第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。

 

(1)経営の基本方針

エプソンは、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を基盤として、自らの常識やビジョンを超えて果敢に挑戦しイノベーションを生むことにより、画期的なお客様価値を継続的に創造し、より良い社会の実現に「なくてはならない会社」として中心的な役割を果たすことを目指しています。

そして、以下の経営理念およびグローバルタグラインのもと、お客様の期待を超える価値の創出に向けて、全社員が価値観を共有のうえ総合力を発揮し自律的に行動することにより、目指す姿の実現に努めてまいります。

 

経営理念

お客様を大切に、地球を友に、
個性を尊重し、総合力を発揮して
世界の人々に信頼され、社会とともに発展する
開かれた、なくてはならない会社でありたい。
そして社員が自信を持ち、
常に創造し挑戦していることを誇りとしたい。

 

EXCEED YOUR VISION

私たちエプソン社員は、
常に自らの常識やビジョンを超えて挑戦し、
お客様に驚きや感動をもたらす
成果を生み出します。

 

(2)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題

エプソンは、将来にわたって追求する「ありたい姿」として設定した「持続可能でこころ豊かな社会の実現」に向け、2021年3月に長期ビジョンを見直し、「Epson 25 Renewed」を策定しました。また、エプソンとして重視している環境問題への対応では、「環境ビジョン2050」を改定し、2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源(※1)消費ゼロ」の達成を目指すこととしました。

※1 原油、金属などの枯渇性資源

 

①エプソンが将来にわたって追求する「ありたい姿」

現在、気候変動や新型コロナウイルスをはじめ、人類はさまざまな社会課題に直面しています。また、物質的、経済的な豊かさだけでなく、もっと精神的な豊かさ、文化的な豊かさ、そういったさまざまな豊かさを含めた「こころの豊かさ」こそが望まれる時代となったと考えています。そのためには、持続可能な社会であることが大前提になります。このような背景のもと、エプソンは、常に社会課題を起点として、その解決に向けて私たちに何ができるか、私たちの技術を使ってどう課題解決し、社会に貢献できるか、という発想でビジネスを展開していきます。これにより、今後、上述のエプソンが将来にわたって追求する「ありたい姿」の実現に取り組んでまいります。

 

②「Epson 25 Renewed」

a.「Epson 25」振り返り

従来の長期ビジョン「Epson 25」の策定後、上述のように社会環境は大きく変化してきています。加えて、製品・サービスの拡充や基盤強化の取り組みを進めてまいりましたが、十分な成果には結びついておらず、以下に掲げるいくつかの問題点と要因があったと認識しています。

これらの振り返りを踏まえた対応として、事業領域の目指す姿を再定義し、戦略を進化させると同時に、今後、事業領域を跨いだ「環境」「DX」「共創」の取り組みを強化していきます。また、事業ポートフォリオを明確化し、適切な経営資源配分を行うとともに、戦略実行を支える経営基盤の一層の強化にも取り組みます。

 

 

問題点

要因

対応

●過度な売上成長を前提とした計画

●戦略実行スピードの不足

●環境変化への対応遅れ

 

 

 

 

 

 

●顧客理解・競合視点が不足し、性能の良いモノを作れば売れるというマインド

●社会要請変化への感度の不足と、全社戦略への落とし込みの弱さ

●戦略実行のための能力不足と自前主義への偏重

 

 

●事業領域の目指す姿の再定義と戦略進化

●事業領域を跨いだ全社戦略の強化

●事業ポートフォリオ明確化による成長・新規領域への経営資源配分

●戦略を実行するための経営基盤強化

 

 

 

 

b.外部環境認識

「Epson 25 Renewed」を実現するにあたり、エプソンを取り巻く外部環境として、以下の点を認識しています。

●デジタル化、AIなどの進化により、消費や生活様式が多様化するというメガトレンドが加速し、前倒しで進んでいる

●環境問題をはじめとした社会課題解決に対する要求が高まっている

●遠隔地での業務、非接触での交流など、新たな生活様式が求められる中で、分散化が加速している

●分散化による、コミュニケーションの阻害や分断などの課題に対し、「つながる」こと、「情報」の重要性がさらに高まっている

 

c.ビジョンステートメント

今回、「Epson 25 Renewed」のビジョンステートメントとして、『「省・小・精の技術」とデジタル技術で人・モノ・情報がつながる、持続可能でこころ豊かな社会を共創する』と定めました。

前述した外部環境認識を踏まえ、人・モノ・情報をスマートにつなげるソリューションを、個人の生活や、産業や製造の現場にまで広く社会へ提供し、ありたい姿の実現のために取り組みます。そこで重要となるのは、「環境」「DX」「共創」の3つの取り組みです。

 

(環境への取り組み)

●「脱炭素」と「資源循環」に取り組むとともに、環境負荷低減を実現する商品・サービスの提供、環境技術の開発を推進する

(DXへの取り組み)

●強固なデジタルプラットフォームを構築し、人・モノ・情報をつなげ、お客様のニーズに寄り添い続けるソリューションを共創し、カスタマーサクセスに貢献する

(共創への取り組み)

●技術、製品群をベースとし、共創の場・人材交流、コアデバイスの提供、協業・出資を通して、さまざまなパートナーと社会課題の解決につなげる

 

d.「Epson 25 Renewed」方針

不透明な社会環境の継続が予想されるなか、取り組みにメリハリをつけることにより、収益性を確保しながら将来成長を目指します。そして、全ての領域に必要な環境、DX、共創への取り組みも継続的に強化していきます。

領域区分

対象事業

方針

成長領域

オフィスプリンティング、商業・産業プリンティング、プリントヘッド外販、生産システム

環境変化を機会と捉えて経営資源投下

成熟領域

ホームプリンティング、プロジェクション、ウオッチ、マイクロデバイス

構造改革や効率化などにより、収益性重視

新領域

センシング、環境ビジネス

新たな技術・ビジネス開発に取り組む

 

e.イノベーション戦略

今回、目指す姿の実現に向けた戦略を実行するために、以下のとおりイノベーション領域を5領域に再編しました。加えて、従来は、テクノロジーを軸にイノベーションの実現を目指していましたが、お客様価値や社会課題の軸でイノベーション領域を設定しています。

また、これら5つのイノベーションを支えるマイクロデバイス事業においては、「省・小・精の技術」を極めた水晶・半導体ソリューションにより、スマート化する社会の実現に貢献していきます。

そして、持続可能な社会実現に向けて、環境への貢献を重要課題に据え、材料技術の融合により、環境ソリューションビジネスを創出し、脱炭素と資源循環に貢献します。

 

イノベーション領域

目指す姿

お客様への提供価値

オフィス・ホーム プリンティングイノベーション

インクジェット技術・紙再生技術とオープンなソリューションにより、環境負荷低減・生産性向上を実現し、分散化に対応した印刷の進化を主導する

生産性向上、環境負荷低減、印刷の分散化、在宅学習の支援、印刷コストの低減、高画質印刷

商業・産業 プリンティングイノベーション

インクジェット技術と多様なソリューションにより、印刷のデジタル化を主導し、環境負荷低減・生産性向上を実現する

デジタルならではの表現力、小ロット・短納期生産、分散生産・近消費地生産、廃棄物削減、職場環境の改善、流通の変化への対応

マニュファクチャリングイノベーション

環境負荷に配慮した「生産性・柔軟性が高い生産システム」を共創し、ものづくりを革新する

小ロット多品種対応、労働力不足解消、分散生産・近消費地生産、環境負荷低減・資源循環、省スペース、システム構築の負荷低減

ビジュアルイノベーション

感動の映像体験と快適なビジュアルコミュニケーションで人・モノ・情報・サービスをつなぎ、「学び・働き・暮らし」を支援する

公平で質の高い教育環境、生産性と創造性の向上、多様な働き方・ライフスタイル支援、生活に彩りを提供

ライフスタイルイノベーション

匠の技能、センシング技術を活用したソリューションを共創し、お客様の多様なライフスタイルを彩る

お客様個々の感性に訴える、自己発電機能による徹底した環境性能向上、パーソナライズされた情報、ライフスタイルに合わせた支援、働き方改革

 

f.経営基盤強化の取り組み

エプソンは、今後、上述の各イノベーションの実現に向けて、以下のとおり経営基盤強化に取り組んでまいります。

 

施策

取り組み

営業戦略

●デジタルを活用した顧客支援型営業

- ソリューション提案型営業の深化

- デジタル活用による時間と場所の制約を受けない顧客接点の創出・拡大

●地域別、領域別の重点的な組織強化

生産戦略

●COVID-19拡大を契機に従来戦略を加速

- 自動化・デジタル化により2025年度に生産性2倍

- 分散生産、近消費地生産の強化

- 投資総額 約400億円(5年間)

技術開発戦略

●イノベーションを支える基盤技術、コア技術、製品技術を進化

- 特に材料・AI・デジタル技術を強化

人材戦略

●強化領域への人材重点配置

- スペシャリストの獲得

- 成長領域への重点配置

●人材育成強化

- 専門教育の充実

- 知識・経験の幅を広げるローテーションの加速

●組織活性化

- ダイバーシティを尊重し、チーム力を最大限に発揮

- 自由闊達で風通しの良い組織風土作り

- 働き方の多様化に対応

 

g.財務目標

上述の「Epson 25 Renewed」の実現に向けて、収益性重視の経営へとシフトし、過度な売上成長を追わず、取り組みにメリハリをつけ、収益性の確保と将来成長を目指します。この方針に則り、ROIC、ROEおよびROSを財務目標として設定しました。

 

全社業績目標

2020年度(実績)

2023年度(目標)

2025年度(目標)

ROIC(※2)

5.6%

8%以上

11%以上

ROE

5.9%

10%以上

13%以上

ROS

6.2%

8%以上

10%以上

※2 ROIC=税引後事業利益/(親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債)

 

新たにROICを財務目標の一つとして設定したことで、より資本効率の高い経営が求められます。そのためエプソンは収益性と自社成長性の位置づけを明確にした事業ポートフォリオ管理を導入し、効率的な資本循環を実現し、経営効率性を上げていきます。エプソンのビジネス領域を上述のとおり「成長領域」「成熟領域」「新領域」に大別し、位置づけに合わせた資本配分および目標設定を行い、それらを定期的に見直すというサイクルを回す中で、事業の方向性も判断していきます。

 

h.キャッシュ・アロケーション

創出したキャッシュは、成長・新領域や環境関連を中心とした投資へ重点配分しつつ、継続的・安定的に株主還元を実施し、資金需要などを総合的に勘案しながら有利子負債の返済などの財務体質強化を実現します。

 

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i.ガバナンス強化への取り組み

「Epson 25 Renewed」の実現に向けて、引き続き経営意思決定の透明性確保および迅速化を図ります。そのために、取締役会の実効性向上や投資家などとの継続的なエンゲージメントに取り組むとともに、経営判断の迅速化を目的として、グローバル統合IT基盤の整備による情報の一元管理を進めてまいります。

 

③「環境ビジョン2050」

エプソンは、今回、以下のとおり持続可能な社会の前提である環境への取り組みに関するビジョン「環境ビジョン2050」を改定し、2050年に達成する目標と、その実現に向けた取り組みを定めました。

 

項目

内容

ビジョン

ステートメント

2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源消費ゼロ」を達成し、持続可能でこころ豊かな社会を実現する

達成目標

2030年:1.5℃シナリオ(※3)に沿った総排出量削減

2050年:「カーボンマイナス」、「地下資源消費ゼロ」

アクション

●商品・サービスやサプライチェーンにおける環境負荷の低減

●オープンで独創的なイノベーションによる循環型経済の牽引と産業構造の革新

●国際的な環境保全活動への貢献

※3 SBTイニシアチブ(Science Based Targets initiative)のクライテリアに基づく科学的な知見と整合した温室

   効果ガスの削減目標

 

④気候変動への取り組みとTCFD

気候変動が社会に与える影響は大きく、エプソンとしても取り組むべき重要な社会課題だと捉えています。パリ協定の目指す脱炭素社会(世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする)の実現に向け、エプソンは2030年に「1.5℃シナリオに沿った総排出量削減」に取り組んでいます。また、「Epson 25 Renewed」の公表に合わせ「環境ビジョン2050」を改定し、その目標として掲げる2050年の「カーボンマイナス」「地下資源消費ゼロ」に向け、脱炭素と資源循環に取り組むとともに、環境負荷低減を実現する商品・サービスの提供、環境技術の開発を推進しています。

エプソンは2019年10月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明して以降、株主・投資家をはじめとする幅広いステークホルダーとの良好なコミュニケーションがとれるように、TCFDのフレームワークに基づき、情報開示(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)を進めています。2021年には財務影響度をエプソンとして初めて定量的に開示することにしました。

 

a.ガバナンス

気候変動に係る重要事項は、社長の諮問機関としてグループ全体のサステナビリティ活動の中長期戦略を策定・実践状況のレビューを行う「サステナビリティ戦略会議」で議論の上、定期的に(年に1回以上)取締役会に報告することで、取締役会の監督が適切に図られる体制をとっています。

また、気候関連問題に対する最高責任と権限を有する代表取締役社長は、サステナビリティ推進室長(取締役常務執行役員)を気候関連問題の責任者に任命し、サステナビリティ推進室長は、TCFDを含む気候変動に関する取り組みを管理・推進しています。

 

推進体制
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b.戦略

エプソンは、価値創造ストーリーの中で、「循環型経済の牽引」「産業構造の革新」をマテリアリティとして設定しています。これを達成するために、エプソンの技術の源泉である「省・小・精の技術」を基盤に、イノベーションを起こし、さらなる温室効果ガス(GHG)排出量削減に取り組んでいきます。

エプソンは、気候関連のリスク・機会の重要性評価に向け、「移行リスク」「物理リスク」「機会」の区分でシナリオ特定と評価を実施し、6つの評価項目を選定しました。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)と国際エネルギー機関(IEA)が提示する気温上昇1.5℃に相当するシナリオと社内外の情報に基づき、事業インパクトと財務影響度を評価しました。

シナリオ分析に基づいた気候関連リスク・機会の評価結果は以下の通りです。

 

 

 

■ 1.5℃シナリオにおける気候関連リスク・機会
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c.リスク管理

企業を取り巻く環境が複雑かつ不確実性を増す中、企業活動に重大な影響を及ぼすリスクに的確に対処することが、経営戦略や事業目的を遂行していく上では不可欠です。

エプソンは、気候関連問題を経営上の重大な影響を及ぼすリスクとして位置付け、適切に管理しています。

 

■ 気候関連リスクの識別・評価・管理プロセス

1 調査

2 識別・評価

3 管理

・国内外の主要拠点を対象に、気候変動に起因した自然災害リスクに関する調査を実施

・社会動向を調査

・「Epson 25 Renewed」「環境ビジョン2050」の方針や施策からリスク・機会を洗い出し

・サステナビリティ戦略会議と取締役会を通じて、シナリオ分析を評価

・サステナビリティ戦略会議と取締役会を通じて、適切に管理

 

d.指標と目標

エプソンは、国際的な共同団体である「SBTイニシアチブ」から承認された中長期的な温室効果ガス(GHG)の排出削減目標の達成に向けて、「環境ビジョン2050」の下、エプソンの技術の源泉である「省・小・精の技術」を基盤に、商品の環境性能向上や再生可能エネルギーの活用、事業活動などバリューチェーンを通じた環境負荷低減に積極的に取り組んでいます。

「SBTイニシアチブ」から承認された現在の目標は2℃目標に対応したものになります。2021年度に、「環境ビジョン2050」の目標である、1.5℃目標に対応した削減目標への更新を予定しています。

 

■ GHG削減目標(「SBT1.5シナリオ」に沿った削減目標)

スコープ1、2、3(※4)

2030年度までに2017年度比でGHG排出量を55%削減

※4 スコープ1:燃料などの使用による直接排出

   スコープ2:購入電力などのエネルギー起源の間接排出

   スコープ3:自社バリューチェーン全体からの間接的な排出

 

 

2【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクは次のとおりです。これらのリスクについては、リスク要因になる可能性があると考えられる事項を記載していますが、すべてのリスクを網羅したものではなく、有価証券報告書提出日現在では想定していないリスクや重要性が低いと考えられるリスクも、今後、エプソンの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、エプソンは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避および発生した場合の対応に努める方針ですが、かかる施策などが成功する保証はなく、効果的に対応できない場合には、エプソンの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてエプソンが判断したものです。

 

(1)プリンターの売上変動による経営成績などへの影響について

2021年3月期におけるプリンティングソリューションズ事業セグメントの売上収益7,077億円は、エプソンの連結売上収益9,959億円の約7割を占めており、そのなかでもオフィス・ホーム市場向けのほか、商業・産業向けのインクジェットプリンターを中心とする各種プリンターと、これらの消耗品が売上収益および利益の多くを占めています。したがって、これらのプリンターおよび消耗品の売上収益が変動した場合には、エプソンの経営成績などに重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)他社との競合について

(販売における影響)

エプソンの主力製品であるプリンターやプロジェクターをはじめとする製品全般について、他社との競合の激化により、販売価格の低下や低価格品への需要のシフトおよび販売数量の減少などの影響を受けることがあります。

エプソンでは、これらの状況に対して、各市場での顧客ニーズに対応した製品や高付加価値製品およびサービスの提供に取り組むとともに、設計・開発の効率化やコストダウンなどにより製造コストの削減に努め、かかる販売価格の低下や低価格品への需要のシフトおよび販売数量の減少などに対処していく方針です。

しかしながら、今後、これらの施策が成功する保証はなく、エプソンがかかる販売価格の低下などに効果的に対応できない場合には、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

(テクノロジーにおける影響)

エプソンの販売する一部の製品については、他社のテクノロジーと競合しており、例えば、次のような事例があります。

インクジェットプリンターにおけるエプソンのマイクロピエゾ方式(※1)と他社のサーマルインクジェット方式(※2)との競合

プロジェクターにおけるエプソンの3LCD(三板透過型液晶)方式(※3)と他社のDLP方式(※4)などとの競合ならびにエプソンのプロジェクターと他社のFPD(フラットパネルディスプレイ)(※5)との競合

エプソンは、これらのエプソンの製品において採用している方式について、現時点では競合他社の方式に対する技術的な競争優位性があると考えていますが、消費者によるエプソンの技術に対する評価が変化した場合や、エプソンの技術と競合するほかの革新的な技術が出現した場合などには、エプソンの技術的な競争優位性が損なわれ、エプソンの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

※1 マイクロピエゾ方式とは、ピエゾと呼ぶ圧電素子を伸縮させて、インク滴をノズルから噴射させるエプソン独自のインクジェット技術をいいます。

※2 サーマルインクジェット方式とは、インクに熱を加えることで発生する気泡の圧力により、インク滴を噴射する技術をいいます。なお、バブルジェット方式といわれることもあります。

※3 3LCD(三板透過型液晶)方式とは、ライトバルブに高温ポリシリコンTFT液晶パネルを用いる方式であり、光源から出射された光を特殊な鏡を使って赤・緑・青の3原色に分離し、各色専用のLCDで映像を作った後、無駄なく再合成し投影します。

※4 DLP方式とは、表示デバイスにDMD(Digital Micromirror Device)を用いる方式です。DMDとは、ミクロンサイズの微極小な鏡が多数並んだ半導体で、1つの鏡が1画素に対応し光源からの光を反射することで映像を投影します。なお、DLPおよびDMDは、米国テキサス・インスツルメンツ社の登録商標です。

※5 FPDとは、薄型・平坦な画面の薄型映像表示装置の総称です。

(新たな競合の発生)

エプソンは、現在、高度な技術力、豊富な資金力または強固な財務基盤を有する大企業あるいは市場における認知度、供給力または価格競争力を有する国内外の企業との間で競合関係にありますが、これらに加え、将来、ほかの企業が、ブランド力、技術力、資金調達力、マーケティング力、販売力および低コストの生産能力などを生かしてエプソンの事業領域へ新規参入してくる可能性もあります。

(3)経営環境の急激な変化などについて

エプソンは、現在、自社として取り組む社会課題の解決に向けて、「オフィス・ホームプリンティングイノベーション」「商業・産業プリンティングイノベーション」「マニュファクチャリングイノベーション」「ビジュアルイノベーション」「ライフスタイルイノベーション」という5つのイノベーション領域において、それぞれのイノベーションを起こすことによりお客様が真に求める価値を創出し、各事業領域のビジョンを実現することに取り組んでいます。この実現に向けて、エプソンでは、長期ビジョン Epson 25 Renewed や各事業戦略などに基づく諸施策を展開していますが、技術的な競争優位性を確立することが競争力を高めるために重要な要素であると考えており、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を源泉とする「マイクロピエゾ」「マイクロディスプレイ」「センシング」「ロボティクス」などの独自のコア技術とデジタル技術などの製品技術およびこれらを支える基盤技術を進化させることにより、顧客ニーズに対応した製品の開発・製造・販売およびサービスの提供を行っています。

しかしながら、エプソンが経営資源を集中しているこれらの事業領域における製品の属する市場は、一般的に技術革新の速度が速いとともに製品ライフサイクルが短く、また、世界景気の変動やデジタル化の進展などにともなうエプソンの主要市場における需要・投資動向が、エプソンの製品の販売に影響を及ぼす可能性があるほか、現在推進している長期ビジョンや事業戦略およびこれらで定められた各種の施策が必ずしも実現または成功する保証はありません。

このような事業環境のもと、エプソンでは、引き続き各市場や顧客のニーズの把握に努め、製品市場予測による中・長期的な研究開発や投資を行うほか、開発・設計のプラットフォーム化などにより、既存製品から新製品への迅速かつ円滑な移行などにも取り組んでいく方針です。

しかしながら、今後、市場でのニーズや技術革新の変化に適切に対応できない場合、他社との競争が激化した場合、景気後退などにより需要が回復しない場合および主要市場における急激な需要変動に適切に対応できない場合などには、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)第三者によるインクジェットプリンター用消耗品の販売について

インクジェットプリンターの主な消耗品であるインクカートリッジなどは、エプソンの売上収益および利益にとって重要なものとなっています。インクカートリッジなどのインクジェットプリンター用消耗品については、第三者によりエプソンのプリンター本体で使用することができる代替品が供給されています。これらの第三者からの代替品は、一般的にエプソンの純正品よりも廉価で販売されており、また、先進国市場と比較して新興国市場においてより流通している状況にあります。

エプソンは、こうした第三者によるインクジェットプリンター用消耗品の販売について、純正品としての高い品質の訴求のほか、大容量インクタンクを搭載したモデルの販売など、各市場における顧客ニーズに的確に対応したインクジェットプリンターを提供し、顧客の利便性をさらに高めることにより、引き続きお客様価値の実現を図っていく方針です。また、エプソンが保有するインクカートリッジに関する特許権および商標権の侵害に対しては、適宜、法的措置を講じていく方針です。

しかしながら、これらの施策が必ずしも有効である保証はなく、将来において第三者による代替品の販売が拡大し、純正品のシェア低下にともなう販売数量の減少や、これに対応するための販売価格の引下げなどにより、インクカートリッジなどの売上収益および利益が減少した場合には、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)海外での事業展開について

エプソンは、グローバルに事業を展開しており、2021年3月期の連結売上収益のうち4分の3以上は海外における売上収益が占めています。エプソンは、中国、インドネシア、シンガポール、マレーシアおよびフィリピンなどのアジア地域をはじめ、アメリカやイギリスなどにも生産拠点を有し、販売会社も世界各地域に設立しています。また、2021年3月末における海外従業員数はエプソンの全従業員数の約4分の3を占めています。

エプソンでは、こうしたグローバルな事業展開は地域ごとの市場ニーズを的確にとらえたマーケティング活動を可能とし、また、製造コストの削減およびリードタイムの短縮によるコスト競争力の確保など、事業上の多くのメリットがあると考えています。一方で、海外における製造・販売に関しては、各国政府の製造・販売に関する諸法令・規制、社会・政治および経済状況の変化、輸送の遅延、電力・通信などのインフラの障害、為替制限、熟練労働力の不足、地域的な労働環境の変化、各国における税制改正および税務当局による税務執行の不確実性、保護貿易諸規制、各種地政学的リスク、そのほかエプソンの製品の輸出入に対する諸法令・規制など、海外事業展開に不可避のリスクがあります。

 

(6)特定の仕入先からの部品などの調達について

エプソンは、第三者から一部の部品などを調達していますが、一般的に長期仕入契約を締結することなく継続的な取引関係を維持しています。また、エプソンは、部品などに関して複数社からの調達を原則としていますが、特定の部品などについては、他社からの代替調達が困難であるため、1社のみからの調達となる場合があります。エプソンでは、品質の維持・改善やコスト低減活動などに調達先と協同で取り組むことなどにより、安定的かつ効率的な調達活動を展開していく方針ですが、仮にこれらの調達先からの供給の不足や供給された部品などの品質不良などにより、製造・販売活動に支障を来たした場合には、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)品質問題について

エプソンの製品保証の有無および内容は顧客との個別の契約により異なります。エプソンの製品に不良品または規格に適合しないものがあった場合には、エプソンは当該製品の無償での交換または修理など、不良品を補償するコストを負担し、また、当該製品が人的被害または物的損害を生じさせた場合には、製造物責任などの責任を負う可能性があります。

このほか、エプソンの製品の性能に関し適切な表示または説明がなされなかったことを理由として、顧客などに対し責任を負う場合や、改良のためのコストが発生する可能性があります。さらに、エプソンの製品にこのような品質問題が発生した場合には、エプソンの製品への信頼性を損ない、顧客の喪失または当該製品への需要の減少などにより、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)知的財産権について

エプソンにとって、特許権およびそのほかの知的財産権は競争力維持のために非常に重要です。エプソンは、自らが必要とする多くの技術を自社開発してきており、それを国内外において特許権、商標権およびそのほかの知的財産権として、あるいは他社と契約を締結することにより、製品および技術上の知的財産権を設定し保持しています。また、知的財産権の管理業務に人員を重点的に配置し、知的財産権の強化を図っています。

しかしながら、次に想定されるような知的財産権に関する問題が発生した場合には、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

・エプソンが保有する知的財産権に対して異議申立や無効請求などがなされる可能性、その結果、当該知的財産権が無効と認められる可能性

・第三者間での合併または買収の結果、従来、エプソンがライセンスを付与していない第三者がライセンスを保有し、その結果、エプソンが知的財産権の競争優位性を失う可能性

・第三者との合併または買収の結果、従来、エプソンの事業に課せられなかった新たな制約が課せられる可能性およびこれらを解決するために支出を強いられる可能性

・エプソンが保有する知的財産権が競争優位性をもたらさない、またはその知的財産権を有効に行使できない可能性

・エプソンまたはその顧客が第三者から知的財産権の侵害を主張され、その解決のために多くの時間とコストを費やし、または経営資源などの集中が妨げられることになる可能性

・第三者からの侵害の主張が認められた場合に多額の賠償金やロイヤリティの支払い、該当技術の使用差し止めなどの損害が発生する可能性

・エプソンの従業員などにより発明などに対する報酬に関する訴訟が提起され、その解決のために多くの時間とコストを強いられる可能性、その結果、多額の報酬の支払いが決定される可能性

 

(9)環境問題について

エプソンは、国内外において製造過程で発生する廃棄物および大気中への排出物などについて、さまざまな環境規制を受けています。さらに、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)にて採択されたパリ協定により、世界的な気候変動への対応に関心が高まるなか、企業としてもより高い削減目標を掲げて取り組む必要性が増しています。

かかる状況のもと、エプソンは、2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源(※6)消費ゼロ」の達成を目指す「環境ビジョン2050」に基づき、環境負荷を低減した製品の開発・製造、環境技術の開発、使用エネルギー量の削減、使用済み製品の回収・リサイクルの推進、国際的な化学物質規制(主に欧州のRoHS指令やREACH規則)への対応および環境管理システムの改善など、多くの側面から環境保全活動に取り組んでいます。GHGの排出削減目標に関しては、SBTi(Science Based Targets initiative)の承認を受けるとともに、2023年のグローバルRE100達成に向けて、再生可能エネルギーの導入拡大を含め、中長期に向けた削減活動を推進しています。

こうした活動の結果、エプソンの2020年度のGHG排出量(スコープ1、2)は46万トンとなり、基準年度である2017年度比で21%削減となりました。また、再生可能エネルギー比率を19%まで高めています(電力ベース)。

エプソンでは、これまで重大な環境問題が発生したことはありませんが、将来において環境問題が発生し、損害の賠償や浄化などの費用負担、罰金または生産中止などの影響を受ける可能性、あるいは新しい規制が施行され多額の費用負担が必要となる可能性があり、このような事態が実現した場合には、エプソンの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

※6 原油・金属などの枯渇性資源

 

(10)人材の確保について

エプソンの高度な新技術・新製品の開発・製造には、国内外における優秀な人材の確保が重要ですが、これらの人材の獲得競争は激しいものとなっています。エプソンは、役割に基づいた処遇制度の導入、人材育成、ダイバーシティの取り組み、働きかた改革と健康経営の推進および現地人材の積極的な登用などにより、多様な人材がその能力を発揮できる風土づくりや働きやすい環境づくりを推進し優秀な人材の確保に努めていますが、仮にこれらの人材を十分に採用または雇用し続けることができない場合や、技術などの継承が適切にできない場合には、エプソンの事業計画の遂行などに影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)為替変動について

エプソンの売上収益の相当部分は、米ドルおよびユーロなどの外貨建てとなっています。エプソンは、海外調達の拡大および生産拠点の海外移転などを進めたことにより、現状、米ドル建ての費用は米ドル建ての売上収益を上回る状況となっていますが、一方でユーロ建ての売上収益は依然としてユーロ建ての費用よりもかなり多い状況にあります。また、これら以外の外国通貨についても、全般的に売上収益が費用をかなり上回っています。エプソンは、為替変動リスクをヘッジするために為替予約取引などを行っていますが、米ドル、ユーロおよびこれら以外の外国通貨の日本円に対する為替変動は、エプソンの財政状態および経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)年金制度について

エプソンの設けている確定給付型の制度として、確定給付企業年金制度および退職一時金制度があります。

エプソンは、確定給付型の退職年金制度について、年金資産の運用収益率の低下や受給権者の増加といった状況を踏まえ、今後の環境変化に適応するとともに、将来にわたり安定的に維持運営することを目的として2014年4月に制度改定を実施しましたが、年金資産の運用成績の変動および退職給付債務の数理計算の基礎となる割引率の見積数値の変動などが発生した場合には、エプソンの財政状態および経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)法規制および関係当局などによる調査について

エプソンは、グローバルに事業を展開しており、各国・各地域および各事業におけるさまざまな法規制や関係当局などによる調査の対象になる場合があります。例えば、エプソンは、現在、私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律など、国内外の独占禁止法令に基づく手続の対象となっているほか、今後、公的機関などを含む新規顧客への営業活動の強化にあたり、これらの活動に関係する各種の法規制やコンプライアンス(法令遵守)への対応が一層求められることがあります。

このような状況を踏まえ、エプソンでは、従来より、コンプライアンスを重要な経営方針の一つとして位置付け、適宜、未然防止・制御活動(RBA(Responsible Business Alliance)加盟による労働者保護や環境保全活動のさらなる促進を含む)を展開していますが、今後も海外の競争法関係当局が特定の業界などを対象に調査または情報収集を行うことがあり、その一環としてエプソンも市場状況および販売方法一般に関する調査などを受けることがあります。また、腐敗防止法規制、広告・表示規制、個人情報保護・プライバシー規制のほか、安全保障貿易管理などにおいて、関係法令などへの抵触またはそのおそれが生じることや、より厳格な法規制の導入や関係当局による法令運用の強化が行われることがあります。

これらの関連法規の違反があった場合や関係当局による調査・手続が実施された場合には、エプソンの販売活動に支障が生じ、またはエプソンの社会的信用を損なうこと、もしくは多額の制裁金が課されることがあるほか、事業活動に制約が生じるおそれがあるとともに、かかる法規制を遵守するための費用が増加することなどにより、エプソンの経営成績や今後の事業展開などに影響を及ぼす可能性があります。

有価証券報告書提出日現在、エプソンに対する法規制などに基づく調査は、次のとおりです。

フランスにおいて販売されるインクジェットプリンター製品に関し、2017年に同国の消費者団体による消費者保護法に基づく申し立てがなされ、当局による調査が開始されています。なお、同消費者団体が主張するような製品の寿命を短くしているという意図はなく、エプソンは、今後とも品質や環境を最も重視し、お客様のニーズに合わせた設計をしてまいります。

現時点においてかかる調査の進展、結果および終結の時期ならびにそのエプソンの経営成績および今後の事業展開などへの影響を予測することは困難です。

(14)重要な訴訟について

エプソンは、プリンティングソリューションズ事業、ビジュアルコミュニケーション事業およびマニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業などに関する各製品の開発、製造、販売およびこれらに付帯するサービスの提供を主な事業として、国内外においてさまざまな事業活動を展開していますが、その事業の特性上、知的財産権、製造物責任、独占禁止法、環境規制などに関連して訴訟が提起される場合や、法的手続が開始される可能性があります

有価証券報告書提出日現在、エプソンに係争している重要な訴訟は、次のとおりです。

当社の連結子会社であるEpson Europe B.V.(以下「EEB」という。)は、2010年にベルギーにおける著作権料徴収団体であるLa SCRL REPROBEL(以下「REPROBEL」という。)に対して、マルチファンクションプリンターに関する著作権料の返還などを求める民事訴訟を提起しました。その後、REPROBELがEEBを提訴したことにより、これら二つの訴訟は併合され、かかる訴訟の第1審ではEEBの主張を棄却する判決がなされましたが、EEBは、これを不服として上訴する方針です。

現時点において上記の訴訟の結果および終結の時期を予測することは困難ですが、訴訟または法的手続の結果によっては、エプソンの経営成績や今後の事業展開などに影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)財務報告に関する内部統制について

エプソンは、財務報告の信頼性に関する内部統制の構築および運用を重要な経営課題の一つとして位置付け、グループを挙げて関係会社の管理体制などの点検・改善などに取り組んでいます。しかしながら、常に有効な内部統制システムを構築および運用できる保証はなく、また、内部統制システムに本質的に内在する固有の限界があるため、今後、上記の対応が有効に機能しなかった場合や、財務報告に関する内部統制の不備または開示すべき重要な不備が発生した場合には、エプソンの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。

 

(16)他社との提携について

エプソンは、事業戦略の選択肢の一つとして、他社と業務提携などを行うことがあります。しかしながら、当事者間における提携などの見直しにともない、提携関係が解消される可能性があるほか、提携内容の一部変更が行われる可能性があります。また、提携などによる事業戦略が必ずしも想定どおり成功し、エプソンの経営成績などに寄与する保証はありません。

 

(17)自然災害・感染症などについて

エプソンは、研究開発、調達、製造、物流、販売およびサービスの拠点を世界に展開していますが、これらの地域において予測不可能な自然災害、新型コロナウイルス感染症などの新興感染症の流行、部品調達先などでの罹災などによるサプライチェーン上の混乱、戦争・テロなどが発生した場合には、エプソンの経営成績や事業展開などに影響を及ぼす可能性があります。

これらのうち、特にエプソンの主要な事業拠点が所在する長野県中部は、糸魚川静岡構造線に沿った活断層帯があるなど、地震発生リスクが比較的高い地域であるため、エプソンでは、設備の耐震構造強化のほか、防災訓練などの地震防災計画や事業継続計画の策定などにより、かかる災害にともなう影響の軽減に向けた対応を可能な範囲において行っています。

しかしながら、長野県中部に大規模な地震が発生した場合には、これらの施策にもかかわらず、エプソンが受ける影響は甚大なものになる可能性があります。なお、エプソンは、地震により発生する損害に対しては地震保険を付保しているものの、その補償範囲は限定されています。

このほか、新型コロナウイルス感染拡大によるエプソンへの影響については、各国政府などからの移動制限や操業自粛などの措置による、調達・生産・出荷・物流の停滞または大幅な遅延、国内外での個人消費・設備投資需要の落込みやBtoB ビジネス・入札案件遅れなどが長期化または拡大した場合には、エプソンの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

このような状況を踏まえ、エプソンでは、従業員とその家族、お客様・株主様を含めたすべてのステークホルダーの皆様の安全・健康を最優先に取り組むとともに、生産・販売活動の正常化に向けた対応を迅速に進め、これらの混乱からより早期に脱却を図ります。また、現時点において財務の健全性は十分保たれていますが、金融機関とのコミットメントライン契約などにより、資金手当てに万全を期しております。

新型コロナウイルス感染拡大による影響が継続する間はもとより、沈静化した後の社会においても、例えば移動や人との接触・対面などを必ずしも必要としない生活様式への変容など、さまざまな大きな社会の変化が進むことが予想されます。エプソンは、こうした社会の大きな変容に対して、長期ビジョン Epson 25 Renewed や各事業戦略に基づく取り組みをより一層加速し、予想される社会課題の解決による事業機会に積極的に取り組むことにより、かかるリスクの最小化を図っていく方針です。

 

(18)情報セキュリティについて

エプソンでは、情報システムにおいてネットワークの利用範囲の拡大や利用頻度の増加が続いており、その重要性が増しています。また、グローバルな事業活動を通じて顧客の個人情報や取引先の機密データを扱っています。セキュリティ上の脅威が年々増しているなか、コンピュータウイルスの感染、顧客データの漏洩、社内重要基幹システムの障害発生、サイバー攻撃、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)における風評被害などが発生した場合には、エプソンの経営成績や事業展開などに影響を及ぼす可能性があります。

これに対しエプソンでは、全従業員に情報セキュリティ教育を実施しているほか、サイバーセキュリティー対策に関する方針を定めたグランドデザインを策定・制定し、各種施策を実施し対策を講じています。また、グローバルでのセキュリティ事故への対応体制の確立、サイバーセキュリティー対策についての対応計画の策定と対策の実施、製品セキュリティの強化などに取り組んでいく方針です。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

当連結会計年度における経済環境を顧みますと、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大が終息となる見通しの不透明さは継続しており、各国の経済対策やワクチン接種率の増加によって、世界経済全体は改善に向かう方向にありますが、国や地域、業種間で異なる回復状況となっています。また、世界景気の回復への動きに伴い消費需要が高まるなか、海上輸送におけるコンテナ不足に加え、電子部品および半導体不足などのサプライチェーン上の問題が発生しており、今後の動向について引き続き注視をしていきます。地域別に見ますと、新興国では、インドや東南アジア、中南米の一部で経済活動の制限継続の影響を受け、引き続き厳しい経済環境の地域がありますが、中国では経済活動の緩やかな回復が継続しています。また、先進国は、下げ止まりから回復への動きが期待されますが、感染症再拡大の動きがある国や地域もあり、引き続き注視が必要な状況にあります。

当連結会計年度の米ドルおよびユーロの平均為替レートはそれぞれ106.01円および123.67円と前期に比べ、米ドルは3%の円高、ユーロは2%の円安に推移しました。また、南米など新興国の通貨については円高に推移しました。

 

こうした経営環境の下、当連結会計年度の経営成績につきましては、以下のとおりとなりました。

(億円)

 

前連結

会計年度

当連結

会計年度

増減金額

増減率

主な増減理由

売上収益

10,436

9,959

△476

△4.6%

[売上収益]

プリンティングソリューションズ事業セグメント △8

ビジュアルコミュニケーション事業セグメント △418

ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント △42

 

[事業利益]

プリンティングソリューションズ事業セグメント +329

ビジュアルコミュニケーション事業セグメント △122

ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント +13

売上原価

△6,816

△6,435

380

売上総利益

3,620

3,523

△96

△2.7%

販売費及び

一般管理費

△3,211

△2,907

304

事業利益(※)

408

616

207

50.9%

その他の営業収益・

その他の営業費用

△13

△139

△126

ウエアラブル機器事業における減損損失計上および為替差損等の増加

営業利益

394

476

81

20.7%

 

金融収益・金融費用

1

△28

△29

為替差損等の増加

税引前利益

397

449

52

13.1%

 

法人所得税費用

△318

△139

179

前期は繰延税金資産の取崩等による増加があったが、当期は多額の取崩がなかったことにより費用減少

当期利益

78

309

231

296.2%

 

親会社の所有者に

帰属する当期利益

77

309

231

299.9%

 

※事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しています。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

 

(プリンティングソリューションズ事業セグメント)

プリンター事業の売上収益は増加となりました。オフィス・ホーム用インクジェットプリンターは、在宅勤務や家庭学習による印刷ニーズの高まりから大幅な需要増となりました。大容量インクタンクモデルおよびインクカートリッジモデル本体は、新型コロナウイルス影響により製造工場の操業が一時的に低下または停止した影響、および海上輸送におけるコンテナ不足や港湾混雑による輸送遅延などにより、十分な製品供給が行えなかったものの、販売価格の上昇などにより、売上増となりました。消耗品は、高まる在宅印刷需要に対して増産対応をはかり、売上増となりました。シリアルインパクトドットマトリクスプリンターについては、市場縮小に伴う販売減少および為替のマイナス影響により、売上減少となりました。

プロフェッショナルプリンティング事業の売上収益は減少となりました。商業・産業用インクジェットプリンターは、第2四半期以降では、フォト/プルーフでの大口案件獲得、コーポレート・CAD向けモデルや昇華転写プリンターでの本体販売好調などにより増加となった一方、第1四半期で、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う世界各地での経済活動制限の影響を強く受けたことにより、減少となりました。POSシステム関連製品は昨年度のイタリアでの税制改定に伴う需要増の反動に加え、新型コロナウイルス感染拡大による経済活動制限の影響を受けて需要が減少したことにより、売上が減少しました。

その他はOS切り替えに伴うPCの需要増があった前期に対して減収となりました。

プリンティングソリューションズ事業セグメントのセグメント利益は、為替のマイナス影響があったものの、インクジェットプリンターの本体販売価格の上昇および消耗品の売上増加に加え、費用執行を厳選して大幅な費用削減を実施したことにより、増加となりました。

以上の結果、プリンティングソリューションズ事業セグメントの売上収益は7,077億円(前期比0.1%減)、セグメント利益は1,085億円(同43.5%増)となりました。

 

(ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)

ビジュアルコミュニケーション事業の売上収益は、学校の再開に伴う教育案件、およびホーム需要拡大の動きが見られましたが、世界各地での新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動制限、各種イベントの延期・中止による影響、さらに継続しているフラットパネルディスプレイの攻勢によりプロジェクター市場の縮小が進んだこと、また、輸送遅延による製品供給不足も加わり、減少となりました。

ビジュアルコミュニケーション事業セグメントのセグメント利益は、費用の執行を厳選し、大幅な削減を進めていますが、減収影響により、減少となりました。

以上の結果、ビジュアルコミュニケーション事業セグメントの売上収益は1,414億円(前期比22.8%減)、セグメント利益は13億円(同90.1%減)となりました。

 

(ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント)

ウエアラブル機器事業の売上収益は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、世界各地で販売店の営業自粛、経済活動制限の影響を受けたこと、また特に国内では感染拡大による年末商戦期の需要落ち込みに加え、インバウンド需要が大幅に減少したことなどにより、大幅な減少となりました。

ロボティクスソリューションズ事業の売上収益は、主に中国での案件獲得による販売増加により、大幅な増加となりました。

マイクロデバイス事業の売上収益は、市場からの需要が足もとで急増するなか、水晶デバイスでPCおよびヘルスケア向けが増加したことに加え、半導体でファンドリの需要増により、増加となりました。

ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントのセグメント利益は、ウエアラブル機器事業を中心とした減収影響があったものの、費用執行の抑制・削減により、増加となりました。

以上の結果、ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメントの売上収益は1,486億円(前期比2.8%減)、セグメント利益は32億円(同75.0%増)となりました。

なお、上記のほか、ウエアラブル機器事業において、収益性の低下、ならびに事業戦略の見直しにより、減損損失75億円を計上しております。

 

(その他)

その他の売上収益は8億円(前期比12.2%減)、セグメント損失は6億円(前期は5億円のセグメント損失)となりました。

 

(調整額)

報告セグメントに帰属しない基礎研究に関する研究開発費や新規事業・本社機能に係る費用の計上などにより、報告セグメントの利益の合計額との調整額が△508億円(前期の調整額は△496億円)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは1,332億円の収入(前期は1,023億円の収入)となりました。これは当期利益が309億円であったのに対し、棚卸資産の増加128億円などによる減少要因があった一方で、減価償却費及び償却費の計上698億円、仕入債務の増加131億円などの増加要因があったことによります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産および無形資産の取得による支出558億円などがあったことにより、574億円の支出(前期は761億円の支出)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い214億円、長期借入金の返済による支出140億円があった一方で、社債の発行696億円があったことにより、231億円の収入(前期は2億円の支出)となりました。

以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、3,040億円(前期は1,962億円)となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

前期比(%)

プリンティングソリューションズ事業(百万円)

662,229

95.8

ビジュアルコミュニケーション事業(百万円)

135,636

76.5

ウエアラブル・産業プロダクツ事業(百万円)

137,854

96.5

 セグメント計(百万円)

935,720

92.5

その他(百万円)

合計(百万円)

935,720

92.5

(注)1.上記金額は、販売価格により示しており、セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

3.上記金額には、外注製品仕入高等が含まれております。

 

b.受注実績

 エプソンでは、製品の性質上、原則として見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

前期比(%)

プリンティングソリューションズ事業(百万円)

707,563

100.0

ビジュアルコミュニケーション事業(百万円)

141,468

77.2

ウエアラブル・産業プロダクツ事業(百万円)

140,595

96.9

 セグメント計(百万円)

989,626

95.5

その他(百万円)

190

102.5

合計(百万円)

989,817

95.5

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

3.総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点によるエプソンの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在における予想や一定の前提に基づくものであり、これらの記載は実際の結果と異なる可能性があるとともに、その達成を保証するものではありません。

経営成績等

(財政状態

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に対して1,204億円増加し、1兆1,613億円となりました。これは主に、現金及び現金同等物が社債発行などにより増加1,077億円、棚卸資産の増加229億円があったことなどによるものです。

 負債合計は、前連結会計年度末に対して734億円増加し、6,083億円となりました。これは主に、グリーンボンド発行などにより社債、借入金及びリース負債の増加562億円、その他の流動負債の増加131億円があったことなどによるものです。

 なお、親会社の所有者に帰属する持分合計は、前連結会計年度末に対して471億円増加し、5,509億円となりました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期利益309億円の計上、および確定給付制度の再測定を主因としたその他の包括利益376億円の計上があった一方で、配当金の支払い214億円があったことなどによるものです。

 運転資本(流動資産から流動負債を差し引いた金額)は、前連結会計年度末と比較して964億円増加し、4,340億円となりました。

 

(経営成績)

 経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

(キャッシュ・フローの状況)

 キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

②資金の源泉および流動性

 当連結会計年度後1年間の設備投資計画金額は600億円であり、所要資金につきましては、内部資金、金融機関からの借入および社債の発行によりまかなう予定です。セグメントごとの設備投資計画金額につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。なお、上記設備投資計画金額には、リースによる設備投資を含めております。

 エプソンでは、設備投資等の事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用および金融機関からの借入と社債の発行により資金を調達しております。

 有利子負債の当連結会計年度末残高は、グリーンボンド発行などによる社債、借入金及びリース負債の増加などにより、前連結会計年度と比較して562億円増加し、2,659億円となりました。現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度と比較して1,077億円増加し、3,040億円となりました。手元流動性は十分に確保しております。

 また、コロナ禍による先行きが不透明な中、有事に備えた財務基盤強化の一環として、2020年5月に主要行との間で、環境評価融資商品のコミットメントライン契約を締結しました。なお、当連結会計年度末における当該コミットメントライン契約に基づく借入実行残高はありません。

 なお、エプソンは、株式会社格付投資情報センターから信用格付を取得しており、当連結会計年度末において、A(シングルA)となっております。

 

③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 エプソンは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、社会課題の解決のために、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」を基盤として、自らの常識やビジョンを超えて果敢に挑戦し、イノベーションを起こすことに取り組んでいます。そして、全社員が価値観を共有のうえ総合力を発揮しつつ、自律的に行動するように努めています。これにより、画期的なお客様価値を継続的かつタイムリーに創造・提供し、より良い社会の構築に「なくてはならない会社」として中心的な役割を果たすとともに、持続的成長および中長期的な企業価値向上を実現してまいります。

 エプソンは、将来にわたって追求する「ありたい姿」として設定した「持続可能でこころ豊かな社会の実現」に向け、2021年3月に長期ビジョンを見直し、「Epson 25 Renewed」を策定しました。また、エプソンとして重視している環境問題への対応では、「環境ビジョン2050」を改定し、2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源(※)消費ゼロ」の達成を目指すこととしました。
※ 原油、金属などの枯渇性資源

 なお、当該長期ビジョンの実現に向けて設定した財務目標の進捗状況は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

④重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

 エプソンの結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

 なお、エプソンの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積りおよび見積りを伴う判断」に記載しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

相互技術援助契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約内容

契約期間

当社

HP Inc.

アメリカ

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2018年3月28日から許諾特許の権利満了日まで

当社

International Business Machines
Corporation

アメリカ

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2006年4月1日から許諾特許の権利満了日まで

当社

Microsoft Corporation

アメリカ

情報関連機器およびこれに用いるソフトウェアに関する特許実施権の許諾

2006年9月29日から許諾特許の権利満了日まで

当社

Eastman Kodak Company

アメリカ

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2006年10月1日から許諾特許の権利満了日まで

当社

Xerox Corporation

アメリカ

電子写真およびインクジェットプリンターに関する特許実施権の許諾

2008年3月31日から許諾特許の権利満了日まで

当社

キヤノン株式会社

日本

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2008年8月22日から許諾特許の権利満了日まで

当社

ブラザー工業株式会社

日本

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2018年6月28日から許諾特許の権利満了日まで

 

5【研究開発活動】

エプソンは、創業当時からの独自の強みである「省・小・精の技術」に加え、デジタル技術により、人・モノ・情報がつながる、持続可能でこころ豊かな社会を共創することを目指しています。そのための経営基盤強化の取り組みの一つとして研究開発活動を位置づけ、イノベーションを実現するための基盤技術、コア技術、製品技術の進化を推し進めています。なかでも今後は材料、AI、デジタル技術を特に強化していくこととし、成長領域や新領域を中心に、ものづくり基盤の強化に加え、新規事業創出や事業強化などのための技術基盤の構築のほか、各事業における製品の競争力向上などに本社開発部門および事業部開発部門が連携のうえ取り組んでいます。

当連結会計年度の研究開発費総額は464億円であり、各セグメントの内訳は、プリンティングソリューションズ事業が170億円、ビジュアルコミュニケーション事業が83億円、ウエアラブル・産業プロダクツ事業が55億円、その他および全社が156億円です。

各セグメントの主な開発成果は、次のとおりです。

 

(プリンティングソリューションズ事業セグメント)

プリンター事業においては、家庭用インクジェットプリンターの新製品として、本体に大容量インクタンクを搭載した「エコタンク搭載モデル」(3機種)を発売しました。新開発の「ClearChrome K2 Plusインク」を搭載、顔料と染料の2種類のブラックインクを含む6色モデルです。特に、新たに搭載した顔料のブラックインクにより、これまで表現が難しかった「Velvet Fine Art Paper」などのアート紙での表現が格段に向上しました。

ビジネス向けには、プリントやコピーの使用状況に合わせてプランや機器を選べる「エプソンのスマートチャージ」の新製品として、モノクロ専用のA3複合機「LX-10020MFシリーズ」を発売しました。本製品は、100枚/分※1の高速印刷、大容量インク搭載によるインク交換の手間軽減や、大容量給紙・排紙による用紙補給の手間軽減など使い勝手の良さはそのままに、中折りや中綴じが可能な、高速で使いやすいフィニッシャーに対応しました。また印字プロセスに熱を使わない「Heat-Free Technology※2」により、消費電力を320W※3以下に抑え、環境負荷を低減します。

プロフェッショナルプリンティング事業においては、サインディスプレイ業界向けSureColorシリーズの新商品として、2機種を発売しました。VOC(揮発性有機化合物)の含有量が少なく環境に配慮した、新開発の水性ベースのレジンインク「UltraChrome RSインク」搭載した「SC-R5050/R5050L」は、印刷後の乾燥時間が不要で、印刷後すぐに後加工が可能になるなど業務の大幅な納期短縮に貢献します。本製品は溶剤インクが得意とする塩ビやターポリン、フィルムへの印刷だけでなく、普通紙や壁紙、テキスタイルなど幅広いメディアにも印刷できるほか、長年のインクジェット技術で培ってきた独自の「マイクロウィーブ」「ハーフトーンモジュール」「LUT※4」の3つの技術「Epson Precision Dot Technology(エプソン プレシジョン ドット テクノロジー)」により、粒状感やバンディングが少ない高画質プリントを実現します。

捺染市場向けには、インクジェットデジタル捺染機Monna Lisa(モナリザ)シリーズの新商品として、少量・多品種生産に適した「ML-8000」を発売しました。捺染市場では、消費者ニーズの多様化に伴う少量・多品種生産の拡大、持続可能な社会の実現に向けた環境への配慮など、アナログからデジタル捺染へのシフトが求められています。「ML-8000」は、高い生産性と印捺品質、安定稼働を実現しながら、導入コストを抑えたMonna Lisaシリーズのエントリーモデルです。4.7インチの最新PrecisionCoreマイクロTFPプリントヘッドを8個搭載し、標準モードで毎時155平方メートル(600x600dpi※5 – 2Pass)の印刷速度を実現しました。

※1 測定データおよび測定条件につきましては、エプソンのホームページをご覧ください。

※2 「Heat-Free Technology」につきましては、エプソンのホームページをご覧ください。

※3 本体のみの最大消費電力値です。

※4 LUT(Look Up Table)とは、データの色を忠実に再現するために、どの色のインクをどれだけの量で表現するかを決めるテーブル。

※5 マルチレイヤーハーフトーンでの出力時。

 

(ビジュアルコミュニケーション事業セグメント)

ビジネスプロジェクターでは、大空間から小空間まで、映像演出の利用シーンが広がる高輝度モデル、サイネージモデル全2機種4モデルを発売しました。高輝度モデル「EB-L30000U」および「EB-L30002U」は、世界最小最軽量※6で、エプソンのプロジェクターとして最高輝度の30,000lmの圧倒的な明るさを実現します。さらに、「Epson Projector Professional Tool」と本体内蔵カメラを使ったスタッキング機能により、複数のプロジェクターからの映像を1つに重ねて明るさを増した映像を素早く簡単に作成でき、設置時の調整時間が短縮できます。サイネージモデル「EV-110」および「EV-115」は、スポットライトのように天井や配線ダクト、また床にも設置できるほか、アーム型の形状により可動範囲が広いため、真上からのテーブルマッピングなど、優れた設置性で幅広い映像演出に対応しています。

スマートグラスにおいては、次世代MOVERIOシリーズ向けにエプソン最先端の光学技術を搭載した第四世代スマートグラス向け光学エンジン「VM‐40」を開発しました。新開発の光学エンジンは、エプソン独自のシリコンOLED(Organic Light Emitting Diode:有機EL)ディスプレイと光学技術により、当社従来製品比較で、精細度1.5倍、コントラスト5倍、画角1.5倍を実現しました。

※6 発売済み30,000lmの3LCD方式プロジェクター製品の本体(突起部、ハンドル、レンズ含まず)において。

エプソン調べ。(2020年10月現在)

 

(ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント

マイクロデバイス事業においては、大容量メモリーや高解像度液晶ドライバーを搭載したシングルチップマイコン「S1C31W73」を開発しました。近年、あらゆる電子機器において多機能化が進み、プログラミングサイズや表示する情報量が増加する傾向にあります。一方で、機器自体は従来サイズを維持、あるいはさらなる小型化が求められ、実装面積や部品点数の削減が必須となっています。本製品は、このような課題を解決するため、384Kバイト大容量フラッシュメモリーを内蔵し、最大2,560ドットの表示を直接駆動できる液晶ドライバーを搭載したシングルチップマイコンであり、従来、エプソンマイコンが強みとしてきた表示駆動の技術を、業界でも実績のあるArm®Cortex®-M0+プロセッサーと組み合わせることで、お客様製品の高機能化と開発負担低減の両面で貢献します。

このほか、当社初となる車載ディスプレイシステム向け警告灯 モニタリングIC「S2D13V02」を開発しました。自動車の高機能化・電動化・自動化が進む中、本製品により、運転者にとって特に重要な情報である警告灯を液晶ディスプレイ上で正しく表示させることができます。本製品は、ホスト(SoC※7)からストリーミングされる画像をモニタリングし、警告灯に異常を検知した場合、ホストへ通知を行い、必要に応じた表示処理(警告灯の上書きやエラーメッセージなど)を行います。また、地図表示など背景が変化する画像に警告灯がオーバーレイされた状態においても、視認性を考慮した表示のエラー判定・検知を行うことが可能です。当機能を含む充実した表示安全機能により、信頼性の高いディスプレイシステム構築をサポートします。

※7 SoC(System on Chip):あるシステムの動作に必要な機能の多く、または全てを、一つの半導体チップに実装するもの。システムにより構成は異なるが、CPU、メモリ、I/Oといった機能が統合されているものが一般的。