第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社グループは「豊かな自然環境の保護・存続を使命とし、技術革新に努め、生産活動を通じて、広く社会に貢献する。」という経営理念の下、社会インフラ向けの情報通信機器及び関連サービスを提供する企業グループとして、社会の安定・発展に貢献し、企業価値の向上を目指すことで、持続的成長を遂げてまいります。

 

(2) 経営戦略等

 当社グループは、大井電気㈱及びオオイテクノ㈱が主に情報通信機器製造販売事業を、日本フィールド・エンジニアリング㈱及び日本テクニカル・サービス㈱が主にネットワーク工事保守事業を営んでおります。各社の自立経営を基本としつつ、グループ会社間でのシナジーを発揮することで、グループ全体での事業規模・利益拡大を図ってまいります。

 各セグメントの経営戦略は以下のとおりです。

 

(情報通信機器製造販売)

 情報通信機器製造販売事業においては、2025年度より電力会社において第2世代スマートメーターの導入が開始されることから、関連事業の拡大が見込まれます。当社は、スマートメーター導入の黎明期より通信機能の製造及び販売を行ってきた実績とノウハウを有しており、第2世代スマートメーターにおいてもその経験を活かして、関連事業の更なるシェア拡大を目指すとともに、ガス・水道向けスマートメーター関連事業への参入拡大に取り組んでまいります。また、基幹事業である電力・鉄道・官公庁・通信キャリア等の社会インフラ向け情報通信機器については、5G用インフラ等に向けた光波長多重伝送装置(OTN(*)プラットフォーム・システム)事業における実績と経験をもとに、情報利活用の多様化・高度化による需要拡大に対応した情報伝送速度の高速化・高度化や関連周辺市場の需要開拓、顧客開拓を進めてまいります。

 これらの事業に加えて、情報通信機器の製造販売のみならず、情報通信機器を利活用することによって実現するサービスに対応したソフトウェア開発事業に果敢に挑戦してまいります。

* Optical Transport Network

 

(ネットワーク工事保守)

 ネットワーク工事保守事業においては、5G基地局の設置拡大が一巡したことで減少が見込まれることから、実績とノウハウを有する防災・減災・国土強靭化に必要な通信インフラの敷設・整備等の公共工事を中心とした事業への参入拡大や新規顧客の開拓、ネットワーク機器販売を伴う工事案件の獲得に取り組んでまいります。安全確保を前提に、既存事業の着実な展開に加え、品質調査から設計・工事・保守までを一気通貫に行える技術・要員・体制の整備をさらに進め、事業領域の拡大・利益成長に取組んでまいります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

大井電気グループ中期経営計画<2023-2025>の2024年度の達成状況について

 当社グループは、「独自の技術力をもって世の中に貢献する」を中期経営計画のビジョンとし、社会インフラを支える情報通信の分野で、独自の技術力をもって特長のある製品やサービスによって価値を提供し続けることを通し、成長に向けた経営基盤を確立することを中期経営計画の基本方針としております。

 この基本方針のもと、情報通信機器製造販売セグメントにつきましては、多様化するお客様ニーズへの着実な対応や生産体制の最適化による生産性向上といった取組みによる現行主力製品群の強化と、2025年度以降の市場拡大が見込まれる第2世代スマートメーター向け通信機器事業を2つの事業を柱とした収益力強化を実現してまいります。ネットワーク工事保守セグメントにつきましては、5Gのインフラ整備に向け基地局工事の増加が見込まれる中で、多種多様な設備の調査・設計から施工、保守まで一気通貫で実施することにより、安定成長を実現してまいります。

計画2年目となる2024年度については、売上高計画270億円に対し、実績290億46百万円、営業利益計画5億50百万円に対し、実績14億84百万円と計画を大幅に上回る達成となりました。これは主に情報通信機器製造販売事業において、電力スマートメーター向け通信機器を中心としたIoT関連装置事業の売上が増加したこと、また各セグメントにおいて価格の見直しやコスト削減等が進捗した結果であります。

上記の結果及び直近の業績動向を鑑み、2025年度計画につきましては、当初計画売上高290億円、営業利益10億円に対し、売上高321億円、営業利益11億80百万円へ計画を修正いたしました。

 

大井電気グループ中期経営計画<2023-2025> 計画数値及び実績

 

 

 

 

 

単位:百万円

 

2023年度計画

(当初)

2024年度計画

(当初)

2024年度計画

(修正)

2025年度計画

(当初)

2025年度計画

(修正)

売上高

26,400

27,700

27,000

29,000

32,100

営業利益

500

770

550

1,000

1,180

売上高実績

28,117

29,046

営業利益実績

919

1,484

 

(4) 経営環境

 当社グループの属する情報通信機器業界は、第5世代移動通信システム(5G)ネットワーク構築に向けた設備投資需要は一段落を迎えたものの、これを活用したサービスの普及によるトラフィックの増大、データセンター需要の拡大に伴う大容量・高速化、防災・減災システムの需要等により、ネットワーク設備の増強が進んで、全体としては、今後も緩やかに需要が拡大するものと見込んでおります。このような状況に加え、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)投資のさらなる進展や、ITを活用した設備投資、地球温暖化等の環境課題、労働人口の減少等の社会課題の解決を通じたSDGsの達成に向けたデジタル技術の活用が進展することが期待され、当社の参入の機会が見込まれます。

一方で情報通信技術の発展に伴う技術の更なる高度化、情報通信機器のコモディティ化が進展しており、これに対応するためには技術力及び製品付加価値の継続的な向上が必須であります。通信機器・通信インフラの提供のみに留まらず、通信の高速大容量化、高付加価値化(低遅延、多数同時接続、低消費電力、低コスト等)需要に応えるとともに、AIによるデータの処理、蓄積した情報とクラウドサービスを組み合わせたサービスやソリューションの提供といったサービス面での付加価値向上に挑戦することが求められております。加えて、物価や為替相場の影響によるエネルギー・原材料価格の高騰等により、今後も部材調達コストを中心とする製造コストの高止まりが想定されます。

 当社グループといたしましては、こうした環境変化に対応して、安定的な収益基盤の構築を図り、成長分野に向け、引続き以下の具体的施策の展開を推進してまいります。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 経営体質の強化

 当社グループは、電力会社・官公庁等の事業の関係から下半期に売上計上が集中し、また、顧客の調達方針の変化等が業績に与える影響も大きいことから、収益規模変動に柔軟に対応できる経営体質を確保してまいります。具体的には、生産性向上の推進や事業性を吟味した設備投資、原価低減に資する生産・調達方式の検討・実践、そのために必要な資金調達手段の確保等に取組んでまいります。また、製造コストの高止まりへの対応として、調達レジリエンスの強化や販売価格への転嫁を継続し推進してまいります。

 

② 企業価値向上に向けた取組み

 コア技術や将来方向を見据えた人的資源の配置と人材育成に努めるとともに、コンプライアンス、環境等の社会的責任課題に対して、全体最適の観点から企業価値向上に取組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 基本的な考え方及び方針

 当社グループは、経営理念である「豊かな自然環境の保護・存続を使命とし、技術革新に努め、生産活動を通じて広く社会に貢献する」ことを、事業活動を通じて実践することで持続可能な社会の実現と企業価値の向上に努めてまいりました。当社は、この基本的な考え方のもと、以下3つの行動指針を「サステナビリティ方針」としております。

サステナビリティ方針

・最先端の通信技術を追求し、お客さまを始めとする社会に必要とされる価値の創造を目指します。

・事業活動を通じて、環境・社会課題の解決やSDGs達成に貢献することを目指します。

・ステークホルダーと対話を通じた信頼関係を構築し、その要請や期待に応えることで、自らの活動を常に見直します。

 

(2) ガバナンス

 当社は、経営会議の内部委員会として、サステナビリティ委員会を設置し、当期において計3回のサステナビリティ委員会を開催いたしました。

 サステナビリティ委員会は、サステナビリティ関連のリスクと機会の議論を通じて、サステナビリティに関する基本方針の策定、重要課題の抽出、重要課題に対する達成すべき目標やこれを評価する指標の設定を審議し、取締役会へ報告いたします。

 

(3) 戦略

 当社は、サステナビリティに関連するリスク・機会への適切な対応が、持続可能な社会の実現のため、そして当社の企業価値向上のために不可欠であると認識しております。リスク・機会を定期的に分析及び評価を行うことで、経営上のマテリアリティの特定を行ってまいります。

 

(4) リスク管理

 当社は、リスク管理委員会の活動を通じて全社の事業上の重要リスクの抽出、評価及びその対応策を審議しており、サステナビリティ委員会は、リスク管理委員会との間で、抽出された全社の事業上の重要リスクのうち、サステナビリティ関連のリスクを共有しております。

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(5) 環境保全に対する取組み

① 戦略

当社は、豊かな自然環境の保護・存続を使命とすることを経営理念として掲げており、環境保全への取組を重要な経営課題の一つとして認識しております。生産拠点においては、ISO14001に基づく環境マネジメントを構築すると共に、気候変動問題への対応として、電力量や紙資源の削減、再利用を推進することにより中長期的なCO排出量の削減に取り組んでおります。

 

② 指標及び目標

 目標:前年度比1%以上の排出量削減

指標

2023年度実績

2023年度実績(※)

2024年度実績(※)

温室効果ガスCO排出量

1,768.3t

1,327.1t

1,235.4t

(6.9%減)

※COフリー電力の活用による排出量削減効果を含んだ計算としております。

 

(6) 人的資本に関する取組

① 戦略

イ.人材育成方針

 当社を取り巻く昨今の経営環境は、IT技術の急速な発展や、少子高齢化による労働人口の減少、グローバル化等の要因により日々変化しております。変化が激しいこれからの時代に対応していくためには、従業員一人ひとりが主体的に考え、自己成長していくことが不可欠であり、当社としても各々が期待される役割を認識し、個々の能力を発揮できる環境を提供することはもちろん、自律的な学びを促進する仕組みづくりが重要であると認識しております。

 このような状況下で、当社は以下4つの人材育成方針を掲げ、それらを実現するために各種施策を推進しております。

・創業理念(和と協調の精神、採算意識の徹底、目標達成に対する強い責任感)の継承

・マインド及びスキル研修やOJT等を通じてプロ組織集団への成長を目指す

・自己研鑽、キャリア形成への支援

・環境に応じた諸制度(人事・評価・賃金等)の変革

 

ロ.社内環境整備方針

 当社は、従業員一人ひとりの力を最大限に発揮できる組織を目指し、多様な人材が相互に活発なコミュニケーションを取りながら、心身ともに健康で安心して働くことのできる職場環境の整備に取り組むことを基本方針としております。

 当社は、ダイバーシティに配慮した雇用制度の設計、従業員の適正なワークライフバランスを前提とした働き方改革の推進、従業員の安全と健康を確保する労働安全衛生に関する取組みを通して上記の方針を実現してまいります。

 

② 指標及び目標

 女性管理職率、正規雇用労働者の経験者採用率、定年退職者雇用率

 人材の育成及び社内環境整備に関する方針についての指標は以下のとおりです。方針に基づく目標の設定につきまして、現時点では未策定ですが、今後当社のサステナビリティ委員会の活動をとおして策定を進めてまいります。

指標

2023年度実績

2024年度実績

女性管理職率

4.0%

4.2%

正規雇用労働者の経験者採用率

36%

79%

定年退職者雇用率

87.5%

84.0%

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 一部顧客への依存

 当社グループ事業は電力や通信キャリア関連の一部の顧客への依存度が高く、顧客ニーズの把握、収集が充分できず、魅力ある製品やサービスを提供できない場合は、将来の成長と収益性を低下させ、財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 特に、大規模自然災害の発生や重大な社会情勢の変化等に伴う顧客の設備投資計画の見直し等によっては、当社グループの財政状態及び業績に多大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業拡大

 当社グループは、第5世代移動通信システム(5G)の普及、インターネット利用拡大によるデータトラヒックの増大、IoTデバイスの急速な普及等に対応した新たな製品や工事・保守受託業務を含めたシステム提案等の展開により、事業規模を拡大していく方針ですが、以下のようなリスクが含まれています。

① 当社グループが、情報通信機器やインターネット市場等の動向の急激な変化を正確に予測できるとは限らず、開発した製品の販売が必ず成功するとの保証はありません。事業の戦略的提携先やOEM供給先の業績不振や戦略変更等によってもその影響を受けることがあり、計画どおりの収益規模が確保できなくなる場合があります。

 また、与信管理には十分留意をしておりますが、売掛債権の回収リスクが生じ、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

② 情報通信機器市場は、当社グループ以外にもメーカーや商社等多くの企業が参入してきており、その一部は当社グループよりも多くの経営資源を有しております。こうした競合先が同種の製品・サービス等をより低価格で提供すること等によっては、当社製品・サービスが必ず差別化できるという保証はありません。その場合は、計画どおりの収益をあげることができない可能性があります。

③ 情報通信機器市場は技術の急激な進歩と市場のニーズの変化により、製品開発中に新技術の出現や規格が変更され当社グループ製品が市場投入前から陳腐化する可能性があります。

 また、市場の急激な変動によっては、開発製品の投入遅れやサービス対応要員の不足が生じないという保証はなく、需要に対応できず市場でのシェア拡大の機会を逃してしまう可能性があります。

 

(3) 製品・サービスの品質と責任について

 当社グループが販売する製品や提供するサービスは、その一部を外部の会社に委託する場合を含め、製品やサービスの品質管理については品質保証の専任部署を設置し、取引先に対して品質が維持できるように努めております。しかし、提供した全ての製品やサービスに欠陥が発生しないという保証はありません。不測の事態で大規模な欠陥等の問題が発生した場合には、当社グループとして、そのことによって生じた損害の責任を負う可能性があります。

 

(4) 資金調達に関するリスク

 当社グループは主に金融機関から資金の調達を行っておりますが、金融機関の方針変更等により資金調達が不十分あるいは不調に終わった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 為替相場の変動リスク

 当社は部材の一部を輸入調達しており、為替相場変動による価格変動リスクを有しております。当社では、為替相場変動リスクを軽減するため、適切なタイミングで為替レートをもとに原価を見積もる等の対応をしておりますが、著しい為替の変動があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 退職給付債務

 当社の退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率で算出されます。

 実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合は、その影響額が累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼす可能性があります。また、今後の割引率の低下や運用利回りの変化により、退職給付費用が増加し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

(7) 自然災害等の突発性事象の発生リスク

 当社グループは、大規模な地震等の自然災害、火災、戦争、テロ及び暴動等が発生した場合は、当社グループや仕入先、顧客の主要設備への損害等により、生産活動や資材調達等に支障が生じ、また、これらの災害等が政治不安又は経済不安を引き起こすことにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響をもたらす可能性があります。

 

(8) 繰延税金資産

 繰延税金資産の回収可能性は、将来収益力に基づく課税所得によって判断しております。当連結会計年度における繰延税金資産については十分な回収可能性があると判断しておりますが、経営成績等により、その回収可能性に見直しが必要となった場合には、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 工事損失の発生に関するリスク

 手持ち受注工事のうち、損失の発生が見込まれ、かつ金額を合理的に見積もることのできる受注工事について、損失見積り額を工事損失引当金として計上することにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 部材調達について

 当社グループは、半導体を含む多くの部材を外部から調達しておりますが、サプライチェーンの乱れや原材料価格の高騰等により、部材の調達に支障をきたした場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 固定資産の減損に係る会計基準の適用について

 当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」を適用しております。当該基準適用に伴い、資産価値の下落及び経営環境の著しい悪化等により収益性が低下した場合は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 棚卸資産の評価に関するリスク

 当社グループは、「棚卸資産の評価に関する会計基準」を適用しております。市場環境が悪化して正味売却価額が著しく下落した場合、保有期間が長期にわたる棚卸資産の今後の使用状況や廃棄処分の状況に変化が生じた場合、営業循環から外れた過剰在庫の処分見込みや使用見込みに変化が生じた場合は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、経済活動の持ち直し傾向の継続、これに伴う企業の賃上げや部品調達環境の改善、インバウンド需要の拡大等を背景に、緩やかな回復基調が継続しました。しかしながら、米国の新政権による新たな外交・経済政策の影響や長期化する地政学リスク、価格転嫁や不安定な為替の影響に伴う原材料価格の高騰等により、景気先行き感は依然として不透明な状況が継続しております。当社グループをとりまく市場動向につきましては、第5世代移動通信システム(5G)ネットワーク構築に向けた設備投資需要は一段落を迎え、今後はこれを活用したサービスの普及によるトラフィックの増大、データセンター需要の拡大に伴う大容量・高速化、防災・減災システムの需要等により、ネットワーク設備の増強が進み、全体としては、今後も緩やかに需要が拡大するものと見込んでおります。このような状況に加え、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)投資のさらなる加速や、ITを活用した設備投資、地球温暖化や労働人口の減少等の課題解決を通じたSDGsの達成に向けたデジタル技術の進展が期待され、当社の事業機会が見込まれます。

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

イ.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ2億31百万円減少し、236億49百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ11億27百万円減少し、147億61百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ8億95百万円増加し、88億88百万円となりました。

 

ロ.経営成績

 当社の当連結会計年度の売上高につきましては、情報通信機器製造販売が増加した結果、290億46百万円(前年同期比3.3%増)となりました。

 損益につきましては、情報通信機器製造販売において、売上高増加に伴う利益の増加があったこと、開発リソースを第2世代スマートメーター関連機器開発等に重点シフトしたことによる開発費の抑制、原価率が改善したことにより、営業利益は14億84百万円(前年同期比61.5%増)、経常利益は14億29百万円(前年同期比70.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は10億49百万円(前年同期比38.2%増)となりました。

 以下、セグメントの概況をご報告いたします。

 

〔情報通信機器製造販売〕

 電力スマートメーター向け通信機器を中心としたIoT関連装置事業の売上が増加したため、売上高は168億9百万円(前年同期比8.6%増)となりました。セグメント損益につきましては、売上高の増加及びコスト増加分の販売価格への転嫁、原価率低減の推進等により8億55百万円の利益(前年同期比92.8%増)となりました。

 

〔ネットワーク工事保守〕

 通信線路工事・保守事業の売上が増加したものの、通信機器工事・保守事業の売上が減少したため、売上高は122億36百万円(前年同期比3.1%減)となりました。セグメント損益につきましては、売上が減少したものの、価格の見直しやコスト削減の推進等により6億円の利益(前年同期比36.8%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ10億1百万円増加(前年同期比34.8%増)し、当連結会計年度末には38億74百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により増加した資金は27億78百万円(前年同期は16億41百万円の増加)となりました。

 これは主に、退職給付に係る負債の減少が1億88百万円、未払消費税等の減少が3億44百万円、未払金の減少が4億95百万円、利息の支払による資金の減少が1億10百万円、法人税等の支払による資金の減少が3億30百万円あったものの、税金等調整前当期純利益が14億29百万円、減価償却費が5億38百万円、賞与引当金の増加が4億27百万円、売上債権による増加が9億99百万円、棚卸資産による増加が5億74百万円、仕入債務の増加が1億円あったことによります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により減少した資金は4億93百万円(前年同期は2億77百万円の減少)となりました。

 これは主に、固定資産の購入により資金が4億93百万円減少したことによります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により減少した資金は12億83百万円(前年同期は6億4百万円の減少)となりました。

 これは主に、短期借入金の返済により資金が12億円減少したことによります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

イ.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

情報通信機器製造販売(千円)

17,000,275

108.8

ネットワーク工事保守(千円)

合計

17,000,275

108.8

 (注)1.上記生産実績は、製造会社における生産実績を販売価格により表示しております。

2.セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

ロ.受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

情報通信機器製造販売

20,618,888

127.9

15,361,291

133.0

ネットワーク工事保守

16,948,517

138.1

5,760,715

549.5

合計

37,567,405

132.3

21,122,007

167.6

 

ハ.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

情報通信機器製造販売(千円)

16,809,946

108.6

ネットワーク工事保守(千円)

12,236,246

96.9

合計

29,046,192

103.3

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

東京電力パワーグリッド株式会社

5,457,384

19.4

7,741,820

26.7

KDDI株式会社

4,205,320

15.0

4,905,946

16.9

三菱電機株式会社

2,974,747

10.6

1,960,217

6.7

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ.経営成績の分析

a. 売上高

 当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ9億28百万円増加し(3.3%増)、290億46百万円となりました。売上高が増加した主な要因は、情報通信機器製造販売において電力スマートメーター向け通信機器を中心としたIoT関連装置事業の売上が増加したことによります。

b. 営業利益

 当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ5億65百万円増益となり、14億84百万円の利益となりました。営業利益が増加した主な要因は、情報通信機器製造販売において、売上高増加に伴う利益の増加があったこと、開発リソースを第2世代スマートメーター関連機器開発等に重点シフトしたことによる開発費の抑制、原価率が改善したことによります。

 なお販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ1億72百万円減少し、42億83百万円となりました。

c. 経常利益

 営業利益の増益に伴い、当連結会計年度の経常利益は前連結会計年度に比べ5億89百万円増益となり、14億29百万円の利益となりました。

d. 親会社株主に帰属する当期純利益

 経常利益の増益に伴い、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ2億90百万円増益となり、10億49百万円の利益となりました。

 

ロ.財政状態の分析

a. 資産

 当連結会計年度末における資産の残高は、前連結会計年度末に比べ2億31百万円減少し236億49百万円となりました。これは主に、現金及び預金が10億1百万円増加、有形固定資産が3億54百万円増加、繰延税金資産が1億76百万円増加、売掛金が7億52百万円減少、電子記録債権が3億23百万円減少、原材料及び貯蔵品が4億92百万円減少したことによります。

 

b. 負債

 当連結会計年度末における負債の残高は、前連結会計年度末に比べ11億27百万円減少し147億61百万円となりました。これは主に、賞与引当金が4億27百万円増加、リース債務が2億4百万円増加、退職給付に係る負債が2億3百万円増加したものの、短期借入金が12億円減少、未払金が3億95百万円減少、未払消費税等が3億44百万円減少、流動負債その他が1億39百万円減少したことによります。

c. 純資産

 当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末に比べ8億95百万円増加し88億88百万円となりました。これは主に、退職給付に係る調整累計額が3億56百万円減少したものの、利益剰余金が親会社株主に帰属する当期純利益の計上により10億33百万円増加、非支配株主持分が1億72百万円増加したことによります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

イ.キャッシュ・フローの状況の分析等

a. キャッシュ・フローの分析

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末の28億73百万円から10億1百万円増加し、38億74百万円となりました。これは営業活動によるキャッシュ・フローでは、退職給付に係る負債の減少、未払消費税の減少、未払金の減少、利息の支払による資金の減少、法人税等の支払による資金の減少等がありましたが、税金等調整前当期純利益、減価償却費、賞与引当金、売上債権等により差引き27億78百万円の資金が増加し、投資活動によるキャッシュ・フローでは、固定資産の購入等により差引き4億93百万円の資金が減少、財務活動によるキャッシュ・フローでは、短期借入金の返済等により12億83百万円の資金が減少したことによります。

b. キャッシュ・フロー指標のトレンド

 当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。

 

2024年3月期

2025年3月期

自己資本比率 (%)

26.5

29.8

時価ベースの自己資本比率 (%)

10.3

15.8

キャッシュ・フロー対有利子負債比率 (年)

4.0

2.0

インタレスト・カバレッジ・レシオ (倍)

13.4

25.2

 (注)1.自己資本比率:自己資本/総資産

2.時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

3.キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

4.インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

5.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

6.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

7.キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

ロ.資本の財源及び資金の流動性

a. 資金需要の主な内容

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、材料費、労務費、製造経費及び外注費から構成される製品製造費用及び工事原価費用があります。

 その他に販売費及び一般管理費からなる営業費用があり、営業費用の主なものは、人件費及び販売活動費用であります。また、当社グループの研究開発費は営業費用の一部として計上されております。

 また、設備資金需要としましては、製品製造や品質向上のための設備投資として、有形及び無形の固定資産の購入があります。

b. 財務政策

 当社グループは、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金又は借入により資金調達することとしております。このうち借入による資金調達に関しましては、運転資金については短期借入で、設備投資等の長期資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

 なお、当連結会計年度末における短期借入金の残高は48億30百万円、長期借入金の残高は4億48百万円であります。

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。連結財務諸表の作成に当たっては、資産・負債の評価及び収益・費用の認識に関して、必要な見積り及び判断を行っております。これらの見積り及び判断には不確実性が伴うことから、実際の結果は見積り及び判断と異なる場合があります。

 

イ.繰延税金資産

 当社グループは、繰延税金資産について、実現可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上しております。評価性引当額の必要性を判断するに当たっては、将来の課税所得等の慎重な見積りを行い検討しますが、繰延税金資産の全部又は一部を将来実現できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の取崩額を費用として計上します。同様に、計上金額を上回る繰延税金資産を今後実現できると判断した場合、繰延税金資産への計上により当該判断を行った期間に利益を増加させることになります。

 

ロ.退職給付に係る負債

 当社グループは、確定給付企業年金制度、確定拠出年金制度及び退職一時金制度を採用しており、退職給付費用及び退職給付債務は数理計算に使用される前提条件に基づいて算出しております。その前提条件には、割引率、退職率、死亡率、昇給率及び年金資産の期待運用収益率等の重要な見積りが含まれております。

 実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件が変更された場合、その影響は数理計算上の差異として把握され、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。

 

ハ.工事損失引当金

 当社グループは、受注工事に係る将来の損失に備えるため、手持ち受注工事のうち損失の発生が見込まれ、かつ、その金額を合理的に見積もることができる工事について、損失見積り額を工事損失引当金として計上しておりますが、当初予想しえなかった見積りを超える追加原価等により損失が発生した場合、追加の引当が必要となる可能性があります。

 

ニ.固定資産の減損

 当社グループは、減損の兆候のある資産又は資産グループについて、回収可能価額に基づき減損の判定を行っております。固定資産の回収可能価額については、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しております。従って、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、減損損失が発生する可能性があります。

 

ホ.棚卸資産の評価

 当社グループは、棚卸資産は主として原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)により評価しており、正味売却価額が帳簿価額よりも低下している時には、帳簿価額を正味売却価額まで切下げております。また、入庫から一定期間を経過した棚卸資産については、期間の経過に応じて規則的に簿価を切下げております。さらに、想定した営業循環から外れて過剰に保有する棚卸資産についても、処分見込価額まで規則的に簿価を切下げております。

 棚卸資産の滞留の実績や需要予測の変化に応じて、滞留在庫や営業循環過程から外れた過剰在庫の識別を総合的に勘案して判断しておりますが、当該見積り及び当該仮定において見直しが必要となった場合は、棚卸資産の評価に重要な影響を与える可能性があります。

 

④ 経営上の目標の達成・進捗状況

 2023年6月30日提出の有価証券報告書の「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載の中期経営計画(2023年度~2025年度)の2年目である2024年度の実績は以下のとおりです。

 売上高については、主として情報通信機器製造販売において、電力スマートメーター向け通信機器を中心としたIoT関連装置事業の売上が増加した結果、初年度の売上目標を7.5%上回る結果となりました。

 営業利益については、情報通信機器製造販売において、売上高増加に伴う利益の増加があったこと、開発リソースを第2世代スマートメーター関連機器開発等に重点シフトしたことによる開発費の抑制、原価率が改善したことにより、年度目標を169.6%上回る結果となりました。

単位:百万円

 

2024年度計画

2024年度実績

連結売上高

27,000

29,046

連結営業利益

550

1,484

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発は主として当社が行っており、中長期を展望した基盤技術を担当する研究部門と、製品開発を担当する水沢製作所開発部門で実施しております。

 当期の研究開発費の総額は926,680千円であります。

 その主な内容としては、2025年度から導入が開始される、電力レジリエンス(災害時の復旧力)の強化、再生可能エネルギーの普及・脱炭素化、電力契約者の利益の向上を目的とした第2世代スマートメーター向けの通信システムの開発や、トラフィック増、省スペース・省電力化、ネットワークの信頼性強化を目指した光ネットワーク製品の開発を行いました。また上記以外では、5G通信を活用した製品の研究・開発を行いました。

 中長期視点としては、急峻な技術革新に追従するための要素技術研究への投資、AI活用による予測・分析技術等の習得、部材調達レジリエンス強靭化に向けた部材マルチソース化製品の施策等を行うことにより、近未来の事業化を目指した研究開発を推進してまいります。

 なお、当連結会計年度における研究開発費をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

情報通信機器製造販売

926,680

ネットワーク工事保守

合計

926,680

(注) 上記金額は、販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費のセグメント間取引の相殺消去後の数値であります。