第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。

 

(1)経営方針

 当社グループは、全社員が共有する理念・行動体系である「Futaba Way」の下、Futaba哲学の「本質之直視」により、事業戦略策定から業務執行全般・モノづくりの現場に至るまで、常に本質を探究し、「なくてはならない器材・サービスを創出し、世界の発展に貢献する」ことを企業理念としています。

 この理念を実現するため、「モノづくりを基軸としたソリューション」による事業領域の拡大、「製販一体」による顧客ニーズをダイレクトに商品企画や製造に反映させるとともに収益性を意識した営業展開を行い、「選択と集中」により成長市場に向けた差別化と効率化を進めています。加えて、Futabaテクノロジーを進化・融合させた「新製品開発力」により育てた芽を成長事業へ促進し、企業価値の継続的向上を図っています。

 また、コンプライアンスの徹底による公正で透明性の高い経営を実践するとともに、当社グループの製品やサービスの提供により社会的な課題解決と責任を果たし、真に社会に有用な企業となることを目指して効率的な健全経営に取り組んでいます。

 

(2)経営環境

 当社グループを取り巻く環境は、当連結会計年度において国内外の経済環境は新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、経済活動の萎縮やサプライチェーンの変化など大きな影響を受けました。

 今後の状況については、米国は追加経済対策の効果で感染拡大前の水準まで回復すると見込まれ、欧州は新規感染者数の再増加に伴う経済活動制限などの影響により回復ペースは緩やかなものにとどまる見通しです。中国については回復の持続が見込まれ、その他アセアン諸国の回復はまだら模様と予想されます。日本経済においても追加経済対策やワクチン接種の諸政策による回復が見込まれており、総じて世界経済は各国の経済政策により回復が見込まれますが、新型コロナウイルス感染症ワクチンの普及遅れなどの懸念や米中関係の動向や地政学的な緊張があり、依然として先行きに不透明感があります。

 当社グループの関連市場は、自動車関連については半導体等の供給不足による生産調整の問題はありますが、世界の自動車生産台数の回復を見込み、さらにコネクテッドや電動化等の技術革新と環境問題による大変革が進むと予想され、電子デバイス関連事業のディスプレイやタッチセンサー、システムソリューション製品、生産器材事業の金型用器材や成形・生産合理化関連機器の需要が見込まれます。

 民生・産業機器用分野においてはまだら模様であり、国内製造業の設備投資意欲は低いものの、半導体需要に伴う設備投資増加から電子デバイス関連事業のシステムソリューション製品および生産器材事業の金型用器材や成形・生産合理化関連機器の伸びが見込まれます。

 また、インフラの老朽化による検査・監視ニーズや感染症対策を含めた省人化・無人化ニーズから、IoT機器やサーボ関連機器およびUAV関連機器への需要を見込んでおります。今後も変化を続ける市場ニーズをタイムリーにとらえ、成長分野を見極めてまいります。

 

 

(3)中期経営計画と目標とする経営指標

当社グループは次々変化する経営環境に対処するため、3カ年の中期経営計画を策定しております。

① 2020年4月から2023年3月までの中期経営計画(Futaba Innovation Plan 2023)について

構造改革による収益改善とともに積極的な投資により、前中期経営計画の期間に取り組んできた新製品や新規事業の「萌芽ステージ」として、継続的な成長を確実なものにすべく取り組んでいます。

その基本方針は次のとおりであります。

「体質の改革」:事業ポートフォリオの再構築、組織再編、コスト構造改革により実現

「深化と拡張」:固有技術を進化させ、利便性の高い製品を供給し、合理化ソリューションを提供することで、新たな領域へと事業を拡張

「投資と挑戦」:積極的な投資を行い、新たな価値を持続的に創出するための挑戦を促進

 

 具体的には「体質の改革」は、まず「事業ポートフォリオの再構築」が必要であり、モノづくり企業として培ったハードを核として、そこにソフト・サービスを組み合わせて、競争優位性のある製品を創出し事業領域を拡大するとともに、技術・製品の用途拡大による次期主力事業の創出も並行して行います。

 これらの活動を推進するために撤退を含めた事業の取捨選択を行い、成長市場に向けた次期主力事業へと経営資源を集中させると同時に、生産性の改善や材料費比率低減などによる変動費比率の低減を進めるとともに、拠点統廃合などによる固定費削減で「コスト構造改革」も実行します。さらにお客様に寄り添い、対応力を強化するため製造と営業を一体化するとともに、業態の違いに応じた素早い対応を可能にするために、BtoC事業を独立させました。さらに開発した製品の事業化を加速させるために、プロジェクトを活用して組織横断的に進めるなど「組織再編」を進めています。また、社員に対しても意欲・能力のある人材を積極的に登用するよう人事制度を改革し、組織の活性化を図っています。

 次に「深化と拡張」については、後述の「(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」において事業別に記載した施策のとおりであります。

 なお、「投資と挑戦」は、事業ポートフォリオを再構築し、新たな挑戦を進め長期的な企業価値を向上させる新規事業に向けた戦略投資、また、利益の中核となる事業の収益性改善や生産能力強化に向けた成長投資も行っていきます。

 さらに発展ステージへ向けて当社の能力を強化し、組み替えていくためにも、M&Aは適宜行っていく予定であります。

 

② 中期経営計画(Futaba Innovation Plan 2023)の初年度の進捗状況

当社グループは、昨年8月に公表した中期経営計画「Futaba Innovation Plan 2023」(2020年度~2022年度)により事業活動を展開し、体質改善に取り組んでまいりましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響等により、前年度比で減収、赤字縮小となりました。一方、計画初年度(2020年度)目標の連結売上高460億円、連結営業損失41億円に対しては、連結売上高488億2千6百万円、連結営業損失35億1千7百万円という結果となりました。

「体質の改革」として、ハードを核にソフト・サービスへ製品開発を加速化し、市場開拓と事業領域を拡大するために、経営資源の選択と集中や製販一体で知恵を出し合える組織やBtoC事業の分離を行い、さらにやる気のある人を登用し易くする人事制度に変更しました。また、生産性の改善や拠点の統廃合、デジタル技術による業務効率改善による間接費の削減に取り組みました。

「深化と拡張」は、固有技術の進化やお客様の利便性の高い製品、役に立つ合理化ソリューションの新製品を公表し、収益性の改善や産業を下支えしなくてはならない事業として持続的成長につながる取り組みを行いました。

「投資と挑戦」については、急激に変化する経営環境に対応すべく投資判断をフレキシブルに対応できる体制としました。

 

③ 目標とする経営指標

当社グループは事業の収益性改善を重要課題と認識し、「Futaba Innovation Plan 2023」の最終年度(2023年3月期)には「連結売上高640億円、連結営業利益23億円(連結営業利益率4%)」を目標として取り組んでいます。

また、利益還元を経営上の最重要課題の一つと認識し、継続的かつ安定的に実施することを基本方針とし、本中期経営計画の期間中は連結配当性向30%を目安とし、安定配当としての下限を1株につき年間28円とします。

 

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 事業別には、電子デバイス関連事業のタッチセンサーは、独自構造・工法および部品により差別化を図ることが重要課題と捉え、車内空間デザインの自由度を高めたいという市場要求を受けて、フリーデザインや3D形状タッチセンサーなど付加価値製品の量産技術の確立および安全性ニーズから衝撃を受けても飛散しにくい独自の合わせガラスを採用したカバーガラス製品の市場開拓、タッチセンサーを基軸とした顧客製品のアッセンブリーなど事業領域の拡大を図ってまいります。

 また、有機ELディスプレイについては、用途別に表示用途と非表示用途の2つのカテゴリに大別され、用途の拡大を図ることが重要課題となります。とくに非表示用途は、有機ELを光源として用いる非常にコンパクトで高精細化、高速化という技術的な差別化製品により事務機器分野へ市場展開し有機EL製品の可能性を広げてまいります。表示用途は、より薄く、より軽いディスプレイという市場要求に応えるべく、低コスト構造のフィルム有機ELディスプレイを開発し、普及の拡大を図ります。また、高い視認性が求められる車載用途のディスプレイは、車載品質を確保しつつ高輝度化を進めてまいります。

 続いて、システムソリューションは、コア技術の可能性をアライアンスにより拡張し、新事業領域へ展開することが重要課題で、無線製品やメカトロ製品を取り巻く市場は、IoTの普及、ロボットによる省人化、ドローンの産業利用といった要求が継続しています。この市場要求に応えるため、各種センサーを活用したモジュールによるシステム構築とサービス事業への拡充を行い、UAV、サーボは防災/救命、点検/測量などで利便性向上を目指した用途別プラットフォーム化による拡販、成長分野のエネルギー、医療関連市場への液晶モジュールの拡販や省力化ニーズ対応として「Roboservo」およびインフラの点検作業を効率化する構造物系IoTモニタリングシステムの開発および市場開拓を図ってまいります。

 ホビー用ラジコン機器については、BtoCとして継続的な新商品の投入およびSNSを活用した情報の発信・収集による市場の活性化とシェア拡大を目指します。また、新たな取り組みとしてUAV/ドローンの航続距離延長を目的としたエンジン、スターター、発電機が一体となったシステム「レンジエクステンダー」を産業用途へ拡販してまいります。

 生産器材事業は、高品質なハード製品を核に、ソフト・サービス分野へ進出していくことが重要課題となり、金属製品製造業の市場要求は、歩留まりや稼働率の向上、合理化といったニーズが一層高まっており、機械学習を応用したWeb受託加工サービスや遠隔監視システムのサービス化を進めてまいります。また、当社の有する無線通信技術との融合により、工作機械の稼働状況を遠隔監視する「工作機械IoTモニタリングシステム」や金型内計測IoTクラウドシステム「MMS Cloud」によるワンパッケージ化したシステムとして工程改善にかかるエンジニア不足という製造業が抱える問題の解決に貢献してまいります。

 もちろん、ハードとしての製品の追求も継続し、製品や設備・装置の軽量化に寄与し、高精度加工を可能とするCFRP製切削加工用厚板プレート「フェルカーボ」の拡販や価格や納期など需要に沿った体制構築による拡販、海外は精度の高い差別化製品で市場開拓をしてまいります。

 全事業においては、新型コロナウイルス感染症への対応として情報収集および感染拡大に伴う影響を最小限に止めるための対応を迅速に行っております。社員およびお客様をはじめとするステークホルダーの皆様の安全確保を最優先に考えており、テレワークやWeb営業/会議の導入、マスクの着用や衛生関連品の設置利用を徹底するなど、感染症防止のための対策を講じております。なお、新型コロナウイルス感染症の収束見通しが不透明なことから、今後とも感染拡大に伴う経済活動への影響を注視することにより、リスクや不測の事態を想定し、経営環境の変化に臨機応変に対応できる体制の構築を図るとともに、生活様式の変化に対応すべく迅速かつ的確な研究/製品開発と生産体制の構築も図っていきます。

 これらの経営環境変化に迅速かつ有効に対応するためには社員が生き生きと活躍し、成長できるようにすることが必要であり、個々人が自ら考え変革し、提案力と行動力で会社組織を動かすことで、世界に誇れる成果を成し遂げられる人財育成の仕組みの充実を図るとともに、多様な人材がやり甲斐を持って働き続けることができる環境を作ってまいります。

 

 今後も株主の皆様の負託にこたえることを経営上の最重要課題と認識し、継続的かつ安定的な利益還元を実施するとともに、コンプライアンスの浸透、リスク管理の強化に努めてまいります。

 

 

2【事業等のリスク】

当社グループの経営成績および財政状態及びキャッシュ・フローの状況への重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクには、以下のようなものがあります。

これらのリスクに対応するため、平時および有事におけるリスク管理の定めに基づいて、リスクの把握とその評価を行い、対応方針の策定と整備を行っています。また、有事においては対策組織を立ち上げ、迅速かつ適切に対応することで、被害や損害の最小化を図っています。

なお、当該事項は有価証券報告書提出日(2021年6月29日)現在において判断した記載となっており、現時点では予測できない又は、重要と見なされないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。

 

カテゴリー

リスク項目

リスク内容

対応策

事業戦略

市場ニーズ・技術の急速な変化

市場ニーズの急速な変化、技術の進化への適切な対応が当社の製品・サービスの付加価値となっており、十分な対応が取れないことや、成長分野への積極的投資等の回収計画未達により、業績や成長に悪影響を及ぼす可能性があります。

多様化するニーズや技術革新に対応するために、研究開発部門で技術動向による新たな固有技術の探求、営業部門で市場・顧客ニーズの把握を行い、それに基づき各事業で1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等の「(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載の施策で取り組んでいます。

また、設備投資については、計画段階での審査に加え、定期的に回収状況を確認しています。

 

競争の激化

それぞれの事業の関連する分野において、他業種からの新規参入も含めて価格競争が激化する可能性があり、想定を超える価格競争が発生した場合には、売上高、市場シェア、利益等に影響を及ぼす可能性があります。

各事業分野において、徹底した原価低減によりコスト競争力を高めるとともに、独自技術や品質・信頼性で競合他社と差別化を図り、シェア拡大を図っています。

さらに、市場の動向や競争の状況によって事業ポートフォリオの見直しを行っています。

財務

金融市場の変化

取引先および取引地域が世界各地に渡っており、外貨建てで取引され、製品、サービス等のコストおよび価格が、為替変動による影響を受けます。また、金融変動、インフレ、デフレ等が予想を超えた場合、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

米ドル建てを主としており、一部は為替予約を実施し、定期的な外貨建て資産の見直しによる売却等で、リスクを軽減させる措置を講じています。

製造およびサプライチェーン

品質問題

製造販売する製品は技術製品であり、その用途が拡大するなどの原因により、未知の分野や予期せぬ環境での使用に伴う不具合の発生などで、信用低下につながる場合があり、業績および財務状況へ影響を及ぼす可能性があります。

IATF16949やISO9001の認証取得を含む品質保証体制の確立およびレベルの高いサービス体制の構築に努めています。また、万が一に備えPL保険等の損害賠償責任保険に加入し、賠償額の負担軽減を図っています。

 

コスト競争力

グループ外調達により原材料、部品、サービスの供給を受けており、部品・材料・原油等の予想を超える価格の高騰が生じた場合の他に、歩留や生産性の低迷により、コスト競争力で他社に遅れを取る可能性があります。また、たな卸資産が陳腐化した場合には損失が発生し、業績や事業等に影響を及ぼす可能性があります。

製品設計や材料のVA/VE、コスト競争力のある部品・材料の調達の他に、自動化および最適地生産も含めコスト削減を図っています。また、たな卸資産の停滞や過剰の発生を極力抑え、評価損等を軽減させる取り組みも行っています。なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「災害」カテゴリーの記載をご参照ください。

 

 

カテゴリー

リスク項目

リスク内容

当社の対応策

研究開発

技術革新

世の中の技術革新が急激に進化し、その対応に遅れるだけでなく、新たな表示デバイスの出現や代替品の出現等で、当社の既存製品が陳腐化し、市場を奪われ、業績や事業等に影響を及ぼす可能性があります。

「なくてはならない器材・サービスを創出することで、世界の発展に貢献する」ことを企業理念としており、顧客価値を追求した事業モデルの開発、先鋭化(新技術の探求、要素技術開発)、外部リソースを融合したソフト要素や共鳴する技術の獲得に取り組んでおり、成長分野への積極投資も行っていきます。

 

知的財産権

独自に開発した技術などが、グローバルな競合の中で、第三者より知的財産権に基づく権利の主張を受ける可能性が常に存在します。また、営業秘密の予期せぬ流出により、競争力が低下することもあり、その場合には業績に影響を及ぼす可能性があります。

製品の差別化と競争力強化のために、独自に開発した技術を特許権などとして権利化するとともに、ノウハウなどの営業秘密については、企業秘密管理規定により管理しており、それらを活用した市場競争力のある新製品の開発に注力しています。

人財

人財の確保・育成

営業部門、研究開発部門、技術部門、製造部門、間接部門の全ての部門において、優秀な人財を確保する必要があります。しかしながら、少子高齢化に伴い、若手社員の確保が難しくなり、優秀な社員の引き抜きや、今後の定年退職者の増加により技能の継承が出来ず、将来の事業運営等に影響を及ぼす可能性があります。

継続的に優秀な人財を確保するために、新卒の他に、専門性の高い人財の中途採用を継続的に行うとともに、人財の定着にも配慮しています。また、人員不足に対応すべく技能に頼らない自動化生産体制の構築も行っています。

さらに、資格取得支援、研修制度を体系化し人財の育成に注力しています。

災害

自然災害・感染症

南海トラフを原因とする巨大地震や首都圏直下地震をはじめとする火災、風水害、火山噴火等の自然災害の他に、新型インフルエンザや、新型コロナウイルス等の感染症が発生した場合、リスクとして取引先の倒産等による影響を含め全てを回避することは困難であり、昨今の気象変動などに伴う災害の大規模化も含め、事業運営および業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、大地震等の大災害発生時における対応策を予め策定・準備し、日頃より各種災害対策訓練の他に、大災害が発生した場合も、社長自らを本部長とする災害対策本部を設置し、人的・物的被害を最小限に抑え、事業を中断することのないようにBCP(事業継続計画)を準備しています。また、政府から発信される情報に基づき、感染症などへの対応も行っています。

なお、2020年1月より顕在化した新型コロナウイルス感染症が世界的に流行しておりますが、当社グループは対策組織を立ち上げ、事業継続や社員の健康および感染拡大の防止などの対応を図っています。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

経営成績等の概要

(1) 経営成績

 当期の経営成績

 当期における国内経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行の影響を受け、経済活動の停滞や個人消費の低迷が続くなど厳しい状況となりました。緊急事態宣言が解除され景気の悪化は一旦底を打つかと思われましたが、年度末に向けて新型コロナウイルス感染症の再拡大の動きがみられ、まん延防止等重点措置が講じられるなど、停滞感の強い状況が続きました。

 世界経済につきましては、中国では緩やかな景気の回復が見られ、欧米諸国ではワクチンの接種も進み、段階的な経済活動の再開の動きもありましたが、新型コロナウイルス感染症の変異株出現等による感染拡大や都市封鎖の再開のほか、米中貿易摩擦の影響や半導体など一部部材の供給不足といった、不透明要因も多く予断を許さない状況が継続しています。

 こうした経済情勢下にあり、当社グループは第2次中期経営計画(Futaba Innovation Plan 2023)に基づき、コスト構造改革による収益の改善と積極投資による事業成長の促進に努めましたが、市場環境の悪化の影響を受け、業績は低迷しました。

 なお、当期に実施した主な取り組みは、以下のとおりです。

①コスト構造改革としましては、有機ELディスプレイ事業に経営資源の集中を図り、より一層の事業強化を目指すため蛍光表示管および蛍光表示管モジュール事業からの撤退を決定しました。

②事業成長の促進としましては、社内リソースの融合と応用による「工作機械IoTモニタリングシステム」、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製の切削加工用厚板プレートである「フェルカーボ」、920MHz帯を利用した無人機用コントローラー「FMT-04」や金型内計測システムのデータをクラウドで一括管理する「MMS Cloud」などの新製品・サービスを市場に投入しました。また、国産ドローン製品の開発やオールインワンモータモジュール「Roboservo」のサンプル販売を開始するなど、新たな価値を創造するための投資も積極的に行ないました。

 以上の結果、当期における売上高は488億2千6百万円(前期比14.7%減)となりました。このうち海外売上高は277億8千5百万円(前期比16.9%減)となり、国内売上高は210億4千1百万円(前期比11.5%減)となりました。収益面では、営業損失は35億1千7百万円(前期は営業損失36億9千8百万円)となりました。また、経常損失は25億1千3百万円(前期は経常損失33億4百万円)となり、親会社株主に帰属する当期純損失は、減損損失を計上したことにより54億3千万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失101億1千8百万円)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

 

① 電子デバイス関連

(主な製品:タッチセンサー、有機ELディスプレイ、蛍光表示管、複合モジュール、産業用ラジコン機器、ホビー用ラジコン機器等)

 タッチセンサーでは、主力の車載用途においてコモディティ化の影響を受けたことから、売上げは前期を下回りました。

 有機ELディスプレイでは、在宅勤務の増加によるWi-Fiルータ向けや事務機用途が好調でしたが、車載用途および映像用途が低調に推移したため、売上げは前期を下回りました。

 複合モジュールでは、事務機用途は好調に推移しましたが、EMSの受注が落ち込んだことから、売上げは前期を下回りました。

 産業用ラジコン機器では、医療用途や無人機用サーボが順調に推移しましたが、農業関連向けやFA向けが低迷したことから、売上げは前期を下回りました。

 ホビー用ラジコン機器では、新型コロナウイルス感染症拡大による外出自粛などの影響から北米のインターネット販売が好調であったことから、売上げは前期を上回りました。

 

② 生産器材

(主な製品:プレート製品、金型用器材、成形・生産合理化機器)

 国内では、自動車や設備投資関連の市場に持ち直しの動きはみられるものの、年間を通して市場の低迷が長く続いたため、モールドおよびプレス金型用器材は低調に推移、成形・生産合理化機器も伸び悩んだことから、売上げは前期を下回りました。

 海外では、主力の韓国において、自動車向けが順調に推移したため、為替は円高で推移したものの、売上げは前期を上回りました。

 

(2) 当期の財政状態の概況

(資産、負債、純資産及びキャッシュ・フローの状況に関する分析)

① 総資産は、退職給付に係る資産や投資有価証券の増加などにより、前連結会計年度末に比べ21億6千8百万円増加し、1,002億6百万円となりました。

  負債は、繰延税金負債や支払手形及び買掛金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ17億9千3百万円増加し、127億5百万円となりました。

  純資産は、為替換算調整勘定やその他有価証券評価差額金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ3億7千4百万円増加し、875億円となりました。この結果、自己資本比率は76.7%となりました。

② 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は256億6千7百万円となり、前連結会計年度末に比べ39億1千7百万円減少しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は、5億8百万円(前期は15億1千6百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失41億8千万円や退職給付に係る資産の増加額32億3千4百万円、たな卸資産の減少額18億6千1百万円などによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、23億8千9百万円(前期は5千7百万円の獲得)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出18億6千6百万円や投資有価証券の取得による支出6億4千2百万円などによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、18億7千4百万円(前期は42億6千万円の使用)となりました。これは主に、配当金の支払額11億9千2百万円などの支出によるものです。

 

(3) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

前期比(%)

電子デバイス関連(百万円)

17,250

72.3

生産器材(百万円)

25,193

94.2

 合  計 (百万円)

42,444

83.9

 (注)1.セグメント間の内部売上高又は振替高を含んでいます。

2.金額は売価換算値で表示しています。

3.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

② 受注実績

 製品の性質上、原則として需要予測に基づく見込み生産を主体としていますので記載を省略しています。

③ 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

前期比(%)

電子デバイス関連(百万円)

20,576

76.0

生産器材(百万円)

28,249

93.7

 合  計 (百万円)

48,826

85.3

 (注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。

2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

3.最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当

  該割合が100分の10以上の相手先が無いため、記載を省略しています。

(4) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 ① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりです。これらの見積りについては過去の実績等と勘案し、合理的に判断していますが、見積りには不確実性が伴い、実際の結果と異なる場合があります。

 

 ② 経営成績の分析

当連結会計年度の当社グループの売上高は488億2千6百万円、営業損失は35億1千7百万円、経常損失は25億1千3百万円、親会社株主に帰属する当期純損失は54億3千万円となりました。

売上高については、前期比14.7%となりました。収益面では、売上げの減少などにより営業損失は35億1千7百万円(前期は営業損失36億9千8百万円)、経常損失は25億1千3百万円(前期は経常損失33億4百万円)となりました。親会社株主に帰属する当期純損失は、減損損失を計上したことなどから54億3千万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失101億1千8百万円)となりました。

 ③ 財政状態の分析

当連結会計年度末の総資産は、退職給付に係る資産や投資有価証券の増加などにより、前連結会計年度末に比べ21億6千8百万円増加し、1,002億6百万円となりました。

当連結会計年度末の負債は、繰延税金負債や支払手形及び買掛金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ17億9千3百万円増加し、127億5百万円となりました。

また、当連結会計年度末の純資産は、為替換算調整勘定やその他有価証券評価差額金の増加などにより、前連結会計年度末に比べ3億7千4百万円増加し、875億円となりました。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末79.1%から2.4ポイント減少して76.7%となり、1株当たり純資産額は前連結会計年度末に比べて16円19銭減少して、1,812円50銭となりました。

 

 ④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

・ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は256億6千7百万円となり、前連結会計年度末に比べ39億1千7百万円減少しました。

 営業活動の結果使用した資金は、5億8百万円(前期は15億1千6百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失41億8千万円や退職給付に係る資産の増加額32億3千4百万円、たな卸資産の減少額18億6千1百万円などによるものです。

 投資活動の結果使用した資金は、23億8千9百万円(前期は5千7百万円の獲得)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出18億6千6百万円や投資有価証券の取得による支出6億4千2百万円などによるものです。

 財務活動の結果使用した資金は、18億7千4百万円(前期は42億6千万円の使用)となりました。これは主に、配当金の支払額11億9千2百万円などの支出によるものです。

 

・ 資金需要及び財務政策

 当社グループでは、今後もグローバルな市場への展開のために、主に日本における研究開発が不可欠であると考えており、そのための研究開発投資とグループ内の事業投資を今後も継続していきます。

 また、当社グループでは引き続き財務の健全性を堅持し、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出すことによって、当社グループの成長に必要な資金を調達していくことが可能であると考えています。

 

 ⑤ 経営者の問題認識と今後の方針

経営者の問題認識と今後の方針については、本項に記載のほか、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。

 

 

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

5【研究開発活動】

当社グループ(当社および連結子会社)における研究開発費は、2,142百万円となりました。当社グループは、企業哲学である「本質之直視」を研究開発活動に展開し、物事を原理まで突き詰めることを常に意識しながら、各事業センターならびに国内外の子会社が一体となり研究開発を推進しています。研究開発体制については、新事業の創出と既存事業の拡大・強化を目的とし、当社コア技術・製品の強みを更に発展させる研究開発を主体とするコア技術開発センター、および社外の新規技術を積極的に組込み融合することにより早期に製品開発を行い事業化することを目的としたメカトロ製品開発センターの2つの開発センター体制で取り組んでいます。各事業センターでは所管事業に関する新製品の開発を主体に、相互に連携をとりながら、研究開発活動を行っています。また、グループ全体の技術力向上と高付加価値製品の開発に寄与する知的財産の蓄積を図ると共に、大学・外部研究機関との共同研究にも積極的に取り組んでいます。

 

(1) 電子デバイス関連

電子デバイス関連については、有機ELディスプレイ、投影型静電容量方式のタッチパネルおよびそのモジュール、アクチュエーター・UAV機器・各種のラジコンなどの製品をいち早く市場に投入すべく研究開発を行っています。

有機ELディスプレイについては、フィルムディスプレイ製品の低コスト化、および車載ディスプレイ製品の高輝度化技術を開発したことで、来期より市場投入を行う予定です。市場のカラー化要求が高まる中で、車載用途向けに開発した技術の応用によりカラーディスプレイの高輝度化も実現しています。またディスプレイ以外への用途展開として有機ELプリントヘッドの開発にも注力しており、現在生産中の民生用途に加え、業務用途向け製品開発を行っており来期より市場投入を開始する予定です。

LCD表示モジュールについては、多言語・可変フォント・簡易動画機能などを搭載したコマンド式TFT-LCDモジュールの標準ラインナップに加え、USB接続でPCの拡張画面として利用可能な産業用USBディスプレイを開発し、市場投入しました。多種の汎用インターフェースを搭載した産業用途向け製品開発を行っており、さらにお客様の多様なニーズに応えられるよう製品開発を進めています。

静電容量式タッチセンサーについては、進化をつづける未来志向の車載インテリアデザインに対応した製品、また車載のみならず、民生・産業機器向けにフェースプレートスイッチ、3D形状タッチセンサー、フィルムタッチキーなどの技術開発を行っています。これらセンサーとディスプレイ、カバーガラスを複合化した商品の開発を行う予定です。さらに当社カスタム制御ICの機能アップを図り、屋外用途に適したアプリケーション等を提案することで、お客様の多様なニーズに応えていきます。

サーボ関連については、従来品よりも耐久性を向上させたIP67(防水・防塵規格)、CANインターフェースに対応した製品を開発し、ドローン用途を中心に市場投入しました。さらに産業用途での拡大を図るためにラインナップを拡充していきます。

ドローン関連については、産業用ドローンに向けて、優れた耐風性を強みとした大型機と中型機の標準プラットフォームを開発し、点検・監視・災害対応など各種用途へのニーズに対応していきます。

産業用ラジコン機器については、無線機器の幅広い用途拡大を目指し農業・物流・放送・インフラ市場に向け、免許不要な周波数帯を利用したテレコンおよび音声通信用無線機を市場投入しました。また、IoT市場へ展開するため、独自無線と汎用無線を組み合わせた製品開発を進めています。

産業向けのエンジン製品については、ドローン用レンジエクステンダーを用いて、顧客による地形測量での実証実験に成功しました。ここでは長時間飛行での利便性を更に向上させるための操作の自動化に取り組んでおり、電子制御燃料噴射と高効率出力安定化回路付き発電システムを装備した無人機用4サイクル2気筒エンジンを開発し、農業・物流・空撮などを主体とする顧客への販売を進めています。

ホビー用ラジコン製品については、フラッグシップモデルのデザインを踏襲した高級感溢れる薄型・軽量・高機能な空用次世代プロポや、空用とドリフト車用の高性能模型用ジャイロ、グライダーなどに向けた用途別サーボ、オリジナルデザインの模型飛行機などの新製品を開発し市場投入しました。また、ホビー向けのエンジン製品については、競技模型車用のOEM受注を推進する事でシェアNo.1を維持していきます。

以上を含め、当事業における研究開発費は、1,907百万円となりました。

 (2) 生産器材

生産器材については、金型及び設備・治工具向け基礎器材から量産現場におけるシステム開発や成形・生産合理化機器および新製品の用途・顧客開拓を進めました。

金型及び設備・治工具向け基礎器材では、お客様の器材調達合理化の仕組みであるフタバオーダーサイトを「より使い易くする」ための開発を継続し、取扱品目の追加を行い、業界唯一の仕組み構築に努めてきました。今後、国内子会社の株式会社カブクと連携した新たなシステムを搭載し、リリースする予定としています。

成形・生産合理化機器では、ホットランナシステムにおいて、耐摩耗性・耐腐食性の向上を図り、高機能樹脂に対応すると共にお客様の生産性向上につながる仕組みを製品設計に組み込み、製品機能向上に努めています。金型内計測システム(モールドマーシャリングシステム)においては、様々な計測ニーズに対応すべく、新たに4種類のセンサーを追加販売すると共に、急速に進む成形現場のIoT化に対応する「Modbus通信」機能を持った新圧力計測アンプを投入しました。さらに、プレス成形分野においては、二次電池用電極材切断金型や包材絞り金型を二次電池部材メーカー様に納入する他、社内設備・金型を活用し、バッテリーメーカー様の試作ニーズにも対応を進めています。

新製品分野では工作機械の稼働状況をクラウドで一元管理する工作機械IoTモニタリングシステムの顧客開拓を進めています。またCFRP製切削加工用厚板プレート「フェルカーボ」は、「軽量化による生産性向上」用途に着目し、部材材質を見直し、生産性向上につなげた事で、産業機器分野での採用が進んでいます。

以上を含め、当事業における研究開発費は、234百万円となりました。