当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は1948年の創業以来、インターホンを中心とした通信機器の専門メーカーとして事業を展開し今日に至っております。
基本方針は、経営理念「自分の仕事に責任を持て 他人に迷惑をかけるな」の下、自社ブランドを基本とし、開発から生産・販売・アフターサービスに至るまで一貫して行い、お客様に満足していただける商品づくりを進めております。
また、経営ビジョンである「コミュニケーションとセキュリティの技術で社会に貢献する」と「顧客感動品質を創造し、世界中の人々に安心・安全・快適を提供し続ける」の下、「新しい安心をかたちに」をスローガンとして掲げ、新しい安心を実感できる商品やサービスを提供し、社会に貢献していきたいと考えております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、国内だけでなく広く世界約70カ国に輸出をしております。当社グループの発展のためには、国内の既存事業基盤の強化のみならず、新規事業分野の創造を図るとともに、海外における販売体制の強化、グローバルな生産体制のより一層の推進など海外展開の強化を進め、収益構造やコスト構造の改善を進めることが重要であると認識しております。具体的な経営指標につきましては、引き続き経営基盤の強化を図るため連結売上高営業利益率を重要な指標としております。また、より一層資本効率の向上を目指した経営を進めてまいります。
(3)経営環境、中長期的な経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループを取り巻く市場環境としたしましては、長期に亘り事業に多大な影響を及ぼしていた部品供給の不安定な状況は概ね正常化されているものの、為替変動や欧米を中心に各国の経済環境における事業への影響につきましては、引き続き注視が必要な状況となっております。
なお、中長期的な成長ドライバーとしては、国内の集合住宅市場を中心としたリニューアルと海外市場であると考えております。特に海外市場におきましては、引き続き北米、欧州が中心となることは間違いないものの、アジア・オセアニア地域の更なる拡大に向けてシンガポールを中心とした販売体制の強化を進めてまいります。また、当社グループのサステナビリティ基本方針に基づき、社会課題の解決に向けたサービスの販売についても積極的に取り組みを進め、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
<サステナビリティ基本方針>
アイホングループは、経営理念である「自分の仕事に責任を持て 他人に迷惑をかけるな」に基づき、全てのステークホルダーが安心・安全・快適を実感できる商品やサービスを提供することにより、持続可能な社会の実現に貢献します。
詳細は当社ウェブサイトをご参照ください。(https://www.aiphone.co.jp/sustainability/concept/)
<国内市場>
住宅市場におきましては、戸建・集合ともに新築住宅の着工戸数は減少傾向で推移しているものの、旺盛なセキュリティニーズを背景に、引き続きリニューアル需要は拡大することが予測されます。また、ケア市場におきましては、病院の新設着工件数は引き続き減少傾向にあり、高齢者施設等においても高齢者の増加で需要自体は拡大するものの、介護従事者の人員不足等により市場環境といたしましては厳しい状況が予測されます。
・住宅市場
戸建住宅につきましては、新商品を中心に付加価値商品の積極提案により、住宅価値の向上にも寄与してまいります。また、高い評価をいただいているワイヤレステレビドアホンについては、引き続きECサイトでの販売を含む売上の拡大につなげてまいります。集合住宅につきましては、これまでの積極的な受注活動やリニューアル受注活動の効率化に向けた支援体制の強化が奏功し、2025年3月期の期初時点における見積及び受注内定の状況は新築・リニューアルともに例年の水準を上回っております。引き続き、需要の高いリニューアル
の受注促進に向けて協力企業との協業を推進し、確実な受注につなげてまいります。また、宅配ソリューショ
ンサービス「Pabbit」のさらなる市場浸透に向けて宅配事業者等との連携を強化し、社会課題である再配達問
題の解決と早期収益化の両立を推進してまいります。
・ケア市場
ケア市場におきましては、病院や施設を中心に高まる「見守り支援」のニーズを追い風に、自治体等からの補助金の活用を含むソリューション提案活動を継続し、リニューアルの拡大につなげてまいります。また、高齢患者等の転倒リスクの低減に向けて臨床現場での共同研究を推進し、医療・介護現場が抱える課題の把握に努めてまいります。
・業務市場
業務市場におきましては、引き続き高まりをみせる公共施設等の無人化・省人化ニーズに即したネットワーク対応商品へのリニューアルを推進し、既存設備の統合やスマートフォン対応による他社連携も視野にソリューション提案を強化いたします。また、学校や公共施設等のセキュリティ強化に向けた取り組みを推進し、安心・安全の提供に努めてまいります。
<海外市場>
米国の政治動向や欧州の景気回復への不透明感など現地事業活動への影響が懸念はあるものの、欧米を中心にセキュリティニーズは高水準を維持しており、IPネットワーク対応商品の販売拡大を見込んでおります。また、アジア市場のさらなる開拓に向け、引き続きシンガポールを中心とする販売体制の強化を進め、需要の高いケア市場及び業務市場へのIPネットワーク対応商品の販売を拡大してまいります。
<生産活動>
効率的な生産と商品の安定供給及び品質向上に向け、引き続き自動化と省人化の促進に向けた投資を進めるとともに、製品及び部品の適正な在庫水準の維持に向けた生産管理を強化いたします。また、グループ全体最適の観点による生産体制の構築を進めることにより、利益の創出につなげてまいります。
<商品開発>
国内外の市場ニーズに応じた魅力的な商品を創造するため、多様化するお客様ニーズに応えることができるよう、必要に応じてM&A等を実行するなどグループ開発体制の更なる強化に向け、より積極的な開発投資を進めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、経営理念である「自分の仕事に責任を持て 他人に迷惑をかけるな」に基づき、全てのステークホルダーが安心・安全・快適を実感できる商品やサービスを提供することにより、持続可能な社会の実現に貢献いたします。2032年度までの長期経営戦略において、“成長の軸足を海外市場にシフトしつつ、「高い品質」の提供で「高い信頼と満足」を獲得し、「高い収益」に変換できる企業を目指す”ことをコンセプトとして掲げ、長期的な高収益体質の実現に向けて取り組みを推進いたします。当社取締役会は、長期経営戦略の完遂に向けて「ESG(環境・人や社会・ガバナンス)経営」の更なる推進を図るべく、ESGに紐づくSDGsの推進を当社グループの成長基盤テーマと位置付けた第8次中期経営計画を策定しております。
(1)ガバナンス
当社取締役会は、代表取締役社長を議長とし、各取り組みの執行・管理責任者とする執行役員6名を含むサステナビリティ経営推進会議を設置し、ESG経営の推進に係るSDGsの達成に向けた施策の実行状況等についての情報共有及び意見交換を行うことにより、モニタリング機能を強化し、より実効性の高い活動となるよう努めております。サステナビリティ経営推進会議は原則として2カ月に1回開催し、その取り組み内容は取締役会に報告されるとともに、必要に応じて審議されております。また、リスクに関する内容については、リスク管理委員会と共有し、グループ全体のリスク管理体制の中で検討・管理しております。サステナビリティ経営推進会議では、執行役員を中心に各本部・部門のKPIを設定し、国内外のグループ会社と連携しながらSDGs達成に向けた取り組みを推進するとともに、サステナビリティに関する課題と改善案の議論を通じて、グループ全体の理解の深化を図っております。
当社グループは社長をトップに置く環境マネジメント推進体制において、環境マネジメントシステム(EMS)を構築し、環境活動の内容について、環境経営の基本理念及び環境方針に基づいたレビューを年1回実施することで、EMSの継続的改善・向上を図っております。また、環境方針に則った取り組みを推進するにあたり、気候変動をはじめとする環境問題に関する取り組みを検討するサステナビリティ経営推進会議下に環境管理委員会を設置し、地球温暖化につながる二酸化炭素の排出を削減するための活動を推進しております。これらの取り組み内容は経営会議を経て取締役会に対して定期的に報告され、取締役会による意思決定及び全社的な環境経営の円滑かつ迅速な推進を図るための体系を整えております。
なお、ガバナンスの体系図については、下記のとおりであります。
(2)戦略
当社グループでは、調達から生産、供給に至るまでのバリューチェーン全体を対象として、気候変動によるリスクと機会を洗い出し、事業への影響度と対応策について考察・分析を実施しております。設定シナリオとして、IPCCやIEAが公表するシナリオを参考に、産業革命期頃の世界平均気温と比較して2100年頃までに4℃上昇するとする4℃シナリオと、脱炭素化社会への移行に伴い1.5℃~2℃未満に気温上昇が抑制される2℃未満シナリオの2つのシナリオを想定し、それぞれの世界観における2030年時点での当社グループへの影響について考察を実施しております。
4℃シナリオにおいては異常気象の激甚化に伴う洪水・高潮被害をはじめとする物理的リスクが拡大し、特にタイ・ベトナムにおける直接的な被害が顕著な影響として想定されます。一方で、2℃未満シナリオでは4℃シナリオと比較してその被害規模は縮小するものの、各国における炭素税の導入や電力価格の高騰により、若干の操業コストの増加を試算しております。また、その他IPCCの将来予測シナリオに基づいた複数のパラメータから、製品の環境性能向上による事業機会獲得の可能性を確認しております。
これらの分析結果は、具体的な対応策の検討・立案をはじめ、当社グループの環境課題に対するレジリエンスの検証に活用し、不確実な将来世界のあらゆる可能性に備えるとともに、今後も環境関連の社会動向を踏まえた分析を定期的に実施、評価の見直しと情報開示の充実化に努めてまいります。
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要因 |
具体的事象 |
分類 |
評価 |
実施中の取り組み 今後検討する対策 |
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2℃未満シナリオ |
4℃シナリオ |
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異常気象災害の増加 |
洪水や高潮被害の規模拡大による自社拠点の被災と対応コストの発生 |
リスク |
中 |
大 |
事業継続マネジメントシステム(BCMS)を構築したリスクマネジメントの実施 |
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炭素税の導入 |
操業に伴うCO2排出量への課税による支出の増加 |
リスク |
中 |
小 |
温室効果ガス排出量の算定及び、エネルギー起源CO2排出量の目標水準の設定及びモニタリング |
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エネルギーミックスの変化 |
再生可能エネルギー発電への移行に伴う電力価格の上昇 |
リスク |
中 |
小 |
環境マネジメント体制の構築及び関係会社各社含む環境方針の設定と省エネ努力の推進 |
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法令・規制の強化 |
RoHS指令、REACH規則や、バッテリー規制に代表されるリサイクル規制をはじめとする法規制や政策の対象・範囲の拡大強化への対応による需要拡大と対応コストの発生 |
リスク/ 機会 |
大 |
中 |
グリーン調達の推進及び製品含有化学物質調査の実施 |
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エシカル消費嗜好の拡大 |
製品の環境性能向上やエネルギーマネジメントシステムへの対応による収益機会の増加 |
機会 |
大 |
中 |
環境配慮設計製品の研究開発及び、リサイクル活動(ゼロエミッション)や資源循環の推進 |
また、当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、次のとおりであります。
当社グループは、「コミュニケーションとセキュリティの技術で社会に貢献する」「顧客感動品質を創造し、世界中の人々に安心・安全・快適を提供し続ける」の2つを経営ビジョンに掲げております。これらの実現を図るため、国内に留まらず、海外市場の拡大を目指すとともに、より多様な視点で経営環境の変化に対応すべく、様々な知識・経験・思考・技能を有する人材の育成と確保は中長期的な企業価値向上において重要な戦略の一つであると認識しております。
当社グループは、経営計画を達成する上で、人材を重要な経営資本と捉えており、従業員にとって働きがいを感じることができる企業風土を実現していくことが、持続的な成長につながっていくものと考えております。そのため、当社グループでは、中長期的な人材育成、健康経営の推進、公正な評価と総合的な人事制度によりエンゲージメントの向上を目指しております。また、2024年度より執行役員を中心としたメンバー構成による人的資本経営検討委員会を発足し、人的資本経営を更に推進するにあたり、その方向性や取り組むべき課題、施策について経営目線で検討、議論を進めております。
人的資本への投資については、育成に関しては階層別研修とは別に専門人材教育を、また採用においては、多様性の実現に向けた専門キャリア人材採用を引き続き継続するなど、今後もこれらへの投資を維持拡大していく予定です。
① 人材育成に係る取り組み
・専門人材のキャリア採用
当社を取り巻く環境は目まぐるしく変化しており、あらゆる環境の変化においても柔軟に対応していくため、海外市場拡大、開発力強化、新規事業への挑戦が求められ、その実現に向け、活力と多様性に富む人材ポートフォリオの構築が必須です。そのため、当社では新卒採用のみならず、ハード・ソフトエンジニア、IT人材など高い専門性や知見を有する人材のキャリア採用を推進いたします。
・カムバック制度
当社は、転職などによるキャリアアップや結婚・出産・育児等の家庭の事情などを理由として、定年前に退職した元従業員が再び就職できるようにする「カムバック制度」を2023年度から新設いたしました。これにより、退職者にはこれまでの経験や他社などで身に付けた様々なキャリアや知識を発揮できる機会を提供し、現従業員にとってもその経験や知識を得ることにもつながると考えております。
・地域限定総合職と女性キャリアアップ研修
女性従業員の更なる活躍に向け、地域限定総合職を新設いたしました。今後、一般事務職の女性が、当社総合職として更なる活躍を促すために女性キャリアアップ研修を採り入れ、女性総合職のキャリアの選択肢を広げる支援をしております。
② 女性の管理職登用
当社グループは、女性の活躍が当社グループにとって組織の活性化、生産性向上において極めて重要であると考えております。しかしながら、当社グループを取り巻くこれまでの環境から、女性管理職の割合は、多様性の確保という観点からは十分とは言えず、課題と認識しております。これを踏まえ、今後、中核人材の育成に努め、女性管理職比率の改善については当社グループで2032年度までに20%とする目標を設定し、より多様性の拡充に努めてまいります。なお、当社グループ女性管理職比率の2023年度実績は7.8%であります。
③ 外国人の管理職登用
当社グループの外国人の管理職登用については、海外における事業規模や経営環境等を踏まえた適当な数の外国人登用は不可欠と考えており、海外グループ販社を中心に必要十分な外国人管理職数が登用されております。現状、こうした考えのもと、当社グループの外国人管理職比率については現状維持を基本としておりますが、今後、さらなる事業のグローバル化を進めるにあたり、必要に応じて外国人人材の管理職登用を進めてまいります。なお、当社グループ外国人管理職比率の2023年度実績は24.8%であります。
④ 中途採用者の管理職登用
当社グループの中途採用者の管理職登用については、採用時期によらず、能力や適性等を踏まえた総合的な評価により実施しております。
なお、現時点での管理職比率は当社が妥当と判断する比率を維持していることから、現状を維持することを基本としております。引き続き、経営環境の変化を適切に捉えるとともに、必要に応じてさらなる中途採用者の管理職登用を進めてまいります。なお、当社グループ中途採用者管理職比率の2023年度実績は45.7%であります。
(3)リスク管理
気候変動を含むサステナビリティ全般に関するリスクについては、サステナビリティ経営推進会議にてそのリスクの識別・評価を実施しております。特定されたリスクはリスク管理委員会と連携し、全社的なリスク管理体制に統合され、重要なリスクに対する取り組みの管理及びリスク管理の推進、内部統制システムの運用等について審議を行い、必要に応じてその内容を経営会議及び取締役会に報告しております。
(4)指標及び目標
当社グループは、「ゼロエミッション」「温暖化防止」「省資源」を重要な環境課題として認識し、それぞれ評価指標を設定し、毎年その実績についてモニタリングしております。また、2022年度よりGHGプロトコルに基づいた温室効果ガス排出量の集計を実施し、バリューチェーン全体での排出量のモニタリングと削減に向けた取り組みを実行しております。当社グループでは、事業活動におけるCO2の直接排出であるスコープ1及びスコープ2について、2050年度までに再生可能エネルギーの利用も含むCO2排出量を2020年度比で100%削減となる「実質排出量ゼロ」を目指し、そのマイルストーンとして2030年度までに2020年度比で50%削減することを目標として掲げております。
なお、
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スコープ/カテゴリ |
CO2排出量(t) |
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2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
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スコープ1 |
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スコープ2 |
|
|
|
|
|
スコープ3 |
|
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|
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カテゴリ11 (注)1 |
販売した製品の使用 |
498,761.9 |
238,683.9 |
370,400.7 |
|
その他のカテゴリ (注)2 |
その他の排出 |
95,485.4 |
107,104.5 |
144,692.3 |
|
合計 |
|
|
|
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(注)1 スコープ3カテゴリ11の算定方法
製品当たりの生涯電力使用量(kWh) × 対象年度製品出荷量 × 電気排出係数
なお、製品当たりの生涯電力使用量は、耐用年数及び独自調査による製品の年間稼働時間などから推計
(注)2 カテゴリ1・2・3・4・5・6・7・12の合計。GHG プロトコルに定められた基準に従い、自社の企業活動に含まれない、もしくは他カテゴリで計上したカテゴリ8・9・10・13・14・15を除外。
また、当社グループでは、上記「
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指標 |
目標 |
実績(当連結会計年度) |
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(当社グループ全体) |
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有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。また、当社グループはこれらのリスクを認識したうえで、その影響を最小限にすべく事業活動を行ってまいります。
(1)新設住宅市場への依存
当社グループの売上において、海外の販売を強化するとともにリニューアル市場での売上拡大に注力いたしておりますが、国内の新設住宅着工戸数の減少が経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(2)競争激化
当社グループは、インターホンを中心とした通信機器の専門メーカーとして事業展開しておりますが、競合他社との競争に晒されております。また、付加価値の高い商品開発を強化しているものの、競合他社の動向、市場環境の悪化等により当社グループ商品への需要の変動や価格競争が激化した場合等には、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(3)部品調達
当社グループは、多数の取引先から部品等を調達しておりますが、取引先の生産能力の事情や各国の政治・経済の動向による部品の供給停止や遅延、価格の高騰等が生じた場合、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(4)品質問題の発生
当社グループでは、ねらいの市場品質情報を収集し、品質管理を徹底した新商品の開発、また既存商品の品質改善を適切に行い、必要とする期間お客様が安全で安心し満足してご使用できる状態をつくることを目的とした品質保証規程を定めております。
なお、品質に対する管理体制には万全を期しておりますが、予期せぬ不具合等の発生に伴い製造物賠償責任が発生し、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(5)法令等の違反・変更
当社グループでは、コンプライアンス体制を確立するため、行動規範や規程等を整備するとともにリスク管理委員会等を設置し、法令及び企業倫理に反しない企業を目指し啓蒙活動等を推進しておりますが、法令等違反が発生した場合には、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、国内及び海外各国の法令・規制等の変更により、当社グループの事業活動が影響を受け、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(6)知的財産権の紛争
当社グループが保有する知的財産権の保護に関しましては適切な管理体制を敷くとともに、第三者の知的財産権を侵害することのないよう十分な調査等を行っておりますが、図らずも第三者との間で知的財産権に係る紛争が発生した場合には、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(7)自然災害等の発生
当社グループは、国内及び海外の各地に事業を展開しており、各事業拠点における地震等の大規模な自然災害の発生により被る損害を最小限に抑えるため事業継続マネジメントシステム(BCMS)等を構築しリスクマネジメントを行っております。しかしながら、想定を超える地震等の大規模な自然災害の発生や新型コロナウイルス等の感染症の世界的な感染拡大により、当社グループの事業拠点や供給元並びに販売先等のサプライチェーンに甚大な被害が発生した場合には、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、先行きの不透明感による需要の落ち込みや販売活動に制限が生じた場合においても、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(8)国際情勢の不安
当社グループは、国内及び海外の各地に事業を展開しており、当社グループ子会社及び取引先から情報の収集等を行っておりますが、各国の政治・経済の動向あるいは予期せぬ戦争、テロ等が発生した場合には、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(9)為替の変動
当社グループは、海外の各地に事業を展開しており、各国の経済情勢や環境の変化等による為替変動が、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(10)情報の漏洩及び滅失の発生
当社グループが保有する個人情報を含む機密情報に関しましては、情報の管理体制を確立するため情報セキュリティ規程等を整備するとともに、運用環境の整備を継続的に行っておりますが、予期せぬ事態の発生に伴い保有情報が漏洩もしくは滅失し、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(11)株価の変動
当社グループは、事業戦略、取引先との関係強化、地域社会との関係維持等を総合的に勘案し、中長期的な企業価値を向上させるため株式を保有しています。個別の銘柄ごとに経済合理性等を検証し、保有意義が薄いと判断した株式は売却しておりますが、株式価値が変動した場合、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)における世界経済は、欧米を中心にインフレ抑制のために金融引き締めが行われ、景気後退が懸念される状況が続きました。また、中東情勢の悪化等、地政学リスクが高まっており先行きが不透明な状況が継続いたしました。
こうした中、わが国の経済は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したことにより、景気は回復基調で推移いたしました。一方で、物価の高騰、急激な為替の変動等、先行きが不透明な状況が継続いたしました。
これらの結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
(イ)財政状態
当連結会計年度末の財政状態は、資産784億1千6百万円(前連結会計年度末比78億1千8百万円増)、負債135億2百万円(同12億9千6百万円増)、純資産649億1千3百万円(同65億2千1百万円増)となりました。
(ロ)経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高613億3千4百万円(前連結会計年度比16.1%増)、営業利益52億6千8百万円(同40.2%増)、経常利益61億3千万円(同47.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益46億4千5百万円(同58.6%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
(日本セグメント)
売上高は543億7千4百万円(前連結会計年度比16.6%増)となりました。営業利益は売上高の大幅な増加等もあり48億3千4百万円(同75.4%増)となりました。
戸建住宅市場の売上は、大幅に増加いたしました。主な要因は、新築では当社の納入時期にあたる住宅着工戸数は前年同期から減少が続く中、商品供給の正常化により主力テレビドアホンの販売が好調に推移したことに加え、前年度に行った価格改定の効果があったことによります。また、リニューアルにおいても商品の供給不安が払拭されたことにより、主力のワイヤレステレビドアホンを中心に量販店等への販売が引き続き好調に推移いたしました。
集合住宅市場の売上は、大幅に増加いたしました。主な要因は、部品不足の回復に伴い商品の供給状況が安定したことから、分譲マンション、賃貸マンションともにリニューアル向けの販売が大幅に増加したことによります。また、下半期を中心に価格改定の効果が見られたことも影響いたしました。なお、新築では当社の納入時期にあたる住宅着工戸数が前期比増加となる中、大手賃貸ディベロッパー等への積極的な受注活動により賃貸マンション向けの販売が好調に推移したものの、市場競争環境の正常化により分譲マンション向けの販売は大幅に減少いたしました。
ケア市場の売上は、微増いたしました。主な要因は、新築では病院の着工数減少の影響により大きく販売が減少したものの、深刻化する医療・介護従事者不足の解決策の1つである「見守り支援」ニーズの高まりを背景に、自治体等からの補助金活用を含む継続的なソリューション提案活動が奏功し、病院や高齢者住宅等のリニューアルの販売が大きく伸長したことによります。また、下半期以降は価格改定の効果も見られました。
業務市場の売上は、増加いたしました。主な要因は、テナントビルや官公庁案件、商業施設等における省人化・無人化ニーズに即したIPネットワーク対応インターホンシステムの販売が好調に推移したことによります。また、学校等における連絡用設備のリニューアル受注が拡大したことや、前年度に実施した価格改定も売上の増加に寄与いたしました。
(北米セグメント)
売上高は現地通貨ベースで大幅に増加するとともに、円貨ベースにおいても為替の影響により大幅に増加し、119億1千8百万円(前連結会計年度比21.1%増)となりました。営業利益は売上高の大幅な増加があったものの、グループ会社からの仕入価格増加の影響等もあり3億1千7百万円(同38.0%減)となりました。
主な要因は、商品供給の正常化に伴い、北米の主要市場である学校・政府案件等の業務市場を中心にIPネットワーク対応インターホンシステムやテレビドアホンの販売が好調に推移したことによります。また、住宅市場においても高単価であるネットワーク対応商品の需要が拡大していることも好調の要因となっています。なお、現地通貨ベースにおける累計の売上高は前年同期を大幅に上回っているものの、金利負担の増大によりオフィスへの設備投資を抑制する動きが見られたことなどから、下半期以降の売上の伸びは鈍化いたしました。
(欧州セグメント)
売上高は現地通貨ベースでは減少したものの、円貨ベースでは為替の影響により増加し、41億4千7百万円(前連結会計年度比8.2%増)となりました。また、営業損失は3千7百万円(前連結会計年度は営業利益1千9百万円)となりました。
主な要因は、ユーロ圏経済において物価高と金融引き締めにより内需の停滞が継続していることにあります。主要国フランスでは、積極的なプロモーション活動により戸建住宅向けのWi-Fi対応テレビドアホンを中心に販売が好調に推移したものの、住宅ローン金利の上昇等に端を発する新築住宅着工数が大幅に減少した影響を受けております。また、企業や地方公共団体等の設備投資予算が縮小する中、現地政府による支援もありエネルギー関連商材への投資を優先する傾向が強まったことにより、業務市場の販売が低迷したことも影響いたしました。
一方、イギリスにおいては経済環境の不安定な状況は継続しているものの、下半期以降は市況が安定したことにより、IPネットワーク対応インターホンシステムを中心に業務市場の販売が好調に推移し、売上は前年同期から増加いたしました。
(タイセグメント)
生産拠点として、売上高は95億7千1百万円(前連結会計年度比1.6%増)となりました。営業利益は、部品価格の高騰等もあり2億円(同17.2%減)となりました。
主な要因は、部品の供給が正常化した状況に合わせ、下半期以降に商品在庫の削減に向けて計画的な生産調整を行った結果、累計生産量が前年同期を下回ったことによります。
(ベトナムセグメント)
生産拠点として、売上高は58億5千7百万円(前連結会計年度比17.9%減)となりました。営業利益は、部品価格の高騰や売上高の大幅な減少等もあり2億8千6百万円(同9.6%増)となりました。
主な要因は、部品の供給が正常化した状況に合わせて計画的な生産調整を継続しており、累計生産量が前年同期を大幅に下回ったことによります。
(その他)
売上高は13億7千9百万円(前連結会計年度比11.2%増)となりました。営業利益は、販売費及び一般管理費の増加や原価率悪化等もあり2千7百万円(同67.1%減)となりました。
主な要因は、オーストラリアを中心とするオセアニアにおいては、国内経済の減速により新築を中心に住宅市場の停滞が大きく影響し、販売が大幅に減少したものの、シンガポールを中心とする東南アジアにおいて、需要の高いIPネットワーク対応インターホンやナースコールの販売が好調に推移したことによります。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ78億3千万円増加し、215億8千7百万円となりました。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は90億5千6百万円(前連結会計年度は47億8千1百万円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益61億7千9百万円、棚卸資産の減少額19億1千3百万円、減価償却費10億2千1百万円などがあったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は5千8百万円(前連結会計年度比97.7%減)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出7億8千2百万円があったものの、有価証券の売却及び償還による収入7億5千1百万円などがあったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は16億9千9百万円(同3.3%減)となりました。これは主に、配当金の支払額14億7千1百万円などがあったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
(イ)生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
日本 |
35,207 |
103.7 |
|
タイ |
9,522 |
100.0 |
|
ベトナム |
5,781 |
80.2 |
|
合計 |
50,511 |
99.6 |
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しておりません。
(ロ)受注実績
当社グループは、主として需要見込による生産方式をとっておりますので記載を省略しております。
(ハ)販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
日本 |
43,910 |
115.8 |
|
北米 |
11,897 |
121.2 |
|
欧州 |
4,146 |
108.2 |
|
その他 |
1,379 |
111.2 |
|
合計 |
61,334 |
116.1 |
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(イ)財政状態
当連結会計年度末における資産は784億1千6百万円(前連結会計年度末705億9千7百万円)となり78億1千8百万円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が78億3百万円増加、投資有価証券が11億7千3百万円増加、棚卸資産が10億6百万円減少したこと等によるものであります。
負債は135億2百万円(前連結会計年度末122億5百万円)となり12億9千6百万円増加いたしました。これは主に、未払法人税等が8億1千8百万円増加、未払消費税等が7億7千万円増加したこと等によるものであります。
純資産は649億1千3百万円(前連結会計年度末583億9千1百万円)となり65億2千1百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益により46億4千5百万円増加、為替換算調整勘定が18億3千1百万円増加したこと等によるものであります。
(ロ)経営成績
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、613億3千4百万円(前連結会計年度比16.1%増)となりました。売上高の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 (ロ)経営成績」に記載しております。
(売上総利益)
当連結会計年度における売上総利益は、265億3千万円(前連結会計年度比17.5%増)となりました。主な増加要因としましては、売上高の増加によるものであります。
(販売費及び一般管理費)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、212億6千2百万円(前連結会計年度比13.0%増)となりました。主な増加要因としましては、人件費や研究開発費の増加によるものであります。
(営業利益)
当連結会計年度における営業利益は、52億6千8百万円(前連結会計年度比40.2%増)となりました。主な増加要因としましては、売上総利益が増加したことによるものであります。
(経常利益)
当連結会計年度における経常利益は、61億3千万円(前連結会計年度比47.1%増)となりました。主な増加要因としましては、営業利益が増加したことによるものであります。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、46億4千5百万円(前連結会計年度比58.6%増)となりました。主な増加要因としましては、経常利益が増加したことによるものであります。
なお、当社グループが経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標としている連結売上高営業利益率はバックオーダーの解消や価格改定により売上高が増加したことに伴い、8.6%(前連結会計年度比1.5ポイント増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、持続的な成長のための積極的投資と株主への利益還元に必要な資金の確保、並びに強固な財務基盤の維持を目指し、安定的な営業キャッシュ・フローの創出に努めております。運転資金需要の主なものは、製品を生産するための材料仕入、外注費等の製造費用や新商品開発のための新商品開発費及び販売費であります。また、設備資金需要の主なものは、製品を生産するための機械装置等の固定資産購入であります。なお、当社グループはこれらの資金を全額自己資金で充当しております。
また、株主還元につきましては、長期的な視点に立った安定的な配当を実施するとともに、経営基盤の強化と収益見通しを勘案しつつ積極的な配当を検討しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が経営成績等に重要な影響を及ぼすと考えております。
(製品保証引当金)
製品保証引当金は、将来発生する修理費用の見積額を計上しております。修理費用の見積額は、過去の発生実績率や特定案件の合理的な見積りに基づいて計上しておりますが、実際の発生実績率または修理費用が見積りと異なる場合、製品保証引当金に影響を及ぼす可能性があります。
(退職給付債務及び退職給付費用)
退職給付債務及び退職給付費用は、割引率や年金資産の期待運用収益率等の数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、退職給付債務及び退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループは、電気通信機器の事業分野において一流のメーカーを目指し、市場のニーズに合わせた研究開発に重点をおいて取り組むとともに長期的な視点に立った基礎的研究も同時に行っております。
当社グループの研究開発は、基礎研究活動並びに新製品の事業化に向けた研究開発活動を当社(セグメントの名称:日本)の技術本部に集約し、この技術本部が中心となって研究開発活動を展開しております。また当社は、ソフトウェア開発体制の強化を図り、多様化する国内外の市場ニーズに対応し、更なる事業の拡大を目指しております。
なお、研究開発活動によって開発される技術の多くは様々な製品に利用されることなどから、活動の状況及び当該費用を報告セグメントにより区分することは困難であり、報告セグメントによって示すことは行っておりません。
当連結会計年度における研究開発費の総額は