第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、創業以来、「常に最高の技術集団であれ」を社是として歩んでまいりました。また「コミュニケーションで創る楽しい未来・愉快な技術」を経営理念としており、コミュニケーションを円滑に行う機器を作るメーカーとして事業を営んでおります。

 

(2)経営戦略及び目標とする経営指標

当社グループは、「コミュニケーションで創る楽しい未来・愉快な技術」を経営理念とし、培ってきた無線通信技術とゼロからモノを産み出す創造力を活かし、お客様の要望や期待にお応えする製品とソリューションを提供することで、急速に発展していく情報社会に貢献するとともに安全で豊かな社会の実現に貢献しています。

当社グループの企業価値の源泉は創業以来、一貫してMade in Japanのモノづくりにこだわっており、ソフトウエア・ハードウエアを含めたほぼ全ての要素技術を自社で開発、製品設計から製造までを国内拠点で行うことにより、優れた製品を少量多品種で効率よく生産するノウハウを蓄積するなど無線通信機器メーカーとして高い技術力を維持しております。当社グループが生産する携帯電話回線を利用した一斉同報の無線機(IP無線機)は大手航空会社、大手鉄道会社等を中心に導入していただいており、インフラ運営に欠かせない機材となっております。

また、当社のMade in Japanの品質と信頼性、及び顧客の細かなニーズに対応できる技術力が、大手競合他社には参入が困難な日本の国家機関に対する装備品の納品を可能としております。さらに、災害対策用移動通信機器の備蓄・貸出事業を2006年から継続して我が国の行政機関より受託しており、代替が困難な社会インフラの役務を継続的に提供しております。

また、衛星無線通信機は大災害で携帯電話基地局に障害が発生した場合でも通信が可能である等の特色を有し、当社の無線通信機は、有事の通信手段として、日本国内のみならず、国際連合(UN)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、各国政府・日本国大使館等からの需要もあります。加えて、民間企業においては、事業継続計画(BCP)対策として当社の製品・サービスを活用いただいております。また、当社の健全な財務体質は、積極的な事業の展開を支えるとともに、インフラを担う企業として重要な条件である経営の安定性を裏付けるものとなっております。

当社グループは、企業価値の更なる維持・強化のために、基本的な施策として以下の事項に取り組んでおります。

①コアビジネスの強化

・無線機単体のビジネスからより高度なコミュニケーションシステムの開発・販売への拡大による、高周波の

新たな領域や新プラットフォームの展開

・衛星無線通信分野への進出の成功を背景に、新たな「アイコムしかできない」製品展開

・異なる無線プロトコル間の通信ノウハウやハイブリッド製品の開発による主要無線分野のシェア拡大

②新たなビジネスモデルへの挑戦

・回線料収入等のストックビジネスの今後の海外市場への展開による、更なる収益の拡大

・無線通信の要素技術を用いた異業種への参入及びビジネスのシナジー効果が得られる戦略的なパートナーシ

ップの構築

③100年企業を目指したサステナブル経営戦略

・サステナブル経営を基にしたバリュー・プロポジションの更なる向上

・持続的な成長に向けた取り組み(ESG)

・ロボット生産やスマートファクトリー化によるモノづくりの改革と進化の継続

 

(3)経営環境及び優先的に対処すべき課題

半導体等の主要電子部品の供給難は解消されつつありますが、依然として一部のキーパーツの納期の長期化は継続しており、当社グループでは引き続き計画的な資材調達に努めるとともに、部材供給不足の影響を受けにくい新製品の開発や生産工程の自動化を進めることにより、コストを抑制しつつ市場のニーズに対してタイムリーに、且つ安定した製品の市場投入に取り組んでまいります。

また、当社は、更なる売上の拡大、利益率の向上に向けて「アイコムを100年企業へ」をスローガンに、2026年3月期を最終年度とする3ヵ年計画として「中期経営計画2026」を発表いたしました。計画2年目にあたる当連結会計年度の業績は、前期に比べ厳しい側面があるものの、売上目標達成に向け着実に遂行しております。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、創業からの経営理念である「コミュニケーションで創る楽しい未来・愉快な技術」に込めた想いの実現に向け、無線通信技術を通じて、安全で豊かな社会を支えるソリューションの提供を目指します。

高度化、複雑化した現代社会において、無線通信技術は社会の安全と利便性に大きく寄与しております。当社グループの製品やサービスは、世界中で様々な分野に高度なコミュニケーションを提供することで、その使命を果たしております。

無線通信機器の専業メーカーとして培ってきた無線通信技術とゼロからモノを産み出す創造力を活かし、さらにお客様の要望や期待にお応えする製品とサービスを提供することで、急速に発展していく情報社会の持続的な成長に寄与したいと考えております。

 

(1)100年企業を目指したサステナビリティ経営

当社グループは、2023年5月に策定した「中期経営計画2026」のなかで、100年企業を目指したサステナビリティ経営の推進を重点テーマとして設定しました。持続的な成長に向けた取り組みとしてESGに注力するとともに、高利益率を創出する会社基盤の強化を推進することで、サステナブル経営を基としたバリュー・プロポジションの向上を目指しております。

100年企業を目指した事業戦略の推進においては、コンプライアンスや法令順守といったCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)はもちろんのこと、製品やサービスが「グローバルな社会課題」の解決に貢献するモノづくりという観点を踏まえて取り組んでいきます。

 

(2)アイコムが取り組む社会的課題

サステナブル経営の実現に向け、持続可能な安全で豊かな社会を目指すには、製品の開発・生産だけでなく様々な社会課題の解決に向けたチャレンジへの取り組みが必要と考えます。そのため、「中期経営計画2026」では、CSRへの積極的な取り組みとして「安全・安心のためのモノづくりと復興支援」、「資源の有効利用」、「働きがいのある社風づくり」をマテリアリティ(重要課題)として掲げ、KPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)として評価します。

また、「社会とのつながり」という観点からも、ESGへの積極的な取り組みが不可欠であると認識しており、SDGsへの取り組みを推し進めるとともにTCFDやCDPといった各種イニシアチブへの対応など、取り組むべきゴールとして注力しております。

 

(3)バリュー・プロポジション向上への取り組み

当社グループは世界中の様々な分野において、高度なコミュニケーションソリューションを提供することで、安全で豊かな社会の実現に貢献しております。

これからも当社グループはお客様の要望や期待にお応えする製品とソリューションを提供します。

当社グループの歴史は日本のモノづくりの歴史でもあります。国内生産にこだわり、自社で設計、開発した製品を国内の自社工場で生産する体制は創業時より一貫して変わりはありません。経済環境の変動にも力強く対応できる長年の経験と底力で当社グループの強みである「Made in Japan」を堅持してまいります。

 

1.気候変動への対応

気候変動をはじめ、エネルギーや資源の枯渇などの環境問題、高齢化社会や情報格差などの社会問題など様々な課題は、今や国・地域を問わない世界共通の喫緊の課題です。これらの課題は、ブランドステートメントに掲げている「How the World Communicates ~コミュニケーションで世界をつなぐ~」にも、100か国以上に製品を輸出し海外売上比率の高い当社グループの持続可能な経営のためにも重要な課題(マテリアリティ)であると考えております。

当社グループはTCFD(気候関連財務情報開示

タスクフォース)提言に賛同(2023年5月)し、

日本国内ではTCFDコンソーシアムにも加盟しま

した。(2023年6月)

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このTCFD提言を踏まえて、社会課題がもたらすリスクや機会を捉えることで、リスク管理体制を高度化していくとともに、新たなビジネスの機会も見出し、企業戦略へ活かします。

 

(1)ガバナンス

当社グループは、「気候変動への対応」をサステナビリティ経営における重要な課題の一つとして認識しております。

具体的には、経営会議の直下の組織として、2023年4月にサステナビリティ推進グループを設置し、気候変動を含むサステナビリティ推進策を迅速に実行するための体制を整備しました。

サステナビリティ推進グループは、気候変動対策推進とその進捗管理の全社的な調整を行い、関連部門と連携し、マテリアリティ(重要課題)やKPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)の定期的な見直しや、気候変動による事業への潜在的な影響についての調査・情報収集、サステナビリティ関連情報の開示拡充に取り組んでおります。

加えて、社内における気候変動に関する問題意識の醸成や理解促進に向け、関連各部署と積極的なコミュニケーションを図りながら、事業とサステナビリティを結びつける取り組みを主導しております。

また、気候変動問題に対応するガバナンス体制として、同グループは、毎年1回以上招集され、必要に応じて臨時開催し、議論の内容は経営会議に報告します。また、「サステナビリティ推進グループ」のメンバーとして、テーマごと(気候変動については環境部会)に関連部門からメンバーを招集した専門部会を設置し、それぞれのテーマの課題の抽出、目標や実施計画、具体的対応等を協議し、推進していきます。取締役会は、これらの委員会、会議の報告を受け、必要事項を承認し、意思決定を行っております。

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※サステナビリティ推進グループ構成員:社長室+総務部ほか(議題に応じて各部署が参加)

 

(2)リスク管理

当社グループでは、気候変動を含む環境課題を重要課題の一つと捉え、「サステナビリティ推進グループ」を中心に気候変動に関するリスクと機会の特定や評価、管理のための取り組みを推進しております。リスクにおいては、同グループのみならず総務部リスク管理ユニットと連携の上で各種リスクの特定・評価・管理を実施しております。

同グループは、経営会議直下の組織として年1回以上招集され、気候変動関連の課題を経営会議が審議・検討・監督するための事務局機能を担い、リスクと機会の特定・評価・管理のほか、各事業年度におけるGHG排出量実績評価や排出削減の進捗管理、対外開示の内容など気候変動に関する様々な事項を協議・整理します。

また、同グループでの協議・整理を経て、気候変動に関する各種事項は経営会議に報告され、取締役会で最終承認を得ます(気候変動に関する議題については、年次データの報告、要求事項の変更や環境対応に関する勉強会等で年1回以上の頻度で取り扱っております)。決定事項・施策等については同グループがその後の社内実行・浸透までの進捗管理を担っております。

(3)戦略

当社グループでは、1.5℃含む複数の気候変動シナリオに基づいてリスクと機会の分析を実施しております。自然災害の激甚化による物理的なリスク、被害を軽減するために導入される各種規制から生じる移行リスクに対して、脱炭素に貢献する製品展開の拡大、省エネ・省資源に伴うコスト低減等の検討を進める予定です。

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※時間軸:短期(~2030年)/中長期(~2050年)

※影響度:営業利益の直近5年間平均額の1%を超える影響額(大)/それ以下(小)

今後も定期的かつ継続的にシナリオ分析を実施することでその精度を高め、想定されるリスクに柔軟に対応しながら、不確実な将来におけるいずれのシナリオにも耐えうるレジリエント(強靭)な経営体制を構築していきます。

一方、機会については、気候変動の状況や市場動向を都度把握しながら、当社グループの持続的な企業価値向上に繋がるよう、適時適切な施策を展開していきます。

 

(4)指数及び目標

当社グループでは、2021年度分より年間の事業活動を通じたGHG排出量の算定を開始しました。2023年度総排出量66,039t-CO2の内約95%をScope3が占め、かつそのScope3の内57%以上が「カテゴリー11:製品の使用」に該当します。

こうした実績・特色を前提として、当社グループは具体的なGHG削減目標として2030年にScope1・2の排出量43%削減(2021年度比)、2050年にはScope1~3の総排出量実質ゼロを目指します。この目標を着実に実現へと近づけるため、徹底した省エネ活動や再エネの利活用で自社排出(Scope1・2)量削減を推進するとともに、Scope3についてもサプライチェーンとの対話に注力しながら、自社製品の強みや魅力を維持した上でのネットゼロ達成を目指していきます。

 

〔表〕GHG排出量削減目標・ロードマップ

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  ※算定対象拠点:アイコム株式会社、Icom America, Inc.、Icom(Europe)GmbH、Icom Spain, S.L.、Icom(Australia)Pty.,Ltd.、

和歌山アイコム株式会社

 

  ※GHG排出量の記載に関しては、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)に基づき前年度実績までを記載しております。

 

2.人的資本

少子高齢化やグローバル化により人々のライフスタイルが多様化するなかで、幅広いお客様に選ばれる企業として成長を続けるためには、人材の多様性「ダイバーシティ」が重要と考えております。

 

(1)戦略

①人材の多様性を含む人材確保・育成に関する方針

当社グループでは、「中期経営計画2026」で人材確保・育成を経営基盤の強化策の一つとしており、企業基盤の継続的発展において、課題の一つであると考えております。他社との協業及びAcquihiring型企業買収を積極的に推進することに加え、従業員一人ひとりの育成をサポートする研修体系の整備や環境の構築を促すことなどにより、継続的な発展への社内の活性化に取り組んでおります。

 

②社内環境整備に関する方針

A.健康経営・労働安全衛生の推進

当社グループでは、厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に沿って、当社グループの心の健康づくり活動の推進方針を「労働安全衛生規則」として定め、従業員の心の健康づくり及び活気のある職場づくりに取り組んでおります。

夏休みの時期を社員が自由に選択できるFSV(Flexible Summer Vacation)制度の導入や性別にとらわれない育児休業の取得や働きすぎ防止のための取り組みとしてノー残業デーを設定するなど、仕事と生活の調和を実現し、誰もがいきいきと働くことのできる社風づくりを行っております。

 

B.経営人材育成

a:社員一人ひとりの能力の最大化と能力・適正に応じた支援

当社グループは、新規事業開発を担う人材を育成するため、人的資本政策の一環として社員のリスキリング(学び直し)を支援する取り組みを開始しております。

社会人が新規事業の開発を研究する学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学(東京・港区)のプログラムを活用します。希望する社員は同大学院の1年間のプロジェクト研究に、就業時間内に参加できるようにしております。

社員には新規事業案の提出を課し、会社は提案内容を精査し、事業の具体化を目指しております。

 

b:メンター制度の導入

「豊富な知識と職業経験を有した社内の先輩(メンター)が、後輩(メンティ)に対して、業務上のみならずキャリア形成なども含めた幅広い支援活動を行う制度」であるメンター制度を導入し、若手社員に対して、社会人としてのあり方や仕事に対する考え方など、幅広い視点から成長を支援しております。

 

c:ダイバーシティ&インクルージョンの推進

少子高齢化・グローバル化によって人々のライフスタイルが多様化するなかで、幅広いお客様に選ばれる企業として成長を続けるためには、人材の多様性「ダイバーシティ」が重要と考えております。

当社グループでは、経営戦略の一環として社員一人ひとりが、等しく機会を得て能力を最大限に発揮できる組織づくりに取り組んでおります。ジェンダー平等などの多様性を受け入れ活かすことで、全ての人に等しく機会を与えられる「平等な機会」を目指すべき姿であると考え、「ダイバーシティ&インクルージョン」を意識していきます。

 

d:その他取組み

女性従業員の管理職への登用

定年退職後の再雇用制度

 

 

 

(2)指標及び目標

能力を発揮できる組織づくり及び組織の多様性に関する指標及び目標は以下のとおりになります。

・産休育休取得後の復帰率(男女を問わず) 目標90%以上、実績100%(2025年3月期)

・新卒採用に占める女性労働者の割合   目標40%、実績25%(2025年3月期)

・FSV取得率               目標100%、実績81%(2025年3月期)

・月平均時間外労働時間         目標8.0時間/人、実績5.9時間/人(2025年3月期)

※人的資本に関する方針については、グループ内の影響力が大きい当社が関連する指標管理を行っており、当社における指標、目標及び実績を記載しております。

 

(3)人権に対する取り組み

当社グループは、「コミュニケーションで創る楽しい未来・愉快な技術」を経営理念として掲げ、「コンプライアンスを遵守し、誠実で責任ある行動に徹すること」を定め、事業を通じて持続型社会の実現に貢献しようとしております。

当社グループは、企業活動における人権への負の影響の防止・軽減・救済を目的として、企業が人権尊重責任を果たし続けることの結果として、サプライチェーンを含む利害関係者とともに、持続可能な経済・社会の実現に寄与することを心がけております。

 

①人権リスクマネージメント

A.アイコムグループの人権方針について

2011年に、グローバル化の進展によって、企業活動が人権に及ぼす負の影響が拡大し、企業活動による人権侵害についての企業の責任に関する国際的な議論がより活発になる中で、「ビジネスと人権」における最も重要な国際的枠組の一つである「国連指導原則」が国連人権理事会において全会一致で支持されました。

日本政府は、国連指導原則を踏まえ、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を作成し、海外輸出を行う企業だけでなく、国内の中小企業へも人権尊重を促しています。

当社グループも、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」に従った取り組みとして、「アイコムグループの人権方針」を制定しました。

本方針はアイコムの業務に従事する者が遵守すべき事項を定めており、本方針を公表することによって当社グループの役員及び従業員だけでなく、事業を通じて影響を及ぼす可能性のあるビジネスパートナーやサプライヤーを含むあらゆるステークホルダーに対し、基本的な人権の尊重や労働基準遵守のための取り組みを進めていただけるようお伝えしております。また、取引先に対しては、新規お取引開始時に本方針を周知するほか、継続的なSAQ(Self-Assessment Questionnaire:自己評価アンケート)による自社調査を実施するなど、ステークホルダーエンゲージメントを通じて適切な対処を積極的に働きかけてまいります。同方針に基づき、事業活動における人権尊重の取り組みを今後より一層進めてまいります。

 

B.個人情報保護

当社グループは、企業理念に基づき、顧客及び社会の信頼に応えるべく、事業上蓄積した情報やお預かりした、あるいは知り得た情報をはじめとして、当社グループが取り扱う全ての情報資産を様々な脅威から守り、機密性、完全性、可用性を確保、維持し、事業継続を確実にするために情報セキュリティ基本方針を定めております。

 

C.サプライチェーンにおける強制労働

サプライヤーの皆様の事業活動において、従業員の基本的人権を尊重するとともに、安全で清潔な職場環境の構築、強制労働、非人道的な扱い、児童労働及び差別の禁止、適切な賃金の支払と労働時間の管理、安全な作業環境の実現に努めるよう調達方針を定めております。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)生産拠点に関するリスク

当社グループは生産拠点を、和歌山県北部の紀の川市及び和歌山県中央部の有田郡有田川町に設置しており、南海トラフ巨大地震を始めとする自然災害による被害を最小限に抑えるための対策を講じておりますが、想定を超える規模の地震や台風、集中豪雨等が発生した場合は、生産設備への被害やサプライチェーンの寸断による原材料の調達困難等によって操業が中断するおそれがあり、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。今後とも最新の防災情報を収集し対策を継続してまいります。

(2)原材料の調達に関するリスク

当社グループは電子部品等の製品の原材料を主に日本国内、中国、台湾及び東南アジア諸国より調達しており、調達先において紛争や自然災害の発生等、予期しない要因により長期にわたり調達が滞るような場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。今後とも調達先の複数化等により、リスクの軽減に努めてまいります。

(3)為替相場の変動によるリスク

当社グループの連結売上高に占める海外売上高の割合は、2023年3月期67.0%、2024年3月期69.5%、2025年3月期66.6%と高水準であり、外貨建て支払いによる原材料の調達を拡大する等の対策を講じておりますが、為替相場の変動は当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4)製品保証に関するリスク

当社グループは、厳しい管理基準に基づき製品の設計、製造を行っておりますが、将来にわたり製品に欠陥が生じる可能性を完全に否定することはできません。製品の欠陥は大規模な製品回収(リコール)や製造物賠償責任により多額の費用や賠償金を必要とするだけではなく当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(5)知的財産権に関するリスク

当社グループは、特許権、商標権等の知的財産権を取得することにより自社の知的財産権を保護しております。また第三者の知的財産権を侵害することのないよう慎重に調査、検討を行っておりますが、第三者との間で、無効、模倣、侵害等の知的財産権に関する問題が発生した場合は、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(6)パンデミックに相当する大規模な感染症流行のリスク

大規模な感染症の流行により、経済活動が制限され、海外からの原材料の調達に支障が出ること等による生産遅れや、販売機会の減少及び消失が起こる可能性があります。そのような有事の場合においても、サプライチェーンの見直しにより、販売機会の減少を最小限に抑えるべく、可能な調達経路の構築に努めます。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

当社グループは、“アイコムを100年企業へ”をスローガンに、利益を創出する企業基盤の強化を意識し、2026年3月期を最終年度とする「中期経営計画2026」をスタートさせており、その2年目を終了しました。

当連結会計年度の世界経済は、米国では懸念されたインフレの穏やかな減速とともに景気は底堅く推移しました。欧州では南欧諸国は総じて持ち直しの動きが見られましたが、北・西欧諸国は国ごとに状況が異なり、当社グループの主要市場の一つであるドイツでは製造業の不振から景気は停滞しました。

国内では、所得環境の改善やインバウンド需要の増加等により、穏やかな回復基調で推移しましたが、米国の通商政策の動向や地政学リスクの高まりなどに加え、不安定な国際情勢等を背景とした原材料・エネルギー価格の高騰や急激な為替変動など、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

このような経済環境の下、当社グループがターゲットとする無線通信機器市場において、陸上業務用無線通信機器では、従来型の無線機からIP無線機への置き換えによる需要の拡大が世界的に進む一方、電子部品等の原材料調達難の解消によって各社の製品供給能力が回復したことで、特に米州の在庫に一時的な余剰が発生し、民間市場向けの売り上げが低迷しました。海上用無線通信機器及び航空用無線通信機器では、経済の先行き不安が続き、レジャー需要の停滞に連動した船舶需要等の伸び悩みにより、無線機需要も低調に推移しました。アマチュア用無線通信機器では、当社グループの様々な取り組みや当期にリリースした60周年記念関連製品等の新製品効果が需要を拡大しました。

これらの結果、前期に続きIP無線機の需要拡大によるストックビジネスの伸長を図れたことや国内市場における各種入札案件の獲得、期初の想定に比べ為替相場が円安で推移したこともあり、売上高は、3期連続で過去最高を更新し、営業利益も9.0%増と増収増益となりました。

当連結会計年度における売上高は、374億6千8百万円(前年同期比0.9%増)となり、売上総利益は166億4千9百万円(前年同期比3.8%増)となりました。販売費及び一般管理費は、人件費の増加、円安の影響、広告宣伝活動の強化などにより、3億6百万円増加して129億2千7百万円となりましたが、増収により営業利益は37億2千1百万円(前年同期比9.0%増)、為替差損2億2千2百万円を計上したことにより経常利益は39億2百万円(前年同期比11.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は29億5千1百万円(前年同期比14.7%減)となりました。

また、当該期間に適用した米ドル及びユーロの平均為替レートはそれぞれ152.72円及び163.94円であり、前年同期に比べ対米ドルでは6.7%、対ユーロでは6.3%の円安水準で推移しました。

なお、地域別の状況については、下表のとおりであります。

 

<参考>地域別売上高

 

前連結会計年度

(自2023年4月1日

至2024年3月31日)

当連結会計年度

(自2024年4月1日

至2025年3月31日)

増減率

(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

国内

11,337

30.5

12,496

33.4

10.2

 

北米

12,032

32.4

10,652

28.4

△11.5

欧州(EMEA)

6,245

16.8

6,278

16.7

0.5

アジア・オセアニア

5,955

16.1

6,545

17.5

9.9

その他(含む中南米)

1,546

4.2

1,495

4.0

△3.3

海外計

25,779

69.5

24,972

66.6

△3.1

合計

37,117

100.0

37,468

100.0

0.9

 

〔品目別の状況〕

・陸上業務用無線通信機器

当連結会計年度における陸上業務用無線通信機器の売上高は、前年同期比で2.9%減の172億8千9百万円となりました。地政学的リスクの高まりに加え、従来型無線機からIP無線機への置き換えによる需要拡大、国内での各種入札案件の獲得などプラス要因はあったものの、米州での一時的な在庫過多による売上減により、減収となりました。

 ・アマチュア用無線通信機器

当連結会計年度におけるアマチュア用無線通信機器の売上高は、前年同期比で12.2%増の67億4千5百万円となりました。当社グループの様々な取り組みや当期にリリースした60周年記念関連製品等の新製品効果もあり、中南米を除く全地域で増収となりました。

・海上用無線通信機器

当連結会計年度における海上用無線通信機器の売上高は、前年同期比で9.9%減の36億3千5百万円となりました。全地域でレジャー需要の停滞に連動した船舶需要の伸び悩みにより、無線機の出荷も低調になり、減収となりました。

・その他の品目

当連結会計年度における付属品その他の売上高は、前年同期比で5.9%増の97億9千8百万円となりました。国内の各種入札案件を獲得したことで、無線機本体と連動したオプション品の売上が堅調に推移し、増収となりました。

 

 

売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

親会社株主に帰属

する当期純利益

(百万円)

当連結会計年度

(2025年3月期)

37,468

3,721

3,902

2,951

前連結会計年度

(2024年3月期)

37,117

3,415

4,416

3,461

増減率

0.9%

9.0%

△11.6%

△14.7%

 

 

 

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

(セグメント業績については、当社グループの報告セグメントである所在地別セグメントで記載しており、前記 「地域別売上高」とは異なります。)

① 日本[当社、和歌山アイコム㈱、アイコム情報機器㈱、㈱マクロテクノス、㈱コムフォース]

≪国内市場≫(日本国内より国内市場への売上高)

陸上業務用無線通信機器で従来型無線機からIP無線機への置き換えによる需要増及びストックビジネスの伸長、各種入札案件の売上が貢献し、増収となりました。

≪海外市場≫(日本国内より海外市場への売上高)

欧州地域でのアマチュア用無線通信機器における60周年記念関連製品等の新製品の効果により売上を伸ばしたこと、陸上業務用無線通信機器におけるIP無線機の需要増に加え、アジア地域での戦略販売製品の売上を大きく伸ばしたことで増収となりました。

これらの結果、本セグメントの外部顧客に対する売上高は211億2千5百万円(前年同期比8.5%増)となりました。利益面では、内部売上高の減少による影響や人件費、広告宣伝費の増加などによる販売費及び一般管理費の増加の影響で営業利益は29億9千8百万円(前年同期比15.1%減)となりました。

 ② 北米[Icom America, Inc.、ICOM CANADA HOLDINGS INC.、ICOM DO BRASIL RADIOCOMUNICACAO LTDA.、ICOM

CENTRAL AMERICA, S.DE R.L.DE C.V.]

 アマチュア用無線通信機器は60周年記念関連製品等の新製品効果により増収となりました。しかしながら、海上用無線通信機器及び航空用無線通信機器は、経済の先行き不安が続き、レジャー需要の停滞に連動した船舶需要等の伸び悩みにより減収となりました。陸上業務用無線通信機器では、中南米で衛星通信機器の需要増加により売上を維持しましたが、部材調達難解消に伴う一時的な供給過多により市場在庫の滞留が長期化した影響が大きく減収となりました。なお、為替レートは対米ドルで前年同期に比べ6.7%の円安水準となりました。

これらの結果、本セグメントの外部顧客に対する売上高は121億3千7百万円(前年同期比11.1%減)となりました。利益面では、減収に加え円安の影響及び人件費の増加などにより販売費及び一般管理費が増加し、営業利益は1億3千3百万円(前年同期比75.3%減)となりました。

③ ヨーロッパ[Icom(Europe)GmbH、Icom Spain, S.L.]

アマチュア用無線通信機器は、強い需要の下支えと60周年記念関連製品等の新製品効果により好調に推移しました。また、陸上業務用無線通信機器及び航空用無線通信機器において、経済活動の減速による需要減の影響がありましたが、案件獲得、衛星通信機器の伸長があり増収となりました。なお、為替レートは対ユーロで前年同期に比べ6.3%の円安水準となりました。

これらの結果、本セグメントの外部顧客に対する売上高は26億3千万円(前年同期比8.6%増)となりました。利益面では、円安の影響及び自社ビル取得による減価償却費の増加など、販売費及び一般管理費が増加し、営業利益は1億6千5百万円(前年同期比15.1%減)となりました。

④ アジア・オセアニア[Icom(Australia)Pty.,Ltd.、PURECOM CO.,LTD.、ICOM ASIA CO.,LTD.]

主力市場となるオーストラリアにおいて、アマチュア用無線通信機器、海上用無線通信機器、航空用無線通信機器は、物価高騰の影響で需要が停滞したことにより減収となりましたが、陸上業務用無線通信機器はCB機の需要が底堅いことに加え、衛星無線通信機器、IP無線の需要増、レンタルビジネスの伸長により増収となりました。

これらの結果、本セグメントの外部顧客に対する売上高は15億7千5百万円(前年同期比0.4%増)となりました。利益面では、増収により営業利益は1億4千2百万円(前年同期比4.5%増)となりました。

 

 

②財政状態の状況

(資産)

 総資産は前連結会計年度末比7億2千9百万円増加し、738億8千8百万円となりました。

 主な内訳は、退職給付に係る資産の増加10億9千1百万円、土地の増加9億5千2百万円、売掛金の増加4億2千1百万円、投資有価証券の増加2億5千4百万円、建物及び構築物の増加1億3千4百万円及び建設仮勘定の増加4千5百万円の増加要因と、現金及び預金の減少8億3千2百万円、棚卸資産(合計)の減少5億5千9百万円、有価証券の減少5億円、機械装置及び運搬具の減少1億5千8百万円及び有形固定資産のその他の減少1億4千7百万円の減少要因によるものであります。

 なお、有形固定資産のその他の減少1億4千7百万円の主な内訳は、工具器具備品の減少1億8千3百万円の減少要因によるものであります。

(負債)

 負債合計は前連結会計年度末比8億8千5百万円減少し、65億2千8百万円となりました。

 主な内訳は、繰延税金負債の増加5億1千9百万円及び退職給付に係る負債の増加4千8百万円の増加要因と、未払法人税等の減少9億6千4百万円、未払金の減少2億1百万円、賞与引当金の減少1億9千4百万円及び買掛金の減少1億5千8百万円の減少要因によるものであります。

(純資産)

 純資産合計は前連結会計年度末比16億1千4百万円増加し、673億5千9百万円となりました。

 主な内訳は、親会社株主に帰属する当期純利益による増加29億5千1百万円及び退職給付に係る調整累計額の増加5億6千8百万円の増加要因と、剰余金の配当による減少13億9千2百万円、為替換算調整勘定の減少3億9百万円及びその他有価証券評価差額金の減少2億3百万円の減少要因によるものであります。

 以上の結果、自己資本比率は89.9%から91.2%に上昇いたしました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ16億4千5百万円減少し、243億4千8百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により増加したキャッシュ・フローは、25億1千3百万円(前年同期は22億8百万円の増加)となりました。主な増加要因は、税金等調整前当期純利益39億1千3百万円、減価償却費の計上10億9千9百万円及び棚卸資産の減少4億8千5百万円、一方で主な減少要因は、法人税等の支払額15億6千6百万円、売上債権の増加4億9千万円、営業活動その他による減少4億8千1百万円、受取利息及び受取配当金3億8千7百万円及び仕入債務の減少1億5千8百万円であります。

 なお、営業活動その他による減少4億8千1百万円の主な内訳は、賞与引当金の減少1億9千3百万円及びその他の未払金の減少1億2千5百万円の減少要因によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により減少したキャッシュ・フローは、26億6千9百万円(前年同期は36億7千5百万円の減少)となりました。主な減少要因は、有形固定資産の取得による支出19億5千3百万円、預入期間3ヶ月超定期預金の増加8億7千3百万円、投資有価証券の取得による支出8億7千2百万円及び投資活動その他による減少9千5百万円、一方で主な増加要因は、有価証券の売却及び償還による収入6億円、利息及び配当金の受取額3億8千5百万円及び投資有価証券の売却による収入1億5千8百万円であります。

 なお、投資活動その他による減少9千5百万円の主な内訳は、信託受益権の増加1億円の減少要因によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により減少したキャッシュ・フローは、13億9千3百万円(前年同期は11億2千4百万円の減少)となりました。主な内訳は、配当金の支払額13億9千2百万円であります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社グループの生産は全て日本セグメントにおいて行っており、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日)

前年同期比(%)

日本(百万円)

28,551

89.6

(注)金額は販売価格によっております。

 

b.商品仕入実績

 金額的重要性が乏しいため、記載を省略しております。

 

c.受注実績

 当社グループの製品は、需要予測による見込生産を行っており、原則として受注生産は行っておりません。

 

d.販売実績

 当連結会計年度における報告セグメントごとの販売実績はセグメント情報等をご参照下さい。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において判断したものであります。

 

①経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(1)経営成績等の状況の概要①経営成績の状況をご参照願います。

なお、当連結会計年度の連結業績目標の達成状況は次のとおりであります。

当連結会計年度において、特に米州の販売店では原材料の入手難に起因する製品供給の制約の長期化を懸念して想定以上に過剰在庫を保有していたことにより、陸上業務用無線通信機器の北米セグメントからの売上高は大きく低迷いたしました。しかし、アマチュア用無線通信機器において、当社60周年記念モデル等新製品が好評を博し、日本セグメント、北米セグメント、ヨーロッパセグメントで好調に推移した他、日本の各種入札案件が売上高に貢献いたしました。また、為替レートも大きく円安水準で推移したことから、売上高は計画比5億3千1百万円減(1.4%減)の374億6千8百万円となりましたが、第4四半期に大きく売上高を伸ばしたことから、前連結会計年度に引き続き3期連続で過去最高を更新いたしました。

利益面では、為替レートが円安に推移したことによる売上総利益率の改善に加え、売上計画未達による賞与の差異や変動費的に推移する販売費の差異、計画の延期による広告宣伝費や試験研究費の差異等により販売費及び一般管理費が計画を下回ったことにより営業利益は計画比2億2千1百万円増(6.3%増)の37億2千1百万円、営業利益率も計画を上回る9.9%となりました。

指標

2025年3月期(計画)

2025年3月期(実績)

2025年3月期(計画比)

売上高(百万円)

38,000

37,468

△531(△1.4%)

営業利益(百万円)

3,500

3,721

221(6.3%)

営業利益率(%)

9.2%

9.9%

 

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度末において、当該項目に記載すべき資金の支出予定はなく、事業運営上必要な資金につきましては自己資金により賄う予定であります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって適用した重要な会計方針及び見積りの方法につきましては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループにおける研究開発活動は、連結財務諸表を作成する当社(日本セグメント)及びIcom America Inc.(北米セグメント)が行っております。当連結会計年度の研究開発費は、4,005百万円であり、主な研究開発とその成果は次のとおりです。

 

・陸上業務用無線通信機器

LTE回線と無線LAN環境下で通信可能なIPトランシーバー<IP510H>の開発及び発売をしました。IP510Hは、現在多くのユーザーにご愛顧いただいているIPトランシーバー<IP502H>の後継機です。

従来のIPトランシーバーに加え無線LAN経由の通信にも対応するので、LTE回線の通話エリア内/外を気にせず、タイムリーな情報伝達を実現します。LTE回線の圏外となる地下や掘削工事中のトンネル内などに移動しても、無線LAN環境下であればそのまま使い続けることができます。しかも、LTE/無線LANが自動で切り替わるため、本体操作も不要です。これにより、公共インフラ業、警備業、自治体などへの導入を見込んでおります。

 

・アマチュア用無線通信機器

① 60周年を記念して、送信出力200 WのHF+50 MHzをオールモードでカバーするアマチュア無線用トランシーバ

ーIC-7760の開発及び発売をしました。

IC-7760は、コントローラとRFデッキのツーピース構成を採用した、新しいスタイルのトランシーバーです。付属のコントローラケーブルは3m、市販のLANケーブルを使用すれば、さらに離れた場所にRFデッキを設置することが可能。設置の自由度が大幅に高まりました。

さらに、コントローラとRFデッキを宅内LAN(有線)で接続して、リモート運用することも可能です。パソコンを介さないシンプルな構成で、LAN接続ができる場所であれば、宅内のどこからでも気軽に運用することが可能です。

また、タッチ操作に対応した2つのディスプレイを搭載。7インチのメインディスプレイにはMAIN/SUBの周波数、各機能の設定や動作状況など、運用に必要な情報を集中表示します。また、2.4インチのサブディスプレイは、フィルターエフェクト、マルチメーター、バンドスタッキングレジスターキーの表示に対応しております。情報の視認性が向上することで、よりスムーズな運用を実現しております。

加えて、本機種での新たな機能として、DPD機能が搭載されております。DPD機能は、ファイナルアンプが持つ非線形歪みに対し、FPGAやDSPのプリディストーション部で、あらかじめ逆特性の歪みを与えることにより、ファイナルアンプで発生する歪みを補正する技術です。200 Wの高出力を実現しながら、同時にクリーンな送信波を実現しております。

② 2020年に発売した人気モデルID-52の機能強化バージョンとなる、144/430 MHzデュアルバンド5 WデジタルトランシーバーID-52PLUSを8月上旬に発売しました。また、特別仕様のアイコム60周年記念限定モデルも、全世界2,400台(国内400台)の数量限定で販売しました。

従来機ID-52は日本アマチュア無線連盟「JARL」が推進するデジタル通信方式D-STAR®に対応し、レピータ(中継局)を経由して日本全国、海外と安定した遠距離通信ができるトランシーバーです。レピータにアクセスできないエリアでも遠距離通信が楽しめるターミナルモード/アクセスポイントモードや本体のみでの画像送信・閲覧など、多彩な機能を備えております。

ID-52PLUSはID-52から機能がパワーアップ。Android™端末とBluetooth®接続してターミナルモード/アクセスポイントモードの運用が可能になりました。さらに、ターミナルモードと通常の運用(シンプレックスの運用やレピータ経由)のデュアル運用も実現。より快適にD-STAR®の運用ができるようになりました。そのほか、接続端子もUSB Micro-Bから汎用性の高いUSB Type-Cへ変更し、ユーザビリティも向上しております。

 

 

・ネットワーク機器

Wi-Fi 6に準拠した、ワイヤレスアクセスポイントAP-76Mの開発及び発売をしました。

AP-76Mは、IEEE802.11ax規格に準拠した軽量アクセスポイントです。通信速度は、理論値1.2 Gbpsを実現しており、超高速で安定したデータ通信ができます。また、従来のWPA2規格より強固なセキュリティ規格WPA3パーソナルに対応しております。

また、端末のある方向に向けて電波を送るビームフォーミング機能、複数の端末に同時に送信できるOFDMA機能を備えております。複数の端末に効率的に送信できるので、混雑時も快適に使用できます。さらに、5 GHz帯(W52/W53/W56)は19チャンネル、2.4 GHz帯では13チャンネルの周波数で通信が利用可能。トラフィックの多いチャンネルを避けたスムーズな通信を可能にしております。

 

・その他(新規ビジネス/技術など)

現在発売中のtelelink®IPフォンアプリ<IP200APP>に、新機能を搭載しました。

2024年2月に発売をしたtelelink®IPフォンアプリIP200APPに、「受付モード」を新搭載しました。IP200APPは、スマートフォン/タブレットから内線・外線・一斉連絡ができるサテライトオフィスやレンタルオフィスなどの小規模オフィスでの使用を想定したIPフォンアプリ。新たにオフィスや店舗の受付などでも利用できる「受付モード」の機能を追加しました。

24 GHzのモジュールプロトタイプをアマチュア無線フェスティバルハムフェアー2024で参考出品をしました。アマチュア無線の用途をはじめ、業務用途への展開の可能性も合わせて機会を探っております。