第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

当連結会計年度における経済環境を顧みますと、景気は総じて緩やかな回復基調が続きました。地域別に見ますと、米国では個人消費の増加や雇用環境の改善を背景に回復が続きましたが、中南米においては減速傾向が続きました。欧州においては失業率の低下を背景に緩やかに回復し、中国では持ち直しの動きがみられました。日本は、企業の収益改善および個人消費の持ち直しや雇用環境改善により緩やかな回復基調が続きました。

このような状況の中、エプソンの主要市場につきましては、以下のとおりとなりました。

インクジェットプリンターの需要は、日本でのコンシューマー向け市場の縮小が継続し、北米・西欧でも縮小しました。一方で、他社の参入による認知度向上効果もあり、大容量インクタンクモデルに対する需要は堅調に拡大しました。大判インクジェットプリンターの需要は、中国および南米では景気減速の影響により低調となりましたが、北米・日本では堅調に推移しました。シリアルインパクトドットマトリクスプリンター(SIDM)の需要は、上期に中国の「営改増」施行による徴税市場での特需がありましたが、米州・欧州では縮小が継続しました。

プロジェクターの需要は、欧州での大型スポーツイベントによる需要増加がありましたが、南米での景気減速影響、北米リテール市場および欧州一部主要国での教育関係需要の低迷により低調に推移していましたが、下期にかけては若干回復の兆しも見えてきました。

電子デバイス製品の主要なアプリケーションの市場では、携帯電話の需要は従来型の減速が続いた一方、スマートフォンの需要は中国を中心とした新興国メーカーが成長したことで堅調に推移しました。デジタルカメラ市場の需要は低調でした。ウオッチの需要は、日本でのインバウンド需要の減速および中国・北米の需要減に加え、ウオッチムーブメントも市況悪化により需要が大幅に低下しました。産業用ロボットの需要は、米州・中国で堅調に推移し、日本でも自動車産業向けが堅調に推移しました。

以上のような状況のもとで、エプソンは、『「省・小・精の価値」で、人やモノと情報がつながる新しい時代を創造する』と定めた長期ビジョン「Epson 25」の実現に向け、当連結会計年度より「Epson 25 第1期中期経営計画(2016年度~2018年度)」(以下「第1期中期計画」という。)を開始いたしました。第1期中期計画では、これまで実現してきた戦略をベースに、「転換と開拓」の成果を継続させることと同時に、製品開発の仕込みや必要な投資を積極的に行い、強固な基盤を整備していきます。

当連結会計年度の米ドルおよびユーロの平均為替レートはそれぞれ108.38円および118.79円と前期に比べ、米ドルでは10%の円高、ユーロでは10%の円高で推移しました。また、米ドル、ユーロ以外の為替レートも円高で推移し、特に人民元、英ポンド、一部の中南米通貨については景気減速などの影響により、米ドルやユーロを超える円高で推移しました。

以上の結果、当連結会計年度の業績につきましては、売上収益は1兆248億円(前期比6.2%減)、事業利益(※)は658億円(同22.5%減)、営業利益は678億円(同27.8%減)、税引前利益は674億円(同26.3%減)、当期利益は484億円(同5.1%増)となりました。

 

※ 事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。

 

報告セグメントごとの業績は、次のとおりです。

 

(プリンティングソリューションズ事業セグメント)

プリンター事業の売上収益は減少となりました。製品別の内容は以下のとおりです。

インクジェットプリンターは、大容量インクタンクモデルが他社参入による市場認知度向上効果もあり、大幅に販売数量が増加したことで売上の拡大が継続しました。一方、インクカートリッジモデルが市場規模縮小の中で家庭向けを中心に販売数量が減少したことおよび為替影響により減収となり、全体では売上減少となりました。また消耗品は、販売数量が減少したものの、単価の高いオフィス向け消耗品の比率が高まり、商品構成の改善が進んでいますが、為替による減収影響により売上減少となりました。

ページプリンターは、高付加価値製品中心へ販売を絞り込んだことにより、本体販売の減少に加えて消耗品販売も落ち込んだ結果、売上減少となりました。

SIDMは、上期に中国の徴税市場での特需がありましたが、為替による減収影響により売上減少となりました。

プロフェッショナルプリンティング事業の売上収益は減少となりました。製品別の内容は以下のとおりです。

大判インクジェットプリンターは、成長市場であるサイネージ分野では新製品が好調だったことに加え、テキスタイル分野でも需要の高まりから堅調に推移し売上が拡大しましたが、既存市場であるフォト・グラフィックス分野で販売数量減少となり、全体では為替による減収影響もあり売上減少となりました。また消耗品についても、本体の販売数量減少、為替による減収影響により売上減少となりました。

POSシステム関連製品は、欧州で低価格モデルが堅調に推移したものの、前期のような日本・北米での大型案件が発生しなかったことによる販売数量減少および中国での販売数量減少、為替による減収影響もあり、売上減少となりました。

プリンティングソリューションズ事業セグメントのセグメント利益につきましては、インクジェットプリンターの大容量インクタンクモデルの売上増加により利益増加となりましたが、大判インクジェットプリンターの売上減少、中期的な成長のための投資と費用の戦略的な投下および為替影響などにより減益となりました。

以上の結果、プリンティングソリューションズ事業セグメントの売上収益は6,866億円(前期比6.8%減)、セグメント利益は841億円(同19.7%減)となりました。

 

(ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)

ビジュアルコミュニケーション事業の売上収益は減少となりました。

液晶プロジェクターは、欧州一部主要国での教育市場縮小および北米・南米での市場縮小が継続する中、欧州での大型スポーツイベントにともなう中普及価格帯モデルの需要増加、アジア地域での拡販および高光束分野での新製品販売開始にともなう販売数量増加により売上増加となりましたが、為替による減収影響により、全体では売上減少となりました。

ビジュアルコミュニケーション事業セグメントのセグメント利益につきましては、為替による減益影響がありましたが、販売数量増加や高光束分野拡大による商品構成の改善が進んだことにより増益となりました。

以上の結果、ビジュアルコミュニケーション事業セグメントの売上収益は1,796億円(前期比2.4%減)、セグメント利益は161億円(同3.5%増)となりました。

 

(ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント)

ウエアラブル機器事業の売上収益は、ウオッチでの国内市場向けにおいて新製品を発売したことによる平均販売単価上昇効果がありましたが、インバウンド需要の減速および海外市場向けが低調に推移したことにより数量が減少となったことに加え、ウオッチムーブメントでの市況悪化の影響、為替による減収影響により、全体では売上減少となりました。

ロボティクスソリューションズ事業の売上収益は増加となりました。為替による減収影響がありましたが、産業用ロボットが中国を中心としたロボット需要を取り込み売上増加となったことに加え、ICハンドラーが中国でのスマートフォン向けの販売が好調だったことにより売上増加となりました。

マイクロデバイス事業の売上収益は減少となりました。水晶デバイスは、携帯電話などのパーソナル機器向けの数量減および為替による減収影響により売上減少となりました。半導体は、車載用大口顧客向けの数量減少および為替による減収影響がありましたが、ファンドリー需要の増加による販売数量の増加により、売上増加となりました。

表面処理加工事業は新規顧客開拓の進展があり、また金属粉末事業はモバイル機器向け高機能材料粉末が堅調に推移しましたが、為替の減収影響により売上減少となりました。

ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントのセグメント利益につきましては、マイクロデバイス事業、ウエアラブル機器事業の売上減少により減益となりました。

以上の結果、ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントの売上収益は1,585億円(前期比7.0%減)、セグメント利益は78億円(同20.4%減)となりました。

 

(その他)

その他の売上収益は15億円(前期比7.4%増)、セグメント損失は4億円(前期は5億円のセグメント損失)となりました。

 

(調整額)

報告セグメントに帰属しない基礎研究に関する研究開発費や新規事業・本社機能に係る費用の計上などにより、報告セグメントの利益の合計額との調整額が△417億円(前期の調整額は△446億円)となりました。

 

(2)キャッシュ・フロー

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、968億円の収入(前期は1,130億円の収入)となりました。これは当期利益484億円に加え、減価償却費及び償却費の計上436億円などの増加要因があったことによります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産および無形資産の取得による支出775億円などがあったことにより、757億円の支出(前期は515億円の支出)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行による収入497億円があった一方で、短期借入金の純減143億円、社債の償還による支出300億円や配当金の支払額212億円および自己株式の取得による支出103億円などがあったことにより、266億円の支出(前期は671億円の支出)となりました。

以上の結果、当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は、2,217億円(前期は2,304億円)となりました。

 

(3)並行開示情報

IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに関する項目との差異に関する事項

(退職後給付に係る費用)

エプソンは、日本基準の下で、発生した数理計算上の差異および過去勤務費用を一定の期間で償却しておりました。IFRSでは、確定給付制度の再測定は、発生した期においてその他の包括利益として一括認識しており、直ちに利益剰余金に振り替えております。過去勤務費用は、制度改訂または縮小が発生した時あるいは関連するリストラクチャリング費用または解雇給付を認識した時のいずれか早い期において純損益として認識しております。

この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、前連結会計年度の売上原価、販売費及び一般管理費および金融費用は38億円増加し、当連結会計年度の売上原価、販売費及び一般管理費および金融費用は4億円増加しております。

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1)生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2016年4月1日

至 2017年3月31日)

前期比(%)

プリンティングソリューションズ事業(百万円)

679,644

96.4

ビジュアルコミュニケーション事業(百万円)

175,504

105.3

ウエアラブル・産業プロダクツ事業(百万円)

147,542

90.0

 報告セグメント計(百万円)

1,002,692

96.8

その他(百万円)

595

117.8

合計(百万円)

1,003,287

96.8

(注)1.上記金額は、販売価格により示しており、セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

3.上記金額には、外注製品仕入高等が含まれております。

 

(2)受注実績

 エプソンでは、製品の性質上、原則として見込生産を行っているため、該当事項はありません。

(3)販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2016年4月1日

至 2017年3月31日)

前期比(%)

プリンティングソリューションズ事業(百万円)

686,353

93.3

ビジュアルコミュニケーション事業(百万円)

179,642

97.6

ウエアラブル・産業プロダクツ事業(百万円)

150,674

91.7

 報告セグメント計(百万円)

1,016,671

93.8

その他(百万円)

787

104.5

合計(百万円)

1,017,458

93.8

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

3.総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。

3【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてエプソンが判断したものです。

 

(1)経営の基本方針

エプソンは、創業以来培ってきた強みである「省・小・精の技術」を基盤として、自らの常識やビジョンを超えて果敢に挑戦しイノベーションを生むことにより、画期的なお客様価値を継続的に創造し、より良い社会の実現に「なくてはならない会社」として中心的な役割を果たすことを目指しています。

そして、以下の経営理念およびグローバルタグラインのもと、お客様の期待を超える価値の創出に向けて、全社員が価値観を共有のうえ総合力を発揮し自律的に行動することにより、目指す姿の実現に努めてまいります。

 

経営理念

お客様を大切に、地球を友に、
個性を尊重し、総合力を発揮して
世界の人々に信頼され、社会とともに発展する
開かれた、なくてはならない会社でありたい。
そして社員が自信を持ち、
常に創造し挑戦していることを誇りとしたい。

 

EXCEED YOUR VISION

私たちエプソン社員は、

常に自らの常識やビジョンを超えて挑戦し、

お客様に驚きや感動をもたらす

成果を生み出します。

 

(2)中長期的な経営戦略および対処すべき課題

エプソンは、2016年度から2025年度の10年間において目指す姿を示した長期ビジョン「Epson 25」およびこの実現に向けた2016年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「Epson 25 第1期中期経営計画(2016年度~2018年度)」を2016年3月に制定しました。

エプソンを取り巻く経営環境については、現状、世界景気は総じて緩やかな回復基調にあるものの、地政学的リスクの発生や為替変動などによる各国経済および消費・投資動向などへの影響も予想され、引き続き注視が必要であると考えられます。

このような環境のもと、今後、以下の諸施策を着実に進めることにより、持続的成長および中長期的な企業価値の向上の実現に取り組んでまいります。

 

① 長期ビジョン「Epson 25」

エプソンは、事業環境の変化やメガトレンドなどを踏まえ、長期ビジョン「Epson 25」(以下「Epson 25」という。)のビジョンステートメントとして、『「省・小・精の価値」で、人やモノと情報がつながる新しい時代を創造する』と定めました。

このうち、「省・小・精の価値」とは、独自の強みである「省・小・精の技術」に基づいて生み出し、エプソンがお客様にご提供する価値であり、「スマート」「環境」「パフォーマンス」に分けられます。

・「スマート」は、「省・小・精の技術」で先鋭化した製品を核に、ソフトウェア技術を極め、いつでもどこでも簡単・便利で安心して製品を使える世界を創ります。

・「環境」は、革新的な「省・小・精の技術」で、製品・サービスのライフサイクルにわたる環境負荷低減をお客様価値として提供し、持続的な発展をもたらします。

・「パフォーマンス」は、「省・小・精の技術」を極めて、高いパフォーマンスの生産性、正確さ、創造性をお客様に提供することで、より高い、新たな価値を創造します。

「人やモノと情報がつながる」とは、今後、情報通信技術の進展により、あらゆる情報がインターネット上でつながるようになることで、サイバー空間はとどまることなく増大していくなか、エプソンは、リアル世界で実体のある究極のものづくり企業として、「省・小・精の技術」で先鋭化した製品を求心力に、このサイバー空間におけるIT企業と協業し、人やモノと情報をつないで、お客様に「省・小・精の価値」をより高めてご提供するものです。

「新しい時代を創造する」とは、エプソンは、人々を単純作業や時間とエネルギーの浪費から解放し、お客様がクリエイティブな知の生産性を高め、健康で安心な生活を楽しんだりすることのできる、持続可能で豊かな社会を創り出していくものです。

今後、このビジョンに基づき、以下の「インクジェットイノベーション」「ビジュアルイノベーション」「ウエアラブルイノベーション」「ロボティクスイノベーション」という4つのイノベーション領域において、「スマート」「環境」「パフォーマンス」という価値をお客様に提供し、各事業領域のビジョンを実現することを通じて4つのイノベーションを起こしていきます。また、各事業を横串にする「人財」「技術」「生産」「販売」「環境」の事業基盤を情報技術の活用を含め一層強化し、Epson 25の実現を支えます。

これにより、Epson 25における2025年度の業績目標(為替レート前提:1米ドル 115円・1ユーロ 125円)として、売上収益:1兆7,000億円、事業利益:2,000億円、ROS(事業利益(※)/売上収益):12%、ROE(当期利益/親会社所有者帰属持分):15%を目指してまいります。

 

※ 事業利益とは、国際会計基準(IFRS)の適用にあたり、エプソンが独自に開示する利益であり、日本基準の営業利益とほぼ同じ概念の利益です。

 

(各事業領域のビジョン)

<プリンティング領域〔インクジェットイノベーション〕>

独自のマイクロピエゾ技術を磨き上げ、より高生産性領域へ飛躍します。また、高い環境性能と、循環型の印刷環境をお客様へ提供します。

 

<ビジュアルコミュニケーション領域〔ビジュアルイノベーション〕>

独自のマイクロディスプレイ技術とプロジェクション技術を極め、ビジネスと生活のあらゆる場面で感動の映像体験と快適なビジュアルコミュニケーション環境を創造し続けます。

 

<ウエアラブル領域〔ウエアラブルイノベーション〕>

ウオッチのDNAを基盤に、正確な時間とセンシングに磨きをかけ、個性あふれる製品群を創り出し、さまざまなお客様に着ける・使う喜びを提供します。

 

<ロボティクス領域〔ロボティクスイノベーション〕>

「省・小・精の技術」に加え、センシングとスマートを融合させたコア技術を製造領域で磨き上げ、それらの技術を広げて、あらゆる領域でロボットが人々を支える未来を実現します。

 

<マイクロデバイス領域〔4つのイノベーションを支える〕>

エプソン独自のデバイス技術をコアに、水晶の「精」を極めたタイミングソリューション・センシングソリューションと、半導体の「省」を極めた省電力ソリューションにより、通信、電力、交通、製造がスマート化する社会をけん引するとともに、エプソン完成品の価値創造に貢献します。

 

② 「Epson 25 第1期中期経営計画(2016年度~2018年度)」

Epson 25の実現に向けた第1段階である「Epson 25 第1期中期経営計画(2016年度~2018年度)」(以下「第1期中期計画」という。)では、これまで実行してきた戦略をベースに、「転換と開拓」の成果を継続させることと同時に、製品開発の仕込みや必要な投資を積極的に行い、強固な基盤を整備していきます。

このための基本方針として、前中期計画において「転換と開拓」を実現した事業領域は、その優位性をさらに強化し成長を継続するとともに、「転換と開拓」が遅れている事業領域は、すみやかに課題に対応し成長軌道を確立します。また、Epson 25において目指す「スマート、環境、パフォーマンス」のお客様価値を、製品やサービスの形に創り上げ、成長を確実なものとします。加えて、Epson 25を実現するために、短期的な利益成長を勘案しつつも、必要な経営資源はタイムリーかつ着実に投下するとともに、新しいビジネスモデルを早期に確立し、お客様にお届けする仕組みの充実を図ります。そして、以下の各事業の取り組みや事業基盤強化などにより、将来の成長に向けた事業基盤を創り上げていきます。

これにより、第1期中期計画の最終年度である2018年度の業績目標(為替レート前提:1米ドル 115円・1ユーロ 125円)として、売上収益:1兆2,000億円、事業利益:960億円、ROS:8%、ROE:継続的に10%以上を目指してまいります。

 

(各事業の取り組み)

・プリンター事業では、製品の魅力度向上でホーム市場での競争優位を確立するとともに、ラインヘッド搭載機種でオフィス市場開拓を軌道に乗せることを目指します。

・プロフェッショナルプリンティング事業では、ハードウェアで競争優位を確立するとともに、サービスなどの組織基盤を整備し、新規領域での確かな成長を実現します。

・ビジュアルコミュニケーション事業では、プロジェクター市場でのプレゼンスをさらに強化するとともに、レーザー光源により新市場での飛躍の道筋をつけることに取り組みます。

・ウエアラブル機器事業では、ウオッチの事業基盤を磨き上げ、センシング技術を融合し個性豊かな製品群を創出し続け、主柱事業としての礎を築きます。

・ロボティクスソリューションズ事業では、エプソンが保有する技術基盤をベースに、成長に向けた骨格となる事業基盤を創り上げます。

・マイクロデバイス事業では、水晶は競争力の強化により、安定的な事業基盤を創るとともに、半導体は新たなコア技術・コアデバイスを創出します。

 

(事業基盤強化)

・技術では、「省・小・精の技術」を磨き、アクチュエーター・光制御・センサー技術を極め、情報通信技術を取り込むことで、新たなお客様価値を創出し続けます。

・生産では、他社が簡単に真似できない製品を、高い競争力のあるコストと品質で、タイムリーに提供し続けます。

・販売では、オフィス・産業領域を強化してエリアに最適な販売体制を整備し、マーケットインの考え方で企画品質を向上させ、ブランドイメージを変革します。

・環境では、製品・サービスのライフサイクル、サプライチェーン全般にわたる環境負荷低減への取り組みを拡大します。

 

なお、2016年度においては、使用済みの紙から新たな紙を生み出す「ドライファイバーテクノロジー」により、企業などの施設内での機密情報の抹消によるセキュリティー向上や、環境負荷の低減を目指した世界初(※)の乾式オフィス製紙機「PaperLab(ペーパーラボ)」を発売したほか、高速・高画質印刷・低消費電力を実現し、オフィスを革新する「高速ラインインクジェット複合機/プリンター」を発表しました。また、市場拡大が見込まれる高光束分野向けにレーザー光源搭載のプロジェクターを発売するとともに、ウエアラブル機器事業の成長加速に向けた事業再編に着手したほか、生産現場へのロボット導入のハードルをさらに下げる新製品を投入しました。

加えて、今後の成長を実現するための事業基盤づくりとして、生産ラインでの省人化・自動化および新工場の稼働や建設準備も着実に進めることができました。

※ 2016年11月時点、乾式オフィス製紙機において世界初(エプソン調べ)。

 

(3)会社の支配に関する基本方針

当社は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を次のとおり定めております。

 

①基本方針の概要

当社は、当社の株主は市場での自由な取引を通じて決まるものと考えます。したがって、当社の財務および事業の方針の決定を支配することが可能な数の株式を取得する買付提案に応じるか否かの判断は、最終的には株主の皆様のご意思に委ねられるべきものと考えます。

当社は、企業価値や株主共同の利益を確保・向上させていくためには、役職員が一体となって価値創造に向けて取り組むことや、創業以来の風土を大切にしながら創造と挑戦を続けていくこと、お客様の信頼を維持・獲得していくことが不可欠と考えております。

しかし、株式の大量取得行為のなかには、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保し、向上させることにならないものも存在します。当社は、このような不適切な株式の大量取得行為を行う者は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者として適当ではなく、このような者による大量取得行為に対しては必要かつ相当な手段をとることにより、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保する必要があると考えます。

 

②基本方針の実現に資する取組みの概要

1)基本方針の実現に資する特別な取組み

当社は、2016年度から2025年度の10年間において目指す姿を示した長期ビジョン「Epson 25」(以下「Epson 25」という。)と、当該ビジョンの実現に向けた2016年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「Epson 25 第1期中期経営計画(2016年度~2018年度)」(以下「第1期中期計画」という。)を2016年3月に制定いたしました。

第1期中期計画では、これまで実現してきた戦略をベースに、「転換と開拓」の成果を継続させることと同時に、製品開発の仕込みや必要な投資を積極的に行い、強固な基盤を整備してまいります。

 

2)基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み

当社は、当社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させることを目的として、2014年6月の定時株主総会において更新した当社株式の大量取得行為に関する対応策について、2017年6月28日の定時株主総会において、旧対応策の適正性、透明性を一層高めるための修正をしたうえで更新することについて株主の皆様のご承認をいただきました(以下、更新後のプランを「本プラン」という。)。

本プランは、当社株券等に対する大量買付が行われた際に、当該買付に応じるべきか否かを株主の皆様が判断し、あるいは当社取締役会が株主の皆様に代替案を提案するために必要な時間および情報を確保するとともに、株主の皆様のために、大量買付者と協議交渉などを行うことを可能とすることを目的としております。具体的には、当社の発行済株式総数の20%以上となる株券等の買付または公開買付けを実施しようとする買付者に、意向表明書ならびに株主の皆様の判断および特別委員会の評価・検討などのため必要かつ十分な情報を事前に当社取締役会へ提出すること、本プランに定める手続きを遵守することを求めております。そのうえで、当該買付行為が、本プランに従わない場合や、当社の企業価値・株主共同の利益を侵害する買付であると判断された場合は、対抗措置を発動するプランとなっております。

一方、当社取締役会は、対抗措置の発動について、取締役会の恣意的判断を排除するため、独立性の高い社外取締役のみから構成される特別委員会の判断を経ることとしております。特別委員会は、買付内容の検討、当社取締役会への代替案などの情報の請求、株主の皆様への情報開示、買付者との交渉などを行います。特別委員会は、対抗措置発動の要否を当社取締役会に勧告し、当社取締役会はその勧告に従い(ただし、取締役の善管注意義務に違反するおそれがあると判断する場合を除く。)、対抗措置の発動または不発動に関する決議を速やかに行うこととしております。

 

③具体的取組みに対する当社取締役会の判断およびその理由

上記② 1)に記載した取組みは、当社の企業価値・株主共同の利益を継続的かつ持続的に向上させるための具体的方策として策定されたものであり、基本方針の実現に資するものです。

また、本プランは、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保・向上させる目的をもって導入(更新)されたものであり、上記①に記載した基本方針に沿うものです。特に、本プランは、株主総会において株主の皆様のご承認を得たうえで導入(更新)されたものであること、その内容として合理的な客観的発動要件が設定されていること、当社経営陣から独立性の高い社外取締役のみから構成される特別委員会が設置されており、対抗措置の発動に際しては必ず特別委員会の判断を経ることが必要とされていること、特別委員会は当社の費用で第三者専門家の助言を得ることができるとされていること、有効期間が導入(更新)から約3年と定められたうえ、取締役会によりいつでも廃止できるとされていることなどにより、その適正性・客観性が担保されており、高度の合理性を有し、企業価値ひいては株主共同の利益に資するものであって、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。

 

4【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。

なお、エプソンは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避および発生した場合の対応に努める方針です。

また、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてエプソンが判断したものです。

 

(1)プリンターの売上変動による業績への影響について

2017年3月期におけるプリンティングソリューションズ事業セグメントの売上収益6,866億円は、エプソンの連結売上収益1兆248億円の7割弱を占めており、そのなかでもホーム市場向けのほか、オフィス市場向けや商業・産業向けのインクジェットプリンターを中心とする各種プリンターと、これらの消耗品が売上収益および利益の多くを占めています。したがって、これらのプリンターおよび消耗品の売上収益が変動した場合には、エプソンの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)他社との競合について

(販売における影響)

エプソンの主力製品であるプリンターやプロジェクターをはじめとする製品全般について、他社との競合の激化により、販売価格の低下や低価格品への需要のシフトおよび販売数量の減少などの影響を受けることがあります。

エプソンでは、これらの状況に対して、各市場での顧客ニーズに対応した製品や高付加価値製品およびサービスの提供に取り組むとともに、設計・開発の効率化やコストダウンなどにより製造コストの削減に努め、かかる販売価格の低下や低価格品への需要のシフトおよび販売数量の減少などに対処していく方針です。

しかしながら、今後、これらの施策が成功する保証はなく、エプソンがかかる販売価格の低下などに効果的に対応できない場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(テクノロジーにおける影響)

エプソンの販売する一部の製品については、他社のテクノロジーと競合しており、例えば、次のような事例があります。

・インクジェットプリンターにおけるエプソンのマイクロピエゾ方式(※1)と他社のサーマルインクジェット方式(※2)との競合

・プロジェクターにおけるエプソンの3LCD(三板透過型液晶)方式(※3)と他社のDLP方式(※4)などとの競合ならびにエプソンのプロジェクターと他社のFPD(フラットパネルディスプレイ)(※5)との競合

エプソンは、これらのエプソンの製品において採用している方式について、現時点では競合他社の方式に対する技術的な競争優位性があると考えていますが、消費者によるエプソンの技術に対する評価が変化した場合や、エプソンの技術と競合するほかの革新的な技術が出現した場合などには、エプソンの技術的な競争優位性が損なわれ、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

※1 マイクロピエゾ方式とは、ピエゾと呼ぶ圧電素子を伸縮させて、インク滴をノズルから噴射させるエプソン独自のインクジェット技術をいいます。

※2 サーマルインクジェット方式とは、インクに熱を加えることで発生する気泡の圧力により、インク滴を噴射する技術をいいます。なお、バブルジェット方式といわれることもあります。

※3 3LCD(三板透過型液晶)方式とは、ライトバルブに高温ポリシリコンTFT液晶パネルを用いる方式であり、光源から出射された光を特殊な鏡を使って赤・緑・青の3原色に分離し、各色専用のLCDで映像を作った後、無駄なく再合成し投影します。

※4 DLP方式とは、表示デバイスにDMD(Digital Micromirror Device)を用いる方式です。DMDとは、ミクロンサイズの微極小な鏡が多数並んだ半導体で、1つの鏡が1画素に対応し光源からの光を反射することで映像を投影します。なお、DLPおよびDMDは、米国テキサス・インスツルメンツ社の登録商標です。

※5 FPDとは、薄型・平坦な画面の薄型映像表示装置の総称です。

(新たな競合の発生)

エプソンは、現在、高度な技術力、豊富な資金力または強固な財務基盤を有する大企業あるいは市場における認知度、供給力または価格競争力を有する国内外の企業との間で競合関係にありますが、これらに加え、将来、ほかの企業が、ブランド力、技術力、資金調達力、マーケティング力、販売力および低コストの生産能力などを生かしてエプソンの事業領域へ新規参入してくる可能性もあります。

 

(3)経営環境などの急激な変化について

エプソンは、現在、「インクジェットイノベーション」「ビジュアルイノベーション」「ウエアラブルイノベーション」「ロボティクスイノベーション」という4つのイノベーション領域において、「スマート」「環境」「パフォーマンス」という価値をお客様に提供し、各事業領域のビジョンを実現することを通じて4つのイノベーションを起こすことに取り組んでいます。この実現に向けて、エプソンでは、長期ビジョンや中期的な経営計画などに基づく諸施策を展開していますが、技術的な競争優位性を確立することが競争力を高めるために大変重要な要素であると考えており、創業以来培ってきたエプソンの強みである「省・小・精の技術」を源泉とする「マイクロピエゾ」「マイクロディスプレイ」「センシング」「ロボティクス」の独自のコア技術を徹底的に極めるとともに、これらをプラットフォームとして融合することにより、顧客ニーズに対応した製品の開発・製造・販売およびサービスの提供を行っています。

しかしながら、エプソンが経営資源を集中しているこれらの事業領域における製品の属する市場は、一般的に技術革新の速度が速いとともに製品ライフサイクルが短く、また、世界景気の変動にともなうエプソンの主要市場における需要・投資動向が、エプソンの製品の販売に影響を及ぼす可能性があるほか、現在推進している中期経営計画や事業戦略およびこれらで定められた各種の施策が必ずしも実現または成功する保証はありません。

エプソンでは、各市場や顧客のニーズの把握に努め、製品市場予測による中・長期的な研究開発や投資を行うほか、開発・設計のプラットフォーム化などにより、既存製品から新製品への迅速かつ円滑な移行などにも取り組んでいく方針です。

しかしながら、今後、市場でのニーズや技術革新の変化に適切に対応できない場合、他社との競争が激化した場合、景気後退などにより需要が回復しない場合および主要市場における急激な需要変動に適切に対応できない場合などには、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)第三者によるインクジェットプリンター用消耗品の販売について

インクジェットプリンターの主な消耗品であるインクカートリッジなどは、エプソンの売上収益および利益にとって相当重要なものとなっています。インクカートリッジなどのインクジェットプリンター用消耗品については、第三者によりエプソンのプリンター本体で使用することができる代替品が供給されています。これらの第三者からの代替品は、一般的にエプソンの純正品よりも廉価で販売されており、また、先進国市場と比較して新興国市場においてより流通している状況にあります。

エプソンは、こうした第三者によるインクジェットプリンター用消耗品の販売について、純正品としての高い品質の訴求のほか、大容量インクタンクを搭載したモデルの販売など、各市場における顧客ニーズに的確に対応したインクジェットプリンターを提供し、顧客の利便性をさらに高めることにより、引き続きお客様価値の実現を図っていく方針です。また、エプソンが保有するインクカートリッジに係る特許権および商標権の侵害に対しては、適宜、法的措置を講じていく方針です。

しかしながら、これらの施策が必ずしも有効である保証はなく、将来において第三者による代替品の販売が拡大し、純正品のシェア低下にともなう販売数量の減少や、これに対応するための販売価格の引下げなどにより、インクカートリッジの売上収益および利益が減少した場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)海外での事業展開について

エプソンは、グローバルに事業を展開しており、2017年3月期の連結売上収益のうち約4分の3は海外における売上収益が占めています。エプソンは、中国、インドネシア、シンガポール、マレーシアおよびフィリピンなどのアジア地域をはじめ、アメリカやイギリスなどにも生産拠点を有し、販売会社も世界各地域に設立しています。また、2017年3月末における海外従業員数はエプソンの全従業員数の7割強を占めています。

エプソンでは、こうしたグローバルな事業展開は地域ごとの市場ニーズを的確にとらえたマーケティング活動を可能とし、また、製造コストの削減およびリードタイムの短縮によるコスト競争力の確保など、事業上の多くのメリットがあると考えています。一方で、海外における製造・販売に関しては、各国政府の製造・販売に係る諸法令・規制、社会・政治および経済状況の変化、輸送の遅延、電力・通信などのインフラの障害、為替制限、熟練労働力の不足、地域的な労働環境の変化、各国における税制改正および税務当局による税務執行の不確実性、保護貿易諸規制、各種地政学的リスク、そのほかエプソンの製品の輸出入に対する諸法令・規制など、海外事業展開に不可避のリスクがあります。

 

(6)特定の仕入先からの部品などの調達について

エプソンは、第三者から一部の部品などを調達していますが、一般的に長期仕入契約を締結することなく継続的な取引関係を維持しています。また、エプソンは、部品などに関して複数社からの調達を原則としていますが、特定の部品などについては、他社からの代替調達が困難であるため、1社のみからの調達となる場合があります。エプソンでは、品質の維持・改善やコスト低減活動などに調達先と協同で取り組むことなどにより、安定的かつ効率的な調達活動を展開していく方針ですが、仮にこれらの調達先からの供給の不足や供給された部品などの品質不良などにより、製造・販売活動に支障を来たした場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)品質問題について

エプソンの製品保証の有無および内容は顧客との個別の契約により異なります。エプソンの製品に不良品または規格に適合しないものがあった場合には、エプソンは当該製品の無償での交換または修理など、不良品を補償するコストを負担し、また、当該製品が人的被害または物的損害を生じさせた場合には、製造物責任などの責任を負う可能性があります。

このほか、エプソンの製品の性能に関し適切な表示または説明がなされなかったことを理由として、顧客などに対し責任を負う場合や、改良のためのコストが発生する可能性があります。さらに、エプソンの製品にこのような品質問題が発生した場合には、エプソンの製品への信頼性を損ない、顧客の喪失または当該製品への需要の減少などにより、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)知的財産権について

エプソンにとって、特許権およびそのほかの知的財産権は競争力維持のために非常に重要です。エプソンは、自らが必要とする多くの技術を自社開発してきており、それを国内外において特許権、商標権およびそのほかの知的財産権として、あるいは他社と契約を締結することにより、製品および技術上の知的財産権を設定し保持しています。また、知的財産権の管理業務に人員を重点的に配置し、知的財産権の強化を図っています。

しかしながら、次に想定されるような知的財産権に関する問題が発生した場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

・エプソンが保有する知的財産権に対して異議申立や無効請求などがなされる可能性、その結果、当該知的財産権が無効と認められる可能性

・第三者間での合併または買収の結果、従来、エプソンがライセンスを付与していない第三者がライセンスを保有し、その結果、エプソンが知的財産権の競争優位性を失う可能性

・第三者との合併または買収の結果、従来、エプソンの事業に課せられなかった新たな制約が課せられる可能性およびこれらを解決するために支出を強いられる可能性

・エプソンが保有する知的財産権が競争優位性をもたらさない、またはその知的財産権を有効に行使できない可能性

・エプソンまたはその顧客が第三者から知的財産権の侵害を主張され、その解決のために多くの時間とコストを費やし、または経営資源などの集中が妨げられることになる可能性

・第三者からの侵害の主張が認められた場合に多額の賠償金やロイヤリティの支払い、該当技術の使用差し止めなどの損害が発生する可能性

・エプソンの従業員などにより発明などに対する報酬に関する訴訟が提起され、その解決のために多くの時間とコストを強いられる可能性、その結果、多額の報酬の支払いが決定される可能性

 

(9)環境問題について

エプソンは、国内外において製造過程で発生する廃棄物および大気中への排出物などについて、さまざまな環境規制を受けています。さらに、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)にて採択されたパリ協定により、世界的な気候変動への対応に関心が高まるなか、企業としてもより高い削減目標を掲げて取り組む必要性が増しています。

かかる状況のもと、エプソンは、CO2排出削減を含む長期的な環境負荷低減を示した「環境ビジョン2050」および中期施策に基づき、環境負荷を低減した製品の開発・製造、使用エネルギー量の削減、使用済み製品の回収・リサイクルの推進、国際的な化学物質規制(主に欧州のRoHS指令やREACH規則)への対応および環境管理システムの改善など、多くの側面から環境保全活動に取り組んでいます。

こうした活動の結果、エプソンの2016年度のCO2排出量は59万トンとなり、「環境ビジョン2050」の基準年度である2006年度比で38%削減となりました。

エプソンでは、これまで重大な環境問題が発生したことはありませんが、将来において環境問題が発生し、損害の賠償や浄化などの費用負担、罰金または生産中止などの影響を受ける可能性、あるいは新しい規制が施行され多額の費用負担が必要となる可能性があり、このような事態が実現した場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)人材の確保について

エプソンの高度な新技術・新製品の開発・製造には、国内外における優秀な人材の確保が重要ですが、これらの人材の獲得競争は激しいものとなっています。エプソンは、役割に基づいた処遇制度の導入や現地人材の積極的な登用などにより、優秀な人材の確保に努めていますが、仮にこれらの人材を十分に採用または雇用し続けることができない場合や、技術などの継承が適切にできない場合には、エプソンの事業計画の遂行に影響を及ぼす可能性があります。

(11)為替変動について

エプソンの売上収益の相当部分は、米ドルおよびユーロなどの外貨建てとなっています。エプソンは、海外調達の拡大および生産拠点の海外移転などを進めたことにより、現状、米ドル建ての費用は米ドル建ての売上収益を上回る状況となっていますが、一方でユーロ建ての売上収益は依然としてユーロ建ての費用よりもかなり多い状況にあります。また、これら以外の外国通貨についても、全般的に売上収益が費用をかなり上回っています。エプソンは、為替変動リスクをヘッジするために為替予約取引などを行っていますが、米ドル、ユーロおよびこれら以外の外国通貨の日本円に対する為替変動は、エプソンの財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)年金制度について

エプソンの設けている確定給付型の制度として、確定給付企業年金制度および退職一時金制度があります。

エプソンは、確定給付型の退職年金制度について、年金資産の運用収益率の低下や受給権者の増加といった状況を踏まえ、今後の環境変化に適応するとともに、将来にわたり安定的に維持運営することを目的として2014年4月に制度改定を実施しましたが、年金資産の運用成績の変動および退職給付債務の数理計算の基礎となる割引率の見積数値の変動などが発生した場合には、エプソンの財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)独占禁止法令に基づく手続について

エプソンは、グローバルに事業を展開しており、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律など、国内外の独占禁止法令に基づく手続の対象となることがあります。海外の関係当局は、特定の業界などを対象に調査または情報収集を行うことがあり、その一環としてエプソンも市場状況および販売方法一般に関する調査などを受けることがあります。これらの調査・手続が実施された場合や関連法規の違反があった場合には、エプソンの販売活動に支障が生じ、またはエプソンの社会的信用を損なうこと、もしくは多額の制裁金が課されることなどにより、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社は、現在、液晶ディスプレイの価格カルテル嫌疑に関し、一部の競争法関係当局による調査を受けていますが、現時点においてかかる調査の結果および終結の時期を予測することは困難です。

 

(14)重要な訴訟について

エプソンは、プリンティングソリューションズ事業、ビジュアルコミュニケーション事業およびウエアラブル・産業プロダクツ事業などに係る各製品の開発、製造、販売およびこれらに付帯するサービスの提供を主な事業として、国内外においてさまざまな事業活動を展開していますが、その事業の特性上、知的財産権、製造物責任、独占禁止法、環境規制などに関連して訴訟が提起される場合や、法的手続が開始される可能性があります。

有価証券報告書提出日現在、エプソンに係争している重要な訴訟は、次のとおりです。

当社の連結子会社であるEpson Europe B.V.(以下「EEB」という。)は、2010年6月にベルギーにおける著作権料徴収団体であるLa SCRL REPROBEL(以下「REPROBEL」という。)に対して、マルチファンクションプリンターに関する著作権料の返還などを求める民事訴訟を提起しました。その後、REPROBELがEEBを提訴したことにより、これら二つの訴訟は併合され、かかる訴訟の第1審ではEEBの主張を棄却する判決がなされましたが、EEBは、これを不服として上訴する方針です。

現時点において上記の訴訟の結果および終結の時期を予測することは困難ですが、訴訟または法的手続の結果によっては、エプソンの業績や今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)財務報告に係る内部統制について

エプソンは、財務報告の信頼性に係る内部統制の構築および運用を重要な経営課題の一つとして位置付け、グループを挙げて関係会社の管理体制などの点検・改善などに取り組んでいます。しかしながら、常に有効な内部統制システムを構築および運用できる保証はなく、また、内部統制システムに本質的に内在する固有の限界があるため、今後、上記の対応が有効に機能しなかった場合や、財務報告に係る内部統制の不備または開示すべき重要な不備が発生した場合には、エプソンの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。

 

(16)他社との提携について

エプソンは、事業戦略の選択肢の一つとして、他社と業務提携などを行うことがあります。しかしながら、当事者間における提携などの見直しにともない、提携関係が解消される可能性があるほか、提携内容の一部変更が行われる可能性があります。また、提携などによる事業戦略が必ずしも想定どおり成功し、エプソンの業績に寄与する保証はありません。

 

(17)災害などについて

エプソンは、研究開発、調達、製造、物流、販売およびサービスの拠点を世界に展開していますが、これらの地域において予測不可能な自然災害、新型インフルエンザなどの新興感染症の流行、コンピュータウィルスの感染、顧客データの漏洩、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)における風評被害の発生、社内重要基幹システムの障害発生、部品調達先などの罹災によるサプライチェーン上の混乱、戦争・テロなどが発生した場合には、エプソンの業績や事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

これらのうち、特にエプソンの主要な事業拠点が所在する長野県中部は、糸魚川静岡構造線に沿った活断層帯があるなど、地震発生リスクが比較的高い地域であるため、エプソンでは、設備の耐震構造強化のほか、防災訓練などの地震防災計画や事業継続計画の策定などにより、かかる災害にともなう影響の軽減に向けた対応を可能な範囲において行っています。

しかしながら、長野県中部に大規模な地震が発生した場合には、これらの施策にもかかわらず、エプソンが受ける影響は甚大なものになる可能性があります。

なお、エプソンは、地震により発生する損害に対しては地震保険を付保しているものの、その補償範囲は限定されています。

 

(18)法規制または許認可などについて

エプソンは、日本国内および諸外国・地域において多様な事業を展開しており、各国および各事業におけるコンプライアンスに関する体制強化と社内的な啓蒙活動などを通じて各種の法規制に対応するように努めていますが、今後の事業拡大にあたっては、公的機関などを含む新規顧客への営業活動の強化のほか、健康分野の開拓などにも取り組む方針であるため、これらの活動に関係する各種の法規制やコンプライアンス(法令遵守)への対応が一層求められることがあります。

エプソンでは、引き続きコンプライアンスを重要な経営方針の一つとして位置付け、適宜、未然防止・制御活動を展開していく方針ですが、今後、例えば、腐敗防止法規制、広告・表示規制、個人情報保護・プライバシー規制のほか、安全保障貿易管理などにおいて、関係法令などへの抵触またはそのおそれが生じた場合や、より厳格な法規制の導入や関係当局による法令運用の強化が行われた場合には、エプソンの社会的信用が毀損されるとともに、多額の制裁金を課せられるほか、事業活動に制約が生じるおそれがあります。また、これらの法規制を遵守するための費用が増加するなど、エプソンの業績や今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1) 相互技術援助契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約内容

契約期間

当社

Hewlett-Packard Company

アメリカ

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2012年5月1日から許諾特許の権利満了日まで

当社

International Business Machines
Corporation

アメリカ

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2006年4月1日から許諾特許の権利満了日まで

当社

Microsoft Corporation

アメリカ

情報関連機器およびこれに用いるソフトウェアに関する特許実施権の許諾

2006年9月29日から許諾特許の権利満了日まで

当社

Eastman Kodak Company

アメリカ

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2006年10月1日から許諾特許の権利満了日まで

当社

Xerox Corporation

アメリカ

電子写真およびインクジェットプリンターに関する特許実施権の許諾

2008年3月31日から許諾特許の権利満了日まで

当社

Texas Instruments Incorporated

アメリカ

半導体および情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2008年4月1日から2018年3月31日まで

当社

キヤノン株式会社

日本

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2008年8月22日から許諾特許の権利満了日まで

 

(2) その他

当連結会計年度において、上記(1)以外に経営上の重要な契約等の決定又は締結などはありません。

なお、当社は、当社の連結子会社であるエプソンイメージングデバイス㈱との間で、2017年2月1日を効力発生日として同社を吸収合併することで合意し、2016年11月30日付で合併契約を締結いたしました。詳細については、「第5 経理の状況 2 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載しております。

また、当社は、当社の連結子会社であるオリエント時計㈱との間で、2017年4月1日を効力発生日として同社の時計販売事業(ただし、日本国内における販売事業などを除く)を吸収分割により承継することで合意し、2017年1月31日付で吸収分割契約を締結いたしました。なお、同社の国内販売事業は、当社の連結子会社であるエプソン販売㈱が承継いたしました。詳細については、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載しております。

 

6【研究開発活動】

エプソンは、創業以来培ってきた強みである「省・小・精の技術」を源泉とする「マイクロピエゾ」「マイクロディスプレイ」「センシング」「ロボティクス」の独自のコア技術を徹底的に極め、これらをあらゆるお客様に提供できるように共通化(プラットフォーム化)し、お客様の期待を超える価値ある製品・サービスを創り出すことを目指して研究開発活動を行っています。

この基本方針のもと、将来に向けたコア技術・デバイスの開発やものづくり基盤の強化に加え、新規事業創出や事業強化などのための技術基盤の構築のほか、各事業における製品の競争力向上などに本社開発部門および事業部開発部門が連携のうえ取り組んでいます。

当連結会計年度の研究開発費総額は527億円であり、各セグメントの内訳は、プリンティングソリューションズ事業が215億円、ビジュアルコミュニケーション事業が94億円、ウエアラブル・産業プロダクツ事業が64億円、その他および全社が153億円です。

各セグメントの主な開発成果は、次のとおりです。

 

(プリンティングソリューションズ事業セグメント)

プリンター事業においては、ビジネスインクジェットプリンターの新製品として、一般的なオフィス用の電子写真方式をしのぐ高速・高画質印刷と低消費電力を実現した高速ラインインクジェット複合機/プリンターを発表(2017年6月国内発売)しました。エプソン独自のインクジェット技術は、熱を使わないピエゾ方式を採用しており、インクジェットならではのシンプルな印刷プロセス、シンプルな構造に加え、さらにインクを紙に吹き付ける非接触印刷で印刷時に熱を使わないため、環境性能に優れています。本製品は、従来のインクジェットの強みに加え、新開発「PrecisionCoreラインヘッド」を採用しており、最上位モデルではA4横片面で100枚/分の高速印刷を実現しました。

また、カラリオ・プリンターの新製品として、カラリオ複合機史上最小のコンパクトサイズを実現したモデルを発売しました。本製品は、2011年モデルと比較して、横幅は96㎜短く、設置面積は42%削減しています。また、新開発の6色染料インクを搭載し、緑の領域が拡大したことにより、さまざまなシーンで登場する緑をさらに美しくプリントすることが可能です。

プロフェッショナルプリンティング事業においては、サイン・ディスプレイ業界向け大判インクジェットプリンターの新製品として、新開発の「UltraChrome GS3 インク」および「UltraChrome GS3 インク with RED」を採用したモデルを発売しました。本製品のインクは、広色域、明るい色表現、光沢感を兼ね備え、さらなる高画質を実現しました。また、インクの改良により乾燥性が高まったことで、実務で重要となる印刷後の巻き取り時間までの生産性を高め、高速印刷の性能を十分に発揮します。

 

(ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)

ビジネス向け3LCD方式のプロジェクターのラインアップ拡充として、明るさと軽量モバイル性を両立したモバイルモデル、また、大会議室まで対応する明るさと基本性能を追求した多機能パワーモデル、さらに、講堂など広い空間での常設に適した高光束モデルを発売しました。モバイルモデルは、3LCDクラス最軽量の約1.8kg、世界最薄(※1)の44㎜と、モバイル性に優れたコンパクトボディながらも、全機種とも明るさ3,000lm以上、10,000:1のコントラスト比と、前モデルから基本性能を大幅に向上させました。また、多機能パワーモデルは、5kg未満で最大5,500lmの高輝度を実現した機種や、フルハイビジョン以上の高解像度であるWUXGA対応機種もラインアップしました。従来モデルから好評の「ピタッと補正」機能に加え、一部の機種ではスクリーンミラーリング、フレームフィット機能や新機能「タッチプレゼンター」など多彩な機能を装備しています。さらに常設モデルは、全機種とも5,500lmの高輝度と、15,000:1(※2)の高コントラストを実現し、明るく見やすい投影を可能としています。また、全機種で上下左右のワイドレンズシフト機能が付いているため、柔軟な設置が可能です。

ホームシアタープロジェクターとして、レーザー光源や4Kエンハンスメントテクノロジー(※3)を搭載し、新たにHDR(ハイダイナミックレンジ)(※4)に対応した新製品を発売しました。本製品は、HDR入力信号の表示に対応し、従来規格では表現できなかった明るさのピークから、暗部への豊かな階調表現が可能になりました。白とびや黒つぶれがなくなり、より映像が鮮明に表現され、高画質かつダイナミックな映像を映し出すことが可能です。

※1 3LCD方式プロジェクターとして。2016年11月現在、エプソン調べ。

※2 オートアイリス使用時。

※3 1画素を斜めに0.5画素シフトさせることで、解像度を2倍にして4K解像度を実現する技術。

※4 映像・画像の明るさ情報(輝度)の範囲を拡大する技術。

 

(ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント

ウエアラブル機器事業においては、GPSランニングギア「WristableGPS」シリーズの本体デザイン、専用アプリケーションを一新して発売しました。本製品では、初めて女性ランナー向けモデルを設定し、デザイン・清潔感・装着性および操作性を向上させ、「WristableGPS for Women」としてラインアップしました。

ロボティクスソリューションズ事業においては、エプソン製ロボットのオプションとして力覚センサーを発売しました。本製品は、0.1N(ニュートン)(※5)というわずかな力を感じられる機能をロボットに与えることで、従来のロボットではできなかった繊細な部品の組み立てや、結合部の隙間が少ない部品同士のはめ込みといった難しい作業の自動化が可能となります。また、AC100V(ボルト)電源で稼働可能な産業用スカラロボットを開発しました。本製品は、ロボット本体とコントローラーを一体化し省スペース化を実現するとともに、バッテリーレスモーターの採用により、ランニングコスト低減にも貢献します。

マイクロデバイス事業においては、ARM® Cortex®-M0+プロセッサー(※6)を搭載した低消費電力32ビットフラッシュメモリー内蔵マイコンシリーズの新製品を開発しました。本製品は、世界で初めて(※)搭載したメモリー液晶(※)コントローラーとその電源回路をマイコン内に組み込んで1チップ化したことなどにより、外付け部品やインターフェイス系のソフトウエア開発が不要となり、お客様の製品の小型化や工数の削減に貢献します。

※5 約10gの物体にはたらく重力の大きさ。

※6 ARMおよびCortexは、ARM Limited(またはその子会社)のEUまたはその他の国における登録商標。

 量産中の汎用マイコンにおいて。2016年8月末現在、エプソン調べ。

 電源を切っても、表示を保持できる液晶。

 

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績の分析

(売上収益)

 売上収益は、前連結会計年度と比較して676億円(6.2%)減少し、1兆248億円となりました。

 報告セグメントごとの売上収益は、次のとおりです。

 プリンティングソリューションズ事業セグメントの売上収益は6,866億円となり、前連結会計年度と比較して497億円(6.8%)減少しました。変動要因として寄与が大きかったものは、以下のとおりです。

 インクジェットプリンターは、大容量インクタンクモデルが他社参入による市場認知度向上効果もあり、大幅に販売数量が増加したことで売上の拡大が継続しました。一方、インクカートリッジモデルが市場規模縮小の中で家庭向けを中心に販売数量が減少したことおよび為替影響により減収となり、全体では売上減少となりました。また消耗品は、販売数量が減少したものの、単価の高いオフィス向け消耗品の比率が高まり、商品構成の改善が進んでいますが、為替による減収影響により売上減少となりました。ページプリンターは、高付加価値製品中心へ販売を絞り込んだことにより、本体販売の減少に加えて消耗品販売も落ち込んだ結果、売上減少となりました。SIDMは、上期に中国の徴税市場での特需がありましたが、為替による減収影響により売上減少となりました。大判インクジェットプリンターは、成長市場であるサイネージ分野では新製品が好調だったことに加え、テキスタイル分野でも需要の高まりから堅調に推移し売上が拡大しましたが、既存市場であるフォト・グラフィックス分野で販売数量減少となり、全体では為替による減収影響もあり売上減少となりました。また消耗品についても、本体の販売数量減少、為替による減収影響により売上減少となりました。POSシステム関連製品は、欧州で低価格モデルが堅調に推移したものの、前期のような日本・北米での大型案件が発生しなかったことによる販売数量減少および中国での販売数量減少、為替による減収影響もあり、売上減少となりました。

 ビジュアルコミュニケーション事業セグメントの売上収益は1,796億円となり、前連結会計年度と比較して43億円(2.4%)減少しました。変動要因として寄与が大きかったものは、以下のとおりです。

 液晶プロジェクターは、欧州一部主要国での教育市場縮小および北米・南米での市場縮小が継続する中、欧州での大型スポーツイベントにともなう中普及価格帯モデルの需要増加、アジア地域での拡販および高光束分野での新製品販売開始にともなう販売数量増加により売上増加となりましたが、為替による減収影響により、売上減少となりました。

 ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントの売上収益は1,585億円となり、前連結会計年度と比較して118億円(7.0%)減少しました。変動要因として寄与が大きかったものは、以下のとおりです。

 ウオッチおよびウオッチムーブメントは、ウオッチでの国内市場向けにおいて新製品を発売したことによる平均販売単価上昇効果がありましたが、インバウンド需要の減速および海外市場向けが低調に推移したことにより数量が減少となったことに加え、ウオッチムーブメントでの市況悪化の影響、為替による減収影響により、売上減少となりました。水晶デバイスは、携帯電話などのパーソナル機器向けの販売数量減少および為替による減収影響により売上減少となりました。半導体は、車載用大口顧客向けの販売数量減少および為替による減収影響がありましたが、ファンドリー需要の増加による販売数量の増加により、売上増加となりました。産業用ロボットおよびICハンドラーは、為替による減収影響がありましたが、産業用ロボットが中国を中心としたロボット需要を取り込み売上増加となったことに加え、ICハンドラーが中国でのスマートフォン向けの販売が好調だったことにより売上増加となりました。表面処理加工事業は新規顧客開拓の進展があり、また金属粉末事業はモバイル機器向け高機能材料粉末が堅調に推移しましたが、為替による減収影響により売上減少となりました。

 「その他」の売上収益は15億円となり、前連結会計年度と比較して7.4%増加しました。

 

(売上原価・売上総利益)

 売上原価は、前連結会計年度と比較して359億円(5.2%)減少し、6,588億円となりました。売上原価の減少は、為替影響などによるものです。

 以上の結果、売上総利益は、前連結会計年度と比較して316億円(8.0%)減少し、3,659億円となりました。

 

(販売費及び一般管理費・事業利益)

 販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比較して125億円(4.0%)減少し、3,001億円となりました。販売費及び一般管理費の減少は為替影響などによるものです。

 以上の結果、事業利益は、前連結会計年度と比較して191億円(22.5%)減少し、658億円となりました。

 

 報告セグメントごとのセグメント利益(事業利益)は、以下のとおりです。

 プリンティングソリューションズ事業セグメントのセグメント利益は206億円(19.7%)減少し、841億円となりました。これは為替影響に加え、大判インクジェットプリンターの売上減少、中期的な成長のための投資と費用の戦略的な投下などによるものです。

 ビジュアルコミュニケーション事業セグメントのセグメント利益は5億円(3.5%)増加し、161億円となりました。これは為替影響がありましたが、販売数量増加や高光束分野拡大による商品構成の改善が進んだことなどによるものです。

 ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントのセグメント利益は20億円(20.4%)減少し、78億円となりました。これは為替影響などによるものです。

 「その他」のセグメント利益は、前連結会計年度の5億円の損失に対して、4億円の損失となりました。

 調整額は、主に特許料収入と、報告セグメントに帰属しない基礎研究に関する研究開発費や新規事業・本社機能に係る費用を中心とした販売費及び一般管理費が計上されており、前連結会計年度の446億円の損失に対し、417億円の損失となりました。

 

(その他の営業収益・その他の営業費用・営業利益)

 その他の営業収益は、前連結会計年度と比較して93億円(63.4%)減少し、54億円となりました。その他の営業収益の減少は、前連結会計年度に土地を売却したことによる増益要因が含まれていたことなどによるものです。

 その他の営業費用は、前連結会計年度と比較して23億円(41.8%)減少し、33億円となりました。

 

(金融収益・金融費用)

 金融収益は、前連結会計年度と比較して2億円(16.3%)減少し、13億円となりました。金融収益の減少は、受取利息の減少などによるものです。

 金融費用は、前連結会計年度と比較して23億円(56.3%)減少し、18億円となりました。金融費用の減少は、為替差損の減少などによるものです。

 

(税引前利益)

 以上の結果、税引前利益は、前連結会計年度と比較して240億円(26.3%)減少し、674億円となりました。

 

(法人所得税費用)

 法人所得税費用は、前連結会計年度と比較して269億円(59.4%)減少し、184億円となりました。これは前連結会計年度に繰越欠損金に対する繰延税金資産の取り崩しによる税金費用の増加影響が含まれていたことなどによるものです。

 

(当期利益)

 以上の結果、当期利益は、前連結会計年度と比較して23億円(5.1%)増加し、484億円となりました。

 

(2)流動性および資金の源泉

(キャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して161億円減少し、968億円の収入となりました。これは当期利益の増加による影響23億円、仕入債務の増加198億円などの増加要因があった一方で、法人所得税費用の減少による影響269億円、棚卸資産増加による影響173億円などの減少要因があったことによるものです。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して支出額が242億円増加し、757億円の支出となりました。これは有形固定資産の取得による支出の増加110億円、投資不動産の売却による収入の減少128億円などによるものです。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して支出額が404億円減少し、266億円の支出となりました。これは短期借入金の純増減額の減少125億円、自己株式の取得による支出の増加103億円があった一方で、配当金の支払額の減少37億円、社債の発行による収入の増加497億円および償還による支出の減少100億円などの影響があったことによるものです。

 以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度と比較して87億円減少し、2,217億円となりました。なお、手元流動性は十分に確保しております。

 有利子負債の合計額は、短期借入金の返済を進めたことや社債の償還があった一方、社債の発行を実施したことにより、前連結会計年度と比較して48億円増加し、1,465億円となりました。

 長期借入金(1年以内に返済予定のものを除く)の当連結会計年度末残高は4億円であり、加重平均利率は0.28%、返済期限は2022年に到来します。これらの借入金は、無担保での銀行借入により調達しております。

 

(財務状況)

 資産合計は、前連結会計年度末と比較して330億円増加し、9,743億円となりました。これは主に、有形固定資産および無形資産の増加341億円などがあったことによるものです。

 負債合計は、前連結会計年度末と比較して90億円増加し、4,796億円となりました。これは主に、社債の償還300億円および短期借入金の減少149億円、退職給付に係る負債の減少95億円があったものの、社債の発行500億円および仕入債務及びその他の債務の増加110億円などがあったことによるものです。

 親会社の所有者に帰属する持分合計は、前連結会計年度末と比較して243億円増加し、4,921億円となりました。これは主に、配当金の支払い212億円、自己株式の取得による支払い103億円があった一方で、利益剰余金が親会社の所有者に帰属する当期利益483億円の計上により増加したことによるものです。

 運転資本(流動資産から流動負債を差し引いた金額)は、前連結会計年度末と比較して253億円減少し、2,510億円となりました。

 総資産に対する有利子負債の比率は、前連結会計年度の15.1%から15.0%と前期並みとなりました。