第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、創業以来『開拓・創造・実践』の企業理念のもと、独自の革新的、創造性に富んだ高い技術・開発力を背景に、「コネクタ事業」「インターフェース・ソリューション事業」「航機事業」の3つの事業をグローバルに展開し、発展してまいりました。

“Technology to Inspire Innovation”「当社の開発する技術が、お客様の独創的な商品開発に新しい扉を拓きます。」をグローバルスローガンとして、お客様のイノベーション実現を加速する技術開発・ものづくりに注力しております。そして、世界のお客様からパートナーとしての高い信頼をいただくため、「連結経営を基軸としたグローバルな事業展開」「グローバルマーケティングと技術開発力の強化」「品質・ものづくりの革新」を経営の基本方針として推進しております。

そして航空電子グループ企業行動憲章に基づいて、良き企業市民として、関係法令を遵守し、お客さま、株主・投資家の皆様、取引先、地域社会をはじめとした関係者に対する社会的責任を果たすことを目指します。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループが置かれている事業環境は、デジタル化、リモート化の加速、世界的な脱炭素化への流れ、5G(第5世代移動通信システム)の進展など、社会や市場が大きく変化しております。当社グループが注力する市場においても、自動車市場における電装化の一層の加速、産業・インフラ市場でのスマート工場やFA・工作機械のネットワーク化の進展が見込まれるとともに、携帯機器市場においても5G化によるスマートフォンの機能進化による需要のほか、ウェアラブル機器やVR(仮想現実)・AR(拡張現実)機器の普及も期待されるなど、各市場において大きな変化が見込まれます。

こうした環境の中で、当社グループは、「5Gでつながる環境にやさしい次世代モビリティ・IoT社会」の実現に向けて、当社の持つ製品や技術開発力によって、事業を通じて社会に貢献し、企業として成長していくことを目指します。

 

その実現のために、2025年度を最終年度とする5カ年の中期経営計画を2020年度に策定しました。

中期経営計画の基本戦略として、

①自動車、産機・インフラ、携帯機器の「3つの重点市場」における市場の変化や技術の進化をとらえ、「技術開発力とものづくり」を強化すること

(注)2024年度より、航機事業における航空・宇宙市場については、防衛予算の増加などを背景に今後売上拡大が見込まれることから、第4の重点市場として取組みを強化しております。

②コネクタ事業、インターフェース・ソリューション事業、航機事業の「主力3事業」において成長を図るとともに、小型・高性能アンテナなどの「新たな領域」を確立し、社会のニーズに応える価値の創造と事業の成長を図ること

③世界的な脱炭素化の潮流を踏まえ、サステナビリティ経営を目指し、持続的成長への基盤を強化すること

を推進してまいりました。

中期経営計画の目標値としては2025年度売上高3,000億円、経常利益300億円達成を目指しましたが、産機・インフラ市場における深刻な需要低迷や携帯機器市場の不振等から、業績の進捗にギャップが生じました。今後も引き続き、上記目標値達成に向けて尽力いたしますが、最終年度である2025年度においては、過去最高の売上高2,600億円、経常利益240億円の達成を目指します。

 

1) 成長戦略

コネクタ事業、インターフェース・ソリューション事業、航機事業においては、下記のとおり、それぞれの中長期的戦略を強化し成長を目指します。

 

(コネクタ事業)

自動車市場においては、ADAS(先進運転支援システム)、自動運転による電装化の進展やEV化需要拡大に伴う海外市場向けの体制強化に加え、ハーネス品の生産効率改善・収益性強化に注力いたします。携帯機器市場においては、営業・開発・生産体制の強化によりトップクラスのシェアを維持しながら、最先端製品の取組み強化を図ります。産機・インフラ市場においては、高齢化や人手不足を背景にした省人化・自動化ニーズの高まりを追い風にFA・工作機械需要の市場回復のタイミングを確実に捉えるとともにEV用充電プラグの拡大に向けた取組みを強化いたします。また、M&A、アライアンスを活用した成長スピードの加速を目指します。

 

(インターフェース・ソリューション事業)

自動車の進化によって需要が拡大する自動車向け静電容量式タッチパネルの事業成長を目指すほか、操作性の向上が求められている産業機器市場においても操作パネル等の販売拡大を進め、自動車と産機市場それぞれの用途に適したタッチパネルのニーズを捉えて事業拡大を目指します。

(航機事業)

航空・宇宙市場においては、防衛予算の増加などを背景に、100億円規模を見据えた事業基盤の構築、民間市場向けにおいては、防衛・宇宙事業で培った加速度計、ジャイロ、IMU(慣性計測ユニット)など“モーションセンス&コントロール”の技術を、油田掘削用センサパッケージ、半導体製造装置向けリニアモータ、ドローン向け製品などに展開し、売上拡大・成長を目指します。

 

2) 企業価値向上に向けた財務戦略

2025年度に向けて、資本効率向上に向けたバランスシートの効率化及び資本収益性の向上を推進しています。バランスシートの効率化については総資産回転率と自己資本比率の改善を目指します。総資産については、連結資金マネジメント強化、棚卸資産管理強化、設備効率のアップなど、資産効率の向上に取り組みます。負債・純資産については、利益の創出や借入金の早期返済などを推進し、自己資本比率を高めることにより、財務の健全性を向上させていきます。

キャピタルアロケーションの方針として、営業キャッシュ・フローに加え、運転資本の効率化などにより、今後2年間で約1,000億円の資金を確保し、この資金を、成長投資を最優先としながら、財務体質の強化と還元にバランスを持って活用いたします。成長のための設備投資については、設備効率向上によって償却費の範囲内に抑制する一方で、戦略投資としてM&A資金を確保し、2025年度までに具体化を進めます。

配当に関しては、安定配当を基本とし、配当性向30%以上を維持することを方針といたします。

資本収益性の目標としては、現状、当社は資本コストを6%から8%程度と認識していることから、2025年度にROE10%以上、中期的には12%以上の資本コストを超えるROE達成を目指していきます。

 

(3) 対処すべき課題

当社を取り巻く事業環境は、米国や一部新興国を中心に底堅い成長が期待されるものの、中国や欧州経済の減速懸念、中東やウクライナ情勢による地政学リスクの高まりに加え、燃料や原材料価格の高止まりなど、景気の先行きは不透明な状況にあります。

当社グループの関連するエレクトロニクス市場は、自動車市場においては、生産台数の成長鈍化が懸念されるものの、引き続きADAS・自動運転の進化に伴う電装化やEV化の需要拡大が見込まれます。また、停滞が継続している産業機器市場においては、AIの普及拡大などを背景とした半導体製造装置需要の回復も期後半では期待されます。一方で、携帯機器市場においては、需要の厳しさが継続することに加え、当社の一部特定製品で顧客の生産終了の影響が見込まれます。

このような状況のもと、当社グループとしては、各国の経済状況、市場動向並びに顧客動向を踏まえ、生産性を向上することにより、売上高の確保、収益性の改善を進め、事業環境の変化に迅速に対応する強い事業構造の確立に努めてまいります。

加えて、上述(2)項記載のとおり、持続的成長の実現に向けて、5G関連市場やCASEをはじめとする自動車市場など成長市場・成長領域への取り組みの遂行にあたって、電気自動車における大電流対応などの技術開発力とものづくりの一層の強化を進めてまいります。更に、営業・開発・生産体制の連携強化のもと、製品投入のスピードアップやコスト競争力の向上などに取り組むとともに、工程改善や自動化による省人化、サプライチェーン最適化等により、収益性の改善を図ってまいります。

また、当社グループは、サステナビリティ経営の推進にあたり、2024年4月にサステナビリティ推進室を設置し、グループにおけるサステナビリティの重要課題に組織的・体系的に取り組む体制を整えました。また、同じく2024年4月に執行役員等を委員とするサステナビリティ推進委員会を設置して、サステナビリティに関連するガバナンス体制を再構築し、同委員会が、今後のサステナビリティに関連する方針や戦略についての審議・策定・指示並びに重要案件の経営会議・取締役会への報告を行うこととし、サステナビリティ経営の推進をさらに加速してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、『開拓、創造、実践』の企業理念と、企業行動憲章のもとで、社会の一員として社会課題解決への貢献を通じて成長することを目指しております。

3つの主力事業がもつ革新的かつ創造性に富んだ高い技術・開発力を通じて、Connected Society、Safe Mobility、Clean Energy、Industrial Innovation、Air, Space and Ocean の5つの領域において、お客様との協創により社会価値を創出し、社会の持続的発展に貢献しながら企業価値の向上を目指します。

 

(1) ガバナンス

当社グループは、サステナビリティ経営推進のため、会長を委員長として各執行役員及びサステナビリティ課題に関係する部門長を委員とするサステナビリティ推進委員会を2024年4月に設置しました。

本委員会において、サステナビリティ経営の方針及び戦略の審議・策定、サステナビリティ戦略の具体的施策の決定・指示等を行うこととし、特に重要案件に関しては、経営会議・取締役会にて適宜報告され、経営層が適切に監督する体制としております。

 

(2) リスク管理

当社グループは、会長を委員長として各執行役員、及び部門長を委員、常勤監査役をオブザーバーとする全社リスク管理委員会を設置し、当社グループの持続的成長を阻害するリスクを特定し、評価、監視、管理しております。

特に重要案件に関しては、経営会議・取締役会にて適宜報告され、経営層が適切に全社のリスク管理状況を把握、監督する体制としております。

 

(3) 重要なサステナビリティ項目

① 環境に関する事項

当社グループは、「社会の一員として、自然環境や生物多様性を尊重し、環境にやさしい事業活動を通して社会的責任を果たすことにより、豊かで持続可能な循環型社会の実現に貢献する」を環境方針の基本理念に掲げ、各種環境管理活動に取り組んでおります。

 

a) ガバナンス及びリスク管理

当社グループは、環境管理に関する方針と目標の設定、環境管理活動計画の実施促進と評価・検討を行うため、環境管理委員会を設置しております。本委員会活動の中で、当社グループの持続的成長を阻害するリスクに関わる事項は、全社リスク管理委員会へ報告、及び審議を行うこととしております。

 

b) 戦略

○気候変動対策

近年、気候変動による影響がこれまでの想定に比べより深刻であることが報告され、脱炭素社会の早期実現が世界共通の喫緊の課題となっております。当社グループは、気候変動には異常気象による事業停止、操業度低下、人材消失や、また環境規制強化に伴う対策コスト増大等を発生させる重大なリスクがあると考えており、重要な課題であると捉えております。

気候変動への対応詳細については、「d) 気候変動に関するTCFD提言に基づいた情報開示」の項で記載しております。

 

 

○資源の有効活用

最近では、世界的に資源供給のひっ迫が懸念され、循環型社会への転換が求められております。

事業活動により発生する不要物の取り組みとして、レスペーパーによる一般廃棄物の削減、プラスチック系・金属系廃棄物の分別徹底によるリサイクル及び有償売却により再資源化を図っております。再資源化率は2023年度の実績で、99.8%となっております。

 

○生物多様性への取り組み

豊かな地球環境を守っていくには生物多様性は重要であり、当社グループは、社会の一員として自然環境や生物多様性を尊重するとともに、事業活動を行う上で少なからず生物の環境に影響を及ぼしていることを認識するよう努めております。地球温暖化対策、省資源活動、化学物質管理等、日頃の環境管理活動を実践し充実させていくことが生物多様性の取り組みにつながると捉えております。

環境経営のシンボルとして、2004年度に森林の再生保全のため、「航空電子グループの森」を開設しました。豊かで持続可能な社会実現のため、私たちは植林や下草刈りなどの活動を通して、グループ社員の森林保全による環境意識啓発の場とすることに加え、温室効果ガス(CO2)の吸収並びに水源の涵養(かんよう)に貢献しております。

・ヒノキと広葉樹によるCO2吸収量:年間5.3t-CO2

・地下水の涵養量推計値:年間5,320㎥

 

c) 指標と目標

以下「d) 気候変動に関するTCFD提言に基づいた情報開示」の中で記述しております。

 

d) 気候変動に関するTCFD提言に基づいた情報開示

○方針

当社グループは、気候変動に関連する問題を重要な経営課題ととらえ、気候変動がもたらすリスクと機会の分析を行い、事業活動を通して取り組みを推進し、持続的成長を目指します。

 

○ガバナンス

上述「(1) ガバナンス」のとおりであります。

なお、気候変動に伴う自然災害や環境法規制などの重大なリスクは、全社リスク管理委員会において、審議されることとなっております。

 

○戦略

■シナリオ分析

当社グループは気候変動について、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書(SSP1-1.9 (1.5℃シナリオ)、SSP5-8.5(4℃シナリオ))や国際エネルギー機関(IEA)のWorld Energy Outlook 2022等を参考にシナリオを分析し、リスクと機会を抽出、当社グループの事業に与えるインパクトを評価しました。

 

 

想定される環境

それに伴う影響

4℃

シナリオ

気候変動に対する法規制や低炭素に対する取り組みは、特に発展途上国で弱く先進国でも不十分で、CO2排出量削減は十分でなく、そのため温暖化が進み、下記のような自然災害が増加すると推定される。

●氷河や極地での氷の融解により海面が上昇する

●極端な大雨や大型台風により洪水が生じる

●少雨による干ばつ、渇水、地下水の減少が生じる

●自然災害の激甚化により、工場の操業停止やサプライチェーンの寸断が発生し、生産、物流など社会全体に影響が生じる

●新興国を中心としてCO2排出量削減が進まず、化石燃料消費ビジネスが継続される

 

1.5℃

シナリオ

脱炭素に向けた取り組みがグローバルで積極的に行われ、世界的に浸透しCO2排出量の削減は十分に進行する。
これにより温暖化の進行は抑制され、下記のようになると推定される。

●炭素税導入等、厳しい法規制が施行される

●現在と比較し、気温上昇は抑えられ、自然災害も大きくは増えない

 

●炭素税導入やクリーン電力の普及等により、電力などのエネルギー価格が高騰する。また、材料などの価格が上昇し、部材調達に影響を及ぼす

●社会や顧客からCO2削減要求が一層高まり、対応できない場合ビジネスへ影響が生じる

●化石燃料関連ビジネスは需要が低下する

●再生可能エネルギー、省エネ技術の投資が増加し、これらの研究開発、製品開発が活発化する

 

 

■リスクと機会

リスクと機会の分類

項目

期間

影響

対応策

リスク

移行リスク(1.5℃)

政策・法規制リスク

炭素税などのCO2排出やエネルギー使用に関する法規制強化に伴う対応コストの増大

中~長期

各種省エネ施策の推進

技術・市場

リスク

脱炭素社会に向けた新製品開発、市場ニーズへの対応遅れによる市場シェアの低下

中~長期

脱炭素に向けた新製品の開発・ビジネス転換

評判

リスク

気候変動に関する取り組みの遅れによるステークホルダーからの評価の低下、商談機会の逸失、企業価値の低下

短~中期

サステナビリティ経営の取り組み強化

物理リスク(4℃)

急性

リスク

台風や洪水などの自然災害の激甚化による工場操業の停止、サプライチェーンの寸断

短~長期

事業継続計画の強化

慢性

リスク

気温上昇の恒常化による空調コスト増加

長期

高効率施設・設備の導入

機会(1.5℃)

資源の効率性

循環型社会への移行に伴う市場ニーズ拡大

中~長期

省材料・リサイクル、リユースに対応した製品開発

エネルギー源

脱炭素に貢献するエネルギー源の使用、エネルギー使用の効率化

短~長期

再生可能エネルギーの利用、省エネ設備の開発

製品/
サービス/市場

脱炭素に貢献する製品開発、売上拡大

短~長期

脱炭素に向けた新製品の開発・ビジネス転換

 

※影響は発生頻度及び財務影響を加味して評価

 

 

○リスク管理

上述「(2) リスク管理」のとおりであります。

また、気候変動による大規模な自然災害が発生し、事業継続に支障をきたした場合は、事業継続計画に基づき、社長を本部長とした中央対策本部を直ちに設置し、対策立案及び実行の指示、命令を行う仕組みとなっております。

 

○指標と目標

・航空電子グループは、気候変動対策を喫緊の課題と捉え、2050年度までにカーボンニュートラルを目指します。

 

・温室効果ガス削減の考え方としては、施設・設備の高効率化、照明のLED化等の省エネ施策を推進することにより、電力購入そのもののミニマイズ化を図り、不足分について、自家発電や再生可能エネルギー由来の電力への転換などで対応することとしております。

 

・中間目標として、2030年度に向けた温室効果ガス総排出量の削減目標を、2022年度初めに設定して活動してきた結果、これを前倒しで達成しました。今回新たな排出削減目標として、2030年度の温室効果ガス総排出量(Scope1,2)を、グローバル生産ベースで、2017年度比75%削減(前目標は55%削減)と設定しました。さらにカーボンニュートラルの達成時期についても、今後可能な限り前倒しできるよう努力していきます。

※グローバル生産ベース:主要な生産会社を対象。

 


 

※参考:温室効果ガス削減実績

 

基準年

実績

目標

2017年度

2023年度

2030年度

温室効果ガス排出量

(Scope1,2)

106,789t-CO2

46,772t-CO2

26,697t-CO2

削減量
 (2017年度比)

△60,017t-CO2

△80,092t-CO2

削減率

△56%

△75%

 

(注) 1.Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)

Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

2.各数値は、グローバル生産ベースで集計しております。

 

・Scope3について

当社グループとしては、Scope3削減の重要性は認識しており、これまで同様サプライヤー様と協力して削減努力を継続していくとともに、今後は具体的な削減目標を設定して取り組むことを検討していきます。

 

 

② 人的資本に関する事項

当社グループの企業理念である『開拓、創造、実践』を具現化し、継続的な企業価値の向上を支える原動力は人材であります。当社グループは、人的資本の向上を実現する各種施策に取り組んでおります。

 

a) ガバナンス及びリスク管理

当社グループの将来の発展に向けた事業構造の改革及び事業力の強化のため、グループ全体の人員の適正化、人材力の有効活用など人的資本に関わる課題や具体的な施策を検討し、対応施策を推進するため、経営人材活用委員会を設置しております。本委員会活動の中で、当社グループの持続的成長を阻害するリスクに関わる事項は、全社リスク管理委員会への報告、及び審議を行うこととしております。

 

b) 戦略

○多様な人材の活躍推進

当社グループは、年齢、性別、国籍、障がいの有無にとらわれず、多様な人材が活躍できる職場環境の実現に向けた取り組みを推進しております。特に女性活躍推進に関しては、

・女性社員の積極的採用

・女性管理職登用に向けた女性選抜研修の実施

・女性社員がリーダーシップを発揮できる環境をつくるためのアイデアを話し合う女性管理職の座談会の実施

等の施策を実施し取り組みを強化するとともに、定期採用者に占める女性比率及び女性管理職比率の目標を定めております。

 

○人材育成方針

グローバル市場における競争力を確保するため、及び経営環境の急速な変化に対応するためには、社員個々人のスキルアップを図ることが重要であります。当社グループは、階層別研修・職能別研修を体系的に整備するとともに、社員が将来を見据えて自律的にキャリアを形成できるよう、自己啓発を促すプログラムの設定や、計画的な幹部人材の育成を図るための選抜研修も導入しております。また、ものづくりの技能伝承を目的とした教育、資格取得の強化も図っております。

 

○社内環境整備方針

当社グループは、社員が安全で働きやすい職場環境を実現するとともに、働きがいを持って活躍できる職場の実現を目指しております。

具体的には、柔軟な働き方を選択でき、ワーク・ライフ・バランスを実現できる在宅勤務制度、フレックスタイム制度の導入や、育児・介護のための短時間勤務、配偶者出産休暇、子供の看護や家族の介護の際に取得できる休暇、育児休業・介護休業制度など、育児・介護と仕事の両立を支援する各種制度を整備しております。

 

c) 指標と目標

女性の活躍推進のため具体的な指標と目標について、次のとおり設定し、取り組みを強化しております。

指 標

目 標

実 績

定期採用者に占める
女性比率

2025年度まで

25%以上

26.1%

(2023年度定期採用者)

女性管理職比率

2030年度まで

6%以上

3.3%

(2024年3月31日現在)

 

(注) 本指標における取り組みは、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、目標及び実績は提出会社の数値を記載しております。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが、判断したものであります。

 

(1) 環境課題への対応について

近年、地球温暖化の影響が深刻となっており、脱炭素社会の早期実現が世界共通の喫緊の課題となっております。また、世界的に資源供給のひっ迫が懸念され、循環型社会への転換が求められております。これら環境課題への対応が遅れた場合、当社グループの事業活動及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。これらリスクに対して、当社グループは、環境課題を重要なサステナビリティ項目と位置付け、温室効果ガス排出削減による地球温暖化対策をはじめとする各種環境管理活動に取り組んでおります。

 

(2) 自然災害等に関する影響について

当社グループの生産・販売拠点は、国内外に分散しておりますが、自然災害の発生や感染症の蔓延等のリスクを抱え事業を展開しております。このため、大規模な自然災害等が発生し、物的・人的被害の発生や物流機能の麻痺等による生産活動の縮小・停止を余儀なくされた場合、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、これらリスクに対して、安定した製品供給を維持するため、保有する設備や情報システムに対してのバックアップ体制等の対策を講じております。

 

(3) 海外展開について

当社グループは、市場のグローバル化に対応して、生産拠点及び販売拠点を海外に展開しており、今後も積極的に行う方針であります。このため、世界各国の経済動向及び政治・社会情勢の変化や為替変動が、当社グループの調達コストやサプライチェーンなどに影響を及ぼす可能性があります。これらリスクに対して、需要の変動に対する対応力を強化するとともに、生産の複数拠点化などによる安定生産を図り、業績向上の確保に努めております。また、為替変動リスクへの対応として、先物為替予約による為替ヘッジを行っております。

 

(4) 携帯機器市場について

当社グループの連結売上高の約3割は、携帯機器市場向け製品であります。携帯機器市場は需要の変動が激しく、スマートフォンに見られるような急激な需要の減少が顕在化した場合、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。このリスクに対して、生産リードタイムの短縮や生産設備の効率化による需要変動への対応力強化に努めております。

 

(5) 競合環境と価格低下による影響について

当社グループは、事業を展開する市場において激しい競争にさらされており、コネクタ等の製品価格低下や急激な技術の変化が進んでいるため、当社グループ製品のシェア低下や利益率悪化等の変動要因が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これらリスクに対して、コスト削減、新製品投入による利益率の確保に努めております。

 

(6) 原材料等の調達について

当社グループの製品は、原材料や一部部材を外部業者より調達しております。主要な原材料の市況価格変動による仕入コストの増加、需要の急激な変化や物流の混乱等に伴う供給元からの調達難が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これらリスクに対して、海外調達先の開拓と調達品のコスト低減、2社購買などによる安定調達に努めております。

また、製造過程における生産設備の稼働等、相当の電力を消費するため、電力価格の高騰が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。このリスクに対して、省エネルギー化の推進や生産性向上などによる使用電力低減に努めております。

 

 

(7) 品質について

当社グループは、「品質・ものづくりの革新」を経営の基本方針として推進しており、社会的に有用で、安全に十分配慮した高い品質の商品とサービスを提供しておりますが、万一、当社製品に品質上、安全上の不具合が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これらリスクに対して、評価試験体制の強化・拡充、及び高いレベルでの品質管理体制の維持・向上に努めております。

 

(8) 知的財産権について

当社グループは、他社の特許権等の知的財産権を尊重しつつ、国内外において事業活動を行っておりますが、第三者から知的財産権に関する主張を受け、係争事件に発展した場合、又は、当社製品、技術が第三者によって模倣された場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。このため、第三者の知的財産権の侵害を回避するとともに、将来の事業活動に必要な知的財産権獲得のための研究開発活動の強化及び当社グループの知的財産権の保護に努めております。

 

(9) 生産設備等の処分について

当社グループの生産設備は、製品ライフサイクルの短命化に伴う陳腐化等による処分損失が発生する可能性があります。このリスクに対して、経済的耐用年数による減価償却の実施や他製品用として転用可能な設備の開発など、生産設備の徹底した有効活用を図っております。

 

(10) 人材確保について

当社グループでは、継続的な企業価値の向上を支える原動力は人材であり、優秀な従業員を獲得し維持する必要があると捉えております。少子高齢化や労働人口の減少など、必要な人材を継続的に確保するための競争は年々厳しさを増しており、十分な人材確保が困難となった場合、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。このリスクに対して、多様な人材が活躍できる職場環境の実現に向けた取り組みを推進するほか、人事制度の拡充など、人材育成や社内環境整備に努めております。

 

(11) 情報セキュリティについて

当社グループは、業務を通じて入手した取引先の機密情報や個人情報等を多数保有しております。このため、サイバー攻撃、コンピュータ・ウィルスの感染、その他不測の事態により機密情報が消失、改ざん、漏洩した場合、当社グループの社会的信用低下や損害賠償請求等により、当社グループの事業活動及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。これらリスクに対して、情報セキュリティ統括室を設置し、情報セキュリティ方針・ガイドラインの強化及び監視を徹底するほか、管理体制の整備、情報セキュリティ人材強化、情報セキュリティシステムの構築等、リスク管理に努めております。

 

(12) コンプライアンスについて

当社グループは、国内外において、独占禁止法、製造物責任、贈収賄防止、データ保護、環境、人権、労務、租税等に係る法規制や輸出入規制、政府の許認可等、様々な公的規制の適用を受けて事業を行っております。これら公的規制の違反を含むコンプライアンス上の問題が発生した場合、損害賠償請求や信用失墜等により、当社グループの事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。このリスクに対して、当社グループは、法令・定款の遵守を徹底するため、航空電子グループ企業行動憲章・行動規範を制定するとともに、7月5日を「遵法の日」と定め、毎年社長が訓示を実施しております。また、法令・定款等に違反する行為や企業倫理等に関する不正行為を発見した場合の通報体制として内部通報制度を設置するなど、違反、不正行為の発生可能性を低減するよう努めております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度の世界経済は、米国経済は金融引き締めの影響を受けながらも、良好な雇用情勢や個人消費に支えられて底堅く推移しましたが、中国経済は不動産市場の悪化や設備投資の低迷など、力強さを欠く状況が継続しました。

わが国においては、景気の緩やかな回復が継続しましたが、個人消費や生産活動の停滞から期後半には足踏み状態となりました。為替については、期中に一部円安基調の修正が見られましたが、期末にかけては再び円安方向に推移しました。

当社グループの関連するエレクトロニクス市場においては、自動車市場は半導体供給不足の解消により堅調に推移しましたが、携帯機器市場では中国スマートフォン向けで需要低迷が継続したほか、産業機器市場も、前年度後半から続く一般産機市場での受注調整に加えて、中国での設備投資減少の影響を受けたFA機器を中心に一段と減速しました。

このような状況のもと、当社グループは、主力のコネクタ事業を中心に、積極的なグローバル・マーケティングと新製品開発活動のスピードアップによる受注・売上の拡大を図るとともに、内製化の更なる強化による工場稼働率改善、設備効率化によるコストダウン、諸費用抑制など経営全般にわたる効率化を推進し、業績向上に努めました。

しかしながら、産機市場での需要低迷による影響を想定以上に受けたことなどから、当連結会計年度の業績は、売上高2,257億81百万円(前連結会計年度比96%)、利益面においては、営業利益144億23百万円(前連結会計年度比82%)、経常利益147億62百万円(前連結会計年度比77%)となり、親会社株主に帰属する当期純利益はJAE Oregon, Inc.(米国連結子会社)が保有していた土地の一部売却による特別利益計上により、122億45百万円(前連結会計年度比84%)となりました。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

① コネクタ事業

自動車分野においては、昨年生じた顧客の半導体供給不足解消に加えADAS関連製品が伸長しましたが、携帯機器分野において、一部製品の生産終了に加え市場の需要低迷が継続したほか、産機・インフラ分野において、FA・工作機械向け製品を中心に市場が一段と低迷したことから、当連結会計年度の売上高は1,948億3百万円(前連結会計年度比95%)となりました。利益面においては、携帯機器分野及び産機・インフラ分野の減収による工場稼働低下に加え、自動車分野におけるプロダクトミックスの悪化などにより、セグメント利益は153億53百万円(前連結会計年度比87%)となりました。

② インターフェース・ソリューション事業

産機・インフラ分野において、半導体製造装置向け製品や操作パネルの市場が低迷したことに加え、自動車分野において、ガラスセンサの一部製品が生産終了したことから、当連結会計年度の売上高は101億26百万円(前連結会計年度比87%)、セグメント利益は4億25百万円(前連結会計年度比79%)となりました。

③ 航機事業

産機・インフラ分野において、半導体製造装置向け製品が市場低迷により需要減となりましたが、油田掘削向けセンサの需要が堅調に推移したことに加え、防衛・宇宙向け製品で納入が増加したことから、当連結会計年度の売上高は201億30百万円(前連結会計年度比105%)となりました。利益面においては、防衛・宇宙分野における開発プロジェクト遅延により、セグメント利益は36億32百万円(前連結会計年度比89%)となりました。

 

 

財政状態の状況は、次のとおりであります。

① 資 産

当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金の増加や退職給付に係る資産の増加に加え、主力のコネクタ事業において、今後拡大が見込まれるEV自動車向け製品の生産増強を目的に実施した国内生産子会社(山形航空電子株式会社)の工場増設による有形固定資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ94億16百万円増加2,360億42百万円となりました。

② 負 債

負債は、自己株式の取得を目的とした借入の実行により、前連結会計年度末に比べ538億90百万円増加1,092億32百万円となりました。

③ 純資産

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上及び在外子会社の個別財務諸表の換算において円安の影響を受け為替換算調整勘定が増加しましたが、自己株式の増加により、前連結会計年度末に比べ444億73百万円減少1,268億10百万円となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、子会社が保有していた土地の一部売却による固定資産売却益の計上や仕入債務の減少に加え、法人税等の支払いによるマイナス要因はありましたが、税金等調整前当期純利益及び減価償却費の計上により、348億59百万円のプラス(前連結会計年度は324億51百万円のプラス)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、主として新製品生産用設備を中心とする有形固定資産取得による支出などから、203億13百万円のマイナス(前連結会計年度は234億32百万円のマイナス)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式取得に伴う一部借入によるプラス要因はありましたが、自己株式取得による支払い及び株主配当金の支払いにより、118億96百万円のマイナス(前連結会計年度は116億45百万円のマイナス)となりました。

この結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ52億72百万円増加682億98百万円となりました。

 

(生産、受注及び販売の実績)

当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績、受注実績及び販売実績は、次のとおりであります。

 

(1) 生産実績

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

コネクタ事業

195,040

95.9

インターフェース・ソリューション事業

10,378

90.2

航機事業

19,705

101.8

その他

629

81.5

225,753

96.0

 

(注) 金額は販売価額によっております。

 

 

(2) 受注実績

セグメントの名称

受注高
(百万円)

前期比
(%)

受注残高
(百万円)

前期比
(%)

コネクタ事業

196,069

97.6

24,549

105.4

インターフェース・ソリューション事業

8,612

67.8

2,921

65.9

航機事業

21,990

82.6

21,578

109.4

その他

492

54.8

162

41.7

227,164

94.2

49,211

102.9

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(3) 販売実績

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

コネクタ事業

194,803

95.4

インターフェース・ソリューション事業

10,126

86.6

航機事業

20,130

105.3

その他

719

82.0

225,781

95.7

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

三信電気㈱

49,216

20.9

45,412

20.1

Apple Inc.

24,979

10.6

 

 

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績の分析

 「(経営成績等の状況の概要)  (1) 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

(2) キャッシュ・フローの状況の分析並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

① キャッシュ・フローの状況の分析

「(経営成績等の状況の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

② 資本の財源及び資金の流動性、財務政策

当社グループの運転資金需要(営業活動による資金需要)の主な内訳は、グループ製品の新製品開発及び製造のための材料及び部品の購入のほか、労務費、製造経費、販売費及び一般管理費等であります。また、設備資金需要(投資活動による資金需要)の主な内訳は、新製品開発、生産性向上及び品質向上のための設備投資と当社グループの永続的な発展のためのインフラ投資等であります。

こうした資金需要に対し当社グループは、グローバルマーケティングと技術開発力の強化による受注・売上の拡大と環境・品質を重視した競合に負けないものづくりを積極的に推進し、キャッシュ・フローの創出に努めております。

当連結会計年度におきましては、当社の親会社であった日本電気株式会社との資本関係の見直しを目的とした自己株式の公開買付けに要する資金として2024年3月29日付で金融機関からの借り入れにより600億円の資金調達を実施しております。

この状況を踏まえ、中期経営計画に掲げた企業価値向上に向けた取り組みを通じて資金を確保し、成長投資への活用に加え、借入金の早期返済など財務体質の強化及び株主還元のバランスを図ってまいります。

なお、グループ資金調達リスクの回避及び資金コストの低減を図るため、コミットメントライン契約による資金調達枠の確保、キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)によるグループ内資金の効率化などの対策を講じております。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 中長期的な会社の経営戦略」に記載したとおり、中期経営計画の最終年度である2025年度の目標値を売上高2,600億円、経常利益240億円に見直しております。

中期経営計画3年目となる当連結会計年度の実績値及び達成率は、以下のとおりであります。

 

指標

実績

中期経営計画

中期目標

(億円)

2021年度

(億円)

2022年度

(億円)

2023年度

(億円)

達成率

2025年度目標

(億円)

売上高

2,250

2,358

2,257

87%

2,600

3,000

経常利益

185

191

147

62%

240

300

 

 

 当連結会計年度は、「(経営成績等の状況の概要)  (1) 財政状態及び経営成績の状況」に記載したとおり、自動車分野で伸長しましたが、携帯機器分野及び産機・インフラ分野で需要低迷による影響を受けたことなどから、減収減益の結果となりました。

中期経営計画4年目となる翌連結会計年度は、自動車分野の売上拡大、産機・インフラ分野の回復、及び新たな注力市場となる航空・宇宙分野の売上拡大により、増収増益を目指してまいります。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、グローバルな視点での事業運営と顧客価値の追求に徹し、優れた製品をタイムリーに市場に供給するため、グローバルマーケティング力の強化及び技術開発力の強化を積極的に推進しております。これを牽引し支えるために、商品開発センターにおいては、基礎・応用技術の研究開発を主体に、各事業部の技術部門においては、所管事業に関する新製品、新製法の開発を主体に、それぞれが連携をとりながら長年にわたって培ってきた経験と実績を生かして研究開発活動を実施しております。また、各生産子会社は、所管製品に関連する事業部との密接な連携のもとに新製法の開発を主体に取り組んでおります。

当連結会計年度におけるセグメント別の主な研究開発成果は次のとおりであります。

 

(1) 商品開発センター

IoT社会に貢献する探索研究に取り組んでいます。具体的には柔軟性や伸縮性という新たな電気接続の市場要求に応えるべくフィルム型コネクタ(Film Type Connector:以下FTC)の研究を継続し、FTCをモビリティやヘルスケアなどで使用されるセンサモジュールに搭載し、お客様と協業して製品適用を目指しております。また、FTCは柔軟性や伸縮性による電気機器内の省スペース化に加え、はんだや接着剤レスによる省資源、省エネルギー化というカーボンニュートラル対策にも繋がるものであります。

一方、IoT領域拡張の鍵となるセンサおよび解析技術分野では、構造物診断市場への参入を目的として、独自に開発したMEMS加速度計を用いた高精度のセンサシステムによる橋梁の劣化診断研究を継続しております。大学や地方自治体と連携し、このセンサシステムを一般道と高速道路上の橋梁に設置した実証実験を行い、劣化診断に資するデータ取得技術の向上に加え、道路事業者と連携し事業性を調査しております。

この他、産学官連携で独自の水位計システムを山岳エリアに設置し、過疎化する山岳農村地帯の安全確保に貢献すべく地すべりセンシングの実証実験を継続しております。また、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の研究助成の下、産学連携を通じて、ウイルスなどの生体物質の多数検体同時検査を目指した多点電気化学測定システムを試作し、ビジネス化に向けた新興国のニーズ探索を目的とする実証実験も行いました。これらの活動を通じて、IoTによるデータ駆動型のビジネス創出(デジタルデータを有効活用した商品開発)に必要なデータ統合・解析・呈示技術、省電力化技術、ならびにニーズ探索手法などが醸成されました。

量子センサの開発では、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の未来社会創造事業の下、資源探査や自動運転などに貢献すべく高感度センサとそれを利用した次世代航法システム開発を推進しました。今後はJSTの経済安全保障プロジェクトにて技術開発を継続しこのプロジェクトを通じて、当社事業を支える将来のセンサシステムの構築を目指します。

モノづくり面では、電磁両立性(EMC)解析技術や材料分析技術による製品設計へのフィードバック強化に加え、カーボンニュートラルの実現に向け、再生材料や植物由来材料の特性把握を目指す材料分析研究も進めております。また、撥水付与や潤滑や摩耗といった現象に関する材料特性の制御技術を磨き上げ、EV充電端子などの接点部における金属めっき膜の摩耗を大幅に抑制する接点界面の設計技術 「wearzerO™ 」を一部の製品に適用し、摩耗抑制に加え、材料使用量の低減なども実現しております。

 

(2) コネクタ事業

製品開発では、スマートフォンやPCをはじめとするICT(情報通信技術)が、広く社会に浸透し、自動車市場における車載インフォテインメントシステムなどでも広がりを見せている中で、当社の強みである小型で堅ろうなICT機器向けコネクタである、狭ピッチ基板対基板(FPC)コネクタ「WP26DK」シリーズとUSB Type-C®コネクタ「DX07」シリーズを、より厳しい車載環境相当の試験にも適合する製品として販売を開始しました。また、microSD™・microSIM・nanoSIMなどのカード用コネクタの自動車市場対応も進めております。

車載のECU(Electronic Control Unit)とディスプレイ間の映像信号伝送や、車内のPC、スマートフォン、ゲーム機器との通信のニーズに対応して、USB3.2伝送(最大データ転送速度20Gbps)やDisplayPort1.4伝送(最大データ転送速度32.4Gbps)を可能とした車載向けコネクタ「MA07」シリーズを開発しました。本品は、民生市場で拡大しているUSB3.2伝送などの高速伝送性能に加え、車載対応として4種類のかん合キーバリエーション、また斜め挿入を防止するアウターハウジングを採用した堅ろう構造、さらにかん合時の明確なクリック感とかん合音が得られるロック構造を装備しており、自動車内装のハーネス組立ラインにおいて目視が困難な場合でも、未かん合を防止できる製品となっております。その他に車載向けでは、自動運転などで用いられるカメラの性能向上に応じ、高度な伝送特性に加え、高周波ノイズ耐性を高次元で実現する車載高周波コネクタの研究開発を進めております。

車載向け以外では、データセンター通信業界最速クラスの224Gbpsに対応するハイスピードコネクタの開発を進めております。またUSB4®(~20Gbps)対応のリタイマ―を内蔵したハーネスの開発においては、ケーブルの細径長尺化、信号と電源のライン共用による省資源及び軽量化の研究を進めております。

生産技術開発では、携帯機器用、車載用、インフラ用コネクタを中心に、組立工程、ハーネス加工工程における自動化設備開発による省人化を進め、作業人員確保が困難な状況や人件費高騰への対応を強化するとともに高品質、低価格の製品の実現を目指しております。車載ハーネス工程では、完全自動化ラインの開発に取り組み、生産ラインの省人化及び品質安定性を大きく向上させるとともに、属人的なモノづくりから改善を図りました。また成形工程、プレス工程、表面処理加工工程におけるシミュレーションソフトを導入し、部品の加工工程を事前にシミュレーションすることで、手戻りのない効率的な開発及び改善活動を引き続き推進しております。

サステナビリティに関する取り組みとして、バイオマスやリサイクル材料を活用した部品生産のノウハウ構築や、検査工程において、必要な機能に絞り込むとともに消費電力を抑制した高周波対応の検査回路の開発など、サステナブルな生産に向け取り組んでおります。

基盤技術開発では、洗濯対応スマート衣料向けコネクタの小型化や多品種化の検討開発や、次世代車載ネットワークの光化に向けた車載用AOC(Active Optical Cable)の研究開発、車載コネクタ及びハーネスの電磁ノイズ低減技術と100GHz伝送解析技術などの開発を推進しております。また、振動解析技術、熱環境下でのゴム解析技術、最適化解析技術の研究に取り組んでおります。大電流対応としては、アルミ太径電線とコンタクトの超音波結線技術の開発と、大電流コネクタ接点の長寿命化の研究を推進しております。

新領域である高性能アンテナでは、金属製表面実装アンテナ「AN01」「AN02」シリーズに加えて、新たなラインアップとして同軸ケーブル付PCBアンテナ「AP01」、同軸ケーブル付FPCアンテナ「AP02」シリーズの開発を行いました。「AP01」「AP02」シリーズは、アンテナに接続した同軸ケーブルを介して、通信用回路基板から離れた場所にも配置できるのが特徴で、取り付け場所の自由度が高いというメリットやスプリットリング共振器構造による小型化、高い放射効率及び金属接近時の特性向上を実現しております。

 

※microSD™のロゴはSD-3C, LLCの商標です。

USB4®、USB Type-C®はUSB Implementers Forum, Inc.の登録商標です。

 

(3) インターフェース・ソリューション事業

自動車市場では自動運転技術の進展に伴い、LiDAR等ADASセンサの搭載が拡大しており、これまで車室内用タッチセンサ向けに開発してきたメタルメッシュ印刷技術と、低反射・透過性・防汚性といった機能を付与できる表面処理技術を活用する為の開発を進めております。ADASセンサでは、雪や霜の付着による性能低下が課題であり、素早い解氷・除霜機能をもつヒーターが求められており、低抵抗且つ高精細といった特徴を持つ当社のメタルメッシュ印刷技術では、均一な熱分布と素早い昇温を実現する事が可能となります。また、ADASセンサを保護するカバーは、表面処理技術の応用で、高い透過性の実現により、センサ性能向上に繋がります。これらの実現に向け、構造設計、シミュレーション技術を駆使した透過性能の作り込み、量産プロセス開発に取り組んでおります。また、メタルメッシュ印刷技術の更なる用途拡大に向け、印刷技術をより高度化する研究を産学連携で取り組んでおります。

産機・インフラ市場では、ロボット用操作端末の作業者の疲労軽減や操作性向上に取り組んでおり、製品重量が軽く感じる低重心化などの設計を盛り込んだ試作品を展示会へ出展しました。

 

(4) 航機事業

ドローン市場向け製品では、都市部での実用化を想定し、より安全性を向上させたフライトコントローラの冗長化機能の研究と、従来製品である電波高度計の計測範囲を拡大し、高度計測だけでなく水平方向の障害物も検知可能な電波距離計の開発を進めております。

産機市場向け製品開発では、ICT建機向けの小型IMUについて、振動、衝撃等のより厳しい耐環境性への対応技術の研究を継続しており、実証モデルによる実運用を想定した環境での評価試験が完了し、量産化に向けたハードウエアでの最終検証を実施しております。また、スマート農業における農機の自動運転化に向けた小型IMUについては、GNSS信号を受信できない環境でも位置精度を保持出来る慣性アルゴリズムの開発を進めております。

高性能光応用センサでは、将来防衛市場製品への適用も視野に入れた小型化・高精度化及び耐環境性能向上のための製品開発を行っております。

 

 

以上の研究開発費総額は10,922百万円であります。