文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、創業以来『開拓・創造・実践』の企業理念のもと、独自の革新的、創造性に富んだ高い技術・開発力を背景に、「コネクタ事業」「インターフェース・ソリューション事業」「航機事業」の3つの事業をグローバルに展開し、発展してまいりました。
“Technology to Inspire Innovation”「当社の開発する技術が、お客様の独創的な商品開発に新しい扉を拓きます。」をグローバルスローガンとして、お客様のイノベーション実現を加速する技術開発・ものづくりに注力しております。そして、世界のお客様からパートナーとしての高い信頼をいただくため、「連結経営を基軸としたグローバルな事業展開」「グローバルマーケティングと技術開発力の強化」「品質・ものづくりの革新」を経営の基本方針として推進しております。
そして航空電子グループ企業行動憲章に基づいて、良き企業市民として、関係法令を遵守し、お客さま、株主・投資家の皆様、取引先、地域社会をはじめとした関係者に対する社会的責任を果たすことを目指します。
当社グループが置かれている事業環境は、デジタル化、リモート化の加速、世界的な脱炭素化への流れ、5G(第5世代移動通信システム)の進展など、社会や市場が大きく変化しております。当社グループが注力する市場においても、自動車市場における電装化の一層の加速、産業・インフラ市場でのスマート工場やFA・工作機械のネットワーク化の進展が見込まれるとともに、携帯機器市場においても5G化によるスマートフォンの機能進化による需要のほか、ウェアラブル機器やVR(仮想現実)・AR(拡張現実)機器の普及も期待されるなど、各市場において大きな変化が見込まれます。
こうした環境の中で、当社グループは、「5Gでつながる環境にやさしい次世代モビリティ・IoT社会」の実現に向けて、当社の持つ製品や技術開発力によって、事業を通じて社会に貢献し、企業として成長していくことを目指します。
その実現のために、2025年度を最終年度とする5カ年の中期経営計画を2020年度に策定しました。
中期経営計画の基本戦略として、
①自動車、産機・インフラ、携帯機器の「3つの重点市場」における市場の変化や技術の進化をとらえ、「技術開発力とものづくり」を強化すること
(注)2024年度より、航機事業における航空・宇宙市場については、防衛予算の増加などを背景に今後売上拡大が見込まれることから、第4の重点市場として取組みを強化しております。
②コネクタ事業、インターフェース・ソリューション事業、航機事業の「主力3事業」において成長を図るとともに、小型・高性能アンテナなどの「新たな領域」を確立し、社会のニーズに応える価値の創造と事業の成長を図ること
③世界的な脱炭素化の潮流を踏まえ、サステナビリティ経営を目指し、持続的成長への基盤を強化すること
を推進してまいりました。
しかしながら、昨年修正した中期経営計画目標(売上高2,600億円、経常利益240億円)に対して、産機・インフラ市場における市場回復遅れや携帯機器市場の不振等から、業績の進捗にギャップが生じている中で、注力4市場それぞれで業績拡大に向けた挽回策を講じ、最終年度である2025年度については、売上高2,400億円、経常利益175億円を目標として設定し、これの達成を目指します。また、新たに2025年度に新中期経営計画を検討いたします。
1) 成長戦略
コネクタ事業、インターフェース・ソリューション事業、航機事業においては、下記のとおり、それぞれの中長期的戦略を強化し成長を目指します。
(コネクタ事業)
自動車市場においては、ADAS(先進運転支援システム)、自動運転による電装化の進展やEV化需要拡大に伴う海外市場向けの体制強化に加え、ハーネス品の生産効率改善・収益性強化に注力いたします。携帯機器市場においては、営業・開発・生産体制の強化によりトップクラスのシェアを維持しながら、最先端製品の取組み強化を図ります。産機・インフラ市場においては、高齢化や人手不足を背景にした省人化・自動化ニーズの高まりを追い風にFA・工作機械需要の市場回復のタイミングを確実に捉えるとともにEV用充電プラグの拡大に向けた取組みを強化いたします。また、M&A、アライアンスを活用した成長スピードの加速を目指します。
(インターフェース・ソリューション事業)
産機・インフラ市場においては、産機向け操作パネルやロボット向けティーチングペンダントなどを生産するフレキシブルで生産効率を向上させた新生産ラインを構築し、省人化による生産性改善を通じて収益力の向上を図ります。自動車市場においては、従来のナビ画面で使用されているタッチセンサ技術をもとに、フィルムヒーターとして展開するなど、新領域の開拓による新たな成長基盤の構築を目指します。
(航機事業)
航空・宇宙市場においては、防衛予算の増加などを背景に、100億円規模を見据えた事業基盤の構築、民間市場向けにおいては、防衛・宇宙事業で培った加速度計、ジャイロ、IMU(慣性計測ユニット)など“モーションセンス&コントロール”の技術を、油田掘削用センサパッケージ、半導体製造装置向けリニアモータ、ドローン向け製品などに展開し、売上拡大・成長を目指します。
2) 企業価値向上に向けた財務戦略
2025年度に向けて、資本効率向上に向けたバランスシートの効率化及び資本収益性の向上を推進しています。バランスシートの効率化については総資産回転率と自己資本比率の改善を目指します。総資産については、連結資金マネジメント強化、棚卸資産管理強化、設備効率のアップなど、資産効率の向上に取り組みます。負債・純資産については、利益の創出や借入金の早期返済などを推進し、自己資本比率を高めることにより、財務の健全性を向上させていきます。
キャピタルアロケーションの方針として、営業キャッシュ・フローに加え、運転資本の効率化などにより資金を創出し、成長投資を最優先としながら、財務体質の強化と還元にバランスを持って活用いたします。成長のための設備投資については、設備効率の向上を図る一方で、将来に向けた戦略投資として資金を確保いたします。
また、配当に関しては、安定配当を基本とし、配当性向30%以上を維持することを方針といたします。
資本収益性については、現状、当社の資本コストは7%から9%程度と認識しており、2025年度にROE10%以上、中期的には12%以上を目指していきます。
当社グループの関連するエレクトロニクス市場は、自動車市場においては、引き続きADAS・自動運転の進化に伴う電装化の進展が見込まれ、また、携帯機器市場においても最先端の小型化製品ニーズなど、技術革新が続く見込みです。加えて、停滞が継続していた産業機器市場においては、AIやデータセンタの普及拡大などを背景とした半導体製造装置および工作機械需要などの回復が期後半に期待されます。
一方で、米国による世界各国への大規模な関税政策の発動により不透明さが増しており、世界的な景気減速や機器市場が低迷する可能性、地政学リスクの高まりなどが強く懸念されることに加え、米国の関税政策に対する各国や各社の対応が未だ見通せない状況にあります。
このような状況のもと、当社グループとしては、各国の経済状況、市場動向並びに顧客動向を踏まえ、生産性を向上することにより、売上高の確保、収益性の改善を進め、事業環境の変化に迅速に対応する強い事業構造の確立に努めてまいります。
加えて、上述(2)項記載のとおり、持続的成長の実現に向けて、5G関連市場やCASEをはじめとする自動車市場など成長市場・成長領域への取り組みの遂行にあたって、電気自動車における大電流対応などの技術開発力とものづくりの一層の強化を進めてまいります。更に、営業・開発・生産体制の連携強化のもと、製品投入のスピードアップやコスト競争力の向上などに取り組むとともに、工程改善や自動化による省人化、サプライチェーン最適化等により、収益性の改善を図ってまいります。
また、当社グループは、サステナビリティ経営の推進にあたり、2024年4月にサステナビリティ推進室を設置し、グループにおけるサステナビリティの重要課題に組織的・体系的に取り組む体制を整えました。また、同じく2024年4月に執行役員等を委員とするサステナビリティ推進委員会を設置して、サステナビリティに関連するガバナンス体制を強化しております。同委員会が、今後のサステナビリティに関連する方針や戦略についての審議・策定・指示並びに重要案件の経営会議・取締役会への報告を行うこととし、サステナビリティ経営の推進をさらに加速してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、『開拓、創造、実践』の企業理念と、企業行動憲章のもとで、社会の一員として社会課題解決への貢献を通じて成長することを目指しております。
3つの主力事業がもつ革新的かつ創造性に富んだ高い技術・開発力を通じて、Connected Society、Safe Mobility、Clean Energy、Industrial Innovation、Air, Space and Ocean の5つの領域において、お客様との協創により社会価値を創出し、社会の持続的発展に貢献しながら企業価値の向上を目指します。
当社グループを取り巻く多くの社会課題を抽出し、今後も持続的成長を実現していく上で必要なサステナビリティに関するマテリアリティ(重要課題)を、今回新たに設定いたしました。
今後は、これらのマテリアリティ(重要課題)の具体的な取り組みを通じて、サステナビリティ経営の更なる強化と推進を図ってまいります。

Ⅱ.サステナビリティに関する取り組み
当社グループは、サステナビリティ経営推進のため、会長を委員長として各執行役員及びサステナビリティ課題に関係する部門長を委員とするサステナビリティ推進委員会を2024年4月に設置しました。
本委員会において、サステナビリティ経営の方針及び戦略の審議・策定、サステナビリティ戦略の具体的施策の決定・指示等を行うこととし、特に重要案件に関しては、経営会議・取締役会にて適宜報告され、経営層がサステナビリティ関連のリスク及び機会についての管理・監督を適切に行う体制としております。
当社グループは、サステナビリティ推進委員会及び全社リスク管理委員会において、当社が注力する5つの領域で、お客様との協創により社会価値を創出し、社会の持続的発展に貢献しながら企業価値向上の機会につながる課題と、当社グループの持続的成長を阻害するリスクを特定し、評価、監視、管理しております。
特に重要案件に関しては、経営会議・取締役会にて適宜報告され、経営層が適切に全社のリスク管理状況を把握、監督する体制としております。
① 環境に関する事項
当社グループは、「社会の一員として、自然環境や生物多様性を尊重し、環境にやさしい事業活動を通して社会的責任を果たすことにより、豊かで持続可能な循環型社会の実現に貢献する」を環境方針の基本理念に掲げ、各種環境管理活動に取り組んでおります。
a) ガバナンス及びリスク管理
当社グループは、環境管理に関する方針と目標の設定、環境管理活動計画の実施促進と評価・検討を行うため、環境管理委員会を設置しております。本委員会活動の中で、当社グループの持続的成長を阻害するリスクに関わる事項は、全社リスク管理委員会へ報告、及び審議を行うこととしております。
b) 戦略
○気候変動対策
近年、気候変動による影響がこれまでの想定に比べより深刻であることが報告され、脱炭素社会の早期実現が世界共通の喫緊の課題となっております。当社グループは、気候変動には異常気象による事業停止、操業度低下、人材消失や、また環境規制強化に伴う対策コスト増大等を発生させる重大なリスクがあると考えており、重要な課題であると捉えております。
気候変動への対応詳細については、「d) 気候変動に関するTCFD提言に基づいた情報開示」の項で記載しております。
○循環型社会の促進(資源の有効活用)
最近では、世界的に資源供給のひっ迫が懸念され、循環型社会への転換が求められております。
事業活動により発生する不要物の取り組みとして、レスペーパーによる一般廃棄物の削減、プラスチック系・金属系廃棄物の分別徹底によるリサイクル及び有償売却により再資源化を図っております。
○生物多様性の保全
豊かな地球環境を守っていくには生物多様性は重要であり、当社グループは、社会の一員として自然環境や生物多様性を尊重するとともに、事業活動を行う上で少なからず生物の環境に影響を及ぼしていることを認識するよう努めております。地球温暖化対策、省資源活動、化学物質管理等、日頃の環境管理活動を実践し充実させていくことが生物多様性の取り組みにつながると捉えております。
環境経営のシンボルとして、2004年度に森林の再生保全のため、「航空電子グループの森」を開設しました。豊かで持続可能な社会実現のため、私たちは植林や下草刈りなどの活動を通して、グループ社員の森林保全による環境意識啓発の場とすることに加え、温室効果ガス(CO2)の吸収並びに水源の涵養(かんよう)に貢献しております。
・ヒノキと広葉樹によるCO2吸収量:年間5.3t-CO2
・地下水の涵養量推計値:年間5,320㎥
c) 指標と目標
上述「Ⅰ.サステナビリティに関するマテリアリティ(重要課題)」に記載のとおりであります。
d) 気候変動に関するTCFD提言に基づいた情報開示
○方針
当社グループは、気候変動に関連する問題を重要な経営課題ととらえ、気候変動がもたらすリスクと機会の分析を行い、事業活動を通して取り組みを推進し、持続的成長を目指します。
○ガバナンス
上述「(1) ガバナンス」のとおりであります。
なお、気候変動に伴う自然災害や環境法規制などの重大なリスクは、全社リスク管理委員会において、審議されることとなっております。
○戦略
■シナリオ分析
当社グループは気候変動について、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書(SSP1-1.9 (1.5℃シナリオ)、SSP5-8.5(4℃シナリオ))や国際エネルギー機関(IEA)のWorld Energy Outlook 2022等を参考にシナリオを分析し、リスクと機会を抽出、当社グループの事業に与えるインパクトを評価しました。
■リスクと機会
※影響は発生頻度及び財務影響を加味して評価
○リスク管理
上述「(2) リスク管理」のとおりであります。
また、気候変動による大規模な自然災害が発生し、事業継続に支障をきたした場合は、事業継続計画に基づき、社長を本部長とした中央対策本部を直ちに設置し、対策立案及び実行の指示、命令を行う仕組みとなっております。
○指標と目標
・航空電子グループは、気候変動対策を喫緊の課題と捉え、2050年度までにカーボンニュートラルを目指します。
・温室効果ガス削減の考え方としては、施設・設備の高効率化、照明のLED化等の省エネ施策を推進することにより、電力購入そのもののミニマイズ化を図り、不足分について、自家発電や再生可能エネルギー由来の電力への転換などで対応することとしております。
・従来目標の達成を受け、昨年度再設定した2030年度に向けた温室効果ガス総排出量の削減目標は、2030年度の温室効果ガス総排出量(Scope1,2)を、グローバル生産ベースで、2017年度比75%削減としております。さらにカーボンニュートラルの達成時期についても、今後可能な限り前倒しできるよう努力していきます。
※グローバル生産ベース:主要な生産会社を対象。

※参考:温室効果ガス削減実績
(注) 1.Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
2.各数値は、グローバル生産ベースで集計しております。
・Scope3について
当社グループとしては、Scope3削減の重要性は認識しており、これまで同様サプライヤー様と協力して削減努力を継続していくとともに、今後は具体的な削減目標を設定して取り組むことを検討していきます。
② 人的資本に関する事項
当社グループの企業理念である『開拓、創造、実践』を具現化し、継続的な企業価値の向上を支える原動力は人材であります。当社グループは、人的資本の向上を実現するために「多様な人材の活躍推進」、「人材育成の強化」、「社会環境整備」について各種施策に取り組み、人への投資を積極的に進め、従業員のエンゲージメントと生産性の向上を目指し、イノベーションの実現につなげてまいります。
a) ガバナンス及びリスク管理
当社グループの将来の発展に向けた事業構造の改革及び事業力の強化のため、グループ全体の人員の適正化、人材力の有効活用など人的資本に関わる課題や具体的な施策を検討し、対応施策を推進するため、経営人材活用委員会を設置しております。本委員会活動の中で、当社グループの持続的成長を阻害するリスクに関わる事項は、全社リスク管理委員会への報告、及び審議を行うこととしております。
b) 戦略
○多様な人材の活躍推進
当社グループは、年齢、性別、国籍、障がいの有無にとらわれず、多様な人材が活躍できる職場環境の実現に向けた取り組みを推進しております。これらの取り組みを通じて、多様な人材による多角的な視点や新しい価値創造につなげ、組織力を強化してまいります。
現在注力している主要な取り組みとして、
■女性活躍推進に関しては、
・女性社員の積極的採用
・女性管理職登用に向けた女性選抜研修の実施
・女性社員がリーダーシップを発揮できる環境をつくるためのアイデアを話し合う女性管理職の座談会の実施
等の施策を実施し取り組みを強化しております。
■障がい者雇用に関しては、障がいを持つ社員がやりがいを持って仕事に取り組めるよう、障がいに応じた業務設計を行い、個々の強みを活かせる職場環境を整えております。また、障がいの有無に関わらず、スキルアップやキャリア形成の機会を提供し、成長できる職場環境の整備を進めております。
○人材育成の強化
グローバル市場における競争力を確保するため、及び経営環境の急速な変化に対応するためには、社員個々人のスキルアップを図ることが重要であります。当社グループは、従業員の経験・役割に応じた知識を習得するための階層別研修、専門知識をより一層深める職能別研修を体系的に整備するとともに、社員が将来を見据えて自律的にキャリアを形成できるよう、自己啓発を促すプログラムの設定や、計画的な幹部人材の育成を図るための選抜研修も導入しております。また、ものづくりの技能伝承を目的とした教育、資格取得の強化も図っております。
○社内環境整備
当社グループは、社員が安全で働きやすい職場環境を実現するとともに、働きがいを持って活躍できる職場の実現を目指しております。
具体的には、柔軟な働き方を選択でき、ワーク・ライフ・バランスを実現できる在宅勤務制度、フレックスタイム制度の導入や、育児・介護のための短時間勤務、配偶者出産休暇、子供の看護や家族の介護の際に取得できる休暇、育児休業・介護休業制度など、育児・介護と仕事の両立を支援する各種制度を整備しております。
c) 指標と目標
上述「Ⅰ.サステナビリティに関するマテリアリティ(重要課題)」に記載のとおりであります。
なお、当該指標における取り組みは、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、目標及び実績は提出会社(単体)または国内の数値を記載しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが、判断したものであります。
(1) 環境課題への対応リスク
近年、地球温暖化の影響が深刻となっており、脱炭素社会の早期実現が世界共通の喫緊の課題となっております。また、世界的に資源供給のひっ迫が懸念され、循環型社会への転換が求められております。これら環境課題への対応が遅れた場合、当社グループの事業活動及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対して、当社グループは、環境課題を重要なサステナビリティ項目と位置付け、温室効果ガス排出削減による地球温暖化対策をはじめとする各種環境管理活動に取り組んでおります。
(2) 自然災害、疫病に関するリスク
当社グループの生産・販売拠点は、国内外に分散しておりますが、自然災害の発生や感染症の蔓延等のリスクを抱え事業を展開しております。このため、大規模な自然災害等が発生し、物的・人的被害の発生や物流機能の麻痺等による生産活動の縮小・停止を余儀なくされた場合、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、これらのリスクに対して、安定した製品供給を維持するため、保有する設備や情報システムに対してのバックアップ体制等の対策を講じております。
(3) 経済・金融・為替の変動及び地政学リスク
当社グループは、市場のグローバル化に対応して、生産拠点及び販売拠点を海外に展開しており、今後も積極的に行う方針であります。このため、世界各国の経済動向及び政治・社会情勢の変化や為替変動が、当社グループの調達コストやサプライチェーンなどに影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対して、需要の変動に対する対応力を強化するとともに、生産の複数拠点化などによる安定生産を図り、業績向上の確保に努めております。また、為替変動リスクへの対応として、先物為替予約による為替ヘッジを行っております。
(4) 調達・サプライチェーンに関するリスク
当社グループの製品は、原材料や一部部材を外部業者より調達しております。主要な原材料の市況価格変動による仕入コストの増加、需要の急激な変化や物流の混乱等に伴う供給元からの調達難が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対して、海外調達先の開拓と調達品のコスト低減、2社購買などによる安定調達に努めております。
また、製造過程における生産設備の稼働等、相当の電力を消費するため、電力価格の高騰が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。このリスクに対して、省エネルギー化の推進や生産性向上などによる使用電力低減に努めております。
(5) 市場・競争環境に関するリスク
当社グループは、事業を展開する市場において厳しい競争にさらされています。
コネクタなどの製品価格の低下や急速な技術革新により、当社グループ製品のシェア低下や利益率悪化等が業績に影響を及ぼす可能性があります。特に携帯市場では、製品ライフサイクルが短く、次世代製品に向けた競合との厳しいシェア競争などが顕在化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクに対して、当社グループは新製品投入を通じて市場シェアの拡大を図り、生産リードタイムの短縮、生産設備の効率化、コスト削減を推進し、競合に対する競争力強化に努めております。
(6) 生産技術、安定供給に関わるリスク
当社グループは、国内外の生産拠点にて、顧客のグローバル化に対応した最適な供給体制を構築しており、生産面においては、競争力のある製品を開発し、設備の効率的な稼働により、競合に対して優位性のある事業展開を行っています。しかしながら、生産拠点での事故や火災などにより生産ラインが停止する場合や急激な所要変動にともなう生産能力への影響が発生する可能性があります。また、新技術や工法の開発が遅れることで、競争力が低下する可能性もあります。これらのリスクに対して、最新技術の常時導入や生産拠点による分散供給体制を構築することで安定生産の維持に努めております。
(7) 製品・技術・研究開発に関するリスク
当社グループは、高い技術力を活かし、競合との厳しい競争環境の中で市場シェアを維持し、安定した利益を確保しています。しかし、製品の品質や性能が市場の要求に応えられない場合や、新技術の開発が遅れた場合、また研究開発の成果が市場に受け入れられない場合には、市場競争力が低下し、市場シェアや収益性の低下により業績が悪化する可能性があります。これらのリスクに対して、当社はグローバルマーケティングを通じて顧客ニーズの把握に努めるとともに、必要な技術開発リソースを拡充しています。また、次世代に先行する製品を開発するための要素技術開発力の強化にも努めております。
(8) 品質に関するリスク
当社グループは、「品質・ものづくりの革新」を経営の基本方針として推進しており、社会的に有用で、安全に十分配慮した高い品質の商品とサービスを提供しておりますが、万一、当社製品に品質上、安全上の不具合が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対して、評価試験体制の強化・拡充、及び高いレベルでの品質管理体制の維持・向上に努めております。
(9) コンプライアンス及び人権問題に関するリスク
当社グループは、国内外において、独占禁止法、製造物責任、贈収賄防止、データ保護、環境、人権、労務、租税等に係る法規制や輸出入規制、政府の許認可等、様々な公的規制の適用を受けるとともに、社会のなかにおける企業市民として事業を行っております。これら公的規制に関する違反のみならず、人権を含むコンプライアンス上の問題が発生した場合、損害賠償請求や信用失墜等により、当社グループの事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対して、当社グループ、法令・定款の遵守を徹底するため、航空電子グループ企業行動憲章・行動規範を制定するとともに、7月5日を「遵法の日」と定め、毎年社長が訓示を実施しております。また、法令・定款等に違反する行為や企業倫理等に関する不正行為を発見した場合の通報体制として内部通報制度を設置するなど、違反、不正行為の発生可能性を低減するよう努めております。
(10) 人材獲得・流出に関するリスク
当社グループでは、継続的な企業価値の向上を支える原動力は人材であり、優秀な従業員を獲得し維持する必要があると捉えております。少子高齢化や労働人口の減少、流動性の高まりなど労働環境の変化により、優秀な人材を確保する競争は年々厳しくなっています。十分な人材確保が困難になった場合、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対して、当社グループは多様な人材が活躍できる職場環境の実現に向けた取り組みを推進しています。また、人事制度の拡充や人材育成、社内環境の整備にも努めております。
(11) 知的財産に関するリスク
当社グループは、他社の特許権等の知的財産権を尊重しつつ、国内外において事業活動を行っておりますが、第三者から知的財産権に関する主張を受け、係争事件に発展した場合、又は、当社製品、技術が第三者によって模倣された場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。このため、第三者の知的財産権の侵害を回避するとともに、将来の事業活動に必要な知的財産権獲得のための研究開発活動の強化及び当社グループの知的財産権の保護に努めております。
(12) 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、業務を通じて入手した取引先の機密情報や個人情報等を多数保有しております。このため、サイバー攻撃、コンピュータ・ウィルスの感染、その他不測の事態により機密情報が消失、改ざん、漏洩した場合、当社グループの社会的信用低下や損害賠償請求等により、当社グループの事業活動及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対して、情報セキュリティ統括室を設置し、情報セキュリティ方針・ガイドラインの強化及び監視を徹底するほか、管理体制の整備、情報セキュリティ人材強化、情報セキュリティシステムの構築等、リスク管理に努めております。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度の世界経済は、米国では金融引き締めの継続によりインフレ率が低下するなかで個人消費は底堅く推移したものの、期後半にかけては減速感が見られました。中国では政策効果により緩やかな景気回復が見られましたが、期全体としては停滞が継続しました。わが国経済においては、堅調な企業収益や景況感改善、個人消費の回復により景気は緩やかな回復基調で推移しました。
一方、期後半には地政学リスクの高まりに加え、米国新政権発足に伴う大規模な関税の引き上げ方針をめぐり、米国を含む世界経済の悪化懸念が高まるとともに、先行きに対する不透明感が増大しました。
こうした中、為替は総じて円安基調で推移しましたが、期末には、米国新政権の関税政策も影響し、円高方向に振れました。
当社グループの関連するエレクトロニクス市場においては、自動車市場では電動車での減速や、各国の需要減により生産台数が減少したほか、一部顧客での生産停止の影響が見られました。携帯機器市場では需要減少の底は打ったものの、依然として買い替えサイクルの長期化や、中国市場での高級機種を中心とした回復の遅れなどの厳しい状況が継続しました。産業機器市場においては、市場の本格的な回復には至らず、低迷が継続しました。重点市場として追加した航空・宇宙市場においては、防衛予算の増額を背景に需要が拡大しました。
このような状況のもと、当社グループは、主力のコネクタ事業を中心に、積極的なグローバルマーケティングと新製品開発活動のスピードアップによる受注・売上の拡大を図るとともに、材料費等の高騰に対応した取引価格の適正化や内製化の更なる強化による工場稼働率改善、設備効率化によるコストダウン、諸費用抑制など経営全般にわたる効率化を推進し業績向上に努めました。
しかしながら、携帯機器向け製品の一部終息や産業機器向けにおける市場回復遅れの影響を受けたことなどから、当連結会計年度の業績は、売上高2,216億44百万円(前連結会計年度比98%)、利益面においては、営業利益156億15百万円(前連結会計年度比108%)、経常利益148億38百万円(前連結会計年度比101%)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益が減少したことから、115億92百万円(前連結会計年度比95%)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
① コネクタ事業
自動車分野においては、電動車の成長鈍化や欧州における需要減少の影響を受けましたが、ADAS関連製品の伸長により堅調に推移しました。一方、携帯機器分野において、一部製品の終息に加え市場の需要低迷が継続したほか、産機・インフラ分野において、市場回復遅れの影響を受けたことから、当連結会計年度の売上高は1,928億25百万円(前連結会計年度比99%)となりました。利益面においては、自動車分野における売価適正化などにより、セグメント利益は176億54百万円(前連結会計年度比115%)となりました。
② インターフェース・ソリューション事業
自動車分野においては、顧客の一時操業停止の影響を受けながらも、前年並みを維持しましたが、産機・インフラ分野において、市場回復遅れの影響を受けたことから、当連結会計年度の売上高は89億93百万円(前連結会計年度比89%)、セグメント利益は3億20百万円(前連結会計年度比75%)となりました。
③ 航機事業
航空・宇宙分野においては、防衛費増額の追い風を受けて装備品の納入が増加しましたが、産機・インフラ分野において、油田掘削向けセンサの需要減少や製品拡充が遅れたことに加え、半導体製造装置向け製品が顧客の在庫調整の影響を受けたことから、当連結会計年度の売上高は193億15百万円(前連結会計年度比96%)、セグメント利益は25億53百万円(前連結会計年度比70%)となりました。
財政状態の状況は、次のとおりであります。
当連結会計年度末の資産、負債及び純資産の状況は、日銀の金利政策変更に伴い高騰する借入金利の負担軽減並びに回転率の改善に向けた総資産の圧縮を目的として、資金管理を強化し、借入金の返済を行いました。
総資産は、退職給付に係る資産の増加はありましたが、現金及び預金の減少に加え、売上債権の回収促進による減少などから、前連結会計年度末に比べ205億98百万円減少の2,154億44百万円となりました。
負債は、主として上述の借入金返済により、前連結会計年度末に比べ274億83百万円減少の817億48百万円となりました。
純資産は、自己株式の消却を実行したことにより、利益剰余金及び自己株式がそれぞれ減少したものの、主として、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により、前連結会計年度末に比べ68億85百万円増加の1,336億96百万円となり、自己資本比率は62%となりました。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益及び減価償却費の計上により、363億41百万円のプラス(前連結会計年度は348億59百万円のプラス)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主として新製品生産用設備を中心とした有形固定資産取得による支出などから、192億3百万円のマイナス(前連結会計年度は203億13百万円のマイナス)となりました。この結果、フリー・キャッシュ・フローは、171億37百万円のプラスとなりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済及び株主配当金の支払いにより、315億68百万円のマイナス(前連結会計年度は118億96百万円のマイナス)となりました。
以上により、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ154億23百万円減少の528億74百万円となりました。
当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績、受注実績及び販売実績は、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価額によっております。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
「(経営成績等の状況の概要) (1) 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
「(経営成績等の状況の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社グループの運転資金需要(営業活動による資金需要)の主な内訳は、グループ製品の新製品開発及び製造のための材料及び部品の購入のほか、労務費、製造経費、販売費及び一般管理費等であります。また、設備資金需要(投資活動による資金需要)の主な内訳は、新製品開発、生産性向上及び品質向上のための設備投資と当社グループの永続的な発展のためのインフラ投資等であります。
こうした資金需要に対し当社グループは、グローバルマーケティングと技術開発力の強化による受注・売上の拡大と環境・品質を重視した競合に負けないものづくりを積極的に推進し、キャッシュ・フローの創出に努めております。中期経営計画に掲げた企業価値向上に向けた取り組みを通じて資金を確保し、成長投資への活用に加え、借入金の早期返済など財務体質の強化及び株主還元のバランスを図ってまいります。
なお、グループ資金調達リスクの回避及び資金コストの低減を図るため、コミットメントライン契約による資金調達枠の確保、キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)によるグループ内資金の効率化などの対策を講じております。
当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 中長期的な会社の経営戦略」に記載したとおり、昨年修正した中期経営計画目標(売上高2,600億円、経常利益240億円)に対して、産機・インフラ市場における市場回復遅れや携帯機器市場の不振等から、業績の進捗にギャップが生じている中で、注力4市場それぞれで業績拡大に向けた挽回策を講じ、最終年度である2025年度については、売上高2,400億円、経常利益175億円を新たな目標として設定し、これの達成を目指します。
中期経営計画4年目となる当連結会計年度の実績値及び達成率は、以下のとおりであります。
なお、中期経営計画最終年度(5年目)となる翌連結会計年度は、引き続き自動車分野が牽引し、産機・インフラ分野の回復及び防衛予算増加による航空・宇宙分野の売上拡大により、目標の達成を目指してまいります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により、2024年4月1日前に締結された金銭消費貸借契約については、記載を省略しております。
当社グループは、グローバルな視点での事業運営と顧客価値の追求に徹し、優れた製品をタイムリーに市場に供給するため、グローバルマーケティング力の強化及び技術開発力の強化を積極的に推進しております。これを牽引し支えるために、商品開発センターにおいては、基礎・応用技術の研究開発を主体に、各事業部の技術部門においては、所管事業に関する新製品、新製法の開発を主体に、それぞれが連携をとりながら長年にわたって培ってきた経験と実績を生かして研究開発活動を実施しております。また、各生産子会社は、所管製品に関連する事業部との密接な連携のもとに新製法の開発を主体に取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
IoT社会に貢献する新たな電気接続技術の構築を目指した探索的研究に取り組んでおります。具体的には柔軟性や伸縮性という新たな電気接続の市場要求に応えるべくフィルム型コネクタ(Film Type Connector:FTC)の研究を継続し、ウェアラブル用途のセンサ機器に搭載すべく、お客様と協業して製品適用を目指しております。また、このFTCは柔軟性や伸縮性による電気機器内の省スペース化に加え、はんだや接着剤レスによる省資源、省エネルギー化というカーボンニュートラル対策にも繋がるとの認識がお客様に拡がりつつあり、大面積型のセンサやフレキシブルディスプレイなどの用途でも注目を集めております。
IoT社会の鍵となるセンサ及び解析技術分野では、構造物診断市場への参入を目的として、独自に開発したMEMS加速度計を用いた高精度のセンサシステムによる橋梁の劣化診断研究を継続しております。大学や地方自治体と連携し、センサシステムを数多くの一般道と高速道路上の橋梁に設置した実証実験を行うことで、劣化診断に資するデータ取得技術を獲得しました。得られた成果の一部を土木学会にて公表し、“橋梁補修の優先順位を考える手段として、業務効率化と経費削減に繋がる有効な手段”との高評価をいただいております。
このほか、産学官連携で独自の水位計システムを山岳エリアに設置し、過疎化する山岳農村地帯の安全確保に貢献すべく地すべりセンシングの実証実験を継続しており、農地や工場内での水位計システムとしても実証実験を開始しております。さらに、将来の当社事業を支える超高感度センサシステムの構築を目指して、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の経済安全保障プロジェクトの下、資源探査や自動運転などに貢献すべく超高感度センサとそれを利用した次世代航法システム開発を推進しました。当該航法システムに必要な量子ジャイロ、重力勾配計、及び加速度計の開発を進めております。
モノづくり面では、電磁両立性(EMC)解析技術や材料分析技術による製品設計へのフィードバック強化に加え、カーボンニュートラルの実現に向け、再生材料や植物由来材料の特性把握を目指す材料分析研究も進めております。また、撥水付与・潤滑・摩耗といった現象に関する材料特性の制御技術を磨き上げ、EV充電端子などの接点部における金属めっき膜の摩耗を大幅に抑制する接点界面の設計技術を自動車関連のコネクタ端子部分に適用しました。本技術は摩耗抑制に加え、材料使用量の低減なども実現した点がお客様からも評価されております。
当連結会計年度における研究開発費の金額は579百万円であります。
製品開発では、自動車内でのインフォテイメントシステムが益々充実していく中で、USB3.2伝送を可能とした車内配線用コネクタ「MA07」シリーズに加え、情報量の増加に対応して、ECU基板に数個並べて搭載可能とするため、「MA07」より幅寸法を21%削減した「MA07C」シリーズを開発しました。
アジアを始めとする新興国における2輪車のUSBチャージャーでは、車載用の製造工程管理要件を満たしたIATF 16949準拠USB Type-C®コネクタの開発を行いました。既製USB Type-C®コネクタのIATF 16949対応品のバリエーションを拡充し、今後も自動車市場への展開を図ってまいります。
劣化した信号波形を再生成するリタイマ―を内蔵したUSB4®(~20Gbps)対応ハーネス付製品の開発においては、ケーブルの細径長尺化、信号線と電源の共用による省資源及び軽量化の研究を進めております。車載カメラなどの高速シリアル伝送向けハーネス製品の動作検証環境の構築及び車載イーサネット技術への製品展開の検討も進めております。
TESLAが発表した充電規格がNACS(North American Charging Standard:北米充電標準規格)として一般公開され、北米市場の主要自動車メーカーが新車にNACSを採用する意向を示しています。さらに自動車技術者協会(SAE)は、NACSを標準規格として制定を進めており、NACSに準拠した充電コネクタの市場シェアが拡大することが見込まれています。このような市場のニーズに応えるため、NACSに準拠した充電コネクタ「KW51」シリーズを開発しました。
また、従来の車載用コネクタの高い組立作業性を維持しつつ、低背・狭ピッチ化を実現した基板対ケーブルコネクタ「MB01」シリーズを開発しました。主な用途としては、BMS(Battery Management System)、カーナビゲーションシステム、オーディオ機器、エアコンなどが挙げられ、特に車内に搭載される非防水コネクタ全般に幅広く対応しています。基板に搭載する際の面積を削減したことで、機器の薄型化や軽量化に貢献できる製品となっております。
一次予防(病気の発生を防ぐ)分野のEMS(Electrical Muscle Stimulation:電気筋肉刺激)アパレル製品に採用されているスマートテキスタイル用コネクタ「RK01」シリーズについて、従来の導電繊維とは異なる金属電線との接続に対応するとともに、化粧品など薬品への耐性に優れた樹脂を採用し、さらに従来比2倍の挿抜回数を可能にした製品を開発しております。また、スポーツ・フィットネスや予防医療などの様々な用途に向けてスマートテキスタイル用コネクタの小型化と多品種化の開発を推進しております。
生産技術開発では、ICT用、車載用、インフラ用コネクタを中心に、組立工程やハーネス加工工程における自動化設備開発による省人化を進め、高品質、低価格の実現を目指しております。車載ハーネスにおいては、全自動生産を可能とするフラッグシップ生産ラインを国内に立上げて量産を開始しております。生産能力を更に増強しつつ、様々な社会情勢に柔軟に対応できるように海外の生産拠点に順次展開を図ってまいります。また、産学連携なども活用したモノづくりを推進し、自動生産化の基礎レベルや部品加工精度の引き上げも図っております。
サステナビリティに関する取り組みとして、バイオマスやリサイクル材料を活用した部品生産のノウハウ構築及び生産設備の省エネルギー化の研究を推進しております。また、ケーブルの高周波特性の検査回路を開発し、必要な機能に絞り込むことで、消費電力の抑制を目指しております。
基盤技術開発では、製品開発に関するものとして、次世代車載ネットワークの光化に向けた車載用AOC(Active Optical Cable)を試作開発しております。このほかにもデータセンター向け224G内装ケーブルの研究開発を推進しております。要素技術としては、アルミ太径電線とコンタクトの超音波結線技術、低荷重接点向け接触技術の開発を推進し、解析技術としては、車載高速伝送ケーブルの解析設計技術、100GHz伝送の解析設計技術、振動環境下での繰返荷重の解析技術、熱環境下でのゴム解析技術の他、最適化解析のコネクタ設計への応用にも取り組んでおります。
新領域のアンテナでは、PCB/FPCに接続した細線同軸ケーブルを介して、通信用回路基板から離れた場所にも配置可能な、「AP01/02」シリーズの開発が完了しました。北米の5G・LTE周波数帯に対応する為の広帯域化や広汎な使用環境での動作を保証し、高い放射効率及び金属接近時の特性向上を実現した製品となります。また、板金のアンテナについては車載用途のGNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)向けに、単一の素子でL1(1.5GHz)とL5(1.1GHz)の周波数帯に対応するアンテナ構造の研究開発に取り組んでおります。このほか、アンテナを基板に搭載した無線通信モジュールの検討を行っております。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
※USB4®、USB Type-C®はUSB Implementers Forum, Inc.の登録商標です。
自動車市場における自動運転技術の進展に伴い、LiDARなどADASセンサの搭載が拡大しており、センサを保護するカバーには、高い透過性と雪や霜が付着した場合の素早い除去が求められております。これらの課題に対応すべくフィルムヒーター及びカバーを開発しており、お客様と製品適用に向けた評価を進めております。フィルムヒーター開発では、低抵抗且つ高精細といった特徴を持つ当社のメタルメッシュ印刷技術により均一な熱分布と迅速な昇温を実現し、素早い解氷・除霜が可能なことを実証しました。また、カバー開発では、シミュレーションを駆使した設計により、少ない表面処理回数で高い透過性を実現し、センサ性能向上に繋げたことに加え、材料や電力使用量も削減したことでサステナビリティにも対応しています。これらの技術はインフラ市場のお客様からも評価をいただいており、更なる設計改良を進めています。ADASセンサ以外の用途展開に向けては、メタルメッシュの特徴である柔軟性を活かし、3次元曲面にメタルメッシュを形成する開発を推進しています。
産機市場に向けては、静電タッチパネルと液晶を組合せた表示ユニットを開発しており、液晶の表面を覆うカバーに光の反射を低減する表面処理を行うことで、液晶本来の表示に近づけるよう取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
センサ製品開発では、一般計測市場において、MEMS型と比較して精度面で優位性を持つ小型の3軸一体型のクオーツ型加速度計の開発を進めています。従来の1軸型製品の磁気回路構造を継承しながら、機構の高密度レイアウト設計や回路の高集積化、接合部へのドットコネクタの採用などにより、当初容積比で50%の小型化を実現しました。あわせて、センサ出力のデジタル化やBluetoothによる無線化などの研究も進めています。
光応用センサにおいては、将来防衛市場製品への適用も視野に入れながら、小型化とバイアス安定性などの性能及び耐環境性能向上に向け、光学部品の製造プロセス開発も含めた製品開発を継続しています。また、ガラスブロックなどキーパーツの精度向上に向けた加工プロセスの最適化や新たなデジタル制御方式の研究などによりセンサ精度の向上へ取り組んでおります。
ドローン市場製品では、より安全性を向上させたフライトコントローラの開発として冗長化機能の研究と、電波を用いたセンサとして高度計測だけでなく水平方向の障害物検知が可能な電波距離計の開発を進めております。
航機製品共通課題である安定した接着工程の確立に関し、接着剤を使用しない接合技術において、東大との産学連携で取組み、円筒形状同士の接合について、射出成型の技術を応用した研究を行いました。
当連結会計年度における研究開発費の金額は