第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

(経営理念)

 ―共創と革新―

 HARADAはベストを追求するプロフェッショナル集団であり続けます。

 

(経営基本方針)

 1.HARADAは、永遠に存続・発展し続けます。

 2.HARADAは、顧客満足を第一義とした経営を実践し続けます。

 3.HARADAは、常に社会的貢献を追求し続けます。

 4.HARADAは、プロ社員が活躍できる場を常に提供し続けます。

 5.HARADAは、活力あふれる組織風土を持ち続けます。

 常に顧客、社員、株主、取引先、地域社会に必要とされる存在価値をもって時代を超えて永遠に存続、発展していくことを基本とし、株主の投資に報い、市場・顧客との共創と独自の技術力、創造力によって、顧客の真のニーズに応え続け、取引先との共存、共栄を図り、地球環境と人にやさしく、安全性の高い商品・サービスを開発し、常に社会的貢献を追求していくこと、また、各従業員に対し能力が発揮出来る場を提供し、一流のチームワークにより主体的、創造的に革新に挑戦する活力あふれる組織風土を持ち続けることを基本方針としております。

 

(行動指針)

 明るく、楽しく、真剣に!

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、成長性及び収益性改善のため、営業利益率等の利益指標の向上に努めるとともに、経営の安全性を高めるため財務体質を改善すべく、有利子負債の削減、棚卸資産の圧縮、自己資本の充実等に取り組んでまいります。

 

(3) 経営環境、経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 今後の世界経済は、米国経済の軟着陸や新興国経済の底堅い成長を背景に、急減速を回避し軟着陸することが期待される一方、中国経済の減速等が懸念され、過去に比べて低い成長率が続くことが見込まれております。また、物価高の再燃、米国の保護主義の強まり、中国経済の失速等、世界経済の成長を下振れさせるリスク要素が数多く存在し、先行きの不確実性が高い状況となっております。

 当社グループの属する自動車業界におきましては、2020年以降、コロナ禍による市場の落ち込み、半導体不足による減産に伴う在庫不足、ロシアによるウクライナ侵攻の影響等に苦しんできた中、過去数年間の市場の落ち込みによる潜在需要等もあり、自動車生産台数は回復傾向にありますが、依然としてコロナ禍以前の水準を下回る状況にあり、その回復には一定の時間を要することが見込まれています。また、材料費の高止まりや労務費の高騰、不安定な輸送費動向に加え、為替の影響等もあり、引き続き、大変厳しい事業環境となっております。

 このような外部環境の変化に鑑み、2025年3月期は引き続き、「収益構造改革」に集中して取り組んでまいります。

 一方、中長期的な視点では、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に積極的に対応していくことで、当社は成長を実現してまいります。CASEの進展等を含め、自動車業界を取り巻く環境は変化しており、このような環境に鑑み、当社は次のとおり中長期経営の方向性を定め、CASEと共に進化する豊かなカーライフに貢献することを目指してまいります。

 

(中長期経営の方向性)

<目指す姿>

 当社は、車載アンテナのトップ企業であり続けます。また、周辺事業を拡大していくことにより収益基盤を確立します。加えて、当社技術を活用し、新規事業分野を開拓します。

 

<組織運営のあり方(3C+S)>

 様々な変化をプラス思考でチャンスと捉え、積極果敢にチャレンジし、自分自身をそして組織をチェインジしていきます。そうしたことをスピード感を持って実践します。

 

(収益構造改革)

 「各ビジネスの収益性改善」、「コスト構造改革」、「B/Sのスリム化による収益改善・財務体質改善」を強力に推進してまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 国連サミットにおける「SDGs(持続可能な開発目標)」の採択や気候変動抑制に関する多国間協定であるパリ協定の発効等、持続可能な社会の実現に向けて企業を取り巻く国内外の環境が大きくかつ急速に変化する中、当社グループが、責任ある企業の一員として持続可能な社会の実現に向け継続的に貢献していくとともに、このような社会の構造変化に適時適切に対応し、グループ各社の企業価値を中長期にわたって持続的に向上させることを目的とし、サステナビリティ諸活動に取り組んでおります。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

① ガバナンス

 当社グループは、代表取締役社長を委員長とし、取締役・執行役員等を委員として構成する「サステナビリティ委員会」を設置しております。当該委員会は、「サステナビリティ(持続可能性)」の観点から、グループ各社が対応すべきカーボンニュートラル等の社会的な諸課題への、グループ各社に共通する対応方針案の検討、中長期的な活動目標の検討、当社グループが直面する課題の抽出と対応策の検討及び各々の対応の進捗状況のモニタリング等を行っております。上記のような諸活動を通して、グループ各社の横断的な取り組みをより一層強固なものとしていく事を目指しております。

 当事業年度の主な活動としては、サステナビリティ委員会において協議を実施した後、社外役員を含む全役員が参加する当社経営会議において、当社を含むHARADAグループ全体の取り組みとして、後掲(2)②指標及び目標で記載する「温室効果ガス(GHG)排出量削減目標」を新たに設定しております。

 なお、サステナビリティ委員会の当社ガバナンス体制における位置づけについては、本報告書「第4(提出会社の状況)の4(コーポレート・ガバナンスの状況等)(1)(コーポレート・ガバナンスの概要)」に掲載している「コーポレート・ガバナンスの体制図」を参照ください。

 

② リスク管理

 当社グループは、グループ各社のコンプライアンス、環境、災害、品質、情報セキュリティ及び輸出管理等に係るリスク等につき、「リスク管理基本規程」に基づき、当社代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会を定期的(年4回)に開催し、必要に応じて臨時でも開催しております。組織横断的リスク状況の監視及び全社的対応は、当社のリスク管理委員である各取締役が行うものとしております。サステナビリティに関するリスクについても、その中長期経営における重要性等に鑑み、「グループとして特定したリスク」として四半期ごとにリスク管理委員会において報告を行っております。

 当社グループにおいて発生しうるリスク全般に対する予防、発見、是正、再発防止に係る管理体制の整備及び発生したリスクへの対応指針を協議する機関であるリスク管理委員会と、主に外部環境の変化によって新たに生じる、または生じる事が予想される社会的な諸課題、特に環境面の諸課題等に対し、課題抽出及び対応策の検討等を行う機関であるサステナビリティ委員会とが相互に補完・協働する事で、既存のリスクだけでなく将来発生し得るリスクへの備えに対しても中長期的な観点からリスク管理できる体制となっております。

 

(2)気候変動

① 戦略

 当社を含むグループ各社が、責任ある企業の一員として持続可能な社会の実現に向け継続的に貢献していくとともに、社会環境の変化に適時適切に対応し、グループ各社の企業価値を中長期にわたって持続的に向上させていくことを目的とし、サステナビリティ委員会での協議の後、当社取締役会にて、環境・社会・企業統治の3つの領域を重要課題(マテリアリティ)とする「サステナビリティに関する基本方針」を定めております。

 特定された重要課題を軸に、当社グループの属する自動車業界全体が重要課題として認識している「脱炭素社会(カーボンニュートラル)」の実現へ向けて、TCFD等の枠組みに準じたCDP(*)(Carbon Disclosure Project)に参加する等、当社グループの事業活動が及ぼす環境への影響度の把握、課題の抽出及び中長期的な収益等に与える影響等について必要なデータの収集と分析、またその開示方法も含め、中長期的な課題として分析検討しております。

*CDP:国際的な環境NPO団体が運営する開示システムプロジェクト

 

② 指標及び目標

 当社を含むHARADAグループ全体の取り組みとして、以下の内容を骨子とする「温室効果ガス(GHG)」排出量削減目標を設定しております。

・目標:グループCO2総排出量(Scope1+2=自社関連排出)を、2.5%/年以上削減

(※Scope3(注:取引先等(上流・下流)自社以外間接排出)の温室効果ガス排出量についても、今後さらに取組みを強化する)

・基準年:2021年度

・中期目標:2031年度末までに、2021年度比27.5%以上削減

・最終到達目標:2050年度末までに、カーボンニュートラルを実現

 上記目標に関する指標及び実績は次の通りです。(単位・CO2換算トン)(t-CO2)

  Scope1+2 総排出量(2022年度実績):11,080(t-CO2)(▲16.1%)

 (注)1.2022年度実績の()内の%表示は、2021年度を基準年とした場合の削減割合。

2.2023年度実績は現在集計中であり、確定次第、CDPや当社ホームページ等で開示予定。

 

(3)人的資本

① 戦略

(人材育成方針及び社内環境整備方針)

 当社では、社内の人材を貴重な「人的資本」と捉え、社内外の環境変化に対処し自らの知識・技能を高め能力向上を目指すため、継続的に人材育成に努めております。具体的には、教育・訓練の種類・目的・対象となる階層を「教育体系図」に定め、主に①階層教育、②新規配属時教育、③専門教育、④自己啓発教育、⑤資格取得教育、⑥その他必要な教育を実施しております。

 また、会社業務の円滑な運営を図るため、職場における社員の安全の確保に努めております。職場環境及び作業条件からくる健康障害防止、健康の保持促進を図るとともに、快適な職場環境の形成を促進するための体制を確立しております。

 なお、当社グループは、多様性を含む人材育成及び社内環境整備を進めておりますが、連結子会社については体制の整備中であり、情報の開示が困難であるため記載しておりません。

 

(主な人材育成及び社内環境整備に関する取り組み状況)

・人材育成

 当社は、職種を問わず当該階層の従業員に必要とされる知識について習得する階層別研修をはじめ、業務の知識及び技能の維持・向上のために必要な専門教育を実施しております。

 全社共通教育としては、コンプライアンス研修、メンタルヘルス研修、BCP研修、情報セキュリティ研修などを実施しております。

 また、自己啓発支援として講座受講する場合には費用の一部を補助し、資格取得支援や合格祝い金など、従業員の自己実現に対する支援を行っております。

 

・男女の賃金格差

 正規雇用の男女の賃金格差については、男女を問わず、同一の制度を適用しておりますが、管理職に占める女性の割合が少ないこと、また、育児による短時間勤務制度の取得による賃金の格差等によるものとなります。

 今後、女性従業員の管理職候補である係長職への任命が増えることが予定されており、管理職への登用は将来的に増えていくことが予想されます。これらはわずかではありますが、男女の賃金格差を縮めることにつながると考えております。

 また、当社は中途採用率が高い状況にあり、中途採用においても積極的に女性の採用を行っております。

 

・人材の多様性と職場環境づくり

 当社では、年齢、性別、国籍、障害の有無等にかかわらず、全従業員が能力を十分に発揮できる環境づくりを目指し、取り組んでおります。主な働きやすい職場環境づくりのための制度として、時差出勤制度、育児短時間勤務制度、積立休暇制度、時間単位年休制度、テレワーク制度等を導入しております。

 

・女性活躍推進

 当社は、当社ウェブサイト上でも公表しておりますとおり、女性活躍推進法に基づく優良企業認定「えるぼし」最高位(3段階目)を取得し、また、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の目標達成等認定基準を満たした「子育てサポート企業」として「くるみん」認定を取得しております。

 女性の平均勤続年数は男性とほぼ変わらず、女性18.2年、男性18.3年となっております。

 また、女性の離職率は2023年度実績3.3%と「令和5年度上半期雇用統計調査」による女性の離職率9.7%と比較すると女性の離職率は一般的な統計数値より低い結果となっております。

 

・外国人雇用

 当社では、国籍関係なく外国人採用を積極的に行っております。

 外国人を雇用することで多様性がもたらされ、新たなアイデアや視点が生まれ、組織の活性化に寄与するものと考えております。

 

・エンゲージメント向上の取組み

 褒める文化を醸成する取り組みとして、表彰制度を設けております。

 業績向上、模範的行動、社会貢献に寄与した従業員に対し、年4回、社長賞による従業員表彰を行っております。

 

・従業員と会社との対話

 自己申告制度や人事部門による職場環境のヒアリング面談により、対話を通じてハラスメント防止やキャリア支援、モチベーションの向上などの取組みを行っております。

 上司と部下との面談において、日常の業務進捗の共有、評価のフィードバック等による対話を実施しております。

 

・健康と安全衛生に関する取り組み

 当社は、健康保険組合連合会における健康企業宣言の「銀の認定」を取得しております。

 また、事業所ごとに設置している安全衛生委員会・衛生委員会において、各事業所の、①衛生に関する事項、②安全教育に関する事項、③健康診断に関する事項、④長時間労働に関わる事項、⑤メンタルヘルスに関する事項等について話し合いを行い、改善に向けた取り組みを継続しております。

 

② 指標及び目標

 当社では、上記「① 戦略」において記載した内容に鑑み、「次世代育成支援対策推進法」及び「女性活躍推進法」に基づく一般事業主行動計画を策定しております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。今後も、指標項目の拡充及び実績についても更なる改善に向けた取り組みを進めていく予定です。

・数値目標1

 管理職を目指す女性の母集団を増やすため、従業員に占める女性割合を30%以上にする:23.4%(23年度実績)

・数値目標2

 従業員の年間の月平均時間外労働を20時間以下にし、実労働時間の短縮を図る:達成者率90%(23年度実績)

 (注) 関連する指標のデータ管理とともに具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社

    で同レベルの管理が行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、上記の指標

    に関する目標及び実績は、提出会社のものを記載しております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 また、主要なリスクは、影響度・損害規模と発生頻度の観点から抽出しております。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 特定の製品・業界への依存

 当社グループの主たる事業はアンテナ製品及び附帯機器の製造・販売であります。また、その大半を自動車産業向けに製造・販売しております。今後も特定の取引先に偏らない販売活動を展開してまいりますが、取引先の生産及び販売状況や、世界の自動車生産台数の著しい減少等により、受注が大幅に減少する可能性があります。この結果、製造・販売が減少し、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

(2) 海外事業展開

 当社グループは、日本国内のほか、中国、フィリピン、ベトナム、メキシコ、米国、英国、タイ等に拠点があり、北米、欧州、アジア等の各地域に製品を供給しており、今後とも各拠点における設備投資の拡充や特定の地域における販売網の強化等を行っていく方針であります。当社グループは、生産・販売拠点のある国の経済・政治・社会的状況に加え、事業に関連する各国法規制の情報を日々収集し、必要な対応を行っております。しかしながら、各地域の政治や経済の動向、予期しない法律又は規制の変更、移転価格税制等の国際税務リスク、テロ、戦争、疫病等により、事業活動を計画通りに行えず、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

(3) 為替レートの変動

 当社グループは、グローバルに事業を展開しており、連結売上高の大部分を海外売上高が占めております。定常的に外貨建て取引が発生しており、為替レートの変動の影響を受けやすい状況にあります。当社グループは、外貨建ての債権と債務のバランスを考慮することにより、その影響を限定することができると考えておりますが、為替レートの変動は、外貨建ての売上や仕入に影響を及ぼします。また、連結決算における海外連結子会社の財務諸表の円換算額にも影響を及ぼし、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

(4) 価格競争等

 当社グループは、世界各国へ販売しているため、常に各国の競合他社等と価格面等での競争があります。当社グループは、価格競争力を維持・確保するため、材料費改善活動の活性化や工場の生産性改革の推進等の施策を通じ、コスト低減に努めておりますが、価格競争が激化した場合には、売上高の減少や収益の悪化等、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

(5) 部品・原材料の仕入れ

 当社グループは、当社グループ外から原材料を仕入れ基幹部品等を生産し、一部の部品を当社グループ外から仕入れております。具体的な当社グループ製品の主たる原材料はアンテナ及び中継ケーブル等で使用する銅線、樹脂等であります。当社グループは、複数の仕入先との取引による安定した仕入れの確保、現地調達や集中購買等による材料費の低減等に努めておりますが、当社グループでは管理できない仕入先の事情による部品・原材料の仕入れの停滞や原材料市況の高騰による仕入値の上昇等により原価率が上昇し、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

(6) 製品の品質保証

 当社グループは、顧客の品質基準にあわせた製品を中国、フィリピン、ベトナム、メキシコで生産をしております。当社グループでは、製造現場を支える現場管理強化や次世代技術に適応した高品質水準の確立に取り組んでおり、品質管理は自動車産業の品質マネジメントシステムの認証を受け、万全を期しております。これまでに、当社グループに対しての製造物責任法に基づく訴訟やリコール等は発生しておりませんが、今後、当社グループの製品に関する訴訟等が発生した場合には多額の損害賠償費用の発生や当社グループの製品に対しての信用の低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

(7) 税務に関するリスク

 当社グループは、グローバルに事業を展開しており、連結売上高の大部分を海外売上高が占めております。当社グループは、税務については、各国の税法に準拠して税額を計算し、適正に納税を行い、法令順守に努めております。また、適用される各国の移転価格税制等の国際税務リスクについては、第三者の税務に関する専門家を活用する等細心の注意を払っておりますが、税務当局との見解の相違により、取引価格が不適切である等の指摘を受ける可能性があります。さらに政府間協議が不調となる等の場合、結果として二重課税や追徴課税を受ける可能性があります。

 

(8) 知的財産権侵害の可能性

 当社グループは、イノベーション創出型開発の推進、グローバル開発の最適化等の施策に取り組んでおります。これに伴い、積極的な特許出願を行うとともに、第三者からの特許侵害訴訟を未然に防止するため、当社及び特許事務所を通じた特許調査を随時行っております。しかしながら、第三者の特許権を侵害していないことを完全に調査し確認することは極めて困難であり、現時点において当社グループが認識していない第三者の特許等の知的財産権が存在する可能性は完全に否定できず、また今後、当社グループが第三者より特許権その他知的財産権の侵害を理由として訴訟提起を受けないという保証はありません。当社グループが第三者から訴訟提起等を受けた場合には、当社は、弁理士及び弁護士等と相談の上、個別具体的な対応を行っていく方針でありますが、その対応において多大な費用と時間を要する可能性があります。その結果によっては、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

(9) 棚卸資産について

 当社グループでは、財務体質の健全性を確保すると共に、限られた経営資源を最大限有効活用することを目指しておりますことから、顧客の需要予測等を常に把握し、適正な在庫水準の維持と滞留在庫の発生を防止するよう努めておりますが、市場の変化等により予測した需要が実現せず過剰在庫となり評価損の計上や廃棄処分を余儀なくされた場合、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

(10) 技術の陳腐化

 当社グループでは、イノベーション創出型開発の推進、グローバル開発の最適化等の施策に取り組んでおり、現在製造している製品に係る技術や将来の事業に必要な要素技術獲得のための開発活動を行い、競争力強化を図っております。しかしながら、将来的に当社グループが製造している製品の陳腐化や当社グループにおける技術革新が進行しなかった場合には、当社グループの製品が競合他社の製品と比較して競争力を獲得できないことにより、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

(11) 災害等による影響

 地震・台風等の自然災害の発生等によって、当社グループの製造拠点・販売拠点における生産能力の低下、情報インフラの断絶及び二次的災害等、当社の事業に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、永遠に存続・発展し続けることを経営基本方針に掲げており、災害対策マニュアルや事業継続計画の策定、従業員の安否確認システムの構築等の対策を講じておりますが、自然災害による被害を完全に排除できるものではなく、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受ける可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績等の状況

 当連結会計年度における世界経済は、米欧を中心とした金融引き締めによる需要抑制効果や中国経済の減速等により、緩やかな減速傾向となりました。また、材料費の高止まりや、一時期に比べ緩和したものの半導体不足をはじめとした供給制約等が継続していることに加え、物価高の再燃、米国の保護主義の強まり、中国経済の失速等、世界経済の下振れリスクも大きく、引き続き、先行き不透明な状況となっております。

 当社グループの属する自動車業界におきましては、前年同期比では増産となった一方、コロナ禍以前の自動車生産台数を回復するには至っておらず、また材料費の高止まりに加え、為替の影響等により、依然として大変厳しい事業環境となっております。

 このような外部環境の変化及び足元の状況に鑑み、2023年度より、「各ビジネスの収益性改善」、「コスト構造改革」、「B/Sのスリム化による収益改善・財務体質改善」を強力に推進する「収益構造改革」に集中して取り組んでまいりました。

 一方、中長期的な視点では、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に積極的に対応していくことで、当社は成長を実現してまいります。CASEの進展等を含め、自動車業界を取り巻く環境は変化しており、このような環境に鑑み、中長期経営の方向性として、目指す姿を「当社は、車載アンテナのトップ企業であり続けます。また、周辺事業を拡大していくことにより収益基盤を確立します。加えて、当社技術を活用し、新規事業分野を開拓します。」と定め、CASEと共に進化する豊かなカーライフに貢献することを目指してまいります。

 この結果、当連結会計年度における売上高は、世界の自動車生産台数が前年同期比で増産となったことや、従前からの販売活動を強化・継続するとともに、車載アンテナ周辺領域における関連機器の製造・販売を強化し、加えて販売価格の適正化等に取り組んだ結果、過去最高となる469億93百万円(前年同期比11.6%増)となりました。利益面については、材料費の高止まりや為替影響による原価率の上昇等により大変厳しい状況が続いておりますが、「収益構造改革」に集中して取り組んだ結果、営業利益は10億26百万円(前年同期は営業損失7億21百万円)となり、経常利益は支払利息等により5億18百万円(前年同期は経常損失8億99百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は遊休資産の譲渡に伴う固定資産売却益の他、中国市場全体での収益を改善するための生産機能再編に係る費用等、事業構造改善費用を計上したことや法人税等の影響により8億85百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失15億31百万円)となりました。

 

 セグメントごとの業績は次のとおりであります。

(イ) 日本

 自動車生産台数の回復等により、外部売上高は172億19百万円(前年同期比13.1%増)、セグメント間の内部売上高は20億3百万円(同10.1%増)、営業利益は10億18百万円(同453.1%増)となりました。

 

(ロ) アジア

 アジア市場における自動車生産台数は回復傾向にあったものの一部の地域における生産調整や、材料費の高騰、また為替影響等により、外部売上高は82億6百万円(前年同期比9.5%減)、セグメント間の内部売上高は183億26百万円(同6.8%増)、営業損失は9億53百万円(前年同期は営業損失7億15百万円)となりました。

 

(ハ) 北中米

 北中米市場における自動車生産台数の回復や為替の影響等により、外部売上高は150億85百万円(前年同期比26.3%増)、セグメント間の内部売上高は84百万円(同82.5%減)、営業利益は7億55百万円(前年同期は営業利益4百万円)となりました。

 

(ニ) 欧州

 欧州市場における自動車生産台数の回復や為替の影響等により、外部売上高は64億81百万円(前年同期比10.5%増)、セグメント間の内部売上高は21億25百万円(同71.2%増)、営業利益は1億67百万円(前年同期は営業損失2億1百万円)となりました。

 

 なお、セグメントの売上については外部顧客に対する売上高とセグメント間の内部売上高を記載しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度と比較して8億7百万円減少し、51億41百万円(前連結会計年度比13.6%減)となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、「有形固定資産売却益」34億10百万円等の減少要因がありましたが、「税金等調整前当期純利益」24億12百万円、「棚卸資産の減少額」23億98百万円、「事業構造改善費用」15億13百万円等の増加要因により、24億23百万円の収入(前連結会計年度は5億58百万円の収入)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、「有形固定資産の取得による支出」7億38百万円等の減少要因がありましたが、「有形固定資産の売却による収入」31億69百万円等の増加要因により、25億68百万円の収入(前連結会計年度は5億69百万円の支出)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、「短期借入れによる収入」797億1百万円等の増加要因がありましたが、「短期借入金の返済による支出」846億93百万円等の減少要因により、59億98百万円の支出(前連結会計年度は20億2百万円の収入)となりました。

 

 なお、当企業集団のキャッシュ・フローの関連指標の推移は下記のとおりであります。

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

自己資本比率(%)

39.9

35.3

31.2

27.8

31.7

時価ベースの自己資本比率(%)

52.4

60.1

57.8

44.5

42.1

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(債務償還年数)

24.9

37.5

6.7

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

1.9

1.9

3.7

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しております。

3.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを使用しております。

4.有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

5.2021年3月期及び2022年3月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジレシオは、営業キャッシュ・フローがマイナスであるため記載しておりません。

6.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を2022年3月期の期首から適用しており、2022年3月期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

③ 生産、受注及び販売の実績

(イ) 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

日本(百万円)

アジア(百万円)

29,270

101.8

北中米(百万円)

13,037

121.2

欧州(百万円)

合計(百万円)

42,307

107.1

(注)金額は、販売価格によっております。

 

(ロ) 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比

(%)

受注残高(百万円)

前年同期比

(%)

日本

17,305

113.7

426

125.3

アジア

7,778

95.5

780

64.6

北中米

15,220

128.0

396

151.9

欧州

6,522

110.4

319

114.7

合計

46,827

113.7

1,922

92.1

 

(ハ) 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

日本(百万円)

17,219

113.1

アジア(百万円)

8,206

90.5

北中米(百万円)

15,085

126.3

欧州(百万円)

6,481

110.5

合計(百万円)

46,993

111.6

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

Ford Motor Company

5,104

12.1

4,182

8.9

Honda Motor Co., Ltd.

1,999

4.8

5,386

11.5

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(イ) 経営成績の分析

 当連結会計年度の業績は、売上高は469億93百万円(前連結会計年度比11.6%増)となり、営業利益は10億26百万円(前連結会計年度は営業損失7億21百万円)、経常利益は5億18百万円(前連結会計年度は経常損失8億99百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は8億85百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失15億31百万円)となりました。

(売上高)

 当連結会計年度における売上高は、469億93百万円(前連結会計年度421億5百万円)となり、48億87百万円増加いたしました。

 また、セグメントの売上高は次のとおりであり、外部顧客に対する売上高を記載しております。

日本

 自動車生産台数の回復等により、外部売上高は172億19百万円(前連結会計年度152億30百万円)となり、19億89百万円増加いたしました。

アジア

 アジア市場における自動車生産台数は回復傾向にあったものの一部の地域における生産調整や為替影響等により、外部売上高は82億6百万円(前連結会計年度90億69百万円)となり、8億62百万円減少いたしました。

北中米

 北中米市場における自動車生産台数の回復や為替の影響等により、外部売上高は150億85百万円(前連結会計年度119億40百万円)となり、31億45百万円増加いたしました。

欧州

 欧州市場における自動車生産台数の回復や為替の影響等により、外部売上高は64億81百万円(前連結会計年度58億65百万円)となり、6億16百万円増加いたしました。

 

(営業利益)

 当連結会計年度における営業利益は、10億26百万円(前連結会計年度は営業損失7億21百万円)となり、17億48百万円増加いたしました。

 主に売上高の増加によるものであります。

 

(営業外収益)

 当連結会計年度における営業外収益は、2億28百万円(前連結会計年度2億21百万円)となり、7百万円増加いたしました。

 当連結会計年度における「受取還付金」の計上、「受取利息」の増加及び「その他」の減少によるものであります。

 

(営業外費用)

 当連結会計年度における営業外費用は、7億35百万円(前連結会計年度3億98百万円)となり、3億37百万円増加いたしました。

 主に「支払利息」及び「為替差損」の増加によるものであります。

 

(特別利益)

 当連結会計年度における特別利益は34億10百万円(前連結会計年度5百万円)となり、34億4百万円増加いたしました。「固定資産売却益」の増加によるものであります。

 

(特別損失)

 当連結会計年度における特別損失は15億16百万円(前連結会計年度2億30百万円)となり、12億85百万円増加いたしました。

 主に「事業構造改善費用」の増加によるものであります。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は8億85百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失15億31百万円)となり、24億16百万円増加いたしました。

 

(ロ) 財政状態の分析

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は273億93百万円(前連結会計年度末297億8百万円)となり、23億15百万円減少いたしました。これは主に「商品及び製品」が14億7百万円、「現金及び預金」が8億28百万円減少したことによるものであります。固定資産は102億5百万円(前連結会計年度末104億23百万円)となり、2億17百万円減少いたしました。これは主に「繰延税金資産」等の増加により「投資その他の資産」が3億32百万円増加したものの、「土地」等の減少により「有形固定資産」が5億1百万円、「無形固定資産」が48百万円減少したことによるものであります。

 この結果、総資産は375億98百万円(前連結会計年度末401億31百万円)となり、25億33百万円減少いたしました。

 

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は237億20百万円(前連結会計年度末274億7百万円)となり、36億86百万円減少いたしました。これは主に「未払法人税等」が10億4百万円増加したものの、「短期借入金」が43億53百万円、「1年内返済予定の長期借入金」が5億円減少したことによるものであります。固定負債は19億63百万円(前連結会計年度末15億57百万円)となり、4億6百万円増加いたしました。これは「退職給付に係る負債」が3億3百万円、「その他」が1億2百万円増加したことによるものであります。

 この結果、負債合計は256億84百万円(前連結会計年度末289億65百万円)となり、32億80百万円減少いたしました。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は119億13百万円(前連結会計年度末111億66百万円)となり、7億46百万円増加いたしました。これは主に「利益剰余金」が7億76百万円増加したことによるものであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご確認ください。

 当社グループの資金の源泉は、「現金及び現金同等物」、「営業活動によるキャッシュ・フロー」等であります。当社グループの事業活動における資金需要は主に運転資金と設備投資資金であり、自己資金を充当することを基本とし、必要に応じて金融機関からの借入れによる資金調達を行っております。

 その結果、当連結会計年度末における短期借入金は148億66百万円となり、借入金総額は148億66百万円となりました。また、当連結会計年度末における現金及び預金の残高は51億41百万円となりました。今後の世界経済は景気の下振れ要因が数多く存在しており、依然として先行きの不透明な状況が続いてはおりますが、手許資金については十分に確保しており、必要に応じて金融機関等から機動的な資金調達が可能な体制を整えております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績及び現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性を伴うため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。また、特に以下の重要な会計方針及び見積りの適用が、その作成において用いられる見積り及び予測により、当社の連結財務諸表に大きな影響を及ぼすと考えております。

 

(イ) 固定資産の減損

 当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。事業計画や経営環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損を認識する可能性があります。

 

(ロ) 繰延税金資産

 当社グループは、将来の課税所得に関するものを含めた様々な予測・仮定に基づいて繰延税金資産を計上しており、実際の結果がかかる予測・仮定とは異なる可能性があります。また、将来の課税所得に関する予測・仮定に基づいて、当社又は子会社が繰延税金資産の一部又は全部の回収ができないと判断した場合、当社グループの繰延税金資産は減額され、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。繰延税金資産の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(税効果会計関係)」をご覧ください。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご確認ください。

 

⑤ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況

 「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、当社グループは、成長性及び収

益性改善のため、営業利益率等の利益指標の向上に努めるとともに、経営の安全性を高めるため財務体質を改善すべく、有利子負債の削減、棚卸資産の圧縮、自己資本の充実等に取り組んでおります。

 2024年3月期の業績指標は、売上高440億円、営業利益6億50百万円、経常利益3億50百万円、親会社株主に帰属する当期純利益15億円と設定いたしました。

 当連結会計年度における売上高に関しましては、世界の自動車生産台数が前年同期比で増産となったことや、従前からの販売活動を強化・継続するとともに、車載アンテナ周辺領域における関連機器の製造・販売を強化し、加えて販売価格の適正化等に取り組んだ結果、過去最高となる469億93百万円となりました。利益面につきましては、材料費の高止まりや為替影響による原価率の上昇等により大変厳しい状況が続いておりますが、「収益構造改革」に集中して取り組んだ結果、営業利益は10億26百万円となり、経常利益は支払利息等により5億18百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は遊休資産の譲渡に伴う固定資産売却益の他、中国市場全体での収益を改善するための生産機能再編に係る費用等、事業構造改善費用を計上したことや法人税等の影響により8億85百万円となりました。

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

6【研究開発活動】

 自動車産業は「CASE」と呼ばれるコネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化や、MaaS(Mobility as a Service)等、ICT革新により安全で利便性の高い新しいクルマがもたらすモビリティ社会への移行に向けて進んでいます。特にコネクテッドは他の技術と密接につながっていて、つながるクルマ=コネクテッドカーの開発が急速に進められています。

 

 それを踏まえ、当社グループにおいては自動車関連機器、自動車を主とする移動体用通信関連機器を中心に製品の開発に取り組んでおります。各市場のニーズに合わせた開発体制とするため、日本、独国、米国、中国(上海)に研究開発部門を設置し、互いの連携を密に迅速な新製品開発を行っております。また競争力及び将来の事業に必要な要素技術獲得を目的とした開発機能の強化を図るため、アドバンスドテクニカルセンターを設置しております。アドバンスドテクニカルセンターでは、社内だけでなく社外との連携も視野に入れ、5年~10年先の市場が求めるものを製品化(商品化)する事を目標とし、次世代技術開発を加速させていきます。その成果として、LPWA車載端末を開発し、フリートマネジメントをターゲットとした車載端末を2022年度に市場投入いたしました。今後、新しい廉価なフリートマネジメントを担う機器として成長を促進してまいります。

 

 当連結会計年度における研究開発費の総額は、968百万円(日本747百万円、アジア51百万円、北中米137百万円、欧州32百万円)となっており、各製品及びサービスの研究開発活動は以下のとおりであります。

 

 自動車アンテナ分野においては、ADAS(Advanced Driver Assistance Systems)関連製品の開発に重点を置き、自動運転技術に必要な各種アンテナ及び関連製品の開発に着手しております。とりわけコネクテッドカーの実現に必要とされるDSRCやセルラーV2X(C-V2X)の車車間、路車間通信用アンテナ、車載用として需要が見込まれる第5世代移動通信システム(5G)に用いるアンテナに関しては、各OEMメーカーへ試作品アンテナを提供し、共同にて実験を進めており、実用化に向け着々と準備を進めています。国内向けの安全運転をサポートするITS connect用アンテナは量産を開始、緊急車両をはじめ特殊車両、一般車両などへの展開も進む見込みです。また、複数の衛星測位システムのデータを組み合わせ、高精度な位置情報を取得可能とするためのマルチGNSS(Global Navigation Satellite System)に対応可能なアンテナや各種GNSSの需要に対応させたアンテナを開発中です。さらに、スマートフォン等の機器との融合利用増加を見据え、Wi-Fi、bluetooth等に対応するアンテナシステムの開発を進めております。

 

 次世代アンテナ分野では、アンテナの統合化、小型・軽量化、無突起化がさらに進む見込みであることから、複合型シャークフィンアンテナ、スポイラー/バンパー内蔵アンテナ、インストルメントパネル内蔵型アンテナ、その他各種埋め込み型アンテナの開発を行っています。

 

 また、基礎研究開発として、未来型アンテナ構想の開発が進んでおり、この基礎研究開発により、将来に向けた「新コンセプトアンテナ」、「アンテナチューナー一体化による性能、品質向上」、「ノイズによる劣化を抑えたアンテナ」、「最適化受信システム」、「マルチメディアチューナー対応マルチバンドアンテナ」等の市場投入が可能となります。

 

 環境保全に対する取組みとして、同軸ケーブル内製の強みを活かし開発した軽量同軸ケーブルを、自動車メーカーの燃費低減活動に繋がる部品重量軽量化の提案として行い、当社ケーブル生産の半量まで軽量同軸ケーブルが占めるに至っております。加えて、ケーブル内製技術を応用し、運転支援の車載カメラや車載機器間の通信に使用される高速データ伝送ケーブルの開発を進め、各客先に対し提案活動を実施し、量産納入を開始しております。

 

 自動車を主とする移動体用通信関連機器開発においては、社会動向と将来のトレンドを考え「大容量高速通信サービスの自動車・移動体への活用」を目標に掲げ、将来型アンテナの開発を引き続き推進してまいります。