第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。

 

(1)経営の基本方針

エプソンは、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を基盤として、自らの常識やビジョンを超えて果敢に挑戦しイノベーションを生むことにより、画期的なお客様価値を継続的に創造し、より良い社会の実現に「なくてはならない会社」として中心的な役割を果たすことを目指しています。

そして、以下の経営理念およびグローバルタグラインのもと、お客様の期待を超える価値の創出に向けて、全社員が価値観を共有のうえ総合力を発揮し自律的に行動することにより、目指す姿の実現に努めてまいります。

 

経営理念

お客様を大切に、地球を友に、
個性を尊重し、総合力を発揮して
世界の人々に信頼され、社会とともに発展する
開かれた、なくてはならない会社でありたい。
そして社員が自信を持ち、
常に創造し挑戦していることを誇りとしたい。

 

EXCEED YOUR VISION

私たちエプソン社員は、
常に自らの常識やビジョンを超えて挑戦し、
お客様に驚きや感動をもたらす
成果を生み出します。

 

(2)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題

エプソンは、将来の目指す姿を示した長期ビジョン「Epson 25」(以下「Epson 25」という。)の実現に向
けて、2019年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「Epson 25 第2期中期経営計画(2019年度~2021年
度)」(以下「第2期中期計画」という。)を2019年3月に策定しました。

第2期中期計画の初年度である2019年度を振り返ると、米中貿易摩擦影響による世界経済の停滞やユーロ・新興国通貨を中心とした円高進行などの厳しい外部環境により、売上収益は前期比減収となるとともに、事業利益もメリハリのある固定費削減に努めたものの、前期比減益となりました。このような状況のもと、将来成長に向けた戦略の進捗としては、国内スタートアップ企業などとの協業・オープンイノベーションの推進、商品ポートフォリオ見直しおよび経営資源の戦略分野への集中に取り組みました。

インクジェットイノベーション領域では、大容量インクタンクモデルはエマージング市場に加え先進国市場でも販売数量が増加し、また、オフィス共有インクジェットプリンターは欧州での大型案件獲得や日本でのアカデミックプランの展開などにより販売が伸長したものの、レーザープリンターからインクジェットプリンターへの置換えには時間を要しており、今後、BtoB ビジネスの営業体制拡充に向けて顧客接点の強化を図るために、サブスクリプション型サービスのグローバル展開などを加速してまいります。

ビジュアルイノベーション領域では、プロジェクターは高光束領域やOS付きホーム領域などの戦略分野でレーザー光源を搭載した新商品投入を進めましたが、フラットパネルディスプレイの低価格化などの影響を受け、既存市場は厳しい状況となりました。

ウエアラブルイノベーション領域では、低・中価格帯ウオッチは市場縮小などの影響を受けましたが、生産効率化や経営資源の絞込みを行うとともに、強化領域への経営資源集中を進めました。

ロボティクスイノベーション領域では、ロボットは新商品や各種アプリケーションによるソリューション提案で市場開拓に取り組みましたが、米中貿易摩擦影響などにより販売は軟調に推移しました。

2020年度においては厳しい外部環境が継続することを前提とし、経営資源のメリハリに基づく配分と転換を完遂し、将来成長に向けた安定収益基盤を確立する方針です。ただし、エプソンを取り巻く現下の経営環境としては、競争激化のほか、新型コロナウイルス感染拡大による影響や不安定な世界経済情勢など、外部環境の不透明感が継続していることから、今後のリスクに備えた効率的な費用執行に取り組みます。また、現状、財務の健全性は十分保たれていますが、金融機関とのコミットメントライン契約などにより、資金手当てに万全を期しております。

足元での喫緊の課題である新型コロナウイルス感染拡大については、従業員とその家族、お客様・株主様を含めたすべてのステークホルダーの皆様の安全・健康を最優先に取り組むとともに、生産・販売活動の正常化に向けた対応を迅速に進め、これらの混乱からより早期に脱却を図ります。また、新型コロナウイルス感染拡大による影響が継続する間はもとより、沈静化した後の社会においても、例えば移動や人との接触・対面などを必ずしも必要としない生活様式への変容など、様々な大きな社会の変化が進むことが予想されます。エプソンは、こうした社会の大きな変容に対して、これまで進めてきた「デジタル化」、「働きかた改革」、「環境負荷低減」などへの取り組みをより一層加速させて、予想される社会課題の解決に積極的に取り組んでまいります。加えて、今後さらに浮き彫りになるエプソンが取り組むべき社会課題の解決に向けて、「産業構造の革新」および「循環型経済の牽引」への対応を推進していく方針です。

エプソンは、以上の状況を踏まえ、引き続き社会課題の解決による将来成長の実現に向けて、規律ある経営資源の投入を進めつつ、第2期中期計画で掲げた以下の諸施策を環境変化に応じて迅速かつ着実に推進することにより、持続的成長および中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。

 

①第2期中期計画の基本的な考え方

第2期中期計画では、第1期中期計画に引き続き「Epson 25」で目指す姿は堅持し、環境変化や社会課題に対応したメリハリのある経営により、高い収益を生み出す事業運営に改革します。

 

(第2期中期計画の基本方針)

1)資産の最大活用と協業・オープンイノベーションによる成長加速

・ソリューション提案型ビジネスの強化

・協業も含め商品ラインアップの迅速な強化

・コアデバイスを用いた外販ビジネスとオープンイノベーションの強化

・ロボティクスへ経営資源を投下し主柱事業化に向け成長を加速

2)本社からのコントロールによる、グローバルオペレーションの強化

・強化すべき事業領域・地域の選択と集中

・提案型 BtoB 営業力強化に向けた組織整備と人材投入

・全社統合IT基盤の整備

3)経済環境、戦略の実効性を踏まえた規律ある経営資源の投入

・メリハリをつけた商品ポートフォリオの再構築

・財務規律の強化

 

②第2期中期計画および「Epson 25」業績目標

項  目

2021年度目標

2025年度目標

売上収益

1兆2,000億円

1兆7,000億円

事業セグメント

プリンティングソリューションズ

7,800億円

ビジュアルコミュニケーション

2,250億円

ウエアラブル・産業プロダクツ

1,950億円

事業利益(※1)

960億円

2,000億円

ROS(売上収益事業利益率)

8%

12%

ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)

継続的に10%以上

15%

為替レート USD/EUR/他通貨(※2)

110円/125円/92

115円/125円/100

※1 事業利益は、売上収益から売上原価、販売費および一般管理費を控除して算出

※2 その他通貨の各レートを為替ボリュームに応じて加重平均した値について、2025年度目標を100とした指数

 

③今後の取り組み

(4つのイノベーションに向けた取り組み)

<インクジェットイノベーション>

・ホーム・SOHO/オフィス共有(※)分野では、大容量インクタンクモデルや高速ラインインクジェット複合機など、大容量インクモデルのインクジェットプリンターにより、レーザープリンターやインクカートリッジモデルからの置き換えを加速させ、消耗品に依存したビジネスモデルからの転換を進める。
 ※当社分類カテゴリーの1つ。高プリントボリュームオフィス向けプリンター。

・商業・産業分野では、プラットフォーム化と協業により高生産性商品のラインアップを一気に拡大する。
さらに、プリントヘッド外販とオープンイノベーションで多種多様なニーズに対応し、ビジネスを拡大する。

・社会の急速なデジタル化によって生まれるニーズをとらえ、協業・オープンイノベーションにより、新たなプリンティングサービスを創出する。

 

<ビジュアルイノベーション>

・レーザー光源エンジンを核としたプラットフォームのさらなる進化により、高光束モデルをはじめとしたラインアップを効率的に拡大し、プロジェクターの提供価値を向上させる。

・ライティングモデルによる空間演出需要の創出や、小型プロジェクターの商品化などにより、新市場の開拓を進める。

・スマートグラスは、PCやスマートフォンとの接続を可能とするインターフェースモデルの拡充や、光学エンジンモジュールの外販により、オープンイノベーションを加速させ用途拡大を図る。

 

<ウエアラブルイノベーション>

・独創の技術を生かした付加価値の高いアナログウオッチ領域に経営資源集中を継続する。

 

<ロボティクスイノベーション>

・エプソンの技術基盤を土台として、積極的に協業も行うことで、商品力とソリューション提案力をさらに強化し、将来の主柱事業とするべく成長を加速させる。

・AI活用によるさらなる使い勝手向上や、ヒト協調市場への参入を実現する。

 

(営業機能の強化)

グローバル視点での販売戦略の実行と、管理機能を強化するために、本社による統制力を強化すると同時に、BtoB ビジネスへのシフトに向け、顧客密着型・ソリューション提案型の営業への転換を進める。

 

(持続可能な社会の実現に向けて)

・持続可能な社会の実現に対する期待の高まりをビジネスチャンスと捉え、印刷性能・環境性能・インク対応性などに強みを持つインクジェット技術によるイノベーションを加速させ、持続可能な社会の実現に貢献する。

 

④第2期中期計画財務目標

1)キャッシュ・フロー

・着実な利益成長、効率的なオペレーションを実現し、キャッシュ・フロー創出力を回復します。

・創出したキャッシュは、メリハリを付け成長投資へ優先配分したうえで、健全な財務構造を維持しながら、株主還元を実施します。

項目

第1期中期経営計画(実績)

第2期中期経営計画

営業キャッシュ・フロー

3年間累計:2,581億円

3年間累計:3,700億円程度

フリー・キャッシュ・フロー

3年間累計:249億円

3年間累計:1,700億円程度

 

2)研究開発費・設備投資

項目

第1期中期経営計画(実績)

第2期中期経営計画

研究開発費

3年間累計:1,613億円

Epson 25実現に必要な新商品・要素開発

などに積極的に投下

設備投資

(リース除く)

3年間累計:2,368億円

3年間累計:2,000億円程度

(生産体制強化・新商品対応など)

 

2【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクは次のとおりです。これらのリスクについては、リスク要因になる可能性があると考えられる事項を記載していますが、すべてのリスクを網羅したものではなく、有価証券報告書提出日現在では想定していないリスクや重要性が低いと考えられるリスクも、今後、エプソンの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、エプソンは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避および発生した場合の対応に努める方針ですが、かかる施策などが成功する保証はなく、効果的に対応できない場合には、エプソンの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてエプソンが判断したものです。

 

(1)プリンターの売上変動による経営成績などへの影響について

2020年3月期におけるプリンティングソリューションズ事業セグメントの売上収益7,086億円は、エプソンの連結売上収益1兆436億円の約3分の2を占めており、そのなかでもホーム市場向けのほか、オフィス市場向けや商業・産業向けのインクジェットプリンターを中心とする各種プリンターと、これらの消耗品が売上収益および利益の多くを占めています。したがって、これらのプリンターおよび消耗品の売上収益が変動した場合には、エプソンの経営成績などに重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)他社との競合について

(販売における影響)

エプソンの主力製品であるプリンターやプロジェクターをはじめとする製品全般について、他社との競合の激化により、販売価格の低下や低価格品への需要のシフトおよび販売数量の減少などの影響を受けることがあります。

エプソンでは、これらの状況に対して、各市場での顧客ニーズに対応した製品や高付加価値製品およびサービスの提供に取り組むとともに、設計・開発の効率化やコストダウンなどにより製造コストの削減に努め、かかる販売価格の低下や低価格品への需要のシフトおよび販売数量の減少などに対処していく方針です。

しかしながら、今後、これらの施策が成功する保証はなく、エプソンがかかる販売価格の低下などに効果的に対応できない場合には、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

(テクノロジーにおける影響)

エプソンの販売する一部の製品については、他社のテクノロジーと競合しており、例えば、次のような事例があります。

インクジェットプリンターにおけるエプソンのマイクロピエゾ方式(※1)と他社のサーマルインクジェット方式(※2)との競合

プロジェクターにおけるエプソンの3LCD(三板透過型液晶)方式(※3)と他社のDLP方式(※4)などとの競合ならびにエプソンのプロジェクターと他社のFPD(フラットパネルディスプレイ)(※5)との競合

エプソンは、これらのエプソンの製品において採用している方式について、現時点では競合他社の方式に対する技術的な競争優位性があると考えていますが、消費者によるエプソンの技術に対する評価が変化した場合や、エプソンの技術と競合するほかの革新的な技術が出現した場合などには、エプソンの技術的な競争優位性が損なわれ、エプソンの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

※1 マイクロピエゾ方式とは、ピエゾと呼ぶ圧電素子を伸縮させて、インク滴をノズルから噴射させるエプソン独自のインクジェット技術をいいます。

※2 サーマルインクジェット方式とは、インクに熱を加えることで発生する気泡の圧力により、インク滴を噴射する技術をいいます。なお、バブルジェット方式といわれることもあります。

※3 3LCD(三板透過型液晶)方式とは、ライトバルブに高温ポリシリコンTFT液晶パネルを用いる方式であり、光源から出射された光を特殊な鏡を使って赤・緑・青の3原色に分離し、各色専用のLCDで映像を作った後、無駄なく再合成し投影します。

※4 DLP方式とは、表示デバイスにDMD(Digital Micromirror Device)を用いる方式です。DMDとは、ミクロンサイズの微極小な鏡が多数並んだ半導体で、1つの鏡が1画素に対応し光源からの光を反射することで映像を投影します。なお、DLPおよびDMDは、米国テキサス・インスツルメンツ社の登録商標です。

※5 FPDとは、薄型・平坦な画面の薄型映像表示装置の総称です。

(新たな競合の発生)

エプソンは、現在、高度な技術力、豊富な資金力または強固な財務基盤を有する大企業あるいは市場における認知度、供給力または価格競争力を有する国内外の企業との間で競合関係にありますが、これらに加え、将来、ほかの企業が、ブランド力、技術力、資金調達力、マーケティング力、販売力および低コストの生産能力などを生かしてエプソンの事業領域へ新規参入してくる可能性もあります。

 

(3)経営環境の急激な変化などについて

エプソンは、現在、「インクジェットイノベーション」「ビジュアルイノベーション」「ウエアラブルイノベーション」「ロボティクスイノベーション」という4つのイノベーション領域において、それぞれのイノベーションを起こすことによりお客様が真に求める価値を創出し、各事業領域のビジョンを実現することに取り組んでいます。この実現に向けて、エプソンでは、長期ビジョンや中期経営計画などに基づく諸施策を展開していますが、技術的な競争優位性を確立することが競争力を高めるために大変重要な要素であると考えており、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を源泉とする「マイクロピエゾ」「マイクロディスプレイ」「センシング」「ロボティクス」などの独自のコア技術を徹底的に極めるとともに、これらをプラットフォームとして融合することにより、顧客ニーズに対応した製品の開発・製造・販売およびサービスの提供を行っています。

しかしながら、エプソンが経営資源を集中しているこれらの事業領域における製品の属する市場は、一般的に技術革新の速度が速いとともに製品ライフサイクルが短く、また、世界景気の変動やデジタル化の進展などにともなうエプソンの主要市場における需要・投資動向が、エプソンの製品の販売に影響を及ぼす可能性があるほか、現在推進している中期経営計画や事業戦略およびこれらで定められた各種の施策が必ずしも実現または成功する保証はありません。

このような事業環境のもと、エプソンでは、引き続き各市場や顧客のニーズの把握に努め、製品市場予測による中・長期的な研究開発や投資を行うほか、開発・設計のプラットフォーム化などにより、既存製品から新製品への迅速かつ円滑な移行などにも取り組んでいく方針です。

しかしながら、今後、市場でのニーズや技術革新の変化に適切に対応できない場合、他社との競争が激化した場合、景気後退などにより需要が回復しない場合および主要市場における急激な需要変動に適切に対応できない場合などには、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)第三者によるインクジェットプリンター用消耗品の販売について

インクジェットプリンターの主な消耗品であるインクカートリッジなどは、エプソンの売上収益および利益にとって重要なものとなっています。インクカートリッジなどのインクジェットプリンター用消耗品については、第三者によりエプソンのプリンター本体で使用することができる代替品が供給されています。これらの第三者からの代替品は、一般的にエプソンの純正品よりも廉価で販売されており、また、先進国市場と比較して新興国市場においてより流通している状況にあります。

エプソンは、こうした第三者によるインクジェットプリンター用消耗品の販売について、純正品としての高い品質の訴求のほか、大容量インクタンクを搭載したモデルの販売など、各市場における顧客ニーズに的確に対応したインクジェットプリンターを提供し、顧客の利便性をさらに高めることにより、引き続きお客様価値の実現を図っていく方針です。また、エプソンが保有するインクカートリッジに係る特許権および商標権の侵害に対しては、適宜、法的措置を講じていく方針です。

しかしながら、これらの施策が必ずしも有効である保証はなく、将来において第三者による代替品の販売が拡大し、純正品のシェア低下にともなう販売数量の減少や、これに対応するための販売価格の引下げなどにより、インクカートリッジなどの売上収益および利益が減少した場合には、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)海外での事業展開について

エプソンは、グローバルに事業を展開しており、2020年3月期の連結売上収益のうち約4分の3は海外における売上収益が占めています。エプソンは、中国、インドネシア、シンガポール、マレーシアおよびフィリピンなどのアジア地域をはじめ、アメリカやイギリスなどにも生産拠点を有し、販売会社も世界各地域に設立しています。また、2020年3月末における海外従業員数はエプソンの全従業員数の8割以上を占めています。

エプソンでは、こうしたグローバルな事業展開は地域ごとの市場ニーズを的確にとらえたマーケティング活動を可能とし、また、製造コストの削減およびリードタイムの短縮によるコスト競争力の確保など、事業上の多くのメリットがあると考えています。一方で、海外における製造・販売に関しては、各国政府の製造・販売に係る諸法令・規制、社会・政治および経済状況の変化、輸送の遅延、電力・通信などのインフラの障害、為替制限、熟練労働力の不足、地域的な労働環境の変化、各国における税制改正および税務当局による税務執行の不確実性、保護貿易諸規制、各種地政学的リスク、そのほかエプソンの製品の輸出入に対する諸法令・規制など、海外事業展開に不可避のリスクがあります。

 

(6)特定の仕入先からの部品などの調達について

エプソンは、第三者から一部の部品などを調達していますが、一般的に長期仕入契約を締結することなく継続的な取引関係を維持しています。また、エプソンは、部品などに関して複数社からの調達を原則としていますが、特定の部品などについては、他社からの代替調達が困難であるため、1社のみからの調達となる場合があります。エプソンでは、品質の維持・改善やコスト低減活動などに調達先と協同で取り組むことなどにより、安定的かつ効率的な調達活動を展開していく方針ですが、仮にこれらの調達先からの供給の不足や供給された部品などの品質不良などにより、製造・販売活動に支障を来たした場合には、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)品質問題について

エプソンの製品保証の有無および内容は顧客との個別の契約により異なります。エプソンの製品に不良品または規格に適合しないものがあった場合には、エプソンは当該製品の無償での交換または修理など、不良品を補償するコストを負担し、また、当該製品が人的被害または物的損害を生じさせた場合には、製造物責任などの責任を負う可能性があります。

このほか、エプソンの製品の性能に関し適切な表示または説明がなされなかったことを理由として、顧客などに対し責任を負う場合や、改良のためのコストが発生する可能性があります。さらに、エプソンの製品にこのような品質問題が発生した場合には、エプソンの製品への信頼性を損ない、顧客の喪失または当該製品への需要の減少などにより、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)知的財産権について

エプソンにとって、特許権およびそのほかの知的財産権は競争力維持のために非常に重要です。エプソンは、自らが必要とする多くの技術を自社開発してきており、それを国内外において特許権、商標権およびそのほかの知的財産権として、あるいは他社と契約を締結することにより、製品および技術上の知的財産権を設定し保持しています。また、知的財産権の管理業務に人員を重点的に配置し、知的財産権の強化を図っています。

しかしながら、次に想定されるような知的財産権に関する問題が発生した場合には、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

・エプソンが保有する知的財産権に対して異議申立や無効請求などがなされる可能性、その結果、当該知的財産権が無効と認められる可能性

・第三者間での合併または買収の結果、従来、エプソンがライセンスを付与していない第三者がライセンスを保有し、その結果、エプソンが知的財産権の競争優位性を失う可能性

・第三者との合併または買収の結果、従来、エプソンの事業に課せられなかった新たな制約が課せられる可能性およびこれらを解決するために支出を強いられる可能性

・エプソンが保有する知的財産権が競争優位性をもたらさない、またはその知的財産権を有効に行使できない可能性

・エプソンまたはその顧客が第三者から知的財産権の侵害を主張され、その解決のために多くの時間とコストを費やし、または経営資源などの集中が妨げられることになる可能性

・第三者からの侵害の主張が認められた場合に多額の賠償金やロイヤリティの支払い、該当技術の使用差し止めなどの損害が発生する可能性

・エプソンの従業員などにより発明などに対する報酬に関する訴訟が提起され、その解決のために多くの時間とコストを強いられる可能性、その結果、多額の報酬の支払いが決定される可能性

 

(9)環境問題について

エプソンは、国内外において製造過程で発生する廃棄物および大気中への排出物などについて、さまざまな環境規制を受けています。さらに、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)にて採択されたパリ協定により、世界的な気候変動への対応に関心が高まるなか、企業としてもより高い削減目標を掲げて取り組む必要性が増しています。

かかる状況のもと、エプソンは、温室効果ガス(GHG)排出削減を含む長期的な環境負荷低減を示した「環境ビジョン2050」および中期施策に基づき、環境負荷を低減した製品の開発・製造、使用エネルギー量の削減、使用済み製品の回収・リサイクルの推進、国際的な化学物質規制(主に欧州のRoHS指令やREACH規則)への対応および環境管理システムの改善など、多くの側面から環境保全活動に取り組んでいます。GHGの排出削減目標に関しては、SBTi(Science Based Targets initiative)の承認を受けており、再生可能エネルギーの導入拡大を含め、中長期に向けた削減活動を推進しています。

こうした活動の結果、エプソンの2019年度のGHG排出量(スコープ1、2)は48万トンとなり、基準年度である2017年度比で18%削減となりました。

エプソンでは、これまで重大な環境問題が発生したことはありませんが、将来において環境問題が発生し、損害の賠償や浄化などの費用負担、罰金または生産中止などの影響を受ける可能性、あるいは新しい規制が施行され多額の費用負担が必要となる可能性があり、このような事態が実現した場合には、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

(10)人材の確保について

エプソンの高度な新技術・新製品の開発・製造には、国内外における優秀な人材の確保が重要ですが、これらの人材の獲得競争は激しいものとなっています。エプソンは、役割に基づいた処遇制度の導入や現地人材の積極的な登用などにより、優秀な人材の確保に努めていますが、仮にこれらの人材を十分に採用または雇用し続けることができない場合や、技術などの継承が適切にできない場合には、エプソンの事業計画の遂行などに影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)為替変動について

エプソンの売上収益の相当部分は、米ドルおよびユーロなどの外貨建てとなっています。エプソンは、海外調達の拡大および生産拠点の海外移転などを進めたことにより、現状、米ドル建ての費用は米ドル建ての売上収益を上回る状況となっていますが、一方でユーロ建ての売上収益は依然としてユーロ建ての費用よりもかなり多い状況にあります。また、これら以外の外国通貨についても、全般的に売上収益が費用をかなり上回っています。エプソンは、為替変動リスクをヘッジするために為替予約取引などを行っていますが、米ドル、ユーロおよびこれら以外の外国通貨の日本円に対する為替変動は、エプソンの財政状態および経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)年金制度について

エプソンの設けている確定給付型の制度として、確定給付企業年金制度および退職一時金制度があります。

エプソンは、確定給付型の退職年金制度について、年金資産の運用収益率の低下や受給権者の増加といった状況を踏まえ、今後の環境変化に適応するとともに、将来にわたり安定的に維持運営することを目的として2014年4月に制度改定を実施しましたが、年金資産の運用成績の変動および退職給付債務の数理計算の基礎となる割引率の見積数値の変動などが発生した場合には、エプソンの財政状態および経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)法規制および関係当局などによる調査について

エプソンは、グローバルに事業を展開しており、各国・各地域および各事業におけるさまざまな法規制や関係当局などによる調査の対象になる場合があります。例えば、エプソンは、現在、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律など、国内外の独占禁止法令に基づく手続の対象となっているほか、今後、公的機関などを含む新規顧客への営業活動の強化にあたり、これらの活動に関係する各種の法規制やコンプライアンス(法令遵守)への対応が一層求められることがあります。

このような状況を踏まえ、エプソンでは、従来より、コンプライアンスを重要な経営方針の一つとして位置付け、適宜、未然防止・制御活動(RBA(Responsible Business Alliance)加盟による労働者保護や環境保全活動のさらなる促進を含む)を展開していますが、今後も海外の競争法関係当局が特定の業界などを対象に調査または情報収集を行うことがあり、その一環としてエプソンも市場状況および販売方法一般に関する調査などを受けることがあります。また、腐敗防止法規制、広告・表示規制、個人情報保護・プライバシー規制のほか、安全保障貿易管理などにおいて、関係法令などへの抵触またはそのおそれが生じることや、より厳格な法規制の導入や関係当局による法令運用の強化が行われることがあります。

これらの関連法規の違反があった場合や関係当局による調査・手続が実施された場合には、エプソンの販売活動に支障が生じ、またはエプソンの社会的信用を損なうこと、もしくは多額の制裁金が課されることがあるほか、事業活動に制約が生じるおそれがあるとともに、かかる法規制を遵守するための費用が増加することなどにより、エプソンの経営成績や今後の事業展開などに影響を及ぼす可能性があります。

有価証券報告書提出日現在、エプソンに対する法規制などに基づく調査は、次のとおりです。

フランスにおいて販売されるインクジェットプリンター製品に関し、2017年に同国の消費者団体による消費者保護法に基づく申し立てがなされ、当局による調査が開始されています。なお、同消費者団体が主張するような製品の寿命を短くしているという意図はなく、エプソンは、今後とも品質や環境を最も重視し、お客様のニーズに合わせた設計をしてまいります。

現時点においてかかる調査の進展、結果および終結の時期ならびにそのエプソンの経営成績および今後の事業展開などへの影響を予測することは困難です。

 

(14)重要な訴訟について

エプソンは、プリンティングソリューションズ事業、ビジュアルコミュニケーション事業およびウエアラブル・産業プロダクツ事業などに係る各製品の開発、製造、販売およびこれらに付帯するサービスの提供を主な事業として、国内外においてさまざまな事業活動を展開していますが、その事業の特性上、知的財産権、製造物責任、独占禁止法、環境規制などに関連して訴訟が提起される場合や、法的手続が開始される可能性があります。

有価証券報告書提出日現在、エプソンに係争している重要な訴訟は、次のとおりです。

当社の連結子会社であるEpson Europe B.V.(以下「EEB」という。)は、2010年にベルギーにおける著作権料徴収団体であるLa SCRL REPROBEL(以下「REPROBEL」という。)に対して、マルチファンクションプリンターに関する著作権料の返還などを求める民事訴訟を提起しました。その後、REPROBELがEEBを提訴したことにより、これら二つの訴訟は併合され、かかる訴訟の第1審ではEEBの主張を棄却する判決がなされましたが、EEBは、これを不服として上訴する方針です。

現時点において上記の訴訟の結果および終結の時期を予測することは困難ですが、訴訟または法的手続の結果によっては、エプソンの経営成績や今後の事業展開などに影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)財務報告に係る内部統制について

エプソンは、財務報告の信頼性に係る内部統制の構築および運用を重要な経営課題の一つとして位置付け、グループを挙げて関係会社の管理体制などの点検・改善などに取り組んでいます。しかしながら、常に有効な内部統制システムを構築および運用できる保証はなく、また、内部統制システムに本質的に内在する固有の限界があるため、今後、上記の対応が有効に機能しなかった場合や、財務報告に係る内部統制の不備または開示すべき重要な不備が発生した場合には、エプソンの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。

 

(16)他社との提携について

エプソンは、事業戦略の選択肢の一つとして、他社と業務提携などを行うことがあります。しかしながら、当事者間における提携などの見直しにともない、提携関係が解消される可能性があるほか、提携内容の一部変更が行われる可能性があります。また、提携などによる事業戦略が必ずしも想定どおり成功し、エプソンの経営成績などに寄与する保証はありません。

 

(17)災害などについて

エプソンは、研究開発、調達、製造、物流、販売およびサービスの拠点を世界に展開していますが、これらの地域において予測不可能な自然災害、新型インフルエンザなどの新興感染症の流行、コンピュータウイルスの感染、顧客データの漏洩、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)における風評被害の発生、社内重要基幹システムの障害発生、サイバー攻撃、部品調達先などでの罹災などによるサプライチェーン上の混乱、戦争・テロなどが発生した場合には、エプソンの経営成績や事業展開などに影響を及ぼす可能性があります。

これらのうち、特にエプソンの主要な事業拠点が所在する長野県中部は、糸魚川静岡構造線に沿った活断層帯があるなど、地震発生リスクが比較的高い地域であるため、エプソンでは、設備の耐震構造強化のほか、防災訓練などの地震防災計画や事業継続計画の策定などにより、かかる災害にともなう影響の軽減に向けた対応を可能な範囲において行っています。

しかしながら、長野県中部に大規模な地震が発生した場合には、これらの施策にもかかわらず、エプソンが受ける影響は甚大なものになる可能性があります。なお、エプソンは、地震により発生する損害に対しては地震保険を付保しているものの、その補償範囲は限定されています。

このほか、新型コロナウイルス感染拡大によるエプソンへの影響については、各国政府などからの移動制限や操業自粛などの措置による、調達・生産・出荷の停滞または大幅な遅延、国内外での個人消費・設備投資需要の落込みやBtoB ビジネス・入札案件遅れなどが長期化または拡大した場合には、エプソンの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

このような状況を踏まえ、エプソンでは、従業員とその家族、お客様・株主様を含めたすべてのステークホルダーの皆様の安全・健康を最優先に取り組むとともに、生産・販売活動の正常化に向けた対応を迅速に進め、これらの混乱からより早期に脱却を図ります。また、現時点において財務の健全性は十分保たれていますが、金融機関とのコミットメントライン契約などにより、資金手当てに万全を期しております。

新型コロナウイルス感染拡大による影響が継続する間はもとより、沈静化した後の社会においても、例えば移動や人との接触・対面などを必ずしも必要としない生活様式への変容など、様々な大きな社会の変化が進むことが予想されます。エプソンは、こうした社会の大きな変容に対して、これまで進めてきた「デジタル化」、「働きかた改革」、「環境負荷低減」などへの取り組みをより一層加速し、予想される社会課題の解決による事業機会に積極的に取り組むことにより、かかるリスクの最小化を図っていく方針です。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

当連結会計年度における経済環境を顧みますと、第3四半期までの景気は緩やかな回復基調で推移しましたが、年度末に向けて新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、急速な減速となりました。また、今後についても、さらに新型コロナウイルスの感染者数・エリアが拡大し、急速な景気減速が継続することが懸念されます。地域別に見ますと、年度末に向けて新型コロナウイルスの影響により、経済活動の大幅な縮小が生じたことなどから、日米欧および新興国において急速に減速し、さらに中国では第4四半期でマイナス成長に転じました。

当連結会計年度の米ドルおよびユーロの平均為替レートはそれぞれ108.74円および120.85円と前期に比べ、米ドルは2%の円高、ユーロは6%の円高に推移しました。また、中国や南米など新興国の通貨についても円高に推移しました。

 

こうした経営環境の下、当連結会計年度の経営成績につきましては、以下のとおりとなりました。

(億円)

 

前連結

会計年度

当連結

会計年度

増減金額

増減率

主な増減理由

売上収益

10,896

10,436

△460

△4.2

[売上収益]

プリンティングソリューションズ事業セグメント △150

ビジュアルコミュニケーション事業セグメント  △199

ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント  △104

 

[事業利益]

プリンティングソリューションズ事業セグメント △188

ビジュアルコミュニケーション事業セグメント   △76

ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント   △36

売上原価

△6,770

△6,816

△45

売上総利益

4,126

3,620

△506

△12.3

販売費及び

一般管理費

△3,421

△3,211

209

事業利益(※)

704

408

△296

△42.0

その他の営業収益・

その他の営業費用

8

△13

△22

受取保険金の増加の一方、遊休不動産の売却益の減少および為替差損の増加等により減少

営業利益

713

394

△318

△44.7

 

金融収益・金融費用

5

1

△4

為替差益等の減少

税引前利益

720

397

△323

△44.9

 

法人所得税費用

△179

△318

△138

繰延税金資産の取崩し等による増加

当期利益

540

78

△462

△85.5

 

親会社の所有者に

帰属する当期利益

537

77

△459

△85.6

 

※事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

 

(プリンティングソリューションズ事業セグメント)

プリンター事業の売上収益は減少となりました。オフィス・ホーム用インクジェットプリンター本体は、大容量インクタンクモデルでは従来の新興国を中心とした販売活動に加え、北米、西欧および日本などの先進国を中心に、エンドユーザーへの商品認知を広める活動や販売プロモーション強化を行ったこと、新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、在宅業務や家庭学習の機会が増加したことによる家庭での印刷ニーズの高まりが販売の増加に寄与したこと等から、増加しました。一方、SOHO・ホーム向けインクカートリッジモデルは、競合他社によるプロモーションが激しくなる中において、必要以上のプロモーションを抑制し、価格維持を図ったことなどにより販売数量が減少となりました。これらに加え、為替のマイナス影響も受けたことから、オフィス・ホーム用インクジェットプリンター本体全体では前期並みとなりました。消耗品は、大容量インクタンクモデル用ボトルは増加しましたが、SOHO・ホーム向けインクカートリッジは本体稼働台数の減少および為替のマイナス影響により、売上減少となりました。また、シリアルインパクトドットマトリクスプリンターについても、新型コロナウイルスの影響もあり市場縮小が加速したこと、さらに為替のマイナス影響が加わり、売上減少となりました。

プロフェッショナルプリンティング事業の売上収益は前期並みとなりました。商業・産業用インクジェットプリンターは成長市場であるサイネージおよびテキスタイル分野が堅調に推移し、増加となりました。POSシステム関連製品はイタリアでの税制改定に伴う需要増はありましたが、新型コロナウイルスの影響および為替のマイナス影響により、売上減少となりました。

その他はOS切り替えに伴うPCの需要増により、増収となりました。

プリンティングソリューションズ事業セグメントのセグメント利益は、大容量インクタンクモデルやPC等の増収影響があったものの、将来成長に向けた戦略的な費用投下や為替のマイナス影響もあり、減少となりました。

以上の結果、プリンティングソリューションズ事業セグメントの売上収益は7,086億円(前期比2.1%減)、セグメント利益は756億円(同20.0%減)となりました。

 

(ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)

ビジュアルコミュニケーション事業の売上収益は、北米、中国やインドなどでのプロジェクター市場の縮小によりボリュームゾーンの商品で販売が減少となり、新型コロナウイルスや為替のマイナス影響も加わり、減少となりました。

ビジュアルコミュニケーション事業セグメントのセグメント利益は、将来成長に向けた費用投下の効率化を進めていますが、減収影響に加え、為替のマイナス影響により減少となりました。

以上の結果、ビジュアルコミュニケーション事業セグメントの売上収益は1,833億円(前期比9.8%減)、セグメント利益は135億円(同36.1%減)となりました。

 

(ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント)

ウエアラブル機器事業の売上収益は、高価格帯商品は堅調に推移した一方、低・中価格帯商品およびムーブメントの販売が低調なことに加え、新型コロナウイルスの影響によりインバウンド需要がさらに低下したことにより、減少となりました。

ロボティクスソリューションズ事業の売上収益は、米中貿易摩擦による影響が継続したこと等から、欧州を中心に設備投資需要が減退し、減少となりました。

マイクロデバイス事業の売上収益は、水晶デバイス及び半導体で前期並みとなったものの、為替のマイナス影響もあり、減少となりました。

ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントのセグメント利益は、ウエアラブル機器事業を中心とした減収影響が大きく、為替のマイナス影響もあり、減少となりました。

以上の結果、ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントの売上収益は1,529億円(前期比6.4%減)、セグメント利益は18億円(同66.6%減)となりました。

 

(その他)

その他の売上収益は9億円(前期比3.0%減)、セグメント損失は5億円(前期は5億円のセグメント損失)となりました。

 

(調整額)

報告セグメントに帰属しない基礎研究に関する研究開発費や新規事業・本社機能に係る費用の計上などにより、報告セグメントの利益の合計額との調整額が△496億円(前期の調整額は△502億円)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは1,023億円の収入(前期は769億円の収入)となりました。これは当期利益が78億円であったのに対し、減価償却費及び償却費の計上684億円や法人所得税費用318億円などの増加要因があったことによります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産および無形資産の取得による支出757億円などがあったことにより、761億円の支出(前期は827億円の支出)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の増加299億円や社債発行298億円などによる増加要因があった一方で、配当金の支払216億円、自己株式の取得による支出102億円、社債の償還100億円、短期借入金の純減98億円やリース負債の返済による支出82億円などがあったことにより、2億円の支出(前期は494億円の支出)となりました。

以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、1,962億円(前期は1,752億円)となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

前期比(%)

プリンティングソリューションズ事業(百万円)

691,333

97.0

ビジュアルコミュニケーション事業(百万円)

177,235

88.0

ウエアラブル・産業プロダクツ事業(百万円)

142,810

92.6

 セグメント計(百万円)

1,011,379

94.7

その他(百万円)

合計(百万円)

1,011,379

94.7

(注)1.上記金額は、販売価格により示しており、セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

3.上記金額には、外注製品仕入高等が含まれております。

 

b.受注実績

 エプソンでは、製品の性質上、原則として見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

前期比(%)

プリンティングソリューションズ事業(百万円)

707,816

97.9

ビジュアルコミュニケーション事業(百万円)

183,345

90.2

ウエアラブル・産業プロダクツ事業(百万円)

145,072

94.2

 セグメント計(百万円)

1,036,234

95.9

その他(百万円)

186

99.0

合計(百万円)

1,036,420

95.9

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

3.総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点によるエプソンの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。

経営成績等

(財政状態

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に対して25億円増加し、1兆409億円となりました。これは主に、棚卸資産の減少173億円や売上債権及びその他の債権が153億円減少した一方で、会計方針の変更(新リース会計基準の適用)などによる有形固定資産の増加385億円があったことなどによるものです。

 負債合計は、前連結会計年度末に対して392億円増加し、5,348億円となりました。これは主に、仕入債務及びその他の債務の減少193億円やその他の流動負債の減少50億円があった一方で、会計方針の変更(新リース会計基準の適用)や社債の発行などにより社債、借入金及びリース負債の増加673億円があったことなどによるものです。

 なお、親会社の所有者に帰属する持分合計は、前連結会計年度末に対して364億円減少し5,037億円となりました。これは主に、配当金の支払216億円や円高進行にともなう在外営業活動体の換算差額の減少を主因とするその他の資本の構成要素の減少129億円があったことなどによるものです。

 運転資本(流動資産から流動負債を差し引いた金額)は、前連結会計年度末と比較して124億円増加し、3,375億円となりました。

 また、新型コロナウイルスの影響は不透明な状況ですが、当社の財政状態は健全性を保っていることに加え、資金についても十分な手当てが出来ています。

 

(経営成績)

 経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

(キャッシュ・フローの状況)

 キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

②資金の源泉および流動性

 エプソンでは、設備投資等の事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用および金融機関からの借入と社債の発行により資金を調達しております。

 有利子負債の当連結会計年度末残高は、会計方針の変更(新リース会計基準の適用)や社債の発行などにより、前連結会計年度と比較して673億円増加し、2,096億円となりました。現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度と比較して210億円増加し、1,962億円となりました。手元流動性は十分に確保しております。

 なお、エプソンは、株式会社格付投資情報センターから信用格付を取得しており、当連結会計年度末において、A(シングルA)となっております。

 

③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 エプソンは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、長期ビジョン「Epson 25」およびこの実現に向けた中期経営計画に基づく成長戦略を推進し、事業基盤や財務構造の強化を図ることにより、2025年度の業績目標(為替レート前提:1米ドル 115円・1ユーロ 125円)として、売上収益:1兆7,000億円、事業利益:2,000億円、ROS(事業利益/売上収益):12%、ROE(当期利益/親会社所有者帰属持分):15%を目指しています。

 今後、独自の強みを発揮できる各イノベーション領域において、上記の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」で掲げた各事業の将来成長に向けた施策を成し遂げ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることにより、業績目標の実現に取り組んでまいります。

 

④重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

 エプソンの結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

 なお、エプソンの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積りおよび見積りを伴う判断」に記載しております。

 また、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響について、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積りおよび見積りを伴う判断」ならびに「第5 経理の状況 2 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

相互技術援助契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約内容

契約期間

当社

HP Inc.

アメリカ

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2018年3月28日から許諾特許の権利満了日まで

当社

International Business Machines
Corporation

アメリカ

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2006年4月1日から許諾特許の権利満了日まで

当社

Microsoft Corporation

アメリカ

情報関連機器およびこれに用いるソフトウェアに関する特許実施権の許諾

2006年9月29日から許諾特許の権利満了日まで

当社

Eastman Kodak Company

アメリカ

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2006年10月1日から許諾特許の権利満了日まで

当社

Xerox Corporation

アメリカ

電子写真およびインクジェットプリンターに関する特許実施権の許諾

2008年3月31日から許諾特許の権利満了日まで

当社

キヤノン株式会社

日本

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2008年8月22日から許諾特許の権利満了日まで

当社

ブラザー工業株式会社

日本

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2018年6月28日から許諾特許の権利満了日まで

 

5【研究開発活動】

エプソンは、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を源泉とする「マイクロピエゾ」「マイクロディスプレイ」「センシング」「ロボティクス」のコア技術を徹底的に極め、これらをあらゆるお客様に提供できるように共通化(プラットフォーム化)し、お客様の期待を超える価値ある製品・サービスを創り出すことを目指して研究開発活動を行っています。

この基本方針のもと、将来に向けたコア技術・デバイスの開発やものづくり基盤の強化に加え、新規事業創出や事業強化などのための技術基盤の構築のほか、各事業における製品の競争力向上などに本社開発部門および事業部開発部門が連携のうえ取り組んでいます。

当連結会計年度の研究開発費総額は492億円であり、各セグメントの内訳は、プリンティングソリューションズ事業が175億円、ビジュアルコミュニケーション事業が102億円、ウエアラブル・産業プロダクツ事業が50億円、その他および全社が164億円です。

各セグメントの主な開発成果は、次のとおりです。

 

(プリンティングソリューションズ事業セグメント)

プリンター事業においては、家庭用インクジェットプリンターの新製品として、本体に大容量インクタンクを搭載した「エコタンク搭載モデル」を発売しました。本製品は、インクタンクがプリントヘッドに搭載されているオンキャリッジ式で、コンパクトデザインを実現し、手が汚れにくい「挿すだけ満タン」インク方式の採用により、インクの充填も簡単に行えます。インク残量の有無は本体前面のLEDで表示し、インク残量がある場合は白色で点灯、なくなった場合は点滅でお知らせします。常時消灯も可能であり、液晶パネルからもインク残量の確認ができます。

「エプソンのスマートチャージ」にプリントからフィニッシングまで進化した<LX>シリーズ3モデル、省スペース化と機能も進化した<PX>3シリーズ3モデルの計6モデルを発売しました。<LX>シリーズは、PrecisionCore ラインヘッドを搭載し、従来の100、75枚/分(※1)に加えて、60枚/分(※1)を新たに追加し、中速から高速機までラインアップを強化しました。本製品は、両面印刷など印刷パターンや用紙サイズに依存せずにそのスピードを実現します。ファーストコピータイム(※2)も「LX-10050MFシリーズ」で約4.9秒と高速であり、1枚目から大量印刷まであらゆるプリントシーンに高速で応えます。また、<PX>シリーズは、ファーストプリント(※3)は5.5秒とカウンター業務でもお客様をお待たせしないスピードです。加えて、本体に搭載した温湿度センサーにより、最適な乾燥時間を検出できるため、スピーディーに両面印刷を行なえます。本製品は、大量のスキャンやコピーを便利にスピーディーに完了させる150枚セット可能のADF(オートドキュメントフィーダ)を搭載しており、特に両面同時スキャンは業務の効率化に大きく貢献します。

プロフェッショナルプリンティング事業においては、サイン&ディスプレイ業界向けエコソルベントインク搭載大判インクジェットプリンターの新製品として、インクパックを採用した10色インク搭載「SC-S80650L」および4色インク搭載「SC-S60650L」の2モデルを発売しました。本製品は、2016年5月発売の現行モデル「SC-S80650」「SC-S60650」が持つ「高画質」「高生産性」「信頼性」はそのままに、大量印刷時の「インクカートリッジの交換が手間」というお客様の声にお応えし、新たにインクパックを採用しました。インクパックは、現行モデル(※4)で採用しているインクカートリッジの約2倍以上(※5)となるインク容量を実現したことで、大量印刷業務におけるインク交換頻度を減らし、生産性向上に寄与します。

また、昇華転写プリンターでは、エプソン初(※6)となる蛍光インク搭載6色モデル「SC-F9450H」と4色モデル「SC-F9450」、計2モデルを発売しました。本製品は、2017年9月発売の従来機「SC-F9350」が持つ高い信頼性および高生産性と高画質を兼ね備えたモデルであり、昇華転写プリンターではエプソン初(※6)となる蛍光インク(イエロー、ピンク)を搭載し、鮮やかでデザイン性が高いスポーツウェアなどの制作に適しています。

※1 A4横片面。印刷スピード算出方法についての詳細は、エプソンのホームページをご覧ください。

※2 測定基準:自社基準、印刷用紙:A4普通紙、印刷品質:標準、原稿セット方向:左向き、背景除去:自動オフ、印刷開始ボタンを押してから1枚目の印刷が完了し排紙されるまでの時間。なお、印刷原稿によってパフォーマンスが変わることがあります。

※3 測定基準:ISO/IEC17629、測定データおよび測定条件につきましては、エプソンのホームページでご確認ください。

※4 SC-S80650/SC-S60650

※5 メタリックシルバーは除く。

※6 2019年10月23日時点、昇華転写プリンターにおいて。

 

(ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)

ビジネスプロジェクターの高輝度モデル、インタラクティブ機能搭載モデル、サイネージモデルの新製品として、全8機種11モデルを発売しました。本製品は、レーザー光源搭載で5,500lm~9,000lmまでの幅広い明るさに対応する「EB-L1070シリーズ/EB-L1490U/EB-L1495U」6機種9モデル、空間になじむシンプルな本体デザインに一新し、使い勝手を向上したインタラクティブ機能搭載モデル「EB-1485FT」1機種1モデル、さらにランプ光源でありながら10,000時間の長寿命を実現するサイネージモデル「EB-W50」1機種1モデルです。本製品の発売により、ビジネスプロジェクターのラインアップを強化するとともに、導入・活用のしやすさをより高めたソリューションを提供し、企業・教育機関・店舗・商業施設など、小規模空間から大規模空間まで、あらゆる映像シーンでお客様のご要望にお応えします。また、3LCD方式のホームプロジェクター「dreamio(ドリーミオ)シリーズ」の新製品として、「EH-LS500B」「EH-LS500W」「EH-TW7100」「EH-TW7000」を発売しました。「EH-LS500B」「EH-LS500W」は、壁の前に置くだけで最大130インチの4K(※7)映像が楽しめるレーザー光源採用の超短焦点プロジェクターです。通常のプロジェクターに比べ、非常に短い距離から大画面投写が可能なため、設置スペースの確保が難しいお客様にもお使いいただけます。「EH-TW7100」は10Wスピーカー2つを内蔵し、コントラスト比10万:1、「EH-TW7000」はスピーカー非搭載、コントラスト比4万:1のお求めやすい価格を実現したモデルです。ともに3000lmの明るさで、リビングで手軽に4K高画質大画面を楽しむことができます。Bluetooth®対応のオーディオ機器との簡単接続やゲームなどの動きの速いコンテンツに対応した設定など便利な機能を搭載しています。

※7 4K信号を入力し、4Kエンハンスメントテクノロジーによる4K相当の高画質で表示します。

 

(ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント

ロボティクスソリューションズ事業においては、コントローラー内蔵の6軸(垂直多関節型)ロボット「VT6L」に設置環境の幅が広がるクリーン仕様(※8)、プロテクション仕様(※9)の2モデルを追加・発売しました。本製品は、可搬重量が6kg、アーム長は920mmであり、電子・電気部品や自動車部品の人手による単純な搬送、組み立て作業などを自動化することに適した6軸ロボットのエントリーモデルです。本体とコントローラーの一体化により、スペースが限られた場所でも設置可能です。クリーン仕様は、クリーンルーム内での電子・電気部品などの組み立てなどの作業にて使用できます。また、プロテクション仕様は、高い規格レベル(※9)の防塵・防水性に対応し、部品の研磨作業などを実施している環境において設置可能となり、ロボットの活躍の幅が広がります。

また、色味検査の自動化を実現する小型・軽量の分光カメラを開発しました。本製品は、製造ラインに組み込める小型・軽量の分光カメラであり、お客様の色味の管理に関する工程に対し、3つの価値「自動化により検査を定量化できる」「製造ラインの中に組み込める」「合成の手間無く画像を出力できる」を提供し、これらにより、ものづくりに取り組むお客様は、従来よりも手軽に製造工程における色味の管理を行うことが可能となります。

マイクロデバイス事業においては、リアルタイムクロックモジュール(※10)の新ラインアップとして、3.2×2.5×1.0㎜サイズの小型パッケージ品にタイムスタンプ機能を備えた「RX8111CE」「RX4111CE」を開発しました。本製品は、当社従来品「RX8130CE」の特長である、小型、32.768kHz振動子内蔵(調整済)、バックアップ電源自動切替機能のほか、機能面で新たにタイムスタンプ機能を加えました。本機能は、イベント発生時に時刻情報を保持する機能で、例えばシステムのソフトウェアアップデート時刻や電池交換した時刻または異常アラート発生時刻などにご利用いただけます。本タイムスタンプ情報は、バックアップ電源切替え駆動時でも保持し、堅牢性の高いシステム構築に寄与いたします。本製品の消費電流は、従来品「RX8130CE」の300nAからその3分の1の100nAへと大幅に削減し、これにより、従来よりも小型で安価な2次電池やキャパシタも使用ができるようになりました。また、従来のI2C-Bus(※11)インターフェースに加えSPI-Busインターフェースもご用意しています。

このほか、低消費電力16ビットフラッシュメモリー内蔵マイコンの新製品として、エアコンなどの家電リモコン製品やタイムスイッチやカウンタなどの小型FA機器に最適な「S1C17M40」を開発しました。本製品は、従来の「S1C17M3シリーズ」と同じく、液晶表示向けとして最適な仕様を備えた汎用性の高いマイコンです。加えて、内蔵発振回路の機能を「S1C17M3シリーズ」の±1%(動作温度25℃)から±1%(動作温度0~85℃)に向上させ、かつ繰り返しデータの書き換えが可能なEEPROMをエプソン製マイコンでは初めて内蔵し、ワンチップ化した点を特長としています。これにより、さらに新たな用途が広がり、家電リモコンから小型FA機器まで、さまざまなお客様製品の部品点数や実装面積の削減に貢献します。

※8 クリーン度 クラス4(ISO14644-1)

※9 保護等級 IP67(IEC規格)
人体・固形物体に対する保護:完全な防塵構造。
水の侵入に対する保護:規程の圧力、時間で水中に没しても水が浸入しない。

※10 リアルタイムクロックモジュール:時計・カレンダー機能などを持ったリアルタイムクロックICと32.768kHz水晶振動子を一つのパッケージに内蔵した製品。これにより、発振回路設計、時計精度調整が不要になるとともに、お客様における回路基板のスペース効率を向上できるメリットがあります。

※11 I2C-Busは、NXP Semiconductorsの商標です。

 

(その他および全社)

高性能な3軸加速度センサーの新ラインアップとして、産業用途に最適なインターフェースであるCAN(※12)対応の「M-A552AC1」とRS-422(※13)対応の「M-A552AR1」を開発しました。本製品「M-A552AC1」「M-A552AR1」では、2019年5月からサンプル出荷を開始した「M-A352」の性能を維持しつつ、お客様からご要望が強かった産業分野で幅広く採用されているCANおよびRS-422インターフェースをそれぞれ標準装備し、金属筐体パッケージ化により、IP67相当の防水・防塵性能を実現しました。これらの高い耐環境特性により、長距離、高安定性、高信頼性が要求される多様な産業アプリケーションへ適用可能です。本製品は、構造ヘルスモニタリングなどの産業分野で要求される高性能で柔軟なシステムの構築を軽易にできます。さらに、多ノード(多点)計測や同期計測といった複雑で高度な計測システムの構築も容易に実現可能です。また、屋外などの厳しい環境下でも、簡単に設置、接続し計測できるため、お客様のシステム開発期間を大幅に短縮できます。

※12 CAN(Controller Area Network):車載機器・産業機器などで使用されるネットワークプロトコル

※13 RS-422:産業・工業製品などで使用されるシリアル転送のインターフェース仕様