第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当企業集団が判断したものであります。

 

(1)経営方針

当企業集団は、創業以来、「常に最高の技術集団であれ」を社是として歩んでまいりました。また「コミュニケーションで創る楽しい未来、愉快な技術」を経営理念としており、コミュニケーションを円滑に行う機器を作るメーカーとして事業を営んでおります。

 

(2)経営戦略及び目標とする経営指標

当企業集団は、中期的な販売目標である売上高500億円を達成するために、各国で導入が進む各種デジタル無線通信方式に対応するデジタル無線通信機器の開発に取り組むとともに、高付加価値の無線システム販売を強化するため販売網の見直しを行う等、販売力の強化を図ってまいります。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題

高品質を保ちながら多品種少量生産を行うために国内生産を堅持する当企業集団にとりまして、輸出環境における為替変動が経営成績に大きな影響を与えます。また、中国などの後発メーカーの進出は一部の製品において価格競争を厳しくしております。このような経営環境のもとで収益を安定して確保するため、次のような施策を実施してまいります。

①無線通信機器市場では、世界の地域ごとに異なる市場対応を行う必要がありますが、各国個別の無線通信事情を収集し、多様なニーズに対応することでシェア拡大に努めてまいります。

②無線通信方式のデジタル化への取り組みとして、国ごとに、また用途により異なる様々な通信プロトコルに対応したデジタル無線通信機器の高機能化を進めており、顧客の多様なニーズに応えてまいります。

③IP無線や衛星無線など、交信可能範囲の拡大による利便性の向上、課金ビジネスへのアプローチを継続してまいります。

④無線通信機器の高機能化に対応するため、販売先への技術指導や販売ルートの見直しを推進してまいります。

⑤あらゆるモノがインターネットで繋がるIoTに関しても、無線通信との連携を強化した新たなソリューションを提供してまいります。

⑥高い技術力を保持して製品の差別化を図るとともに、技術及び購買・生産部門の連携による価格対応力の強化に努めてまいります。

⑦コスト低減への取り組みとして、ロボット主体のラインを構築し生産効率向上を推進、ローコストの海外部材調達比率を拡大、間接費の低減等に努めてまいります。

 

 

2【事業等のリスク】

 当企業集団の経営成績、株価、財政状態に影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。なお、文中における将来に対する事項は有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

(1)為替相場の変動による影響について

 当企業集団の連結売上高に占める海外売上高の割合は、2017年3月期66.9%、2018年3月期67.6%、2019年3月期55.0%と高水準であり、為替相場の変動が当企業集団の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2)世界情勢による影響について

 世界各地で勃発する戦争や疫病、災害等により、原材料の価格高騰や入手が困難な状況が発生した場合には、当企業集団の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当企業集団の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

当連結会計年度は、国内については、雇用環境の改善が進むとともに設備投資が堅調であったことから緩やかな回復が続きましたが、年明けから年度末にかけては外需の減少やコスト負担増から足踏み状態となりました。輸出環境については、米国は米中貿易摩擦の影響が大きく懸念される状況にありますが、雇用環境の改善や堅調な企業収益から好調を維持しました。欧州では、内需は堅調さを維持しつつも輸出の減速により成長率が鈍化しました。アジア地域でも、インドネシアでは旺盛な内需による好調さを維持しましたが、他の主要国では外需の減少から成長率が鈍化しました。

また、当連結会計年度に適用した米ドル及びユーロの平均為替レートはそれぞれ109.62円及び127.59円であり、前年同期に比べそれぞれ0.5%及び0.7%の円高水準で推移しました。

このような状況のもとで、当企業集団は、デジタル化の流れに対応して付加価値の高い製品の開発を進めるとともに、世界の幅広い顧客獲得を目指して新規市場の開拓及び販売ルートの強化に努め、国内市場では、IP無線機を始め陸上業務用無線通信機器が大幅な増収となりましたが、海外市場では、アマチュア用無線通信機器の新製品効果が減少するとともに、アジア・オセアニア地域において海上用無線通信機器が減収となりました。

 

<参考>地域別売上高

 

前連結会計年度

(自2017年4月1日

  至2018年3月31日)

当連結会計年度

(自2018年4月1日

  至2019年3月31日)

前期比

(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

国内

8,059

32.4

13,370

45.0

165.9

 

北米

7,154

28.8

7,382

24.9

103.2

欧州(EMEA)

3,968

15.9

3,743

12.6

94.3

アジア・オセアニア

4,903

19.7

4,638

15.6

94.6

その他(含む中南米)

794

3.2

565

1.9

71.1

海外計

16,821

67.6

16,329

55.0

97.1

合計

24,880

100.0

29,700

100.0

119.4

 

これらの結果、当連結会計年度の売上高は297億円(前年同期比19.4%増)、売上総利益は127億8千4百万円(前年同期比21.6%増)となりました。販売費及び一般管理費は人件費や試験研究費等が増加したことにより前年同期に比べ6億1千7百万円増加し103億4千1百万円となりましたが、売上総利益の伸びがこれを上回ったことから、営業利益は24億4千3百万円(前年同期比208.8%増)となり、為替差益や持分法の投資利益の計上などにより経常利益は27億6百万円(前年同期比208.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は19億6千4百万円(前年同期比213.7%増)となりました。

 

売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

親会社株主に帰属する当期純利益

(百万円)

当連結会計年度

(2019年3月期)

29,700

2,443

2,706

1,964

前連結会計年度

(2018年3月期)

24,880

791

877

626

前年同期比増減率

19.4%

208.8%

208.5%

213.7%

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

a. 日本[当社、和歌山アイコム㈱、アイコム情報機器㈱]

国内市場では、IP無線機や地域コミュニティ無線が好調に推移するとともに、イベント関連の需要も増加したことにより陸上業務用無線通信機器が大幅な増収となりました。海外市場では、アマチュア用無線通信機器の新製品効果が減少し、アジア地域向けでは海上用無線通信機器が減収となりましたが、本セグメントの外部顧客に対する売上高は195億6千6百万円(前年同期比32.7%増)となりました。

利益面では、増収により営業利益は23億1千7百万円(前年同期比158.8%増)となりました。

b. 北米[Icom America,Inc.、ICOM CANADA HOLDINGS INC.、ICOM DO BRASIL RADIOCOMUNICACAO LTDA. ]

主力の陸上業務用無線通信機器では、鉄道事業向けを中心に増収となり、アマチュア用無線通信機器も固定機を中心に堅調に推移し、海上用無線通信機器は天候不順の影響を受けましたが前年度を上回ったことから、本セグメントの外部顧客に対する売上高は79億7千万円(前年同期比1.3%増)となりました。

利益面では、増収並びに販売費及び一般管理費の削減により7千3百万円の営業利益(前年同期は2千7百万円の営業損失)となりました。

c. ヨーロッパ[Icom(Europe)GmbH、Icom Spain, S.L.]

陸上業務用無線通信機器や海上用無線通信機器は増収となりましたが、アマチュア用無線通信機器は新製品効果が減少したことから、本セグメントの外部顧客に対する売上高は12億7百万円(前年同期比2.3%減)となりました。

利益面では、減収により営業利益は5千8百万円(前年同期比18.1%減)となりました。

d. アジア・オセアニア[Icom(Australia)Pty.,Ltd.、Asia Icom Inc.、PURECOM CO.,LTD]

主力市場となるオーストラリアにおいて、海上用無線通信機器は堅調に推移しましたが、他の品目は減収となり、また前年同期に比べ対オーストラリアドルは5.5%の円高水準であったことから、本セグメントの外部顧客に対する売上高は9億5千5百万円(前年同期比7.5%減)となりました。

利益面では、販売費及び一般管理費の削減により営業利益は9千3百万円(前年同期比52.6%増)となりました。

 

②財政状態の状況

(資産)

総資産は前連結会計年度比18億5千9百万円増加し、610億6千3百万円となりました。

主な内訳は、受取手形及び売掛金の増加40億8千9百万円、たな卸資産(合計)の増加23億6千万円、機械装置及び運搬具の増加2億6千9百万円、有形固定資産のその他の増加1億8千6百万円及び無形固定資産の増加1億3千5百万円等の増加要因と、現金及び預金の減少49億7千5百万円及び流動資産のその他の減少2億6千7百万円等の減少要因によるものであります。

なお、有形固定資産のその他の増加1億8千6百万円の主な内訳は、工具器具備品の増加1億7千6百万円等の増加要因によるものであります。

また、流動資産のその他の減少2億6千7百万円の主な内訳は、未収消費税の減少1億7千1百万円及び未収入金の減少1億4百万円等の減少要因によるものであります。

 

(負債)

負債合計は前連結会計年度比7億7百万円増加し、57億5千8百万円となりました。

主な内訳は、賞与引当金の増加3億4千3百万円、流動負債のその他の増加2億9千1百万円、未払法人税等の増加2億1千万円及び退職給付に係る負債の増加1億8千6百万円等の増加要因と、買掛金の減少3億1千3百万円等の減少要因によるものであります。

なお、流動負債のその他の増加2億9千1百万円の主な内訳は、未払消費税の増加2億1千6百万円等の増加要因によるものであります。

 

(純資産)

純資産合計は前連結会計年度比11億5千2百万円増加し、553億4百万円となりました。

主な内訳は、親会社株主に帰属する当期純利益による増加19億6千4百万円及び為替換算調整勘定の増加4千1百万円等の増加要因と、剰余金の配当による減少5億9千2百万円、退職給付に係る調整累計額の減少1億8千9百万円及びその他有価証券評価差額金の減少7千万円等の減少要因によるものであります。

以上の結果、自己資本比率は91.5%から90.6%に低下いたしました。

 

③キャッシュ・フロ-の状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ49億4千2百万円減少し、233億7千6百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により減少したキャッシュ・フローは、29億9百万円(前年同期は10億5千5百万円の増加)となりました。主な減少要因は、売上債権の増加40億4千6百万円、たな卸資産の増加22億9千8百万円、法人税等の支払額5億円、仕入債務の減少3億8千1百万円及び受取利息及び受取配当金1億2千4百万円、一方で主な増加要因は、税金等調整前当期純利益27億6百万円、減価償却費10億2千万円及び営業活動その他による増加7億5百万円であります。

なお、営業活動その他による増加7億5百万円の主な内訳は、賞与引当金の増加3億4千4百万円及び未払消費税の増加2億1千6百万円等の増加要因によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により減少したキャッシュ・フローは、14億6千3百万円(前年同期は13億5千3百万円の減少)となりました。主な減少要因は、有形固定資産の取得による支出12億7千5百万円、投資有価証券の取得による支出3億4千8百万円及び無形固定資産の取得による支出2億2千2百万円、一方で主な増加要因は、投資有価証券の売却による収入2億5千8百万円及び利息及び配当金の受取額1億3千万円であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により減少したキャッシュ・フローは、5億9千3百万円(前年同期は2億9千7百万円の減少)となりました。主な内訳は、配当金の支払額であります。

 

④資本の財源及び資金の流動性について

当連結会計年度末において、当該項目に記載すべき資金の支出予定はなく、事業運営上必要な資金につきましては自己資金により賄う予定であります。

 

⑤生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2018年4月1日

至  2019年3月31日)

前年同期比(%)

日本(百万円)

29,014

138.1

アジア・オセアニア(百万円)

合計(百万円)

29,014

138.1

(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

b.商品仕入実績

 金額的重要性が乏しいため、記載を省略しております。

 

c.受注実績

 当企業集団の製品は、需要予測による見込生産を行っており、原則として受注生産は行っておりません。

 

d.販売実績

 当連結会計年度における報告セグメントごとの販売実績はセグメント情報等をご参照下さい。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において判断したものであります。

①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって適用した重要な会計方針および見積りの方法につきましては、第5「経理の状況」1「連結財務諸表」「注記事項」(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。

②当連結会計年度の経営成績の状況に関する分析・検討内容

a. 経営成績等の分析

(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況をご参照願います。

b. 資本の財源及び資金の流動性についての分析

(1)経営成績等の状況の概要 ④資本の財源及び資金の流動性についてをご参照願います。

C. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当連結会計年度の連結業績目標の達成状況は次のとおりであります。

売上高は、第4四半期における国内の陸上業務用無線通信機器の販売が堅調に推移したことから計画比11億6千万円増(4.1%増)の297億円となりました。売上高の増加に伴い営業利益は計画比2億6千3百万円増(12.1%増)の24億4千3百万円となりました。又、営業利益率は計画をやや上回る8.2%となりました。

指標

2019年3月期(計画)

2019年3月期(実績)

2019年3月期(計画比)

売上高(百万円)

28,540

29,700

1,160(4.1%増)

営業利益(百万円)

2,180

2,443

263(12.1%増)

営業利益率(%)

7.6

8.2

0.6

 

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

5【研究開発活動】

当企業集団における研究開発活動は、連結財務諸表を作成する当社(日本セグメント)及びIcom America Inc.(北米セグメント)が行っております。当連結会計年度の研究開発費は3,864百万円であり、主な研究開発とその成果は次の通りです。

・陸上業務用無線通信機器

 国内向けでは、ARIB新規格に合致した、地域社会の安心・安全を支える免許不要のデジタル小電力コミュニティ無線機を開発しました。本無線機には当社が開発した音声符号化方式TOKUDER®が採用されております。

 また、携帯電話回線を利用するIPトランシーバーの分野において、デュアルSIM対応の無線機を開発しました。本体操作だけで複数のキャリアを切り替えることができ、より安心して使える高度な信頼性を提供します。

 海外向けでは、米国公安市場向け規格APCO P25無線機をはじめとして、世界各国のビジネス・公共サービス市場向けのデジタル業務用無線機のラインアップ拡充を図りました。

・アマチュア用無線通信機器

 1200MHz帯を標準装備したVHF/UHF専用無線機を開発しました。HF無線機で評価を得ているRFダイレクトサンプリング方式を採用し、D-STAR®のDV(デジタルボイス)とDD(デジタルデータ)モード、AMにも対応したVHF/UHFオールモードトランシーバーとなります。

 また、広帯域ハンディレシーバーをBluetooth®で接続し、スマートフォンからリモート操作できるアプリケーションを開発しました。

・海上用無線通信機器

 国際条約で外航船舶に搭載が義務付けられているGMDSS(世界海洋遭難安全システム)に適合したMF/HF無線機を開発しました。最新のITU規格対応Class A DSCと、厳格な環境テストに合格した信頼の品質で、国際航海の安全をより一層確かなものにします。

・航空用無線通信機器

 VHF帯航空用無線狭帯域化に対応した携帯型エアバンド無線機を開発しました。従来の25kHz幅に加えて8.33kHz幅のチャンネルを搭載しました。また、1500mWの大音量オーディオで激しい騒音下でもクリアな通信を可能にします。

・ネットワーク機器

 2.4/5GHz帯同時通信対応の小型アクセスポイントを開発しました。802.11ac Wave2準拠、理論値867Mbpsの高速通信を実現します。