(1)経営方針
当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するよう努めております。
当社グループは、急速な進展を見せている情報化社会において、各種アンテナ・関連機器及びCATV・情報通信システム工事等の幅広い事業分野で、独自技術による良質の製品・サービスを提供し、社会的な評価を得て事業の発展を遂げ、継続的に企業価値を高めていくことを基本方針としております。
(2)経営戦略等
当社グループは、アンテナ、映像通信用電子機器、電気通信工事をコア事業と据え、従来の製品・サービスの提供にとどまらず①周波数再編や新規割当てに伴うあらゆるニーズ②映像と無線、放送と通信の融合による市場の変化③IoT(モノのインターネット)社会における新たな電波利用ニーズの拡大をビジネスチャンスと捉え、積極的な製品開発、製品・サービス供給に努め、顧客の評価・信頼を得て、業容の拡大を図ってまいります。
なお、新型コロナウイルスの感染状況は収束傾向にあるものの、将来新たな感染症が拡大し事業に悪影響を与える可能性は依然として存続しております。先行きが不安定な状況ではありますが、コロナ禍を経てBCP対策としてのテレワークの普及等を背景にインターネットの重要性は今後ますます高まっていくものと考えております。このようなポストコロナ社会におけるIoTの進化を当社グループが提供する製品・サービスの需要増につながる好機と捉え、社会的責任を果たしていく所存であります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、経営の目標とする指標として、以下の指標を特に重視しております。
成長性の指標: 売上高、営業利益
収益性の指標: 売上高営業利益率
資本効率の指標: ROA、ROE
(4)経営環境
当社グループが事業展開している放送と通信の分野は、デジタル化、IP化、光やワイヤレス化等の情報の高度化や放送と通信の融合等今後も成長が期待できる分野でありますが、企業間競争はさらに厳しさを増すことが予想されます。当社グループの今後の発展のためには、市場の変化に対応できる技術力、新製品の開発力が重要となっております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは第71期につきましては「利益の追求」を行動指針として掲げ、営業力の強化を図るべく事業に精通したリーダーのもと事業毎の組織再編を行い、また、工場機能の集約を含む固定資産の効率的運用によるコストダウン、事業プロセスの再考等コストの低減に向けて尽力してまいりましたが、収益面におきましては、市場環境の変化による需要の減速や急激な円安の進行による仕入原価の高騰等により、非常に厳しい経営状況となりました。
今後の見通しにつきましては、世界経済は長期化するロシア・ウクライナ情勢や中東での紛争勃発、世界的な金融引き締めによる景気減速懸念といった不確実性の高い要素が依然として多く存在しており、不安定な状況が続いております。
当社グループを取り巻く環境といたしましては、家電量販店向け家庭用機器については厳しい経営環境が継続するものとみております。新設住宅着工戸数に関しましても、上昇を続ける建設コストの影響等を受け、減少傾向にあります。
一方、官需向けデジタル無線機器につきましては、今後も機器更新の需要が高まっていくものと考えております。
ソリューション事業においては、新築ビル内共聴工事、ビル内共聴改修工事等が引き続き中心となると予想しております。
そのような環境の中、当社グループは業績悪化の要因を「トップラインの低下」「原価の高騰」「在庫・評価減の拡大」「販管費率の増大」等と捉えた上で、それぞれの解消へ向けて抜本的な改善を進めてまいります。
具体的には、既に開示している蕨工場の売却や、中国事業の譲渡等の必要な構造改革を進めた上で、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおり、エレコムグループとの統合を進め、調達・開発・製造・販売等に係るエレコムグループの事業基盤の積極活用やリソースの投入を行い、既存事業についても相互の知見を活かした連携を深めていくことで、更なる成長と企業価値向上を目指してまいります。
次期の業績見通しに関しましては、現在エレコムグループとの経営統合に向けて検討・協議を進めており、当社グループの業績予想を合理的に算定することが困難であると判断したことから未定といたします。
なお、上記記載の将来に関する事項につきましては、有価証券報告書提出日(2024年6月28日)現在において判断したものであります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する目標(サステナビリティ基本方針)
現在私たちを取り巻く環境はさまざまな問題が生じており、私たち企業はこれらの問題を解決していくために資源や商品の価値をできるだけ長く維持して廃棄物を最小限に抑える循環型経済モデル、すなわちサーキュラーエコノミーへの転換を図らなければなりません。私たちが公正な経済活動を推進し、サーキュラーエコノミーを前提としたビジネスモデルの構築をしていくことが全ての消費が新たな価値を生む持続可能な社会の実現につながっていくと考えております。
日本アンテナは、事業を通じて社会と向き合い貢献していくという想いを「協調・効率・挑戦」の経営理念に込め70年あまり事業を営んでまいりました。今後の事業においては、「あらゆるコトをつないで、みなさまの生活をより豊かにする」というミッションのもと、日本アンテナを取り巻く全てのステークホルダーが将来にわたり活動を続けていける社会を実感できるよう、みなさまとともに新たな取り組みやビジネスモデルの構築に挑戦することを当社のサステナビリティ基本方針と定め、活動を下記の項目に分類し取り組んでまいります。
(2)サステナビリティに関するガバナンス及びリスク管理
当社グループでは、取締役、監査役並びに各執行役員により構成された「経営会議」を設置しており、サステナビリティ全般に関する課題を含んだリスクについて、情報共有と対応策の検討を行い体制の維持・向上を図っております。また、経営会議での検討内容や活動実績については定期的に取締役会へ報告され、取締役会が体制の整備及び運用状況を監督しております。
(3)サステナビリティ全般に関する戦略
E・S・Gの3つの観点をつなげる上位概念であるC(Connect)の基、E・S・Gの各項目に分類し活動を行い、評価・監督しております。
C:Connect
当社グループのミッションの達成のために、あらゆる隔たりを越えたつながりの実現を目指し取り組んでまいります。(Environment・Social・Governanceの3つの観点をつなげる上位概念)
E:Environment
地球環境を維持し未来につなぐために取り組んでまいります。現在の主な取り組みの例としては、地デジ電波を利用した水蒸気量観測による線状降水帯発生の早期予測に関する研究開発を行い、電波を防災・減災へつなげる活動を推進しております。
S:Social
平等な社会、より良い社会を未来へつなぐために取り組んでまいります。現在の主な取り組みの例としては、小学校での電波を扱う授業の開催や地域のスポーツ活動への支援等、積極的なCSR活動を実施しております。
G:Governance
経営の公平・公正さを保ち、また社会から信頼を得ることで、当社と社会をつなぎ持続的な企業価値を創出するために取り組んでまいります。現在の主な取り組みの例としては、コンプライアンス研修を含めた従業員向け研修を実施し風通しの良い企業風土の醸成に努めております。
(4)人的資本に関する戦略・指標及び目標(人材育成方針及び社内環境整備方針)
当社グループでは、持続的な成長を確保する観点から、従業員を国籍、性別、年齢等に関係なく、能力、活躍実績によって公正に評価し処遇する方針を採っております。敢えて人数等の数字目標値は掲げず、役職や形式的な指標にとらわれることなく、当社グループの多様な人材が活躍できる機会の提供及び環境の構築を第一と考え実行しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月28日)現在において当社グループが判断したものであり、また、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。
(1)国内外の市場環境の変化
当社グループはグローバルな事業展開を推進しております。我が国の経済は、社会経済活動の正常化による個人消費等が進み、景気は緩やかな回復による前向きな動きが見られましたが、物価の高騰による民間の設備投資の冷え込みは依然として続いており、国外においても長期化するロシア・ウクライナ情勢や中東での紛争勃発等が世界経済に大きな影響を与える可能性があります。また、当社グループが製品を展開している市場は、経済環境・生活環境の変化及び景気変動の影響を受けます。これにより、特に調達コストやエネルギーコストの上昇による仕入原価の高騰が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループといたしましては、急激な環境の変化に対応するべく収益性に重点を置いた経営基盤の構築に取り組み、本リスクが顕在化した場合の業績及び財政状態への影響の低減を図ってまいります。
(2)競争の激化と価格変動
当社グループが製品を展開している市場では厳しい競争が続いております。当社グループの競合他社は、研究開発、生産能力、資金や人的資源等において、当社グループよりも強い競争力を有する場合があります。当社グループが競合他社との競争において優位に立てない場合には、当社グループが十分な利益を確保することが困難となり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。またコスト面においても、国際情勢に起因する資源価格・エネルギー等の高騰や労働力不足による人件費の上昇等に伴う原材料・部品価格や物流コストへの上昇圧力は利益に影響を及ぼす可能性もあります。また、世界的な需要増に伴う半導体をはじめとした電子部品の調達難により当社グループ顧客の生産活動に停滞が発生した場合、販売機会の損失に繋がる可能性もあります。当社グループといたしましては、常に付加価値の創出及び製品の高品質化に努め、価格水準の維持及び向上を目指すとともに、生産工程の見直しや歩留りの改善、組織の再構築・調達先の再選定等によるコスト低減に取り組むとともに、顧客の理解・協力を得て製品の販売価格を適切に改定する等の対応を行っております。
(3)人的資源の確保と育成
当社グループが事業展開を行うにあたっては、専門的な知見や豊富な業務経験を有し、技術革新や環境の変化に即応し得る優秀な人的資源の確保・育成や健全な職場環境の整備が必須であります。このため、定年制度等により熟練した従業員が退職した後に適切な補充が行われない場合や、賃金等の処遇や労働環境の悪化に起因する人材の流出により技術・ノウハウの伝承に支障が生じた場合、また業務負荷の増加による時間外労働やコミュニケーション不全により従業員のフィジカル面・メンタル面に懸念が生じた場合や重大なハラスメント事案が発生した場合は、当社グループの業績や社会的評価に影響を及ぼす可能性があります。また、特に若手従業員の確保または補充が適切に行えない場合は、当社グループの中長期的な事業継続に影響を及ぼす可能性があります。当社グループといたしましては、「第一部 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおり人材育成方針及び社内環境整備方針を定めており、多様な人材が活躍できる機会の提供及び環境の構築を第一と考え実行しております。採用活動については次世代を担う人材となる年齢層の採用を計画的に行う他、中途採用により多様な人材の確保についても注力しております。人材育成については従業員一人一人が活躍できるよう、階層別研修や担当業務・職種等に即した研修を実施しており、自己研鑽としての公的資格の取得推奨制度も導入しております。また、今後も発生し得る想定外の様々な事象への対応を見据え、組織再編や情報システムの整備による省力化・効率化を進めつつタイムリーな勤務実態の把握を通じて時間外勤務の削減を図る等、働き方改革の推進による労働環境の整備を継続しております。従業員の健康確保に関しては、ストレスチェックテストや産業医によるメンタルヘルスのサポートを行っております。また、ハラスメント防止に関しては、定期的な研修を実施する他、相談窓口を設置する等、環境の整備を行っております。
(4)パンデミック・自然災害等による影響
当社グループは安全第一の方針のもと、パンデミック・自然災害に対して安全対策及びBCP対応を実施しております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大のようなパンデミックや東日本大震災のような大規模な自然災害による不測の事態が生じた場合は、人的・物的被害は、当社グループのみに限定されず、電力・ガス等のインフラや、原材料の調達・物流・顧客等、広範囲にわたるサプライチェーンに波及し、事業活動中断の影響を完全に防止できる保証はなく、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、新型コロナウイルスの感染状況は収束傾向にあるものの、今後新たな感染症が拡大し事業継続に悪影響を与える可能性は依然として存続しております。当社グループといたしましては、事業復旧の早期化、省力化を図るため、テレワーク等勤務体制の整備、緊急事態発生時の対応マニュアルの整備や訓練の実施等、BCP対応の強化に取り組んでおります。
(5)製品及びサービスの不具合
当社グループは国際的な品質管理システムに従って、顧客から喜ばれる新製品の開発及び既存製品の改良を行っており、製品に付随する工事サービスの安全性にも充分な体制を整えております。しかしながら、IoT端末やそれらを利用した製品サービスの高度化により、当社グループの製品や提供サービスにおいて将来にわたって不具合の発生を防止できる保証はありません。当社グループの製品や提供サービスに致命的な不具合が発生し、その不具合を適時適切に解決できない場合は、顧客への求償や品質維持対応のコストが発生する懸念がある他、当社グループの信用力が低下し、当社グループの製品の売上やシェアが下落する可能性があります。また、大規模なリコールの発生や、製造物責任賠償請求がなされた場合には、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループといたしましては、現時点まで、業績に多大な影響を与えた不具合を発生したことはありませんが、品質管理体制の一層の強化を図ってまいります。
(6)為替相場の変動
当社グループ製品の生産を行う地域の通貨価値の上昇は、それらの地域における現地通貨建ての製造と調達コストを押し上げます。急激な為替変動により為替リスクを回避できない事態が生じた場合は、価格競争力を低下させ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループといたしましては、為替相場の変動の影響を最小限に抑えるべく取引ルートや取引通貨の検討した調達活動を実施する他、必要に応じて為替予約等によるヘッジを行っております。
(7)研究開発等
当社グループが事業展開する分野は、技術革新とコスト競争力について厳しい要求があり、中期の開発戦略のもとに新技術や新製品、新用途、新市場開発、生産プロセス改革に必要な研究開発投資や設備投資をしております。市場の変化が激しい業界において変化を予測することは容易ではなく、開発した製品について想定した売上等の効果が得られない可能性があります。また、競合他社の新技術や新製品開発、業界における標準化や顧客のニーズの変化により、当社グループの製品が予期せぬ陳腐化を起こし、当社グループの製品への需要が減少する可能性があります。これらの状況が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループといたしましては、研究開発テーマと予算を適切に設定し、研究開発の状況をモニタリングして市場の変化に柔軟に対応するとともに、新卒採用・中途採用を計画的に行い技術の継承に努め、また、開発設計業務に携わる従業員のスキル向上のため、適切な教育訓練の機会を整備し、提供するよう取り組んでおります。
(8)コンプライアンスとESG
当社グループは、事業展開を行うにあたって、労働基準関係法令の他、電気用品安全法、電波法、電気通信事業法、建設業法、租税法、下請代金遅延等防止法、個人情報保護法等の様々な法的規制の適用を受けております。当社グループがかかる法規制に違反する場合、また、当社グループが保有する許認可等に付された条件や制約を遵守できない場合には、規制当局からの制裁や罰金、罰則の適用、追加費用の負担や許認可等の剥奪等の可能性がある他、当社グループの評判及び信用にも影響を与えるおそれがあります。さらに、環境・社会・ガバナンス(ESG)の重要性については投資家のみならず社会全体で関心が高まっており、その観点からの企業の対応が重要となりつつあります。当社グループといたしましては、「第一部 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおり、環境・社会・ガバナンス(ESG)に上位概念としてのC(Connect)を加えたCESGを戦略の柱としたサステナビリティ基本方針を制定し、全てのステークホルダーが将来にわたり活動を続けていける社会を実感できるよう注力しております。また、ガバナンスの中でもコンプライアンスに関しては、内部統制システムを構築した上で、法的規制・コンプライアンスの遵守について「品質・環境方針」を踏まえつつ人権・安全・衛生・企業倫理の遵守にも努めながら、サプライヤー全体のマネジメントや育成に取り組むよう従業員への啓発活動を推進しております。
(9)機密情報の管理と情報セキュリティ
当社グループは、業務上多数の顧客情報・製品開発情報を取扱っております。従業員の故意、過失または外部からの不正アクセス等により当社グループが保持又は管理する情報が流出し、第三者がこれを不正に取得又は使用するような事態が生じた場合、当社グループに対して損害賠償を求める訴訟が提起される等、当社グループの事業、業績、評判及び信用に影響を与える可能性があります。また、システムの不具合やサイバー攻撃等により重大な障害が発生した場合も同様に、当社グループの事業、業績、評判及び信用に影響を与える可能性があります。当社グループといたしましては、これらの情報セキュリティ管理については昨今の情勢や事例を鑑み、物理的セキュリティの整備に加え、情報セキュリティ委員会を設置して社内規程やセキュリティポリシーを整備する他、不正アクセスや情報漏洩等を未然に防止するため、従業員向けに情報管理やセキュリティに関する教育を実施し機密情報の管理体制を強化する等、継続的改善を図っております。
(10)知的財産の保護
当社グループの製品は複数のライセンスを利用して製造販売しております。急速な技術進歩やグローバル化により、当社グループの事業領域における知的財産権の状況を完全に把握することは困難であり、当社グループの知的財産権が侵害されている恐れがある場合や、当社グループが他社の知的財産を侵害する恐れがある場合に、必要な措置を完全に講じることができる保証はありません。これらの状況が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループといたしましては、保有する知的財産権を保護し、かつ他社の権利侵害を防止するために、グローバル化に対応した商標登録や特許登録を行い、顧問弁護士や弁理士と連携した管理体制の整備に努めております。
(11) エレコムグループとの経営統合に関する基本合意書
当社とエレコム株式会社(以下「エレコム」といい、当社とエレコムを併せて、以下「両社」といいます。)は、2024年4月25日に開催したそれぞれの取締役会において、エレコムを株式交換完全親会社、当社を株式交換完全子会社とする株式交換(以下「本株式交換」といいます。)、エレコムグループ(エレコム及びエレコムの関係会社を総称していいます。)との機能統合及びエレコムの完全子会社であるDXアンテナ株式会社との経営統合(以下「本経営統合」といいます。)を行うことを目的とした基本合意書を締結することを決議いたしました。本経営統合の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」をご参照ください。
現在、本経営統合に向けた協議・検討を両社で進めておりますが、競争法その他法令上必要なクリアランス・許認可等の取得ができないこと等により、本経営統合が予定通りに実施されない可能性があり、その場合には当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、社会経済活動の正常化による個人消費等が進み、景気は緩やかな回復による前向きな動きが見られましたが、円安の進行や資源・原材料価格の高騰に起因する物価の上昇、国際情勢の緊迫化等、依然として先行き不透明な状況は継続しております。
当業界において、テレビ関連機器販売の市場に関しましては、テレビ需要の落ち込みは長期化しており、薄型テレビの出荷台数は低迷しております。また、新設住宅着工戸数に関しましても、建設コストの上昇等を背景に住宅取得マインドが低下する中、弱含みで推移しております。
通信関連機器につきましては、官需向け機器の更新需要が期を通して堅調に推移しました。
このような状況の中、当社グループは、環境に左右されない強固な経営基盤作りに取り組み、営業力の強化等の収益性に重点を置いた企業活動の推進や、市場のニーズを捉えた新製品・ソリューションの開発、聖域なきコストダウンへの継続的取組、販売拠点や生産拠点の統廃合等による集約化と業務の効率化による経費の適正な運営等に努めてまいりました。
しかしながら、通信用アンテナにつきましては官需向けデジタル無線機器の伸長が貢献しましたが、放送関連機器に関しては需要の落ち込みからの脱却には至らず、ソリューション事業につきましても第3四半期以降低調であったこと等から、当連結会計年度の売上高は11,386百万円(前連結会計年度比5.7%減)となりました。
利益面につきましては、需要の低迷や為替の影響による仕入原価の高騰等により、営業損失は2,081百万円(前連結会計年度は1,932百万円の営業損失)、経常損失は1,918百万円(前連結会計年度は1,933百万円の経常損失)となりました。また、関係会社整理損の計上等により、親会社株主に帰属する当期純損失は2,906百万円(前連結会計年度は1,861百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(送受信用製品販売事業)
放送関連機器の売上高につきましては、家電量販店向け家庭用機器に関しては、経済活動の正常化に伴い旅行や外食といった「外向き」の消費が増えたことや長期化する物価高により家電の買い控えが続いていること等の影響が大きく、またCATV事業者向け機器に関しても企業間の競争はますます激化していること等から、前連結会計年度比減となりました。
通信用アンテナの売上高につきましては、官需向けデジタル無線機器の更新需要が好調に推移したこと等から、前連結会計年度比増となりました。
この結果、売上高は9,741百万円(前連結会計年度比4.5%減)、営業損失は815百万円(前連結会計年度は825百万円の営業損失)となりました。
(ソリューション事業)
第2四半期までは大規模都市再開発や無線通信工事の大型案件等が貢献しましたが、第3四半期以降は案件受注が伸び悩んだことから、売上高は1,645百万円(前連結会計年度比12.3%減)、営業利益は160百万円(前連結会計年度比39.1%減)となりました。
財政状態につきましては、まず、当連結会計年度末の流動資産は、14,317百万円(前連結会計年度末比7.2%減)となりました。これは、現金及び預金や受取手形、商品及び製品並びに原材料及び貯蔵品の減少等によるものであります。
固定資産は、3,610百万円(同8.2%減)となりました。これは、建物及び構築物、機械装置及び運搬具や工具、器具及び備品の減価償却の計上等によるものであります。
当連結会計年度末の流動負債は、4,849百万円(前連結会計年度末比48.3%増)となりました。これは、関係会社整理損失引当金の増加と、支払手形及び買掛金の減少等によるものであります。
固定負債は、1,138百万円(同14.5%減)となりました。これは、退職給付に係る負債の減少等によるものであります。
当連結会計年度末の純資産の合計は、11,939百万円(前連結会計年度末比19.1%減)となりました。
この結果、自己資本比率は66.6%となりました。
②キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は6,556百万円となり、前連結会計年度末に比べ261百万円減少いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、減少した資金は918百万円(前連結会計年度は2,407百万円の減少)となりました。これは主に減価償却費や関係会社整理損の計上や棚卸資産の減少による増加と、税金等調整前当期純損失の計上や仕入債務の減少による減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、増加した資金は781百万円(前連結会計年度は137百万円の増加)となりました。これは主に、有価証券や有形固定資産の売却収入による増加によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、減少した資金は110百万円(前連結会計年度は190百万円の減少)となりました。これは主に、短期借入金の借入収入による増加と、配当金の支払による減少によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
送受信用製品販売事業(百万円) |
7,867 |
89.6 |
|
ソリューション事業(百万円) |
1,664 |
88.7 |
|
合計(百万円) |
9,531 |
89.4 |
(注) 金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
送受信用製品販売事業 |
4,921 |
105.2 |
231 |
69.7 |
|
ソリューション事業 |
1,447 |
94.8 |
457 |
67.8 |
|
合計 |
6,368 |
102.6 |
689 |
68.5 |
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
送受信用製品販売事業(百万円) |
9,741 |
95.5 |
|
ソリューション事業(百万円) |
1,645 |
87.7 |
|
合計(百万円) |
11,386 |
94.3 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
株式会社JCOM |
1,407 |
11.7 |
904 |
7.9 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績等は、売上高につきましては、11,386百万円(前連結会計年度比5.7%減)となりました。これは主に、送受信用製品販売事業では、官需向けデジタル無線機器は更新需要が好調に推移した一方、テレビ関連機器に関しては厳しい事業環境が継続していることや、ソリューション事業においても第3四半期以降は案件受注が伸び悩んだこと等によるものであります。
海外売上高は1,802百万円(同20.4%増)で、連結売上高に占める海外売上高の割合は15.8%と前連結会計年度より増加しております。これは主に、国内売上が減少傾向にある一方で、海外子会社の現地顧客向け売上が増加傾向であったためであります。
販売費及び一般管理費は5,141百万円(前連結会計年度比2.3%増)となりました。これは主に、有形固定資産や子会社持分の譲渡に伴い支払手数料が増加したことによるものであります。
この結果、営業損失は2,081百万円(前連結会計年度は1,932百万円の営業損失)となりました。
当連結会計年度の営業外損益は、162百万円の利益となりました。これは主に、為替差益を134百万円計上したこと(前連結会計年度は32百万円の為替差損)によるものであります。
この結果、経常損失は1,918百万円(前連結会計年度は1,933百万円の経常損失)となりました。
当連結会計年度の特別損益は、992百万円の損失となりました。これは主に、関係会社整理損957百万円を計上したことによるものであります。
この結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純損失は2,908百万円(前連結会計年度は1,833百万円の税金等調整前当期純損失)となりました。
税金費用(法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額)は△1百万円になりました。
これにより、親会社株主に帰属する当期純損失は2,906百万円(前連結会計年度は1,861百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
この結果、1株当たり当期純損失は278円30銭となりました。
なお、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。また、新型コロナウイルス感染症の影響といたしましては、経済活動は正常化の動きを見せておりますが、収束時期の正確な予測は困難であり、先行きは不透明な状況にあるものとみております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。当社グループといたしましては、企業活動の継続に特段の支障はないものと考えております。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、まず、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ261百万円減少し、6,556百万円となりました。
重要な資本的支出の予定につきましては、「第一部 企業情報 第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。
資金の源泉につきましては、主に、当連結会計年度末の現金及び現金同等物と営業活動により得られる資金であります。
(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
当社グループの経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、下記のとおりの推移であります。
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第67期 |
第68期 |
第69期 |
第70期 |
第71期 |
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売上高 |
(百万円) |
16,535 |
15,297 |
12,606 |
12,070 |
11,386 |
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営業利益又は営業損失(△) |
(百万円) |
784 |
284 |
△1,299 |
△1,932 |
△2,081 |
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売上高営業利益率 |
(%) |
4.7 |
1.9 |
- |
- |
- |
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ROA(純利益/総資本) |
(%) |
2.1 |
- |
- |
- |
- |
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ROE(純利益/自己資本) |
(%) |
2.6 |
- |
- |
- |
- |
当社グループを取り巻く事業環境といたしましては、官需向けデジタル無線機器の需要は期を通して堅調でありましたが、テレビ関連機器の需要の落ち込みは長期化しており、ソリューション事業の市況も建設コストの上昇等を背景に弱含んでおり、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べ減少いたしました。
また、売上高の減少や原価高に伴う売上総利益の減少が大きく、販売費及び一般管理費の抑制に努めたものの、当連結会計年度は営業損失となりました。
現状では、獲得競争・価格競争の激化が継続し、依然として非常に厳しい情勢であるものと考えられます。
なお、第69期、第70期及び第71期は営業損失を計上したことから、売上高営業利益率につきましては記載しておりません。
また、親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことから、ROA・ROEにつきましては記載しておりません。
なお、PBRにつきましては、現状を鑑み、組織再編や構造改革を進め、引き続き黒字化にむけて業容の回復を目指して改善に尽力する所存であります。
(セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容)
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
なお、財政状態につきましては、当社グループでは、セグメントごとではなく、当社グループ一体としての資金管理を行っております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たっては、決算日における財政状態、経営成績に影響を与えるような見積り・予測を必要としております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り・予測を実施しております。
a.繰延税金資産
繰延税金資産は、将来の利益計画に基づいて課税所得を見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異につきまして計上しております。また、当該課税所得を見積るにあたり、前提条件とした条件や仮定に変更が生じ、これが減少した場合、繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。
b.固定資産の減損損失
固定資産の減損会計の適用に際しては、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位でグルーピングし、各グループの単位で将来キャッシュ・フローを見積っております。将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、回収可能価額まで帳簿価額を減額しております。将来、この回収可能価額が減少した場合、減損損失が発生し、利益に影響を与える可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が会計上の見積りに及ぼす影響を含め、詳細につきましては、「第一部 企業情報 第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
c.貸倒引当金
債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。
d.投資の減損
当社グループは、長期的な取引関係の維持のために、特定の顧客及び金融機関に対する有価証券を保有しておりますが、これら株式には価格変動性が高い公開会社の株式と、株価の確定が困難な非公開会社の株式を含んでおります。当社グループは、投資価値が下落し回復可能性がないと判断した場合、これら有価証券の減損を実施しております。公開会社の株式は、期末日の株価が取得額の50%以上下落した場合又は6四半期間続けて30%以上下落しかつ回復可能性がないと判断された場合、また非公開会社の株式は、原則として当該会社の純資産額が取得額の50%以上下落した場合に、それぞれ回復可能性がないと判断し減損処理を行うこととしております。
e.退職給付債務
従業員に対する退職給付債務は、保険数理計算に基づき決定しております。退職給付債務計算は、その前提として使用している割引率、報酬水準の増加率や従業員の平均残存勤務期間に影響されます。当社グループは、割引率を主として日本国債の金利により決定している他、報酬水準の増加率及び従業員の平均残存勤務期間については、これまでの実績値に基づき決定しております。
(固定資産の譲渡)
当社は、2024年3月25日開催の取締役会において固定資産の譲渡を行うことを決定し、2024年3月28日に売買契約を締結しております。
(1)譲渡の理由
経営資源の有効活用及び業務の効率化・省力化を図るため、当社グループの所有する資産について総合的に勘案した結果、工場機能を集約することといたしました。集約にあたり、蕨工場の機能を川里工場へ移管し、蕨工場の土地建物は譲渡いたします。
(2)譲渡資産の内容
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資産の名称、内容及び所在地 |
土地 |
建物 |
現況 |
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埼玉県蕨市北町四丁目3291番 蕨工場 |
4,912.34㎡ |
9,040.20㎡ (延べ床面積) |
工場として使用 |
※譲渡価額等につきましては譲渡先の意向もあり開示を控えさせていただきますが、市場価格を反映した適正な価格での譲渡であります。
(3)譲渡先の概要
譲渡先は国内の一般事業会社1社でありますが、譲渡先の意向により非開示といたします。なお、当社と譲渡先との間には、資本関係、人的関係、取引関係及び関連当事者として特記すべき事項はありません。
(4)譲渡の日程
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取締役会決議 |
2024年3月25日 |
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売買契約締結 |
2024年3月28日 |
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物件引渡し |
2024年12月25日(予定) |
(5)当該事象の損益及び連結損益に与える影響額
物件引渡し予定日が2024年12月25日であることから、2024年3月期の業績に与える影響は軽微であります。また、2025年3月期第3四半期の連結決算及び個別決算において、本件譲渡に伴う固定資産売却益として約35億円を特別利益に計上予定です。
(重要な契約)
当社とエレコム株式会社は、2024年4月25日に開催したそれぞれの取締役会において、エレコム株式会社を株式交換完全親会社、当社を株式交換完全子会社とする株式交換、エレコムグループとの機能統合及びエレコム株式会社の完全子会社であるDXアンテナ株式会社との経営統合を行うことを目的とした基本合意書を締結することを決議いたしました。概要については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
(重要な子会社持分の譲渡)
当社は、2024年4月25日開催の取締役会において、当社の連結子会社である上海日安天線有限公司並びにその子会社である日安天線(蘇州)有限公司の持分を上海常福電子科技集団有限公司及び同社の執行董事である常氏へ譲渡することを決議し、同日付で持分譲渡契約を締結いたしました。概要については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
当社は、情報通信社会の技術革新、産業の進化に即して、お客様や関連業界のご要望に適時にお応えする考えのもと、これまで培った技術を最大限に生かしながら市場の利便性を念頭に置いて相互の発展に向けた活動を継続しております。
インフラ、メディアの高度デジタル化や光伝送技術、衛星通信を中心とした相互の情報供与社会の著しい発達や改変がなされて久しい昨今において、その社会情勢の中でも適宜の商品供給、新規技術を携行させた商品開発について新規性に配慮しながら持続的に行っております。
これら当社の取り組みの背景には、私たちの生活に情報通信技術の恩恵が直接介在する常態化を強く意識して日々の研究開発に傾注することにあり、当社の第71期の諸活動においても成果を貢献に換えていく指向を諸元として弛緩なく努めてまいりました。
関連市場の動向や需要に対して確実に即応する考えのもと、高い付加価値を持つ新製品の開発に向け、関係グループを挙げての研究開発活動を展開しております。
企業の独自性を顕す意味で文字どおりにオリジナリティを持つ開発が望ましいことは事実ですが、予後の市場に必ず受容いただける付加価値こそが肝要と捉えて研究開発関係者の一義的な共通意識の下に諸活動に取り組んでおります。
研究開発の経緯として基礎開発から始まり、応用開発から量産設計に至るプロセスは、当社の新規性に富む技術開発力を高めていく指向を瞭然の認識とする中で、より早く市場への提供、貢献に結実させることが当然の主眼であるべきと捉えており、これらのコンセプトによる研究開発の取り組みにより、当期は市場への展開、供給を具体的に顕出させた成果がございました。
近年の当社の開発基軸の一つに、市場の課題解消をベースとしたシステム管理自動化の一助を目的とする種々の監視システム構築や、直接の通信手段に留まらない高周波帯の電磁波活用による環境保全への技術的関与となる開発も行い、市場への貢献シーンや実証活動における実務的な協働シーンに介在させていただく機会も得ることができております。
一方で、純然な開発活動以外にも、製品提供の機会を得る取り組みを研究開発人員の役割と理解して関連部署の年間実行計画に活動方針を掲げ、関連市場やお客様の下へ当社の営業部と共に開発サイドもアプローチを講じております。
事案の効果性や優位順列から捉えますと、数年前からの開発着手案件としてはデジタル消防無線に必要な周辺機器設備の更新需要に際して、当期は新たな機能仕様を装備させた性能監視装置を新構成とする共用装置を納入し、当社の業態基軸である公共系市場への付加価値仕様の製品提供を実現いたしました。当該開発は、以後数ヶ年にわたる業界シェア確保に向けた一つの大きな実績となり、同市場への展開性に弾みをつけたことと認識し、継続して関連製品の開発や品質維持向上に努めます。
さらに、当件と同義の仕様となる機能を必要とする公共や商用系の無線通信機器市場に向けても、同位の新規機能や派生仕様を纏う製品の展開について、物理的離隔がリアルタイムの状態把握に阻害要因となる課題や実状に対する解決策として、過去仕様にない機能や価値をお客様のご要望に即す形で製品提供するシーンに向けて開発中です。
当期までに市場で経験させていただいたこと、お客様のお聲に傾聴させていただいた機会への複利的還元を進化の助勢や商材の過渡期と捉えて以後も開発活動に邁進いたします。
市場への接見活動の中で得られた事例では、容量検知システムの実証試験への参画としてお客様のフィールドへ赴き、今までの提案活動を実証場面に舞台を移して検証に臨めたことも実例として新たに得られた実績です。
検証結果についてもご好評を博され、商品化への大きなヒントを得られたことも開発のステップとして、お客様との協働により大きく授かった事案と認識いたしますので、実証で得られた価値を製品汎用化に転じて貢献性と当社の売上へ結実させる活動に拍車を掛けてまいります。
これら離隔を伴う監視システムの進化には、機器設計仕様だけでなく制御や監視機能をドライブさせるソフトウエア開発の技量も必要であり、当社内のソフトウエア開発グループの内製技術にも大きく依存することから、お客様の製品使途の拡大を狙ううえで必要充分なハード面、ソフト面の両輪機能の充実化も並進させてまいります。
加えて通信系分野の市場の開拓機会としての取り組みでは、新たな高度化大容量・低遅延通信を目するローカル5Gの普及活動団体へ参画し、当社と親和性を持たせていただいている無線システムメーカーとの連携の下、実証検討会に臨み、各種実証検討事案に当社のアンテナ製品や周辺機器を提供いたし、奏功への一助として努めさせていただきました。
当件は過日の「BUSINESS NETWORK」の記事にも掲載されており、当社のホームページへの掲出など、活動実歴を当期中に呈させていただいたことも当期に取り組んだ実例の一つです。
ローカル5Gシステムは各種産業市場の中でも、製造業関連におけるFA化や医療系への適用が叫ばれていることは従前の傾向として既知のものですが、他にも様々な産業界や地域不問の未解消課題に対して、普及による効果を企図する当活動に社会価値を見出し、当社にできることを追求してまいります。
代わって高周波帯の電磁波活用における別儀の使途としては、無線電力伝送技術に対する研究開発にも取り組み、大学機関との共同開発による要素技術の拡張に傾注した結果、当社の半導体IC設計開発の展性にアンテナ設計技術を加味させた高効率電力変換レクテナを開発し、業界の中でもトップクラスと称される性能を持す装置を実現いたしました。
並行して当期中には2回、電子情報通信学会(IEICE)での壇上において論文発表にも臨むことができました。
国内においても法整備がなされる過程において、専制的な当件分野について一定のご評価を得たことも研究開発成果の開示行為や市場への接見による自主活動の結果として認識しており、研究開発実歴と表出による連動成果と考え、慢心せずに継続して取り組んでまいります。
当活動を機として、当期下期より具体的に外部研究開発機関や関係企業よりお声掛けもいただいており、実証検証から実フィールドへの製品採用の機会を得て成果物品の提供まで到らせたことも社外への掲出すべき事案として、以後も当社のプレゼンスを高める手段を講じてまいります。
来期の引き合いもいただいており、引き続き国策でもある環境保全やエネルギー資源への取り組みに技術的な関与を伴いながら開発親展と市場貢献の両立化を目指します。
前出の活用事案以外では、外部の研究開発法人との共同開発により電磁波を利用することで、被測定物の特定物質含有量や異物の検出を非破壊のもとに精度高く簡便に計測する装置の開発に取り組んでおります。
同法人による関連学会の公開発表時にも参画し、当社の展示ブースを設けて活動経緯と現況を公表させていただいたことにより、当技術について関連市場の方々にご認知をいただけたものと考えております。
その機会に得ることのできたご意見やご要望を参考にさせていただきながら、装置の洗練化を図り早期の社会実装による貢献を目指してまいります。
並行して既存製品の改良設計や製品の進展性に対する活動も進めており、放送系機器において例えば汎用機器である放送受信用のFTTH光伝送システム機器に対する追加機能の拡充にも取り組み、旧来の仕様面の他にも当社営業部による地域課題への察知力による早期の情報を利して開発サイドの認識や理解度を増しながら、累積技術として相乗的な設計による適宜の追従を図ります。
RF設計技術に加え、製品規模や周波数帯に関わる保有の性能評価技術を更に高めながら、広義の開発要件に応えられる技量を発揮させる意味でも開発活動による対応領域の拡幅に努め、お客様や新しい市場へ適宜の供給能力向上を明知化させてまいります。
以上のように、取り組む研究開発活動の経緯やその内訳を予後の市場の事案派生と展開性に対して確実に和合させながら、的確なヒストリカルトレンドと言える姿態に進化させていくことで社会貢献と利益の追求に結び付け、市場の急峻な技術進展と拡がりに応対出来る様に弛まず取り組んでまいります
現在の研究開発は、基礎開発推進のR&Dセンターと送受信用製品販売事業の開発設計部を中心に推進されており、当連結会計年度末における既存製品の改良を含む研究開発の人員は109名、研究開発に係る費用の総額は
なお、ソリューション事業の研究開発費につきましては、送受信用製品販売事業で開発し製品化したものを投入するため、実際の研究開発費はありません。