第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営方針

 当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するよう努めております。

 当社グループは、急速な進展を見せている情報化社会において、各種アンテナ・関連機器及びCATV・情報通信システム工事等の幅広い事業分野で、独自技術による良質の製品・サービスを提供し、社会的な評価を得て事業の発展を遂げ、継続的に企業価値を高めていくことを基本方針としております。

 

(2)経営戦略等

 当社グループは、アンテナ、映像通信用電子機器、電気通信工事をコア事業と据え、従来の製品・サービスの提供にとどまらず①周波数再編や新規割当てに伴うあらゆるニーズ②映像と無線、放送と通信の融合による市場の変化③IoT(モノのインターネット)社会における新たな電波利用ニーズの拡大をビジネスチャンスと捉え、積極的な製品開発、製品・サービス供給に努め、顧客の評価・信頼を得て、業容の拡大を図ってまいります。

 なお、新型コロナウイルスの感染状況は収束傾向にあるものの、将来新たな感染症が拡大し事業に悪影響を与える可能性は依然として存続しております。先行きが不安定な状況ではありますが、コロナ禍を経てBCP対策としてのテレワークの普及等を背景にインターネットの重要性は今後ますます高まっていくものと考えております。このようなポストコロナ社会におけるIoTの進化を当社グループが提供する製品・サービスの需要増につながる好機と捉え、社会的責任を果たしていく所存であります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループでは、経営の目標とする指標として、以下の指標を特に重視しております。

 成長性の指標: 売上高、営業利益

 収益性の指標: 売上高営業利益率

 資本効率の指標: ROA、ROE

 

(4)経営環境

 当社グループが事業展開している放送と通信の分野は、デジタル化、IP化、光やワイヤレス化等の情報の高度化や放送と通信の融合等今後も成長が期待できる分野でありますが、企業間競争はさらに厳しさを増すことが予想されます。当社グループの今後の発展のためには、市場の変化に対応できる技術力、新製品の開発力が重要となっております。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは第72期につきましては第71期に引き続き「利益の追求」を行動指針として掲げ、組織再編や事業プロセスの最適化に立脚した積極的かつ効率的な営業活動を行い、厳しい市場環境が継続する中でも需要増が見込める分野へのアプローチを継続してまいりました。

 また同時に、拠点集約に伴う人員配置の見直しによる経費の削減及び棚卸資産の最適化等の抜本的な構造改革を推進しコストダウンに注力してまいりました。

 この結果、収益面におきましては、営業黒字を実現するとともに、当期純利益も確保するに至りました。

 しかしながら、今後の見通しにつきましては、世界経済は米国政権の各種施策が景気の圧迫要因となる懸念が拭えず、またロシア・ウクライナ問題や中東紛争がより一層長期化する等、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 当社グループを取り巻く環境といたしましては、家電量販店向け家庭用機器につきましては需要の本格的な回復には相応の時間を要するものとみております。新設住宅着工戸数に関しましても、建設コストが高止まりする中、一進一退の傾向にあります。

 一方、官需向けデジタル無線機器につきましては、今後も機器更新の需要が高まっていくものと考えております。

 ソリューション事業におきましては、新築ビル内共聴工事、ビル内共聴改修工事等が引き続き中心となると予想しております。

 このような環境の中、当社グループは企業価値の向上に繋がる種々の施策を実施してまいりました。引き続き第73期におきましても、たゆまぬ構造改革に注力していく所存であります。

 

 具体的には、調達・開発・製造・販売等その他あらゆる業務における効率化・コストダウンを継続してまいります。

 加えて、来るべきエレコムグループとの統合を円滑に実施し、相乗効果を発揮して事業基盤の拡大を図ってまいります。

 これにより、グループ全体の持続的な成長と企業価値向上に貢献したいと考えております。

 

 次期の業績見通しに関しましては、現時点での予想は次のとおりであります。

                                (括弧内は対前連結会計年度比・前期比)

 

(連結)

 

 

(個別)

 

売上高

11,200百万円

 (4.8%増)

 

11,200百万円

(4.8%増)

営業利益

900百万円

 (83.6%増)

 

900百万円

(89.9%増)

経常利益

900百万円

 (71.2%増)

 

900百万円

(77.1%増)

当期純利益

800百万円

 (77.9%減)

 

800百万円

(77.7%減)

 

 米国の関税措置に関しましては、当社の事業は主に国内需要を対象としているため、当社の事業および次期の連結業績に与える直接的な影響は軽微であると見込んでおります。

 また、エレコムグループとの統合が次期の連結業績に与える影響は現在精査中のため、本業績予想には反映しておりません。なお、業績予想の修正が必要なことが明らかになった場合には速やかに開示いたします。

 

 なお、上記記載の将来に関する事項につきましては、有価証券報告書提出日(2025年6月26日)現在において判断したものであります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する目標(サステナビリティ基本方針)

 現在私たちを取り巻く環境はさまざまな問題が生じており、私たち企業はこれらの問題を解決していくために資源や商品の価値をできるだけ長く維持して廃棄物を最小限に抑える循環型経済モデル、すなわちサーキュラーエコノミーへの転換を図らなければなりません。私たちが公正な経済活動を推進し、サーキュラーエコノミーを前提としたビジネスモデルの構築をしていくことが全ての消費が新たな価値を生む持続可能な社会の実現につながっていくと考えております。

 日本アンテナは、事業を通じて社会と向き合い貢献していくという想いを「協調・効率・挑戦」の経営理念に込め70年あまり事業を営んでまいりました。今後の事業においては、「あらゆるコトをつないで、みなさまの生活をより豊かにする」というミッションのもと、日本アンテナを取り巻く全てのステークホルダーが将来にわたり活動を続けていける社会を実感できるよう、みなさまとともに新たな取り組みやビジネスモデルの構築に挑戦することを当社のサステナビリティ基本方針と定め、活動を下記の項目に分類し取り組んでまいります。

 

(2)サステナビリティに関するガバナンス及びリスク管理

 当社グループでは、取締役、監査役並びに各執行役員により構成された「経営会議」を設置しており、サステナビリティ全般に関する課題を含んだリスクについて、情報共有と対応策の検討を行い体制の維持・向上を図っております。また、経営会議での検討内容や活動実績については定期的に取締役会へ報告され、取締役会が体制の整備及び運用状況を監督しております。

 

(3)サステナビリティ全般に関する戦略

 E・S・Gの3つの観点をつなげる上位概念であるC(Connect)の基、E・S・Gの各項目に分類し活動を行い、評価・監督しております。

C:Connect

当社グループのミッションの達成のために、あらゆる隔たりを越えたつながりの実現を目指し取り組んでまいります。(Environment・Social・Governanceの3つの観点をつなげる上位概念)

E:Environment

地球環境を維持し未来につなぐために取り組んでまいります。現在の主な取り組みの例としては、低損失分配器の開発等により省エネ化を推進し、環境負荷のない商品や技術開発に向けての活動を実施しております。

S:Social

平等な社会、より良い社会を未来へつなぐために取り組んでまいります。現在の主な取り組みの例としては、地域の子どもたちに向けた電波を扱う授業の開催や日本赤十字社の献血活動といった各種福祉に通じた活動への協力等、積極的なCSR活動を実施しております。

G:Governance

経営の公平・公正さを保ち、また社会から信頼を得ることで、当社と社会をつなぎ持続的な企業価値を創出するために取り組んでまいります。現在の主な取り組みの例としては、コンプライアンス研修を含めた従業員向け研修を実施し風通しの良い企業風土の醸成に努めております。

 

(4)人的資本に関する戦略・指標及び目標(人材育成方針及び社内環境整備方針)

 当社グループでは、持続的な成長を確保する観点から、従業員を国籍、性別、年齢等に関係なく、能力、活躍実績によって公正に評価し処遇する方針を採っております。敢えて人数等の数字目標値は掲げず、役職や形式的な指標にとらわれることなく、当社グループの多様な人材が活躍できる機会の提供及び環境の構築を第一と考え実行しております。なお、参考とする指標としては「女性管理職比率」「男性労働者の育児休業等及び育児目的休暇取得率」「労働者の男女の賃金の差異」を用いており、実績は「第一部 企業情報 第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載のとおりであります。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月26日)現在において当社グループが判断したものであり、また、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。

 

(1)国内外の市場環境の変化

 当社グループはグローバルな事業展開を推進しております。我が国の経済は、雇用・所得環境が改善する中で、景気は緩やかに回復しておりますが、物価の高騰による民間の設備投資の冷え込みは依然として続いており、国外においても長期化するロシア・ウクライナ情勢や中東での紛争勃発等が世界経済に大きな影響を与える可能性があります。また、当社グループが製品を展開している市場は、経済環境・生活環境の変化及び景気変動の影響を受けます。これにより、特に調達コストやエネルギーコストの上昇による仕入原価の高騰が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループといたしましては、急激な環境の変化に対応するべく収益性に重点を置いた経営基盤の構築に取り組み、本リスクが顕在化した場合の業績及び財政状態への影響の低減を図ってまいります。

 

(2)競争の激化と価格変動

 当社グループの競合他社は、研究開発、生産能力、資金や人的資源等において、当社グループよりも強い競争力を有する場合があります。当社グループが競合他社との競争において優位に立てない場合には、当社グループが十分な利益を確保することが困難となり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。またコスト面においても、国際情勢に起因する資源価格・エネルギー等の高騰や労働力不足による人件費の上昇等に伴う原材料・部品価格や物流コストへの上昇圧力は利益に影響を及ぼす可能性もあります。また、世界的な需要増に伴う半導体をはじめとした電子部品の調達難により当社グループ顧客の生産活動に停滞が発生した場合、販売機会の損失に繋がる可能性もあります。当社グループといたしましては、常に付加価値の創出及び製品の高品質化に努め、価格水準の維持及び向上を目指すとともに、生産工程の見直しや歩留りの改善、組織の再構築・調達先の再選定等によるコスト低減に取り組むとともに、顧客の理解・協力を得て製品の販売価格を適切に改定する等の対応を行っております。

 

(3)人的資源の確保と育成

 当社グループが事業展開を行うにあたっては、専門的な知見や豊富な業務経験を有し、技術革新や環境の変化に即応し得る優秀な人的資源の確保・育成や健全な職場環境の整備が必須であります。このため、定年制度等により熟練した従業員が退職した後に適切な補充が行われない場合や、賃金等の処遇や労働環境の悪化に起因する人材の流出により技術・ノウハウの伝承に支障が生じた場合、また業務負荷の増加による時間外労働やコミュニケーション不全により従業員のフィジカル面・メンタル面に懸念が生じた場合や重大なハラスメント事案が発生した場合は、当社グループの業績や社会的評価に影響を及ぼす可能性があります。当社グループといたしましては、「第一部 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおり人材育成方針及び社内環境整備方針を定めており、多様な人材が活躍できる機会の提供及び環境の構築を第一と考え実行しております。採用活動については次世代を担う人材となる年齢層の採用を計画的に行う他、中途採用により多様な人材の確保についても注力しております。人材育成については従業員一人一人が活躍できるよう、階層別研修や担当業務・職種等に即した研修を実施しており、自己研鑽としての公的資格の取得推奨制度も導入しております。また、今後も発生し得る想定外の様々な事象への対応を見据え、組織再編や情報システムの整備による省力化・効率化を進めつつタイムリーな勤務実態の把握を通じて時間外勤務の削減を図る等、働き方改革の推進による労働環境の整備を継続しております。従業員の健康確保に関しては、ストレスチェックテストや産業医によるメンタルヘルスのサポートを行っております。また、ハラスメント防止に関しては、定期的な研修を実施する他、相談窓口を設置する等、環境の整備を行っております。

 

(4)パンデミック・自然災害等による影響

 当社グループは安全第一の方針のもと、パンデミック・自然災害に対して安全対策及びBCP対応を実施しております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大のようなパンデミックや東日本大震災のような大規模な自然災害による不測の事態が生じた場合は、人的・物的被害は、当社グループのみに限定されず、電力・ガス等のインフラや、原材料の調達・物流・顧客等、広範囲にわたるサプライチェーンに波及し、事業活動中断の影響を完全に防止できる保証はなく、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、今後新たな感染症が拡大し事業継続に悪影響を与える可能性は依然として存続しております。当社グループといたしましては、事業復旧の早期化、省力化を図るため、テレワーク等勤務体制の整備、緊急事態発生時の対応マニュアルの整備や訓練の実施等、BCP対応の強化に取り組んでおります。

 

(5)製品及びサービスの不具合

 当社グループは国際的な品質管理システムに従って、顧客から喜ばれる新製品の開発及び既存製品の改良を行っており、製品に付随する工事サービスの安全性にも充分な体制を整えております。しかしながら、IoT端末やそれらを利用した製品サービスの高度化により、当社グループの製品や提供サービスにおいて将来にわたって不具合の発生を防止できる保証はありません。当社グループの製品や提供サービスに致命的な不具合が発生し、その不具合を適時適切に解決できない場合は、顧客への求償や品質維持対応のコストが発生する懸念がある他、当社グループの信用力が低下し、当社グループの製品の売上やシェアが下落する可能性があります。また、大規模なリコールの発生や、製造物責任賠償請求がなされた場合には、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループといたしましては、現時点まで、業績に多大な影響を与えた不具合を発生したことはありませんが、品質管理体制の一層の強化を図ってまいります。

 

(6)為替相場の変動

 当社グループ製品の生産を行う地域の通貨価値の上昇は、それらの地域における現地通貨建ての製造と調達コストを押し上げます。急激な為替変動により為替リスクを回避できない事態が生じた場合は、価格競争力を低下させ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループといたしましては、為替相場の変動の影響を最小限に抑えるべく取引ルートや取引通貨の検討した調達活動を実施する他、必要に応じて為替予約等によるヘッジを行っております。

 

(7)研究開発等

 当社グループが事業展開する分野は、技術革新とコスト競争力について厳しい要求があり、中期の開発戦略のもとに新技術や新製品、新用途、新市場開発、生産プロセス改革に必要な研究開発投資や設備投資をしております。市場の変化が激しい業界において変化を予測することは容易ではなく、開発した製品について想定した売上等の効果が得られない可能性があります。また、競合他社の新技術や新製品開発、業界における標準化や顧客のニーズの変化により、当社グループの製品が予期せぬ陳腐化を起こし、当社グループの製品への需要が減少する可能性があります。これらの状況が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループといたしましては、研究開発テーマと予算を適切に設定し、研究開発の状況をモニタリングして市場の変化に柔軟に対応するとともに、新卒採用・中途採用を計画的に行い技術の継承に努め、また、開発設計業務に携わる従業員のスキル向上のため、適切な教育訓練の機会を整備し、提供するよう取り組んでおります。

 

(8)コンプライアンスとESG

 当社グループは、事業展開を行うにあたって、労働基準関係法令の他、電気用品安全法、電波法、電気通信事業法、建設業法、租税法、下請代金遅延等防止法、個人情報保護法等の様々な法的規制の適用を受けております。当社グループがかかる法規制に違反する場合、また、当社グループが保有する許認可等に付された条件や制約を遵守できない場合には、規制当局からの制裁や罰金、罰則の適用、追加費用の負担や許認可等の剥奪等の可能性がある他、当社グループの評判及び信用にも影響を与えるおそれがあります。さらに、環境・社会・ガバナンス(ESG)の重要性については投資家のみならず社会全体で関心が高まっており、その観点からの企業の対応が重要となりつつあります。当社グループといたしましては、「第一部 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおり、環境・社会・ガバナンス(ESG)に上位概念としてのC(Connect)を加えたCESGを戦略の柱としたサステナビリティ基本方針を制定し、全てのステークホルダーが将来にわたり活動を続けていける社会を実感できるよう注力しております。また、ガバナンスの中でもコンプライアンスに関しては、内部統制システムを構築した上で、法的規制・コンプライアンスの遵守について「品質・環境方針」を踏まえつつ人権・安全・衛生・企業倫理の遵守にも努めながら、サプライヤー全体のマネジメントや育成に取り組むよう従業員への啓発活動を推進しております。

 

(9)機密情報の管理と情報セキュリティ

 当社グループは、業務上多数の顧客情報・製品開発情報を取扱っております。従業員の故意、過失または外部からの不正アクセス等により当社グループが保持又は管理する情報が流出し、第三者がこれを不正に取得又は使用するような事態が生じた場合、当社グループに対して損害賠償を求める訴訟が提起される等、当社グループの事業、業績、評判及び信用に影響を与える可能性があります。また、システムの不具合やサイバー攻撃等により重大な障害が発生した場合も同様に、当社グループの事業、業績、評判及び信用に影響を与える可能性があります。当社グループといたしましては、これらの情報セキュリティ管理については昨今の情勢や事例を鑑み、物理的セキュリティの整備に加え、情報セキュリティ委員会を設置して社内規程やセキュリティポリシーを整備する他、不正アクセスや情報漏洩等を未然に防止するため、従業員向けに情報管理やセキュリティに関する教育を実施し機密情報の管理体制を強化する等、継続的改善を図っております。

 

(10)知的財産の保護

 当社グループの製品は複数のライセンスを利用して製造販売しております。急速な技術進歩やグローバル化により、当社グループの事業領域における知的財産権の状況を完全に把握することは困難であり、当社グループの知的財産権が侵害されている恐れがある場合や、当社グループが他社の知的財産を侵害する恐れがある場合に、必要な措置を完全に講じることができる保証はありません。これらの状況が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループといたしましては、保有する知的財産権を保護し、かつ他社の権利侵害を防止するために、グローバル化に対応した商標登録や特許登録を行い、顧問弁護士や弁理士と連携した管理体制の整備に努めております。

 

(11) エレコムグループとの経営統合

 2025年3月25日付「(開示事項の経過)エレコム株式会社による当社の完全子会社化に向けたスケジュールのお知らせ(続報)」に記載のとおり、両社間での協議・検討の進捗状況等に鑑みて、2025年8月~9月に本株式交換契約を締結することを新たな目標とすることとして、引き続き協議・検討を継続しております。本経営統合の詳細については、「第一部 第2 事業の状況 5 重要な契約等」をご参照ください。なお、本経営統合に係る正式契約がされないことやその他の理由により、本経営統合が予定通りに実施されない可能性があり、その場合には当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境が改善する中で、緩やかに回復しております。一方で、長期化する原材料価格やエネルギーコストの高騰、物価上昇に伴う個人消費の停滞や米国の政策動向による影響等が懸念され、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 当業界において、テレビ関連機器販売の市場に関しましては、薄型テレビは第3四半期までは個人所得の増加や五輪需要も寄与し大型製品が好調でありましたが、物価高による買い控えの影響もあり前年比で減少傾向に転じました。新設住宅着工戸数に関しましても、2025年4月の法改正を前に駆け込み着工が増加しましたが、建設コストの上昇が住宅取得マインドを押し下げる傾向に大きな変化はなく、期を通じて概ね弱含みで推移しました。

 通信関連機器につきましては、官需向け機器が好調であり、民需向けも安定して推移しております。

 このような状況の中、当社グループは、環境に左右されない強固な経営基盤作りに取り組み、営業力の強化等の収益性に重点を置いた企業活動の推進や、市場のニーズを捉えた新製品・ソリューションの開発、聖域なきコストダウンへの継続的取組、販売拠点や生産拠点の統廃合等による集約化と業務の効率化による経費の適正な運営等に努めてまいりました。

 この結果、放送関連機器に関してはCATV事業者向け機器の需要低迷が継続しており、ソリューション事業につきましても弱含みで推移した反面、通信用アンテナにつきましては官需向けが前連結会計年度比で大きく伸長いたしました。しかしながら、2024年4月に連結子会社2社の持分を全部譲渡したため、当連結会計年度より両社を連結の範囲から除外した影響が大きく、当連結会計年度の売上高は10,691百万円(前連結会計年度比6.1%減)となりました。

 利益面につきましては、機器更新需要の確実な獲得に向けた活動や拠点集約に伴う人員配置の見直しによる経費の削減及び経営統合の可能性も踏まえた棚卸資産の最適化等の抜本的な構造改革に全社一丸となり取り組んでまいりましたことや、通信用アンテナの需要が期を通じて貢献したこともあり、営業利益は490百万円(前連結会計年度は2,081百万円の営業損失)、経常利益は525百万円(前連結会計年度は1,918百万円の経常損失)となり、前連結会計年度比で大きく回復いたしました。また、生産・開発機能集約の一環として工場の土地・建物を売却したことにより固定資産売却益を特別利益として計上いたしました。反面、上記の構造改革の費用として棚卸資産の廃棄損、従業員・工場機能の集約に伴う費用、固定資産の売却損及び処分損を特別損失として計上いたしました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は3,619百万円(前連結会計年度は2,906百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

(送受信用製品販売事業)

 放送関連機器の売上高につきましては、家電量販店向け家庭用機器に関しては弱含みながらも堅調さを維持しましたが、CATV事業者向け機器は需要の落ち込みからの回復には至らず前連結会計年度比減となりました。

 通信用アンテナの売上高につきましては、減災・防災分野での補助政策を背景に官需向けデジタル無線機器の切り替え需要が高まり、民需につきましても通信モジュール用アンテナが好調に推移しましたが、上記の子会社持分譲渡による連結除外の影響等もあり、前連結会計年度比減となりました。

 この結果、売上高は9,061百万円(前連結会計年度比7.0%減)、営業利益は1,278百万円(前連結会計年度は815百万円の営業損失)となりました。

(ソリューション事業)

 ビル内共聴改修工事は堅調でしたが、大型案件の獲得が難航したこと等もあり、売上高は1,630百万円(前連結会計年度比0.9%減)となりました。一方で案件ごとの利益率が改善したため営業利益は238百万円(同48.7%増)となりました。

 

 財政状態につきましては、まず、当連結会計年度末の流動資産は、16,340百万円(前連結会計年度末比14.1%増)となりました。これは、工場の土地・建物の売却により現金及び預金が増加したことや、上記の子会社持分譲渡による連結除外の影響等のため、商品及び製品、原材料及び貯蔵品が減少したこと等によるものであります。

 

 固定資産は、2,201百万円(同39.0%減)となりました。これは工場の土地・建物の売却や子会社持分譲渡による連結除外の影響等により有形固定資産が減少したことや、保険積立金の解約により投資その他の資産が減少したこと等によるものであります。

 当連結会計年度末の流動負債は、2,049百万円(前連結会計年度末比57.7%減)となりました。これは、主として工場の土地・建物の売却が完了したことで仮受金が減少したことや、上記の子会社持分譲渡による連結除外の影響等のため、支払手形及び買掛金、関係会社整理損失引当金が減少したこと等によるものであります。

 固定負債は、942百万円(同17.2%減)となりました。これは、退職給付に係る負債の減少等によるものであります。

 当連結会計年度末の純資産の合計は、15,550百万円(前連結会計年度末比30.2%増)となりました。

 この結果、自己資本比率は83.9%となりました。

 

②キャッシュ・フロー

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は10,144百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,588百万円増加いたしました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、増加した資金は346百万円(前連結会計年度は918百万円の減少)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上や棚卸資産の減少による増加と、固定資産売却益の計上や売上債権の増加による減少によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、増加した資金は3,245百万円(前連結会計年度は781百万円の増加)となりました。これは主に、有形固定資産の売却による収入と保険積立金の解約による収入による増加によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、減少した資金は4百万円(前連結会計年度は110百万円の減少)となりました。これは主に、リース債務の返済による支出による減少によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

送受信用製品販売事業(百万円)

7,570

96.2

ソリューション事業(百万円)

1,643

98.8

合計(百万円)

9,214

96.7

 (注) 金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

送受信用製品販売事業

4,186

85.1

17

7.8

ソリューション事業

1,736

120.0

550

120.2

合計

5,923

93.0

568

82.5

 (注) 当連結会計年度において、送受信用製品販売事業における受注残高は著しく減少しております。

これは、主に携帯事業者向け基地局アンテナの受注金額が減少したこと等によるものであります。

 

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

送受信用製品販売事業(百万円)

9,061

93.0

ソリューション事業(百万円)

1,630

99.1

合計(百万円)

10,691

93.9

 (注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績等は、売上高につきましては、10,691百万円(前連結会計年度比6.1%減)となりました。送受信用製品販売事業では、通信用アンテナにつきましては官需向けが前連結会計年度比で大きく伸長した一方、放送関連機器に関しましてはCATV事業者向け機器の需要低迷が継続しており、ソリューション事業におきましても弱含みで推移しております。また、2024年4月に連結子会社2社の持分を全部譲渡したため、当連結会計年度より両社を連結の範囲から除外した影響も大きく、前連結会計年度比減となっております。

 海外売上高は15百万円(同99.2%減)で、連結売上高に占める海外売上高の割合は0.1%と前連結会計年度より減少しております。これは主に連結子会社2社を譲渡したためであります。

 販売費及び一般管理費は3,495百万円(前連結会計年度比32.0%減)となりました。これは主に、2024年4月に連結子会社2社を譲渡したことによるものであります。

 この結果、営業利益は490百万円(前連結会計年度は2,081百万円の営業損失)となりました。

 当連結会計年度の営業外損益は、35百万円の利益(前連結会計年度は162百万円の利益)となりました。これは主に、受取配当金を12百万円計上したこと(前連結会計年度は12百万円)や、為替差益を5百万円計上したこと(前連結会計年度は134百万円の為替差益)等によるものであります。

 この結果、経常利益は525百万円(前連結会計年度は1,918百万円の経常損失)となりました。

 当連結会計年度の特別損益は、3,235百万円の利益となりました。これは主に、固定資産売却益3,671百万円を計上したことによるものであります。

 この結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は3,761百万円(前連結会計年度は2,908百万円の税金等調整前当期純損失)となりました。

 税金費用(法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額)は142百万円になりました。

 これにより、親会社株主に帰属する当期純利益は3,619百万円(前連結会計年度は2,906百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 この結果、1株当たり当期利益は343円91銭となりました。

 なお、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。当社グループといたしましては、企業活動の継続に特段の支障はないものと考えております。

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、まず、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ3,588百万円増加し、10,144百万円となりました。

 重要な資本的支出の予定につきましては、「第一部 企業情報 第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。

 資金の源泉につきましては、主に、当連結会計年度末の現金及び現金同等物と営業活動により得られる資金であります。

 

(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)

 当社グループの経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、下記のとおりの推移であります。

 

 

第68期

第69期

第70期

第71期

第72期

売上高

(百万円)

15,297

12,606

12,070

11,386

10,691

営業利益又は営業損失(△)

(百万円)

284

△1,299

△1,932

△2,081

490

売上高営業利益率

(%)

1.9

4.6

ROA(純利益/総資産)

(%)

19.8

ROE(純利益/自己資本)

(%)

26.3

 

 当社グループを取り巻く事業環境といたしましては、通信用アンテナに関しましては、官需向け機器が好調でありましたが、テレビ関連機器販売の市場に関しましては物価高による買い控えの影響もあり、ソリューション事業の市況も建設コストの上昇が住宅取得マインドを押し下げる傾向に大きな変化はなく期を通じて概ね弱含みで推移しました。また、連結子会社2社を譲渡した影響も大きく、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べ減少いたしました。

 しかしながら、機器更新需要の確実な獲得に向けた活動や拠点集約に伴う人員配置の見直しによる経費の削減及び棚卸資産の最適化等の構造改革に全社一丸となり取り組んでまいりましたことや、通信用アンテナの需要が期を通じて貢献したこともあり、当連結会計年度は営業黒字を達成することができました。

 一方で、現状では、獲得競争・価格競争の激化が継続し、依然として非常に厳しい情勢であるものと考えられます。

 なお、第69期、第70期及び第71期は営業損失を計上したことから、売上高営業利益率につきましては記載しておりません。

 また、第68期、第69期、第70期及び第71期は親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことから、ROA・ROEにつきましては記載しておりません。

 なお、PBRにつきましては組織再編や構造改革を進め、第72期の営業黒字達成に引き続き継続して収益を上げられる体制を構築することを最優先課題として改善に努めてまいります。

 

(セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容)

 セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 なお、財政状態につきましては、当社グループでは、セグメントごとではなく、当社グループ一体としての資金管理を行っております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たっては、決算日における財政状態、経営成績に影響を与えるような見積り・予測を必要としております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り・予測を実施しております。

 

a.繰延税金資産

 繰延税金資産は、将来の利益計画に基づいて課税所得を見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異につきまして計上しております。また、当該課税所得を見積るにあたり、前提条件とした条件や仮定に変更が生じ、これが減少した場合、繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。

 

b.固定資産の減損損失

 固定資産の減損会計の適用に際しては、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位でグルーピングし、各グループの単位で将来キャッシュ・フローを見積っております。将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、回収可能価額まで帳簿価額を減額しております。将来、この回収可能価額が減少した場合、減損損失が発生し、利益に影響を与える可能性があります。

 

c.貸倒引当金

 債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。

 

d.投資の減損

 当社グループは、長期的な取引関係の維持のために、特定の顧客及び金融機関に対する有価証券を保有しておりますが、これら株式には価格変動性が高い公開会社の株式と、株価の確定が困難な非公開会社の株式を含んでおります。当社グループは、投資価値が下落し回復可能性がないと判断した場合、これら有価証券の減損を実施しております。公開会社の株式は、期末日の株価が取得額の50%以上下落した場合又は6四半期間続けて30%以上下落しかつ回復可能性がないと判断された場合、また非公開会社の株式は、原則として当該会社の純資産額が取得額の50%以上下落した場合に、それぞれ回復可能性がないと判断し減損処理を行うこととしております。

 

e.退職給付債務

 従業員に対する退職給付債務は、保険数理計算に基づき決定しております。退職給付債務計算は、その前提として使用している割引率、報酬水準の増加率や従業員の平均残存勤務期間に影響されます。当社グループは、割引率を主として日本国債の金利により決定している他、報酬水準の増加率及び従業員の平均残存勤務期間については、これまでの実績値に基づき決定しております。

 

5【重要な契約等】

(固定資産の譲渡)

 当社は、2024年3月25日開催の取締役会において固定資産の譲渡を行うことを決定し、2024年3月28日に売買契約を締結いたしました。

 

(1)譲渡の理由

 経営資源の有効活用及び業務の効率化・省力化を図るため、当社グループの所有する資産について総合的に勘案した結果、工場機能を集約することといたしました。集約にあたり、蕨工場の機能を川里工場へ移管し、蕨工場の土地建物は譲渡いたします。

 

(2)譲渡資産の内容

資産の名称、内容及び所在地

土地

建物

現況

埼玉県蕨市北町四丁目3291番

蕨工場

4,912.34㎡

9,040.20㎡

(延べ床面積)

工場として使用

※譲渡価額等につきましては譲渡先の意向もあり開示を控えさせていただきますが、市場価格を反映した適正な価格での譲渡であります。

 

(3)譲渡先の概要

 譲渡先は国内の一般事業会社1社でありますが、譲渡先の意向により非開示といたします。なお、当社と譲渡先との間には、資本関係、人的関係、取引関係及び関連当事者として特記すべき事項はありません。

 

(4)譲渡の日程

取締役会決議

2024年3月25日

売買契約締結

2024年3月28日

物件引渡し

2024年12月20日

 

(5)当該事象の損益及び連結損益に与える影響額

 2025年3月期の連結決算及び個別決算において、本件譲渡に伴う固定資産売却益として3,668百万円を特別利益に計上いたしました。

 

(重要な契約)

 当社とエレコム株式会社は、2024年4月25日に開催したそれぞれの取締役会において、エレコム株式会社を株式交換完全親会社、当社を株式交換完全子会社とする株式交換、エレコムグループとの機能統合及びエレコム株式会社の完全子会社であるDXアンテナ株式会社との経営統合を行うことを目的とした基本合意書を締結することを決議し、同日に締結いたしました。これにより、具体的な協議及び検討を進めております。

 詳細につきましては、同日開示の「エレコム株式会社による日本アンテナ株式会社の株式交換による完全子会社化及びエレコムグループとの経営統合に関する基本合意書の締結に関するお知らせ」をご参照ください。

 その後当社は、2024年10月25日付「(開示事項の経過)エレコム株式会社による当社の完全子会社化に向けたスケジュールのお知らせ」に記載のとおり、上記の経営統合に係る今後のスケジュールについて、公正取引委員会における企業結合審査に要する時間等を考慮してスケジュールを変更し、2025年2月~3月に本株式交換契約を締結することを目標として両社間で協議・検討を継続することを公表いたしました。

 また、2025年3月25日付「(開示事項の経過)エレコム株式会社による当社の完全子会社化に向けたスケジュールのお知らせ(続報)」に記載のとおり、両社間での協議・検討の進捗状況等に鑑みて、2025年8月~9月に本株式交換契約を締結することを新たな目標とすることとして、引き続き協議・検討を継続することを公表いたしました。

 今後も本経営統合の実現を目指し、協議・検討を進めてまいります。

 

(重要な子会社持分の譲渡)

 当社は、2024年4月25日開催の取締役会において、当社の連結子会社である上海日安天線有限公司並びにその子会社である日安天線(蘇州)有限公司の持分を上海常福電子科技集団有限公司及び同社の執行董事である常愛兵氏へ譲渡することを決議し、同日付で持分譲渡契約を締結いたしました。概要については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)(事業分離)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

 これまでの当社の史実において、お客様、市場にご愛顧いただいた製品群は総じて源流に位置する社内の設計開発部隊の取り組みにより、新規性や既存製品の延伸上に位置させた付加価値性を具備する機能商品を成立させてまいりました。

 発展目まぐるしい情報化社会に必須の機能商品やサービスと認識して、現在もお客様におかれる設備、装置、環境条件等に整合し得る要件を満たし、可能な限り息長くご利用いただける製品を目指した設計開発業務に取り組んでおります。

 前期から当期に掛けても、過去にご要望いただいた公共系無線設備の更新需要やリプレースにおける応札事案に改めて臨み、市場のインフラ装備一新の機会と、その都度の時代に相応しい形で当社の経験、実歴を生かしながら製品を提供させていただいております。

 例えば、デジタル消防無線の設備更新には監視装置を設えた共用装置として各地域におかれる中枢局、署局様でのご活用の機会、一方では通信衛星による地方公共団体・防災関係機関様向けの防災情報や行政情報伝送システムの整備・運営を目的とされた通信サービスへのパラボラアンテナのご利用、同じく通信衛星関連では市町村の同報系防災行政無線、有線放送電話を利した緊急情報を住民へ瞬時に伝達するシステムへの同種アンテナのご提供等、天災等による有事に加え、更に一方では防衛面での装備や予見防備の観点による感知のシステムが鋭敏に躍動する分野においても、機能の一部に活用いただく製品の引き合いに応じて開発中の事案もございます。

 これらは当社が取り組む製品構築の中で、お客様が準備、或いは装備される無線機の周辺機器として機能する空中線類、受動、能動製品として、通信機能に必要な技術と品質により継続的にご提供させていただき、予後の情勢をも憂慮すべき市場に向けた性能仕様のご提案にも並行して取り組んでいる実歴と現況でございます。

 一方で、研究段階から取り組む基礎開発、応用開発のカテゴリにおいても、当社は電波産業の領域を広義に捉え、様々なRF技術を駆使した製品化活動に鋭意傾注しております。

 当社の経営環境において厳しい局面を迎える中では、当期までに取り組んだ開発テーマについて合理的な検証の下に取捨選択を講じ、新たな収益や事業の可能性に着眼した開発活動の効果性を求めた形で、取り組むべき道程を検証して確実な社会貢献を成し得る開発活動に移行いたしました。

 取捨選択の中では、異業種を含む市場での利便性を念頭に置いたIoTシステム機器開発について、具体事案を峻別しながら備蓄した技術を当社主要の製品へ技術転化させることとし、遠隔制御や状態監視技術を開発設計部が取り組む製品設計へ反映させて機能充実を図ります。

 片や、研究開発を主体としたR&Dセンターで培った技術については、放送系分野において小型低損失分配器の技術成立により、共聴系規模事案における従来共聴システム問題解消に向けた省エネ化、高精度回線の確立に即し、現在も改修工事後の省電力化など、大中規模のビル・マンション系関連のお客様へ仕様をご提案中です。

 加えて、今後の電波産業系の新たな一翼となる無線電力伝送技術の構築により、総務省様ご提唱の省令改正にも即した機器への電力供給装置として開発製品の確立成果も見えてまいりました。

 無線給電を主とした市場でのIoT機器やFA化に対する産業工作機械におけるツール監視デバイスへの電力供給とメンテナンスフリー化を求める市場も芽吹いていることは周知の通りでございます。

 そのような市場情勢における胎動の中で、当期は二度にわたる電子情報通信学会での論文発表を行い、文科省様直轄の開発機構様との共同開発による宇宙空間電力伝送の実証ミッションへの参画と論文共著など、当社のプレゼンスや名実共に向上させるべく主要なお客様や研究機関様との共同開発にも取り組み、市場へ顕出させるべく成果も呈してまいりました。

 加えて、産学連携においては当分野におけるプレスリリースとして、大学機関様、研究機関様との共同開発事案について当社の設計製造担当としての活動についても掲出の運びとなり、各方面における研究開発事案の市場認知度も確実に向上の一途を辿り、当社のR&Dセンター組織の黎明時期に想起した目標が、お客様のお蔭をもちまして成就しております。

 更には、センシングデバイスに取って代わる新たな技術分野として、同じく電磁波を利したセンシング装置の開発により、非破壊検量技術の確立へ向けて加速させ、検知確度を更に高めて具体的な異業種のお客様より引き合いもいただきました。

 当件は、非破壊検量に関わる分野において専門学会での論考発表の機会も利して、活動の具体性を顕示させていただき、関連業界からも一目を置かれている実歴を持つことができました。

 これら無線電力伝送装置や電磁波センシング装置に係る基礎研究から始めた応用開発の分野において、市場での環境問題、省エネ課題の解決、FA化促進などの広義の社会課題に向けた技術的解法による貢献機会を事業性に換え、従前に無い確実な使途要件のご提供と収益性をリンクさせた形で、これまでの取り組み活動の経緯を更なる成果として昇華させてまいります。

 

 上述のように先端的な開発に取り組み、かつ開発課題を厳切に採択した上で、当期は当社内として組織化活動を講じたR&Dセンターを発展的散開として組織編成し、市場区分による事業計画の推進と黒字化維持に直結する開発設計部隊に融合させて、より事業性と収益性に特化した形で 「既存設計開発の延伸」によるお客様への製品提供活動と、「他社の追随を許さない新規開発」の並進による新たな市場区分の確立と確実な収益性に向け、効果的注力によって着実な成果を挙げてまいります。

 更には外部団体に属した活動として、当期ではローカル5G普及に関わる実証検証にも適宜に参画し、営業的側面の助勢を講じて新たなお客様の誘引にも繋げ、一定の売り上げにも寄与させた実歴もございました。

開発活動との連動による事案の推進には、販売促進の側面も重要であり、提案攻勢による候補先との接触や、前述の外部団体などによる新たな事業展開に関わる起源機関への接見もまた関係新商材の展開路線の拡幅として認識し、営業活動との連携も励行いたします。

 以上のように法規制の緩和、省庁関連の法令改正に基づく新しいインフラ構築や整備に関して、当社が貢献できる分野をリサーチしながら、一方で急峻な市場の進化に即すには一朝一夕とはいかぬ難度を伴う開発技術の構築にも取り組み、日々の活動を結実させる志向により現在に到っております。

 当期内では、当社の事業拠点として12月初頭に蕨工場を川里工場へ集約し、より合理的に組織陣容を集約して機能面、物理面での効率を高めた技術開発者の統合化を図り、かつ工場拠点の律動性を高めることにより開発、設計、製造、品証、出荷のサイクルを敏捷に駆動させ、源流である開発設計部隊の傾注性と知慮の高まりを目指した生産性向上を至上目的とする組織といたしました。

 当社が取り組む業態は、有限稀少な電波資源の有効利用を促進する企図により、総務省様が提言される周波数編成アクションプランに即した事業そのものであり生業でございます。

その広義で常に進度有る国の指標や尺度の中で、新たな省令、インフラ、メディアに即した事業の成立として電波資源リサイクルを含めた悠久の営みに、当社の業態自体が関わるものとの認識に変わりはございません。

 電波の利活用の在り方についても、使途を含めて検討していくことも当社が属する社会的機能並びに役割と認識して、以後も弛緩無き活動を継続してまいります。

 現在の研究開発は、上述のとおりR&Dセンターを開発設計部に統合いたしましたため、送受信用製品販売事業の開発設計部を中心に推進されており、当連結会計年度末における既存製品の改良を含む研究開発の人員は57名、研究開発に係わる費用の総額は753百万円であります。

 なお、ソリューション事業の研究開発費につきましては、送受信用製品販売事業で開発し製品化したものを投入するため、実際の研究開発費はありません。