第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。

 

(1)経営の基本方針

エプソンは、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を基盤として、自らの常識やビジョンを超えて果敢に挑戦しイノベーションを生むことにより、画期的なお客様価値を継続的に創造し、より良い社会の実現に「なくてはならない会社」として中心的な役割を果たすことを目指しています。

そして、以下の経営理念およびグローバルタグラインのもと、お客様の期待を超える価値の創出に向けて、全社員が価値観を共有のうえ総合力を発揮し自律的に行動することにより、目指す姿の実現に努めてまいります。

 

経営理念

お客様を大切に、地球を友に、
個性を尊重し、総合力を発揮して
世界の人々に信頼され、社会とともに発展する
開かれた、なくてはならない会社でありたい。
そして社員が自信を持ち、
常に創造し挑戦していることを誇りとしたい。

 

EXCEED YOUR VISION

私たちエプソン社員は、
常に自らの常識やビジョンを超えて挑戦し、
お客様に驚きや感動をもたらす
成果を生み出します。

 

(2)中長期的な経営戦略および対処すべき課題

エプソンは、2016年度から2025年度の10年間において目指す姿を示した長期ビジョン「Epson 25」およびこの実現に向けた2016年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「Epson 25 第1期中期経営計画(2016年度~2018年度)」を2016年3月に制定しました。

エプソンを取り巻く経営環境については、現状、世界景気は総じて緩やかな回復基調にあるものの、不透明な政治・経済情勢を背景とする為替変動や地政学的リスクへの懸念などによる各国経済または製品需要などへの影響も予想され、引き続き注視が必要であると考えられます。

このような環境のもと、今後、以下の諸施策を着実に進めることにより、持続的成長および中長期的な企業価値の向上の実現に取り組んでまいります。

 

①長期ビジョン「Epson 25」

エプソンは、事業環境の変化やメガトレンドなどを踏まえ、長期ビジョン「Epson 25」(以下「Epson 25」という。)のビジョンステートメントとして、『「省・小・精の価値」で、人やモノと情報がつながる新しい時代を創造する』と定めました。

このうち、「省・小・精の価値」とは、独自の強みである「省・小・精の技術」に基づいて生み出し、エプソンがお客様にご提供する価値であり、「スマート」「環境」「パフォーマンス」に分けられます。

・「スマート」は、「省・小・精の技術」で先鋭化した製品を核に、ソフトウェア技術を極め、いつでもどこでも簡単・便利で安心して製品を使える世界を創ります。

・「環境」は、革新的な「省・小・精の技術」で、製品・サービスのライフサイクルにわたる環境負荷低減をお客様価値として提供し、持続的な発展をもたらします。

・「パフォーマンス」は、「省・小・精の技術」を極めて、高いパフォーマンスの生産性、正確さ、創造性をお客様に提供することで、より高い、新たな価値を創造します。

「人やモノと情報がつながる」とは、今後、情報通信技術の進展により、あらゆる情報がインターネット上でつながるようになることで、サイバー空間はとどまることなく増大していくなか、エプソンは、リアル世界で実体のある究極のものづくり企業として、「省・小・精の技術」で先鋭化した製品を求心力に、このサイバー空間におけるIT企業と協業し、人やモノと情報をつないで、お客様に「省・小・精の価値」をより高めてご提供するものです。

「新しい時代を創造する」とは、エプソンは、人々を単純作業や時間とエネルギーの浪費から解放し、お客様がクリエイティブな知の生産性を高め、健康で安心な生活を楽しんだりすることのできる、持続可能で豊かな社会を創り出していくものです。

今後、このビジョンに基づき、以下の「インクジェットイノベーション」「ビジュアルイノベーション」「ウエアラブルイノベーション」「ロボティクスイノベーション」という4つのイノベーション領域において、「スマート」「環境」「パフォーマンス」という価値をお客様に提供し、各事業領域のビジョンを実現することを通じて4つのイノベーションを起こしていきます。また、各事業を横串にする「人財」「技術」「生産」「販売」「環境」の事業基盤を情報技術の活用を含め一層強化し、Epson 25の実現を支えます。

これにより、Epson 25における2025年度の業績目標(為替レート前提:1米ドル 115円・1ユーロ 125円)として、売上収益:1兆7,000億円、事業利益:2,000億円、ROS(事業利益(※)/売上収益):12%、ROE(当期利益/親会社所有者帰属持分):15%を目指してまいります。

 

※ 事業利益とは、国際会計基準(IFRS)の適用にあたり、エプソンが独自に開示する利益であり、日本基準の営業利益とほぼ同じ概念の利益です。

 

(各事業領域のビジョン)

<プリンティング領域〔インクジェットイノベーション〕>

独自のマイクロピエゾ技術を磨き上げ、より高生産性領域へ飛躍します。また、高い環境性能と、循環型の印刷環境をお客様へ提供します。

 

<ビジュアルコミュニケーション領域〔ビジュアルイノベーション〕>

独自のマイクロディスプレイ技術とプロジェクション技術を極め、ビジネスと生活のあらゆる場面で感動の映像体験と快適なビジュアルコミュニケーション環境を創造し続けます。

 

<ウエアラブル領域〔ウエアラブルイノベーション〕>

ウオッチのDNAを基盤に、正確な時間とセンシングに磨きをかけ、個性あふれる製品群を創り出し、さまざまなお客様に着ける・使う喜びを提供します。

 

<ロボティクス領域〔ロボティクスイノベーション〕>

「省・小・精の技術」に加え、センシングとスマートを融合させたコア技術を製造領域で磨き上げ、それらの技術を広げて、あらゆる領域でロボットが人々を支える未来を実現します。

 

<マイクロデバイス領域〔4つのイノベーションを支える〕>

エプソン独自のデバイス技術をコアに、水晶の「精」を極めたタイミングソリューション・センシングソリューションと、半導体の「省」を極めた省電力ソリューションにより、通信、電力、交通、製造がスマート化する社会をけん引するとともに、エプソン完成品の価値創造に貢献します。

 

②「Epson 25 第1期中期経営計画(2016年度~2018年度)」

Epson 25の実現に向けた第1段階である「Epson 25 第1期中期経営計画(2016年度~2018年度)」(以下「第1期中期計画」という。)では、これまで実行してきた戦略をベースに、「転換と開拓」の成果を継続させることと同時に、製品開発の仕込みや必要な投資を積極的に行い、強固な基盤を整備していきます。

このための基本方針として、前中期計画において「転換と開拓」を実現した事業領域は、その優位性をさらに強化し成長を継続するとともに、「転換と開拓」が遅れている事業領域は、すみやかに課題に対応し成長軌道を確立します。また、Epson 25において目指す「スマート、環境、パフォーマンス」のお客様価値を、製品やサービスの形に創り上げ、成長を確実なものとします。加えて、Epson 25を実現するために、短期的な利益成長を勘案しつつも、必要な経営資源はタイムリーかつ着実に投下するとともに、新しいビジネスモデルを早期に確立し、お客様にお届けする仕組みの充実を図ります。そして、以下の各事業の取り組みや事業基盤強化などにより、将来の成長に向けた事業基盤を創り上げていきます。

 

(各事業の取り組み)

・プリンター事業では、製品の魅力度向上でホーム市場での競争優位を確立するとともに、ラインヘッド搭載機種でオフィス市場開拓を軌道に乗せることを目指します。

・プロフェッショナルプリンティング事業では、ハードウェアで競争優位を確立するとともに、サービスなどの組織基盤を整備し、新規領域での確かな成長を実現します。

・ビジュアルコミュニケーション事業では、プロジェクター市場でのプレゼンスをさらに強化するとともに、レーザー光源により新市場での飛躍の道筋をつけることに取り組みます。

・ウエアラブル機器事業では、ウオッチの事業基盤を磨き上げ、センシング技術を融合し個性豊かな製品群を創出し続け、主柱事業としての礎を築きます。

・ロボティクスソリューションズ事業では、エプソンが保有する技術基盤をベースに、成長に向けた骨格となる事業基盤を創り上げます。

・マイクロデバイス事業では、水晶は競争力の強化により、安定的な事業基盤を創るとともに、半導体は新たなコア技術・コアデバイスを創出します。

 

(事業基盤強化)

・技術では、「省・小・精の技術」を磨き、アクチュエーター・光制御・センサー技術を極め、情報通信技術を取り込むことで、新たなお客様価値を創出し続けます。

・生産では、他社が簡単に真似できない製品を、高い競争力のあるコストと品質で、タイムリーに提供し続けます。

・販売では、オフィス・産業領域を強化してエリアに最適な販売体制を整備し、マーケットインの考え方で企画品質を向上させ、ブランドイメージを変革します。

・環境では、製品・サービスのライフサイクル、サプライチェーン全般にわたる環境負荷低減への取り組みを拡大します。

 

上記の基本方針のもと、当事業年度においては各事業領域で戦略製品の開発・発売などの成長へ向けた施策が進展しました。

一方で、これらの製品が市場に浸透するまでには、もう少し時間が必要なことを認識するとともに、世の中の変化は激しく、これらの状況に応じた戦略転換や事業構造の強化が必要な事業領域が明確になるなど、取り組むべき課題も浮き彫りになりました。

これらの課題を踏まえ、インクジェットイノベーションでは、環境性能や低コスト印刷といったインクジェットプリンターの優位点を活かし、新興国を中心に好調な大容量インクタンクモデルの販売を先進国においても拡大することに加え、当事業年度に発売したラインインクジェットプリンターの浸透を図ることで、オフィスプリントを革新するとともに、収益構造の強化を図ります。

ビジュアルイノベーションでは、プロジェクション技術の特長を活かした新しい映像空間の提案として、ライティング・サイネージ等の用途開拓を行い、さらなる成長を目指します。

その他各事業においても、例えば、ウエアラブルイノベーションにおいて自社ブランドによる事業成長への取り組みをスタートさせたことに加え、ロボティクスイノベーションでヒト協調ロボット市場への参入準備を行うなど、長期ビジョンの実現に向けた諸施策を着実に進めていきます。

また、今後、市場環境の変化に対応していくため、全社的に成長領域の新技術・新ビジネスモデルのリサーチ機能を強化していきます。

 

(3)会社の支配に関する基本方針

当社は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を次のとおり定めております。

 

①基本方針の概要

当社は、当社の株主は市場での自由な取引を通じて決まるものと考えます。したがって、当社の財務および事業の方針の決定を支配することが可能な数の株式を取得する買付提案に応じるか否かの判断は、最終的には株主の皆様のご意思に委ねられるべきものと考えます。

当社は、企業価値や株主共同の利益を確保・向上させていくためには、役職員が一体となって価値創造に向けて取り組むことや、創業以来の風土を大切にしながら創造と挑戦を続けていくこと、お客様の信頼を維持・獲得していくことが不可欠と考えております。

しかし、株式の大量取得行為のなかには、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保し、向上させることにならないものも存在します。当社は、このような不適切な株式の大量取得行為を行う者は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者として適当ではなく、このような者による大量取得行為に対しては必要かつ相当な手段をとることにより、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保する必要があると考えます。

 

②基本方針の実現に資する取組みの概要

1)基本方針の実現に資する特別な取組み

当社は、2016年度から2025年度の10年間において目指す姿を示した長期ビジョン「Epson 25」(以下「Epson 25」という。)と、当該ビジョンの実現に向けた2016年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「Epson 25 第1期中期経営計画(2016年度~2018年度)」(以下「第1期中期計画」という。)を2016年3月に制定いたしました。

第1期中期計画では、これまで実現してきた戦略をベースに、「転換と開拓」の成果を継続させることと同時に、製品開発の仕込みや必要な投資を積極的に行い、強固な基盤を整備してまいります。

 

2)基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み

当社は、当社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させることを目的として、2014年6月の定時株主総会において更新した当社株式の大量取得行為に関する対応策について、2017年6月28日の定時株主総会において、旧対応策の適正性、透明性を一層高めるための修正をしたうえで更新することについて株主の皆様のご承認をいただきました(以下、更新後のプランを「本プラン」という。)。

本プランは、当社株券等に対する大量買付が行われた際に、当該買付に応じるべきか否かを株主の皆様が判断し、あるいは当社取締役会が株主の皆様に代替案を提案するために必要な時間および情報を確保するとともに、株主の皆様のために、大量買付者と協議交渉などを行うことを可能とすることを目的としております。具体的には、当社の発行済株式総数の20%以上となる株券等の買付または公開買付けを実施しようとする買付者に、意向表明書ならびに株主の皆様の判断および特別委員会の評価・検討などのため必要かつ十分な情報を事前に当社取締役会へ提出すること、本プランに定める手続きを遵守することを求めております。そのうえで、当該買付行為が、本プランに従わない場合や、当社の企業価値・株主共同の利益を侵害する買付であると判断された場合は、対抗措置を発動するプランとなっております。

一方、当社取締役会は、対抗措置の発動について、取締役会の恣意的判断を排除するため、独立性の高い社外取締役のみから構成される特別委員会の判断を経ることとしております。特別委員会は、買付内容の検討、当社取締役会への代替案などの情報の請求、株主の皆様への情報開示、買付者との交渉などを行います。特別委員会は、対抗措置発動の要否を当社取締役会に勧告し、当社取締役会はその勧告に従い、対抗措置の発動または不発動に関する決議を速やかに行うこととしております(ただし、取締役の善管注意義務に違反するおそれがあると判断する場合を除く。)。

 

③具体的取組みに対する当社取締役会の判断およびその理由

上記② 1)に記載した取組みは、当社の企業価値・株主共同の利益を継続的かつ持続的に向上させるための具体的方策として策定されたものであり、基本方針の実現に資するものです。

また、本プランは、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保・向上させる目的をもって更新されたものであり、上記①に記載した基本方針に沿うものです。特に、本プランは、株主総会において株主の皆様のご承認を得たうえで更新されたものであること、その内容として合理的な客観的発動要件が設定されていること、当社経営陣から独立性の高い社外取締役のみから構成される特別委員会が設置されており、対抗措置の発動に際しては必ず特別委員会の判断を経ることが必要とされていること、当社取締役会は、対抗措置発動に関する特別委員会の勧告に従うとされていること(ただし、取締役の善管注意義務に違反するおそれがあると判断する場合を除く。)、特別委員会は当社の費用で第三者専門家の助言を得ることができるとされていること、買付者等による買収意向表明後の各プロセスにおいて要する期間が特定されていること、非適格者から新株予約権を取得する場合、金銭等の経済的利益の交付は行わないことが明確になっていること、有効期間が更新から約3年と定められたうえ、取締役会によりいつでも廃止できるとされていることなどにより、その適正性・客観性が担保されており、高度の合理性を有し、企業価値ひいては株主共同の利益に資するものであって、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。

 

2【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。

なお、エプソンは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避および発生した場合の対応に努める方針です。

また、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてエプソンが判断したものです。

 

(1)プリンターの売上変動による経営成績への影響について

2018年3月期におけるプリンティングソリューションズ事業セグメントの売上収益7,366億円は、エプソンの連結売上収益1兆1,021億円の約3分の2を占めており、そのなかでもホーム市場向けのほか、オフィス市場向けや商業・産業向けのインクジェットプリンターを中心とする各種プリンターと、これらの消耗品が売上収益および利益の多くを占めています。したがって、これらのプリンターおよび消耗品の売上収益が変動した場合には、エプソンの経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)他社との競合について

(販売における影響)

エプソンの主力製品であるプリンターやプロジェクターをはじめとする製品全般について、他社との競合の激化により、販売価格の低下や低価格品への需要のシフトおよび販売数量の減少などの影響を受けることがあります。

エプソンでは、これらの状況に対して、各市場での顧客ニーズに対応した製品や高付加価値製品およびサービスの提供に取り組むとともに、設計・開発の効率化やコストダウンなどにより製造コストの削減に努め、かかる販売価格の低下や低価格品への需要のシフトおよび販売数量の減少などに対処していく方針です。

しかしながら、今後、これらの施策が成功する保証はなく、エプソンがかかる販売価格の低下などに効果的に対応できない場合には、エプソンの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(テクノロジーにおける影響)

エプソンの販売する一部の製品については、他社のテクノロジーと競合しており、例えば、次のような事例があります。

インクジェットプリンターにおけるエプソンのマイクロピエゾ方式(※1)と他社のサーマルインクジェット方式(※2)との競合

プロジェクターにおけるエプソンの3LCD(三板透過型液晶)方式(※3)と他社のDLP方式(※4)などとの競合ならびにエプソンのプロジェクターと他社のFPD(フラットパネルディスプレイ)(※5)との競合

エプソンは、これらのエプソンの製品において採用している方式について、現時点では競合他社の方式に対する技術的な競争優位性があると考えていますが、消費者によるエプソンの技術に対する評価が変化した場合や、エプソンの技術と競合するほかの革新的な技術が出現した場合などには、エプソンの技術的な競争優位性が損なわれ、エプソンの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

※1 マイクロピエゾ方式とは、ピエゾと呼ぶ圧電素子を伸縮させて、インク滴をノズルから噴射させるエプソン独自のインクジェット技術をいいます。

※2 サーマルインクジェット方式とは、インクに熱を加えることで発生する気泡の圧力により、インク滴を噴射する技術をいいます。なお、バブルジェット方式といわれることもあります。

※3 3LCD(三板透過型液晶)方式とは、ライトバルブに高温ポリシリコンTFT液晶パネルを用いる方式であり、光源から出射された光を特殊な鏡を使って赤・緑・青の3原色に分離し、各色専用のLCDで映像を作った後、無駄なく再合成し投影します。

※4 DLP方式とは、表示デバイスにDMD(Digital Micromirror Device)を用いる方式です。DMDとは、ミクロンサイズの微極小な鏡が多数並んだ半導体で、1つの鏡が1画素に対応し光源からの光を反射することで映像を投影します。なお、DLPおよびDMDは、米国テキサス・インスツルメンツ社の登録商標です。

※5 FPDとは、薄型・平坦な画面の薄型映像表示装置の総称です。

(新たな競合の発生)

エプソンは、現在、高度な技術力、豊富な資金力または強固な財務基盤を有する大企業あるいは市場における認知度、供給力または価格競争力を有する国内外の企業との間で競合関係にありますが、これらに加え、将来、ほかの企業が、ブランド力、技術力、資金調達力、マーケティング力、販売力および低コストの生産能力などを生かしてエプソンの事業領域へ新規参入してくる可能性もあります。

 

(3)経営環境の急激な変化などについて

エプソンは、現在、「インクジェットイノベーション」「ビジュアルイノベーション」「ウエアラブルイノベーション」「ロボティクスイノベーション」という4つのイノベーション領域において、「スマート」「環境」「パフォーマンス」という価値をお客様に提供し、各事業領域のビジョンを実現することを通じて4つのイノベーションを起こすことに取り組んでいます。この実現に向けて、エプソンでは、長期ビジョンや中期経営計画などに基づく諸施策を展開していますが、技術的な競争優位性を確立することが競争力を高めるために大変重要な要素であると考えており、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を源泉とする「マイクロピエゾ」「マイクロディスプレイ」「センシング」「ロボティクス」の独自のコア技術を徹底的に極めるとともに、これらをプラットフォームとして融合することにより、顧客ニーズに対応した製品の開発・製造・販売およびサービスの提供を行っています。

しかしながら、エプソンが経営資源を集中しているこれらの事業領域における製品の属する市場は、一般的に技術革新の速度が速いとともに製品ライフサイクルが短く、また、世界景気の変動やデジタル化の進展などにともなうエプソンの主要市場における需要・投資動向が、エプソンの製品の販売に影響を及ぼす可能性があるほか、現在推進している中期経営計画や事業戦略およびこれらで定められた各種の施策が必ずしも実現または成功する保証はありません。

このような事業環境のもと、エプソンでは、引き続き各市場や顧客のニーズの把握に努め、製品市場予測による中・長期的な研究開発や投資を行うほか、開発・設計のプラットフォーム化などにより、既存製品から新製品への迅速かつ円滑な移行などにも取り組んでいく方針です。

しかしながら、今後、市場でのニーズや技術革新の変化に適切に対応できない場合、他社との競争が激化した場合、景気後退などにより需要が回復しない場合および主要市場における急激な需要変動に適切に対応できない場合などには、エプソンの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)第三者によるインクジェットプリンター用消耗品の販売について

インクジェットプリンターの主な消耗品であるインクカートリッジなどは、エプソンの売上収益および利益にとって相当重要なものとなっています。インクカートリッジなどのインクジェットプリンター用消耗品については、第三者によりエプソンのプリンター本体で使用することができる代替品が供給されています。これらの第三者からの代替品は、一般的にエプソンの純正品よりも廉価で販売されており、また、先進国市場と比較して新興国市場においてより流通している状況にあります。

エプソンは、こうした第三者によるインクジェットプリンター用消耗品の販売について、純正品としての高い品質の訴求のほか、大容量インクタンクを搭載したモデルの販売など、各市場における顧客ニーズに的確に対応したインクジェットプリンターを提供し、顧客の利便性をさらに高めることにより、引き続きお客様価値の実現を図っていく方針です。また、エプソンが保有するインクカートリッジに係る特許権および商標権の侵害に対しては、適宜、法的措置を講じていく方針です。

しかしながら、これらの施策が必ずしも有効である保証はなく、将来において第三者による代替品の販売が拡大し、純正品のシェア低下にともなう販売数量の減少や、これに対応するための販売価格の引下げなどにより、インクカートリッジの売上収益および利益が減少した場合には、エプソンの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)海外での事業展開について

エプソンは、グローバルに事業を展開しており、2018年3月期の連結売上収益のうち約4分の3は海外における売上収益が占めています。エプソンは、中国、インドネシア、シンガポール、マレーシアおよびフィリピンなどのアジア地域をはじめ、アメリカやイギリスなどにも生産拠点を有し、販売会社も世界各地域に設立しています。また、2018年3月末における海外従業員数はエプソンの全従業員数の約4分の3を占めています。

エプソンでは、こうしたグローバルな事業展開は地域ごとの市場ニーズを的確にとらえたマーケティング活動を可能とし、また、製造コストの削減およびリードタイムの短縮によるコスト競争力の確保など、事業上の多くのメリットがあると考えています。一方で、海外における製造・販売に関しては、各国政府の製造・販売に係る諸法令・規制、社会・政治および経済状況の変化、輸送の遅延、電力・通信などのインフラの障害、為替制限、熟練労働力の不足、地域的な労働環境の変化、各国における税制改正および税務当局による税務執行の不確実性、保護貿易諸規制、各種地政学的リスク、そのほかエプソンの製品の輸出入に対する諸法令・規制など、海外事業展開に不可避のリスクがあります。

 

(6)特定の仕入先からの部品などの調達について

エプソンは、第三者から一部の部品などを調達していますが、一般的に長期仕入契約を締結することなく継続的な取引関係を維持しています。また、エプソンは、部品などに関して複数社からの調達を原則としていますが、特定の部品などについては、他社からの代替調達が困難であるため、1社のみからの調達となる場合があります。エプソンでは、品質の維持・改善やコスト低減活動などに調達先と協同で取り組むことなどにより、安定的かつ効率的な調達活動を展開していく方針ですが、仮にこれらの調達先からの供給の不足や供給された部品などの品質不良などにより、製造・販売活動に支障を来たした場合には、エプソンの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)品質問題について

エプソンの製品保証の有無および内容は顧客との個別の契約により異なります。エプソンの製品に不良品または規格に適合しないものがあった場合には、エプソンは当該製品の無償での交換または修理など、不良品を補償するコストを負担し、また、当該製品が人的被害または物的損害を生じさせた場合には、製造物責任などの責任を負う可能性があります。

このほか、エプソンの製品の性能に関し適切な表示または説明がなされなかったことを理由として、顧客などに対し責任を負う場合や、改良のためのコストが発生する可能性があります。さらに、エプソンの製品にこのような品質問題が発生した場合には、エプソンの製品への信頼性を損ない、顧客の喪失または当該製品への需要の減少などにより、エプソンの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)知的財産権について

エプソンにとって、特許権およびそのほかの知的財産権は競争力維持のために非常に重要です。エプソンは、自らが必要とする多くの技術を自社開発してきており、それを国内外において特許権、商標権およびそのほかの知的財産権として、あるいは他社と契約を締結することにより、製品および技術上の知的財産権を設定し保持しています。また、知的財産権の管理業務に人員を重点的に配置し、知的財産権の強化を図っています。

しかしながら、次に想定されるような知的財産権に関する問題が発生した場合には、エプソンの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

・エプソンが保有する知的財産権に対して異議申立や無効請求などがなされる可能性、その結果、当該知的財産権が無効と認められる可能性

・第三者間での合併または買収の結果、従来、エプソンがライセンスを付与していない第三者がライセンスを保有し、その結果、エプソンが知的財産権の競争優位性を失う可能性

・第三者との合併または買収の結果、従来、エプソンの事業に課せられなかった新たな制約が課せられる可能性およびこれらを解決するために支出を強いられる可能性

・エプソンが保有する知的財産権が競争優位性をもたらさない、またはその知的財産権を有効に行使できない可能性

・エプソンまたはその顧客が第三者から知的財産権の侵害を主張され、その解決のために多くの時間とコストを費やし、または経営資源などの集中が妨げられることになる可能性

・第三者からの侵害の主張が認められた場合に多額の賠償金やロイヤリティの支払い、該当技術の使用差し止めなどの損害が発生する可能性

・エプソンの従業員などにより発明などに対する報酬に関する訴訟が提起され、その解決のために多くの時間とコストを強いられる可能性、その結果、多額の報酬の支払いが決定される可能性

 

(9)環境問題について

エプソンは、国内外において製造過程で発生する廃棄物および大気中への排出物などについて、さまざまな環境規制を受けています。さらに、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)にて採択されたパリ協定により、世界的な気候変動への対応に関心が高まるなか、企業としてもより高い削減目標を掲げて取り組む必要性が増しています。

かかる状況のもと、エプソンは、CO2排出削減を含む長期的な環境負荷低減を示した「環境ビジョン2050」および中期施策に基づき、環境負荷を低減した製品の開発・製造、使用エネルギー量の削減、使用済み製品の回収・リサイクルの推進、国際的な化学物質規制(主に欧州のRoHS指令やREACH規則)への対応および環境管理システムの改善など、多くの側面から環境保全活動に取り組んでいます。

こうした活動の結果、エプソンの2017年度のCO2排出量は59万トンとなり、「環境ビジョン2050」の基準年度である2006年度比で40%削減となりました。

エプソンでは、これまで重大な環境問題が発生したことはありませんが、将来において環境問題が発生し、損害の賠償や浄化などの費用負担、罰金または生産中止などの影響を受ける可能性、あるいは新しい規制が施行され多額の費用負担が必要となる可能性があり、このような事態が実現した場合には、エプソンの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)人材の確保について

エプソンの高度な新技術・新製品の開発・製造には、国内外における優秀な人材の確保が重要ですが、これらの人材の獲得競争は激しいものとなっています。エプソンは、役割に基づいた処遇制度の導入や現地人材の積極的な登用などにより、優秀な人材の確保に努めていますが、仮にこれらの人材を十分に採用または雇用し続けることができない場合や、技術などの継承が適切にできない場合には、エプソンの事業計画の遂行に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)為替変動について

エプソンの売上収益の相当部分は、米ドルおよびユーロなどの外貨建てとなっています。エプソンは、海外調達の拡大および生産拠点の海外移転などを進めたことにより、現状、米ドル建ての費用は米ドル建ての売上収益を上回る状況となっていますが、一方でユーロ建ての売上収益は依然としてユーロ建ての費用よりもかなり多い状況にあります。また、これら以外の外国通貨についても、全般的に売上収益が費用をかなり上回っています。エプソンは、為替変動リスクをヘッジするために為替予約取引などを行っていますが、米ドル、ユーロおよびこれら以外の外国通貨の日本円に対する為替変動は、エプソンの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)年金制度について

エプソンの設けている確定給付型の制度として、確定給付企業年金制度および退職一時金制度があります。

エプソンは、確定給付型の退職年金制度について、年金資産の運用収益率の低下や受給権者の増加といった状況を踏まえ、今後の環境変化に適応するとともに、将来にわたり安定的に維持運営することを目的として2014年4月に制度改定を実施しましたが、年金資産の運用成績の変動および退職給付債務の数理計算の基礎となる割引率の見積数値の変動などが発生した場合には、エプソンの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)法規制および関係当局などによる調査について

エプソンは、グローバルに事業を展開しており、各国・各地域および各事業におけるさまざまな法規制や関係当局などによる調査の対象になる場合があります。例えば、エプソンは、現在、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律など、国内外の独占禁止法令に基づく手続の対象となっているほか、今後、公的機関などを含む新規顧客への営業活動の強化にあたり、これらの活動に関係する各種の法規制やコンプライアンス(法令遵守)への対応が一層求められることがあります。

このような状況を踏まえ、エプソンでは、従来より、コンプライアンスを重要な経営方針の一つとして位置付け、適宜、未然防止・制御活動を展開していますが、今後も海外の競争法関係当局が特定の業界などを対象に調査または情報収集を行うことがあり、その一環としてエプソンも市場状況および販売方法一般に関する調査などを受けることがあります。また、腐敗防止法規制、広告・表示規制、個人情報保護・プライバシー規制のほか、安全保障貿易管理などにおいて、関係法令などへの抵触またはそのおそれが生じることや、より厳格な法規制の導入や関係当局による法令運用の強化が行われることがあります。

これらの関連法規の違反があった場合や関係当局による調査・手続が実施された場合には、エプソンの販売活動に支障が生じ、またはエプソンの社会的信用を損なうこと、もしくは多額の制裁金が課されることがあるほか、事業活動に制約が生じるおそれがあるとともに、かかる法規制を遵守するための費用が増加することなどにより、エプソンの経営成績や今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

有価証券報告書提出日現在、エプソンに対する法規制などに基づく調査は、次のとおりです。

エプソンは、液晶ディスプレイの価格カルテル嫌疑に関し、一部の競争法関係当局による調査を受けています。

また、フランスにおいて販売されるインクジェットプリンター製品に関し、同国の消費者団体による消費者保護法に基づく申し立てがなされ、当局による調査が開始されています。なお、同消費者団体が主張するような製品の寿命を短くしているという意図はなく、エプソンは、今後とも品質や環境を最も重視し、お客様のニーズに合わせた設計をしてまいります。

現時点においてかかる調査の進展、結果および終結の時期ならびにそのエプソンの経営成績および今後の事業展開への影響を予測することは困難です。

 

(14)重要な訴訟について

エプソンは、プリンティングソリューションズ事業、ビジュアルコミュニケーション事業およびウエアラブル・産業プロダクツ事業などに係る各製品の開発、製造、販売およびこれらに付帯するサービスの提供を主な事業として、国内外においてさまざまな事業活動を展開していますが、その事業の特性上、知的財産権、製造物責任、独占禁止法、環境規制などに関連して訴訟が提起される場合や、法的手続が開始される可能性があります。

有価証券報告書提出日現在、エプソンに係争している重要な訴訟は、次のとおりです。

当社の連結子会社であるEpson Europe B.V.(以下「EEB」という。)は、2010年6月にベルギーにおける著作権料徴収団体であるLa SCRL REPROBEL(以下「REPROBEL」という。)に対して、マルチファンクションプリンターに関する著作権料の返還などを求める民事訴訟を提起しました。その後、REPROBELがEEBを提訴したことにより、これら二つの訴訟は併合され、かかる訴訟の第1審ではEEBの主張を棄却する判決がなされましたが、EEBは、これを不服として上訴する方針です。

現時点において上記の訴訟の結果および終結の時期を予測することは困難ですが、訴訟または法的手続の結果によっては、エプソンの経営成績や今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)財務報告に係る内部統制について

エプソンは、財務報告の信頼性に係る内部統制の構築および運用を重要な経営課題の一つとして位置付け、グループを挙げて関係会社の管理体制などの点検・改善などに取り組んでいます。しかしながら、常に有効な内部統制システムを構築および運用できる保証はなく、また、内部統制システムに本質的に内在する固有の限界があるため、今後、上記の対応が有効に機能しなかった場合や、財務報告に係る内部統制の不備または開示すべき重要な不備が発生した場合には、エプソンの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。

 

(16)他社との提携について

エプソンは、事業戦略の選択肢の一つとして、他社と業務提携などを行うことがあります。しかしながら、当事者間における提携などの見直しにともない、提携関係が解消される可能性があるほか、提携内容の一部変更が行われる可能性があります。また、提携などによる事業戦略が必ずしも想定どおり成功し、エプソンの経営成績に寄与する保証はありません。

 

(17)災害などについて

エプソンは、研究開発、調達、製造、物流、販売およびサービスの拠点を世界に展開していますが、これらの地域において予測不可能な自然災害、新型インフルエンザなどの新興感染症の流行、コンピュータウイルスの感染、顧客データの漏洩、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)における風評被害の発生、社内重要基幹システムの障害発生、サイバー攻撃、部品調達先などの罹災によるサプライチェーン上の混乱、戦争・テロなどが発生した場合には、エプソンの経営成績や事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

これらのうち、特にエプソンの主要な事業拠点が所在する長野県中部は、糸魚川静岡構造線に沿った活断層帯があるなど、地震発生リスクが比較的高い地域であるため、エプソンでは、設備の耐震構造強化のほか、防災訓練などの地震防災計画や事業継続計画の策定などにより、かかる災害にともなう影響の軽減に向けた対応を可能な範囲において行っています。

しかしながら、長野県中部に大規模な地震が発生した場合には、これらの施策にもかかわらず、エプソンが受ける影響は甚大なものになる可能性があります。

なお、エプソンは、地震により発生する損害に対しては地震保険を付保しているものの、その補償範囲は限定されています。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

当連結会計年度における経済環境を顧みますと、景気は総じて緩やかな回復基調が続きました。地域別に見ますと、米国では個人消費の増加や雇用環境の改善を背景に着実に回復が続きました。中南米および欧州においては緩やかに回復し、中国では持ち直しの動きがみられました。日本は、堅調な雇用・所得情勢を受けて個人消費が底堅く推移したことにより、緩やかな回復基調が続きました。

このような状況の中、エプソンの主要市場につきましては、以下のとおりとなりました。

インクジェットプリンターの需要は、日本および欧州では縮小が継続しましたが、米州では堅調に推移しました。大容量インクタンクモデルに対する需要は堅調に拡大しました。大判インクジェットプリンターの需要は、堅調に推移しました。シリアルインパクトドットマトリクスプリンター(SIDM)の需要は、中国での前年度の「営改増」施行による徴税市場における特需がなくなり、米州および欧州でも縮小が継続しました。

プロジェクターの需要は、前年度の欧州での大型スポーツイベントによる需要増加がなくなったこと、欧州一部主要国での教育需要縮小、および北米リテール市場の低迷継続により縮小しました。

電子デバイス製品の水晶デバイスは、主要なアプリケーションであるスマートフォンの需要が、中国において市場の成熟化により縮小しました。ウオッチの需要は、日本では緩やかに回復しました。ウオッチムーブメントの需要は堅調に推移しました。産業用ロボットの需要は、中国を中心に拡大しました。

当連結会計年度の米ドルおよびユーロの平均為替レートはそれぞれ110.85円および129.66円と前期に比べ、米ドルでは2%の円安、ユーロでは9%の円安に推移しました。

こうした経営環境の下、当連結会計年度の経営成績につきましては、以下のとおりとなりました。

(億円)

 

前連結

会計年度

当連結

会計年度

増減金額

増減率

主な増減理由

売上収益

10,248

11,021

772

7.5%

プリンティングソリューションズ事業セグメントの増収および為替の影響等による増加

売上原価

△6,588

△7,012

△423

売上収益の変動および為替の影響等による増加

売上総利益

3,659

4,008

348

9.5%

 

販売費及び

一般管理費

△3,001

△3,260

△258

為替の影響等による増加

事業利益 ※

658

747

89

13.6%

為替の影響等による増加

その他の営業収益・

その他の営業費用

20

△97

△118

為替差損および海外拠点再整備に伴う費用等の増加

営業利益

678

650

△28

△4.3%

 

金融収益・金融費用

△4

△24

△19

為替差損等の増加

税引前利益

674

626

△48

△7.1%

 

法人所得税費用

△184

△208

△24

米国税制改正に伴う繰延税金資産の取崩し等による増加

当期利益

484

417

△66

△13.8%

 

 

※ 事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

 

(プリンティングソリューションズ事業セグメント)

プリンター事業の売上収益は増加となりました。製品別の内容は以下のとおりです。

インクジェットプリンターは、大容量インクタンクモデルが新興国を中心に販売数量が大幅に増加したことに加え、先進国においても市場認知度の高まりから販売数量が増加し、売上の拡大が継続しました。また、為替による増収影響もあり、全体では売上増加となりました。消耗品は、コンシューマー向けインクカートリッジは減少したものの、大容量インクタンクモデル用ボトルが増加したことや為替による増収影響もあり、前期並みに推移しました。

ページプリンターは、高付加価値製品を中心に販売を絞り込んだことにより、本体販売の減少に加えて消耗品販売も落ち込んだ結果、売上減少となりました。

SIDMは、中国徴税市場での特需があった前期に対して売上減少となりました。

プロフェッショナルプリンティング事業の売上収益は増加となりました。製品別の内容は以下のとおりです。

大判インクジェットプリンターは、成長市場であるサイネージ分野、テキスタイル分野およびラベル分野でも好調に推移したことで売上が拡大し、為替による増収影響もあり、全体では売上増加となりました。

POSシステム関連製品は、北米での案件獲得などによる販売数量の増加、為替による増収影響もあり、売上増加となりました。

プリンティングソリューションズ事業セグメントのセグメント利益につきましては、SIDMでの売上減少や原材料の高騰などがあったものの、インクジェットプリンターの大容量インクタンクモデルや大判インクジェットプリンターの売上増加、為替による影響もあり、増益となりました。

以上の結果、プリンティングソリューションズ事業セグメントの売上収益は7,366億円(前期比7.3%増)、セグメント利益は948億円(同12.8%増)となりました。

 

(ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)

ビジュアルコミュニケーション事業の売上収益は増加となりました。

液晶プロジェクターは、高光束分野でのレーザー光源モデル等が好調に推移したことで高付加価値製品の販売数量が大幅に増加し、為替による影響もあり、全体では売上増加となりました。

ビジュアルコミュニケーション事業セグメントのセグメント利益につきましては、高光束分野等での販売数量の増加、為替による影響もあり、増益となりました。

以上の結果、ビジュアルコミュニケーション事業セグメントの売上収益は1,988億円(前期比10.7%増)、セグメント利益は244億円(同51.3%増)となりました。

 

(ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント)

ウエアラブル機器事業の売上収益は、為替による増収影響がありましたが、北米における小売市場での需要減少等により、前期をやや下回る売上となりました。

ロボティクスソリューションズ事業の売上収益は増加となりました。産業用ロボットが中国を中心としたロボット需要を取り込み売上増加となり、また為替による増収影響もあり、全体では売上増加となりました。

マイクロデバイス事業の売上収益は、増加となりました。水晶デバイスは、為替による増収影響がありましたが、携帯電話などのパーソナル機器向けの数量減少により売上減少となりました。半導体は、市場の需要増による販売数量の増加、為替による増収影響により、売上増加となりました。

ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントのセグメント利益につきましては、ロボティクスソリューションズ事業や半導体での売上増加、為替による影響があったものの、ウエアラブル機器事業や水晶デバイスでの売上減少により、減益となりました。

以上の結果、ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントの売上収益は1,673億円(前期比5.5%増)、セグメント利益は71億円(同8.4%減)となりました。

 

(その他)

その他の売上収益は9億円(前期比37.9%減)、セグメント損失は5億円(前期は4億円のセグメント損失)となりました。

 

(調整額)

セグメントに帰属しない基礎研究に関する研究開発費や新規事業・本社機能に係る費用の計上などにより、セグメントの利益の合計額との調整額が△511億円(前期の調整額は△417億円)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、842億円の収入(前期は968億円の収入)となりました。これは当期利益417億円に加え、減価償却費及び償却費の計上499億円などの増加要因があったことによります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産および無形資産の取得による支出736億円などがあったことにより、746億円の支出(前期は757億円の支出)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の償還による支出100億円や配当金の支払額211億円があった一方、社債の発行による収入198億円や短期借入金の純増115億円などにより、0億円の収入(前期は266億円の支出)となりました。

以上の結果、当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は、2,296億円(前期は2,217億円)となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2017年4月1日

至 2018年3月31日)

前期比(%)

プリンティングソリューションズ事業(百万円)

741,665

109.1

ビジュアルコミュニケーション事業(百万円)

208,598

118.9

ウエアラブル・産業プロダクツ事業(百万円)

160,060

108.5

 セグメント計(百万円)

1,110,324

110.7

その他(百万円)

176

29.6

合計(百万円)

1,110,500

110.7

(注)1.上記金額は、販売価格により示しており、セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

3.上記金額には、外注製品仕入高等が含まれております。

 

b.受注実績

 エプソンでは、製品の性質上、原則として見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2017年4月1日

至 2018年3月31日)

前期比(%)

プリンティングソリューションズ事業(百万円)

736,239

107.3

ビジュアルコミュニケーション事業(百万円)

198,889

110.7

ウエアラブル・産業プロダクツ事業(百万円)

158,535

105.2

 セグメント計(百万円)

1,093,663

107.6

その他(百万円)

187

23.8

合計(百万円)

1,093,851

107.5

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

3.総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点によるエプソンの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。

経営成績等

(財政状態

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に対して589億円増加し、1兆333億円となりました。これは主に、有形固定資産の増加227億円、棚卸資産の増加147億円、売上債権及びその他の債権の増加95億円、現金及び現金同等物の増加78億円、その他の流動資産の増加33億円があったことなどによるものです。当連結会計年度末のプリンティングソリューションズ事業セグメントのセグメント資産は、新製品対応や生産能力増強を主目的とした設備投資に伴う有形固定資産の増加などにより、前連結会計年度末と比較して337億円増加し、4,104億円となりました。同様にビジュアルコミュニケーション事業セグメントのセグメント資産は、前連結会計年度末比123億円増加の1,273億円、また、ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントのセグメント資産は、同83億円増加の1,423億円となりました。

 負債合計は、前連結会計年度末に対して385億円増加し、5,182億円となりました。これは主に、その他の流動負債の減少53億円、退職給付に係る負債の減少29億円があった一方で、流動負債および非流動負債の社債、借入金及びリース債務の増加199億円、仕入債務及びその他の債務の増加131億円、その他の非流動負債の増加79億円、流動負債および非流動負債の引当金の増加71億円があったことなどによるものです。

 親会社の所有者に帰属する持分合計は、前連結会計年度末に対して205億円増加し、5,127億円となりました。これは主に、配当金の支払い211億円、円高進行に伴う在外営業活動体の換算差額の減少を主因とするその他の資本の構成要素の減少52億円がありましたが、利益剰余金が当期利益418億円の計上および確定給付制度の再測定49億円により増加したことなどによるものです。

 運転資本(流動資産から流動負債を差し引いた金額)は、前連結会計年度末と比較して657億円増加し、3,167億円となりました。

 

(経営成績)

 経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

(キャッシュ・フローの状況)

 キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

②資金の源泉および流動性

 当連結会計年度後1年間の設備投資計画金額は830億円であり、所要資金につきましては、自己資金でまかなう予定です。セグメントごとの設備投資計画金額につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。

 エプソンでは、設備投資等の事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用および金融機関からの借入と社債の発行により資金を調達しております。

 有利子負債の当連結会計年度末残高は、社債の償還があった一方、社債の発行および借入金の増加により、前連結会計年度と比較して199億円増加し、1,665億円となりました。現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度と比較して78億円増加し、2,296億円となりました。手元流動性は十分に確保しております。

 なお、エプソンは、株式会社格付投資情報センターから信用格付を取得しており、当連結会計年度末において、A(シングルA)となっております。

 

③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 エプソンは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、長期ビジョン「Epson 25」およびこの実現に向けた中期経営計画に基づく成長戦略を推進し、事業基盤や財務構造の強化を図ることにより、2025年度の業績目標(為替レート前提:1米ドル 115円・1ユーロ 125円)として、売上収益:1兆7,000億円、事業利益:2,000億円、ROS(事業利益/売上収益):12%、ROE(当期利益/親会社所有者帰属持分):15%を目指しています。

 今後、独自の強みを発揮できる各イノベーション領域において、上記の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」で掲げた各事業の将来成長に向けた施策を成し遂げ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることにより、業績目標の実現に取り組んでまいります。

 

(経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報)

 IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりです。

 

退職後給付に係る費用

 エプソンは、日本基準の下で、発生した数理計算上の差異および過去勤務費用を一定の期間で償却しておりました。IFRSでは、確定給付制度の再測定は、発生した期においてその他の包括利益として一括認識しており、直ちに利益剰余金に振り替えております。過去勤務費用は、制度改訂または縮小が発生した時あるいは関連するリストラクチャリング費用または解雇給付を認識した時のいずれか早い期において純損益として認識しております。

 この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、前連結会計年度の売上原価、販売費及び一般管理費および金融費用は4億円増加し、当連結会計年度の売上原価、販売費及び一般管理費および金融費用は23億円増加しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

相互技術援助契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約内容

契約期間

当社

HP Inc.

アメリカ

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2018年3月28日から許諾特許の権利満了日まで

当社

International Business Machines
Corporation

アメリカ

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2006年4月1日から許諾特許の権利満了日まで

当社

Microsoft Corporation

アメリカ

情報関連機器およびこれに用いるソフトウェアに関する特許実施権の許諾

2006年9月29日から許諾特許の権利満了日まで

当社

Eastman Kodak Company

アメリカ

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2006年10月1日から許諾特許の権利満了日まで

当社

Xerox Corporation

アメリカ

電子写真およびインクジェットプリンターに関する特許実施権の許諾

2008年3月31日から許諾特許の権利満了日まで

当社

Texas Instruments Incorporated

アメリカ

半導体および情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2008年4月1日から2018年3月31日まで

当社

キヤノン株式会社

日本

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2008年8月22日から許諾特許の権利満了日まで

 

5【研究開発活動】

エプソンは、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を源泉とする「マイクロピエゾ」「マイクロディスプレイ」「センシング」「ロボティクス」のコア技術を徹底的に極め、これらをあらゆるお客様に提供できるように共通化(プラットフォーム化)し、お客様の期待を超える価値ある製品・サービスを創り出すことを目指して研究開発活動を行っています。

この基本方針のもと、将来に向けたコア技術・デバイスの開発やものづくり基盤の強化に加え、新規事業創出や事業強化などのための技術基盤の構築のほか、各事業における製品の競争力向上などに本社開発部門および事業部開発部門が連携のうえ取り組んでいます。

当連結会計年度の研究開発費総額は503億円であり、各セグメントの内訳は、プリンティングソリューションズ事業が180億円、ビジュアルコミュニケーション事業が100億円、ウエアラブル・産業プロダクツ事業が71億円、その他および全社が150億円です。

各セグメントの主な開発成果は、次のとおりです。

 

(プリンティングソリューションズ事業セグメント)

プリンター事業においては、省スペースと大容量インクを両立したA4対応のビジネスインクジェット複合機・プリンターを発売しました。本製品は、インクカートリッジより大容量化が可能なインクパックシステムを搭載し、インクパックをプリンター下部に内蔵することで、省スペースと大容量インクを両立しました。また、ファーストプリントは、エプソンのビジネスインクジェットプリンターで最速(※1)のカラー5.3秒(※2)、モノクロ4.8秒(※2)を実現しました。さらに、用紙対応の幅も広がり、さまざまな業務に適した用紙対応力を備えているとともに、インクジェットならではのシンプルな印刷プロセス・構造に加え、インクを紙に吹き付ける非接触印刷で印刷時に熱を使わないため、環境性能に優れています。

このほか、日本国内市場において、本体に大容量インクタンク(エコタンク)を搭載したインクジェットプリンターの新製品として、コンパクトサイズを実現したA4対応複合機、大容量インクタンク搭載モデル初のA3対応(※3)複合機、ビジネス向けのA3ノビ対応(※4)複合機を発売しました。本製品は、プリント機会の多いお客様のインク交換の手間を軽減し、低印刷コストで文書も写真も気兼ねなく印刷できる大容量インクタンクモデルの新製品であり、「くっきりブラック」の顔料インクを全機種で搭載しているため、文字をくっきりときれいに印刷することができるとともに、「PrecisionCoreプリントヘッド」搭載のモデルでは、普通紙で600dpiの高画質印刷を実現し、細かな文字や設計図などの精細な線の描写も美しく再現します。

プロフェッショナルプリンティング事業においては、デザイン・プルーフ工程や高画質ポスター作成に適した大判インクジェットプリンターの新製品を発売しました。本製品は、デザインから出力まで一貫した色再現が可能なため、色校正の回数を削減し工程短縮化を実現することができ、印刷業務でのデザインからプルーフまでのワークフローの効率化に貢献します。

また、昇華転写プリンターの新製品として、「PrecisionCoreTFP プリントヘッド」を2基搭載したハイエンドモデルを発売しました。本製品は、エプソンが長年のインクジェットプリンターの写真画像技術で培ってきた独自技術の「Epson Precision Dot」とエプソン純正ソフトウェアRIP「Epson Edge Print」を合わせることで、基本性能と使い勝手をさらに向上しました。

このほか、お客様のご要望を反映し生産性とメンテナンス性を向上させたガーメントプリンターの新製品を発売しました。本製品は、新たに布シートとバレン(※5)を使用したセット方法により、Tシャツの浮き上がり抑制やセット時間を短縮し、また、カラーとホワイトインクをダブルで印刷する「ダブルストライク印刷」機能により、高濃度・高速印刷を両立しました。さらに、自動インク循環システムに新たにフィルターを設置したことに加え、クリーニングカートリッジの追加により、吸引キャップ清掃を自動化するなど、メンテナンス性を高め、ダウンタイムを軽減して安定稼働を実現しました。

※1 2018年1月16日時点、エプソンのビジネスインクジェトプリンターラインアップにおいて。

※2 1枚目の印刷時間算出条件についての詳細は、エプソンのホームページをご覧ください。

※3 スキャナーはA4対応。

※4 スキャナーはA3対応。

※5 布シート上にセットしたTシャツを平らにし、浮き上がりを抑制します。

 

(ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)

ビジネス向け3LCD方式のプロジェクターでは、レーザー光源搭載モデルのラインアップ強化として、大会議室や大ホールなどの広い空間での使用に適した明るい常設モデル、また、会議室や教室だけでなく商業施設や娯楽施設などでのデジタルサイネージや空間演出用途にも利用できる超短焦点壁掛け対応モデルを発売しました。高光束(15,000lm(ルーメン))の常設モデルは、小型化と高効率化を実現し、エプソンの従来機のランプ光源(※6)と比べて、明るさは約50%向上し、体積は約30%減の小型軽量化を実現しました。超短焦点壁掛け対応モデルは、全機種4,000lmで当該モデルにおいてエプソンとして初めてレーザー光源を搭載しました。本製品は、部屋が明るいままでも映像をくっきり鮮やかに投写でき、WUXGA(1920×1200)と高解像度のため、高精細な図面や項目の多い表などを広範囲で投写することができます。さらに、70インチでの投写の場合は投写距離およそ41cmと、ほぼ真上から投写することが可能なため、投写画面の近くに人が入っても影ができにくく、眩しく感じることもありません。

このほか、レーザー光源搭載プロジェクターの新製品として、空間演出市場に向けたライティングモデルを発表しました。本製品は、エプソンが初めて提供する映像投写はもちろんスポットライトとしても活用できるプロジェクターであり、空間になじみやすい円筒型の形状で、テーブルや展示台・商品などスクリーン以外への投写が可能です。また、投写する映像を円や窓の形にするなどのアレンジが簡単にでき、優れた設置性により、オフィス、店舗、商業施設、レストランなど、さまざまな場所で映像による新しい空間演出としての利用することが可能です。

※6 「EB-Z10005U」「EB-Z10000U」との比較において。

 

(ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント

ウエアラブル機器事業においては、最先端技術でアナログウオッチを極めることを目指すブランド「TRUME」(トゥルーム)を新たに立ち上げ、各種センシングデータをアナログ針で表示する独創のアナログウオッチを発売しました。本製品は、ウオッチ本体に搭載されたGPSセンサー、気圧・高度センサー、方位センサーなどを稼働させながら、さらに、エクスパンデッドセンサーとの通信をしてもなお、ライトチャージ(光発電)によって駆動し続けます。

ロボティクスソリューションズ事業においては、「見て、感じて、考えて、働く」を製品コンセプトとする自律型双腕ロボットを製品化しました。本製品は、一般的な産業用ロボットのように装置に組み込み、固定して作業を行うのではなく、必要な場所に機体を移動させ単独で人に代わって組み立てや搬送などの作業を行えるものであり、これまで困難だった生産の自動化を可能とします。また、製造現場の幅広いニーズに応える産業用6軸ロボット(垂直多関節型ロボット)、スカラロボット(水平多関節型ロボット)を開発しました。これらの製品は、独自開発の折りたたみ式アームやロボット本体へのコントローラー内蔵などにより、工場の省スペース化および生産性向上に貢献します。

マイクロデバイス事業においては、温度補償水晶発振器(DTCXO)(※7)を内蔵した、車載向けおよび産業用途向けのリアルタイムクロックモジュール(※8)を開発しました。リアルタイムクロックモジュールは、一般的に低消費電力化と高精度化がトレードオフの関係にありますが、本製品は、小型で高精度な音叉型水晶振動子の製造技術およびその振動子を低電力で駆動させる新設計のIC回路設計技術により、消費電流の削減と動作温度範囲の拡大を実現しました。

※7 「Digital Temperature Compensated X'tal(crystal) Oscillator」の略で、水晶振動子の温度に対する周波数の変化を補正する機能を持った水晶発振器・発振回路。

※8 時計・カレンダー機能などを持ったリアルタイムクロックICと32.768kHz水晶振動子を一つのパッケージに内蔵した製品。