第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在ではなく、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが入手し得る情報に基づいて判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

当社グループは、理念体系にある経営理念、ビジョン、行動指針に基づき、新しい価値創造へのこだわりと挑戦を続けるとともに、お客様の期待に応える商品やサービスの提供をはじめとして、ステークホルダーとの約束を実現することを事業運営における基本方針としております。当社グループは、経営理念、ビジョン、行動指針の実践を通じて、社会課題の解決に貢献する新たな価値を共創によって生み出しグローバルトップのソリューションパートナーを目指してまいります。

 


 

(2)経営環境

当社グループの各報告セグメントの経営環境についての認識は、次のとおりであります。

 

(リテールソリューション事業)

当社の顧客である流通小売業においては、消費者の行動変化によるネットショッピングや決済手段の多様化への対応、生産性向上のためのデジタルトランスフォーメーション(DX)対応、人手不足に対する省人化対応、店舗内メディアを活用した販売促進利用等の様々なニーズに加え、廃棄ロス・販売機会ロスの削減、環境負荷の低減等の多様な社会課題を解決するソリューションが求められております。

当事業においては、国内外に幅広く顧客基盤及び販売網を有し事業を展開しておりますが、競合他社との競争激化が続く厳しい事業環境にあります。

 

(ワークプレイスソリューション事業)

オフィス向けプリンティング市場は、新型コロナウイルス感染拡大による印刷量の急激な減少から回復傾向にあるものの、それ以前から続くペーパーレス化の進展は継続しており、世界市場全体では今後も緩やかな減少傾向が続くと見込まれます。

また、働き方改革に伴うリモートワークの拡大に加え、オフィスや現場におけるさまざまな業務のデジタル化ニーズが顕在化しており、当社の顧客各社は、DX需要を成長分野と位置付けて、情報技術(IT)を使ったソリューションの開発・提供に力を入れております。

当事業においては、国内外に幅広く販売網を有しておりますが、需要の鈍化や競合他社との競争激化が続くなど厳しい事業環境にあります。

 

(3)中長期的な経営戦略と目標

上記の経営環境下において、当社グループは、グローバルな顧客基盤、販売・保守網等のタッチポイントを活かし、①基盤事業の収益力強化、②成長事業の領域拡大、③経営変革・人財強化・サステナビリティ強化の取り組みに経営資源を重点的に配分します。それらの取り組みを通して、当社はグローバルトップのソリューションパートナーを目指してまいります。各報告セグメントにおける具体的施策は、以下のとおりであります。

 

(リテールソリューション事業)

流通業界における省人化ニーズへの高まり、DXの推進及び競合企業のポートフォリオ再編等の事業環境の変化は、当社グループが社会に貢献できる大きな事業機会に繋がっております。これらの事業機会に対して、圧倒的なグローバル顧客基盤を活用した「マーケットイン発想」の事業構想と実行及び「業界トップのグローバルプレイヤーならではの充実した戦略的パートナーシップ」により、当社ならではの高収益新規事業拡大を加速し、収益性の向上を図ります。

・基盤事業の収益力強化

グローバル共通のハードウェア開発・製造共通化により収益力強化を目指します。国内・海外ともに機能を拡充してきたグローバルリテールプラットフォーム「ELERA」によるデータ活用ソリューションビジネスを本格的に拡大してまいります。加えて、グローバルに展開された保守網を活用し、当社の機器だけでなく他社のIT機器をカバーするマルチベンダー保守サービス等の高付加価値サービスを提供することで、小売業の抱える人材不足の解消に貢献し、収益拡大を図ります。

・成長事業の領域拡大

強みであるタッチポイントを起点にデータビジネス事業ドメインを従来の小売業から、決済業者、物流業、広告、メーカー・卸に拡大しデータのバーティカルインテグレーションを図ります。これを実現するため、当社は、生成AI等の高度技術を活用し、POSデータを起点に業種を横断した課題解決を行う完全子会社ジャイナミクス㈱を2024年10月1日付で設立し、体制強化をいたしました。また、当社は、今後さらに重要度を増すソフトウェア開発において、事業部門横断のグローバル連携を強化すべく、ソフトウェア開発センターを2025年4月1日付で新設いたしました。このような取り組みを通して、新規事業におけるサービス・ソフトウェアの割合を拡大し、更なる収益力の強化を図ります。

 

 

(ワークプレイスソリューション事業)

当社及び㈱リコーは、複合機等の開発・生産を担う合弁会社であるエトリア㈱を2024年7月1日付で組成いたしました。さらに、2025年度においては、沖電気工業㈱のエトリア㈱への参画が予定されており更なる商品性競争力・コスト競争力向上が期待されます。今後は、競争力のある高品質・高付加価値商品ラインナップの拡充を図るとともに、成長領域への集中と提供価値の変革を加速させます。

・エトリア㈱による開発・生産の強化及び効率化(基盤事業の収益力強化)

オフィス向けプリンティング機器の開発・生産に関する三社の技術的な強みを持ち寄り、企画・設計開発機能の拡充を図ります。また、部品や材料の共同購買や生産拠点の相互活用を進めるとともに、地政学リスクの高まりに柔軟に対応するレジリエントなサプライチェーンの構築を進め、より一層強いものづくりの実現を目指します。

三社の保有するリソースをイノベーションの領域や個々の差異化領域により注力できるようにシフトし、競争力を高めて事業基盤の強化を図ります。さらに、パートナー戦略による文書管理システムソリューションや、当社が持つバーコードプリンタやRFID等を活用した自動認識技術を活かしたソリューション等の成長領域事業を加速してまいります。

 

当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高、営業利益、営業利益率(ROS)、親会社株主に帰属する当期純利益、営業活動によるキャッシュ・フロー、投下資本利益率(ROIC)であります。なお、当社は、2024年5月23日に公表した「中期経営計画(2024~2026年度)」において当該指標に関する目標値を定めておりますが、米国関税措置をはじめとする昨今の経営環境の変化を踏まえ、目標値の見直しを検討しております。目標値の見直しについて決定した場合には、速やかに開示いたします。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

上記の経営方針及び経営戦略を実行するに当たっては、各事業におけるバランスある利益の実現と長期的収益体制の構築が必要であり、その実現のために当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は、次の重要施策の実行を加速することであると認識しております。

・成長事業拡大の加速

リテールイノベーションへの積極投資として、購買体験・店舗の変革需要の高まりを支援するための投資拡大を実施いたします。

成長事業拡大の加速を支える4つの取り組みとして、ソフトウェア開発体制強化、グローバルリテールプラットフォーム「ELERA」の進化、データを利活用した新たな価値の創出、パートナー連携強化を実施いたします。

・高付加価値ビジネスへの移行

リテールソリューション事業において、より付加価値の高いソリューションサービスへのシフトを進めることにより、収益性の拡大を目指します。

・グローバルリテールソリューション事業の競争力強化

保守サービスの拡大、「ELERA」を軸としたソリューションビジネスの拡大を通して、既存顧客の維持及び新規顧客の獲得、さらに収益性の高いリカーリングモデルにシフトしてまいります。

・ワークプレイスソリューション事業の更なる収益性回復

エトリア㈱の組成及び同社への沖電気工業㈱の参画により、強靭でスリムなオペレーション体制の構築を進めるとともに、ソリューションの競争力を高めることで更なる収益性向上を目指します。

 

また、上記の重要施策に加え、外部環境の変化による経営への影響を低減するため、これまで実施した構造改革の効果を継続的に維持することに加え、更なる業務の効率化や間接経費のコントロール、製造原価改善等のコスト削減施策とともに、市場動向を踏まえた売上拡大施策を実施いたします。

 

(5)次期の見通し

今後の世界経済は、物価上昇や地政学的リスク等の影響を引き続き受けるとともに、米国の新しい関税措置等により大きく動揺し、景気の先行きを見通せない厳しい状況が続くものと予想されます。

このような状況下で、当社グループは、「社会課題の解決に貢献する新たな価値を共創によって生み出し、グローバルトップのソリューションパートナーへ」の基本方針の下で、持続的な成長の実現に向けて、各種施策の実行にグループ一丸となって取り組む所存でございます。

具体的には、当社のフィジカルアセットであるグローバルな顧客基盤と営業・保守網を活かし、パートナーとの共創によりエコシステムを構築し付加価値の高いソリューションの提案を進めることで、社会課題の解決に貢献するとともに、企業価値向上を目指してまいります。

また、当社は、米国関税措置等の影響により、相当額のコストアップが見込まれることに加え、米国を中心に各国の市況も不透明なことから、現時点において今後の業績を見通せておりません。当社は、販売価格の改定やサプライチェーン体制の再検討といった諸施策に取り組むことなどにより、米国関税措置等の業績への影響を抑制してまいります。

なお、当社は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象) (事業セグメント区分の変更)」に記載のとおり、2025年4月1日付で従来ワークプレイスソリューション事業に含めておりました国内市場向け複合機に関する事業をリテールソリューション事業に移管しております。

 

2025年度(第101期)における各報告セグメントの主要施策は、次のとおりであります。

 

(リテールソリューション事業)

主力商品である国内及び海外市場向けPOSシステム、国内市場向け複合機、国内市場向けオートIDシステム、並びにそれらの関連商品の拡販と、顧客のDXを推進するトータルソリューションの提供を行ってまいります。さらに、グローバルリテールプラットフォーム「ELERA」、当社の子会社であるジャイナミクス㈱に代表される生成AI活用サービス及び戦略的パートナーシップによる高付加価値のソリューションビジネスの拡大、地域に即した営業・マーケティングの展開、リカーリングビジネスの強化、販売サービス網の最適化を通して既存事業を強化するとともに、新規事業を加速し収益力の向上を図ってまいります。

 

(ワークプレイスソリューション事業)

主力商品である海外市場向け複合機、海外市場向けオートIDシステム、並びにそれらの関連商品の拡販と、幅広い商品群・マーケットを活かしたトータルソリューションの提供を行ってまいります。同時に、地域に即した営業・マーケティングの展開、販売サービス網の最適化、新興国事業の強化等により、強靭でスリムなグローバル・オペレーション体制を構築し、収益体質の強化に努めてまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス及びリスク管理

当社グループでは、持続的成長と企業価値向上を実現し、社会課題の解決に貢献するため、サステナビリティ推進体制を強化しており、代表取締役社長がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任を、サステナビリティ推進責任者が全社的なサステナビリティ経営推進の実行責任を有しております。

当社グループでは、全社的なリスク管理は、半期に1回の頻度で開催されるリスク・コンプライアンス委員会において行っておりますが、サステナビリティに関するリスク及び機会の識別、評価、優先順位付けについては、代表取締役社長が議長を務める経営会議の中でより詳細な検討を行い、共有しております。

サステナビリティに関する重要な課題、特に当社グループの経営に影響を及ぼすリスク及び機会に係る重要な課題については、経営会議において対応方針及び実行計画等が協議・決議されるとともに、取締役会にも報告されます。

なお、気候変動を含む環境関連の課題への対応方針や実行計画等については、代表取締役社長が責任者である「地球環境会議」においても議論されております。本会議は半期に1回の頻度で開催され、各事業部門の環境経営責任者、環境推進責任者、コーポレートスタッフ関係部門長及びサステナビリティ・環境戦略室が参画しております。

取締役会は、サステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限を有しており、経営会議で協議・決議された内容の報告を受け、当社グループのサステナビリティに関するリスク及び機会への対応方針及び実行計画等についての討議・監督を行っております。また、取締役会において討議された対応方針及び実行計画等は、当社グループの経営戦略に反映されるとともに、経営会議においてその進捗管理が行われ、定期的に取締役会にも報告されております。

 

(2)戦略並びに指標及び目標

当社グループは、理念体系に基づき、サステナビリティに関する基本方針を定めており、その内容は次のとおりであります。

 

東芝テックグループ サステナビリティ基本方針

東芝テックグループは、「ともにつくる、つぎをつくる。~いつでもどこでもお客様とともに~」という経営理念に基づき、社会の一員として持続可能な社会の実現を目指します。

この社会の実現のために、私たちは事業活動において環境への配慮を優先し、高い倫理観と遵法の精神をもち、各国及び地域社会に対する責任を果たすと共にその文化・歴史を尊重します。

また、お客様にとっての価値創造を原点に発想し、積極的な投資に努め、透明性の高い経営により持続的な企業価値の向上を目指します。

 

当社グループは、上記の基本方針の下でサステナビリティ経営の推進を図るべく、上記(1)のガバナンス及びリスク管理を通して、環境・社会・ガバナンスの3つの視点からなる10項目の重要課題(マテリアリティ)を特定するとともに、各マテリアリティに対するKPI(Key Performance Indicator)並びに各KPIの数値目標及び目標達成のための施策を設定しております。

<マテリアリティ>

環 境

社 会

ガバナンス

・気候変動への対応

・循環経済への対応

・生態系への配慮

・人材の確保・維持・育成

・従業員の安全健康

・人権の尊重

・持続可能な調達活動の推進

・イノベーション創出のための

研究開発の強化

・ガバナンスの強化

・サイバーレジリエンスの強化

 

上記に加え、気候変動への対応、人権の尊重、人的資本(人材の多様性を含む)に関しては、以下のとおり戦略並びに指標及び目標を定めております。

① 気候変動への対応

当社グループは、当社グループの事業に関わる気候変動関連のリスク及び機会を把握するためのシナリオ分析をセグメント別に実施しており、シナリオ分析で特定・評価されたリスク及び機会への対応策については、今後の事業戦略に活かしてまいります。

また、当社グループは、カーボンニュートラルの実現に向けて、2030年度の目標(対2019年度比較)を以下のとおり定めております。

・当社グループの事業活動による温室効果ガス排出量を100%削減

(注)カーボン・クレジットの購入を含めた目標、カーボン・クレジットの購入を除いた場合の目標は97%削減に設定

・当社グループが販売する製品・サービスの電力使用による温室効果ガス排出量を28%削減

また、当社グループは、東芝グループ「環境未来ビジョン2050」に基づき、「気候変動への対応」「循環経済への対応」「生態系への配慮」と「事業別KPI」の分野からなる環境アクションプランを策定し、年度ごとの目標値を設けて活動を推進しております。

 

② 人権の尊重

当社グループは、人権に対する姿勢や取り組みをより明確化するため、理念体系及びサステナビリティ基本方針を補完する位置付けとして「東芝テックグループ人権方針」を定め、当社ウェブサイトで公表し、国内及び海外の子会社を含む全ての従業員に周知しております。さらに、人権尊重の意識を高めるため、ビジネスにおける人権リスク、ハラスメント撲滅、差別の禁止に関する社内教育を継続的に実施しております。

また、当社グループは、事業展開する業界や国のバリューチェーンにおける人権リスクを特定し、事業領域ごとの人権リスクの把握も行っております。今後、特定されたリスクに対する改善・救済活動と、継続的な人権リスクの特定、評価及び改善・救済活動を推進してまいります。

 

③ 人的資本(人材の多様性を含む)

1)人財育成

当社グループは、「社員一人ひとりを尊重し、それぞれの能力向上に努め、公正かつ適切な評価・処遇を実践する」ことを経営理念に掲げるとともに「目指す人財像」を定め、会社の成長・発展のために「挑戦し続ける強いプロ集団」を形成する競争力に優れた有能な人財を、計画的に確保・育成し続けることを目指しております。そのために、個人のキャリア自律を支援するキャリア支援制度、多角的な視野を獲得するための社外留職(レンタル移籍)制度、経営幹部・グローバル人財育成のための各種研修制度・教育体系の整備を進めるとともに、公正かつメリハリのある人事処遇制度を構築することで、従業員が個々の多様な能力を発揮して活躍できる環境を整えております。

 

2)ダイバーシティマネジメントの推進

当社グループは、性別・年齢・国籍等に捉われることなく、キャリア採用者を含めた多様な人財を活かすことが、イノベーションの創出と市場変化や想定外課題へ応変する力の涵養、更にはグローバル競争力を高めることにつながると考え、多様な人財の確保・活用に努めております。

そのため、当社は、女性役職者比率、新卒女性採用比率、男性育児休業等取得率の将来目標を掲げ、その達成を目指すとともに、留学生採用、海外志向の高い学生を採用するグローバル総合職採用、キャリア採用を積極的に実施するなど、多様な人財の確保・活用に取り組んでおります。

<多様性確保の状況>(2025年3月末実績)

・女性役職者比率   :6.2%

・新卒女性採用比率  :41.1%

・男性育児休業等取得率:29.5%

・外国籍従業員    :24名

・キャリア採用者   :47名(2024年度)

 

<2027年度目標>

・女性役職者比率   :8.5%

・新卒女性採用比率  :35%

・男性育児休業等取得率:前年度以上

(注)上記の指標に関するデータ管理及び具体的な取り組みは、当社では行われているものの、当社グループに属する全ての会社では行われていません。このため、上記の指標に関する実績及び目標は、当社グループにおいて主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

また、当社グループは、ダイバーシティ経営を経営戦略の根幹と捉え、経営幹部のコミットメントの下、人財戦略ビジョン『全ての事業領域で、顧客価値の創造に資する人財と組織力があり、一人ひとりがプロとして「互いを尊敬し」強い「信頼関係」で結ばれている』の実現に向けて、「働き方改革の実現で創造性・生産性向上」、「成長と変化を生み出す多様な自律人財の活躍」、「ともにつぎを目指せる働きがいある組織風土の醸成」を進めております。そのための具体的な取り組みとして、女性活躍推進、女性比率向上に向けた採用活動、外国籍従業員の採用・活躍推進、若手抜擢の推進、障がい者雇用推進、ワーク・スタイル・イノベーション、シニア活躍推進といった各種施策を実施しております。

 

なお、戦略並びに指標及び目標に関する詳細な情報については、下記の当社ウェブサイトに掲載している「統合報告書 2024」をご参照下さい。また、2025年8月には、最新の情報を記載した「統合報告書 2025」を下記ウェブサイトに掲載する予定ですので、併せてご参照下さい。

https://www.toshibatec.co.jp/company/csr/report/

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している特に重要なリスク及びその他の主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループは、万全なリスク管理体制により、このようなリスクの発生を回避するとともに、事業継続計画(BCP)の整備等により、リスク発生時における影響の極小化に最大限努めてまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、原則として、当連結会計年度末現在において当社グループが入手し得る情報に基づいて判断したものであります。

 

(特に重要なリスク)

(1)リテールソリューションの事業環境

当事業における市場の状況は、顧客である大手流通小売業において、店舗運営効率化や顧客の購入形態の多様化、コロナ禍以降の販売形態の変化等に伴い、セルフレジをはじめとする店舗従業員との接触を抑えた形のチェックアウト機器や、ソフトウェア及びサービス分野への投資比重が増えております。このような市場構造の変化により、従来型のハードウェアPOSへの投資優先度が低下傾向にあることや、独立系ソフトウェアメーカー及び大手ソリューションベンダーとの競合が厳しくなることから、当社製品の販売に影響が及ぶ可能性があります。

当社グループは、当該リスクを最小限に抑えるべく、グローバルリテールプラットフォーム「ELERA」の拡販等により、収益の改善を目指してまいります。なお、具体的な施策等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。

 

(2)ワークプレイスソリューションの事業環境

当事業は、コロナ禍以降の働き方の変化によりコア事業であるオフィス領域での需要減少傾向が継続するリスクがあります。当該リスクが顕在化した場合には、複合機の販売台数の減少や保守サービスの売上減少等により、当事業の収益が悪化する可能性があります。なお、当該リスクに対する具体的な施策等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。

 

 

(その他の主要なリスク)

(1)新事業開拓・新商品開発

当社グループは、先端的なエレクトロニクス技術、システム・ソフトウェア技術等を活用して顧客ニーズに応えてまいりました。引き続き、新たな事業の形成に至る新技術や、各国の環境保護規制に対応する新技術等、積極的に新事業開発や新商品開発への対応に努めてまいりますが、これらに関しては不確実要素も多々あり、想定外の事項の発生が、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)世界情勢

当社グループは、グローバルに事業を展開しておりますが、各地域の政治・経済情勢の変化や各種の規制、急激な為替レートの変動等が、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

特に、2025年度は、物価上昇や地政学的リスクに加え、米国関税措置等の影響により相当額のコストアップが見込まれ、さらに、米国を中心に各国の市況も不透明なことから、先行きを見通せない厳しい状況が続くものと予想されます。当社グループは、販売価格の改定やサプライチェーン体制の再検討といった諸施策に取り組むことなどにより、米国関税措置等の業績への影響を抑制してまいります。

 

(3)大規模災害等

当社グループは、グローバルに販売・サービス、生産・調達拠点を有しておりますが、それぞれの地域において大規模災害、テロ、感染症等が発生した場合、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)グローバル生産体制

当社グループは、安定的な製品供給及びコスト競争力確保のために、日本、シンガポール及びインドネシア等、地域的に分散したリスク対応を図っておりますが、為替影響、紛争等の地政学問題が当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、これらのリスクに備えるために、あらゆる視点からグローバル生産体制の検討を実施しております。

 

(5)品質問題

当社グループは、製品の設計・部品調達・製造・試験・検査等全ての部門で品質及び安全性の検証体制を構築し、最新・最良の技術で優れた商品を提供することに注力しております。また、保守を伴う事業を展開しており、点検等により製品の品質と安全にかかわる大きな問題発生を未然に防ぐ努力をしております。しかしながら、システム・ソフトウェア対応の増大及び製品機能の高度化に伴う不確実要因等、開発・製造・保守サービスの一連のプロセスにおいて、想定外の品質問題発生もあり得るため、これらが当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)コンプライアンス・内部統制関係

当社グループは、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に係る法令等の遵守並びに資産の保全という観点から内部統制システムの充実に努めております。コンプライアンスについては、グループ共通の行動規範として「グループ行動基準」を制定し、従業員一人ひとりがこの行動基準を遵守し、法令・社会規範・倫理に則した行動を行うよう、周知徹底に取り組んでおります。また、「リスク・コンプライアンス委員会」を設置し、この委員会の統括下でコンプライアンスの徹底にグループ一体となって取り組んでおります。

しかしながら、コンプライアンスを始めとした内部統制システムには一定の限界があるため、その目的の達成を完全に保証するものではありません。このため、将来において法令違反等が生じた場合は、当社グループ業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

補足事項(元従業員による不正行為について)

当社は、2025年2月18日付で、当社の従業員1名が、架空の受注計上により、私的着服を目的に物品を受領し転売していた事実を確認した旨を公表いたしました。本件は組織的な不正ではなく、元従業員個人による不正事案であり、内部統制の重要な不備には当たらないと判断しております。ただし、業務プロセスに係る内部統制の一部に是正すべき事項があると考えており、当社は、再発防止に向けて、業務プロセスの見直しやコンプライアンス教育など内部管理体制の一層の強化に努めてまいります。

 

(7)情報セキュリティ

当社グループは、技術情報、営業情報、個人情報、会社の経営に関する情報等、事業遂行に関連する多数の情報を有しております。当社グループは、関連法令を遵守し、情報の漏洩防止に万全を期すために、情報の管理体制や適切な取り扱い方法等を定めた各種社内規程を制定するとともに、従業員教育、情報管理施策を継続して実行するなど、情報保護の徹底に努めております。また、サイバーセキュリティリスクへの対応強化策として、製品面、情報セキュリティ面各々につき、専門チームを設置しております。

しかしながら、予期せぬ事態により情報が流出し、第三者がこれを不正に取得、使用する可能性があり、このような事態が生じた場合、この対応のために生じる多額の費用負担や企業の信頼低下が当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの事業活動において情報システムの役割は極めて重要であり、当社グループは、情報システムの安定的運用に努めておりますが、コンピュータウイルス、サイバー攻撃、ソフトウェアまたはハードウェアの障害、災害、テロ等により情報システムが機能しなくなる可能性が皆無ではありません。

 

(8)退職給付債務等

当社グループは、退職給付債務については優良社債の利回りを考慮して計算しておりますが、社債利回りが現在の水準より低下する場合、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、年金資産は、企業年金設計上、相応の運用収益を期待して運用しておりますが、諸因により運用実績が悪化する場合は、当社グループ業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、従業員の定年後のライフプラン支援及び退職給付の多様なニーズへの対応を目的として、当社を含む国内グループ会社を対象に2015年10月1日から順次東芝グループ企業型確定拠出年金制度に加入いたしました。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが入手し得る情報に基づいて判断したものであります。

 

(1)経営成績
① 事業全体の状況

当連結会計年度の世界経済は、総じて緩やかな回復基調にある一方で、物価上昇や地政学的リスクの高まり等の影響により、依然として先行き不透明な状況が続きました。

このような状況下で、当社グループは、中期経営計画(2024~2026年度)の基本方針「社会課題の解決に貢献する新たな価値を共創によって生み出し、グローバルトップのソリューションパートナーへ」の下で、持続的な成長の実現に向けて、基盤事業の収益力強化、新規事業の領域拡大、経営変革・人財強化・サステナビリティ強化等の施策に取り組み、グローバルトップのソリューションパートナーを目指して社会課題解決への貢献に努めてまいりました。

売上高については、海外市場向けPOSシステムの売上が増加したことや為替の影響などから、5,770億23百万円(前連結会計年度比5%増)となりました。損益については、海外市場向けPOSシステムの損益が米州を中心に改善したこと、複合機が2024年10月以降の売上規模減少等により減益となったものの引き続き一定の利益を確保したことなどから、営業利益は202億51百万円(前連結会計年度比28%増)、経常利益は183億44百万円(前連結会計年度比67%増)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益については、事業構造改革費用を特別損失に計上したものの、当社グループの複合機及びオートIDシステムの開発及び製造に関する事業を当社と㈱リコーとの合弁会社であるエトリア㈱に、当社グループのインクジェットヘッド事業の全てを理想科学工業㈱の完全子会社である理想テクノロジーズ㈱に、それぞれ承継させたことに伴い、持分変動利益及び事業譲渡益を特別利益に計上したことなどから、299億37百万円(前連結会計年度は67億7百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

② 各報告セグメントの状況

(リテールソリューション事業)

国内及び海外市場向けPOSシステム、国内市場向けオートIDシステム、並びにそれらの関連商品等を取り扱っているリテールソリューション事業は、競合他社との競争激化が続く厳しい事業環境の中で、グローバルリテールプラットフォーム「ELERA」及び戦略的パートナーシップによるソリューションビジネスの拡大、リカーリングビジネスの強化、当社の機器だけでなく他社のIT機器をカバーする保守サービス(BPO)の拡充に加え、新規事業の領域拡大のための顧客基盤の拡大等に取り組んでまいりました。

国内市場向けPOSシステムは、原材料の高騰、物価上昇の影響により厳しい状況が続きましたが、セルフレジ、決済端末、「スマートレシート」等の拡販に注力し、製品価格、保守サービス価格の改定等の施策に取り組んだことなどから、売上は概ね前連結会計年度並みとなりました。

海外市場向けPOSシステムは、米州を中心に販売が増加したことや為替の影響により、売上は増加いたしました。

国内市場向けオートIDシステムは、特定顧客向けを中心にポータブルプリンタ等の販売が伸長しましたが、高級機種の販売が減少したことなどから、売上は減少いたしました。

この結果、リテールソリューション事業の売上高は、3,335億87百万円(前連結会計年度比7%増)となりました。また、同事業の営業利益については、国内市場向けPOSシステムの利益が為替によるマイナス影響を受けつつも前連結会計年度並みの水準を維持したこと、海外市場向けPOSシステムの損益が米州を中心に改善したことなどから、80億98百万円(前連結会計年度比260%増)となりました。

 

(ワークプレイスソリューション事業)

国内及び海外市場向け複合機、海外市場向けオートIDシステム、国内及び海外市場向けインクジェットヘッド、並びにそれらの関連商品等を取り扱っているワークプレイスソリューション事業は、働き方改革・オフィスのDX推進による印刷量の減少、競合他社との競争激化が続く厳しい事業環境の中で、基盤事業の収益力強化に注力し、MFPソリューション事業、オートIDソリューション事業及び顧客サポートビジネスの展開等に取り組んでまいりました。

なお、当社は、当社グループの複合機及びオートIDシステムの開発及び製造に関する事業をエトリア㈱に、当社グループのインクジェットヘッド事業の全てを理想テクノロジーズ㈱に、それぞれ2024年7月1日付で承継させました。複合機及びオートIDシステムについては、販売部門はエトリア㈱への承継対象に含まれておらず、当社グループの販売体制に変更はありませんので、当連結会計年度の売上への影響は僅少であります。一方、インクジェットヘッドについては、販売部門を含む全事業を理想テクノロジーズ㈱に承継させたため、2024年7月1日以降は、インクジェットヘッドに関する売上は当社グループの売上に含まれておりません。

複合機は、米州及びアジア等で販売が好調であったことや為替の影響により、売上は増加いたしました。

海外市場向けオートIDシステムは、全地域で販売が増加したことや為替の影響により、売上は増加いたしました。

インクジェットヘッドは、前記のとおり、その事業の全てを2024年7月1日付で理想テクノロジーズ㈱に承継させたことから、売上は減少いたしました。

この結果、ワークプレイスソリューション事業の売上高は、2,470億99百万円(前連結会計年度比2%増)となりました。また、同事業の営業利益は、これまでに実施してきた構造改革・構造転換による改善効果はありましたが、2024年10月以降の売上規模減少等により複合機の損益が悪化したことなどから、121億52百万円(前連結会計年度比11%減)となりました。

 

(注)オートIDシステムとは、ハード・ソフトを含む機器により、自動的にバーコード、ICタグ等のデータを取り込み、内容を識別・管理するシステムをいいます。

 

(2)生産、受注及び販売の実績

① 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

リテールソリューション

72,915

△13.9

ワークプレイスソリューション

35,909

△73.7

合計

108,825

△50.8

 

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.金額は、販売価格によっております。

3.ワークプレイスソリューション事業の生産実績が前連結会計年度と比べ大幅に減少した主な理由は、当社グループの複合機及びオートIDシステムの開発及び製造に関する事業をエトリア㈱に、当社グループのインクジェットヘッド事業の全てを理想テクノロジーズ㈱に、それぞれ2024年7月1日付で承継させたことによるものです。

 

② 受注実績
当連結会計年度におけるリテールソリューション事業の国内ストア・オートメーション向け「個別ユーザー対応物件」分野の受注状況は、次のとおりであります。
なお、他の分野においては、当社と販売会社との間で行う需給予測を考慮した見込生産を主体としているため、記載を省略しております。

区分

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

(リテールソリューション)
個別ユーザー対応物件

66,145

1.8

9,638

△0.9

 

(注)金額は、販売価格によっております。

 

③ 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

リテールソリューション

333,523

7.3

ワークプレイスソリューション

243,499

2.6

合計

577,023

5.3

 

(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(3)財政状態

当連結会計年度における資産は、前連結会計年度に比べ88億62百万円増加し、3,463億71百万円となりました。これは主に、流動資産の「受取手形、売掛金及び契約資産」が51億9百万円、「仕掛品」が14億71百万円、「原材料及び貯蔵品」が48億17百万円、「その他」が34億63百万円、有形固定資産の「工具、器具及び備品(純額)」が12億89百万円、「建設仮勘定」が11億56百万円、投資その他の資産の「退職給付に係る資産」が14億22百万円減少しましたが、流動資産の「商品及び製品」が13億12百万円、投資その他の資産の「投資有価証券」が265億62百万円、「その他」が16億2百万円増加したことによるものであります。

負債は、前連結会計年度に比べ105億86百万円減少し、2,306億86百万円となりました。これは主に、流動負債の「1年内返済予定の長期借入金」が12億57百万円、「未払法人税等」が16億34百万円、「前受収益」が14億76百万円増加しましたが、流動負債の「支払手形及び買掛金」が14億78百万円、「未払金」が45億39百万円、「その他」が52億39百万円、固定負債の「退職給付に係る負債」が35億98百万円減少したことによるものであります。

純資産は、前連結会計年度に比べ194億48百万円増加し、1,156億85百万円となりました。これは主に、「利益剰余金」が配当金の支払いにより23億82百万円、「為替換算調整勘定」が57億68百万円、「退職給付に係る調整累計額」が21億円、「非支配株主持分」が5億62百万円減少しましたが、「利益剰余金」が親会社株主に帰属する当期純利益により299億37百万円増加したことによるものであります。

 

(4)キャッシュ・フロー

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度と比べ92億円増加となりましたが、連結除外に伴う現金及び現金同等物の減少額98億48百万円となったことから、479億33百万円となりました。

なお、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは148億98百万円の収入となりました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動については、税金等調整前当期純利益425億74百万円であり減価償却費174億89百万円、仕入債務の増加額が101億85百万円となった一方で、持分変動利益が211億51百万円、事業譲渡益が56億54百万円その他76億78百万円法人税等の支払額80億90百万円となったことなどから248億86百万円の収入(前連結会計年度は194億11百万円の収入)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動については、事業譲渡による収入67億50百万円となりましたが、有形固定資産の取得による支出137億4百万円無形固定資産の取得による支出32億41百万円となったことなどから、99億87百万円の支出(前連結会計年度は161億35百万円の支出)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動については、長期借入れによる収入86億83百万円となりましたが、ファイナンス・リース債務の返済による支出38億65百万円長期借入金の返済による支出72億23百万円配当金の支払額23億81百万円となったことなどから、57億39百万円の支出(前連結会計年度は36億24百万円の支出)となりました。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

 

当社グループの運転資金は、主に製品製造に係る原材料や部材の調達のほか、製造費、販売費及び一般管理費等に計上される財・サービスに費消しております。設備投資資金は、有形固定資産や無形固定資産の取得、投資等に費消しております。

これらの必要資金は、当社グループ内の内部留保による確保、及び資産の圧縮や資産効率の向上により創出される自己資金を基本として流動性を確保しつつ、必要に応じて金融機関等からの資金調達を実施してまいります。

 

 

(5)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因や当該事項への対応については、上記「(1)経営成績」から「(4)キャッシュ・フロー」まで、並びに「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」及び「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しているとおりであります。

当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高、営業利益、営業利益率(ROS)、親会社株主に帰属する当期純利益、営業活動によるキャッシュ・フロー、投下資本利益率(ROIC)を掲げております。

当連結会計年度においては、売上高は5,770億23百万円、営業利益は202億51百万円、営業利益率(ROS)は 3.5%、親会社株主に帰属する当期純利益は299億37百万円、営業活動によるキャッシュ・フローはプラス248億86百万円、投下資本利益率(ROIC)は9.6%となりました。

 

(6)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり、当社グループが採用している重要な会計処理基準は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しているとおりであります。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは次のとおりであります。

なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、より重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 

① 債権の回収可能性

当社グループは、売掛金、販売金融債権及び貸付金その他これらに準ずる債権の貸倒に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。将来、債権の相手先の財務状況がさらに悪化して支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。

 

② 棚卸資産の評価減

当社グループは、商品、製品及び半製品は先入先出法による原価法(連結貸借対照表価額は収益性の低下による簿価切下げの方法により算定)、仕掛品及び原材料は移動平均法による原価法(貸借対照表価額は収益性の低下による簿価切下げの方法により算定)、貯蔵品は最終仕入原価法を採用しております。回収可能価額の評価を行うに当たっては、商品、製品及び半製品について正味売却価額に基づき収益性の低下を検討しております。将来における実際の需要または市況が見積りより悪化した場合には、追加の評価損の計上が必要となる可能性があります。

 

③ 固定資産の減損判定

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候があるかどうかの判定を実施し、減損の兆候があった場合、資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定に用いられる割引前将来キャッシュ・フローでの見積り及び仮定について将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において追加の減損損失が発生する可能性があります。

 

 

④ 投資有価証券の減損判定

当社グループは、販売又は仕入に係る取引先等の株式を保有しています。これらの株式には市場価格のない株式等以外のものである上場会社の株式と市場価格のない株式等である非上場会社の株式が含まれます。当社グループは、市場価格のない株式以外のものの株式の減損処理にあたっては、期末における時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合には全て減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。また、市場価格のない株式等である非上場株式の減損処理にあたっては、財政状態の悪化により実質価額が著しく低下した場合には、回復可能性を考慮して減損処理を行っております。なお、将来の市況悪化又は投資先の業績不振など、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収が不能となる状況が発生した場合、追加の減損損失が発生する可能性があります。

 

⑤ 繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性及び将来加算一時差異の十分性のいずれかを満たしているかどうかにより判断しております。

収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得の十分性を判断するにあたっては、一時差異等の解消見込年度及び繰戻・繰越期間における課税所得を見積っております。

当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。

 

⑥ 退職給付債務の算定

当社グループには、確定給付制度を採用している会社が存在します。確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、長期期待運用収益率、昇給率等の様々な計算基礎があります。

当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。

なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係)2.確定給付制度(8)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。

 

 

5【重要な契約等】

当連結会計年度の末日において、当社グループが締結している重要な契約等は、以下のとおりであります。

契約会社名

相手先の名称

相手先の所在地

契約品目

契約締結日

契約期間

契約内容

東芝テック㈱

理想テクノロジーズ㈱

日本

吸収分割契約

2024年4月23日

当社のインクジェットヘッド事業を、理想科学工業㈱の完全子会社である理想テクノロジーズ㈱に吸収分割の方法で承継させることを目的とした契約

㈱テックプレシジョン

理想テクノロジーズ㈱

日本

吸収分割契約

2024年4月23日

当社の完全子会社である㈱テックプレシジョンのインクジェットヘッド事業を、理想科学工業㈱の完全子会社である理想テクノロジーズ㈱に吸収分割の方法で承継させることを目的とした契約

東芝テック㈱

㈱リコー

沖電気工業㈱

日本

株主間契約

(注)

2025年2月13日

エトリア㈱の株主である当社及び㈱リコー、並びに新たに株主となる沖電気工業㈱の三社間で、エトリア㈱及びその子会社の運営、エトリア㈱の株式の取扱いその他の事項を定めることを目的とした契約

 

(注)上記の2025年2月13日付の株主間契約を締結したことに伴い、当社と㈱リコー間で2023年5月19日付で締結したエトリア㈱に関する株主間契約は、沖電気工業㈱がエトリア㈱へ参画する2025年10月1日(予定)をもって終了いたします。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、お客様にとっての価値創造を原点に発想し、世界のベストパートナーとともに、優れた独自技術により、確かな品質・性能と高い利便性をもつ商品・サービスをタイムリーに提供することを基本理念として、グループ各社の研究部門及び開発設計部門とが密接に連携しながら先行技術開発、要素技術開発、製品開発に鋭意取り組んでおります。

当連結会計年度の研究開発費の総額は23,324百万円であり、各報告セグメントの研究開発活動は次のとおりであります。

 

(リテールソリューション事業)

当事業分野では、「流通業界でグローバルトップのソリューションパートナーを目指す」という経営方針の下で、戦略パートナーとの共創により、サブスクリプションモデルのグローバルリテールプラットフォーム「ELERA」を国内外で共同研究・開発しております。また、「ELERA」商材の展開と拡大も進めております。さらに、POSシステム、オーダーシステム、画像スキャナ等の研究開発を行っております。主な研究開発の成果は以下のとおりであり、研究開発費は17,777百万円となりました。

 

・小型サーバー「XP-9800」を発売

店舗サーバーシステムに適した小型サーバー「XP-9800」を2024年10月に発売しました。縦置き、横置きの両方に対応し、設置スペース、静音性は前機種同等を維持しつつ、高性能CPUを搭載することで快適な操作とより多様な顧客のアプリケーションに対応します。また、UPS(無停電電源装置)内蔵により、瞬電・停電等の不意の電源トラブルにも安定した電源供給を実現します。

・フレキシブルターミナル「MP-N1A」を発売

コンパクトなボディーと拡張性を備えたプリンタ内蔵型フレキシブルターミナル「MP-N1A」を2024年9月に発売しました。モバイルホットスポット機能によりアクセスポイントとして利用でき、店舗のレイアウト、販売スタイルに合わせて自在に使用できます。豊富な汎用インターフェースを搭載しており、様々な周辺機器との連携で、多彩なテナント運用を実現します。

・売場移動型セルフレジシステム 新型「ピピットセルフ(カートタイプ)」を発売

売場移動型セルフレジシステム「ピピットセルフ(カートタイプ)」に、商品登録漏れをお知らせする機能を搭載した新型カートを2024年4月に発売しました。商品登録漏れやキャンセルした商品の戻し忘れを、タブレット型ディスプレイに表示し、お客様の安心安全な買い物の提供をサポートします。また、専用の親電源にカートを連結させていくことでバッテリーをまとめて充電させることが可能で、店舗オペレーションの効率化に寄与します。

・事務用コンピュータ「事務コン SJ-9500」を発売

幅広い業種・業務に利用可能な事務用コンピュータ「事務コン SJ-9500」を2024年11月に発売しました。制御部、表示部、プリンタ部を一体型にしたことで省スペース化を実現しました。SSDの搭載やメモリ容量の拡大により、パフォーマンスと利便性を向上し、現場の業務効率化を支援します。

・量販店向けPOSシステム「PrimeStore Accel」を発売

画面デザインを刷新し、操作性を向上させた量販店向けPOSシステム「PrimeStore Accel」を2025年1月に発売しました。機器設置スペースの有効活用を実現するため、画面タッチのみによるレジ業務を可能にしました。視認性が高く使いやすいシンプルなデザインで、操作に迷わない設計にしています。

・飲食店向けモバイルオーダーシステム「OtegaruOrder」を発売

消費者のスマートフォンからの注文を飲食店の厨房やPOSシステムと連携する飲食店向けモバイルオーダーシステム「OtegaruOrder(おてがるオーダー)」を2025年1月に発売しました。ハンディターミナルからの注文を合算し、厨房のPOSシステムと連携することもでき、店舗の運用に合わせた利用が可能です。本システムは、グローバルリテールプラットフォーム「ELERA」上のELERA注文連携サービス「OrderLinkage(オーダーリンケージ)」に接続し、さまざまな外部サービスと組み合わせた利用が可能です。

 

・「Toshiba Commerce Marketplace」

業界をリードするテクノロジーパートナーと小売業者をつなぐ「Toshiba Commerce Marketplace」を開発し、2024年12月に立ち上げました。小売業者がさまざまなソリューションパートナーやシステムとつながることができるマーケットプレイスを提供することで、小売業者が革新的なソリューションを活用し、ショッピング体験を向上させ、収益性の向上を促進することを可能にします。

・「MxPTM Vision Kiosk」

コンピュータービジョンとAIを活用して会計時に商品を自動的に識別し、より迅速で効率的、シームレスなショッピング体験を実現する「MxPTM Vision Kiosk」を2025年1月にNRF 2025にて発表しました。特にクイックサービス、コンビニエンスストア、小規模な食料品店向けに設計されており、小点数の商品購入に最適です。小さな設置面積で、どの小売環境にもシームレスにフィットし、顧客満足度と運営効率を向上させます。

 

(ワークプレイスソリューション事業)

当事業分野では、デジタル複合機、オートIDシステム、ワークフローソリューション等のクラウド関連技術、RFID関連技術、プラットフォーム関連技術等の研究開発を行っております。主な研究開発の成果は以下のとおりであり、研究開発費は5,546百万円となりました。

なお、当社グループの複合機及びオートIDシステムの開発及び製造に関する事業をエトリア㈱に、当社グループのインクジェットヘッド事業の全てを理想テクノロジーズ㈱に、それぞれ2024年7月1日付で承継させました。これに伴い、デジタル複合機に関する電子写真技術、光学設計技術、原稿送り機構技術、プリントコントローラ技術、画像形成技術、並びにインクジェットヘッド技術等は、研究開発の対象から外れることとなりました。

 

・クラウドプリントサービスを機能強化

クラウドプリントサービス「e-BRIDGE Global Print」では、インターネットに接続された複合機を使用して、どこからでも文書を印刷できます。ユーザーはログイン用のPIN(暗証番号)を入力することなく、モバイルデバイスで複合機に表示された2次元コードを読み取ることで、簡単にログインできるようになりました。また、クライアントからの印刷操作を行わずに、複合機上で再印刷ができる機能を追加したことで、ユーザーの利便性が向上しました。

・Auto-IDビジネス拡大加速に向けた新プラットフォーム「A-BRID」を搭載した「BX410」発売

製造業、物流業、流通業等での業務効率化に貢献し、DXを支援するため、リアルタイムOSと組み込みOSの両方を搭載した新システム構成「A-BRID」を搭載した「BX410シリーズ」を2024年11月に発売しました。プリンタドライバを使用せずにPDFファイルを印字することや、プリンタ単体でのラベルの発行が可能です。さらに、RFIDタグ書き込み等の機能拡充や、複合機の資産を活用したクラウドベースのデバイスマネージメントサービスが利用できます。今後も、A-BRID搭載バーコードプリンタのさらなる展開を図っていきます。