文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、azbilグループが判断したものであります。
(1)経営方針
azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」のグループ理念のもと、事業拡大を通じて、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献により、継続的な企業価値の向上を図り、社会と社員のWell-beingを実現し、あらゆるステークホルダーと信頼関係を構築してまいりたいと考えております。
(2)経営戦略等
当社は、人を中心に据え、人と技術が協創するオートメーション世界の実現に注力し、お客様の安全・安心や企業価値の向上、地球環境問題の改善等に貢献する世界トップクラスの企業集団になることを長期目標と設定、段階的に中期経営計画を立案し、この目標達成に向けた取組みを行っております。オートメーションに焦点をあてつつ単一市場への過度な集中を避け、3つの事業分野から成る複合的な事業ポートフォリオの構築を進め、顧客開拓やシナジー等による事業領域の拡大に取り組んでまいりました。
これらの事業領域には、既存の製品・サービスの提供では持続的な成長の実現が厳しくなってきている成熟領域もあれば、IoTやAIといった新たな技術革新に伴い、急激に変化している領域もあります。基盤を確たるものとし、企業としての存続を確かなものとする取組みを継続するとともに、更なる成長を実現するため、国内外の事業機会の変化を的確に捉え、事業創造の視点から「商品と顧客現場の連携」によるソリューション提案力の向上に取り組み、azbilグループならではの価値の提供を実現してまいります。
2021年度から2024年度までの前中期経営計画※1期間では、コロナ禍を契機に市場環境は大きく変化し続けました。最終年度の2024年度も、生成AIをはじめとする技術革新、インフレやグローバルサプライチェーンの課題、地政学的リスクの高まりや貿易摩擦等、多くの企業にとって変化の激しい年となりました。この不確実性が増す状況下において当社グループとしましては、市場ごとに事業環境は異なるもののお客様の生産性改善ニーズ等による受注を着実に捉え、調達・生産プロセスの改善により売上を拡大するとともに、インフレ等によるコスト上昇に対し、価格転嫁対応を含む収益力強化と業務効率化の展開により過去最高業績を更新しました。
2025年度から始まる新中期経営計画(2025~2027年度)※2は、2030年度の長期目標を見据えた第二期間であるとともに、2026年に迎える創業120周年を超えて、“持続可能な社会へ直列に繋がる貢献”に向けた進化、共創を実現する計画と位置付けております。我々はこれまで、未来を見通し、変化を捉え、「創業時からのDNA」を時代にあわせて活性化し、自らを進化させることで、お客様や現場の声に誠実に応え、前中期経営計画期間には3つの成長事業領域※3をはじめとする様々な領域で事業拡大を実現してまいりました。新中期経営計画においても、半導体等の技術革新及びカーボンニュートラルのような社会環境の変化に伴う新たな社会課題解決を更なる事業機会と捉え、人的資本強化、商品力強化、DX推進等の投資を着実に行ってまいります。グローバルでの地政学的リスク、米国相互関税政策に伴うインフレ等、事業環境変化は継続しておりますが、当社グループの特長である、製品をご利用いただいている工場、商業ビル、ライフラインといったお客様の現場における、ライフサイクルに応じた長期にわたる商品・サービスの提供を通じ、効率化や高品質化といった価値を提供し続けることで、持続的かつ安定的な成長を目指してまいります。
※1 2021年5月14日、中期経営計画(2021~2024年度)を策定・公表いたしました。
※2 2025年5月13日、新中期経営計画(2025~2027年度)を策定・公表いたしました。
※3 3つの成長事業領域:「新オートメーション事業」、「環境・エネルギー事業」、「ライフサイクル型事業」
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、株主価値増大に向けて連結ROE(自己資本当期純利益率)の向上を基本的な目標としており、2021年5月14日に策定した2030年度をゴールとする長期目標を、2025年5月13日、売上高4,200億円、営業利益650億円、営業利益率15.5%、ROE15%を目標として上方修正いたしました。前中期経営計画期間での収益力強化の取組みの成果を活かし、長年にわたる顧客基盤との強い関係を基にした事業に加えて、成長領域の開拓で更なる成長を目指しております。
この長期目標達成に向け、前中期経営計画の最終年度となる2024年度では、事業収益力の強化を進め、売上高3,000億円、営業利益375億円、営業利益率12.5%、ROE12.2%を計画し、実績として、売上高3,003億円、営業利益414億円、営業利益率13.8%、ROE17.9%を達成しました。
これを踏まえ、2027年度を最終年度とする3ヵ年の新中期経営計画では、最終年度の売上高3,400億円、営業利益を510億円、営業利益率15.0%、ROE14%を達成することを目標としております。
(4)対処すべき課題
① サステナビリティ経営
azbilグループでは、ダブルマテリアリティ(環境・社会が企業に与える財務的な影響と、企業活動が環境・社会に与える影響という2つの側面から重要性を評価する考え方)を取り入れ、長期にわたり取り組む重点課題として5分野10項目のマテリアリティを特定しています。これらのマテリアリティに基づき、事業や企業活動に関する7つの項目については、SDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)の領域において目標を「azbilグループSDGs目標」として具体的に定めるとともに、企業が社会に存立するうえで果たさなければならない基本的責務である3つの項目については、CSR活動において具体的な目標を定めております。このようなSDGs及びCSR活動における各目標の達成に向けて様々な取組みを行うことにより、当社グループの「サステナビリティ経営」の推進を通じ、持続的な成長を目指してまいります。
② 国内事業
ビルディングオートメーション(BA)事業は、中期的には国内の大型建設需要は旺盛になっていますが、このような好調な環境下において、お客様に満足いただける一層高い品質の製品やフィールドサービスを提供し続けるとともに、カーボンニュートラルやウェルネスを中心とした新しいニーズに対しても当社グループならではの新規商品の提供や、事業開拓のための他社協業を推進しています。
カーボンニュートラルへの具体的な取組み事例として、株式会社読売新聞東京本社の本社ビルと東京北工場で実施するオフサイトフィジカルコーポレートPPA※4において、両物件が使用する電力を、再生可能エネルギー※5由来の電力に置き換える再エネ電力スキーム導入事業への参画が挙げられます。この事業の参画を通じ、蓄熱制御を始めとするビルディングオートメーション技術やデマンドレスポンス※6技術の更なるアップデートを図り、お客様のカーボンニュートラルへの取組みのサポートや脱炭素社会実現の貢献を目指しています。
▲オフサイトフィジカルコーポレートPPAの仕組み
アドバンスオートメーション(AA)事業では、景気の循環による変動影響はあるものの、脱炭素化、サーキュラーエコノミー、生産高度化、安全・安定操業、人手不足対応等の要望に対して、計測・制御分野を中心に貢献できる領域は大きく、更なる事業領域の拡大と事業成長が期待できると考えています。成長戦略として、社会の環境変化や技術の潮流変化に対応した「azbilグループならではの新しいオートメーション領域」を創出していくとともに、原価低減、販売価格適正化等の各種収益力強化施策をCP事業、IAP事業、SS事業の3つの事業単位でのオペレーションを通じて着実に実行してまいります。
新しいオートメーション領域の商品として、AIを活用した品質ナビゲーションシステム「Deep AnchorTM」の販売を開始しました。Deep Anchorは、自律型品質管理のコンセプトに基づいて開発された、AIを活用した品質管理業務のためのナビゲーションシステムで、製品の品質に影響を与える因子を自動で抽出し、生産中の品質変化をリアルタイムで監視するだけでなく、万一、品質検査で不合格が発生した際には、その原因を自動で調査し報告する革新的な機能も備えています。
Deep Anchorは、次の3つの機能を提供するAIによる品質ナビゲーションシステムです。
機能1:製品品質に影響を与える因子を自動抽出
機能2:生産中の品質影響因子の変化をオンラインモニタリング
機能3:品質検査で不合格の場合、製造データ等からその原因を自動で調査報告
▲AIを活用した品質ナビゲーションシステム「Deep Anchor」
ライフオートメーション(LA)事業では、ライフライン分野において、主体であるガス・水道メーターの交換に関する安定した需要に対し、価格転嫁等を通じて収益性の改善に努めています。さらに、計量法に基づく安定した更新需要をベースに、ガス・水道メーターのスマート化と、これに通信とクラウドシステムを融合したSmart Metering as a Service (SMaaS) 事業を推進してお客様や社会への新たな価値の提供を目指します。また、住宅用全館空調システム分野では、新設建物から既設建物や小規模建物まで、対象建物の拡大により収益性を向上し、長期的にはサービスエンジニアリング力にIoT技術をプラスして現場対応力を強化し、お客様の健康で快適な暮らしに省エネをプラスした全館空調分野での快適住空間プロバイダーへ事業の拡大を目指します。
※4 コーポレート PPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約):
企業が再エネ電力を発電事業者から長期にわたって固定価格で購入する契約。オフサイト PPA とは、遠隔地の発電所から一般の送配電網を介して電力を調達する形態で、フィジカル PPA とは、発電事業者が小売電気事業者を通じて電力と環境価値をセットで需要家に供給する形態。
※5 再生可能エネルギー:太陽光、風力、温度差等の自然エネルギーを利用して電力や熱を生成するエネルギー。
※6 デマンドレスポンス:需要家側エネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させること。
③ 海外事業
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BA事業では、アジア地域の建物市場を中心に、都市化の進展が継続し、オフィスのグレードアップが進むことが見込まれています。そのため、国内事業モデルでの強みである省エネルギーのアプリケーション技術、エンジニアリング、サービス力を活用した製品・サービスの提供を推進していきます。また、成長が期待されるデータセンター市場においては、シンガポールで開催された「第10回Data Centre World Asia(DCWA)2024」に、シルバースポンサーとして出展し、お客様とのネットワーク拡大、更なるコラボレーションの模索、東南アジア地域全体での市場プレゼンスの向上を図りました。 |
▲Data Centre World Asia 2024 シルバースポンサー |
AA事業では、中長期的な視点で循環的な景気変動はあるものの、グローバルでの経済成長の継続、更なる生産性改善の要求、設備老朽化への対応、環境規制の拡大、新技術の活用に対する期待等を背景とした生産設備の自動化投資は引き続き拡大が見込まれています。そのような状況下において、脱炭素社会へ向けた産業構造の転換を見据え、新市場向けの拡張製品開発や異常予兆検知・AI設備診断等、新しいオートメーション領域の開拓を進めていきます。加えて、戦略地域の営業体制強化や営業活動の質の改善を継続することで、顧客のカバレッジが拡大しており、事業基盤整備も着実に進捗しています。さらには、価格転嫁を含む収益力強化施策も継続し、高い利益率を引き続き確保してまいります。
LA事業では、ライフサイエンスエンジニアリング領域においてスペインのアズビルテルスターを中心として事業を展開していましたが、業界再編のなかで、資本効率向上に基づく事業ポートフォリオ再構築の観点から検討を重ね、成長分野への経営資源の効率的な投下のため、2024年10月にはアズビルテルスターの出資持分全てを欧州の有力パッケージソリューション企業であるSyntegon社の100%子会社に譲渡しました。
以上のような国内外の3つの事業軸への取組みに加えて、技術探索及び新技術の獲得、事業基盤の強化と事業領域の拡大を目指して新たに米国ベンチャーファンド2社との出資契約を締結いたしました。具体的には、気候変動やAIに関してDNX Ventures社と、BA事業領域においてMetaProp社と、それぞれ出資契約を結び、これらのファンドに出資する企業(Limited Partner)との連携や協業も視野に入れた取組みを加速していきます。
④ 生産・開発
azbilグループの事業拡大に向けて、グローバル生産体制を構築し、商品力強化に向けた開発投資の強化を進めてまいりました。国内では生産機能の中核拠点である湘南工場と藤沢テクノセンターにおける技術開発機能の連携を強化し、グループ内のマザー工場としての機能整備を進めています。また、藤沢テクノセンターでは、新実験棟にてクラウドやAIを活用した先進的なシステム・ソリューションやMEMS※7技術による高機能・高性能デバイスの開発プロジェクトが進展しました。
海外では、グローバルな事業拡大に合わせた生産体制の整備を進めています。
タイの生産拠点では、新たに工業市場向けの電磁流量計といった高度な生産技術を要する製品を対象とした生産機種拡充のため、新工場棟を2024年4月に竣工しました。さらに、同年8月にはベトナムのフンイエン省に生産子会社のアズビルベトナムプロダクション有限会社の設立を決定し、2025年3月に登記が完了しました。生産能力の増強を図るだけでなく、競争力向上のためのコスト削減や持続的な製品供給を実現するための適切な生産体制の構築と、近年懸念される地政学的リスクに対応するための強化策としても位置付けております。
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商品力強化の推進を担う開発系人材の確保にも継続して注力しており、グローバル開発体制における外部パートナーとの連携促進のために、適応力と受容力を備えた、多様な人材の獲得や育成を進めていきます。具体的にはこれまでにも卒業生の採用やインターンシップ生の受け入れ実績のあるマレーシア工科大学(UTM※8)とマレーシア日本国際工科院(MJIIT※8)と産学連携を含めた包括的な協働関係強化について覚書を締結し、脱炭素化技術を始め、計測・制御技術に基づく共同研究や開発等を進めてまいります。 |
▲当社とUTMのMoU締結式 |
なお、地政学的リスクによるグローバルサプライチェーンの課題、エネルギーや部品価格の高騰、インフレ等は今後も一定の範囲で継続すると想定しております。そのため、生産オペレーションの改善を継続しつつ、緊急事態発生時においてもお客様への影響を最小限にするBCPの取組み範囲の拡大を進めており、その一環として、2025年4月に新たな物流の拠点となる「京都配送センター」を設立しました。
※7 MEMS(Micro Electro Mechanical Systems):センサ、アクチュエータ、電子回路を一つの基板の上に微細加工技術によって集積した機器。
※8 マレーシア工科大学(UTM)は、工学科学技術分野で革新と起業を推進する研究大学で、マレーシアの首都クアラルンプール及び経済活動が盛んな地域であるイスカンダル・マレーシアの南部都市ジョホールバルに所在する。マレーシア日本国際工科院(MJIIT)は、UTMの学部の1つで、東方政策の実施を機に、2010年に設立された。
⑤ 経営管理と人的資本
経営管理面では、リスクマネジメントにおいて、今後起こりうるリスク事象の影響を最小化すべく、毎年、外部環境の変化を加味して、網羅的にリスクを抽出したうえで、リスク発生時の影響金額や発生頻度の定量的な評価基準に基づき重要リスクを選定するとともに、現場部門と経営層が一体となった取組みにより、不確実性への対策を強化しております。また、国際財務報告基準(IFRS)の任意適用に向けた準備と会計レベルの向上に加え、それに伴う内部統制の強化も進めています。
また、azbilグループでは人材を持続的成長のための「資本」として捉えており、「社員は重要な財産であり、新たな企業文化と企業価値の創造の源泉である」という普遍の考え方をベースに、持続可能な社会の実現に「直列」に貢献できるよう、人的資本を強化しております。今後の技術発展や社会情勢の新たな展開等に合わせた事業構造の変化に対応し、長期目標、中期経営計画の達成に向けて必要となるリソースとしての人材要件を整理した上で、リファラル採用やアルムナイ採用等の様々な手段を活用し、新卒採用・キャリア採用ともに入社時期を問わず、優秀な人材の確保を図っております。加えて、社員が長期にわたって活躍できるよう人事制度を整えるとともに、事業戦略に合わせて育成を行い、適材適所の配置を進めてまいります。
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なお、azbilグループとして、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からも積極的な活動・取組みを進めております。E(環境)では、「経団連生物多様性宣言・行動指針」への賛同を表明し、持続可能な社会の実現へ向け、気候変動対策、資源循環対策、生物多様性保全対策等、幅広い社会的な環境活動と、当社グループの事業活動の融合を進めております。気候変動対策では、国連グローバル・コンパクト(UNGC)主催の「Annual Local Network Forum 2024 Global Compact Network Japan High Level Meeting」及び「Private Sector Forum 2024」に参加し、気候変動対策の加速に向けた提言を実施するとともに、SDGs推進加速における各国企業による協業の重要性を発信しました。生物多様性保全対策では、ネイチャーポジティブ※9の視点から事業を通じて生物多様性に貢献し、サプライチェーンや国内外の関係組織と連携して自然保護の取組みを強化しています。さらに、2024年8月にはTNFD Adopter※10、11に登録し、その提言に沿った活動を推進しています。 |
取締役 代表執行役社長 山本清博(写真左端) ▲ UNGC主催のAnnual Local Network Forum 2024 Global Compact Network Japan High Level Meetingの様子 |
S(社会)では、2024年8月より、当社の事業がステークホルダーに与える人権に対する負の影響に関する人権デュー・ディリジェンスを開始し、2025年3月に「優先して対応すべき人権課題」とその対応の方向性を決定しました。企業活動のグローバル化・多様化により、拡大かつ複雑化している人権リスクに対して、その防止・低減を図ることで、企業の社会的責任を果たしてまいります。また、「azbilグループ健幸宣言※12」を制定し、総労働時間の削減やハラスメント防止といった職場環境改善等の「働き方改革」、一人ひとりの個性を尊重し、その特徴を活かすことができるよう「ダイバーシティ推進」に関わる各種施策を展開しています。
G(ガバナンス)では、監督機能と執行機能の明確な分離、さらに意思決定の迅速さと透明性を高める目的で「指名委員会等設置会社」へ移行して3年が経過し、役員報酬制度の一部改定等の強化に取り組みました。さらに2025年度から適用する役員報酬においては、業績連動比率の更なる拡充(賞与・株式報酬の構成割合の拡大)及びKPIの見直しに加え、重大な非違行為等が発生した場合に返還請求ができるよう、クローバックの対象範囲の拡大を決定しました。また、取締役会の実効性を高めるためにアズビル独自の「取締役執行役連絡会」を設置するなどの工夫により、経営戦略や事業ポートフォリオに関する議論、法定委員会活動等につき従来以上に活発な議論を行っています。
2025年度においても、持続可能な社会の実現に「直列」に繋がり、企業価値の向上を目指してESGにおける各課題を整理し、今後更なる改善への取組みを継続してまいります。
※9 ネイチャーポジティブ:自然生態系の損失を食い止め、回復させていくことを意味する。
※10 TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース):企業・組織が自身の事業活動による自然資本及び生物多様性への影響を評価し、情報開示する枠組みの構築を目指す国際イニシアチブ。
※11 TNFD Adopter:2024年度(又はそれ以前)又は2025年度までに、TNFDの提言に沿った情報開示を行う意思を表明した企業・組織。
※12 azbilグループ健幸宣言(健康で幸せを目指すため「康」の字を「幸」に替えています):
健康で幸せ、活き活きとした「働きの場と人」を創る。azbilグループは、社員一人ひとりの健康が企業活動の重要な基盤であるととらえ 、会社で働くすべての人々が安心・安全で、快適に、活き活きと、自分らしく健やかに働き、それぞれが持つ多様な能力を発揮し、公私ともに充実した人生を送ることが、生産性や業績の向上、イノベーション、社会への貢献につながると考えています。健幸な「働きの場と人」を創るために、会社とそこで働く社員が協働し、快適で働きやすい職場環境づくり、心身の健康づくりに積極的に取り組むことを宣言します。
azbilグループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループの基幹事業であるオートメーション事業は、建物、工場、ライフラインといった領域の“空間の質”を向上させながら、資源・エネルギー使用量を適正に抑制することが可能であり、我々の事業を拡大することが地球環境負荷の低減に繋がります。持続可能な社会の実現のためには、資源・エネルギー使用量を適正に抑制する仕組みを構築する必要があり、昨今社会からその役割を一層強く期待されています。これは当社グループが事業を通じて、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献を実現することが可能であると同時に、持続可能な社会の実現への貢献が当社グループの持続的な成長に繋がることを意味します。
創業時の精神を引き継ぎ、以下のサステナビリティに関する方針を公表し、地球環境に貢献し、持続可能な社会へ「直列」に貢献するよう引き続き取組みを行ってまいります。
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azbilグループのサステナビリティの方針 創業時の精神である「人間の苦役からの解放」の考え方を、人間の幸福のために社会に貢献する価値観として受け継ぎ、グループ理念である「人を中心としたオートメーション」の実践を通じて、あらゆるステークホルダーと信頼関係を構築することにより継続的な企業価値の向上を図り「人々の安心、快適、達成感」を実現するとともに、地球環境に貢献し、持続可能な社会へ「直列」に貢献する |
<マテリアリティの特定>
気候変動・SDGsへの対応要請、少子高齢化や働き方改革等による環境・社会・事業構造の変化により、解決すべき様々な課題が新たに出現、顕在化しつつあります。一方でこれらの課題解決に対して、自動化・省力化・省エネ・省資源といったオートメーションが持つ多様な機能が果たす役割は大きく、オートメーションの価値及び期待を一層増大させています。この様な変化の中、2022年8月には、当社グループの持続可能な成長に向け、グループ理念を基に「機会」と「リスク」の両面から、ダブルマテリアリティ(環境・社会が企業に与える財務的な影響と、企業活動が環境・社会に与える影響という2つの軸で重要性を評価する考え方)を取り入れ、長期にわたり取り組む重点課題として5分野10項目のマテリアリティを特定しました。2023年度は次に記載するマテリアリティ特定のプロセスを外部有識者の助言も得て再度実施し、その妥当性を再確認しました。
当社グループのマテリアリティ特定プロセスは大きく3つのステップに分けられます。
STEP1:各種ガイドライン(SDGs、GRI スタンダード、SASBスタンダード等)をベースにして社会課題を網羅的に抽出し、マテリアリティ候補としました。
STEP2:マテリアリティ候補に対して、各種ステークホルダー・エンゲージメントを通じて得られた複数の重要課題や、外部有識者からの助言も踏まえ、環境・社会から「azbilグループが受ける財務的な影響(azbilグループにとっての重要性)」のみで重要性を検討するのではなく、「azbilグループが事業活動を通じて環境・社会に与える影響(ステークホルダーにとっての重要性)」というダブルマテリアリティの視点で“機会” と“リスク”を識別し、重要度を評価しました。
「azbilグループ」又は「ステークホルダー」にとって重要性がより高い項目から、5分野10項目のマテリアリティを特定しました。なお、10項目に入らなかったもののうち、比較的高い項目として、自然資本(生物多様性・水資源等)が挙げられます。今後も、環境・社会・事業構造の変化やそれらの財務影響等も勘案し、更なる検証を進めてまいります。自然資本に対する影響・依存や事業上のリスク・機会を適切に把握するため自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)提言に沿ったネイチャーポジティブの取組みを推進していきます。当社は、2024年月 TNFD Adoptersとして登録し、2025年度の取組み成果について開示提言に沿って報告することを宣言しました。
(注)当社グループの取組みについては、ホームページにて掲載を行っている「
各マテリアリティ及び当社グループの取組みによって「達成を目指す姿」は以下のとおりです。
STEP3:外部有識者との議論・確認を経た後、経営会議及び取締役会を通じて妥当性を確認し、2023年度に当社グループのマテリアリティを再確認しました。
(1)サステナビリティ経営の取組み
<ガバナンス>
azbilグループでは、サステナビリティ全般に関わる担当役員を据え、それぞれに設けた専門組織を事務局とし、「azbilグループCSR推進会議」及び「SDGs推進会議」を開催、これらの会議で確認された進捗状況・課題を取締役会・経営会議に報告しています。以下の図に示すとおり、グループ全体でサステナビリティの取組みを検討・推進する体制を整えております。
<戦略>
2030年度に向けた長期目標を掲げる当社グループは、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献とサステナビリティの観点から、2022年8月には、社会の環境、ニーズが大きく変化するなか、グループ理念を基に「機会」と「リスク」の両面から、ダブルマテリアリティの考え方も取り入れ、長期にわたり取り組む重点課題として10のマテリアリティ項目を特定し、2023年度は前述のプロセスにて再確認しました。
これらのマテリアリティに基づき、事業や企業活動に関する7つの項目については、SDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)の領域において目標を「azbilグループSDGs目標」として具体的に定めるとともに、企業が社会に存立するうえで果たさなければならない基本的責務である3つの項目については、CSR活動において具体的な目標を定めております。それらの目標の達成に向けて様々な取組みを行うことで、「サステナビリティ経営」を推進しております。
<リスク管理>
当社グループはサステナビリティ経営を達成するために、社会・環境・事業への影響を“機会”と“リスク”の観点から評価し、マテリアリティを特定しました。各マテリアリティにかかる「達成を目指す姿」を実現するため、識別されたリスクへの対応と管理のみならず、長期的な企業価値向上の観点から機会を含む管理体制を整備・運用しております。
そのリスク管理においては、毎四半期、部門の責任者等をメンバーとして開催される「azbilグループCSR推進会議」において、リスクマネジメントの推進状況について確認・検討を行っております。また、半期に一度、リスク管理担当役員を委員長、経営層をメンバーとして開催する「azbilグループ総合リスク委員会」にて、一連のリスクマネジメント活動に対して経営層による状況確認と方針決定を行います。具体的には「
機会管理においては、原則毎月経営層が実施する全社事業検討会において、中期経営計画に基づきマテリアリティを含む幅広いテーマについての状況や課題を共有し、着実な実行に向けて議論等を行うことで、戦略的な事業展開に繋げております。
また、引き続きステークホルダーの皆様との対話の機会を随時設け、その意見を企業活動にフィードバックすることで、活動の実効性を高めております。
<指標及び目標>
当社グループでは、持続的な向上や改善を目指し続ける事業や企業活動に関する7つのマテリアリティ項目について、次表のようにSDGsの領域において、指標及び目標を「azbilグループSDGs目標」として具体的に定めております。事業として取り組む領域を「環境・エネルギー」、「新オートメーション」の2つ、また企業活動全体で取り組む領域では「サプライチェーン、社会的責任」、「健幸経営、学習する企業体」の2つに区分し、これらを当社グループのサステナビリティの方針の重要な道標と位置付け、様々な活動を進めております。
他方、企業が社会に存立するうえで果たさなければならない基本的責務である3つのマテリアリティのうち、商品安全・品質、コンプライアンスについては、前掲の「azbilグループCSR推進会議」において、リスク管理に加え各部門で設定したCSR活動計画(コンプライアンスの遵守・徹底、法令対応強化、防災・BCP、情報漏洩防止、適正会計、健康な職場づくり、労働安全衛生、商品事故による顧客安全対応、人権尊重の取組み)の策定・進捗確認を行うことで、その維持・向上に取り組んでおります。また、コーポレート・ガバナンスについては、2022年6月に、指名委員会等設置会社へ移行し、社外取締役を過半数とする取締役会及び3つの法定委員会の体制のもと、適切な監督と実効性の向上を図っております。
「マテリアリティ」と「azbilグループSDGs目標」
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マテリアリティ |
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azbilグループSDGs目標 |
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基本目標 |
ターゲット |
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環境 |
気候変動 |
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Ⅰ |
協創による地球環境とエネルギー課題の解決への貢献 |
環境・エネルギー |
エネルギー課題の解決(脱炭素社会に向けて) ◆ お客様の現場におけるCO2 削減効果340万トン/年※1 ◆ 事業活動に伴うGHG※2排出量を55%削減※3 ◆ サプライチェーン全体のGHG 排出量を33%削減※4※5 環境課題への貢献(環境統合型経営※6の実現) ◆ 地球環境に配慮した商品・サービスの創出・提供 - 全ての新製品をazbilグループ独自のサステナブルな設計※7とする - azbilグループの提供するサステナブルなサービス※8を支えるプロフェッショナルスキルを持つ人財※9を、2021年度比で3倍の延べ1,800名※10にする
◆ 天然資源※11の有効活用と廃棄物発生量の削減 - 全ての新製品を100%リサイクル可能な設計※12とする |
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資源循環 |
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イノベーション |
イノベーション |
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Ⅱ |
新たなオートメーションによる持続可能な生産現場・職場環境、安心・快適な社会の実現 |
新オートメーション |
お客様の持続可能な生産現場・職場環境、さらなる安心・快適・達成感の実現に向け、生産空間・居住空間(ビル建物)・生活空間における「計測の高度化」、「データ化」、「自律化」などにより、社会が求める時々の課題を解決、付加価値を創出 ◆ 2030年に延べ8,000事業所※13で事業環境変化に強い状態を実現 ◆ 2030年に延べ600万人※14にストレスフリー、多様な働き方につながる環境を提供 |
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社会 |
サプライチェーン |
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Ⅲ |
サプライチェーンにおける社会的責任の遂行と地域・社会への貢献 |
サプライチェーン、 社会的責任 |
お客様、お取引先様と共に社会的責任を果たす(価値共有を目指したアズビルCSR 活動の拡充) ◆ お取引先様と共に、SDGsを共通目的として連携し、サプライチェーンにおけるCSRの価値共有を実現。 地域活性への貢献(事業拠点を軸とした社会貢献) ◆ 地域に根差した社会貢献活動をすべての事業所※15において実施し、社員一人ひとりが積極的に参加※16 |
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地域社会への貢献 |
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人材 |
人権・安全・健康 |
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Ⅳ |
健幸経営と永続的な学習による社会課題解決の基盤強化 |
健幸経営、 学習する企業体 |
健幸経営(働きがい、健康、ダイバーシティ&インクルージョン)の実現(柔軟な働き方と総労働時間削減、社員の心身の健康の維持・増進、多様な人材が能力発揮できる場づくり) ◆ azbilグループで働くことに満足している社員65%以上※17 ◆女性管理職比率10%以上※18 ◆2027年度までに国内azbilグループの女性管理職比率を約2倍(2017年度比)※19 学習する企業体の発展・強化(グローバルに活躍する人材の継続的育成とステークホルダーと共に学ぶ機会の拡大) ◆ 一年間で仕事を通じて成長を実感する社員65%以上※17 |
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学習と人材育成 |
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ガバナンス |
商品安全・品質 |
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(企業が社会に存立するうえで果たさなければならない基本的責務) * 商品安全・品質、コンプライアンスについては、部門毎に業務に直結した指標及び目標をCSR活動計画(コンプライアンスの遵守・徹底、法令対応強化、防災・BCP、情報漏洩防止、適正会計、健康な職場づくり、労働安全衛生、商品事故による顧客安全対応、人権尊重の取組み)として策定のうえ、「azbilグループCSR推進会議」において進捗確認を行うことで、その維持・向上に取り組んでいる。 * コーポレート・ガバナンスについては、2022年6月、指名委員会等設置会社へ移行し、社外取締役を過半数とする取締役会及び3つの法定委員会の体制のもと、適切な監督と実効性を確保 |
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コーポレート・ガバナンス |
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コンプライアンス |
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※1 2030年度の電力排出係数は、2019年当時のエネルギー基本計画を参考に当社独自の推計値を採用しています。
※2 温室効果ガス(CO2 など) ※3 2017年基準 ※4 2017年基準
※5 2024年10月、新たな目標として、2030年33% 削減(2017年比)がSBTiに認定されました。
※6 脱炭素化・資源循環・生物多様性保全等の幅広い環境活動が統合的に事業に取り込まれた経営
※7 地球規模の環境課題(脱炭素化、資源循環、生物多様性保全)解決に貢献する製品の創出・提供を目指した設計
※8 オートメーション技術による生産性改善や安定操業に寄与することに加え、脱炭素化、資源循環、生物多様性保全の3つの環境重点分野において、顧客や社会の環境課題を解決し、持続可能な社会の実現に貢献できるフィールドエンジニアリングサービス
※9 3つの環境重点分野(脱炭素化、資源循環、環境汚染防止)での課題解決実現に向けて重要な、以下の専門スキル保有者(社内資格制度)を対象とする
● ビル建物向けのリモートメンテナンス、エネルギーマネジメントサービス、クラウドサービスなどのネットワークサービスのライセンス取得者
● プラント・工場向けの高度制御、省エネルギーソリューション技術、バルブメンテナンスのプロフェッショナル認定者
※10 社員一人ひとりがフィールドエンジニアリングサービスの技術革新に合わせ、複数のプロフェッショナルスキルを取得した場合も含んだ資格保有者の総数
※11 天然に存在して、人間の生活や生産活動に利用しうる物資・エネルギーの総称
※12 BAT(Best Available Technology:経済的及び技術的に実行可能な最も効果的な技術)の範囲
※13 2022年4月時点で530事業所で稼働。2030年には15倍の8,000事業所を目指す
※14 2022年4月時点で60万人に提供。2030年には10倍の600万人への提供を目指す
※15 国内・海外を含む全事業所 ※16 azbilグループ社員数規模の参加を目指す
※17 国内のazbilグループで毎年行っている社員満足度調査で高いレベルと考えられる65%、すなわち、全社員の2/3の水準を目指す
※18 女性管理職比率10%以上は当社の目標
※19 2017年度比としているのは、女性活躍も施策として織り込んだ人事制度が2018年度から改定されているため
(2)重要なサステナビリティ項目
グループ理念である「人を中心としたオートメーション」の実践を通じて、地球環境に貢献し、持続可能な社会へ「直列」に貢献することを目指すazbilグループにおいて、前述のサステナビリティ経営の取組みにおけるガバナンス及びリスク管理を通して識別された、重要なサステナビリティ項目は、以下の「気候変動」であり、またその企業価値の創造の源泉となる「人材」を資本として捉える「人的資本」です。
「気候変動」に対しては、製品・サービス・ソリューションの提供を通じて、お客様の現場におけるCO2削減に取り組むことで、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献と当社グループの持続的な成長を実現してまいります。また、「気候変動」に対応した3つの成長事業領域をはじめとし、当社グループの価値創造の原動力となる「人的資本」の投資についても強化してまいります。具体的には、事業の成長及びそれを支える全社機能に対して人員計画に基づく着実な採用、適材適所の配置、及び人材育成を積極的に実施することで、サステナビリティ経営の実現を長期的に支えてまいります。
①気候変動への対応(TCFD提言への取組み)
azbilグループは2019年11月、気候変動が事業活動に与える影響を正しく把握し、適切に開示するという気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言内容に賛同いたしました。賛同表明後、気温上昇のシナリオに基づいた各事業の機会とリスクの双方を検討した結果、CO2削減に貢献する事業活動の機会がリスクを大きく上回ると認識しております。今後も、TCFDの提言に沿った形で、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標及び目標について、継続的に開示を進めてまいります。
<ガバナンス>
気候変動は、グループ理念に基づいて経営を行ううえでの最重要課題の一つと認識し、担当役員を統括責任者としたグループ横断的なタスクフォースを組成、事業影響と財務的影響開示の視点から経営会議で審議し、その内容は取締役会で適切に監督しております。
<戦略>
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、国際エネルギー機関(IEA)や各種機関からの情報を基に、1.5℃ /2℃シナリオ(脱炭素社会に向けた規制強化や技術革新が促され、気温上昇が持続可能な範囲で収まるシナリオ)と4℃シナリオ(温室効果ガス排出を削減する有効な対策が打ち出されず、気温上昇が継続し、異常気象や自然災害が増大するシナリオ)の2つのシナリオで、2030年までの長期的な当社グループの事業上の機会やリスクを特定しています。なお、1.5℃シナリオについては、2℃シナリオと機会とリスクの傾向は同じで影響の度合いが大きくなると認識しています。
気温上昇のシナリオに基づいた各事業の機会とリスクの双方を検討した結果、CO2削減に貢献する事業活動の機会がリスクを大きく上回ると認識しております。
リスクを抑制し、機会を拡大するため、当社グループでは、「自らの事業活動における環境負荷低減」を進めるとともに、それらの取組みを通じて得られる技術・ノウハウを活かし、計測と制御の技術を駆使してお客様の環境に関わる課題解決を支援することで「本業を通じた地球環境への貢献」を推進し、持続可能な社会の実現へと繋げてまいります。
(注)当社グループの財務計画等に及ぼす影響と対策の詳細については、ホームページにて掲載を行っている「
また、2024年8月に TNFD Adoptersとして登録したことを踏まえて、気候も含む、自然資本(生物多様性・水資源等)に対する影響・依存や事業上のリスク・機会を適切に把握するためTNFD 提言に沿ったネイチャーポジティブの取組みを推進しております。2024年度の評価では、事業の上流における優先拠点の生産、下流における優先地域での廃棄物の処分、及び直接操業拠点の生産が自然資本に与える影響と自然資本への依存について分析、さらに、STEEP(社会、技術、経済、環境、政治)の枠組みを用いた外部環境分析も実施しました。その結果を踏まえ、当社グループの各事業の機会とリスクの検討を開始しています。今後も、計測・制御技術を活用し、ネイチャーポジティブに向けた事業の創出に取り組むとともに、お取引先様を含めたサプライチェーンでの取組みを推進していきます。
(注)詳細については、ホームページにて掲載を行っている「
<リスク管理>
気候変動に関する主なリスクは、「
<指標及び目標>
持続可能な社会へ「直列」に繋がる事業活動により、当社グループのお客様、及び当社グループとサプライチェーン全体を視野に入れた指標及び目標をazbilグループSDGs目標として掲げて、気候変動への取組みを推進しております。このazbilグループSDGs目標の達成に向けて、経営会議で年度ごとの実行目標設定と進捗確認を行い、取締役会で報告を行っております。また、状況変化や課題に対しては経営会議等で対策を適宜検討・立案し、実効性を高めております。
・お客様の現場におけるCO2削減効果を2030年度に340万トン※1まで拡大することを目標としております。
・当社グループは、2020年から、自らの事業活動に伴うGHG※2の排出量(スコープ1+2※3)を2050年に実質ゼロにする「2050年 温室効果ガス排出削減長期ビジョン」を掲げ、カーボンニュートラルの実現に向けて取り組んできました。2024年、新たな長期ビジョンとして、サプライチェーン全体(スコープ1+2+3)で90%以上削減(2017年度基準)し、残余排出量を中和することでネットゼロ達成を目指す目標を設定しました。それに伴い、2030年度のスコープ1+2以外のサプライチェーン全体の間接的なGHG排出量(スコープ3)の削減目標を従来の20%削減から、33%削減(2017年度基準)に引き上げました。この新たな長期ビジョンが、SBTi※4の基準を満たし、2024年10月に「SBTネットゼロ認定」を取得しました。
《2050年 ネットゼロ目標》(Science Based Targets(SBT)※5 認定済)
サプライチェーン全体(スコープ1+2+3)のGHG排出量のネットゼロを達成[2024年10月 認定]
※サプライチェーン全体で2017年度比90%以上削減し、残余排出量は中和する
《2030年 中期目標》(Science Based Targets(SBT) 認定済)
事業活動に伴うGHG排出量(スコープ1+2) 55%削減(2017年基準)[2021年8月 再認定]
サプライチェーン全体のGHG排出量(スコープ3) 33%削減(2017年基準)[2024年10月 再認定]
※1 CO2削減効果340万トンは、東京都の約1.7倍の広さの森林(36~40年生の杉人工林を想定)による年間CO2吸収量に相当
※2 温室効果ガス(GHG=Greenhouse Gas):大気圏にあって、地表から放射された赤外線の一部を吸収することにより、温室効果をもたらす気体の総称
※3 スコープ1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
スコープ2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
スコープ3:事業者の活動に関連する他社の排出(スコープ1、スコープ2以外の間接排出)
※4 SBTイニシアチブ(SBTi): 上記の温室効果ガスの排出削減目標(SBT)を達成するために、2015年にCDP(気候変動対策に関する情報開示を推進する機関投資家の連合体)、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)、UNGC((国連グローバル・コンパクト)が共同で設立した団体
※5 Science Based Targets(SBT): 産業革命前と比較して気温上昇を2℃より十分に下回る水準に抑え、また1.5℃未満に抑 えることを目指す水準と整合した、科学的根拠に基づいて設定した温室効果ガスの排出削減目標
・2023年度のお客様の現場におけるCO2削減効果は年間284万トンCO2※6となりました。また、2023年度の事業活動に伴うCO2排出量(スコープ1+2)は1.6万トン※7※9で2017年度比40%削減、サプライチェーン全体でのCO2排出量(スコープ3)は88.6万トン※8※9で2017年度比20%削減となりました。なお、2024年度のそれぞれの数値は、確定後、「
※6 CO2削減効果の推計手法について、第三者レビューを実施しています
※7 集計範囲:アズビル株式会社、国内連結子会社及び海外主要生産拠点(グループ全体のGHG排出量95%以上に該当)
※8 集計範囲:アズビル株式会社及び連結子会社
※9 CO2排出量(スコープ1+2、3)について、第三者検証を受けています
・当社グループでは、お客様や社会におけるエネルギー課題の解決に貢献するとともに、脱炭素化に向けた移行計画を策定し取り組んでいます。
《脱炭素移行計画》
②人的資本
azbilグループでは人材を「資本」として捉えており、「社員は重要な財産であり、新たな企業文化と企業価値の創造の源泉である」という普遍の考え方をベースに、当社グループが常に世の中に価値ある存在として継続的な成長を図り、持続可能な社会の実現に「直列」に貢献できるよう、人的資本を強化しております。今後の技術発展や社会情勢の新たな展開等に誘発される事業構造の変化に対応し、長期目標、中期経営計画の達成に向けて、様々なバックグラウンドに基づく多様な価値観を有する人材を採用し、社員が長期にわたって活躍できるよう人事制度を整えるとともに、「学習する企業体」として変化に柔軟に対応する人材を育成し、適材適所の配置を進めています。9,000人規模の当社グループ社員が、これら人事戦略、人事施策のもとで能力を発揮し、イノベーションを起こし、生産性を一層高めることで、持続的な企業価値向上へと繋げています。
<ガバナンス>
当社グループの人事戦略及び人事施策は経営会議にて議論を行い、その実現に向け、人件費や人的資本強化に関する経費等の予算を含む人的資本への投資計画を取締役会で審議・承認しております。人事戦略及び人事施策並びに人的資本の投資計画に基づき実施される、人的資本強化の主要テーマである健幸経営の取組みや多様性の確保、及び人材育成に関わる進捗状況は毎年経営会議にて確認するとともに、その方向性を取締役会等の場でも活発に議論を行うことで、人的資本価値向上に関わる実行状況を適切に監督しております。
(人材育成の推進体制)
※アズビル・アカデミー:「学習する企業体」への変革を目指し2012年に設立された人材育成の専門機関
<戦略>
当社グループは、働き方改革とダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進を両輪とする、多様な社員が健康で活き活きと能力を発揮するための総合的な取組みを「健幸経営」と定義し、社員が働きやすい環境を整備しています。また、人材育成の専門機関であるアズビル・アカデミーを中心に「人材から人財(全ての社員が“財”をもつ人財)」へと育成するなど、長期目標・中期経営計画達成に向けて、azbilグループらしい事業モデルを通じた事業伸長のための人材投資を進めることで、人的資本を強化しております。
a.azbilグループらしい事業モデル強化への人的資本投資
当社グループは、長年にわたって構築した幅広い顧客基盤(工場、商業ビル、ライフライン)との強い関係に基づく「基盤事業」及び、半導体等の技術革新やカーボンニュートラルのような社会課題対応を新たな事業機会と捉えた「成長事業」で事業を拡大してまいります。成長事業では、地域の拡大(海外市場)、競争優位性の拡大(商品力強化)に注力します。成長事業で顧客基盤を拡大し、基盤事業で持続性、収益性を向上する、成長事業⇒基盤事業⇒成長事業というサイクルを回すことにより、「進化」と「共創」を通じて持続的な事業の拡大を目指します。
これらazbilグループらしい事業モデルを推進・強化するために、さらに必要なリソースとしての人材要件を整理し、年間50名のキャリア採用枠を設け、リファラル採用やアルムナイ採用等の採用手段も含めて活動することで即戦力の強化を図るほか、事業戦略に資する人材を育成していくなど、人的資本投資を進めています。
最先端の新商品・サービスを展開する「成長事業」としては、BA事業における再エネ活用等のGXソリューション等、AA事業のFA半導体製造装置市場等向けMEMSセンサ等、LA事業ではスマートメータリングサービス等があります。それぞれ新たな課題解決のため国内外に通じた先端技術開発が必要であり、タレントマネジメントシステムを活用した技術者の育成と最適配置、専門人材の採用、大学や研究機関との共同研究・開発、及び共同研究先への派遣等による育成強化を図るほか、カーボンニュートラルを実現するエンジニアの育成に向けて、エンジニアリング力と再生可能エネルギーに関する知見を一層高めるため、提携企業との人材の相互交流を通じた育成を進めています。
長年にわたって蓄積した「基盤事業」では、DX活用等により、持続的に収益性向上が可能であり、ネットワークを活用した高付加価値サービスを提供していくにあたってDXによるエンジニアリング・サービス力の強化、グローバル人材の強化を行っています。資格取得奨励制度を通じて公的に技能・知識の認定を受けたエンジニア、社内認定制度をクリアした技術プロフェッショナルやマイスターがエンジニアリング力強化をリードしてまいります。また、生産からエンジニアリング、サービスメンテナンス、それを支えるスタッフ部門など広範にわたって、LMS(Learning Management System)によるDX教育等を通じたリスキリングも進めています。
b.人材育成に関する考え方と取組み
当社グループの持続可能な社会へ「直列」に繋がる事業活動を継続していくために、人材育成の専門機関であるアズビル・アカデミーを中心に「人材育成の基本理念」に沿って、「①仕事のプロとしてチームワークで協働」、「②一流を目指す強い意欲と挑戦」、「③高い志と倫理観、国際感覚」を求める人材像に掲げ、「学習する企業体」としての取組みを進めています。
《人材育成の基本理念》
1.azbilグループ成長の源泉は人材であり、人材の成長なくしてazbilグループの成長はありえない
2.そのため、社員力と組織力の最大化を目指して、
個人:自己の成長、能力開発に最大の責任を持つ
上司:職場における部下の能力開発に責任を持つ
会社:公平な機会提供を通じ個人と組織を支援する
DX人材育成のために、2025年初めに社員(5,500名規模)向けのDXアセスメント(変革マインドとスキルを対象とするアセスメント)を実施しました。このアセスメント結果は受検後すぐに本人に開示されることから、不足するスキルを把握し学ぶべき対象を明確にすることができます。また、その結果を上司が把握することで部下への適切な研修受講指示やプロジェクトへのアサインが可能になるほか、研修プログラムの開発やマインド醸成に関する企画検討にも活用します。社内には全社共通の学習環境としてLMSが導入されているほか、外部e-ラーニングも導入されているため、これらを活用し自ら学ぶことが可能です。2025年度からスタートした中期経営計画でもDX人材の育成を強力に進めていきます。
グローバル人材育成のために、国内外グループ会社問わず、対面やオンラインでの学びの場の提供及びインフラの整備・拡大を進めています。そのなかには、国内と海外の現地法人の次世代リーダーが一堂に会する英語ベースでの研修の年2回開催や海外の大学からインターンシップを受け入れることでの社員の異文化コミュニケーションの促進、国内と海外現地法人との短期交換留学等があります。これらを通じてグローバル人材の輩出を継続・加速しています。
c.社内環境整備に関する取組み
「azbilグループ健幸宣言」において、会社とそこで働く社員が協働し、快適で働きやすい職場環境づくり、心身の健康づくりに積極的に取り組むことを宣言しており、多様な人材が各々の社会的、身体的特徴、思想や価値観の違いを認め合い、活躍する機会を尊重しています。
さらに、当社グループでは、多様な背景を持つ社員一人ひとりが互いに個性を尊重し、能力を発揮することが成長の原動力と考え、2017年度からは「アズビル・ダイバーシティ・ネットワーク」を発足させ、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの取組みを積極的に推進しています。このような取組みを通じて、性別や国籍、新卒採用・キャリア採用の違いなどを問わず、多様なバックグラウンドを持った人材が活躍しています。
《azbilグループ健幸宣言》
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azbilグループは、社員ひとりひとりの健康が企業活動の重要な基盤であるととらえ、会社で働くすべての人々が安心・安全で、快適に、活き活きと、自分らしく健やかに働き、それぞれが持つ多様な能力を発揮し、公私ともに充実した人生を送ることが、生産性や業績の向上、イノベーション、社会への貢献につながると考えています。健幸な「働きの場と人」を創るために、会社とそこで働く社員が協働し、快適で働きやすい職場環境づくり、心身の健康づくりに積極的に取り組むことを宣言します。 |
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社員が活き活きと自分らしく働くことができるようにするためには、快適で働きやすい職場環境が必要との考えから新型コロナウイルス環境下における在宅勤務を起点として「働きの創造」を推進しています。これはハイブリッド勤務(在宅並びに出社やリモート勤務を組み合わせて働くこと)及びDXによる業務改革を推進するなど、新しいオフィス環境を社員に提供すると同時に、社員一人ひとりの繋がりを高めるコミュニケーション施策(社長他経営層が自ら国内外の当社グループ社員と対談を行う機会を設け、自由闊達な双方向でのコミュニケーションを行うとともに、その内容を社内ホームページ等で共有することで繋がりを高めているほか、社内コミュニケーションツールの充実やメンター制度、短期の他部署へのインターン制度等)の様々な取組みを進めることで、社員のWell-beingとエンゲージメント(会社への愛着や仕事のやりがい)の向上に努めています。
人事制度においては、2018年度に「永続的な人材の育成」「人材の能力発揮の最大化」「社員の生活の充実と人材の確保」をコンセプトとして人事制度改定を行い運用してきましたが、その後の会社を取り巻く環境変化や個人のニーズの変化を捉え、2025年4月に人事賃金制度を改定しました。様々な環境変化の中で当社グループの「変革」「進化・共創」とその先の「成長」に向けて、人材の確保と定着を図るとともに、全社員が自律的に、働きがいをもって活躍し能力発揮を最大化することを目指した改定としたものです。具体的には「報酬水準の引き上げ」「特定の職種に特化した手当の新設」を行うほか、定年退職年齢を現行の「60歳」から「62歳」へ引き上げました。今後も社員の納得感を高める、職種や職務特性に応じた人事制度、より優秀な人材の確保に向けた成果に正しく報いる、フェアでメリハリある制度等を志向し優秀な人材の確保とその活躍を促してまいります。
ほかにも、社員一人ひとりが“企業価値向上”を意識して日々の“働き”を創造し、企業理念を実践することにより、会社とともに自己成長、発展していくことを期待し、退職後の生活の一助となることを目的として、社員には「株式給付制度(J-ESOP)※10」が適用されています。2025年4月からは、在職中から譲渡制限付株式(退職時に譲渡制限を解除)を付与する「株式給付制度(J-ESOP-RS)」へと改定しました。これにより社員は在職中から当社の株主となり、議決権の行使及び配当金の受領が可能になり、社員エンゲージメントの更なる向上に資するものと考えております。また、同じく会社と社員が一体となって業績向上に努めることで、社員の長期的な資産形成の一助となることを目的とした「社員持株会」及び社員持株会を通じて中長期的な企業価値向上時のメリット付与を行う「信託型従業員持株インセンティブ・プラン(E-Ship®)※11」を導入するなど、福利厚生も含めた環境整備に努めています。なお、「信託型従業員持株インセンティブ・プラン(E-Ship®)」については、2022年5月の導入時以降、社員持株会への加入が着実に進展している状況を踏まえ、株式の取得価額を約48億円から約65億円に引き上げ、2025年5月に制度拡張して再導入することを決定しています。本プランの再導入により、社員持株会に加入する社員は、拠出金額に対する10%の奨励金に加え、株価上昇時に追加のインセンティブを享受できる仕組みが継続されます。この社員の財産形成機会の拡充が社員のエンゲージメントに繋がることを期待しております。これらの制度の改定、拡充を通じて、社員の処遇と当社の株価や業績との連動性を高め、社員エンゲージメントの強化を行い、持続的な企業価値の向上を図ってまいります。株式給付制度の概要及び信託規模や株式取得方法については、2024年5月13日付「
※10 J-ESOP:社員に対し個人の貢献度等を勘案して計算されるポイントを付与し、一定の条件により受給権の取得をしたときに当該付与ポイントに相当する当社株式を給付する制度。
※11 E-Ship:予め信託設定した期間(3年)にわたり持株会が取得すると見込まれる数の当社株式を信託が予め取得し、その後、信託から持株会に対して継続的に当社株式の売却が行われるとともに、信託終了時点で従持信託内に株式売却益相当額が累積した場合には、当該株式売却益相当額が残余財産として受益者適格要件を満たす者に分配される制度。
新たな社員株式給付制度(J-ESOP-RS)
会社価値共有によるWell-beingへ
<リスク管理>
人的資本に関する機会の評価は、原則毎月開催される全社事業検討会及び年4回開催されるazbilグループ社長会等の場を通じて中長期の人員計画を検討するとともに健幸経営、働きの創造や人材育成など広範にわたる内容についてazbilグループCSR推進会議で社内外の状況確認と議論を行い、各部門、各社取組みの好事例を横展開するなど人的資本強化の機会を捉えた活動へと繋げています。
また、人的資本に関するリスクは、「
<指標及び目標>
人材育成及び社内環境整備については、2030年度に向けたazbilグループSDGs目標として「一年間で仕事を通じて成長を実感する社員の比率65%以上」「azbilグループで働くことに満足している社員の比率65%以上」を掲げております。
それぞれの状況は、毎年の社員満足度調査を通じて確認することとしており、2024年度に国内当社グループ社員に実施した調査により、「一年間で仕事を通じて成長を実感する」社員は61%、「azbilグループで働くことに満足している」社員は59%であることを確認しています。その他azbilグループSDGs目標のターゲットとして設定している、2024年度に女性活躍ポイント※12を2017年度比で2倍にすること、研鑽機会ポイント※13を2012年度比で2倍にすることについて、2024年度の結果では女性活躍ポイントは2.3倍、研鑽機会ポイントは6.1倍に至っていることを確認し、いずれも当初の目標を達成することができました。
2030年度の目標達成に向けて、全ての社員がより一層活躍できるよう、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの取組みを推進するとともに、働きの創造(働く環境の整備と学習する機会の提供)に引き続き取り組んでまいります。当社では、新たな目標として女性管理職の比率を2030年度に10%以上にすること、国内azbilグループで2027年度に向けて女性の管理職比率を2017年度比で約2倍にすることを掲げました。これまでの有価証券報告書で当社グループの女性管理職比率は部長やマネジャー等ライン長の人数で集計して開示してまいりましたが、今回の有価証券報告書より管理職層(当社においては人事制度上の上級基幹職以上、当社グループ会社においても同等の職層以上)の人数を集計し、女性の管理職比率として開示してまいります。
また、azbilグループSDGs目標及びターゲットの達成に向けて社員満足度調査結果を分析することで各部門、年代、職種ごとの課題を把握し、取組み計画に反映して改善を進めることで、更なる人材育成、社員の働きがい向上へと繋げております。
なお、女性管理職比率、男性育児休業取得率、男女間賃金格差等は、今後も多様な人材を確保していくうえで重要な指標であると認識しており、これらについての実績は、「
※12 女性の役員、役職者、管理職など役割に応じたウエイトをつけて独自に集計したポイント
2017年度比としているのは、女性活躍も施策として織り込んだ人事制度が2018年度から改定されているため
※13 社内外のステークホルダーとともに学ぶ機会(回数及び参加人員数)を独自に集計したポイント
・人的資本に関係する2024年度の各数値は、確定後、「
その他(人権尊重の取組み)
人権尊重の取組みについては、「azbilグループ人権基本方針」を定め、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し実践しております。当社グループにおけるバリューチェーン全体の潜在的な人権リスク(負の影響)を網羅的に抽出し、その深刻度や発生可能性を評価したうえで、人権リスクマップを作成しました。この結果を踏まえ、深刻度及び発生可能性の高い人権リスクを、優先して対応すべき人権課題として特定し、対応を実施しています。なお、人権課題及び対応方針は、事業環境の変化やステークホルダー・エンゲージメントの結果等を踏まえ、継続的に見直します。本取組みに関しては、経営会議で審議のうえ取締役会に報告しております。
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azbilグループ人権基本方針 azbilグループは「人を中心としたオートメーション」で、人々の「安心、快適、達成感」を実現するとともに、地球環境に貢献します。私たちはこの“azbil グループ理念”、ならびに“azbil グループ企業行動指針”、“azbil グループ行動基準”に基づき、人権の尊重を経営の最重要課題の一つと捉え、持続可能な社会の実現と地球環境の保全に積極的に取組み、高い倫理感をもって法令を遵守し、ステークホルダーとの信頼関係を構築し、人権尊重の責任を果たします。 |
(注)azbilグループ人権基本方針の全文については、ホームページ
<優先して対応すべき人権課題>
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ステークホルダー |
人権リスク |
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従業員 |
健康と安全 |
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過重労働時間 |
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ハラスメント |
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児童労働 |
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強制労働 |
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差別 |
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結社の自由、団結権(団体交渉権)、団体行動権(争議権)の侵害 |
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プライバシーの権利(個人情報流出を含む) |
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サプライヤー(二次以降も含む)・委託先・投資先等従業員 |
健康と安全 |
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過重労働時間 |
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ハラスメント |
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児童労働 |
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強制労働 |
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差別 |
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結社の自由、団結権(団体交渉権)、団体行動権(争議権)の侵害 |
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プライバシーの権利(個人情報流出を含む) |
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azbilグループ製品利用者 |
製品・サービスの品質と安全 |
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近隣住民 |
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輸送事故に巻き込まれるリスク |
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地域住民、環境への影響 |
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求職者 |
差別 |
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全て |
通報相談窓口へのアクセス/救済措置を受ける権利の侵害 |
本書に記載の「第2 事業の状況」、「第5 経理の状況」等に関する事項のうち、経営者がazbilグループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)リスクマネジメント体制
当社では、スリーラインディフェンスに基づくリスク管理を行っております。azbilグループ全般の活動において、責任を明確にした3つの防衛線を通じて、組織の内部統制・リスク対応機能の向上を図っております。特に第一の防衛線については、確実にリスクを低減するため、リスクごとに担当役員を明確にし、防衛線での自律的管理の強化を図っております。また、リスクマネジメント事務局がリスク管理活動全体の管理と支援を行うなかで、第二の防衛線では、主に各間接管理部門が組織全体で対応すべきリスクに対する対策の展開と管理、支援の責任を果たすことで、リスク管理に対する牽制・支援の役割を担っております。さらに、内部監査部門が第三の防衛線として第一線・第二線によるリスク管理体制の検証・保証を行います。
<リスク担当役員の明確化による防衛線の強化>
当社では、ボトム(現場部門)の情報をトップ(経営層)が十分に把握し、意思決定を行うことが重要だと認識しており、ボトムアップアプローチとトップダウンアプローチを一体としたリスクマネジメントを実施するための体制として、「azbilグループ総合リスク管理部会」、「azbilグループ総合リスク委員会」、「azbilグループCSR推進会議」を設置しております。
「azbilグループ総合リスク管理部会」は部門の責任者等をメンバーとして実施され、主にリスクの抽出と評価に関して現場側の意見集約を行います。なお、リスクの抽出と評価については経営層の意見も別途ヒアリングを行って集約し、経営層と現場部門の意見を統合するプロセスを構築しております。
「azbilグループ総合リスク委員会」はリスク管理担当役員を統括責任者、経営層をメンバーとして半期に一度実施され、一連のリスクマネジメント活動に対する経営層による状況確認と方針決定を行います。具体的には、「azbilグループ総合リスク管理部会」や経営層へのヒアリングから得られた情報に基づくリスクの対応優先度の決定(azbilグループが優先して対処すべき「azbilグループ重要リスク」とそれ以外の「部門管理リスク」の選定)、リスク対応計画の進捗確認を行います。なお、「azbilグループ総合リスク委員会」での審議結果は取締役会に報告しております。
「azbilグループCSR推進会議」は部門の責任者等をメンバーとして四半期に一度実施しており、リスクマネジメントの推進状況について確認・検討を行っております。リスク対応計画の進捗確認をazbilグループ総合リスク委員会よりも高頻度に行うことで、タイムリーな状況変化に対応できるようにしております。
(2)リスクマネジメントプロセスの運用
当社では、経営に重大な影響を与える可能性のあるリスクの網羅的な抽出と影響度及び発生可能性の評価を行っております。具体的には、経営層に対するヒアリングによる経営目線でのリスクの抽出・評価と、azbilグループ総合リスク管理部会での審議に基づく現場目線でのリスクの抽出・評価を行い、結果をリスク一覧表(抽出されたリスクの内容と評価結果を一覧化した資料)とリスクマップ(リスクを影響度と発生可能性に基づき5×5のマトリックスに配置した資料)に取りまとめます。なお、リスクの評価にあたってはリスク発生時の影響金額やリスクの発生頻度等に基づく定量的な評価基準を設定し、評価結果を客観的に比較・統合できるようにしております。上記のアウトプットを参照資料として「azbilグループ総合リスク委員会」にて経営層による審議を行い、「azbilグループ重要リスク」及びそれ以外の「部門管理リスク」を決定し、結果については取締役会に報告します。
抽出された各リスクに対しては、期初に年間のリスク対応計画を策定し、期中と期末に行われる「azbilグループ総合リスク委員会」にて計画の進捗報告を行い、計画の遅延や推進上の課題を都度認識・改善することでPDCAサイクルを回しております。「azbilグループ重要リスク」についてはリスクごとに担当役員が直接状況報告を行いますが、「部門管理リスク」については、計画の進捗状況を集約した台帳ベースで確認を行います。また、四半期に一度実施される「azbilグループCSR推進会議」では、より高頻度にリスク対応計画の進捗確認を行っております。
<リスクマネジメントプロセス>
<リスクマップ>
影響度と発生可能性でリスクをプロットすることにより、
管理すべき優先順位を視覚的に把握する
(3)事業等のリスク
今回選定されたazbilグループ重要リスクに関する詳細は以下のとおりです。
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①品質に関するリスク |
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リスク認識 製品の設計・製造品質の確保不足、あるいは量産工程における教育不徹底や意識不足等によるデータの不備や不適合品等が発生した場合、製品不適合によるリコールが必要となり、多額のコストが事業の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、当社の事業上の強みが「高い品質」にあることから、上記の事象が顧客からの評価や信用の低下を引き起こし、影響が重大化もしくは長期化する可能性も考えられます。昨今ではSNSの普及により品質トラブルを含む風評が広まりやすく、当該リスクの影響度及び発生可能性が以前よりも高まっているため、常に経営としてできる限りの備えが必要だと認識しております。 |
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対策 当社グループでは、製品の設計・製造品質を確保するための対策として、開発プロセスや安全設計に関する標準の運用や、生産現場の各工程で不適合品を「①入れない②つくらない③出さない」ための標準手順の策定・運用、安全な製品提供のための審査制度、適正な検査作業工程維持のための生産ラインの管理・改善、グループワイドでの業務プロセス点検といった取組みを行っております。また、法規制の変化に対応するため、製品に含有する化学物質規制や、製品安全関連の法規制・規格等について製品開発時や量産段階における確認プロセスを標準化し、厳格化しております。 製品品質に関わる重大な問題が発生した場合、市場品質情報として即座に品質担当役員と事業責任者へ伝達され、関連部門で共有、必要な対策・情報開示が迅速に行えるようになっております。また、発生した品質問題に対し、原因の解析、対策の実施及び技術・評価基準への反映や設計知識データベースへの登録を行い、再発防止に努めております。なお、製造物責任や製品欠陥に起因する損害賠償につきましては、保険に加入するなど問題発生に際しての備えも強化しております。 品質管理対応に関連する情報は、グループ品質保証担当役員を委員長とした品質保証委員会をはじめとする会議体にて共有・可視化されるように努めております。 |
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②情報セキュリティに関するリスク |
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リスク認識 当社グループでは、事業上の重要情報及び事業活動の過程で入手した個人情報や顧客、取引先、提携先等の機密情報を保有しておりますが、昨今、国内外ではGDPR(EU一般データ保護規則)等に代表される個人情報を主体とする各種情報の保護に対する法令の制定が進んでおり、遵守とそのためのルール整備や情報システムの強化が求められております。これらに関連するリスクとして、 ①メールやFAXの誤送信、パソコンや書類の紛失等により、顧客から受領した機密情報や従業員の個人情報が漏えいするリスク ②クラウドサービス間のAPI等による情報連携において不適切な情報を公開(提供)してしまうリスク ③データサービスにおいて顧客(企業)や個人を特定できる状態でデータを利用、提供してしまうリスク 等が存在しており、その結果として、損害賠償の支払いなど、社会的な信用の低下により業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。 また、情報セキュリティに関しては、サイバーセキュリティ室による商品・サービスから業務システムまでの一貫した管理・対策を中心に対応を図っておりますが、新たなサイバー攻撃の手口が絶えない現在の状況において、想定外の攻撃による以下のリスクを完全に防ぐことは難しいと考えております。 ①ランサムウェアや標的型攻撃等のサイバー攻撃により顧客及び自社の機密情報が漏えいするリスク ②当社グループが顧客に提供しているクラウドサービス商品がサイバー攻撃を受け、サービス提供不能や顧客の機密情報漏洩を起こしてしまうリスク その結果として、損害賠償の支払いや顧客・社会からの信用喪失により、当社グループの業績及び財政状態が大きく影響を受ける可能性があります。当社グループでは2020年度に発生したコンピューターウイルス感染の事態を重く受け止め、日々変化する状況に対応して、情報セキュリティ対応の高度化に一層努めてまいります。 |
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対策 事業上の重要情報の機密保持とあわせて、個人情報保護に関しての法令遵守のため、社内規程の整備と運用及び社員への教育を行っております。具体的には、 ①PCストレージの暗号化 ②メール誤送信防止アドインソフトのインストール ③社内から社外へのインターネットアクセス制限による情報漏洩リスク軽減 ④azbilグループ情報セキュリティ教育での啓蒙(誤送信防止の注意ポイント、情報紛失時の対応等) ⑤グループとして緊急事態対応の体制を整備・迅速な対応による影響最小化 の対策をとっております。 また、当社グループでは、激化するコンピューターウイルス等によるサイバー攻撃に対する備えとして、より強固なIT環境の整備や社員の情報リテラシー(情報活用能力)を高めるための定期的な教育等を継続して行うとともに、様々なサイバー攻撃に対して、以下のような対策を行っております。 ●システム上の対策 ①ネットワーク経路上の監視・防御 ②生産設備とオフィス系ネットワークの分離 ③システム及び利用PCのマルウェア対策(EDR※1を導入してセキュリティ強化) ●体制・運用 ①適切なバックアップによるデータ消失対策 ②azbilグループ情報セキュリティ教育での啓蒙・訓練(マルウェア感染が疑われた際の対応等) ③サイバー攻撃対応訓練 ④CSIRT※2の設置による初動対応の迅速化 さらに、商品セキュリティに対しては、セキュリティ専門組織によるリリース前のサイバーセキュリティ審査を実施し、セキュリティ事故を未然に防止するようにしております。リリース後も新たな脆弱性情報を収集し、脆弱性が発見された場合は商品への影響調査・対策を実施する運用をしております。 以上のような情報セキュリティに関するリスクへの対応を、azbilグループ情報セキュリティ基本方針のもと遂行してまいります。
※1EDR(Endpoint Detection and Response):PCやサーバー等ネットワークに接続されている端末を監視し、不審な挙動を検知するとリアルタイムに通知する製品・サービスの総称 ※2CSIRT(Computer Security Incident Response Team):当社のセキュリティ事故対応チーム |
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③技術・商品開発に関するリスク |
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リスク認識 近年、メタバース※3やWeb3.0※4、生成AI※5等といったDXの先端的な潮流に代表される技術革新の流れをキャッチアップできないことや、国際標準動向への対応ができないことにより、事業に影響が生じるだけでなく、市場拡大もできない可能性があります。具体的には、商品の陳腐化と顧客離れが進み、市場からの撤退を迫られるリスクや、事業領域が広がらず、縮小均衡に陥ってしまい事業成長できないリスクが想定されます。また、研究開発投資について、現時点では適切なテーマ設定に基づく技術・商品開発プロジェクトへの人的、資金的リソースの投入を行っておりますが、開発テーマを継続的に確保するための対応が不十分な場合、中長期的には開発テーマ不足に至る可能性があり、リニューアル商品、新規商品が不足し、中長期目標の達成が不達になることが考えられます。加えて、製品・技術の研究開発を進めていても、研究開発プロセスの管理不備やリソース不足、開発力自体の低下が生じた場合には、新製品の投入遅延や開発自体の失敗によってマーケットシェアが減少し、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
※3メタバース:一つの仮想空間内において、様々な領域のサービスやコンテンツが生産者から消費者へ提供される場 ※4Web3.0(ウェブスリー):ブロックチェーンによる相互認証、データの唯一性・真正性、改ざんに対する堅牢性を基に、個人がデータを所有・管理し、中央集権不在で個人同士が自由に繋がり交流・取引する世界 ※5生成AI:自らの訓練に使用されたデータを基に、テキストや写真、動画、コード、データ、3D画像等の出力を生成又は作成する人工知能アルゴリズム |
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対策 技術革新に対しては、関連技術動向、競合動向、国際標準動向を各開発組織やマーケティング組織で継続して注視しております。加えて、全社マーケティング・開発横断で実施される技術開発担当役員を議長とした商品力強化会議にて情報の捕捉や課題認識に努め、全社開発検討会では、より具体的なテーマ(AI、クラウド、通信、カスタムIC等の領域)について、取組み状況を確認しております。 技術・商品開発の具体的なテーマの抽出においては、ニーズ・シーズマッチング活動※6等により、マーケティング・開発一体でのテーマ創出活動を強化・推進しております。外部環境変化への対応の必要性も捉えるために、特に海外開発拠点であるアズビル北米R&D株式会社や東南アジア戦略企画推進室による海外の技術開発パートナーとの連携によるエコシステム構築への対応も進めております。また、“現場で価値を創る”ことを目指した商品提案力強化のため、azbilグループシステム・プロダクト事業ポートフォリオ検討タスクを構成して対応を進めております。具体的な施策としては、保有する技術の競争優位性を高めるためにMEMSを主力としたセンシングデバイス領域、アクチュエータ領域、クラウド領域において、技術開発本部のMEMS関連組織改定、アクチュエータ開発本部の設立に加えて、プロダクト事業強化として設立したスパイラル型事業開拓※7組織においては、対象とする商品領域を拡大しました。システム事業強化としては、クラウドサービスの統制を担う組織に加えて、アプリケーション開発体制強化として2024年度新たにグループクラウド開発部の設立を行い、商品力強化を図っております。 研究開発プロセスの管理不備による開発遅延に対しては、開発プロセス標準の改良(リスク要因の抽出プロセスの設定、リスク検証における管理技術の導入による後戻り防止や遅延リスクの事前検討、伝承すべき技術要素のドキュメント化等)を実施しております。また、技術開発担当役員を委員長とした技術委員会を活用した、更なる全社での開発の連携強化や人材リソース配置の調整によるリソース確保を実施しております。 中長期的な開発力向上については、開発プロジェクト推進の根幹となる開発人材(マネジメント及びスペシャリスト等)の育成が必要であり、開発人材の最適配置と育成、開発人材の流動化に関する企画立案と施策展開として、技術委員会傘下の開発系人材専門部会によるタレントマネジメントシステムの導入・運用等の実行により、強化を進めております。また、イノベーションを起こす風土づくりを推進するため、国内外における外部連携(大学やスタートアップ企業等)の拡大や全社研究開発の中核拠点である藤沢テクノセンターの新実験棟に協創エリアを設置するなど、協創活動をより一層強化しております。
※6ニーズ・シーズマッチング活動:ニーズ(消費者が求めている必要性)とシーズ(メーカの持っている特別な技術や材料)のマッチングを推進する活動 ※7スパイラル型事業開拓:当社独自の技術を有し、強みを発揮できる領域において、顧客を含む関係者とともに開発を進め、より短いスパンでの市場投入、その後の維持、リニューアルを実現することを目指す事業開拓 |
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④国際情勢変化への対応に関するリスク |
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リスク認識 グローバル事業の拡大に伴い、進出先における政治経済情勢の変化、現地の法律や規制等の改正、自然災害、テロ、ストライキ、戦争、感染症の蔓延の発生や世界各国における紛争や政治的対立による地政学的リスクの増大等、不測の事態に遭遇する危険性が増しております。そのような中、予期せぬ戦争状態の発生や主要国における経済措置等を原因とした対立の激化、それに対する各国の制裁措置等が発動された場合、当社のグループ企業の従業員の安全性が損なわれる可能性があることに加え、事業、与信管理も含めた業績及び財政状態に一定の影響が出る可能性があります。 また、国際情勢環境の変化に伴い、関連する国内外の輸出管理関連法令等の動向については、当社グループが予期しない突発的な法規制強化により、規制当局の許可を要することになる等の変更に直面するリスクがあります。 加えて、急激又は大幅な為替レートの変動は、売上高、原材料・部品の価格、販管費等の経費に影響し、当社グループの業績及び財政状態に一定の影響を及ぼす可能性があります。 さらに、昨今の米国による相互関税措置をはじめとする各国の通商政策の不透明性が高まっており、世界的なサプライチェーンの再編や各国間の貿易摩擦の激化が進行しています。このような通商環境の変化は、コスト構造や需給バランスへの影響を通じて、当社グループの業績及び財政状態に不連続な変化をもたらす可能性があります。 |
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対策 当社グループでは、進出先の各国・各地域の地政学的リスクの変化に十分な注意を払い、常に情報の収集に努めております。そのうえで、国ごとにリスクを判断し、必要な場合には人命安全マニュアル等に基づく人命第一の対策を講じております。また、事業継続に対するリスクについては、国際情勢の変化等を踏まえたBCP(Business Continuity Plan-事業継続計画)の整備を進めているほか、特定地域における情報収集、人命安全対策等、当社グループにとって致命的な影響を及ぼすイベントについて重点的な検討を行っております。加えて、既獲得案件については案件単位で状況を把握し、適切に対応しております。 輸出管理関連法令等については、国際情勢及び国内外の関連法規制の変化に十分な注意を払い、常に情報の収集に努めております。法規制の変更があった場合には、社内の運用体制の見直しなどを実施し、輸出取引審査をより慎重にするなど適正な輸出管理を行っております。かかる法規制の変化や運用体制の見直しなどの取組みについては、当社グループ内に周知徹底するとともに、グループ内の各種会議体においても報告や議論を行っております。 為替変動に対しては、適切な財務上の為替ヘッジを行いつつ、海外生産の拡大等によるリスク軽減に取り組んでおります。 加えて、相互関税の発動など貿易政策の急激な変化に備えるため、当社グループでは各国の政策動向に関する情報収集体制を強化しております。また、特定国依存を回避するため、地域分散や複数調達先の確保、柔軟なサプライチェーン再構築等を推進しており、国際的な環境変化への対応力強化に努めております。 |
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⑤自然災害に関するリスク |
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リスク認識 当社グループのBA事業、AA事業の国内生産拠点(製造子会社を含む)や、マザー工場として生産機能の中核となる湘南工場、海外の生産拠点において、地震・津波、噴火といった自然災害や火災・爆発など不測の事態が発生した場合、建屋や生産設備・機械、出荷前の製品等の損傷に対して復旧費用が必要となる可能性があります。また、自社の生産ラインに加えて社会インフラやサプライヤーにも被害が生じ、工場生産や事業活動が停止することによって業績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。 |
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対策 当社グループでは地震等の自然災害の発生時に生じる損害を最小限に抑えるべく、人員や生産設備等に求められる対応準備を進めております。具体的には、工場等の重要施設や建物における耐震化、非常用電源や非常用通信網の整備、災害備蓄品の配備に加え、社員の安否確認システムの導入や各拠点における安全確保のため初動対応ガイドラインの作成、定期的な防災訓練や初期消火訓練といった対策を行っております。 さらに、事業の中断、阻害に対処するためのBCP策定にも取り組んでおり、実効性を確保できるよう継続的に改善を進めております。災害による事業停止に対しては対応可能な事業継続期間を検証し、そのために必要な資金及び製品や部品の在庫の確保、最優先業務を継続するための代替拠点の設定とその体制を整備しております。具体的には、本社被災時に初動対応にあたる関西・九州の事業所を代替拠点として設定、サービス・エンジニアリング機能の拠点間支援体制の整備や主要生産品目を国内他地域及び中国とタイの海外工場へ移管するなど、生産拠点の分散化を図ることにより、拠点集中リスクの軽減を図ってまいりました。加えて、物流拠点を京都に新設し、神奈川との2拠点体制とし、自然災害発生時には相互でのバックアップ可能な状況を構築しました。さらに、首都圏の活動制限等のロックダウン相当の事態を想定した生産対応計画を策定しております。 |
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⑥人材の確保・育成に関するリスク |
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リスク認識 今後の技術発展や社会情勢の新たな展開等に誘発される事業構造の変化に対しては、既存の人事制度にとらわれない柔軟かつ適切な人材配置の必要性が高まる可能性があります。 また、少子高齢化や多様性の進展、働き方改革をはじめとした新労働法制の施行等を受けて労働者の意識や絶対数に変化が生じており、今までどおりの人材採用戦略を継続することによって、中長期的な人材不足が発生し、事業のパフォーマンスが慢性的に低下する可能性があります。 加えて、当社グループの成長においては海外事業及び新規事業の展開・拡大が不可欠であり、目的に合致した人材の確保やスキル教育等が順調に進捗しない場合には、事業成長目標の達成を阻害する要因となる可能性があります。 |
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対策 当社グループは、「社員は重要な財産であり、新たな企業文化と企業価値の創造の源泉である」という普遍の考え方をベースに、「健幸経営」をスローガンに各種人事施策を展開しております。 事業構造の変化に対しては、2012年度以降、人員の再配置及び新しい部署で必要となるスキル・知識のリスキリングを行うことで、環境変化への柔軟な対応力を持つ社員の確保に努めており、継続的に人員のローテーションならびに最適配置を実施しております。これに加え、DX教育など人材育成の強化により、約60%の社員が成長を実感しております。 さらに2018年度からは新たな人事制度として全社員の異動意向調査やオープンチャレンジ制度(希望する部署への異動制度)を導入し、適材適所の人材配置を計画的に進めております。また、特にスキル・知識レベルの高いベテラン社員のスペシャリストに関しては、その技術・ノウハウ継承に向けて、個人ごとに後継者育成計画を立案し遂行しております。 採用環境の変化に対しては、事業側と人事部が一体となった人員計画に基づく採用活動の強化に加えて、継続的な処遇の改善、DX化による業務改革やアウトソースを活用した適正負荷配分、65歳以上の雇用延長、ベテラン社員のリスキリング、短日数・短時間勤務制度の導入等を通じて生産性を向上しております。 海外事業や新規事業の展開に必要な人材の確保に関しては、従来の新卒採用やキャリア採用に加え、社員紹介や経験者の再雇用といった手法を有効に活用するとともに、新卒採用のうち10%以上は海外出身者を採用するなどの対策を実施しております。また、海外現地法人の採用強化策として、本社における採用方法・ノウハウを各現地法人に順次に展開しており、その一環として、海外大学からのインターンシップ学生の受入れや国内大学から海外現地法人への送出しを積極的に行っております。 |
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⑦生成AIに関連するリスク |
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リスク認識 生成AIの急速な技術進歩と普及はビジネスや社会全体に多大な影響を及ぼしています。生成AIの利活用により、業務効率化や製品・サービスの新規開発・高付加価値化が期待される一方、生成AIの利用者としては、個人情報や営業秘密等の漏洩、知的財産権侵害、誤情報の流布、意図せぬバイアスによる偏った判断といったさまざまなリスクが生じます。 他方、生成AIを使った製品・サービスの提供者としても、同様のリスクがあるほか、生成AIに関する法規制による制限や違反のリスクもあり、これらのリスクが顕在化すれば、当社の社会的信用やブランドイメージの毀損、罰金、損害賠償請求等が発生し、事業活動、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。 生成AIに関する法規制は、世界各国で加速しており、規制強化により、生成AIを利活用した業務の効率化や製品・サービスの新規開発・高付加価値化に影響を及ぼす可能性がありますが、現時点においては、規制対象も含めて不確実な法制対応自体の展開も、その影響度も含めてリスク判断が難しい状況です。 また、生成AIを利用した新規参入事業者の登場というリスクにより、当社の事業環境・競争力が大きく影響を受ける可能性もあります。 |
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対策 当社グループでは、生成AIの利活用に伴うリスクを適切に管理するために、いくつかの具体的な対策を講じています。まず、生成AIの利用に関するガイドラインを策定し、このガイドラインに基づいて適切な利用を推進しています。ガイドラインは、技術動向や法規制の変化に対応するため、常に見直しを行っています。 また、技術的な対策として、生成AI利用時における機密情報の漏洩防止に対応する技術を導入するとともに、万が一漏洩が発生した場合には迅速に対応する体制を整えています。 さらに、全社員に対する教育研修を実施し、生成AIの利用に伴うリスクへの意識を高め、著作権侵害リスクの回避、安全性と正確性の確保、倫理的配慮等について、適切な対応を促しています。 これらの対策を通じて、法規制の展開も見守りながら当社グループは生成AIの利活用によるリスクを管理しつつ、企業の競争力を維持・向上させることを目指しています。 |
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度におけるazbilグループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における業績につきましては、受注高が3,047億2千3百万円(前連結会計年度は2,878億5千1百万円)と、前連結会計年度比5.9%の増加となりました。
売上高につきましては、3,003億7千8百万円(前連結会計年度は2,909億3千8百万円)と、前連結会計年度比3.2%の増加となりました。
損益面につきましては、営業利益は、前連結会計年度比12.6%増加の414億8千6百万円(前連結会計年度は368億4千1百万円)となりました。経常利益は、前連結会計年度比8.1%増加の421億7千万円(前連結会計年度は389億9千9百万円)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、前連結会計年度比35.6%増加の409億5千5百万円(前連結会計年度は302億7百万円)となりました。
(単位:百万円)
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2024年3月期 |
2025年3月期 |
増減 |
増減率 |
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受注高 |
287,851 |
304,723 |
16,872 |
5.9% |
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売上高 |
290,938 |
300,378 |
9,439 |
3.2% |
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営業利益 (利益率) |
36,841 (12.7%) |
41,486 (13.8%) |
4,644 (1.1pp) |
12.6%
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経常利益 |
38,999 |
42,170 |
3,171 |
8.1% |
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親会社株主に帰属する (利益率) |
30,207 (10.4%) |
40,955 (13.6%) |
10,747 (3.3pp) |
35.6%
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当連結会計年度末の財政状態につきましては、以下のとおりです。
資産の状況
当連結会計年度末の資産の状況は、前連結会計年度末に比べて13億4千4百万円増加し、資産合計で3,150億7千2百万円となりました。アズビルテルスター有限会社(以下、「アズビルテルスター」といいます。)の出資持分譲渡による連結の範囲からの除外の影響を含め棚卸資産が61億5千3百万円、売上債権等が60億1千4百万円それぞれ減少し、また、投資有価証券が32億1千7百万円減少いたしました。一方、現金及び預金はアズビルテルスターの出資持分譲渡による収入等があり、174億1千5百万円増加いたしました。
負債の状況
当連結会計年度末の負債の状況は、前連結会計年度末に比べて142億8千5百万円減少し、負債合計で745億5千5百万円となりました。これは主に、アズビルテルスターの出資持分譲渡による連結の範囲からの除外の影響を含め仕入債務が43億8千3百万円、借入金が39億7千1百万円それぞれ減少したことによるものであります。
純資産の状況
当連結会計年度末の純資産の状況は、前連結会計年度末に比べて156億2千9百万円増加し、純資産合計で2,405億1千7百万円となりました。これは主に株主資本が、取締役会決議に基づく自己株式の取得により149億9千9百万円、配当金の支払いにより112億1千8百万円それぞれ減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により409億5千5百万円増加したことによるものであります。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の70.6%から75.3%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動による現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の増加は439億5千3百万円となり、前連結会計年度に比べて164億1千3百万円の増加となりました。これは主に、前連結会計年度において部品確保・調達力強化の対応等により増加していた棚卸資産が当連結会計年度では減少したことに加え、税金等調整前当期純利益が増加したことによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動による資金の増加(収入と支出の純額)は、設備投資等の支出はあったものの、関係会社出資金の売却等の収入があり、20億3千2百万円となりました。前連結会計年度においては、投資有価証券の売却による収入があったものの、設備投資等の支出により、23億6千万円の支出の超過となりました。
財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動に使用された資金(支出と収入の純額)は297億7千1百万円となり、前連結会計年度に比べて73億1千6百万円の支出の増加となりました。これは主に、取締役会決議に基づく自己株式の取得による支出が増加したことによるものであります。
以上の結果、資金の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末より170億4千1百万円増加し、926億3千7百万円となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
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ビルディングオートメーション事業 |
45,723 |
104.0 |
|
アドバンスオートメーション事業 |
33,219 |
93.1 |
|
ライフオートメーション事業 |
31,918 |
89.5 |
|
報告セグメント計 |
110,861 |
96.1 |
|
その他 |
- |
- |
|
合計 |
110,861 |
96.1 |
(注)上記金額は、azbilグループにおける製品の製造に係る費用及び工事の施工に係る原価を集計したものであり、商品の仕入及び役務収益に対応する費用は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
受注高 (百万円) |
前期比 (%) |
受注残高 (百万円) |
前期比 (%) |
|
ビルディングオートメーション事業 |
153,640 |
112.3 |
90,350 |
105.6 |
|
アドバンスオートメーション事業 |
105,986 |
104.4 |
48,650 |
100.1 |
|
ライフオートメーション事業 |
46,845 |
90.6 |
4,573 |
20.6 |
|
報告セグメント計 |
306,472 |
105.7 |
143,575 |
91.8 |
|
その他 |
59 |
102.7 |
- |
- |
|
消去 |
(1,808) |
- |
(218) |
- |
|
連結 |
304,723 |
105.9 |
143,357 |
91.9 |
(注)当連結会計年度において、ライフオートメーション事業の受注残高が著しく減少しております。これは主に、連結子会社であったアズビルテルスター有限会社の出資持分全てを譲渡したことに伴い、同社及びその子会社を連結の範囲から除外したことによるものであります。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
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ビルディングオートメーション事業 |
148,770 |
110.5 |
|
アドバンスオートメーション事業 |
106,836 |
99.8 |
|
ライフオートメーション事業 |
46,634 |
90.7 |
|
報告セグメント計 |
302,241 |
103.1 |
|
その他 |
59 |
102.6 |
|
消去 |
(1,922) |
- |
|
連結 |
300,378 |
103.2 |
(注)総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点によるazbilグループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
azbilグループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、見積りが必要となる事項においては合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりでありますが、特に次の項目が連結財務諸表作成における重要な会計上の見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
(請負工事に関する収益認識)
請負工事契約については、履行義務の充足に係る工事の進捗度を合理的に見積もり、履行義務を充足する一定の期間にわたり収益を認識しております。工事の進捗度の見積りは主に、当連結会計年度末までに実施した工事に関して発生したコストが見積総原価に占める割合に基づく方法(インプット法)によっております。
なお、収益総額、見積総原価及び決算日における進捗度について、見積り時には予見不能な事象の発生やプロジェクト案件の進捗状況等によって当初の見積りが変更された場合、認識された損益に影響を及ぼす可能性があります。
(受注損失引当金)
受注契約に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末における受注残案件のうち売上時に損失の発生が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積もることが可能な案件について、翌連結会計年度以降に発生が見込まれる損失額を受注損失引当金に計上しております。
なお、将来発生する可能性のある損失をカバーするだけの十分な引当金残高を有しているかどうかを判断するために、様々な仮定や要素を考慮しておりますが、新技術・新領域の案件等において、見積り時には予見不能な事象の発生やプロジェクト案件の進捗状況等によって損失額が大きく変動する可能性があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
azbilグループを取り巻く事業環境認識は次のとおりです。
国内大型建物向け空調制御機器・システムにつきましては、都市再開発計画に基づく需要が高い水準で継続し、省エネ・CO2排出量削減対策を含めた改修案件の需要も堅調に推移しています。生産設備向けの各種機器・システムにつきましては、工場・プラントの脱炭素化やDX推進に向けた需要が継続し、また、ファクトリーオートメーション(FA)市場は前連結会計年度からの需要低迷から一部で回復の兆しが見られました。
この結果、当連結会計年度における業績につきましては次のとおりとなりました。
受注高は、アズビルテルスターの出資持分譲渡※1による影響からLA事業が減少しましたが、BA事業が堅調な市況に加えて、複数年の大型サービス契約の更改により増加したことを主因に、前連結会計年度比5.9%増加の3,047億2千3百万円(前連結会計年度は2,878億5千1百万円)となりました。売上高についても、LA事業が同様の理由で減少しましたが、BA事業が前連結会計年度における受注増加を背景に、平準化の取組みも着実に進展したことにより大きく増加したため、全体として前連結会計年度比3.2%増加の3,003億7千8百万円(前連結会計年度は2,909億3千8百万円)となりました。
損益面につきましては、営業利益は、中期経営計画に基づく研究開発費の増加に加え、DX関連費用、人件費やその他費用の増加がありましたが、増収及び価格転嫁も含めた収益力強化施策により大きく改善し、前連結会計年度比12.6%増加の414億8千6百万円(前連結会計年度は368億4千1百万円)となりました。経常利益は、為替差損の計上があるものの、営業利益の増加等により前連結会計年度比8.1%増加の421億7千万円(前連結会計年度は389億9千9百万円)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、アズビルテルスターの出資持分譲渡による売却益(約76億円)の計上を主因に、前連結会計年度比35.6%増加の409億5千5百万円(前連結会計年度は302億7百万円)となりました。
※1 アズビルテルスターの出資持分の全てを、2024年10月31日(中央ヨーロッパ時間)付で譲渡しました。この譲渡に伴いアズビルテルスター及びその子会社を2025年3月期第3四半期末にて当社の連結の範囲から除外しております。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては次のとおりです。
ビルディングオートメーション(BA)事業
BA事業を取り巻く環境は、国内市場においては、都市再開発のオフィスビル向け需要が一旦踊り場を迎えていますが、高い水準を引き続き維持しています。省エネ・CO2排出量削減の需要に加えて、新型コロナウイルス感染拡大後の安全や新しい働き方に適応した新たなソリューション対応への関心も継続しています。海外市場でも新型コロナウイルス感染拡大前の水準を超えて、投資が拡大しています。
こうした事業環境のもと、着実に受注を獲得するとともに、働き方改革への対応も踏まえ、施工・サービスの現場を主体に業務の遂行能力の強化とDX推進による効率化を進めてまいりました。また、IoTやクラウド等の技術活用を志向する国内外のお客様のニーズに対応するための製品・サービスの拡大も進めてまいりました。
この結果、BA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。
受注高は、大型の複数年サービス契約の更改を主因に、人員等のリソースのシフト・体制強化を進めている既設建物向け分野も増加し、BA事業全体として大きく伸長し、前連結会計年度比12.3%増加の1,536億4千万円(前連結会計年度は1,367億8千2百万円)となりました。売上高は、国内事業における平準化の取組みが進展し、新設建物向けから既設建物向け・サービス分野が増加したことに加えて、海外事業の拡大により、前連結会計年度比10.5%増加と大きく伸長し1,487億7千万円(前連結会計年度は1,346億5千5百万円)となりました。セグメント利益は、外注費の高騰のほか、人件費、DX関連費用や研究開発投資等の費用の増加がありましたが、収益性の高い既設建物向け・サービス分野を中心とした増収及び価格転嫁を含む収益力強化の効果により大きく改善し、前連結会計年度比25.8%増加の243億6千3百万円(前連結会計年度は193億7千3百万円)となりました。
中長期的には、引き続き大型の再開発案件が計画され、建物の改修計画も多数見込まれています。採算性に配慮しつつ、これらの需要に確実にお応えしてまいります。さらに、事業提携も含めて、脱炭素化に向けた省エネ・再生可能エネルギー利活用ニーズに応えるESP(Energy Service Provider)モデルの展開、データセンター市場の更なる拡張を進めてまいります。また、新型コロナウイルス感染拡大後に顕在化した安全・安心ニーズに利便性・快適性を備え、新しい働き方にも適応したウェルネスオフィスの需要に対し、クラウドサービスや新空調システムといったソリューションを提供することで、持続的な成長を目指してまいります。収益力強化の観点からは、営業・エンジニアリング等のDXの推進や事業プロセス変革を含めた取組みを進め、更なる高収益体質を実現してまいります。
(単位:百万円)
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2024年3月期 |
2025年3月期 |
増減 |
増減率 |
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受注高 |
136,782 |
153,640 |
16,858 |
12.3% |
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売上高 |
134,655 |
148,770 |
14,115 |
10.5% |
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セグメント利益 (利益率) |
19,373 (14.4%) |
24,363 (16.4%) |
4,989 (2.0pp) |
25.8%
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アドバンスオートメーション(AA)事業
AA事業を取り巻く国内外の市場の動向につきましては、プロセスオートメーション(PA)市場は、国内の保守・改造需要を中心に堅調に推移しています。一方、FA市場では、中国での市況回復の遅れがありましたが、一部で回復の兆しが見られています。
このような事業環境のもと、海外での事業成長、新しいオートメーションの創造という2つの成長施策を通じて事業拡大を図るとともに、部材調達難対応としての調達・生産プロセスの改善や収益力強化に継続して取り組みました。
この結果、AA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。
受注高は、前連結会計年度に大型案件が計上された影響がありましたが、PA市場の堅調さに加えてFA市場での需要に回復が見られたことなどから、前連結会計年度比4.4%増加の1,059億8千6百万円(前連結会計年度は1,014億8千1百万円)となりました。また、売上高は、FA市場の市況低迷の影響がありましたが、PA市場の堅調さにより、前連結会計年度と同水準となる1,068億3千6百万円(前連結会計年度は1,070億5千2百万円)となりました。セグメント利益につきましても、人件費をはじめとした各種経費の上昇や海外市場への投資、DX投資、研究開発投資の増加等はありましたが、価格転嫁を含む収益力強化施策の効果が引き続き認められたことにより、前連結会計年度と同水準となる159億9千7百万円(前連結会計年度は161億1千8百万円)となりました。
現在もFA市場は低い水準の市況動向が継続していますが、海外での事業成長、新しいオートメーションの創造の2つの成長施策が着実に進展しており、今後の市況回復期での成長に寄与することに加え、長期的には工場の脱炭素化、人手不足対応、設備老朽化対応、新しい生産方式の導入等、お客様のオートメーションへのニーズ対応として、工業系オートメーション市場はグローバルに拡大していくことが期待されています。引き続き3つの事業単位※2(CP事業、IAP事業、SS事業)を軸に、海外事業をはじめとした成長領域への展開を推し進め、AIやクラウド、微細加工等の先進的な技術を取り入れた製品・サービスの開発、市場投入を加速し、当社グループならではの新しいオートメーションを創造することで、高い競争力を持った事業成長を目指してまいります。
(単位:百万円)
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2024年3月期 |
2025年3月期 |
増減 |
増減率 |
|
受注高 |
101,481 |
105,986 |
4,505 |
4.4% |
|
売上高 |
107,052 |
106,836 |
△215 |
△0.2% |
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セグメント利益 (利益率) |
16,118 (15.1%) |
15,997 (15.0%) |
△120 (△0.1pp) |
△0.7%
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※2 3つの事業単位(管理会計上のサブセグメント)
CP事業 :コントロールプロダクト事業(コントローラやセンサ等のファクトリーオートメーション向けプロダクト事業)
IAP事業:インダストリアルオートメーションプロダクト事業(差圧・圧力発信器やコントロールバルブ等のプロセスオートメーション向けプロダクト事業)
SS事業 :ソリューション&サービス事業(制御システム、エンジニアリングサービス、メンテナンスサービス、省エネソリューションサービス等を提供する事業)
ライフオートメーション(LA)事業
LA事業は、ガス・水道等のライフライン、製薬・研究所向けのライフサイエンスエンジニアリング、そして住宅用全館空調システムの生活関連の3つの分野で事業を展開しており、事業環境はそれぞれ異なります。
ライフライン分野は、法定によるメーターの交換需要を主体として一定の需要が継続的に見込まれますが、現在LPガスメーター市場が循環的な不需要期にあります。また、海外で事業展開してきたライフサイエンスエンジニアリング分野では、業界再編の進展、欧州地域の混迷による景況感の影響を受ける中で、事業ポートフォリオ再構築を進めるために同分野を担うアズビルテルスターの出資持分譲渡※3を実施しました。この譲渡による連結範囲からの除外が、LA事業の当連結会計年度の業績に影響いたしました。
※3 資本効率の向上を図る事業ポートフォリオ再構築に取り組み、2024年10月31日(中央ヨーロッパ時間)、ライフサイエンスエンジニアリング分野を担うアズビルテルスターの出資持分全てをSyntegon Technology GmbHの100%子会社であるFalcon Acquisition, S.L.U.へ譲渡いたしました。なお、この出資持分譲渡に伴いアズビルテルスター及びその子会社は2025年3月期第3四半期末をもって当社の連結の範囲から除外しております。
上記の事業環境や事業ポートフォリオ再構築により、LA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。
受注高は、ライフサイエンスエンジニアリング分野が減少したことを主因に、全体として前連結会計年度比9.4%減少となる468億4千5百万円(前連結会計年度は516億8千9百万円)となりました。売上高につきましては、ライフライン分野、住宅用全館空調システム分野は前連結会計年度と同水準となりましたが、受注高と同様の理由によりライフサイエンスエンジニアリング分野が減少したことから、前連結会計年度比9.3%減少の466億3千4百万円(前連結会計年度は514億4百万円)となりました。セグメント利益についても、ライフサイエンスエンジニアリング分野の減少に加えて、人件費をはじめとした各種経費の上昇により前連結会計年度比14.9%減少の11億7千1百万円(前連結会計年度は13億7千5百万円)となりました。
ライフサイエンスエンジニアリング分野における事業譲渡後のLA事業では、引き続き価格転嫁の取組みを含めた収益力の改善、DXの推進による業務プロセスの見直しなどに取り組み、環境変化に応じた適切な変革を推進いたします。ライフライン分野では、エネルギー供給市場における事業環境の変化を捉え、スマートメーターを視野に入れた製品提供型の事業に加え、IoT等の技術を活用し、各種メーターからのデータを活用したサービスプロバイダーとしての新たな事業の創出に取り組んでまいります。住宅用全館空調システム分野では新設建物から既設建物まで、省エネや空気質も含めて、幅広く生活空間の快適性を提供する製品対応等により、事業を推進してまいります。
(単位:百万円)
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2024年3月期 |
2025年3月期 |
増減 |
増減率 |
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受注高 |
51,689 |
46,845 |
△4,843 |
△9.4% |
|
売上高 |
51,404 |
46,634 |
△4,770 |
△9.3% |
|
セグメント利益 (利益率) |
1,375 (2.7%) |
1,171 (2.5%) |
△204 (△0.2pp) |
△14.9%
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2025年度の見通し
azbilグループは、2030年度をゴールとする長期目標を設定し、中期経営計画を段階的に策定して目標達成に向けた取組みを進めております。「持続可能な社会」の実現に向けて、現在、様々な社会課題やお客様の課題が生まれており、こうした課題への解決策を提供できるオートメーションの役割が拡大、需要が増加しております。長期目標達成に向けた第一期間である前中期経営計画(2021~2024年度)は、コロナ禍を経ての顧客ニーズ、ライフスタイルの変化、インフレやグローバルサプライチェーンの課題等、事業を取り巻く環境が大きく変化する中での取組みとなりましたが、こうした需要の拡大、事業機会の増加を的確に捉えることで、2021年5月の計画公表時の業績目標を上回る成果をあげることができました。当社グループでは、第二期間となる新中期経営計画(2025~2027年度)においても、引き続き、オートメーションに求められる役割の拡大を事業機会として、当社グループならではの技術・製品・サービスを活かし、お客様の施設・設備のライフサイクルにわたって価値を提供することで持続的な成長を目指してまいります。
新中期経営計画初年度である2025年度の当社グループを取り巻く事業環境は、グローバルでの地政学的リスク、米国相互関税による産業・経済への影響からインフレの継続、人件費等のコスト上昇等、不確実性が高まっておりますが、空調制御機器・システムに関する需要は引き続き堅調であり、工場・プラント等の生産設備に関する需要につきましても、PA市場での堅調さに加え、FA市場において緩やかな市況回復が見込まれます。
2026年3月期の連結業績予想につきましては、こうした事業環境の下、期首受注残の積み上がりを背景にBA、AA両事業において更なる成長を計画しますが、LA事業において、事業ポートフォリオ再構築の一環として2024年度においてアズビルテルスターの出資持分を他社に譲渡した影響から減収となり、グループ全体でも僅かながら減収となる見込みです。不確実性の高い米国関税政策の影響を当面織り込める範囲の前提においても、営業利益では引き続き増益を計画し、具体的には成長に向けた研究開発や設備、人的資本、DX推進等の投資に加えて、インフレによる影響を含め、人件費や各種コストの増加が見込まれますが、これまで進めてきた価格転嫁を含めた収益力強化施策の継続、DXによる業務効率化等により営業利益での増益を計画します。なお、経常利益につきましては、円高による影響等により前連結会計年度比同水準、親会社株主に帰属する当期純利益については、2024年度においてアズビルテルスターの出資持分譲渡による売却益の計上等があったことから減益を見込んでおります。
BA事業では、都市再開発計画や更新計画に基づく大型建物向けの空調制御機器・システムの販売からサービスまで、国内需要が引き続き堅調に推移しております。また、海外における需要も堅調です。こうした事業環境を背景に、着実に事業を進めることで、豊富な受注残を売上高へと転化し、前連結会計年度比増収を見込みます。セグメント利益につきましても、外注費の増加や成長のための人件費、DX関連費用等の増加がありますが、増収並びに受注時採算性の改善、適正な価格転嫁の取組みなどにより前連結会計年度比で増益を見込みます。
AA事業では、PA市場が引き続き堅調に推移することに加え、FA市場で在庫の調整も進みつつあり、期中での需要回復が見込まれます。このPA、FA両市場における需要の拡大を確実に捉えることで、増収を見込みます。セグメント利益についても、部材価格高騰によるコスト上昇や人件費の増加を見込みますが、増収及び価格転嫁を含めた収益力強化施策の効果により前連結会計年度比で増益を計画します。
LA事業では、ガス・水道メーター等のライフライン分野で、LPガスメーターの需要回復等、法定による交換需要を着実に取り込むとともに、SMaaS(Smart Metering as a Service)関連市場の開拓を進めることで増収を見込み、住宅用全館空調システム分野も伸長を見込んでおりますが、2024年度の売上高の約3分の1を占めていたアズビルテルスターの出資持分譲渡による影響から、LA事業全体としては減収を見込みます。セグメント利益につきましても価格転嫁を含めた収益力強化施策の効果等によりライフライン分野で利益の改善を見込みますが、アズビルテルスターの出資持分譲渡による影響から前連結会計年度比減益となる見込みです。
なお、業績予想等は、当社が現時点で入手可能な情報と合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績は様々な要因により異なる可能性があります。
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(単位:億円) |
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2025年3月期 実績 |
2026年3月期 見通し |
増減 |
増減率 |
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ビルディング |
売上高 |
1,487 |
1,530 |
42 |
2.8% |
|
セグメント利益 (利益率) |
243 (16.4%) |
250 (16.3%) |
6 (△0.0pp) |
2.6%
|
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アドバンス オートメーション事業 |
売上高 |
1,068 |
1,110 |
41 |
3.9% |
|
セグメント利益 (利益率) |
159 (15.0%) |
170 (15.3%) |
10 (0.3pp) |
6.3%
|
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ライフ |
売上高 |
466 |
345 |
△121 |
△26.0% |
|
セグメント利益 (利益率) |
11 (2.5%) |
10 (2.9%) |
△1 (0.4pp) |
△14.6%
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その他 |
売上高 |
0 |
1 |
0 |
68.1% |
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セグメント利益 (利益率) |
△0 (△62.5%) |
0 (0.0%) |
0 (62.5pp) |
-
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連結 |
売上高 |
3,003 |
2,970 |
△33 |
△1.1% |
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営業利益 (利益率) |
414 (13.8%) |
430 (14.5%) |
15 (0.7pp) |
3.6%
|
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|
経常利益 |
421 |
422 |
0 |
0.1% |
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親会社株主に帰属 する当期純利益 (利益率) |
409 (13.6%) |
310 (10.4%) |
△99 (△3.2pp) |
△24.3%
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③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
azbilグループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況、② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおり健全な財務基盤を維持し、必要な運転資金等への十分な流動性も確保しております。加えて、パンデミック、大規模な自然災害の発生等、不測の事態でも事業を継続し、供給責任を果たすことのできる強固な財務基盤を引き続き維持しております。また、安定的な外部資金調達能力の維持向上のため、当社グループは格付投資情報センターより発行体格付「シングルA+(安定的)」を取得して社債発行枠200億円を設定するとともに、コマーシャル・ペーパーについて格付「a-1」を取得して発行枠200億円を設定しております。さらには、複数の金融機関との間で合計100億円のコミットメントラインを設定し、緊急時の流動性を確保しております。あわせて、国内子会社については親会社を通じたキャッシュ・マネジメントにより、資金調達の一元化と資金効率化、流動性の確保を図るとともに、海外の一部地域においても域内でのグループファイナンスを実施しております。
当社グループの資金需要としましては、営業活動上の運転資金に加えて、設備投資及び研究開発のための資金や配当支払いなどを見込んでおり、主に営業活動によるキャッシュ・フローや内部資金のほか、一部借入による資金調達も行っております。借入による資金調達に関しましては、主に短期借入金で調達しておりますが、当連結会計年度末現在で短期借入金の残高は48億6千2百万円で、前連結会計年度末に比べて26億6百万円減少しております。
他方、営業活動によるキャッシュ・フローや内部留保を含めた資本を活用し、持続的な成長の実現や事業基盤の整備・強化に向けて、国内外生産拠点の再編・拡充をはじめとする設備投資や技術革新に対応した研究開発、サービスの高付加価値化や事業の効率化に必要なDX等への投資を実現しております。当連結会計年度の設備投資の総額は98億3千9百万円、研究開発費の総額は127億2千6百万円となりました。今後につきましても、成長に向けた商品・サービスの拡充、先進的なグローバル生産・開発の構造改革等、事業基盤の強化・拡充に注力するとともに、M&Aといった将来の成長投資を進めてまいります。
株主還元につきましては、経営の重要課題の一つと位置付けており、連結業績、純資産配当率(DOE)・自己資本当期純利益率(ROE)等の水準に加え、上記の成長投資及び健全な財務基盤の確保のための内部留保等を総合的に勘案し、配当水準の向上に努めつつ安定した配当を維持していきたいと考えております。詳細は「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご確認ください。
④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、株主価値増大に向けて連結ROE(自己資本当期純利益率)の向上を基本的な目標としており、2021年5月14日に策定した2030年度をゴールとする長期目標を、売上高4,200億円、営業利益650億円、営業利益率15.5%、ROE15%を目標として2025年5月13日に上方修正いたしました。前中期経営計画期間での収益力強化の取組みの成果を活かし、長年にわたる顧客基盤との強い関係を基にした事業に加えて、成長領域の開拓で更なる成長を目指しております。
この長期目標達成に向け、前中期経営計画の最終年度となる2024年度では、事業収益力の強化を進め、売上高3,000億円、営業利益375億円、営業利益率12.5%、ROE12.2%を計画し、実績として、売上高3,003億円、営業利益414億円、営業利益率13.8%、ROE17.9%を達成しました。
これを踏まえ、2027年度を最終年度とする3ヵ年の新中期経営計画では、最終年度の売上高3,400億円、営業利益を510億円、営業利益率15.0%、ROE14%を達成することを目標としております。
当社は、当社の連結子会社であるアズビルテルスター有限会社の出資持分の全てを、Syntegon Technology GmbHの 100%子会社に譲渡することに合意のうえ、2024年6月6日(中央ヨーロッパ時間)に決定・契約締結しました。
なお、当該持分譲渡については2024年10月31日(中央ヨーロッパ時間)に実行しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
オートメーション技術を基軸として、オフィス環境の変化、設備・装置の性能向上、カーボンニュートラル実現といった様々な変化を迅速に捉えて、研究開発基盤を強化しております。
具体的には、システム・クラウド、人工知能(AI)、アクチュエータ、デバイス分野の一層の強化を行っております。
・システム・クラウド
最新技術を取り入れた生産空間・居住空間・生活空間のデジタル化による制御領域の拡大
・人工知能(AI)
生成AIを含めた人工知能・データ活用による自律化システムの実現
・アクチュエータ
全事業で用いられるアクチュエータ技術・商品への蓄積されているノウハウ・知見の活用
・デバイス
MEMS※1開発力を強化するために新たなクリーンルームを増強※2し、計測の高度化を実現する量の計測から質の計 測への転換
※1 MEMS(Micro Electro Mechanical Systems):センサ、アクチュエータ、電子回路を一つの基板の上に微細加工技術によって集積した機器。
※2 藤沢テクノセンター内に新たなクリーンルームを設置(2022年に竣工)
これらの基盤技術を組み合わせることで、データセンタ等の新たな市場や技術革新が常に求められる半導体市場等の成長事業での顧客層を拡大するとともに、既設改修・サービス事業等の基盤事業での持続性、収益性を向上させます。また、成長事業から基盤事業に、そして新たな成長事業に、というサイクルを回し続けることで、持続的な事業の拡大を目指します。
グローバル開発体制といたしましては、米国のシリコンバレーに設置した研究開発拠点及びシンガポールに設置した研究開発拠点による、顧客視点を重視した技術・商品開発を行っております。
・米国の開発拠点においては次世代計測技術を実現する技術開発の推進、IoT等の最新の技術動向調査や国際標準活動、及びAIを用いた技術開発の取組みなど、現地大学やスタートアップ企業と連携して共同研究を行っております。
・シンガポールの研究開発拠点においては、日本の研究開発機能との連携を強化し、現地市場との距離の近さを活かして迅速なアプリケーション開発やテストマーケティングを実現しております。
技術開発の基盤強化としては、計測の「正しく測る」を確認するために温度・湿度・電気・圧力・真空・微小液体流量・気体流量・時間(周波数分野)で校正を行い、その基準となる計測器や発生器の物理標準を高精度に管理しております。
また、人が直接見て触る商品のインターフェースや居住空間や生産現場に置かれる機器では、本質的な機能を担保しながらも、働き方や暮らしの変化に応じたデザインへの変革を行っております。
生産技術といたしましては、多品種少量生産に対応するために、ITを活用し適切な生産情報をタイムリーに生産設備に送信して適切な指示を可能にする組み立ての高度化や品質の見える化を行っております。また、IT技術による生産DXや、これまで製品系列別で利用してきた生産管理システムにおいて、製品特性を考慮して基幹システムと連携する全体最適化システムを構築していく生産LX(Legacy Transformation)の取組みも実施しております。
生成AIの活用を積極的に進めており、社員向け汎用AIチャットボットを導入、活用推進を進めております。また、特定の用途向け生成AIサービスの展開も行っており、一例として独自に開発した“生成KY(危険予知)”で、サービススタッフの支援をするなど、業務効率化に活用しております。
当連結会計年度の研究開発費の総額は12,726百万円(売上高比4.2%)となりました。
各セグメント別の研究開発費及び主な成果は、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
研究開発費 (百万円) |
主な成果(プレスリリースされたもの) |
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ビルディングオートメーション事業 |
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再生可能エネルギー由来電力の活用最大化に貢献 - 読売新聞ビルへの再エネ電力スキーム導入事業に参画 -(2024/12/16) |
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アドバンスオートメーション事業 |
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AIを活用した「予兆保全」を実現する設備管理プラットフォーム、BiG EYES MMを販売開始(2024/12/25)
AIを活用した品質ナビゲーションシステム Deep Anchor™を販売開始(2025/1/15) |
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ライフオートメーション事業 |
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azbilグループの技術研究報告書『azbil Technical Review』を発行- 「持続可能な社会に貢献するオートメーション技術」を特集テーマに、12編の論文を掲載 -(2024/4/11)
アズビルとマレーシア工科大学が包括的な協働関係強化について覚書を締結(2024/7/10)
公益社団法人 計測自動制御学会から、小型プログラマブルジョセフソン電圧標準装置の導入について「技術賞」、ディマンドリスポンス・モニタ SORTiA™-Demand Response、マスフローコントローラ 形F4Q、ネクスフォート™DDの3製品で「新製品開発賞」を受賞(2024/10/31)
太陽光発電×蓄電池を組み合わせたオフサイトコーポレートPPAサービスの実証を開始 - クリーンエナジーコネクト社との共同実証 -(2025/2/17)
横浜市との都市型ディマンドリスポンス構築に向けた協定を締結 - 脱炭素先行地域におけるグリーントランスフォーメーション(GX)推進支援 -(2025/3/19) |
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