第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営理念と企業ミッション

当社グループは、経営理念に「社会と共に、顧客と共に、従業員と共に、成長する企業」と掲げ、日々の事業活動を行っています。「エネルギーの変換効率を極限まで追求することにより、人類と社会に貢献する」という企業ミッションのもと、半導体技術、回路技術、実装技術をあわせ持つ製造企業として、これらの技術を融合し、発展・応用させていくことで、脱炭素社会実現の一翼を担う製品を創造してまいります。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題等

昨今、市場のニーズや価値観が多様化する一方、地球温暖化など気候変動や、資源枯渇といった地球規模で進行しつつある社会的課題は、市場経済にも影響を及ぼし始めています。このような状況下、当社が果たすべき役割を土台に、企業として“ありたい姿”を定めた長期的な経営ビジョンを策定し、それらに紐づく施策を中期経営計画や年次経営計画と連動させることで、中長期にわたる持続的な成長サイクルを確立してまいります。

 

<長期ビジョン2030>

当社グループは、時代に適合した製品ポートフォリオを構築し、社会的課題の解決に貢献することが、持続可能性(サステナビリティ)が要求される現代において企業価値の向上に資するものと考えております。

これらを踏まえ、以下の通り2030年度を見据えた長期ビジョンを策定いたしました。

 

<長期ビジョン2030 ありたい姿>

革新的な技術によって地球環境に配慮した先進的なソリューションを生み出して持続可能な社会に貢献し、あらゆるステークホルダーから必要とされ続けるパワーエレクトロニクスカンパニー

 

長期的な観点で、「脱炭素社会のキーパーツとなるパワーデバイス」「ヒトと環境の未来を託されるモビリティソリューション」「全事業のコア技術を融合した環境ソリューション」を創出し、環境貢献をより重視した製品ポートフォリオを継続的に整備してまいります。あわせて、持続的成長の前提となる安定的な経営基盤を構築するために資本効率を重視し、事業ポートフォリオの見直しや、設備投資・研究開発投資・人材投資等を含む経営資源の最適配分を進めてまいります。

 

<第16次中期経営計画>

2022年度から2024年度までの3ヶ年を期間とする「第16次中期経営計画」では、経営方針として「長期ビジョンの実現に向けた基盤づくり」と定め、主要テーマを「稼ぐ体質づくり」「伸長事業拡大の布石」「温室効果ガス排出量削減分野へのリソース配分」とすることで、「長期ビジョン2030」で掲げるありたい姿に向け、事業の成長とサステナビリティを統合した製品ポートフォリオへの転換を促進してまいります。

経営方針の実現に向けて、各施策の遂行にあたっては、デジタルトランスフォーメーションを広く活用してまいります。

 

<2024年度の経営目標(連結)>

・売上高 1,180億円

・営業利益率 6.6%

・ROE 8.3%

・ROA 3.5%

 

・設備投資額(3ヶ年累計) 220億円

・研究開発費(3ヶ年累計) 180億円

 

<進捗と課題>

2023年度は中期経営計画で掲げる経営方針の3つの主要テーマに基づき、消費電力を低減するパワー半導体の新製品やインドで二輪EV向けPCU(パワーコントロールユニット)を量産開始したほか、EV充電器の新シリーズ「MITUS(ミタス)」の発表や「見せない普通充電器」の販売を開始しました。このほか、ESG経営の高度化に向けてサステナビリティ推進体制を整備し、基本方針に沿って活動を展開するなど、引続き企業価値の向上と持続可能な社会の実現に向けた諸施策に取組みました。

一方、中国における景気低迷を主要因としてデバイス製品の需要が大幅に減少したほか原材料価格やエネルギーコスト高騰の影響をうけ、売上高、営業利益率、ROEならびにROAについて2024年度経営目標値の達成は厳しい状況となっており、2024年度の経営目標は以下の通り見直しました。

 

<2024年度の経営目標(連結)>

・売上高 1,066億円

・営業利益率 2.3%

・ROE 2.1%

・ROA 1.9%

 

当社グループでは第16次中期経営計画の最終年度にあたる2024年度において、「長期ビジョン2030」の実現に向けて事業ポートフォリオの最適化を進めるなかで、特にデバイス事業は伸長が見込まれるモビリティ分野を重点市場と位置付け、販売を拡大するとともに、収益基盤の立て直しを図るべく生産・物流・販売レイアウトの適正化やコスト上昇に伴う販売価格の見直し、原価低減活動などを推進してまいります。くわえて、成長が見込まれる分野・地域に対しては経営リソースを集中させ、事業や技術の可能性を追求してまいります。とりわけインドをメインのターゲットとし、現地法人であるシンデンゲン・インディア・プライベート・リミテッドの生産性向上と営業活動を強化するほか、事業シナジーの創出による製品開発や市場のニーズに対応した製品の生産・販売に注力してまいります。これらを含む諸施策を確実に実行することにより、2025年度からスタートする第17次中期経営計画につなげてまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社グループでは、中長期的な企業価値向上に向け、サステナビリティ基本方針を定め、事業活動を行っております。

 

<サステナビリティ基本方針>

新電元グループは、『企業ミッション』の実践とともに、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営を積極的に推進します。持続可能な社会の実現に貢献し、長期的な視点での企業価値の向上に努めます。

ついては、以下を推進します。

・『環境ビジョン』を掲げ、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」 の実現に貢献します。

・人権と多様性を尊重し、ステークホルダーエンゲージメントの向上を図ります。

・人材育成と社内環境整備を通じて、「安心・安全」で働きがいのある職場づくりに努めます。

・公正かつ透明性の高い経営を行い、幅広いステークホルダーの信頼と期待に応えます。

 

企業活動そのもので環境・社会に貢献する重要な課題について、ESGのフレームワークのなかで機会・リスク分析を行い、ESGマテリアリティとして「環境配慮型製品による価値提供」「事業活動と環境との調和」「多様で、働きがいのある職場づくり」「公正かつ透明性が高い経営基盤の強化」の4つを特定しております。中期経営計画と連携し、これらのESGマテリアリティを実践していくことで、環境・社会課題に貢献し、持続可能な企業価値を創出いたします。

これらを実行するために代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、当委員会の配下に関連委員会を組織することでサステナビリティに資する課題を統合的に管理することにくわえ、BCM(Business Continuity Management)委員会において「防災・事業継続基本方針」のもと、国内外グループ会社からのリスク情報の収集と発信の機能を一元管理することで迅速な初動対応ができる体制を整えております。

 

また、サステナビリティ基本方針に沿って的確に取組みを進めていくため、ESGマテリアリティの実践を主眼に置いた目標策定と評価を行っており、その達成度合いの検証・評価・総括結果を次年度の指標に反映しております。

ガバナンス体制の詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

 

(2)気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応状況

①ガバナンス

当社の取締役会は、当社グループにおける気候変動関連のリスク及び機会を含む経営上の重要事項に関して審議・決定しております。くわえて、取締役の業務執行状況について適宜報告を受けており、適切に管理・監督されるよう体制を整えております。

BCM委員会は、気候変動問題を含む事業継続の有効性について確認し、環境委員会は、環境に係わる方針および目的・目標の審議、気候変動問題をはじめとする地球環境保護に関する諸施策の協議並びに進捗状況確認などを担っております。また、環境委員会の下部機関として、専門的立場より調査・検討し、具体案を答申するための専門部会を設置しております。

これら組織の活動状況はサステナビリティ委員会を通して適宜取締役会に報告され、コーポレート・ガバナンスの充実ならびにサステナビリティ活動の強化に努めております。

当社グループは「長期ビジョン2030」にて会社のありたい姿を「革新的な技術によって地球環境に配慮した先進的なソリューションを生み出して持続可能な社会に貢献し、あらゆるステークホルダーから必要とされ続けるパワーエレクトロニクスカンパニー」と定めております。気候変動を社会的な重要課題であると認識するとともに、事業上のリスクおよび機会として捉え、CO2排出量削減活動や循環型ビジネスの拡大などの取組みを長期的かつ継続的に強化してまいります。

 

②戦略

気候変動対策を経営戦略に反映するため、TCFD提言に沿ってシナリオ分析を実施しました。なおシナリオ分析には、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の示す2℃未満シナリオ、4℃シナリオを参照しております。

分析の結果、2℃未満シナリオでは、脱炭素社会に向けた規制強化や技術革新が促され、気温上昇が持続可能な範囲で収まり、脱炭素化に向けた政策転換、技術革新、評判の変化など、移行リスク・機会への対応が推進されると考えられます。4℃シナリオでは、CO2を削減する有効な対策が打ち出されず、気温上昇が継続し、異常気象の激甚化など、物理的リスク・機会への対応が最重要課題になると考えられます。いずれも当社グループにとって、コストの増加が懸念される一方、環境対応型製品の需要拡大が想定されるため、ビジネスの裾野は広がりをみせると捉えております。

現時点で想定している主なリスク、機会、対応策および財務影響は下表のとおりです。なお、事業活動に与える財務影響度合を「大」「中」「小」の3段階で評価しました。

 

<移行リスク・機会>

想定項目

リスク●/機会◎

対応策

財務影響

政策

各国のエネルギー政策促進(xEV進展、補助金拡大など)

●脱炭素・低炭素エネルギー利用が促進されることにより、購入エネルギー費用などの事業コスト負担が増える。
●内燃エンジン車の利用を禁止する政策に伴い現行の関連製品が衰退する。
◎xEV進展により、各種パワー半導体、制御ユニット、コンバータ、EV充電器等の需要が増加する。
◎空調・サーバー向けにダイオード等の需要が増加する。

環境配慮型製品の開発リソースを強化する。
工場で使用するエネルギーの効率化、物流の最適化、更なる省エネに繋がる高効率設備の導入等を推進する。

炭素税の導入

●炭素税の導入または炭素税率の上昇によりコストが増加する(再生可能エネルギーの購入によるコスト増、サーチャージUPによる輸送コスト増など)。
●内燃エンジン車の利用を禁止する政策に伴い現行の関連製品が衰退する。
◎xEV進展により、各種パワー半導体、制御ユニット、コンバータ、EV充電器等の需要が増加する。
◎空調・サーバー向けにダイオード等の需要が増加する。

製品の小型化、軽量化、再生材料の使用拡大など資源効率を向上させる。
工場で使用するエネルギーの効率化を図る。

技術

脱炭素化に向けたマーケット要求の変化、製品開発への影響

●エネルギー関連技術の開発競争が激化し、設備投資や研究開発費が増加する。
●脱エンジン化の加速により現行の関連製品は販売機会を逸する。
◎AI・IoT・スマートシティなど、制御の高度化、デジタル技術の拡大、再生可能エネルギーの導入、EV化の増加等が想定され、関連製品の需要拡大につながる。
◎社会の脱炭素化により、環境配慮型製品の需要が増加し、事業拡大につながる。

カーボンニュートラル部材を調達する。
工場、事業所の自然エネルギー利用比率を向上させる。
更なる低炭素化に向けた製品の企画・開発を強化する。

評判

顧客、投資家による評価の変化

●気候変動への対応が不十分な場合、収益の悪化や資金調達が困難となる。
◎環境負荷に考慮した製品ニーズが増加し収益が拡大する。顧客、投資家から当社の評価が上がり、企業価値が向上する。

環境負荷低減製品のPRや気候変動を含む環境課題に関する取組みを積極的に開示する。
工場や事業所にて使用するエネルギーを再生可能エネルギーに切り替える。

 

 

<物理的リスク・機会>

想定項目

リスク●/機会◎

対応策

財務影響

急性

異常気象の激甚化(風水害の多発)

●風水害による操業停止、生産減少、設備復旧や保険料UP等コスト発生、サプライチェーン寸断による納期遅延などにより、収益を悪化させる。
◎風水害対策用の発電/蓄電関連製品の需要が拡大する。
◎災害からの復旧・復興需要やBCP対策投資活性化に伴い通信用電源や発電/蓄電等の関連製品の需要が増加する。

部品調達から生産・販売までのサプライチェーン全体で事業継続計画(BCP)体制を強化する。
暴風、豪雨、浸水対策および訓練を実施する。
サプライヤーや輸送手段の多角化を進める。
発電/蓄電関連製品や耐水・耐熱性に優れた製品の開発を進める。

慢性

降水パターンの変化、平均気温の上昇、海面上昇

●洪水あるいは水不足等により生産能力が減少する。
●暑熱対策による空調等のコスト増や電力需要逼迫による停電の発生が収益を悪化させる。
◎降水パターンの変化など気候変動の慢性的な影響が顕在化することにより、発電/蓄電、xEV、空調市場の需要が増える。

部品調達から生産・販売までのサプライチェーン全体で事業継続計画(BCP)体制を強化する。
高効率生産設備、自家発電設備等を導入する。
発電/蓄電関連製品や耐水・耐熱性に優れた製品の開発を進める。

 

③リスク管理

取締役会および環境委員会は、気候変動に関連する規制や当社グループの事業運営に影響を及ぼすリスク要因について幅広く情報収集するとともに、気候変動によってリスクが顕在化すると想定される事象については、その影響を評価しリスクの最小化に向けて対策を講じるなど、適切に管理しております。

また、気候変動関連リスクを含む全ての業務リスクについては、BCM委員会において評価し、適宜、取締役会に報告を行っております。くわえて、事業継続計画(BCP)に基づき、自然災害などによって通常の状態では事業の遂行が困難になった場合に備えて実践的なBCP訓練を実施するなど、企業としての防災力、事業継続力の更なる向上に努めております。

 

④指標及び目標

地球環境保護への取組みを経営の重要課題の一つと位置づけ、長期的な視点から持続可能な地球環境と社会の実現に向けた活動をグループ一丸となって推進することを目的に「環境ビジョン2050」を策定しました。当社グループが目指す持続可能な社会を「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」と定め、自社グループの事業活動のみならず、2050年を目標にバリューチェーン全体を視野に入れた環境負荷の最小化を目指します。また「環境ビジョン2050」に向かう道標として、「2030年度 環境目標」を合わせて設定し、当社グループが特定したSDGsマテリアリティの実践を通じて環境貢献を加速いたします。

 

(3)人的資本経営の取組み状況

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当社は「社会と共に、顧客と共に、従業員と共に、成長する企業」を経営理念に掲げ、人の成長が企業の価値創造の源泉であり、多様で自律的な知と知の融合が新たな価値創造と持続的な成長をもたらすと捉えて人的資本経営に取り組んでおり、『個人の成長と組織の活性化』を目指して『つながり』をテーマとした人財戦略を展開しています。

 

人財戦略『個人の成長と組織の活性化』

多様な従業員一人ひとりが働きがいを感じて自発的に能力を発揮できるよう、そして自律的な個人の知と知が融合して新たな価値を創出していくよう環境を整えることを目指し、人財戦略は『個人の成長と組織の活性化』を目標としています。

 

テーマ『つながり』

当社の人的資本経営の構成は「人権尊重」「安全と健康」を基盤とし、人財戦略の主要課題「人財育成」「多様な人財の活躍」「柔軟な働き方の拡充」と合わせて5つの分野から成ります。そしてコロナ禍や在宅勤務で薄れつつある人と人のつながりや部門間のつながりを再生することを目指し、『つながり』をテーマとして掲げています。

 

①人財育成

当社では労働人口の減少傾向を受けて優秀な人財の確保が重要な課題となってきており、第二新卒の採用など採用の多様化を進めると同時に、若年層の定着率の向上と後継者育成を図るべく、各種キャリア研修やリスキリングにより能力を発揮する場を拡げるキャリア形成支援を行っており、社内副業制度も進めていきます。新入社員研修、入社2年目・3年目研修、資格別研修、職種別研修、職位別研修に加え、公募制の財務研修やマーケティング研修などの自己啓発型教育研修を実施するとともに、自己申告制度や社内公募制度により一人ひとりのキャリア形成を支援しています。また、外国語研修や若手社員の海外研修などにより益々グローバル化する事業をリードしていく人財を育成しています。くわえて、発明、発案、公的資格取得における褒賞制度を設け、研究開発の向上や多様な職場、職務において従業員一人ひとりの活躍を推進しています。

重点指標

2023年度目標

2023年度実績

2024年度目標

*キャリア研修時間(/人・年)

36.7時間

40.0時間

 

②多様な人財の活躍

a.女性のキャリア形成支援

当社では、男女差なく活躍できる多様な働き方を推進し、女性社員採用の拡充および活躍の場を広げていきます。従業員の出産および産前産後の健康管理について各種休暇や育児時間・健康管理時間を設け、育児休業や介護休業の制度を拡充するとともに男性の育児休業取得を奨励しています。

 

重点指標

2023年度目標

2023年度実績

2024年度目標

新卒採用女性比率

30.0%

28.1%

30.0%

男性育児休業取得率

30.0%

73.9%

80.0%

その他関連指標の2023年度実績は以下のとおりです。

・女性従業員比率  (単体) 10.7% ・女性従業員比率  (連結) 41.1%

・女性管理職比率  (単体)  0.6% ・女性管理職比率  (連結) 11.3%

 

b.シニアの活躍推進

当社グループでは、60歳定年退職者の再雇用制度により65歳まで継続雇用を行っています。また当社では2022年9月より定年を65歳に延長して有能な経験者を確保し、社内副業やリスキリングにより活躍する機会の拡大を推進しています。

 

c.障がい者雇用と活躍の促進

当社グループでは障がい者の雇用促進とともに入社後のフォローにより活躍を推進しています。

重点指標

2023年度目標

2023年度実績

2024年度目標

障がい者雇用率

2.30%

2.31%

2.50%

 

d.外国籍従業員の活躍推進

当社グループでは、事業のグローバル化に伴い海外の従業員数が国内の従業員数を上回るなか、当社グループ人権方針を通じて異なる価値観や経験を互いに尊重し、従業員一人ひとりの個性を最大限に活かす機会を提供することで、社会の変化に対応した新しい価値観やビジネスの創造と従業員の精神的な豊かさの追求につながると考えています。

 

e.マイノリティ平等の実現

当社グループでは、ダイバーシティ研修などにより認識を高めマイノリティ平等の実現に努めています。

 

③柔軟な働き方の拡充

a.エンゲージメントの向上

タレントマネジメントシステムにて運用する自己申告制度を活用して独自のエンゲージメント指数を設定し、年代や職場に対応した施策へ展開することにより、指数の向上を目指しています。

重点指標

2022年度実績

2023年度実績

2024年度目標

*SDKエンゲージメント指数

54.3

58.9

60.0

 

b.職場の心理的安全性の向上

コミュニケーションの活性化を促す施策とともに、出社日の設定など在宅勤務の普及により薄れつつある『つながり』の再生を図っています。

 

c.ワークライフバランスの充実

フレックスタイム勤務制度を併用した在宅勤務制度、勤続年数に応じたリフレッシュ休暇、有給休暇5日/年の取得義務化、残業上限時間の設定など働きやすい環境の充実に取組んでいます。

 

④人権尊重

当社グループは、人権方針にて「人権配慮に関する国際的な価値観を尊重し、人権に関する認識を高め、人権尊重に向けた取り組みを推進していきます」と掲げています。人権リスク防止策としてハラスメント研修およびダイバーシティ研修などの人権関連研修を実施するほか、サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスを定期的に実施するなど人権リスクアセスメントを実施しています。

重点指標

2023年度目標

2023年度実績

2024年度目標

*人権関連研修受講率

99%

100%

 

⑤安全と健康

当社グループでは、安全衛生活動の推進を重要課題に掲げ、労働安全衛生の継続的な改善を図り、従業員の安全と健康に配慮した職場環境を整備しています。

当社朝霞事業所および一部グループ会社は労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格であるISO45001の認証を取得し、これとともに新電元グループを包括する労働安全衛生方針を制定しています。また、2024年度は健康経営優良法人の認定取得を目指しています。

なお、当社朝霞事業所は「CASBEE建築評価認証Sランク」「ZEB Ready」「CASBEEウェルネスオフィスSランク」と建築物の代表的な評価・認証の3つ全てを取得し、「安全・安心、環境、健康・快適性」を評価されています。

重点指標

2023年度目標

2023年度実績

2024年度目標

*健康経営優良法人認定

2025年度認定取得

 

*2024年度新設

 

 

 

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)特注品および特定市場への依存

当社グループの営業収入の過半は、特定顧客企業による特注品によって占められており、顧客企業の需要変動により、当社グループの業績が重要な影響を受ける場合があります。

また、当社グループでは、二輪車を含む自動車市場への依存度が高く、一般的に国内外の景気動向に対し、強い影響を受け、収益性の低下を引き起こすリスクがあります。

このような事態を回避するため、当社グループは、重点市場と位置付ける二輪車を含む自動車市場のほか、産業機器市場、家電市場、通信インフラや情報機器を中心とする情報通信市場向け等、パワーエレクトロニクスを必要とするあらゆる市場に対し製品を提供することで、リスクの分散化を図っております。

(2)特定のグループ外供給元への依存

当社グループは、電源回路製品の基幹部品である半導体を内製化している一方で、ほかの主要部品および半導体の原材料については、複数のグループ外企業の供給に依存しております。したがって、一般的な経済動向およびサプライヤー個別の事由により、需給の急激な変動や価格の高騰が起きた場合には、必要な部材の入手に支障を来し、当社グループが顧客企業に対し供給責任を果たせない、あるいは部材価格高騰による原価の上昇など、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

このような事態を回避するため、各サプライヤーとの定期的な情報共有や、複数購買の促進により、供給リスクの低減を図っております。

(3)国際的活動および海外進出

当社グループは、日本国内のみならずアジア、北米、欧州の各地域で生産又は販売活動を行なっており、また、様々な販売チャネルを通じ、他の地域にも製品を販売しております。近年、当社グループの海外生産および販売の比重は高まってきております。したがって、当該地域における、予測できない法規制などの改正、政治および経済状況の変動、労働争議や雇用条件の急激な変化、天変地異や火災、戦争やテロ、疫病の流行といった社会情勢の変動などにより、当社グループのサプライチェーンに支障が生じ事業活動が制限される場合があり、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

このような事態を回避するため、サプライチェーン寸断リスクに備えた体制を強化したほか、定期的に当社グループ間で情報共有を行うとともに、生産面においては複数拠点において代替生産を可能とする体制の構築を進めております。

(4)為替レートの変動

当社グループは、円貨のみならず米ドル、ユーロ、アジア通貨等で販売および調達活動を行っております。また海外の生産および販売拠点は、原則としてその拠点の属する国または地域の通貨によって財務諸表を作成しており、連結財務諸表作成にあたっては、在外関係会社の財務諸表を円換算しております。したがって、為替レートの変動は当社グループの業績および財政状態に影響を与えており、一般的には、円高の場合は、当社グループの業績に悪影響を及ぼし、円安の場合は好影響を及ぼします。

当社グループでは、為替予約および通貨オプションなどの取引を行なうほか、進出先での資材調達の促進など為替レートの変動による影響を最小限にとどめる努力をしております。

(5)需要変動

当社グループの顧客企業のうち、一部の市場においては、需要動向に固有の変動要因があります。また、産業構造の変化や顧客企業および当社グループの競争環境の変化などが、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼすことがあります。

また、近年顧客企業の短納期要請が高まっており、供給リスクを避ける主旨などから一部の材料については先行手配をせざるを得ず、当社グループが独自の判断で調達した棚卸資産については、その後の顧客の需要変動により、当社の責任において処分する場合があり、利益率の低下を引き起こす可能性があります。

このような事態を回避するため、当社グループではリードタイムの短縮につとめるほか、市場動向の変化に迅速に対応するため、関連部門が定期的な情報共有を行っております。

(6)価格競争

当社グループが属する電子部品業界における競争は大変厳しいものとなっており、価格に対しては、顧客企業による値下げ要請、競合他社の攻勢などにより、価格下落の圧力は日々強くなっております。特に、当社グループ主力のデバイス事業や電装事業においては、競合他社の参入により国内外での競争が一段と激化しております。一方、材料費や運送費などコストの上昇により収益性を低下させるリスクもあります。そのため、将来的に価格競争力を維持できない可能性があり、その場合、当社グループは販売シェアが低下し、業績及び財政状態を悪化させる可能性があります。

このような事態を回避するため、当社グループは、差別化しうる新製品の開発を進めるとともに、サプライヤーと一体となったコストダウン活動や生産性の向上に努めております。

(7)技術特許などの知的財産権

当社グループは、独自の半導体技術および回路技術をもとに各種製品を製造・販売しておりますが、特定の国または地域においては知的財産権による完全な保護が不可能な状況にあります。したがって、第三者が当社グループの知的財産を使って類似した製品を製造することを防止できない可能性があります。

また、当社グループの使用する技術が、他社の保有する特許その他の技術的権利に全く抵触しないという保証はなく、その場合、当社の業績および財政状態を悪化させる可能性があります。

そのため当社グループは、他社が保有または主張する特許などについては、開発段階において徹底した調査を行い、必要に応じて他社とライセンス契約を結ぶなど、回避に努めております。

(8)製品の欠陥

当社グループは、各生産拠点においてISOやTSといった世界的に認められた品質管理基準に基づき、各製品の製造を行なっておりますが、全ての製品について全く欠陥がなく、将来にわたりリコールや顧客企業からのクレームなどの事態が発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。

大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような重大な製品の欠陥が発生した場合、顧客企業への補償や対策費用などの費用発生に加え、市場における信用の低下などにより、当社グループの業績および財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。

このような事態を回避するため、各事業本部では設計上流工程から品質を意識した開発や、顧客の使用方法を再現した製品評価等を実施しています。くわえて事業部門を横断して品質の定期的な連絡会を実施することで、気づきの水平展開に努めております。

(9)新製品開発力

当社グループは顧客企業または市場のニーズに合わせた製品および要素技術の開発を常に行っており、また当社グループの将来的な成長力の鍵は、こうした研究開発活動の成否にかかっていると考えております。しかしながら、エレクトロニクス業界のニーズは多様化しており、また技術や製品のサイクルも短くなってきております。くわえて、とりわけ自動車市場においては電動化、自動運転などの導入により、高度で複雑な技術が必要となってきております。当社グループが顧客企業または市場のニーズに合わせた製品をタイムリーに提供できない場合、または競合他社に先んじられた場合には、当社グループは新製品の販売機会を失うか制限され、それまでの研究開発投資の回収が困難になる可能性があります。

また、近年エレクトロニクス業界でも顕著になってきている標準化競争の如何や、当社グループおよび顧客企業が基盤とする技術が主流となり得なかった場合には、当社グループが事業機会を失う場合もあります。これらのことが、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

このような事態を回避するため、当社グループでは産学連携など外部の知見の活用により、開発スピードの強化や、事業領域の拡大に向けた取組みを進めております。

(10)人材の確保と育成

当社グループの競争力の源泉は、技術開発力、生産性、品質、営業力および効率的な経営ノウハウなどであり、これらを維持し、また継続的に発展させる人材の確保と育成は、当社グループの将来性を決定づける重要な要素のひとつでありますが、できなかった場合には、当社グループの将来の成長、財政状態および業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

このような事態を回避するため、係る人材、特にソフトウエアなど高度なスキルを持つエンジニアや特定の有資格者について、企業買収や国籍を問わない幅広い採用など、その確保および育成に注力をしております。

(11)設備投資

当社グループは生産能力および研究開発力の維持・増大のため、設備投資を継続的に行なっておりますが、将来の需要動向によりその額は変化します。設備投資の結果、増強した能力が必ずしも業績に貢献しない場合も想定され、その場合、業績、財政状態およびキャッシュ・フローに重大な影響を及ぼす場合があります。

当社グループは、電装事業においては、二輪市場が広がるアセアンを中心に生産拠点を置くなど、コスト競争力と効率的な生産活動を追求しております。生産拠点間での代替生産を行う体制整備や在庫の一定水準の保有など、供給責任を果たすべく措置を取るほか、当該生産拠点においては、日常の安全管理および危機管理のための対策を取っております。

(12)公的規制等

当社グループは、事業を展開する各国において、事業・投資の許可、国家安全保障またはその他の理由による輸出制限、関税をはじめとするその他の輸出入規制等、様々な政府規制の適用を受けております。また、通商、独占禁止、特許、消費者、租税、為替管制、環境・リサイクル関連の法規制の適用も受けております。当社グループは事業活動を行うにあたり、これらの規制に細心の注意を払っておりますが、規制を遵守できなかった場合、当社グループの活動が制限される可能性があり、さらにペナルティを課せられるなど発生費用の増加を伴い、当社グループの業績および財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。

これらの事態を回避するため、当社グループは規制に対する対策を積極的に進めており、全社組織を形成したうえで周知徹底を図っております。

また、当社グループおよび当社グループの顧客企業が事業を行うにあたり、EU(欧州連合)によるRoHS指令(有害物質使用制限に関する指令)をはじめ、環境問題や人権問題などに対応するための様々な規制が国や地域ごとに設けられております。しかしながら、技術やその他の制約により、規制に合致した対策が取れない可能性があり、その場合、当社グループは販売について規制を受けて事業機会を逸し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、規制に対応するための費用が業績および財政状態を圧迫する可能性もあります。

このような事態を回避するため、専門部署を設け、最新の法令改正状況を調査し、対策を講じる体制を構築しております。

(13)災害等のリスク

地震や台風など大規模な自然災害や火災等の事故災害、感染症によるパンデミックの発生などにより、当社グループの建物や設備、従業員等が被害を受け操業停止せざるを得ない事象のほか、経済活動への影響が重大または長期間となった場合、当社グループの業績、財政状態およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、こうした事態に備えたBCP(事業継続計画)を策定し、災害等の発生時における影響を最小限に留めるべく、リスク耐性の強化を図っております。

(14)情報セキュリティ

当社グループは、研究開発や知的財産などの機密情報を有するほか、事業活動を通じて顧客やサプライヤー等の機密情報を入手し、保有しております。また従業員等の個人情報も保有しております。これらの情報の取り扱いにつきましては、新電元グループ情報セキュリティ基本方針に基づき厳正な管理を行っておりますが、不測の事態により情報侵害が発生した場合、当社グループの信用低下や賠償責任等により業績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

このような事態を回避するため、情報セキュリティ委員会ではデータ侵害等を想定したセキュリティを強化しリスク低減に努めるほか、規定類の見直しや全従業員へ教育活動を行う等、情報セキュリティの維持向上に努めております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

当連結会計年度における当社グループを取り巻く環境は、社会経済活動の正常化が進んだことで、景気は緩やかに持ち直しの動きを見せた一方、緊迫化する国際情勢や物価上昇に伴う欧米各国による金融引き締め、中国景気低迷の長期化、さらには為替相場における大幅な円安の進行など、先行き不透明な状況が続きました。

当社グループは、第16次中期経営計画(2025年3月期までの3ヶ年計画)の経営方針である「稼ぐ体質づくり」、「伸長事業拡大の布石」、「温室効果ガス排出量削減分野へのリソース配分」に基づき、消費電力を低減するパワー半導体の新製品やインドで二輪EV向けPCU(パワーコントロールユニット)を量産開始したほか、EV充電器では新シリーズ「MITUS(ミタス)」の発表や「見せない普通充電器」の販売を開始しました。このほか、ESG経営の高度化に向けてサステナビリティ推進体制を整備し、基本方針に沿って活動を展開するなど、引続き企業価値の向上と持続可能な社会の実現に向けた諸施策に取組みました。

 

このようななか、当連結会計年度の売上高は中国における景気低迷を主要因としてデバイス事業が大幅に減少したものの、二輪・四輪向け製品を中心に電装事業が伸長したほか、為替相場が円安基調で推移したこともあり102,261百万円(前期比1.2%増)となりました。一方、損益面では電装事業における増収効果があったものの、デバイス事業の減収が響き、営業利益は1,278百万円(前期比64.7%減)、経常利益は1,660百万円(前期比61.6%減)、親会社株主に帰属する当期純損失は繰延税金資産の取り崩しや持分法適用関連会社の投資有価証券売却損を計上したことなどにより712百万円(前期は1,644百万円の利益)となりました。

第16次中期経営計画最終年度である2025年3月期における経営指標に対しては、売上高1,180億円の目標値に対し1,022億円、営業利益率6.6%の目標値に対し1.3%、ROE8.3%の目標値に対し△1.1%、ROA3.5%の目標値に対し△0.5%となりました。

 

セグメントの業績は次のとおりであります。

当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しております。前期比較につきましては、前期の数値を変更後のセグメント区分に組替えた数値で比較しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。

また、セグメント間の取引については相殺消去して記載しております。

 

(デバイス事業)

デバイス事業の売上高は32,242百万円(前期比13.4%減)、営業損失は1,193百万円(前期は2,944百万円の利益)となりました。

車載向け製品は自動車生産台数の回復を受けて増加した一方、家電・産機向け製品については中国における景気低迷や流通在庫の調整が続き大幅に減少したため、事業全体では減収となりました。損益面においては、原材料価格やエネルギーコスト高騰への対応として販売価格の適正化を進めたほか原価低減活動に努めたものの、減収影響や生産稼働率の低下、品質保証に関する費用の計上などにより減益となりました。

 

(電装事業)

電装事業の売上高は63,281百万円(前期比11.1%増)、営業利益は7,020百万円(前期比32.9%増)となりました。

主力の二輪向け製品はベトナムにおける景気減速の影響を受けましたが、インドネシアやインドが好調を維持し、くわえて四輪向け製品の伸長や為替相場が円安に推移したことなどもあり増収となりました。損益面においては増収および円安効果などにより増益となりました。

 

(エネルギーシステム事業)

エネルギーシステム事業の売上高は6,600百万円(前期比0.6%減)、営業損失は115百万円(前期は119百万円の損失)となりました。

通信インフラ向け整流装置やEV充電器が増加したものの、販売を終息させた太陽光発電向けパワーコンディショナが減少した影響により減収となりました。損益面においてはプロダクトミックスの変化などにより損失が縮小しました。

 

(その他)

その他の売上高は136百万円(前期比9.5%減)、営業利益は44百万円(前期比5.0%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下資金という)は営業活動によるキャッシュ・フ ローで2,206百万円増加投資活動によるキャッシュ・フローで1,776百万円減少財務活動によるキャッシュ・ フローで252百万円減少した結果前連結会計年度末に比べ資金は1,193百万円増加し、当連結会計年度末は26,340百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、2,206百万円のプラス(前期は2,736百万円のプラス)となりまし たこれは主に棚卸資産の増加額が2,590百万円となったものの、税金等調整前当期純利益が1,506百万円、減価償却費が5,528百万円となったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、1,776百万円のマイナス(前期は4,088百万円のマイナス)となりま したこれは主に投資有価証券の売却による収入が2,716百万円となったものの、有形固定資産の取得による支出が4,290百万円となったことによるものであります

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、252百万円のマイナス(前期は3,549百万円のマイナス)となりまし たこれは主に長期借入金8,800百万円の資金調達をしたものの長期借入金の約定弁済が5,895百万円、社債の償還による支出が1,504百万円となったことによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

デバイス事業(百万円)

33,107

△17.4

電装事業(百万円)

63,439

9.9

エネルギーシステム事業(百万円)

6,717

△2.3

報告セグメント計(百万円)

103,264

△1.4

その他(百万円)

合計(百万円)

103,264

△1.4

(注)1.金額は、販売価格によっております。

2.セグメント間の取引については含まれておりません。

3.当連結会計年度より報告セグメントの区分を一部変更しており、前年同期比は、変更後のセグメントの区分に組み替えた数値に基づき算出しております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前年同期比

(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比

(%)

デバイス事業

31,562

△8.5

7,152

△8.8

電装事業

63,591

9.0

3,817

8.9

エネルギーシステム事業

6,982

13.9

1,060

56.2

報告セグメント計

102,136

3.2

12,030

0.0

その他

844

△20.4

206

△40.8

合計

102,981

2.9

12,236

△1.1

(注)当連結会計年度より報告セグメントの区分を一部変更しており、前年同期比は、変更後のセグメントの区分に組み替えた数値に基づき算出しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

デバイス事業(百万円)

32,242

△13.4

電装事業(百万円)

63,281

11.1

エネルギーシステム事業(百万円)

6,600

△0.6

報告セグメント計(百万円)

102,124

1.3

その他(百万円)

136

△9.5

合計(百万円)

102,261

1.2

(注)1.セグメント間の取引については含まれておりません。

2.当連結会計年度より報告セグメントの区分を一部変更しており、前年同期比は、変更後のセグメントの区分に組み替えた数値に基づき算出しております。

3.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

 

相手先

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

ピー・ティ・アストラホンダモーター

11,425

11.3

12,082

11.8

4.販売実績が総販売実績の100分の10未満の相手先については記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。これらの見積りについては、継続的に評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、実際の結果はこれらと異なる場合があります。

 

②当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析

a.資産、負債及び純資産の状況

当連結会計年度末の総資産は、144,669百万円(前期比6,576百万円増)となりました。これは、主に棚卸資産が増加したことによるものであります。

負債は73,752百万円(前期比1,801百万円減)となりました。これは主に退職給付に係る負債の減少によるものであります。

純資産は、70,917百万円(前期比8,377百万円増)となりました。これは、主にその他有価証券評価差額金の増加及び退職給付に係る調整累計額の増加によるものであります。

以上の結果、1株当たり純資産は6,876円60銭となりました。

b.連結損益及び包括利益計算書の分析

当連結会計年度の売上高は102,261百万円(前期比1.2%増)となりました。当社グループを取り巻く環境は、社会経済活動の正常化が進んだことで、景気は緩やかに持ち直しの動きを見せた一方、緊迫化する国際情勢や物価上昇に伴う欧米各国による金融引き締め、中国景気低迷の長期化、さらには為替相場における大幅な円安の進行など、先行き不透明な状況が続きました。このようななか、営業利益は1,278百万円(前期比64.7%減)、経常利益は1,660百万円(前期比61.6%減)、親会社株主に帰属する当期純損失は712百万円(前期は1,644百万円の利益)となりました。

 

③経営成績に重要な影響を与える要因と今後の見通し

雇用・所得環境の改善による個人消費の持ち直しが下支えし、景気は緩やかながらも回復基調をたどると想定される一方、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の緊迫化をはじめとした地政学リスクの高まり、原材料・エネルギー価格の高騰、中国景気の回復遅れなど、世界経済への下押し圧力が拡大しており、依然として不確実性の高い状況が続くと見込んでおります。

パワーデバイス分野においては、世界経済悪化に伴う急激な需要の減少や、原材料費、物流費高騰による調達コストの増加、競争激化など、外部環境の変化に影響を受けるリスクを伴っております。また、アジアを中心とする二輪車市場においては、需要の急変、為替変動の影響など不安定要素をはらんでおります。さらに、各製品の生産拠点において、日常の安全衛生管理および危機管理のための対策は取っておりますが、予期せぬ天変地異、災害、停電などの事態が発生した場合、その影響を完全に防止または軽減できないことがあります。

今後は、「長期ビジョン2030」の実現に向けて事業ポートフォリオの最適化を進めるなかで、特にデバイス事業は伸長が見込まれるモビリティ分野を重点市場と位置付け、販売を拡大するとともに、収益基盤の立て直しを図るべく生産・物流・販売レイアウトの適正化やコスト上昇に伴う販売価格の見直し、原価低減活動などを推進してまいります。くわえて、成長が見込まれる分野・地域に対しては経営リソースを集中させ、事業や技術の可能性を追求してまいります。とりわけインドをメインのターゲットとし、現地法人であるシンデンゲン・インディア・プライベート・リミテッドの生産性向上と営業活動を強化するほか、事業シナジーの創出による製品開発や市場のニーズに対応した製品の生産・販売に注力してまいります。これらを含む諸施策を確実に実行することにより、2026年3月期からスタートする第17次中期経営計画につなげてまいります。

 

④資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの資金状況は、営業活動によるキャッシュ・フローで前連結会計年度より529百万円少ない2,206百万円のプラスとなりました。これは、主に減価償却費が5,528百万円となったことによるものであります。投資活動によるキャッシュ・フローでは、前連結会計年度より2,311百万円少ない1,776百万円の資金を使用いたしました。これは、主に有形固定資産の取得による支出によるものであります。財務活動によるキャッシュ・フローでは、前連結会計年度より3,296百万円少ない252百万円の資金を使用いたしました。これは、主に長期借入金8,800百万円の資金調達をしたものの、長期借入金の約定弁済が5,895百万円、社債の償還による支出が1,504百万円となったことによるものであります。

これにより当社グループの有利子負債の残高は38,903百万円となり、前連結会計年度末に比べて1,373百万円増加いたしました。しかし、手元資金の残高は前連結会計年度末に比べて1,193百万円増加し、26,340百万円となり、必要な手元流動性は十分に確保されていると考えております。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定または締結などはありません。

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発体制は、おもに基礎研究および応用技術開発を担当する技術開発センターと、商品開発を担当する各事業部門およびグループ会社の設計・開発部門で構成しております。

企業ミッションである「エネルギーの変換効率を極限まで追求することにより、人類と社会に貢献する」のもと、技術開発センターでは当社グループの主要事業領域に新たな技術を移管していく取組みを続けております。半導体デバイス分野においては、低損失技術の開発、高速・高温動作対応および複合部品化の実装技術開発を主要テーマとして取組んでいます。パワーエレクトロニクス分野においては、主に高効率技術、高密度実装技術および低ノイズ化の研究開発を推進しています。これらの研究課題を解決し、当社のコア技術を活かしたシナジー効果により商品力強化を図るとともに、市場の要求や用途に適した新商品をタイムリーに開発してまいります。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は5,611百万円(売上高比5.5%)であり、各セグメントの主な成果および研究開発費は以下のとおりであります。

 

(デバイス事業)

当セグメントの研究開発活動として、ダイオードは高性能なファストリカバリーダイオードやブリッジダイオードさらにSiCショットキーバリアダイオードのシリーズ展開の開発を実施しました。さらにウェーハ大口径化かつ低コスト化を実現する新構造の技術開発を継続して推進しています。

MOS製品では、車載用の低ノイズかつ低Ronな新構造第1世代MOSの耐圧やパッケージへのシリーズ展開の開発を実施したほか、第2世代となる新構造の技術開発を実施しました。またSiCMOSのシリーズ展開の開発を実施したほか、SiのMOSとして高耐圧となる1200Vの技術開発及びケルビン端子を搭載する面実装新パッケージの技術開発を実施しました。

パワーモジュール製品では、xEV向けDC/DCコンバータ用のMOSモジュール開発を継続したほか、各種モータのインバータ用のMOSモジュールのシリーズ展開の開発を実施しています。くわえて顧客対応のフルカスタムモジュールやSiCMOSフルブリッジモジュールの開発を推進しています。

IC製品では、内製二輪車用のモータドライバーICの開発を実施したほか、理想ダイオードのマルチチップ化製品の開発を推進しています。

当事業に係る研究開発費は2,121百万円であります。

 

(電装事業)

当セグメントの研究開発活動として、二輪分野では、内燃機関製品向けにセンサレスモータの駆動制御技術の確立と付加機能としてアシスト制御技術の確立を推進しています。また、電動車向け製品では、PCUのマップレス回生制御技術やサージ低減技術を確立、環境負荷低減のために樹脂モールドレス防水構造の確立を推進しています。

四輪分野では、プラットフォーム技術を取り入れた高電圧入力・高出力電源の開発や付加機能としてプリチャージ機能について技術を確立しました。

汎用分野では、二輪電動車向けバッテリー充電器用に昇高圧PFC技術を確立しました。

共通実装技術では、製品の小型化に寄与する高密度実装技術としてリードレスのBGA、SON、QFNパッケージの採用に向けた実装技術の確立に取組んでいます。更に、シミュレーション技術の向上としてゴム解析や樹脂流動解析に取組むなど、製品開発のフロントローディングに繋がる活動を推進しています。

当事業に係る研究開発費は1,339百万円であります。

 

(エネルギーシステム事業)

当セグメントの研究開発活動として、EV・PHEV用充電器では、高出力急速充電器の製品ラインナップを拡充すると共に重要顧客向けカスタム対応の開発に取組みました。その他、OCPPネットワークと接続可能な普通充電器を開発しました。

情報・通信市場分野では、高効率・小型化した大容量48V電源ユニット製品の開発を行いました。また、共通技術として監視装置用マイコンプラットフォームとして64bitCPUボード検討と共通ソフトウェアの技術開発に取組みました。

当事業に係る研究開発費は431百万円であります。

 

(全社共通)

全社共通に係る研究開発費は1,719百万円であります。