文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、azbilグループが判断したものであります。
(1)経営方針
azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」のグループ理念のもと、事業を通して持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を実践することで、自らの中長期的な発展を確実なものとし、企業価値の持続的な向上を実現することで、ステークホルダーの皆様のご期待にお応えしていきたいと考えております。
このため、“技術・製品を基盤にソリューション展開で「顧客・社会の長期パートナー」へ”、“地域の拡大と質的な転換で「グローバル展開」”、“体質強化を継続的に実施できる「学習する企業体」を目指す”の3つを基本方針に、事業収益力の強化及びグローバルな事業基盤の整備を進めつつ、これらを基にした事業成長施策を展開しております。具体的には、ビルディングオートメーション(BA)、アドバンスオートメーション(AA)、ライフオートメーション(LA)の3事業において、計測と制御の技術を核に、「人を中心としたオートメーション」の発想に基づく製品・サービスを提供し、お客様のニーズや社会課題の解決に貢献することで、お客様・社会とともに自らの持続的成長を目指しております。
(2)経営戦略等
当社は、「人を中心としたオートメーション」すなわち、人を中心に据え、人と技術が協創するオートメーション世界の実現に注力し、お客様の安全・安心や企業価値の向上、地球環境問題の改善等に貢献する世界トップクラスの企業集団になることを長期目標と設定、段階的に中期経営計画を立案し、この目標達成に向けた取組みを行ってまいりました。
これまでは、オートメーションに焦点をあてつつ単一市場への過度な集中を避け、異なる市場構造を持つBA/AA/LAの3つの事業分野から成る複合的な事業ポートフォリオの構築を進め、顧客開拓やシナジー等による事業領域の拡大に取り組んでまいりました。これらの事業領域には、既存の製品・サービスの提供では持続的な成長の実現が厳しくなってきている成熟領域もあれば、IoTやAIといった新たな技術革新に伴い、急激に変化している領域もあります。基盤を確たるものとし、企業としての存続を確かなものとする取組みを継続するとともに、更なる成長を実現するため、国内外の事業機会の変化を的確に捉え、事業創造の視点から「商品と顧客現場の連携」によるソリューション提案力の向上に取り組み、グローバルでの顧客や社会の長期パートナーとして、azbilグループならではの価値の提供を実現してまいります。
このように2030年度に向けた長期目標を掲げる当社グループは、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献とサステナビリティの観点から、SDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)を経営の重要な道標と位置付け、事業として取り組む領域として「環境・エネルギー」、「新オートメーション」の2つを、また企業活動全体で取り組む領域では「サプライチェーン、社会的責任」、「健幸経営※1、学習する企業体」の2つを「azbilグループSDGs目標」と定め、様々な取組みを進めております。
「持続可能な社会」に向けて、我々を取り巻く環境では、気候変動・脱炭素への対応から社会構造や価値観の変化、ウイルス共生時代における安全・安心の確保に至るまで、様々な社会課題やお客様の課題が生まれております。こうした大きな変化に対応し、解決策を提供できるオートメーションの価値は益々向上しており、需要の増加が期待されます。当社グループといたしましては、アズビルならではの技術・製品・サービスを活かすことのできる「新オートメーション」「環境・エネルギー分野」「ライフサイクル型事業」という3つの事業領域に注力し、新たな課題の解決策を提供することにより、BA、AA、LAの3事業での成長を実現してまいります。
中期経営計画(2021~2024年度)におきましては、上述の3つの事業領域での成長を確実なものとするために、新製品やサービス開発力の強化に向けた投資の拡大、お客様との接点の拡大等の施策を推進しております。中期経営計画初年度である2021年度においては、先進的なシステムソリューション、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を活用した高機能・高性能デバイスの開発力強化に向けた研究開発拠点である藤沢テクノセンターの整備が進みました。また、生産面においても、中国大連生産子会社の新工場棟が竣工するなどグローバルでの生産基盤の強化が進みました。
収益力という観点では、これまで取り組んできた受注時の採算性改善、海外生産・調達の拡大といった収益力強化施策に加え、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を通じた業務効率化をグローバルに展開することにより、一層の収益力強化を行ってまいります。加えて、資本コストを意識した経営の観点から投下資本利益率(ROIC)を導入し、投下資本からの収益性に基づく経営資源活用の最大効率化と事業ポートフォリオ管理を実践することで、当社グループ全体の企業価値向上(ROEの向上)に繋げてまいります。
当社グループは、持続的な企業価値向上の基盤としてのコーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題として、取締役会の監督・監査機能強化、経営の透明性や健全性の強化、執行の責任体制の明確化等に取り組んでまいりました。
当社におけるコーポレート・ガバナンスの更なる改革を進めることを目的として2022年6月23日開催の第100期定時株主総会にて、過半数の社外取締役によって構成される3つの委員会※2を有し、かつ過半数を社外取締役が占める取締役会から法的に明確な責任を負う執行役に大幅に業務執行権限を委譲可能とする「指名委員会等設置会社」への移行をご承認いただきました。
あわせて、同日実施の報酬委員会において、信託を活用した役員向け株式報酬制度を導入することを決議いたしました。取締役・執行役等の企業価値向上への意識及び株主価値の最大化への意欲を一層高め、株主の皆様との価値共有を図ることで、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献に向けた取組みを推進してまいります。
新型コロナウイルス感染症は未だ収束を見ず、グローバルにサプライチェーンや部品調達難等の混乱が続いております。さらに欧州等の地政学的リスクの高まりやエネルギー価格の高騰、インフレ懸念等は世界経済に影響を及ぼし、事業の見通しを不透明なものとしております。こうした社会情勢・事業環境の変化は、当社グループの事業にも影響が想定されるため、これら様々な事業環境の変化に対して、株主の皆様はもとより、お客様やお取引先様等、ステークホルダーの皆様との対話を重ねつつ、迅速、適切に対応してまいります。
新型コロナウイルス感染症に対しては、引き続きお客様と社員の安全を第一に、生産、エンジニアリングやサービス等の現場業務を継続することで、感染防止と社会インフラやお客様の重要施設の維持という両面で社会の要請に応えるとともに、危機管理対応としての防疫強化、BCP(Business Continuity Plan‐事業継続計画)整備、強固な財務体質の強化、さらに資金調達力の強化・多様化といった点にも引き続き取り組んでまいります。また、グローバルな部品調達難等における混乱につきましては、生産のオペレーション改善やサプライチェーン各社との連携を通じて影響の軽減を図ってまいります。なお、こうした環境変化に即した働き方の対応として、当社グループにおきましては、在宅勤務の拡大等に取り組むことで感染防止に貢献するとともに、さらにDXによる働き方の改革・創造を推進し、ABW(Activity Based Working)※3の考え方も取り入れた、リモートワーク・在宅勤務とかけ合わせた新しい働き方・生産性の向上を図ってまいります。
※1 健幸経営:健康で幸せ、活き活きとした“働きの場と人”を創るためのアズビル独自の取組み。
※2 3つの委員会:指名委員会、監査委員会、報酬委員会。
※3 ABW(Activity Based Working):働く人が仕事をするために最適な環境(場所・時間等)を選ぶことができるワークスタイル。
気候変動への対応 ~TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示~
azbilグループは2019年11月、気候変動が事業活動に与える影響を正しく把握し、適切に開示するという気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言内容に賛同いたしました。賛同表明後、気温上昇のシナリオに基づいた各事業の機会とリスクの双方を検討した結果、CO2削減に貢献する事業活動の機会がリスクを大きく上回ると認識しております。今後も、TCFDの提言に沿った形で、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標について、継続的に開示を進めてまいります。
<ガバナンス>
気候変動は、グループ理念に基づいて経営を行ううえでの最重要課題の一つと認識し、担当役員を統括責任者としたグループ横断的なタスクフォースを組成、事業影響と財務的影響開示の視点から経営会議で審議し、その内容は取締役会で適切に監督しております。
<戦略>
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、国際エネルギー機関(IEA)や各種機関からの情報を基に、2℃未満シナリオ(脱炭素社会に向けた規制強化や技術革新が促され、気温上昇が持続可能な範囲で収まるシナリオ)と4℃シナリオ(温室効果ガス排出を削減する有効な対策が打ち出されず、気温上昇が継続し、異常気象や自然災害が増大するシナリオ)の2つのシナリオで、当社グループの事業上の機会やリスクを特定しております。
機会とリスクの開示
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種類 |
シナリオ |
ビルディングオートメーション事業 |
アドバンスオートメーション事業 |
ライフオートメーション事業 |
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機会 |
2℃未満 |
世の中のニーズにあわせた省エネルギー・省CO2ソリューションやサービスの需要拡大等 |
環境影響を軽減する新しい産業・プロセスに向けた、センサ・各種計測器、ソリューション等への需要が増加 |
IoT技術を活用したガスメータ活用によるSMaaS事業の拡大等 |
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4℃ |
気象災害に適応した建物に向けた製品・サービス・ソリューションの需要の増加等 |
異常予知機能を具備した製品・サービス・ソリューションへの需要の増加等 |
気象災害に適応した製品・サービス・ソリューションへの需要の増加等 |
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種類 |
シナリオ |
概要 |
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移行 リスク |
2℃未満 |
・新たな規制にあわせた新製品やサービス開発のコスト増加 ・エネルギー価格上昇による製造・調達コストの増加 ・炭素税導入などコスト負担増に伴うお客様の従来型設備投資の減退 |
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物理 リスク |
4℃ |
・異常気象による操業停止、製品・サービス・ソリューション提供の休止 ・異常気象による事業不安定化に伴う、お客様の投資の大幅な減少 |
気温上昇のシナリオに基づいた各事業の機会とリスクの双方を検討した結果、CO2削減に貢献する事業活動の機会がリスクを大きく上回ると認識しております。
当社グループでは、「自らの事業活動における環境負荷低減」を進めるとともに、それらの取組みを通じて得られる技術・ノウハウを活かし、計測と制御の技術を駆使してお客様の環境に関わる課題解決を支援することで「本業を通じた地球環境への貢献」を推進し、持続可能な社会の実現へと繋げてまいります。
<リスク管理>
当社グループは、経営に重大な影響を与える可能性のあるリスクについて、気候変動を含めて網羅的に洗い出しております。①部門責任者等で構成される「総合リスク管理部会」でリスクを抽出・分析したのち、②リスク管理担当役員が統括責任者を務める「総合リスク委員会」で「azbilグループ重要リスク」を特定し、取締役会にて審議・決定しております。特定されたリスクに関しては、経営会議等において対策を立案し、施策の実施状況については取締役会へ随時報告するなど、各種リスクの軽減に努めております。
<指標と目標>
持続可能な社会へ「直列」に繋がる事業活動により、当社グループのお客様、及び当社グループとサプライチェーン全体を視野に入れた指標と目標を掲げて、気候変動への取組みを推進しております。
・お客様の現場におけるCO2削減効果を2030年度に340万トンまで拡大することを目標としております。
・当社グループの事業活動に伴う温室効果ガス(GHG)※4の排出量(スコープ1+2※5)を2050 年に実質ゼロにすることを目指す「2050年 温室効果ガス排出削減長期ビジョン」を策定し、カーボンニュートラルの実現を目指しております。この達成に向けた中間目標として、「2030年 温室効果ガス(GHG)排出削減目標」を定め、サプライチェーン全体での排出量削減に取り組んでおります。
<2030年 温室効果ガス(GHG)排出削減目標>
事業活動に伴うGHG排出量(スコープ1+2) 55%削減(2017年基準)
サプライチェーン全体のGHG排出量(スコープ3※5)を20%削減(2017年基準)
※4温室効果ガス(GHG=Greenhouse Gas):大気圏にあって、地表から放射された赤外線の一部を吸収することにより、
温室効果をもたらす気体の総称
※5 スコープ1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
スコープ2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
スコープ3:事業者の活動に関連する他社の排出(スコープ1、スコープ2以外の間接排出)
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
azbilグループでは、株主価値増大に向けて連結ROE(自己資本当期純利益率)の向上を基本的な目標としており、収益性と資本効率の向上を通して、2030年度をゴールとする長期目標※6として、売上高4,000億円規模、営業利益600億円規模、営業利益率15%程度、ROE13.5%程度を目指しております。また、この長期目標達成に向け、2024年度を最終年度とする4ヵ年の中期経営計画※6においては、最終年度の売上高3,000億円、営業利益360億円、営業利益率12%、ROE12%程度を達成することを目標としております。
※6 2021年5月14日、当社グループは長期目標、中期経営計画(2021~2024年度)を策定・公表いたしました。
(4)経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」のグループ理念のもと、事業を通して持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を実践することで、自らの中長期的な発展を確実なものとし、企業価値の持続的な向上を実現することで、ステークホルダーの皆様のご期待にお応えしていきたいと考えております。
このため、“技術・製品を基盤にソリューション展開で「顧客・社会の長期パートナー」へ”、“地域の拡大と質的な転換で「グローバル展開」”、“体質強化を継続的に実施できる「学習する企業体」を目指す”の3つを基本方針に、事業収益力の強化及びグローバルな事業基盤の整備を進めつつ、これらを基にした事業成長施策を展開しております。
当社グループでは、中期経営計画におきましても、経営資源を有効かつ戦略的に配分し、前述の様々な取組みの加速・定着を図ってまいりますが、その具体的な内容は次のとおりです。
① 国内事業
3事業とも国内では成熟産業に位置しますが、それぞれが置かれている環境は事業毎に大きく異なります。
BA事業は、引き続き高水準で推移する首都圏での需要を着実に捉えるため、お客様・社員の安全に十分配慮し、働き方改革への対応も踏まえ、施工・サービスの現場を主体にDX推進により、ジョブ遂行能力の強化と効率化を進めてまいります。またIoT、クラウド等の新しい技術活用も含めた商品力強化を推進することによりビジネスモデルの再構築も引き続き進めるとともに、拡大する省エネルギー・CO2削減等に関するソリューションへの関心へも対応してまいります。
具体的には、カーボンニュートラル※7実現に向け大きく貢献するため、新築・既設を問わずあらゆるビルにスムーズに導入できる空調制御分野におけるGX(グリーントランスフォーメーション)※8ソリューションを確立するため、NTTアーバンソリューションズ株式会社・株式会社NTTファシリティーズ・NTT都市開発株式会社・NTTコミュニケーションズ株式会社・ダイキン工業株式会社と、空調制御に関する協業を開始いたしました。
また、働き方改革や感染症対策等による居住空間の価値や要件の大きな変化に対応し、空間の質向上による付加価値提供を目指してまいります。ニューノーマル時代の働き方やオフィス利用の多様化に対応する新空調システム等を導入し、お客様にご提案、体感いただける事業所を国内にもオープンいたしました。
これらの取組みにより、お客様の事業展開にあわせて継続的な価値を提供・提案してまいります。
AA事業では、感染症拡大や部品調達難の製造業設備投資への影響は予断を許さないところではありますが、中長期的にはグローバルな経済成長の継続や更なる生産性の改善要求、生産現場での人手不足、設備老朽化対応等を背景に生産設備の自動化投資は引き続き拡大基調にあり、製造装置市場の回復を牽引役とする設備投資の回復継続など堅調な市場環境にあります。
多岐にわたる市場から、技術の潮流変化を捉え、今後の成長と付加価値提供が見込める領域を選択・創出・集中することにより成長を図るとともに、グローバルな共通事業モデルに経営資源を集中することにより競争力を強化いたします。これら成長戦略と収益力強化策をCP事業、IAP事業、SS事業の3つの事業単位でのオペレーションにより着実に実行してまいります。具体的には国内外での顧客カバレッジ拡大のための営業DX導入を含めた営業体制強化、新たなお客様を継続的なリピート顧客にすることによる受注拡大、新しいオートメーションの創造に資する製品開発の加速等に取り組んでおります。また、各種プラントにおいてプラント安定稼働のため重要な役割を担うバルブの稼働データをクラウドで解析し、バルブの“健康診断結果”を可視化することで生産設備の安定化・保安力強化を実現する「Dx Valve Cloud Service」の運用技術の拡張、AIを活用したプラント設備の異常予兆検知システム「BiG EYESTM」に関して、火力発電設備を対象とした共同開発等に取り組むなど、適用範囲を拡げることで、お客様の事業展開にあわせた継続的な価値を提供・提案してまいります。
LA事業では、ライフライン分野にて水道・各種ガスメータのIoT対応を引き続き進めております。スマートメータで計測・計量し、クラウドで収集、様々なデータを掛け合わせ脱炭素等、企業の環境経営や生活品質の向上への新たな価値提供の検討等、SMaaS(Smart Metering as a Service)時代を見据えた新たなオートメーション領域への事業展開を進めております。また、戸建て住宅向け全館空調分野でも空気質にこだわった住環境の快適さを追求したソリューションを強化し、生活関連分野の収益改善を継続してまいります。
以上のような3つの事業軸への取組みと同時に、国内外で大きく変化していくことが見込まれるエネルギーマネジメント領域においては、東光高岳グループとともに、事業コンセプトである「DX-EGATM」のもとで、エネルギーデータ(電力:Electricity、ガス:Gas、水道:Aqua)等様々なデータを利用して、生活品質向上や企業の環境経営に新たな価値を提供してまいります。温室効果ガス排出量の算定や可視化に向けて、クラウドサービス上で様々な排出量削減施策や知見を提供する試みは、その好事例となります。
また、「新オートメーション事業領域」「環境・エネルギー事業領域」という成長領域の目標を定め、展開施策を強化・加速し、社会の脱炭素化への貢献、持続可能な社会への「直列」に繋がる貢献を明確に進めるために、2022年4月に全社組織として新たに「GX推進部」を設置し、GX(グリーントランスフォーメーション)を推進してまいります。
※7 カーボンニュートラル:温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること。
※8 GX(グリーントランスフォーメーション):カーボンニュートラルの実現に向けた経済社会システムの変革。
② 海外事業
海外市場におきましては、事業成長と収益拡大を支えるための更なる事業基盤強化策の一つとして、各国や地域の市場環境に対応し、付加価値の高い特長ある新製品・ソリューションの提案を継続的に強化し、グローバルでの事業拡大を目指します。東南アジア地域においては、シンガポールを拠点とする「東南アジア戦略企画推進室」により、同地域での横断的な事業推進・戦略企画・経営管理を加速させております。
BA事業では、海外市場でのシェア拡大に向け、次世代ビルディングオートメーションシステムを軸に、国内事業モデルでの強み(省エネルギーのアプリケーション、エンジニアリング・サービス力)を展開し、各国の事業環境・事業基盤に応じた施策を実施するとともに、ライフサイクル型ビジネスモデルの段階的な強化に努めております。また、海外向け統合型ビルディングマネジメントシステム(IBMS)※9に向けた新たなデジタルソリューションの開発をシンガポールで開始いたしました。
AA事業では、海外での戦略地域の人員増強や管理システムの導入等による営業体制強化や営業活動の質の改善を継続し対象顧客を拡大しております。また、主要製品のリニューアルや戦略製品の投入、新市場向けの拡張製品開発や異常予兆検知・AI設備診断等、新しいオートメーション領域の開拓を進めてまいります。
LA事業では、ライフサイエンスエンジニアリング領域で事業展開する欧州のアズビルテルスター有限会社において、製薬市場での製薬設備需要の増加を背景に、ワクチン等の医薬品製造関連ソリューションの提供を継続してまいります。
以上に加えて、azbilグループの海外子会社における経営管理面におきましても、リモート管理体制の強化に加えて、現地法人の評価体制を拡充するなど、引き続きグループ・ガバナンスを強化し、各社の堅確な体制構築を進めてまいります。
※9 IBMS(Intelligent Building Management System):大規模複合施設の各種設備管理システムを一括管理し、効率的で高品質な設備管理やエネルギー管理、テナント情報の管理等を実現するシステム。
③ 生産・開発
azbilグループの事業拡大に向けて、グループ生産体制を再編し、商品力強化に向けて開発リソースの集約・強化を進めてまいりました。国内では、生産機能の湘南工場への一拠点化を完了し、藤沢テクノセンターにおける技術開発機能との連携を強化したグループ内のマザー工場として機能整備を推進中です。また、藤沢テクノセンターにつきましてはクラウドやAIを活用した先進的なシステムソリューションやMEMS技術を活用した高機能・高性能デバイスの開発力を一層強化するための中核研究開発拠点として、センター内に新棟を建設、本年竣工いたしました。海外では、異常予兆検知や調節弁の診断サービス等、IoT・AI技術を活用した次世代インテリジェントサービス提供を目的に、タイにてSolution and Technology Centerが稼働中です。また、グローバルでの需要拡大に対応した生産能力拡大、生産工程の高度化と更なる自動化の推進を目的に、中国大連生産子会社に新工場棟を新設し、日本、タイ、中国を3極とした生産体制を強化しました。
なお、サプライチェーンや部品調達等の混乱が続き、世界的なインフレーションの影響も高まりつつあり、それらの影響の長期化の可能性もあると認識しております。生産のオペレーションを改善しながらBCP向けの部品在庫の活用、市場流通品の確保、代替部品への切り替えや設計変更等の対応を行い、サプライチェーン各社と連携して、生産の継続及び製品の納期への影響軽減のための取組みを継続してまいります。
④ 経営管理
グループ経営の推進とガバナンス体制の充実を図るとともに、リスク管理(品質・PL、防災・防疫・BCP、情報)、コンプライアンス(企業倫理・法令遵守)、人を重視した経営、地球環境への貢献及び社会貢献を重点取組み領域として、azbilグループを挙げてCSR経営の推進に継続して取り組んでおります。
経営管理面では、国際財務報告基準(IFRS)の任意適用も視野に入れた会計水準の向上と、それに伴う内部統制の強化を進めてまいります。また、経営の公正性、中立性及び透明性を高めるべく、コーポレートガバナンス・コードへの対応を継続しながら、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に資するよう、全てのステークホルダーの皆様との間で建設的な対話を進めるための体制整備を積極的に進めております。
サステナビリティに向けて、ESG(環境・社会・ガバナンス)に対しても積極的に取組みを進めております。E(環境)に関しては、TCFDの国際的な枠組みに賛同表明し、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標について有価証券報告書等で開示するほか、自らの事業活動に伴う温室効果ガス排出量(スコープ1+2)に加えてサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(スコープ3)削減目標を設定し、その実現に取り組んでおります。S(社会)については、「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」に係わる「国連グローバル・コンパクト」に署名し、中期経営計画において人的資本・知的財産への戦略的検討を行っております。コーポレート・ガバナンスについては前述のとおり2022年6月23日開催の第100期定時株主総会にて「指名委員会等設置会社」への移行をご承認いただきました。この他、実効的な統合リスク管理の構築を目的として、サステイナビリティ推進本部内に、「CSR・リスク管理部」を設置いたしました。
これらの取組みの結果、2021年度も年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が選定した4つのESG指数※10の構成銘柄に選定されております。また国際環境非営利団体であるCDP※11により、「気候変動」に対する取組みとその情報開示に関して世界的に優秀な企業として評価されAリスト(最高評価)に選定されました。
※10 ESG指数:FTSE Blossom Japan Index、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数、MSCI日本株女性活躍指数(WIN)、S&P/JPXカーボンエフィシェント指数。
※11 CDP:企業や自治体を対象とした世界的な環境情報開示システムを運営する国際環境非営利団体。2000年に英国に設立され、110兆米ドルを超える資産を保有する590強の投資家と協働し、資本市場と企業の調達活動を介して、企業に環境情報開示、温室効果ガス排出削減、水資源保護、森林保護を働きかけている。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者がazbilグループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。これらのリスクについては、総合リスク委員会及び取締役会にて審議され、総合的なリスク管理体制の推進を図るとともに、関連部門におけるリスク軽減策やリスク発生時の対応策を講じております。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営環境に係わるリスク
azbilグループの商品やサービスの需要は、その事業に関連する市場である建設及び製造業や機械産業市場等の経済状況に左右される構造的な要因があり、事業を展開する地域の経済環境の変化(インフレーションの進行等)、広範囲な部品調達難、感染症の蔓延に伴う社会環境の変化や市場の大幅な景気後退、需要減少は、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
これに対して、当社グループでは景気循環サイクルの異なる各事業(建物市場におけるビルディングオートメーション(BA)事業、工業市場におけるアドバンスオートメーション(AA)事業、生活関連市場におけるライフオートメーション(LA)事業)に取り組んでおり、景気変動の影響の軽減を期待できる複数の事業構成となっております。
BA、AA、LAの各事業領域においては、景気変動に対し比較的安定した需要特性をもつライフサイクル型ビジネスに取り組んでおります。上記の景気変動による影響に加え、個別の事業領域における変化として、BA事業では、リモートワークの普及に伴い、国内外のオフィス需要が中長期的に減少する可能性があります。これに対して当社グループでは、オフィスの将来像を事前に予測し、オフィスの有用性をアピールしてまいります。また、省エネルギーソリューションに加えて、空気質の向上やパンデミック対応の環境を提供するなどの施策を強化してまいります。
一方、事業構造改革を進めるLA事業の今後の成長に向けた取組みを含めて、バランスの取れた3事業の展開及び3事業におけるライフサイクル型ビジネスの拡大を進め、安定した経営に注力してまいります。
(2) 競争環境における成長に係わるリスク
① 事業運営に係わるリスク
昨今、新たな技術やそれらの影響による社会インフラの変化、エネルギー市場の自由化等の規制緩和、グローバル化の進展、深刻化する少子高齢化など社会動向の劇的な変化が既存の事業に大きな影響を与え、新たなビジネスモデルの出現や異業種競合の市場参入など業界の構造変化を引き起こす可能性があります。azbilグループにおいても、この変化に伴う事業形態・運営における新たなリスクを認識したうえで、新しいサブスクリプションモデル等の展開や戦略的な協業展開等にも積極的に取り組んでおります。
こうした競争環境のもとでの更なる成長を実現するために、当社におきましても他社との更なる提携やM&Aも視野に入れた事業展開を採りうる選択肢とし、推進体制も整えておりますが、適正なタイミングでの望ましい候補先との機会を得ることや、またM&A後のシナジーにつきましても初期段階から効果を得ることは難しい可能性もあり、さらに提携、買収先企業とのコミュニケーションや理解不足による事業遂行上のリスクを負う可能性もあるため、十分な検討の必要性を認識しております。
このような事業や技術の提携及びM&Aの候補先検討を多面的に継続する一方で、新たな事業等に自社単独で参入する場合におきましては、体制構築や人材配備、法令や契約等の法規制や商習慣への対応等が必要となり、成果を得るために要する時間や投入すべき経営資源負担増の懸念も考慮し、事業等の目的や条件と照らし合わせ、慎重かつ合理的な判断を行ってまいります。
② テクノロジー(技術)に係わるリスク
研究開発におきましては、AIやビッグデータなど新たな技術潮流の見誤り、研究開発の遅れ、また不十分なオープンイノベーション活用や技術開発の失敗等、技術対応力の不足等により、グループの成長を阻害する競争力の低下や新製品の市場投入の遅延及び売れ行きの不振等による業績への影響が懸念されます。また、データ活用や業務ツール標準化等のデジタル化対応に遅れが発生した場合は競争力の低下が懸念されます。
azbilグループではこのような状況を認識し、競争優位を獲得するための適切な研究開発への投資やITソリューション推進、クラウドサービス運用等の専門分野に特化した組織体制による対応、新たなビジネスモデル検証のための活動、企業内大学(アズビル・アカデミー)による職種転換・教育による体制整備、M&A機会の探索を継続、基幹情報システムの更新・強化・グループ展開等、今後とも環境変化への対応遅れや競争上の不利な状況を回避すべく施策展開を継続してまいります。
(3) 商品の品質に係わるリスク
azbilグループにおきましては、製品開発及び生産段階において専任の組織による品質確認や、適正な検査作業工程維持のための生産ラインの管理・改善の取組み、及び工場運営に関わる法令遵守状況の確認等、品質管理対応を強化しており、活動状況や関連する情報は、品質保証委員会をはじめとする会議体にて共有・可視化されるように努めております。
また、サービスや製品を安心してご使用・ご採用いただけるよう、設計段階や生産工程における確認に加え、安全面に特化した専任組織による審査を行うなど、対応を図っております。
製造物責任につきましては、保険に加入するなど問題発生に際しての備えも強化しておりますが、当社グループの製品、システム及びサービスの欠陥や不良による事故が発生した場合は、多額のコスト発生や顧客からの評価に重大な影響を与え、それにより事業、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(4) グローバル事業活動に係わるリスク
azbilグループでは、グローバル化が進展する昨今の情勢下、高い成長率が見込まれる海外市場での事業拡大を目指し、活動を展開しております。
成長戦略としての海外での事業拡大は、現在40以上の現地法人及び2つの支店による営業・サービス活動をはじめ、中国の大連とタイの基幹工場における生産活動及び新たに投資した海外グループ企業による事業活動等により、積極的な展開を行っており、それらの効果も現れておりますが、今後の活動の継続にあたりましては、以下のようなリスクを想定しております。
① 地域の政治経済変化、法改正、テロ・商習慣の違いなどによる影響
グローバル事業の拡大に伴い、進出先においての政治経済情勢の変化、現地の法律や規制等の改正、自然災害、テロ、ストライキ、戦争等の発生や地政学的リスクの増大、また新型コロナウイルス等の感染症の蔓延等、不測の事態に遭遇する危険性が増しており、防災対応や在宅勤務の導入、BCP(Business Continuity Plan-事業継続計画)の検討等により、そのリスクへの備えを進めておりますが、事業、与信管理も含めた業績及び財政状態に一定の影響が出る可能性があります。ウクライナ危機等に伴う地政学的リスクや、これによる経済への影響等については継続的に注視し、適切に対応してまいります。
② BA事業の海外事業展開遅行による影響
BA事業では、東南アジア・中国を中心とした拠点設立と自社エンジニア及びパートナー企業の確保等の事業遂行体制の整備、ビルディングオートメーションシステム「savic-net G5」等の海外市場向け商品の投入、並びに海外でのライフサイクル型ビジネス立ち上げのためサービス事業の定着を図るべく施策を展開しておりますが、BA市場における地域の特異性等により計画している事業展開に遅れが生じ業績に影響が出る可能性があります。
③ 為替変動による影響
azbilグループは、為替変動に対して、適切な財務上の為替ヘッジを行いつつ、海外生産の拡大等によるリスク軽減に取り組んでおりますが、急激または大幅な為替レートの変動は、売上高、原材料・部品の価格、販管費等の経費に影響し、当社グループの業績及び財政状態に一定の影響を及ぼす可能性があります。
(5) 人材の確保と育成に係わるリスク
azbilグループは、「社員は重要な財産であり、新たな企業文化と企業価値の創造の源泉である」という普遍の考え方をベースに、「健幸経営」をスローガンに各種人事施策を展開しておりますが、以下のような状況においてリスクが生じる可能性を認識しております。
① 事業構造変化に応じた適材適所の人材配置
azbilグループでは、今後の技術発展や社会情勢の新たな展開等に誘発される事業構造の変化に対しての適切な人材配置の必要性を認識しており、加えて少子高齢化や多様性の進展、働き方改革をはじめとした新労働法制の施行等への対応も求められていることなどから、2018年度より新たな人事制度の定着に向けた活動を展開しております。しかしながら、求める人材の確保、教育や円滑な配置展開等に支障をきたす場合には、生産性など組織パフォーマンスが低下するおそれがあります。
② 事業拡大のためのグローバルな人材確保と育成
海外事業展開のための人材確保と育成に係わる施策の遂行は、azbilグループの成長のための重要課題との認識のもと、拠点の増強とあわせて取組みを進めておりますが、目的に合致した人材の確保や事業展開のためのスキル教育等が順調に展開できない場合には、計画した事業成長目標の達成を阻害する要因となる可能性がリスクとして懸念されます。
(6) 情報漏洩やITセキュリティ対応等に係わるリスク
① 情報漏洩による影響
azbilグループでは、事業上の重要情報及び事業活動の過程で入手した個人情報や顧客、取引先、提携先等の機密情報を保有しておりますが、昨今、国内外ではGDPR(EU一般データ保護規則)等に代表される個人情報を主体とする各種情報の保護に対する法令の制定が進んでおり、遵守とそのためのルール整備や情報システムの強化が求められております。当社グループにおきましても、事業上の重要情報の機密保持とあわせて、個人情報保護に関しての法令遵守のため社内規程整備と運用及び社員への教育を行っておりますが、2020年度にコンピュータウイルス「Emotet(エモテット)亜種」に感染した事象が発生いたしました。当社ではこの事態を重く受け止め、今後、同様の事態が発生しないように更なる情報セキュリティの管理強化の徹底に努めております。
しかしながら、万一、予測できないウイルス感染等による情報漏洩が生じた場合は、業績及び財政状態への影響や企業評価が毀損するリスクが想定されます。
② ウイルス・サイバーテロ等による影響
azbilグループでは、激化するコンピューターウイルス等によるサイバー攻撃に対しての備えとして、より強固なIT環境の整備や社員の情報リテラシー(情報活用能力)を高めるため定期的な教育等の対応を継続的に行っております。
また当社で販売する商品やサービスの情報セキュリティ対応として、既存の開発部門に加えて、商品・サービスから業務システムまでの一貫したサイバーセキュリティ管理・対策を行う部門(サイバーセキュリティ室)による確認を中心に、安心してご使用いただけることを目指した対応を図っておりますが、2020年度のコンピューターウイルス感染の事態を重く受け止め、日々変化する状況に対応して、情報セキュリティ対応の高度化に、より一層努めてまいります。
しかしながら、新たな手口の出現が絶えない現在の状況に対して、サイバー攻撃を完全に防御することは難しいと言われており、想定外の攻撃によるリスクは残るものと考えております。
(7) 環境・気候変動・自然災害等に係わるリスク
① 不測の事態発生時の生産機能への影響及び製品・サービスの供給支障による業績と企業評価への影響(国内拠点の集中によるリスク)
azbilグループのBA事業、AA事業の国内生産拠点(製造子会社を含む)は、過去3つの主要拠点が神奈川県に立地しておりましたが、生産と研究開発部門の再編や、主要生産品目を国内他地域及び中国とタイの海外工場へ移管するなど生産拠点の分散化を図ることにより、拠点集中リスクの軽減を図ってまいりました。また、首都圏の活動制限等のロックダウン相当の事態を想定して生産対応計画を策定しております。ただし、マザー工場として生産機能の中核となる湘南工場や、海外の生産拠点において、大規模災害等による直接的又は間接的な被害が及んだ場合は、業績及び財政状態に一定程度の影響が出る可能性があります。
② BCP(事業継続計画)対応に起因する影響
azbilグループでは、災害等発生時に生じる顧客や関係取引先企業、自社への損害を最小限に抑えるべく、これまで特定の事態を想定のうえ、対応可能な事業継続期間を検証し、そのために必要な資金及び製品や部品の在庫、人員や生産設備等に求められる対応準備も進めるとともに、特定の事象に限定せずに事業の中断、阻害を引き起こす様々な事象の発生でも対処できるよう取り組んでおりますが、BCP対応の想定を超える事態(世界レベルでのパンデミック事象の長期化等)が発生した場合には、業績及び財政状態に大きな影響が出る可能性があります。
③ 気候変動がもたらす市場構造や顧客状況の変化による影響
当社は地球温暖化に対する取組みとして、2030年のazbilグループの事業活動に伴う温室効果ガスの排出量削減目標について「Science Based Targetsイニシアチブ(SBTi)」の認定を取得、さらに2050年には「排出量実質ゼロ」を目指す長期ビジョンを策定しております。「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同の表明を行うとともに、自らの企業活動にとどまらない環境負荷低減に努めておりますが、気候変動による、長期的な市場構造の変化や主力事業における顧客の売上減少等による業績への一定の影響が発生する可能性があります。そのため気候変動により引き起こされる可能性のある様々な事象と、その経営に与えるリスク内容や影響を確認したうえで複数シナリオで分析・分類して、リスクの明示化を図り、対策を策定いたしました。
しかしながら、気候変動に関するグローバルな規制、国内の政策、金融機関や投資家等のステークホルダーの要請の変化が進んでおり、上述のTCFDやSBTi等の対応を進めておりますが、変化への対応が遅れる場合や対応や説明が不十分とステークホルダーから認識される場合等は、業績や財政状態に影響が出る可能性があります。
なお、当社においては、当社グループにおける2030年の気候変動の影響を把握・評価するため、TCFDの枠組みを活用して、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の観点での整理・分析を行い、主たるリスク要素である、事業活動によるCO2排出量や異常気象による操業停止リスク等については、対策を進めております。(「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営戦略等」参照)
(8) コンプライアンスに係わるリスク
① 法令違反(独占禁止法、建設業法、労働基準法、贈収賄)による行政罰、課徴金等の発生リスク
azbilグループは、事業展開する各国において、事業・投資の許可、環境や安全、製品規格、その他理由による法的規制を受けております。また近時の地政学的な緊張に伴い輸出規制が強化されております。当社グループにおいて法令遵守は最優先事項であるとの認識のもと、法令変化に注意を払うとともに、周知・教育活動を全社員に対して行うなど、徹底を図っております。しかしながら、新たに進出する地域や業界特性への対応、新たな法令や既存法制の改正対応の遅れなどにより、違反が生じた場合には、業績及び財政状態に影響が出る可能性があります。
② 営業停止、顧客離れなど二次的な影響が発生するリスク
万一、法令やガイドラインに違反するような事態に陥った場合の影響度合いにつきましては、法令で定められた処罰内容や法令が対象とする事業の範囲等により異なってきますが、深刻なケースでは、国や自治体による特定の事業に対する業務停止命令や入札停止等の事態が想定されます。
azbilグループでは、CSR経営推進のもと、法令遵守は最優先事項であると認識し、国内外の定期的なモニタリングによる遵守確認や契約締結体制の強化とあわせて、周知・教育活動を全社員に対して行うなど、徹底を図っておりますが、こうした重大な法令違反等における不適切な行為等により、そのような事態に陥ってしまった場合には、風評被害による影響も含めまして、当社グループの企業評価が低下するリスクも想定されます。
(9) 社員のワークスタイルの変化に係わるリスク
働き方改革の取組みや在宅勤務の増加、感染症対策等によるリモート対応等、ワークスタイルが変化しております。新たなシステム導入等や業務プロセスの見直しに沿った各種社内基準やルールの見直しなどの対策を進めておりますが、業務標準・共通化が社員の新しいワークスタイルの変化に対応しきれず、その間に統制上の問題が生じる可能性や、業務効率が低下する可能性があります。
また、社員に対して疾病予防セミナー、健康づくりプログラム、アンケート調査や注意喚起等を実施しておりますが、コミュニケーション不足によるメンタルヘルス不調、運動不足に起因する健康問題が社員に発生する可能性があります。
(10) 調達に係わるリスク
近時、グローバル市場において、半導体関連部品等の部品の調達が困難となる、あるいはコスト自体が上昇するなどの影響の長期化の可能性もあると認識しております。生産のオペレーションを改善しながらBCP向けの部品在庫の活用、市場流通品の確保、代替部品への切り替えや設計変更等の対応を行い、生産の継続並びに製品の納期やコスト面での影響の軽減に取り組んでおります。しかし、部品の調達難が長期化した場合には、生産停止や大規模な生産稼働の低下等により事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度におけるazbilグループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における業績につきましては、受注高が2,869億5千万円(前連結会計年度は2,478億7千3百万円)と、前連結会計年度比15.8%の増加となりました。
売上高につきましては、2,565億5千1百万円(前連結会計年度は2,468億2千1百万円)と、前連結会計年度比3.9%の増加となりました。
損益面につきましては、営業利益は、前連結会計年度比9.8%増加の282億3千1百万円(前連結会計年度は257億2千万円)となりました。経常利益は、前連結会計年度比12.1%増加の295億1千9百万円(前連結会計年度は263億3千8百万円)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、前連結会計年度比4.3%増加の207億8千4百万円(前連結会計年度は199億1千8百万円)となりました。
(単位:百万円)
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|
2021年3月期 |
2022年3月期 |
増減 |
増減率 |
|
受注高 |
247,873 |
286,950 |
39,076 |
15.8% |
|
売上高 |
246,821 |
256,551 |
9,730 |
3.9% |
|
営業利益 (利益率) |
25,720 (10.4%) |
28,231 (11.0%) |
2,511 (0.6pp) |
9.8%
|
|
経常利益 |
26,338 |
29,519 |
3,180 |
12.1% |
|
親会社株主に帰属する (利益率) |
19,918 (8.1%) |
20,784 (8.1%) |
865 (0.0pp) |
4.3%
|
当連結会計年度末の財政状態につきましては、以下のとおりです。
資産の状況
当連結会計年度末の資産の状況は、前連結会計年度末に比べて45億4千5百万円減少し、資産合計で2,800億5千2百万円となりました。これは主に、当社の研究開発拠点(藤沢テクノセンタ ー)の機能強化に向けた設備投資等により建設仮勘定が62億5千7百万円増加したものの、現金及び預金が95億5千7百万円減少したことによるものであります。
負債の状況
当連結会計年度末の負債の状況は、前連結会計年度末に比べて70億7千9百万円減少し、負債合計で769億1千万円となりました。これは主に、当社の標準支払条件変更等により仕入債務が89億6千1百万円減少したことによるものであります。
純資産の状況
当連結会計年度末の純資産の状況は、前連結会計年度末に比べて25億3千4百万円増加し、純資産合計で2,031億4千1百万円となりました。これは主に株主資本が、取締役会決議に基づく自己株式の取得により99億9千9百万円、配当金の支払いにより84億2千1百万円それぞれ減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により207億8千4百万円増加したことによるものであります。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の69.6%から71.5%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動による現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の増加は101億2千万円となり、前連結会計年度に比べて124億8千2百万円の減少となりました。これは主に、当社の標準支払条件の変更等により仕入債務の支払額が増加したことに加え、売上及び受注の増加を背景に当連結会計年度において売上債権及び棚卸資産が増加したことによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動に使用された資金(支出と収入の純額)は39億9千万円(前連結会計年度は2億8千3百万円の資金の増加)となりました。これは主に、当社の研究開発拠点の機能強化に向けた設備投資等により有形固定資産の取得による支出が増加したことによるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動に使用された資金(支出と収入の純額)は205億8千4百万円となり、前連結会計年度に比べて135億8千8百万円の支出の増加となりました。これは主に、取締役会決議に基づく自己株式の取得に加えて、配当による支出が増加したことによるものであります。
以上の結果、資金の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末より127億6千1百万円減少し、778億9千1百万円となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
ビルディングオートメーション事業 |
43,039 |
107.3 |
|
アドバンスオートメーション事業 |
31,463 |
115.2 |
|
ライフオートメーション事業 |
30,132 |
103.3 |
|
報告セグメント計 |
104,636 |
108.3 |
|
その他 |
- |
- |
|
合計 |
104,636 |
108.3 |
(注)上記金額は、azbilグループにおける製品の製造に係る費用及び工事の施工に係る原価を集計したものであり、商品の仕入及び役務収益に対応する費用は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高 (百万円) |
前期比 (%) |
受注残高 (百万円) |
前期比 (%) |
|
ビルディングオートメーション事業 |
132,511 |
111.8 |
75,120 |
117.3 |
|
アドバンスオートメーション事業 |
109,562 |
125.2 |
42,374 |
152.7 |
|
ライフオートメーション事業 |
46,845 |
108.1 |
17,267 |
121.0 |
|
報告セグメント計 |
288,918 |
115.9 |
134,761 |
127.0 |
|
その他 |
54 |
99.8 |
0 |
100.1 |
|
消去 |
(2,022) |
- |
(464) |
- |
|
連結 |
286,950 |
115.8 |
134,297 |
126.9 |
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
ビルディングオートメーション事業 |
119,764 |
101.9 |
|
アドバンスオートメーション事業 |
94,276 |
107.4 |
|
ライフオートメーション事業 |
44,238 |
103.0 |
|
報告セグメント計 |
258,279 |
104.0 |
|
その他 |
54 |
99.8 |
|
消去 |
(1,782) |
- |
|
連結 |
256,551 |
103.9 |
(注)総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点によるazbilグループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
azbilグループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、見積りが必要となる事項においては合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりでありますが、特に次の項目が連結財務諸表作成における重要な会計上の見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
なお、新型コロナウイルス感染症が当社グループの会計上の見積りに与える影響は軽微と判断しております。
(請負工事に関する収益認識)
請負工事契約については、履行義務の充足に係る工事の進捗度を合理的に見積もり、履行義務を充足する一定の期間にわたり収益を認識しております。工事の進捗度の見積りは主に、当連結会計年度末までに実施した工事に関して発生したコストが見積総原価に占める割合に基づく方法(インプット法)によっております。
なお、収益総額、見積総原価及び決算日における進捗度について、見積り時には予見不能な事象の発生やプロジェクト案件の進捗状況等によって当初の見積りが変更された場合、認識された損益に影響を及ぼす可能性があります。
(受注損失引当金)
受注契約に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末における受注残案件のうち売上時に損失の発生が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積もることが可能な案件について、翌連結会計年度以降に発生が見込まれる損失額を受注損失引当金に計上しております。
なお、将来発生する可能性のある損失をカバーするだけの十分な引当金残高を有しているかどうかを判断するために、様々な仮定や要素を考慮しておりますが、新技術・新領域の案件等において、見積り時には予見不能な事象の発生やプロジェクト案件の進捗状況等によって損失額が大きく変動する可能性があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
azbilグループを取り巻く事業環境は、国内大型建物向け空調制御機器・システムにつきましては、都市再開発計画に基づく需要等が継続し、換気・省エネ対策に対する関心が高まりを見せる中、改修案件の需要も着実に増加しております。製造業の生産設備向けの各種機器・システムにつきましても、リモートワークや5Gサービスの急速な普及により半導体関連市場で需要が高い水準で推移し、市場による差異はありますが、全般として設備投資の回復が継続いたしました。
当連結会計年度における業績につきましては、部品不足に起因するお客様の先行発注や長納期化による売上計上の遅れなどによる影響が下期以降拡大いたしましたが、前連結会計年度における新型コロナウイルス感染拡大に伴う市況悪化からの回復もあり、次のとおりとなりました。
受注高は、前連結会計年度における感染拡大に伴う受注面での減少から転じて、全体として前連結会計年度比15.8%増加と大きく伸び、2,869億5千万円(前連結会計年度は2,478億7千3百万円)となりました。これは主に、アドバンスオートメーション(AA)事業が市況の回復とともに、一部には部品不足に起因する先行発注の影響もあり増加したことに加え、ビルディングオートメーション(BA)事業が既設改修・サービス需要により、またライフオートメーション(LA)事業が製薬設備需要によりそれぞれ増加したことなどによるものです。また、売上高につきましては、AA事業が長納期化による影響が一部で見られたものの、製造装置市場等での需要回復により増加し、BA事業、LA事業もそれぞれ増加したことから、前連結会計年度比3.9%増加の2,565億5千1百万円(前連結会計年度は2,468億2千1百万円)となりました。
損益面につきましては、営業利益は、費用面で感染拡大における勤務対応関連費用の負担増や中期経営計画に基づく施策からの研究開発費等の増加があったものの、増収影響に加えて事業収益力強化施策の効果等も継続し、前連結会計年度比9.8%増加の282億3千1百万円(前連結会計年度は257億2千万円)となりました。また経常利益につきましては、営業利益の増加及び為替差益の計上等により前連結会計年度比12.1%増加の295億1千9百万円(前連結会計年度は263億3千8百万円)となり、親会社株主に帰属する当期純利益につきましても、前連結会計年度に投資有価証券売却益や国内の工場統合による固定資産売却益の計上があったことに加えて、当連結会計年度においては子会社の繰延税金資産の回収可能性の見直しなどによる税金費用の増加がありましたが、前連結会計年度比4.3%増加の207億8千4百万円(前連結会計年度は199億1千8百万円)となりました。
セグメント毎の経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については次のとおりであります。
ビルディングオートメーション(BA)事業
BA事業を取り巻く事業環境は、国内市場においては、首都圏における都市再開発案件や工場向け空調の需要が継続しており、換気改善、省エネ・CO2削減や運用コスト低減に関するソリューションへの関心も拡大しております。また、国内市場においては新型コロナウイルス感染症の影響は限定的なものにとどまりましたが、部品調達難の影響が一部で見られました。海外市場においては、一部地域では感染症の長期化の影響により、建築計画順延・工事遅延等の影響が見られました。
こうした事業環境のもと、採算性に配慮しつつ着実な受注の獲得に取り組むとともに、お客様・社員の安全に十分配慮し、働き方改革への対応も踏まえ、施工・サービスの現場を主体に業務の遂行能力の強化と効率化を進めてまいりました。また、IoT等の技術活用を志向する国内外の顧客ニーズに対応するための製品・サービスの拡大を進めてまいりました。この結果、BA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。
受注高につきましては、新収益認識基準によるサービス分野への影響※1がありましたが、複数年サービス契約の更新に加えて、堅調な事業環境を背景に既設建物の改修に関する分野が増加、一部には部品不足によるお客様の先行発注の影響もあり、全体としては前連結会計年度比11.8%増加の1,325億1千1百万円(前連結会計年度は1,185億3百万円)となりました。売上高につきましては、新収益認識基準や部品調達難の影響によりサービス分野が減少いたしましたが、新築大型建物向けの分野及び既設建物の改修に関する分野が増加した結果、前連結会計年度比1.9%増加の1,197億6千4百万円(前連結会計年度は1,175億2千1百万円)となりました。セグメント利益につきましては、収益性の改善効果はありましたが、中期経営計画に基づく研究開発費と受注活動増に伴う人件費の増加及び上期に計上した感染拡大に関連した勤務対応関連費用により、前連結会計年度と同水準の138億6千2百万円(前連結会計年度は140億2千3百万円)となりました。
中長期的には、堅調な国内での当期の受注動向に加えて、今後も大型の再開発案件や多数の大型建物の改修が計画されており、納入実績を基にこれらの需要を確実に獲得してまいります。さらに、脱炭素化の動きを受けての省エネ・CO2削減に向けたニーズや、感染拡大に起因する換気・入退室管理等の安全・安心に対するニューノーマル時代のオフィス需要等に対し、リモートメンテナンス、クラウドサービスや新空調システムといったソリューションを提供することで、持続的な成長を目指してまいります。あわせて、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や事業プロセス変革を含めた取組みを進め、更なる高収益体質を実現してまいります。
(単位:百万円)
|
|
2021年3月期 |
2022年3月期 |
増減 |
増減率 |
|
受注高 |
118,503 |
132,511 |
14,008 |
11.8% |
|
売上高 |
117,521 |
119,764 |
2,242 |
1.9% |
|
セグメント利益 (利益率) |
14,023 (11.9%) |
13,862 (11.6%) |
△160 (△0.4pp) |
△1.1%
|
※1 新収益認識基準によるサービス分野への影響:
新収益認識基準の影響は主にサービス分野において発生しており、受注高では約32億円の減少影響がありましたが、売上高及びセグメント利益への影響は軽微であります。
アドバンスオートメーション(AA)事業
AA事業を取り巻く国内外の市場の動向につきましては、5G関連投資の広がりなどを受けた半導体製造装置市場での需要が高い水準で推移しております。新型コロナウイルス感染症は未だ収束していませんが、製造装置市場を中心に市場全般で設備投資が回復いたしました。
こうした事業環境のもと、これまで注力してきた海外での成長戦略が成果として現れるとともに、継続して取り組んでいる収益力強化に関わる各種施策の進展により、収益体質が一段と強化されました。一方、部品調達難に伴い一部製品においては納期が長期化するなどの影響がありました。この結果、AA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。
受注高につきましては、世界的な半導体投資の拡大等を背景とした製造装置市場での需要の継続と海外での事業成長を主因に、一部には部品不足に起因するお客様の先行発注の影響もあり、全体として大きく増加し、前連結会計年度比25.2%増加の1,095億6千2百万円(前連結会計年度は875億2千3百万円)となり、受注残も大きく積み上がりました。売上高につきましては、製造装置市場向け及び海外事業を中心に増加しましたが、部品調達難の影響で一部製品の売上計上が遅れたこともあり、前連結会計年度比7.4%増加の942億7千6百万円(前連結会計年度は877億7千8百万円)にとどまりました。セグメント利益につきましては、営業強化に伴う経費や中期経営計画に基づく研究開発費の増加があるものの、増収及びこれまで取り組んできた収益力強化施策の効果により、セグメント利益率の改善が継続し、前連結会計年度比29.1%増加の132億3千6百万円(前連結会計年度は102億5千1百万円)となりました。
中長期的には、人手不足、脱炭素への対応、新技術の導入による生産性向上等を目的とした継続的な製造装置・生産ラインの自動化に係る投資の拡大が見込まれます。引き続き3つの事業単位※2(CP事業、IAP事業、SS事業)を軸に、海外事業をはじめとした成長領域への展開を推し進め、AIやクラウド、MEMS※3等の技術を取り入れた製品・サービスの開発、市場投入を加速させ、アズビルならではの新しいオートメーション領域を創出していくことで、高い競争力を持った事業成長を目指してまいります。
(単位:百万円)
|
|
2021年3月期 |
2022年3月期 |
増減 |
増減率 |
|
受注高 |
87,523 |
109,562 |
22,038 |
25.2% |
|
売上高 |
87,778 |
94,276 |
6,497 |
7.4% |
|
セグメント利益 (利益率) |
10,251 (11.7%) |
13,236 (14.0%) |
2,985 (2.4pp) |
29.1%
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※2 「3つの事業単位(管理会計上のサブセグメント)」
CP事業 :コントロールプロダクト事業(コントローラやセンサ等のファクトリーオートメーション向けプロダクト事業)
IAP事業:インダストリアルオートメーションプロダクト事業(差圧・圧力発信器やコントロールバルブ等のプロセスオートメーション向けプロダクト事業)
SS事業 :ソリューション&サービス事業(制御システム、エンジニアリングサービス、メンテナンスサービス、省エネソリューションサービス等を提供する事業)
※3 MEMS(Micro Electro Mechanical Systems):センサ、アクチュエータ、電子回路を一つの基盤の上に微細加工技術によって集積した機器。
ライフオートメーション(LA)事業
LA事業は、ガス・水道等のライフライン、製薬・研究所向けのライフサイエンスエンジニアリング、そして住宅用全館空調システムの生活関連(ライフ)の3つの分野で事業を展開しており、事業環境はそれぞれ異なります。
売上の大半を占めるガス・水道等のライフライン分野は、法定によるメータの交換需要を主体としており、基本的には安定した需要が見込まれますが、LPガスメータが循環的な不需要期にあるなど、一部市場では変化が見られます。またライフサイエンスエンジニアリング分野では、製薬プラント設備への投資増加が続いております。こうした事業環境や取組みを背景に、LA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。
受注高につきましては、製薬市場での製薬設備需要の増加を背景にライフサイエンスエンジニアリング分野が増加したことを主因に、前連結会計年度比8.1%増加の468億4千5百万円(前連結会計年度は433億5千万円)となりました。売上高につきましては、ライフライン分野が市況変化、感染拡大及び部品調達難の影響もあり減少した一方、ライフサイエンスエンジニアリング分野では感染拡大等により売上進捗に影響が見られたものの、前連結会計年度における受注増加を背景に増加したことから、前連結会計年度比3.0%増加の442億3千8百万円(前連結会計年度は429億4千2百万円)となりました。セグメント利益につきましては、ライフライン分野の減収に伴う減益を主な要因として、ライフサイエンスエンジニアリング分野においても増収ながら事業伸長に伴う経費増加や素材価格高騰、エネルギーコスト/輸送費等が増加したことにより前連結会計年度比19.7%減少の11億5千1百万円(前連結会計年度は14億3千4百万円)となりました。
LA事業では今後も引き続き、同事業を構成する各事業分野の収益の安定化・向上に取り組んでまいります。また、これと並行して、エネルギー供給市場における事業環境の変化を捉え、従来からの製品提供型の事業に加え、IoT等の技術を活用し、各種メータからのデータを活用したサービスプロバイダとしての新たな事業を創出し、売上高拡大、利益の向上に取り組んでまいります。
(単位:百万円)
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2021年3月期 |
2022年3月期 |
増減 |
増減率 |
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受注高 |
43,350 |
46,845 |
3,494 |
8.1% |
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売上高 |
42,942 |
44,238 |
1,295 |
3.0% |
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セグメント利益 (利益率) |
1,434 (3.3%) |
1,151 (2.6%) |
△283 (△0.7pp) |
△19.7%
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2022年度の見通し
azbilグループは、2030年度をゴールとする長期目標を設定し、この第1ステップとして4ヵ年の中期経営計画(2021~2024年度)を策定、目標達成に向けた取組みを進めております。「持続可能な社会」の実現に向けて、現在、様々な社会課題やお客様の課題が生まれており、こうした課題への解決策を提供できるオートメーションの役割が拡大、需要の増加が期待されます。中期経営計画では、こうした事業機会を捉え、当社グループならではの技術・製品・サービスを活かした新たな課題の解決策を提供することにより持続的な成長を目指しております。
当社グループを取り巻く次期の事業環境は、新型コロナウイルス感染症再拡大による影響、サプライチェーンの混乱・部品調達難、インフレ、地政学リスクなど不透明な状況が継続すると思われますが、大型建物向けの空調制御機器・システムに関する需要は堅調であり、工場・プラント等の生産設備に関する需要につきましても、DXの進展による需要の拡大を背景とした半導体製造装置の活況を中心に、全体として堅調な需要の継続が期待されます。
2022年度の業績につきましては、国内大型建物や製造装置等の堅調な市場の需要を確実に捉え、期首受注残の積み上がりを背景に部品調達難による影響等を想定のうえで増収を計画いたします。利益面につきましても、これまで取り組んできた事業収益力強化施策に加え、DX推進を通じた業務効率化のグローバル展開等により更なる改善を実現し、研究開発・設備等への成長投資を実施しつつも、増益を目指します。
BA事業は、大型建物向けの空調制御機器・システムの需要が引き続き高い水準で推移しており、新築建物における期首受注残の積み上がりと、収益性の良い既設建物の改修需要の拡大を背景に増収・増益を見込んでおります。
AA事業は、部品調達難の状況継続が見込まれますが、前年度における市況回復並びに先行発注等により積み上がった受注残と販売力強化施策等による海外事業の伸長を基に増収・増益を計画いたします。
LA事業は、製薬市場需要拡大等を背景としたライフサイエンスエンジニアリング分野の伸長並びにライフライン分野におけるクラウドサービスの展開により、増収・増益を見込みます。
なお、業績予想等は、当社が現時点で入手可能な情報と合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績は様々な要因により異なる可能性があります。
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(単位:億円) |
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2022年3月期 実績 |
2023年3月期 見通し |
増減 |
増減率 |
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ビルディング |
売上高 |
1,197 |
1,290 |
92 |
7.7% |
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セグメント利益 (利益率) |
138 (11.6%) |
145 (11.2%) |
6 (△0.3pp) |
4.6%
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アドバンス オートメーション事業 |
売上高 |
942 |
995 |
52 |
5.5% |
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セグメント利益 (利益率) |
132 (14.0%) |
140 (14.1%) |
7 (0.0pp) |
5.8%
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ライフ |
売上高 |
442 |
465 |
22 |
5.1% |
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セグメント利益 (利益率) |
11 (2.6%) |
13 (2.8%) |
1 (0.2pp) |
12.9%
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その他 |
売上高 |
0 |
1 |
0 |
82.7% |
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セグメント利益 (利益率) |
0 (11.1%) |
0 (0.0%) |
△0 (△11.1pp) |
-
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連結 |
売上高 |
2,565 |
2,750 |
184 |
7.2% |
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営業利益 (利益率) |
282 (11.0%) |
298 (10.8%) |
15 (△0.2pp) |
5.6%
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経常利益 |
295 |
302 |
6 |
2.3% |
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親会社株主に帰属 する当期純利益 (利益率) |
207 (8.1%) |
215 (7.8%) |
7 (△0.3pp) |
3.4%
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③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
azbilグループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況、② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおり健全な財務基盤を維持し、必要な運転資金等への十分な流動性も確保していると認識しております。加えて、パンデミック、大規模な自然災害の発生等、不測の事態でも事業を継続し、供給責任を果たすことのできる強固な財務基盤を引き続き維持しております。また、安定的な外部資金調達能力の維持向上を重要な経営課題として認識しており、当社グループは格付投資情報センターより発行体格付「シングルA+(安定的)」を取得して社債発行枠200億円を設定するとともに、コマーシャル・ペーパーについて格付「a-1」を取得して発行枠200億円を設定しております。さらには、複数の金融機関との間で合計100億円のコミットメントラインを設定し、緊急時の流動性を確保しております。あわせて、国内子会社については親会社を通じたキャッシュ・マネジメントにより、資金調達の一元化と資金効率化、流動性の確保を図るとともに、海外の一部地域においても域内でのグループファイナンスを実施しております。
当社グループの資金需要としましては、営業活動上の運転資金に加えて、設備投資及び研究開発のための資金や配当支払いなどを見込んでおり、主に営業活動によるキャッシュ・フローや内部資金のほか、一部借入による資金調達も行っております。借入による資金調達に関しましては、主に短期借入金で調達しておりますが、当連結会計年度末現在で短期借入金の残高は80億4千6百万円で、前連結会計年度末に比べて9億8千9百万円減少しております。
他方、営業活動によるキャッシュ・フローや内部留保を含めた資本を活用し、持続的な成長の実現や事業基盤の整備・強化に向けて、国内外生産拠点の再編・拡充をはじめとする設備投資や技術革新に対応した研究開発、サービスの高付加価値化や事業の効率化に必要なDX等への投資を実現しております。当連結会計年度の設備投資の総額は112億4千4百万円、研究開発費の総額は121億8百万円となりました。今後につきましても、成長に向けた商品・サービスの拡充、先進的なグローバル生産・開発の構造改革等、事業基盤の強化・拡充に注力するとともに、M&Aといった将来の成長投資を進めてまいります。
株主還元につきましては、経営の重要課題の一つと位置付けており、連結業績、純資産配当率(DOE)・自己資本当期純利益率(ROE)等の水準に加え、上記の成長投資及び健全な財務基盤の確保のための内部留保等を総合的に勘案し、配当水準の向上に努めつつ安定した配当を維持していきたいと考えております。詳細は「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご確認ください。
④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、株主価値増大に向けて連結ROE(自己資本当期純利益率)の向上を基本的な目標としており、収益性と資本効率の向上を通して、2030年度をゴールとする長期目標※1として、売上高4,000億円規模、営業利益600億円規模、営業利益率15%程度、ROE13.5%程度を目指しております。また、この長期目標達成に向け、2024年度を最終年度とする4ヵ年の中期経営計画※においては、最終年度の売上高3,000億円、営業利益360億円、営業利益率12%、ROE12%程度を達成することを目標としております。
※ 2021年5月14日、当社グループは長期目標、中期経営計画(2021~2024年度)を策定・公表いたしました。
該当事項はありません。
事業環境や技術動向の変化を捉え、フィールド機器とシステムソリューション、及び、その融合による計測・制御技術の一層の強化に取り組んでおります。
・フィールド機器
MEMS※技術の深化と先端技術原理の応用、AI技術も備えた自律的に処理できるセンシングデバイス。
・システムソリューション
操業現場で得られたビッグデータを処理し、AI技術により複雑な現象を人に分かりやすく伝え、全体最適を行う技術。
・IoT・DX(デジタルトランスフォーメーション)によるフィールド機器とシステムソリューションの融合。
・フィールド機器のネットワーク化、システムのクラウド化、フィールドとシステムを融合するネットワークの強化。
※ MEMS(Micro Electro Mechanical Systems):センサ、アクチュエータ、電子回路を一つの基盤のうえに微細加工技術によって集積した機器。
これらの技術を融合することで成長事業領域と位置付ける「新オートメーション」「環境・エネルギー」「ライフサイクル型事業」の3領域で競争力のある製品・サービスを生み出してまいります。
3つの成長事業領域事例におけるソリューションを実現するデバイス・アプリケーション例
・ニューノーマルな働き方に対応する新空調システム・セル型空調システムネクスフォートTMDD
・各種制御デバイスの情報連携をプログラムレスで実現する通信ゲートウェイ形NX-SVG
・湿度エレメントの小型化・センサユニット化FP5TM
・重要プロセス変数変動監視ソフトウエアACTMoSTM
各事業分野においては、以下の開発を推進してまいります。
・ビルディングオートメーション事業
温暖化対策として、大型建物のCO2排出量の削減を継続的に実現する既設改修・エネルギーマネジメント技術の開発、及びウイルス禍で需要が高まる安全・安心なワークプレイスを実現する商品群の開発。
・アドバンスオートメーション事業
AI、IoT活用により生産設備の安全、効率運用をリモートで実現するクラウドサービスの開発。
・ライフオートメーション事業
エネルギー・インフラの維持の省力化からビッグデータ収集・活用による新サービスの開発。
研究開発体制としては、米国のシリコンバレーに設置した研究開発拠点及び欧州グループ会社による、日本、米国、欧州の3極体制で技術・商品開発を行っております。
・米国の研究開発会社においては次世代計測技術を実現する技術開発の推進及びIoT等の最新の技術動向調査や国際標準活動。
・欧州ではアズビルテルスター有限会社との協創による製薬関連施設や医療機関等に提供する商品力強化。
生産技術としては、高度なパッケージ技術を強みとした次世代MEMSセンサの生産技術の強化、機械・システムの知能化技術による新生産ラインやAIを導入した自動化技術による多品種少量生産、カスタマイズ生産を実現してまいりきます。
また、各生産拠点のIoT化を図り、品質・設備保全に関する生産情報を遠隔管理し、グローバルな生産体制を強化してまいります。
当連結会計年度の研究開発費の総額は12,108百万円(売上高比4.7%)となりました。
各セグメント別の研究開発費及び主な成果は、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
研究開発費 (百万円) |
主な成果 |
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ビルディングオートメーション事業 |
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・オフィスビル向けに空調の温湿度表示や設定、CO2濃度の確認や室内換気を実現するユーザ向け操作器「マルチエリア対応ユーザターミナル」海外版 |
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アドバンスオートメーション事業 |
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・パソコン上での直感的な画面操作のみで、スマートフォンやタブレット端末向けのWebアプリが構築できるクラウドサービス「現場でつくる作業記録サービス」にアドオン機能「計画管理サービス」を追加 ・バルブ解析診断サービスDx Valve Cloud Service がISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)クラウドセキュリティ認証の取得 ・ひとめで制御状態を把握できる、高速応答・高精度なマスフローコントローラF4Q ・電源供給機能を搭載し、フィールド機器の通信トラブル早期解決を支援するスマートHARTモデム 形AZ-1SHM |
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ライフオートメーション事業 |
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・水道メータにLPWA無線通信装置を接続し、検針値をWebコンテンツで提供するクラウドサービス ・エネルギーデータを軸として、様々な領域でのDXを加速させ、生活品質の向上や企業の環境経営に新たな価値を提供する事業コンセプト「DX-EGATM」策定 |
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その他 |
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合計 |
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