洗い出し、リスク分析・評価、リスク軽減対策の検討と実行を行っております。さらに、専門委員会として全社品質会議、環境管理推進委員会、輸出管理委員会、情報セキュリティ委員会、安全衛生委員会、人材開発会議がそれぞれの分野におけるリスク管理に取り組んでおります。全社主要リスクとしては、自然災害リスク、コンプライアンスリスク、品質リスク、金融リスク、システムリスク、環境リスク、ビジネス戦略リスク、労務リスク、財務リスク、政治リスク、社会リスクが把握されており、それぞれのリスクに対する適切な対策を検討しております。
なお、個別のリスクについては、「
(4)戦略
[マテリアリティの取り組み]
当社グループは、ステークホルダーの関心度や影響度、当社グループの事業に直接関連する重要な要素を評価し、当社グループが優先的に取り組むべき7つのマテリアリティを特定いたしました。
なお、詳細については、当社ウェブサイトに掲載しています統合報告書「SanRex REPORT 2024」をご覧ください。
URL:https://www.sansha.co.jp/ir/integrated.html
① 脱炭素社会、環境保護に貢献
当社グループは、創エネ、蓄エネ、省エネに貢献できるパワー半導体技術と電力変換・制御技術を融合させ、パワーエレクトロニクス製品の創造に根差した技術並びに新製品の開発で成長してまいりました。一方で経営理念である「社会に価値ある製品を」の姿勢は不変であり、脱炭素社会の実現に向けて世界中が取り組むなか、当社グループとして新しい価値を提供することが重要であると考えております。
当社グループは、脱炭素社会の実現や環境負荷を低減する製品の設計・開発に積極的に取り組んでおりま
す。
[開発事例(エネルギーソリューション)]
創エネ分野:太陽光パワーコンディショナー、燃料電池用パワーコンディショナー、水素発生装置
蓄エネ分野:蓄電システム、充放電装置
省エネ分野:無停電電源装置、表面処理用電源、各種設備用電源、各種パワー半導体
② インフラ整備と産業発展に貢献
近年、地震や台風によって大規模かつ長期的な停電が発生し、企業活動に大きな損失をもたらしています。当社グループは、パワーエレクトロニクスの技術をベースにバックアップ電源を開発し、社会インフラを支えています。一方、国内トップシェアである表面処理用電源は、自動車・二輪車等の輸送機器、産業機械をはじめ、精密機器、コンピューターや通信機等の電子部品やプリント基板などのめっき加工に使用されており、産業の成長を支えてきました。今後もさらなる技術力で産業の成長を後押しいたします。
③ 安心・安全の提供とサービスの向上
当社グループのパワー半導体や電源機器は産業機器向け製品であり、お客様の生産工程の設備電源やインフラを支えるバックアップ電源など、お客様の産業機器に組み込まれて活躍しているため、高い品質と安全性が求められます。お客様に信頼・安心していただける品質を提供することはその先の社会貢献や地球環境保全に大きく関わることを常に意識しながら、品質向上への努力を重ねております。
さらに、大型の電源機器を長く安全にご使用いただくためには、日頃からの保守点検が不可欠であると考え
ております。当社グループは、保守点検や修理などのサポートまで、トータルソリューションの提供を加速させてまいります。
④ モノづくりと品質の強化
当社グループは、創エネ、蓄エネ、省エネに貢献すべく、電力変換技術、制御技術、パワー半導体技術の3
つの基幹技術を融合させ、産業用パワーエレクトロニクス市場向けの商品開発を手掛けております。創業以来、常に時代の要請に応え、高機能・高付加価値製品へ導いてきた軌跡は、さらなる技術の進化を呼び起こし、新しい時代を切り拓く原動力となっております。
[知財戦略]
当社グループは、経営理念「社会に価値ある製品を」のもと、エネルギー変換・制御技術と半導体技術を融合させた、付加価値の高いパワーエレクトロニクス製品の創出に取り組んでいます。とりわけ、次の10年を見据えた制御・回路・製造プロセス・半導体素子、さらに革新的な意匠などの発明を、重点的な技術領域として位置づけています。
2025年4月現在、当社の特許保有件数は国内137件、海外93件となっており、前年に比べてやや減少しております。これは、保有件数の量的拡大から、より戦略性と実用性を重視した“選択と集中”への転換を図っていることの表れです。特に重要な技術については、新たな知財の確立が着実に進んでおり、今後の製品開発・事業成長の中核を担う技術群として期待されています。また、「オンリーワン技術は知財で守る」という意識を組織全体に根づかせるべく、技術部門では若手から中堅社員を対象とした知財出願・活用強化プロジェクトを立ち上げました。現場からの自発的な発明提案や知財教育の充実を通じて、技術と知的財産の両輪での価値創出を加速させています。こうした取り組みは、変化の激しいグローバル環境下においても、当社の核である「お客様の期待を超える技術力」と「安心を提供する三社電機らしさ」の一層の強化につながるものと確信しております。
⑤ 生産活動における環境負荷の軽減
当社グループでは、地球環境の保全は「次世代への責務」と考え、事業活動による環境負荷の低減は最重要課題のひとつであると認識し、地球環境の保全活動を加速させております。
[推進体制]
当社グループは、環境保全活動を推進する体制として、環境統括責任者のもと、環境管理推進委員会を設置しております。環境保全活動に関わる取り組みは、環境管理推進委員会が立案し、経営企画会議で協議のうえ取締役会で決定しております。
環境管理推進委員会は、各事業所・各部の責任者で構成されており、品質環境企画室が事務局を担っております。
[CO2排出量削減の取り組み]
当社グループは、2030年までにCO2排出量(Scope1・2)を2013年度比で46%削減し、2050年にはカーボンニュートラルの実現を目指すことを目標としています。
当連結会計年度においては、2023年度と比較して約40.2%のCO2排出量削減(Scope1・2)を達成しました。この削減には、売上減少に伴う生産量の減少といった外的要因も一部含まれますが、当社自らの取り組みによる効果も確実に現れています。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
・岡山工場、子会社に太陽光発電設備を設置し、自家消費することで再生可能エネルギーを活用
・本社空調設備をガス設備から電気に転換
今後も、以下のような設備投資を含む継続的な取り組みを通じて、当社グループは中長期的な温室効果ガス排出削減目標の達成に向けて着実に歩みを進めてまいります。
・工場の空調設備を更新
・子会社建物・施設の照明LED化
・再生可能エネルギー電気の購入
Scope3における排出量は、当社グループの事業活動と関わりのある取引先や顧客等、バリューチェーン全体に関わるものであり、信頼性の高いデータの収集や、業務プロセスへの組み込みが求められます。当社グループとしても、脱炭素社会の実現に向けて、Scope3の把握は重要な課題であると認識しています。
当社は、サプライチェーン全体における温室効果ガス(GHG)排出量の可視化を進めるべく、Scope3の算定作業を段階的に進めています。2025年度には、特に排出量への影響が大きいと想定されるカテゴリ4(上流の輸送・配送)及びカテゴリ11(販売した製品の使用)について、調査・データ収集の実施と算出方法の整備(手順化)を予定しております。まずはこれらのカテゴリから算定を開始し、段階的に対象範囲の拡大と、算定手法やデータ収集プロセスについて定期的に見直しを行い、データの精緻化を図っていきます。
今後も引き続き、関係部門及び取引先との連携を深めながら、Scope3算定体制の構築と透明性の高い情報開示に取り組んでいきます。
⑥ ダイバーシティ推進と人材育成
[2030年の目指す姿]
当社グループは、経営理念のひとつに「社員に幸福と安定を」を掲げており、社員が幸福であることは、企業が成長発展するための最も重要な経営基盤のひとつと考えております。さらに、当社グループが持続的に成長するためには、「自ら考え行動する」人材が不可欠と考え、社員の主体性を引き出すことを大切に考えております。
「社員の成長が会社の成長につながる」という基本方針のもと、互いに磨きあい自らを高める組織風土と、活き活きと働ける職場づくりを推進し、社員の成長と会社の成長の同時実現を目指してまいります。
[基本的な考え方]
「ダイバーシティ」の推進については、人材の多様性を進めること自体を目的とするのではなく、多様性に富む人材が個々の能力を発揮できるような職場の構造・風土に転換することによって、市場対応力を高めガバナンスの健全化を図るといった組織にとってのメリットにつながることと認識し、社内の意識改革を進めております。特にグローバル事業を拡大していくにあたっては、性別、年齢、国籍、障がいの有無等に関わらない多様な考えや価値観を受け入れ、強みを活かすマネジメントが喫緊の課題であると考えております。また、さまざまなバックグラウンドを持つ人材を積極的に採用し、その能力や視点を活かすことで、イノベーションを促進したいと考えております。同時に、教育や研修を通じて、従業員のスキルアップやキャリアの発展をサポートいたします。さらに、階層別育成プログラムを含む人材育成体系を充実させ、人材基盤の強化を図ります。当社グループは、労務構成を踏まえた人員計画と採用計画に基づき、新卒採用と中途採用を継続的に行い、若手人材の早期育成と定着に向けた取り組みも行っております。加えて、資格取得を奨励するなど、人材育成に関する取り組みを実施しております。
[女性の管理職への登用]
ダイバーシティ&インクルージョン推進活動の意義や目的に対する従業員の理解が深まり、女性管理職候補が継続的に生まれる土壌と人材プールができあがることをゴールとし、2016年度より女性活躍推進活動を進めております。特に女性の活躍が非常に重要となるとの考えから、性別に関係なくチャレンジできる風土づくりに取り組んでいくとともに、女性管理職候補の育成のためのスキルアップ研修を実施するほか、その上司も含めた意識改革推進、活躍の場を広げるためのジョブローテーション実施など、さまざまな方向から女性社員の育成に取り組んでおります。KPIとしては、女性管理職の目標値を定め、継続的に育成を行っており、今後は、キャリア意識の啓発やマネジメントスキルの向上等、女性責任者登用を展望した取り組みを推進してまいります。
[グローバル人材の育成と登用]
海外における事業の拡大、新市場への成長投資のためにグローバル人材の育成と登用を積極的に進めてまいります。グローバル人材の育成として社員の意識をより海外に向けるために海外トレーニー制度を導入し、今後、若手を中心に積極的にグローバルな環境での経験機会を増やしてまいります。子会社では1名の外国人を役員として選任しており、外国人の管理職は、46名おります。また、支店では1名の外国人を支店長として登用しております。外国人については、管理職登用の目標値は現在設定しておりませんが、当社グループは、成長戦略における海外事業拡大に向けてグローバル人材の育成及び確保に向けた取り組みを行っており、今後も継続して取り組みを行う中で、目標設定についても検討してまいります。
[中途入社者の積極的採用と登用]
現社員における中途採用者比率は45.7%であり、管理職に占める比率は38.0%であります。中途採用者比率及びその管理職に占める比率は一定の水準を達していると判断しておりますが、今後も人材多様性の推進のために積極的にキャリア人材を採用していく方針であります。
[社内環境整備]
女性の活躍推進に向けて取り組みを継続してきた成果もあり、2021年「えるぼし」3つ星及び2022年「くるみん」認証を取得いたしました。育児休業制度は2歳到達までの取得を可能としており、短時間勤務は小学校卒業までに延長しています。男性の育児休業取得について2024年度の取得率は90%で、社内ホームページに男性の育児休業についてのコーナーを開設するとともに管理職向けeラーニングの実施、制度対象者への個別制度説明等、育児休業が取得しやすい環境づくりに継続して取り組んでおります。2025年からの一般事業主行動計画では、育児休業を取得しても中長期的に処遇上の差を取り戻すことが可能となる昇進基準や人事評価制度に取り組むこととし、プラチナくるみんの取得を目指しております。また、在宅勤務の要件を見直し、育児だけでなく、介護や傷病の際に働くことのできる環境を整備しました。その他、適正な労働時間管理や残業時間削減の取り組みを継続的に実施し、すべての社員が仕事と生活のバランスが取れた働き方ができるよう、引き続き環境整備を継続します。
[主な指標及び目標]
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項目 |
2025年3月期 実績 |
目指す姿 |
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中途採用者の採用・管理職比率 |
中途採用45.7%、管理職38.0% |
中途採用40%以上、管理職35%以上 |
(注)対象範囲:株式会社三社電機製作所
⑦ 事業継続マネジメント(BCM)の強化
災害や危機が発生した際でも、迅速かつ適切な対応を可能とし、企業のリスク管理と事業継続能力の向上を目指します。具体的には、近年、増加している自然災害やサイバーセキュリティの脅威に対処するため、リスク評価とビジネスインパクト分析の実施、BCMポリシーと計画の策定、意識向上とトレーニングを推進する計画であります。
経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のものがあります。文中の将来に関する事項は本有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において、当社グループが判断したものであります。
なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容については、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。
(1) 経済環境の変動によるリスク
当社グループは、経営理念のもと、パワーエレクトロニクスの分野に経営資源を集中・特化し、特にパワー半導体技術と電源機器技術の融合により、地球環境への負荷の軽減を最終的に目指して、エネルギーの効率使用、省エネルギー・省資源及びクリーンエネルギーの活用を実現する製品開発を行い、事業基盤の拡大に取り組んでおります。
当社グループは、特定の地域、産業に偏らない販売戦略をとっておりますが、貿易規制、関税の変動、伝染病や感染症によるパンデミック、経済状況の変化、民間設備投資動向やインフラ整備の動向に影響を受けるところが大きく、世界経済の景気後退や需要の縮小は、当社グループの受注高・受注価格に影響を及ぼす可能性があります。
このような経済環境の変動は、当社の管理可能な範囲を超えるものであり、回避することは困難ですが、販売先・仕入先・取引金融機関等からの情報をいち早く把握し、経営幹部による情報共有を徹底することで、社内において適切な対応策を講じるよう努めております。
(2) 事業リスク・戦略リスク
① 品質(製造物責任)
当社グループは、万一、製品に欠陥が発生した場合、多額のコストが発生する可能性があり、当社グループの評価に重大な影響を与える恐れがあります。その結果として、売上の減少など、業績に悪影響を及ぼすリスクも存在することを認識しております。
このようなリスクを未然に防ぐため、当社グループでは、品質環境企画室を中心に、製造・販売・技術部門が密接に連携し、開発段階から出荷に至るすべてのプロセスにおいて、製品の品質向上及び安定化に継続して取り組んでおります。
② 製品開発
当社グループは、お客様のニーズを的確に捉え、魅力的な製品をタイムリーにお客様に届けるよう、活動を強化しておりますが、開発の遅れやタイムリーな供給ができなかった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクを未然に防ぐため、当社グループでは、製品開発及び商品化の進捗状況について定期的に協議を行い、経営層と課題を共有することで、経営資源の適切な配分に努め、リスクの低減を図っております。
③ 他社との提携
当社グループは、販売拡大のため、優位性のある商品についてOEM供給や受託生産の形で、一部の事業分野において他社と共同で事業活動を行っております。しかしながら、経営環境の変化などにより、相手先企業の事情によって協業関係が継続できなくなる場合があり、その結果、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは、技術開発及び品質向上に継続して取り組むとともに、協業テーマごとに状況を確認し、必要に応じて協業関係の維持に向けた協議を行うことで、リスクの最小化に努めております。
④ 素材価格の変動
当社グループの電源機器事業では、銅、鉄鋼、樹脂等の素材を含む部品を多く使用しております。これらの素材価格が急激に変動した場合、引き合いから受注・引き渡しまでに一定の期間を要することから、製品価格への転嫁が遅れ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは、コストダウンや生産性向上、経費圧縮などの取り組みに加え、製造リードタイムを踏まえたうえで、素材価格の変動に応じてお客様との価格交渉を適時に行うことにより、適正な利益の確保に努めております。
⑤ 部品調達
当社グループの製品には、社外から調達する電子部品等が数多く使用されておりますが、車載向け部品などの需要増加により、調達リードタイムが長期化し、必要な部品を適時に確保できなくなる可能性があります。また、一部の部材は海外から調達しており、各国の通関政策の影響を受けて調達が困難になる可能性もあります。さらに、テロや地域紛争、国際関係の悪化による治安・情勢不安に起因する運輸リスク、原油価格の高騰による輸送コストの上昇、コンテナ需給の逼迫による輸送遅延・輸送コストの上昇など、多様な外部要因によるリスクも想定されます。
このようなリスクに対し、当社グループでは、主要部品に関する代替調達先の検討や、複数の仕入先の選定、国内外における新たな調達先の開拓を継続的に進めております。また、部品ごとのリードタイムの変化を常に注視し、必要に応じて先行手配を行うなど、サプライチェーンの寸断による影響を最小限に抑えるべく対策を講じております。
⑥ 設備投資
当社グループは、新製品の開発や生産能力の拡大、製品の競争力維持のために設備投資を行っておりますが、設備投資に対して製品需要が想定を大きく下回った場合、過剰な減価償却費の負担が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは、設備投資の実施にあたり、投資効果の前提条件を明確化するとともに、投資金額や規模の妥当性について継続的な検証を行い、適切な検討・承認手続きを通じてリスクの回避に努めております。
⑦ 生産委託先(外注先)の経営状況変動
当社グループは、半導体製品の組み立て工程や電源機器製品の生産を外注先に委託している場合がありますが、生産委託先の経営状況の変動により、外注コストの増加や販売に必要な生産数量の確保ができなくなる可能性があります。リスクが顕在化した場合や外注先の倒産等予期せぬ事態が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは、生産委託先との連携を図り経営状況の変化を早期に把握するとともに、生産委託先の見直しを適宜行い、リスクを最小限に抑えるよう努めております。
⑧ 国際情勢
当社グループは、中期経営計画のテーマの一つとして、積極的なグローバル展開を推進しており、販売拠点及び生産拠点を海外に展開しており、地政学的リスク及びカントリーリスクへの対応が求められます。特に戦争、暴動、テロ、伝染病・感染症の流行などによる社会的混乱、また、地震や台風などの自然災害が発生した場合には、原油価格高騰に伴う輸送コストの上昇、現地工場の操業停止、債権回収不能など、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。さらに、各国における関税率の変動は、当社製品の価格競争力に影響を及ぼし、販売実績が下振れるリスクにつながるおそれがあります。
このようなリスクに対し、当社グループでは、海外営業統括部及び海外子会社を通じて、各国・地域における政治・経済状況、社会情勢、文化・宗教、法制度・規制等に関する情報収集を行い、案件ごとにリスクの回避策を講じるなど、リスクの最小化に努めております。関税の変動については、価格転嫁、サプライチェーンの見直しや再構築などに取り組んでまいります。
⑨ 競合及び価格動向
当社グループの製品は、国内外において他社との競争にさらされております。継続的な技術革新やコスト削減等に取り組んでいるものの、予想以上に価格競争が激化した場合、販売価格の下落により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは、継続的な開発投資と品質向上に加え、原材料の現地調達率の向上や生産コストの削減、保守サービス対応力の強化などを通じて、競合他社との差別化に取り組んでおります。また、製品ポートフォリオの見直しを常に行い、当社の強みが発揮できる分野に経営資源を集中することで、価格競争に陥ることなく収益の確保を目指しております。
⑩ 知的財産
当社グループは、知的財産を競争力の源泉であり、経営資源の中でも最も重要なものの一つと位置づけており、その権利化、適切な管理及び活用を通じて、企業価値やブランド価値の維持・向上を図っています。グローバルに事業を展開する中で、当社グループの知的財産権が侵害される可能性があり、そのような場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このため当社グループでは、模倣品に関する情報を継続的に収集するとともに、必要に応じて製造・販売の差止めを求める訴訟提起など、適切な対応策を講じています。
また、万一当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償請求や対価の支払等が発生し、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
こうしたリスクを未然に防ぐため、当社グループは、製品開発段階において事前調査を実施し、第三者の知的財産権を侵害しないよう細心の注意を払っております。
(3) 経営基盤に関するリスク
① コンプライアンスリスク
当社グループは、国内外で事業を展開しており、輸出貿易管理令、不正競争防止法、贈収賄防止法、建設業法など、多岐にわたる法令・規制を遵守する必要があります。これらに違反する行為や、その疑いを持たれる行為が発生した場合には、課徴金や損害賠償の請求、営業活動の中断、社会的信用の低下、株価の下落など、当社グループの事業運営や財務状況に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは、法令に準拠した社内規程の整備・運用、内部統制システムの構築及び定期的な評価、経営層によるコンプライアンスの発信、eラーニングや研修を通じた従業員の意識向上、内部通報制度の整備と適正な運用などにより、法令遵守体制の維持・強化に努めております。
② 情報セキュリティにおけるリスク
当社グループは、事業を通じてお客様や取引先の個人情報や機密情報を入手することがあり、これらの情報はサイバー攻撃等による不正アクセスや改ざん・破壊、紛失、漏洩等のリスクにさらされています。また、想定を超えるサイバー攻撃や人為的ミス、盗難等が発生した場合には、情報の流出、破壊、改ざん、あるいは情報システムの停止等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応し、当社グループでは、グループ全体でのセキュリティ強化、委託先の適切な管理、従業員への教育などを通じて、情報管理体制の整備・強化に取り組んでおります。
③ 人材確保
当社グループが競争力を維持し、将来にわたり発展していくためには、優秀な人材を継続的に確保することが不可欠です。しかしながら、近年の日本における生産年齢人口の減少を背景に、有能な人材の獲得競争は一層激化しており、必要な人材を確保できない場合には、事業の拡大に支障をきたし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは、雇用制度や教育訓練制度の充実を図り、人材の確保と育成に継続して取り組んでおります。さらに、教育機会の整備を通じて付加価値創造型の人材を育成するとともに、DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速によって一人当たりの生産性を向上させることで、事業拡大と業績への影響の最小化に努めてまいります。
(4) 環境リスク
① 法的規制
当社グループは、当社及び子会社、並びに代理店を通じて海外で製品を販売しておりますが、欧州のRoHS指令(特定有害物質の使用規制)や中国版RoHS指令など、各国・地域の法的規制の影響を受けます。これらの規制を遵守できなかった場合や、将来的な法改正により対応コストが増加し、十分な対応が困難となった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクを未然に防ぐため、当社グループでは、法令に適合した品質管理基準に基づき品質管理を実施するとともに、品質環境企画室を中心に関連部門と連携し、国内外の法的規制に関する情報を継続的に収集し、迅速かつ適切に対応できる体制の整備に努めております。
② 化学物質管理
当社グループは、生産活動において多数の化学物質を使用しており、万一、社外への流出事故が発生した場合には、社会的信用の失墜や補償・対策費用の発生、生産活動の停止などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。
こうしたリスクを未然に防ぐため、当社グループは、品質環境企画室が中心となって国内外の法的規制に関する情報を継続的に収集するとともに、社内関係部門及び生産委託先を含む全関係者が連携し、法規制の遵守と事故防止策の徹底に取り組んでおります。また、標準書・手順書に基づいた万全の対策を講じることで、リスクの最小化に努めております。
③ その他の環境規制・気候変動関連等
当社グループは、廃棄物削減、大気汚染防止、水質汚濁防止などの環境規制の適用を受けております。また、温室効果ガスの排出削減に向けた取り組みが全世界的に強化されております。そのため、当社グループは、地球環境の保全は「次世代への責務」と考え、環境負荷の低減を最重要課題のひとつとして多くの経営資源を投入し、環境整備に努めております。しかしながら、事故や自然災害より不測の環境汚染が生じる場合、また、予期しない規制等が設けられ、対応が遅れた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
生産活動における環境負荷の軽減については、「サステナビリティに関する考え方及び取組」の欄にて、具体的推進体制を記載しております。
(5) 金融リスク
① 為替レートの変動
当社グループの生産活動、営業活動及び調達活動は、全世界を対象にしております。そのため、可能な範囲での地産・地消などで為替のバランスを図ることに努めておりますが、差額として生じた外貨建債権債務については、為替相場の変動によるリスクをヘッジする目的で、常時為替予約等で対策を講じております。
しかし、為替予約、為替バランスを図ることにより為替相場変動の影響を緩和することは可能であっても、影響を全て排除することは不可能であり、業績に少なからず影響を及ぼす可能性があります。
また、各主要市場に販売子会社を設立しているため、連結財務諸表作成上、各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は円換算しており、換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨の価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受け、業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 金利の変動
当社グループは、金利の変動リスクを回避するための対策を講じておりますが、金利の変動は、業績に影響を及ぼす可能性があります。このため、有利子負債による資金調達を必要最小限に止めることで、リスクの回避に努めてまいります。
(6)財務リスク
① 長期性資産の減損
当社グループは、多額の有形固定資産等の長期性資産を保有しております。これら長期性資産の連結貸借対照表計上額については、当該資産から得られる将来キャッシュ・フローにより残存価額を回収できなくなることの兆候を継続的にモニタリングしております。
将来キャッシュ・フローが回収できないと判断される場合には、減損を認識しなければならない可能性があります。
当社グループでは、こうしたリスクの兆候が認められた際には、各資産から得られるキャッシュ・フローの改善策について事前に十分に協議し、適切な対策の検討をしてまいります。
② 退職給付債務
当社グループは、日本の会計基準に従い、退職給付債務を処理しております。しかし、退職給付費用及び退職給付債務等の計算に関する事項(割引率、長期期待運用収益率等)で、実際の結果が前提条件と異なる場合、前提条件が変更された場合及び今後年金資産の運用環境の悪化があった場合は数理計算上の差異が発生いたします。これらの場合、退職給付費用及び計上される債務に影響を及ぼす可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について将来の回収可能性を十分に検討し、回収可能な額を計上しております。しかし、今後、経営状況の悪化などにより、一時差異等が将来の課税所得で回収できないと判断された場合には、法人税等調整額が増加し、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、当社グループでは成長性と収益性の向上を常に意識し、事業収支の安定(計画収支の実現)に全社をあげて取り組むことが最も重要であると考えております。
④ 会計制度、税制等の変更
当社グループが、予期せぬ会計基準や税制の新たな導入・変更により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、税務申告における税務当局との見解の相違により、予想以上の税負担が生じる可能性があります。
当社グループとしては、適時に専門家より制度改正に関する情報を入手し、適切な対応に努めてまいります。
(7)自然リスクやパンデミック
当社グループの製造拠点、営業拠点等が地震等の自然災害により多大な損害を受けたり、伝染病や感染症によるパンデミック等で通常の事業活動が困難となった場合、工場の操業停止や配送遅延が生じる可能性があります。また、当社グループが直接的に損害を受けなくても、お客様や取引先が損害を受けることにより生産・物流・販売等が計画どおりに実行できない可能性があります。
当社グループでは、地震災害発生時の迅速な初期対応及び業務の早期復旧を図るため、安否確認システムの導入、防災訓練の実施、事業継続計画(BCP)の策定を行っております。しかしながら、実際に災害が発生した場合には、当社グループの生産拠点での操業の中断、施設等の損害、多額の復旧費用が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
事業継続マネジメントについては、「サステナビリティに関する考え方及び取組」の欄にて、具体的推進体制を記載しております。
(1)経営成績等の状況
① 財政状態及び経営成績の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における世界経済は、北米地域は概ね堅調に推移した一方で、中国経済は不動産市況の低迷が続きました。さらに中東情勢などの地政学リスクが経済全体に影響を及ぼしています。国内においては、物価上昇やエネルギー価格の高止まり状態が続いています。また、米国による関税政策は世界全体で景気後退の懸念を引き起こしており、先行きへの不透明感は一層強まっています。これに伴い、当社事業の成長に関連深い民間設備投資は、生産活動に向けた投資が年間を通して慎重さが増し、厳しい状況で推移いたしました。
このような状況の中、当社グループは当連結会計年度から2027年3月期までの中期経営計画「CF26」をスタートいたしました。「CF26」は当社グループのパーパス「パワーエレクトロニクスと創造力で、社会を前進させる。」に基づき、ビジョン「Global Power Solution Partner」の実現に向けて、事業戦略、サステナビリティ戦略、財務戦略の3つの柱を掲げております。カーボンニュートラルの実現に向けた新製品開発の企画、国内外のパートナーとの連携強化、製品設計の標準化など、様々なテーマについて、初年度として進捗を見せておりますが、その成果が業績に表れるには時間を要するものも多く、当連結会計年度の半導体事業及び電源機器事業はそれぞれの事業環境が業績に影響を与える結果となりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は254億4千万円(前期比17.9%減少)となりました。営業利益は10億7千3百万円(前期比68.5%減少)、経常利益は11億8千万円(前期比66.0%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は5億2百万円(前期比83.0%減少)となりました。
[セグメント別の状況]
(a) 半導体事業
当事業におきましては、ユーザーの在庫調整が長期化していることなどから、受注は年間を通じて低水準で推移する厳しい状況が続き、大幅な減収となりました。特にパワーモジュールは、汎用インバーター向けやエレベーター向けなど、全般的に需要が減少したことで減収幅が大きくなりました。また、民生用を中心とするパワーディスクリートについても減収となりました。地域別では、国内外ともに減収となりましたが、特に国内は半導体不足が影響し、急速に需要が増加した時期の反動が減収幅を拡大させました。
以上の結果、当セグメントの売上高は58億6千2百万円(前期比25.8%減少)となりました。セグメント利益は、経費の削減に取り組んでまいりましたが、大幅な減収及び製品構成の変化による収益性低下による減益をカバーできず、7億3千1百万円の損失(前期は2億7千1百万円の利益)となりました。
(b) 電源機器事業
当事業におきましては、前連結会計年度に販売した大型特殊案件の大容量パワーコンディショナー評価用シミュレーター電源の規模に代わる案件がなかったことに加え、国内は主力の表面処理用電源において電子部品向けやプリント基板向けの需要減速を背景に高精度表面処理用が落ち込み、また、医療機器向けや通信機器向けの小型組み込み電源についても減収となるなど、全般的に低調に推移いたしました。一方、海外では、アジア地域を中心に前期比で増収となったものの、国内の減少分をカバーするには至りませんでした。
以上の結果、当セグメント全体の売上高は195億7千8百万円(前期比15.3%減少)となりました。セグメント利益は当社の技術力を活かした付加価値の高い案件が増加し、案件ごとの収益性改善に注力してまいりましたが、大幅な減収の影響が大きく、18億5百万円(前期比42.4%減少)となりました。
② 財政状態の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態の概要は次のとおりであります。
|
総資産 |
335億7千1百万円 |
(前年同期差▲17億6千2百万円) |
|
流動資産 |
249億円 |
(前年同期差▲24億9千3百万円) |
|
現預金 |
57億6千万円 |
(前年同期差▲ 6千4百万円) |
|
売上債権 |
95億1千8百万円 |
(前年同期差▲29億2千1百万円) |
|
在庫 |
88億2千2百万円 |
(前年同期差▲ 5千1百万円) |
|
その他資産 |
8億2千1百万円 |
(前年同期差+5億3千6百万円) |
|
固定資産 |
86億7千1百万円 |
(前年同期差+ 7億3千万円) |
|
総負債 |
92億3千万円 |
(前年同期差▲16億7千1百万円) |
|
仕入債務 |
22億2千1百万円 |
(前年同期差▲20億3千4百万円) |
|
その他負債 |
70億9百万円 |
(前年同期差▲3億6千3百万円) |
|
純資産 |
243億4千1百万円 |
(前年同期差▲ 9千1百万円) |
主な変動要因は以下のとおりとなります。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ17億6千2百万円減少し、335億7千1百万円となりました。これは主に仕掛品が4億5千1百万円増加したものの、電子記録債権が26億5百万円減少したことによるものです。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ16億7千1百万円減少し、92億3千万円となりました。これは主に短期借入金が20億円増加し、支払手形及び買掛金が19億5千1百万円、未払法人税等が8億1千4百万円それぞれ減少したことによるものです。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ9千1百万円減少し、243億4千1百万円となりました。これは主に利益剰余金が1億6千8百万円減少し、退職給付会計に係る調整累計額が1億8千2百万円増加したことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における当社グループのキャッシュ・フローの概要は次のとおりであります。
|
営業キャッシュ・フロー |
9億5千万円 |
(前年同期差▲13億5千2百万円) |
|
投資キャッシュ・フロー |
▲23億9千2百万円 |
(前年同期差▲12億9千4百万円) |
|
財務キャッシュ・フロー |
14億1千万円 |
(前年同期差+9億2千2百万円) |
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、57億5千6百万円となり、前連結会計年度に比べ6千8百万円の減少となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動においては9億5千万円の収入(前期は23億3百万円の収入)となりました。
これは主に売上債権の減少28億9千7百万円が増加要因として寄与したものの、減少要因として仕入債務の減少20億1千8百万円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動においては23億9千2百万円の資金の支出(前期は10億9千7百万円の支出)となりました。
これは主に有形固定資産の取得による支出20億1千8百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動においては14億1千万円の資金の収入(前期は4億8千8百万円の収入)となりました。
これは主に増加要因として短期借入金の増加が20億円あったものの、減少要因として配当金の支払による支出6億7千万円があったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の状況
(a) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前期比(%) |
|
半導体事業(百万円) |
4,687 |
76.0 |
|
電源機器事業(百万円) |
17,003 |
77.4 |
|
合計(百万円) |
21,690 |
77.1 |
(注) 金額は販売価格によっております。
(b) 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注金額 (百万円) |
前期比(%) |
受注残高 (百万円) |
前期比(%) |
|
半導体事業 |
5,190 |
91.1 |
3,183 |
82.6 |
|
電源機器事業 |
17,739 |
106.3 |
13,245 |
87.8 |
|
合計 |
22,930 |
102.4 |
16,428 |
86.7 |
(注) 金額は販売価格によっております。
(c) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前期比(%) |
|
半導体事業(百万円) |
5,862 |
74.2 |
|
電源機器事業(百万円) |
19,578 |
84.7 |
|
合計(百万円) |
25,440 |
82.1 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループの経営成績等の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績の状況
|
売上高 |
254億4千万円 |
(前期 310億5百万円) |
|
営業利益 |
10億7千3百万円 |
(前期 34億7百万円) |
|
営業利益率 |
4.2%(前期 11.0%) |
|
|
親会社株主に帰属する当期純利益 5億2百万円(前期 29億5千5百万円) |
||
セグメント別の経営成績の概況と前年同期からの増減の要因は、以下のとおりであります。
(a)半導体事業
|
売上高 |
58億6千2百万円 |
(前期 79億2百万円) |
|
営業利益 |
▲7億3千1百万円 |
(前期 2億7千1百万円) |
|
営業利益率 |
▲12.5%(前期 3.4%) |
|
〔半導体事業利益増減要因〕
|
売上減少による要因 |
▲12億1千2百万円 (為替変動による売上増加を控除) |
|
限界利益率の悪化による要因 |
▲2億9千1百万円 |
|
固定費減少による要因 |
4億3千1百万円 |
|
在庫の変動による要因 |
1千7百万円 |
|
為替変動による要因 |
5千1百万円 |
売上高は、主要な用途での顧客の在庫調整局面が長期化し、需要減速が年間を通じて継続したことから前期より20億4千万円減少いたしました。セグメント利益は、減収に加え機種構成の変化から限界利益額が減少し、固定費削減等の取り組みの効果でカバーできず、営業利益は前期より10億3百万円減少し▲7億3千1百万円の赤字となりました。
(b)電源機器事業
|
売上高 |
195億7千8百万円 |
(前期 231億3百万円) |
|
営業利益 |
18億5百万円 |
(前期 31億3千5百万円) |
|
営業利益率 |
9.2%(前期 13.5%) |
|
〔電源機器事業利益増減要因〕
|
売上減少による要因 |
▲19億6千4百万円 (為替変動による売上増加を控除) |
|
限界利益率の良化による要因 |
6億5千4百万円 |
|
固定費減少による要因 |
2億2千万円 |
|
在庫の変動による要因 |
▲1億1千2百万円 |
|
為替変動による要因 |
▲1億2千8百万円 |
売上高は、前期と同規模の大型案件はなく、またパソコンなどの需要減速により主力の精密金属表面処理用電源の需要が減速し、加えて、各種小型組込み電源などが前期と比較すると販売が減少いたしました。これらの結果、売上高は、前期比35億2千4百万円の減収となりました。顧客のニーズに対応し、付加価値を訴求することで限界利益率は良化し、また固定費の削減も実現しましたが、減収による影響をカバーできず、営業利益は前期より13億3千万円減少し、18億5百万円となりました。
② 当連結会計年度末の財政状態の分析
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ17億6千2百万円減少し、335億7千1百万円となりました。これは主に仕掛品が4億5千1百万円増加したものの、電子記録債権が26億5百万円減少したことによるものです。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ16億7千1百万円減少し、92億3千万円となりました。これは主に短期借入金が20億円増加し、支払手形及び買掛金が19億5千1百万円、未払法人税等が8億1千4百万円それぞれ減少したことによるものです。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ9千1百万円減少し、243億4千1百万円となりました。これは主に利益剰余金が1億6千8百万円減少し、退職給付会計に係る調整累計額が1億8千2百万円増加したことによるものであります。
この結果、連結自己資本比率は、前連結会計年度末の69.1%に対して当連結会計年度末では72.5%と3.4ポイント増加いたしました。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、成長投資の実行と安定的な事業運営を行うため、資金効率を向上させ、事業運営に必要な流動性と資本の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。資金の源泉は、主として営業活動によるキャッシュ・フローであり、必要に応じた金融機関からの調達などの調達手段を柔軟に検討してまいります。なお、当連結会計年度末での現金及び現金同等物の残高は57億5千6百万円であり、有利子負債残高として短期借入金が30億円あります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。
連結財務諸表の作成に際し、貸倒債権、棚卸資産、受注損失、固定資産、税効果会計、法人税等、退職給付債務、アフターサービス、偶発事象や訴訟等に関して判断を行い、継続して評価を行っております。なお、見積り及び判断は、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる要因に基づき行っており、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因
「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑥ 経営戦略の現状と見通し
「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社グループは、「社会に価値ある製品を」を経営理念に掲げ、パーパスである「パワーエレクトロニクスと創造力で社会を前進させる。」の実現に向けて、生産活動及び研究開発に取り組んでおります。また、地球環境問題やエネルギー問題への対応、さらには人々の暮らしを支えるインフラ整備と産業の発展を、マテリアリティとして位置付けております。これらの課題解決に向けて、長年にわたり培ってきたパワーエレクトロニクス技術をさらに発展させ、脱炭素社会の実現に不可欠な電化の推進や電力利用の高度化に貢献してまいります。
当社グループが提供するのは、電力用半導体デバイス、これらを応用した各種電力変換機器、そしてそれらを制御するシステムです。これらの分野において高度な専門性を有する技術集団として、今後も市場に向けて持続的に高付加価値な製品を提供し、社会への貢献を果たしてまいります。また、「Global Power Solution Partner(グローバル・パワー・ソリューション・パートナー)」を目指し、グローバルな視点で製品開発を推進しております。お客様のニーズに寄り添い、それぞれの課題に対する最適なソリューションを技術で実現することに注力してまいります。
研究開発体制は、電力用半導体製品、電源機器システム製品の開発、さらには先端技術の調査を担う技術企画グループを中心に構成されており、中期経営計画と連動した技術マスタープラン及びロードマップに基づき、新技術・新製品の企画・開発を進めております。
半導体開発グループでは、半導体チップの設計、モジュール製品の開発、及びプロセス技術の開発を行っております。一方、電源機器開発グループでは、電力変換技術やデジタル制御技術を応用し、小型から大型まで幅広い標準電源機器開発及び個別受注製品の設計・開発にも取り組んでおります。両開発グループ間では常に密接な情報共有を行い、連携を深めることで、再生可能エネルギー向けパワーコンディショナーなど、顧客価値を高める特徴ある製品の開発を可能にしております。
さらに、業務提携企業様との技術交流も進展しており、双方のリソースを活用した新たな技術・製品開発についても推進しております。
なお、当連結会計年度における研究開発費は
(1)半導体事業
(a) 大電力パワー半導体素子(パワーモジュール等)
半導体製品として、新たに高性能なSiC-MOSFETモジュールの製造・販売を開始いたしました。本製品は、「ワイド・バンド・ギャップ半導体」と呼ばれる次世代技術を採用しており、高電圧への対応を可能とする設計がなされています。具体的には、定格電圧1,700V、定格電流300Aと、大電力を必要とする各種設備に適した仕様となっております。特に高周波加熱分野において導入が進んでおり、設備の小型化及び高効率化に寄与しています。
また、ディスクリートタイプにおいても、高速動作が可能な絶縁型SiC製品を新たに開発いたしました。この製品は、半導体製造装置や高稼働率が求められる産業機器への応用が期待されています。
さらに、エレベーターやサーボドライブなど、信頼性が特に重視されるインフラ分野に向けて、各種サイリスタやダイオードを含む、高信頼性かつ低損失のパワーデバイスの開発・製品ラインアップの拡充も推進しております。
(b) 環境負荷軽減対応技術開発
当社グループは、市場からの要請である環境負荷の低減に応えるべく、半導体製品の完全鉛フリー化を推進しており、鉛フリー製品の比率を着実に高めております。
特に、これまでRoHS指令において適用除外とされていた高温鉛はんだを用いない製造プロセスの研究に取り組むとともに、各種モジュール製品においては信頼性性能を維持・向上させながら鉛フリー化を実現するための技術開発を継続的に進めております。
半導体事業に係る研究開発費は
(2)電源機器事業
(a) 新エネルギー関連
脱炭素社会の実現に向け、最も柔軟性の高いエネルギー形態である電力の需要は今後ますます高まることが見込まれます。こうした中、再生可能エネルギー由来の電力を変換し、安定的かつクリーンな電源として提供するパワーコンディショナー技術は、極めて重要な役割を果たしております。当社グループが長年にわたり培ってきた電力変換技術に対する市場からの期待も一層高まっています。
当社グループが注力する技術領域としては、電力系統の安定性を支える蓄電池用パワーコンディショナー、並びに再生可能エネルギー由来の電力を水素として一時的に貯蔵可能とする水素発生装置の開発が挙げられます。これらの製品は、電池メーカーや各種設備企業との協業により、順次市場への導入を進めております。
また、SDGsの目標の一つである「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」にも合致する形で、クリーンな電力の利用拡大を実現するためのエネルギーマネジメント技術の研究開発にも継続的に取り組んでまいります。
(b) エネルギー、インフラ関連
大規模災害の増加に伴い、停電対策や事業継続計画(BCP)に対応可能な蓄電池システムの重要性が高まっています。加えて、エネルギーの効率的な運用や、再生可能エネルギーを社会インフラとして活用するための仕組みづくりが国内外で進展しており、多くの実証プロジェクトが稼働しています。
当社グループにおいても、装置の高効率化及び小型化を目指し、蓄電池用インバーターや燃料電池用インバーターなど、各種パワーコンディショナーの開発を推進しております。これらの装置はメガワット級の容量にも対応可能であり、特に制御技術においては、高度な信頼性と性能を実現しております。さらに、電源系統に各種発電機器を接続した際の安定性確保に資する「仮想同期発電機制御(VSG:Virtual Synchronous Generator)」の実装も可能としています。
また、再生可能エネルギーの普及拡大及び事業化に向けた諸課題への対応として、電力系統に接続されるパワーコンディショナーや蓄電池などのエネルギー機器に対する性能・信頼性評価を行うためのシミュレーター電源も開発しており、研究機関や試験機関への納入を進めております。
(c) 生産設備関連
当社グループの直流電源装置は、めっきなどの金属表面処理工程において高い評価を受けており、市場から絶大な支持を獲得しております。近年では、電力変換効率を業界最高レベルまで高めた新シリーズを投入し、さらなる高効率化を各シリーズへと展開することで、使用電力の削減を推進しております。また、電子部品の製造工程における超高精細めっき用途に向けて、高速PR(PR電解法)電源や高速パルスめっき電源を開発し、劣化のない高精度なめっき工程の実現に貢献しています。これらの電源は、グローバル市場においても提供を進めており、世界各国のニーズに対応しております。
さらに、多くの加熱工程において安全かつ高精度な制御を実現する電力調整ユニットについてもモデルチェンジを行い、電気炉の運転信頼性を高めるとともに、省スペース化を実現いたしました。現在は、大電力用途への展開に向けた開発も進行中です。加えて、溶接機向け電源においては、国内市場に加えて北米市場にも競争力のある製品を投入し、溶接機電源事業の拡大を図っております。
電源機器事業に係る研究開発費は