当社グループの基本方針は粗利益率及び在庫回転率の最大化を目的とし、市場環境に応じて適正在庫を管理し、適正価格で販売することにより限界収益の極大化を図ることにあります。その中にあって、中古ブランド品の流通は越境ECをはじめ全世界的規模で拡大し、当社グループが展望していたとおり、中古ブランド品事業の物品はその物流がグローバルに展開しております。
かかる状況下、当社グループのビジネスモデルはCtoBの商品買取を基本とし、さらにBtoCの商品販売を展開することにより、一般顧客より高く買取り、その都度市場状況を判断し、在庫リスクを極小化しつつ、在庫回転率を最大化することで商品リスクを回避して顧客に商品を提供してきております。また、不況期に強い安定的な収入が期待できる質屋業を併営しており、併設している質料収入及び上記適正在庫管理、収益管理に努めております。 当連結会計年度における世界経済は、インフレ鎮静化の影響や労働市場の安定により、全体的に底堅い成長を維持してきました。米国が堅調な消費に支えられ比較的高い成長を維持した一方、欧州はエネルギーコストやウクライナ情勢の影響で成長が鈍化、中国経済は不動産市況と内需の弱さから回復が遅れ、グローバルなサプライチェーンにも影響を与えました。米国・トランプ政権の誕生で、ウクライナ紛争やガザ紛争は終息の気配が見えつつありますが、一方で関税政策が世界を揺るがせており、目を離すことができない状況です。
我が国の経済は、個人消費の増加を背景に緩やかな回復が続き、2025年3月に発表された2024年年次の実質GDP成長率は+0.1%となりました。実質賃金は、1年を通しては物価高に追いつけない状況でしたが、春闘での賃上げ率は 5%を超える見込みであり、改善が期待されるところ、日経平均株価は、7月に42,000円台になるなど、2024年度は堅調な1年でした。国内外の資産効果もあり、ブランド品の需要が百貨店を中心に回復してきているところです。実際に、百貨店における2024年度年間の売上は5兆7,697億円で前年度比4.6%増となっております。中でも免税売上に関しては、約6,717億円で前年比72.8%を記録しており、大黒屋においてもインバウンド需要の拡大は追い風となっております。
当社グループを取り巻く古物売買業界の事業環境はSDGs推進によるリユース意識の高まりや円安による物価高により需要の拡大が見込まれております。また、コロナ禍から世界経済が正常化したことや3年前の120円台から2割ほど円安が進んでいる歴史的な円安の状況を踏まえ、インバウンド復活がピーク時の2019年レベルを超える状況となっております。特に、円安は、当連結会計年度の月平均152.64円(前年度の月平均144.54円、5.6%円安)であり、当社の売上高の半数近くを占めるインバウンドの購入者のドルベースでの購入価額が安くなっており、買取・販売が増加しつつあります。当社グループでは、買取・販売の増加が見込まれることに伴い、今後の新たな収益機会に備えた体制を整え、攻めの経営を行ってまいります。
当連結会計年度は、当社連結子会社である株式会社大黒屋(以下「大黒屋」という。)がこれまで長年培ってきた AIとDXを用いた先進的な技術を世に送り出したキックオフの年度となりました。大黒屋は、AIダイナミックプライシング技術及びデータ補正技術を独自に開発し、LINEヤフー株式会社(以下「LINEヤフー」という。)及び株式会社メルカリ(以下「メルカリ」という。)との業務提携を推進しております。大黒屋が構築したこれらの技術基盤をAPI接続し、提携先の業務に沿って提供することで、買取・販売のプロセスを効率化し、透明性と利便性を飛躍的に向上させるものであり、提携企業との連携をさらに深化させる要因となっております。
今後の当社グループの連結収益の改善並びに経営基盤の強化を図るために対処すべき課題とその対処方針は以下のとおりであります。
<優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題>
①AIを活用した未来の買取システム等の時代を先取りする技術の駆使
<技術基盤構築の背景・競争優位性>
●背景
大黒屋は、ブランド品の買取・販売、質屋業に加え、事業の高度化を目的に、過去 7~8年にわたりデータベースの正規化に取り組んできました。その成果として、長年の査定 業務で蓄積したデータを基に、 AIによるダイナミックプライシング技術を開発し、査定プロセスの高度な自動化を実現しています。
●大黒屋が開発したAIシステムの概要
従来は熟練の鑑定士が市場動向や商品の状態を踏まえて価格を判断していましたが、大黒屋では、その知見をAIに学習させ、機械学習アルゴリズムと組み合わせることで、瞬時に適正価格を算出できる仕組みを構築しました。ブランド名やモデル名に加え、年代・状態・付属品の有無など20項目以上の属性情報を整理し、画像データや取引履歴、過去の顧客実績と組み合わせて分析することで、高精度な価格提示が可能となっています。また、記載情報や画像のばらつきに対しても、独自のAIがデータ補正を行い、常に一貫性のある価格を提示でき、リアルタイムで市場価格の変動にも対応できる体制を整えています。「⑴事業の状況、①事業の経過及びその成果、「(1) 技術基盤構築の背景・競争優位性」で記述したとおり、大黒屋の中古ブランド品という専門領域において、大黒屋が構築したスペシフィックドメインAIは、他社が容易に再現できない持続的な競合優位性の源泉です。LINEヤフー社との「おてがるナンデモ買取」における、LINE公式アカウント上のLLMを組み込んだ大黒屋独自のAIチャットボット及びメルカリとの「買取リクエスト」における、進化したAI自動買取システムといった時代を先取りする技術を不断に進化・発展させてまいります。
●AIにより大量の商品処理が可能に
AIにより、様々な業務オペレーションの効率化を実現しております。従来アナログで行っていた査定業務の作業時間の短縮が可能となり、オペレーションを大幅に改善(作業時間を50%以上削減)することができます。また、メルカリとの業務提携においては、将来的に、一日あたり10万件の買取オファーを自動実行することを見込んでおり、人的リソースの制限を受けることなく事業の拡大も可能となっております。
●AI企業としてのポジショニング
中古ブランド品という専門領域において、大黒屋が構築したスペシフィックドメインAIは、他社が容易に再現できない持続的な競合優位性の源泉です。こちらを軸として、自社のDX化はもちろんのこと、中古ブランド品を取り扱ったことのない企業に対しても、システム・オペレーションを提供することにより、日本全体で資産の可視化・価値の最適化を通じて、当社のAI企業としてのポジショニングを確立してまいります。
②異業種との業務提携
<LINEヤフーとの業務提携>
大黒屋とLINEヤフーは、業務提携契約に基づき、2024年7月1日より「おてがるブランド買取」(現在は「おてがるナンデモ買取」)サービスを開始しました。以下が本取組の内容と競合優位性であります。
●誰もが即時に資産価値を把握・買取申込ができる仕組みを構築
大黒屋のAIダイナミックプライシング技術を活用し、LINEヤフーのプラットフォームを通じてユーザーが手軽に所持品の査定・買取を申し込める仕組みを大黒屋が構築いたしました。本取組は、大黒屋のAIダイナミックプライシング技術及びLINE公式アカウント上のLLMを組み込んだ大黒屋独自のAIチャットボットを活用し、LINE・実店舗を通じてユーザーが手軽にブランド品の査定・買取を申し込めるサービスとなっております。AI査定システムにより、ユーザーは数秒以内に市場価格に基づいた買取金額のレンジを確認でき、査定結果を迅速に提示できる環境を整備しております。また、AIチャットボットの導入により、査定から買取手続きに関する問い合わせを自動化することで、ユーザーの利便性が向上したことにより、今まで買取を行ったことがなかった顧客の需要喚起も見込めるものと期待しております。
●価格の透明性・公平性を担保するビジネスモデル
本取組は、買取からYahoo!オークションまでを一気通貫でつないだシステムを構築したことで実現し、大黒屋が責任をもって、落札価格に応じた還元を行うことで、価格の透明性・公平性を担保するビジネスモデルを設計いたしました。
●おてがるナンデモ買取のユーザー数は17万名弱(3/31時点)
上記システムの構築及び過去の大黒屋店舗における買取・販売実績により、本取組は現在、買取方法を拡大し「おてがるナンデモ買取」の概念実証を実施しており、ユーザー数も17万名弱まで達し、AI自動査定サービスを搭載したLINEアカウントとしては国内最大級規模まで成長し、引続きLINEヤフーとの共同マーケティングを進めております。
●小売事業者・中古ブランド品市場の変革の可能性
基本的なシステムを提供・オペレーション業務を引き受け、LINEヤフーと共同で事業を行うことにより、今まで手動で行ってきた査定業務が、AIによる自動化が可能となったことで、中古ブランド品業界に未進出の企業が即時に業界進出できるようになるという市場変革の可能性を有しております。LINEヤフーとの業務提携につきましては、引続き「おてがるナンデモ買取」での概念実証)・共同マーケティングを実施していきます。
<メルカリとの業務提携>
大黒屋の技術力の証明として、大黒屋はメルカリとの間でも業務提携を行い、その共同施策として、メルカリアプリ内の新サービスとして、「買取リクエスト」を2024年12月19日より提供しました。以下が本取組の内容と競合優位性であります。
●「買取リクエスト」の仕組み
メルカリのプラットフォームとAPI接続した上で、大黒屋のAIダイナミックプライシングシステム及びデータ補正技術を拡張し、査定から買取までをシームレスに連携させた仕組みを構築しております。
●AIによる査定によるUX改善・オペレーション効率化(作業時間を50%以上削減)
AIによる査定は、メルカリ上に出品された商品データをリアルタイムで大黒屋が分析し、最新の市場価格に基づい
た買取価格を提示するものであり、従来の査定・買取プロセスに比べ、換金のスピード及び利便性が大幅に向上します。また、大黒屋のオペレーションにおいても、アナログでの査定業務の作業時間の短縮が可能となり、オペレーションを大幅に改善(作業時間を50%以上削減)することができます。
●AI査定による商品の処理能力(最大一日あたり10万件の買取オファーを実施)
今後は、メルカリ上に出品されるブランド品データを100万件/日自動抽出し、AIによる自動BID(入札)システムを導入し、AIトレーニングデータの収集・価格補正を進め、査定精度を向上させ、大量の査定を即時に行うシステム
(10万件/日の買取オファー)へと進化させてまいります。さらに、属性情報の最適化を通じて、より精度の高い査定価格の提示を実現し、メルカリの売り手にとって魅力的な買取サービスを提供していきます。
③相場変動への適時対応、適正価格での在庫保有
当社グループを取り巻く古物売買業界の事業環境は、コロナ禍後、中国を除いたインバウンド客は円安の状況を受けて、過去最高になっております。また、コロナCOVID-19下のリベンジ消費、歴史的円安とそれに伴う値上げラッシュ、トランプ関税が世界を揺るがす等、相場の不安定さは次期も続くと考えられます。かかる状況下、大黒屋では、CtoBの商品買取を基本とし、更にBtoCの商品販売を展開する際に、相場変動への適時対応やシステム内に構築された価格データを駆使して一般顧客より高く買取り、他の顧客に安く販売するというビジネスモデルを展開しております。特にバッグにおいては在庫回転期間が30日以内で推移しています。かかる状況を踏まえ、引き続き、相場の状況を注視しながら余剰在庫を削減し、適正価格による在庫の確保を進めてまいります。
④質屋事業の強化
コロナ禍において、庶民金融である質屋業が個人の逼迫した資金ニーズを賄うものとして改めて再認識されました。大黒屋では創業以来76年で培った「質の大黒屋」としてのノウハウを活用して、顧客ニーズに応えるべく値付・真贋のできる店舗スタッフを育成・強化するとともに、来店できない顧客には訪問質預りで対応する等顧客の要望に応えてまいりました。質屋業界最大手として今後も更に一層庶民金融の一翼を担ってまいります。
⑤電機事業の事業構造改革の実施
電機事業については、生産体制の更なる効率化や製品の統廃合や在庫管理の強化により製造原価の逓減を進め、利益率が向上してまいりました。
今後も引き続きお取引先に理解を得ながら不採算製品の削減や在庫圧縮を徹底するとともに製造間接費の更なる削減を実施してまいります。
⑥キャッシュ・フロー重視の経営と経営基盤の拡充
質屋、古物売買業の強化、電機事業の抜本的な事業構造改革及び本社経費の削減等により、営業利益拡大を図るとともに事業リスクを逓減させ投資の回収を図り、キャッシュ・フローを重視した経営を進めてまいります。
⑦次期の見通し
次期におきましては、引続きインバウンド客数は増加すると考えており、中国以外の訪日客も含めて、大黒屋の利用を促すよう努めてまいります。また、この状況を踏まえながら、資金調達に努め、在庫量の増を図ってまいります。
大黒屋とLINEヤフーとの業務提携につきましては、「おてがるナンデモ買取」の概念実証を着実に進めてきており、引続きLINEヤフーとの共同マーケティングを実施していきます。価格の透明性・公平性を担保するビジネスモデルとして設計したため、査定業務をAIによる自動化を可能としたことから、中古ブランド品業界に未進出の企業が即時に業界進出できるよう、その環境整備と働きかけを行ってまいりたいと考えております。
メルカリとの業務提携につきましては、「買取リクエスト」での、1万件/1日の買取オファーを出せる進化したAI自動買取システムにより、次期においては、買取約1,350百万円、売上約1,500百万円を見込んでおります。
提携事業の進捗や新株予約権の行使(約2,100百万円の調達予定)が進み、資金が大黒屋に還元されること等により、落ち込んだ在庫水準をコロナ前の水準に戻すことを目指します。具体的には、2018年3月期においては約36億の在庫があり、商品の平均単価は現在約1.36倍となっていることから、現在では約50億の在庫処理キャパシティを保有していると考えており、約50億の在庫の水準まで積み増すことを最優先目標としております。これを達成することによって、メルカリとの業務提携の1,500百万円分を含め、2026年3月期に、売上高約17,107百万円を達成できる見込みと考えております。
以上の具体的戦術を含め、大黒屋は、今後AIダイナミックプライシング技術の更なる高度化を図り、大量の商品を扱うことを可能にするリスク管理の強化及び需給変動(volatility)に対応できる価格調整機能を強化してきました。さらに、プラットフォーマー・提携企業との取組を通して、大黒屋が蓄積した買取・販売データを活用し、より精度の高いデジタルマーケティング及び顧客管理を実現する仕組みを構築してまいります。購買履歴や市場動向の分析を通じて、パーソナライズされた査定価格の提示や、最適なタイミングでの再販機会の提供を行うことで、ユーザー体験の向上を図ります。
大黒屋のAI技術を最大限に活かし、LINEヤフー及びメルカリとの提携を更に進化・深化させ、持続的な成長を目指してまいります。また、LINEヤフーやメルカリのようなプラットフォーマーや実店舗を保有する企業と、大黒屋が開発してきた技術とを融合し、提携企業が持つブランドの信頼性と当社開発のAI及びダイナミックプライシングモデルを活用したビジネスモデルによる価格の透明性をもって、古物売買業界の改革を進めていくとともに、これまでの大黒屋店舗や大黒屋自身のECに依存せずに、短期間での買取ルート拡大を目指してまいります。現実の店舗を有する他の企業と協業することにより、大黒屋の査定、鑑定、買取のERPをAPIで提供することで、既存小売とネット事業との融合を進めていきます。
今後、DX及び企業の資産効率の追求は重要な課題だと認識しており、大黒屋が買取事業を他の企業に付与することで、既存店舗の売り場面積当たり利益と顧客の流れが強化される付加価値を産み出すフローをつくることができ、他の企業のROA及びROEを強化していくことができるものと確信しております。
また、大黒屋はこれまで在庫水準に関わらず安定した在庫回転率を維持してきた実績があります。そのため、増加した在庫に対しても過去の平均回転期間(2.4か月)を基に収益貢献が期待され、EBITDAの向上につながると考えています。
以上の状況を踏まえ、次期の2026年3月期(2025年4月1日~2026年3月31日)は次のとおり見込んでおります。
2026年3月期連結業績見通し(2025年4月1日~2026年3月31日)
〔連結〕 (単位:百万円)
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売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
親会社株主に帰属する 当期(中間)純利益 |
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中間期 |
7,284 |
199 |
76 |
△89 |
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通期 |
17,107 |
879 |
655 |
148 |
本資料に掲載されている業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
当社グループの主な事業である中古ブランド品の買取及び販売事業は、リユース事業であり、サステナビリティに対する取組みそのものと考えております。リユース事業は限りある資源を再利用することで廃棄物を削減し、CO2の排出削減に貢献できる事業であると考えております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
(1)ガバナンス
当社グループは、急速に変化し続ける事業環境に即応するため、外部環境の変化によるリスク及び機会を適宜把握し、取締役会の中で対応策について討議し意思決定をしております。社会・環境の変化に伴うサステナビリティに関する取組みについても、今後取締役会にて活動内容の報告を行い、活動を推進してまいります。
(2)戦略
(3)リスク管理
当社グループでは、事業活動に関する一般的なリスク及び当社グループ事業特有のリスク、事業継続リスク(BCP)をも包括したERM(Enterprise Risk Management)に対応する過程において、企業活動の長期的課題であるサステナビリティに関連するリスクも把握・抽出し、取締役会において施策を立案し、施策の実施及び進捗状況管理を行ってまいります。
(4)指標及び目標
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①全社的なリスク
ⅰ.企業買収及び業務提携等について
当社グループは、経営の効率化と競争力強化を行い株主利益最大化のため、企業買収及び資本参加を含む投資、他社との業務提携等による事業の拡大を行うことを目指しております。しかしながら、企業買収及び業務提携等が円滑に進まない、あるいは当初期待した効果が得られない可能性もあります。また、他社が事業戦略を変更した場合には、当社グループは資本参加、業務提携関係等を維持することが困難になる可能性もあります。
ⅱ.資金調達に関するリスク
当社グループは、企業買収等や運転資金のため必要に応じてエクイティファイナンスにより資金調達することがあります。当社の事業内容や将来のビジネスの潜在性に興味を持つ投資家はおりますが、ファイナンスの条件やスキームについては交渉を要することから、機動的な調達には制限があり、事業活動に影響を与える可能性があります。
ⅲ.情報システムに関するリスクについて
当社グループは、多くの業務において情報システムを利用しております。当社グループは、情報システム利用に係る信頼性向上のため様々な対策を実施し、業務を継続的に運営できる体制を整備していますが、テロ、自然災害、ハッキング、人為的ミス、コンピュータウィルス等により情報システムの不具合、故障が生じる可能性があります。この場合、業務が一時的に中断し、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を受ける可能性があります。
ⅳ.海外子会社について
当社グループの中には海外子会社(SFLグループ及び上海黛庫商業有限公司)がありますが、海外子会社の運営に際しては為替変動リスクがあるほか、各国及び各地域等の経済情勢、政治情勢、法規制、税制等の変化による影響や、ビジネス慣習の違い等、特有の業務上のリスクがあります。そのため、事業撤退段階にあるSFLグループにつきましては、当社が想定する撤退計画に遅れが生じるリスクがあります。その他、当社が想定する海外の新規店舗の出店時期に遅れが生じるリスクがあります。また、今後、当社グループ内に占める海外子会社の売上、利益の割合が増加し、各国及び各地域等の経済情勢等に変動があった場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
ⅴ.会計基準及び税制等の変更について
新たな会計基準の適用や新たな税制の導入・変更によって、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、税制等の改正により、当社グループの税負担が増加する可能性があります。
ⅵ.情報の流出について
当社グループは、事業活動において顧客等のプライバシーや信用に関する情報(顧客等の個人情報を含む)を入手し、他企業等の情報を受け取ることがあります。当社グループは、これらの情報の秘密保持に細心の注意を払い、情報の漏えいが生じないよう最大限の管理に努めていますが、不測の事態により情報が外部に流出する可能性があります。この場合には、損害賠償等の多額な費用負担が生じ、また、当社グループの事業活動やブランドイメージに影響が及ぶ可能性があります。また当社グループの事業上の重要機密が第三者に不正流用される恐れもあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
②質屋、古物売買業のリスク
ⅰ.中古品の仕入について
中古品は新品と異なり仕入数量の調整が難しく、安定的に商品を確保することが経営施策上極めて重要であります。このため商品の仕入については、店舗にて個人顧客から買取他、出張買取、宅配買取及び中古ブランド売買市場で中古ブランド品の調達を行っております。
中古品は新品に比して粗利が高い傾向にありますが、今後の景気動向や新たな競合先の出現等による仕入価格の上昇や商品数の不足等により、安定的な商品の確保に支障をきたした場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅱ.コピー品の買取及び質預りリスクについて
中古ブランド品小売業界及び質屋業界において、コピー品に関するトラブルは社会的に重要な問題となってきており、質屋、古物売買業を営む株式会社大黒屋(以下「大黒屋」という。)にも買取品或いは質草としてコピー品が持込まれる可能性があります。大黒屋におきましては、日頃から買取担当者の真贋鑑定能力を養い、高度な専門知識と豊富な経験を持った買取担当者を育成することにより、コピー品の買取及び質預り防止に努めており、誤ってコピー品の買取及び質預りをしてしまう件数はごくわずかです。しかしながら、当業界においては、常にコピー品に関するトラブル発生のリスクが潜んでおり、大きなトラブルが発生した場合、大黒屋の取扱品に対する信頼性が低下することにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅲ.盗品の買取及び質預りリスクについて
大黒屋が買取った商品あるいは質預り品が盗品であると発覚した場合、古物営業法及び質屋営業法では1年以内は、これを無償で被害者又は遺失主に回復することとされております。大黒屋においては、コンプライアンスの観点から、古物においては古物営業法に基づく古物台帳、質物においては質屋営業法に基づく帳簿の徹底管理を行うことで、被害者又は遺失主に対し適切な対応ができる体制を整えており、盗品の買取及び質預りをしてしまう件数はごくわずかです。しかしながら、盗品を取り扱った場合には、大黒屋の取扱品に対する信頼性が低下することにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅳ.買取担当者等について
当業界における中古品の仕入買取価格については、金等のように相場があるものを除き、あらかじめ価格が決定しているものではありません。したがって、商品の真贋鑑定を適正に行い適正価格で買取を行うことや質物の預りにおいても同様に真贋鑑定を適正に行う必要があります。そのため、大黒屋にあっては、人材の養成と確保への取組みの強化が重要です。人材育成のため研修制度の充実や賃金体系を含めた人事制度の構築により対応しておりますが、このような買取担当者等の養成や確保が進まない場合や買取担当者等の退職は大黒屋の仕入や店舗施策等に重要な影響を与え、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅴ.為替変動について
大黒屋が取り扱う中古品は、大半が輸入ブランド品ではありますが、これらの仕入は円建で行われ、また、販売価格は仕入買取価格に連動して変動するため業績への影響は限定的と認識しておりますが、急激な為替相場の変動による国内外の需要の変化によって当社グループの業績に重要な影響を与える可能性があります。なお、為替の円安傾向への変動は、販売において外国人旅行客にとって割安感が生まれ免税売上が増加します。一方、円高傾向への変動は、国内の購買層に割安感が生まれ国内売上増加に寄与します。
ⅵ.商品在庫について
大黒屋の取扱商品は時代の流行や市場ニーズに合わせながら変化する商品が大半であり、商品が陳腐化し長期滞留在庫とならないように、常に在庫回転期間の目安として平均90日を維持することを念頭に置き販売価格を設定し適正在庫の維持に努めておりますが、その流行やニーズの変化により商品が陳腐化し長期滞留在庫を招く可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅶ.質草の取扱いについて
質取引は、質屋営業法に基づき、顧客(質置主)から物品(有価証券等を含む)を質草として預り、流質期限まで当該質物で担保される債権の弁済を受けないときは、当該質草をもってその弁済に充てる旨の約款を附して顧客に金銭を貸付けるものです。また、質契約の期限が経過したもの及び経過しようとするものに対して、利入れすることにより期限延長することができます。顧客は流質期限前に、いつでも元利金を返済して、その質草を受け戻すことができます。そのため、顧客に返却する質草については、劣化や盗難による紛失等に備えるため、法的に定められた保管場所である質蔵にて厳重に保管しており、劣化や盗難による紛失等による影響は限定的であると認識しておりますが、保管中の質草の劣化や盗難による紛失等があった場合には当社グループの業績に重要な影響を与える可能性があります。
ⅷ.出店施策について
a.新規出店について
大黒屋は、現在首都圏(16店舗)を中心に近畿圏(4店舗)、中部圏(2店舗)、東北地区(1店舗)及び九州地区(1店舗)にて、計24店舗を展開しております。
出店先の選定にあたっては、物件の状況、契約条件、周辺地域の人口やその動態、交通の便、競合他社の店舗の状況等を勘案して判断しております。このため、大黒屋の望む時期に望むような物件を確保できない場合、さらに新店舗への設備投資、商品供給及び人材確保等が遅延した場合には、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
b.賃借契約等について
大黒屋では、出店に際して賃借物件による店舗施策を基本方針としております。よって、当該物件を借り受けるに際し、賃貸人に対し、敷金及び保証金を差入れております。敷金及び保証金は、契約解消時に返還されることになっておりますが、賃貸人の事情によっては、その一部又は全額が回収できなくなる可能性があります。また、大黒屋の都合で契約を中途解約した場合には、契約内容によってはこれらの一部が返還されなくなる場合があるとともに、大半の店舗が賃借店舗であることから、何らかの理由により契約が更新できない場合や契約更新時などに賃料が上昇した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
c.営業エリアの集中について
大黒屋においては、経営の効率化及び経営資源の集約化を図るべく首都圏、近畿圏及び中部圏といった日本における三大都市圏に店舗展開しています。このため、各都市圏において地震、風水害又はその他の異常な自然現象により、大黒屋が物的及び人的な損害を受けた場合、事業拠点の移転や損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
さらに、大黒屋が出店している地域において、自然災害に起因して生じる電力不足、通信途絶又は運輸機能の停止等ライフラインの途絶が発生した場合や行政からの避難命令・勧告等により営業継続が困難となった場合にも当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
ⅸ.法的規制について
a.古物営業法に関する規制について
大黒屋が取扱う商品は「古物営業法」に定められた「古物」に該当するため、出店に際しては管轄する各都道府県公安委員会から営業許可を受けています。大黒屋では同法に従って適切に業務を遂行するため、古物台帳による管理の徹底、古物営業法に基づく社内マニュアルの整備、社員教育等を実施しております。本日現在大黒屋において許可の取消事由は発生しておりませんが、万一同法に定める規則に違反した場合には、営業許可の取消、又は営業停止等の処分を受ける可能性があり、その場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
b.質屋営業法に関する規制について
大黒屋は古物以外に「質屋営業法」に定められた質屋業を営んでおり、質屋の出店に際しては管轄する各都道府県公安委員会から営業許可を受けています。大黒屋では同法に従って適切に業務を遂行するため、質帳簿による管理の徹底、質屋営業法に基づく社内マニュアルの整備、社員教育等を実施しております。本日現在大黒屋において許可の取消事由は発生しておりませんが、万一同法に定める規則に違反した場合には、営業許可の取消又は営業停止等の処分を受ける可能性があり、その場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
c.その他の法的規制について
大黒屋が規制を受けているその他の法律には、「犯罪収益移転防止法」、「特定商取引に関する法律」、「建築基準法」及び「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」等があります。なお、短時間労働者に対する社会保険適用基準の拡大等の各種法令の改正等に伴い、新たな対応コストが発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
ⅹ.有利子負債依存度について
株式会社大黒屋では、当連結会計年度末現在、資金調達は金融機関からの借入で行っております。大黒屋の仕入商品の買取は全て現金決済にて行われているため、常に運転資金が必要な事業形態となっております。また、業容拡大に伴う出店及び改装に係る費用を、主として金融機関からの借入により調達していることから、今後の出店及び商品調達の状況により、大黒屋の有利子負債依存度は比較的高水準で推移する可能性があります。
今後は業績拡大、収益性の向上により内部留保を確保し、財務体質の強化に努める方針でありますが、金利動向等の金融情勢や取引金融機関の融資姿勢等の変化により、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
ⅺ.借入金の返済について
借入金は、資金調達に係る流動性リスク(支払期日に支払いを実行できなくなるリスク)に晒されております。資金繰り計画を作成・更新するとともに、手元流動性を一定額以上維持すること等により流動性リスクを管理しておりますが、業績の悪化等により借換先が見つからない場合や一時的な資金支出の増加により、弁済期日通りに借入金を返済できない場合、当社グループの事業及び財政状態に著しい影響を及ぼす可能性があります。
ⅻ.財務制限条項について
一部の借入金については、金融機関に流動資産及び固定資産の一部を担保に供しており、財務制限条項(レバレッジ・レシオ、利益維持、純資産維持)が付与されています。本条項に抵触し、金融機関より権利行使がなされた場合には、当社グループの財政状態に著しい影響を及ぼす可能性があります。
③電機事業のリスク
ⅰ.製品の安全性について
電機事業においては、一世紀弱に及ぶ技術開発の成果として、多くの製品に工業所有権・ノウハウを有しておりますが、そもそも可燃性物質を取り扱う等厳しい環境下で使用される製品であること、昨今の仕入先の状況からくる品質の低下若しくは品質検査漏れ又は熟練工確保状況等によっては、製品の使用に関連して火災事故等の人命に関わる事態に巻き込まれる可能性があります。かかる状況においては、報道状況等によっては、問題のない製品や当社グループへの信頼性の低下を招き、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
ⅱ.法的規制について
当社グループは、防爆仕様の製品を製造することから、さまざまな法的(ガイドライン)規制を受けております。例えば、労働安全衛生法に基づく国家検定に合格する必要がある製品や電気用品技術基準に合格することが必要な製品等があります。当社グループは事業遂行にあたってこれら法令等に違反しないように監視する内部統制機能の充実に努めておりますが、結果として規制に適合しない可能性を完全に排除できる保証はありません。これら法令等の規制等を遵守できなかったことにより、企業としての信頼性の失墜につながる可能性があり、その場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
④継続企業の前提に関する重要事象等
当社グループは、当連結会計年度において、売上高が減少し、経常損失を計上していること、及び株式会社大黒屋の借入金のうち4,350,000千円について財務制限条項に抵触していることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。しかしながら、当社グループの根幹会社である大黒屋は、質屋業としての査定力という強みを活かし、一定の粗利率で商品を買取り、在庫規模にかかわらず一定期間内に商品を販売できるビジネスモデルを確立しております。したがって、現在最低水準となっている在庫水準をコロナ前の水準に戻すことが大黒屋にとって最優先に取り組むべき課題と認識しております。その課題の解決に向けた取組として、在庫資金確保のための資金調達、他企業との連携等による在庫買取強化を行うことで、大黒屋及び当社グループの収益は強化されていくものと考えております。
2024年7月からの「おてがるナンデモ買取」や12月からの「買取リクエスト」といった他業種提携企業との共同施策が進んでおり、2024年11月29日に決議した第三者割当による新株予約権の行使も今後進んでいくことから、資金繰りには問題はないと判断しております。
また、株式会社大黒屋は当連結会計年度末において、先行投資による負担もあり借入金のうち4,350,000千円について財務制限条項に抵触することとなり、その結果として、上記借入金のうち短期借入金である3,500,000千円につき予定されていた借換手続が実行されず履行遅滞が発生しておりますが、今後投資負担の軽減、先行投資の収益化含め経営改善を目標とした事業計画の見直しを行っております。この計画を達成することで財務制限条項抵触を回避する旨を金融機関に説明し、交渉を継続しております。
以上のことから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。
業績等の概要
(1)業績
(1)事業の経過及びその成果
当連結会計年度における世界経済は、インフレ鎮静化の影響や労働市場の安定により、全体的に底堅い成長を維持してきました。米国が堅調な消費に支えられ比較的高い成長を維持した一方、欧州はエネルギーコストやウクライナ情勢の影響で成長が鈍化、中国経済は不動産市況と内需の弱さから回復が遅れ、グローバルなサプライチェーンにも影響を与えました。米国・トランプ政権の誕生で、ウクライナ紛争やガザ紛争は終息の気配が見えつつありますが、一方で関税政策が世界を揺るがせており、目を離すことができない状況です。
我が国の経済は、個人消費の増加を背景に緩やかな回復が続き、2025年3月に発表された2024年年次の実質GDP成長率は+0.1%となりました。実質賃金は、1年を通しては物価高に追いつけない状況でしたが、春闘での賃上げ率は 5%を超える見込みであり、改善が期待されるところ。日経平均株価は、7月に42,000円台になるなど、2024年度は堅調な1年でした。国内外の資産効果もあり、ブランド品の需要が百貨店を中心に回復してきているところです。実際に、百貨店における2024年度年間の売上は5兆7,697億円で前年度比4.6%増となっております。中でも免税売上に関しては、約6,717億円で前年比72.8%を記録しており、大黒屋においてもインバウンド需要の拡大は追い風となっております。
当社グループを取り巻く古物売買業界の事業環境はSDGs推進によるリユース意識の高まりや円安による物価高により需要の拡大が見込まれております。また、コロナ禍から世界経済が正常化したことや3年前の120円台から2割ほど円安が進んでいる歴史的な円安の状況を踏まえ、インバウンド復活がピーク時の2019年レベルを超える状況となっております。特に、円安は、当連結会計年度の月平均152.64円(前年度の月平均144.54円、5.6%円安)であり、当社の売上高の半数近くを占めるインバウンドの購入者のドルベースでの購入価額が安くなっており、買取・販売が増加しつつあります。当社グループでは、買取・販売の増加が見込まれることに伴い、今後の新たな収益機会に備えた体制を整え、攻めの経営を行ってまいります。
当連結会計年度は、大黒屋がこれまで長年培ってきた AIとDXを用いた先進的な技術を世に送り出したキックオフの年度となりました。大黒屋は、AIダイナミックプライシング技術及びデータ補正技術を独自に開発し、LINEヤフー及びメルカリとの業務提携を推進しております。大黒屋が構築したこれらの技術基盤をAPI接続し、提携先の業務に沿って提供することで、買取・販売のプロセスを効率化し、透明性と利便性を飛躍的に向上させるものであり、提携企業との連携をさらに深化させる要因となっております。
このような状況下、当社グループの当連結会計年度の売上高及び利益は、前連結会計年度と比較し世界的波乱要因に対応するため仕入れを抑制したこともあり売上及び利益は減少しましたが、大阪の店舗を中心に粗利率の高い商品の在庫回転期間が縮小したことで売上総利益率は29.9%(前年同期比0.1%増)と前年同期比ほぼ同水準を維持しています。
(売上高)
当社グループの当連結会計年度の売上高は、10,232百万円(前年同期比735百万円減少、同6.7%減)となりまし た。その主な要因は以下のとおりであります。
まず、当社グループの根幹会社である大黒屋において、当連結会計年度の売上高は9,900百万円(前年同期比771百万円減少、同7.2%減)となりました。
この減少要因は、これまでの訪日外国人の大層を占めていた中国人観光客について、不動産不況等に伴う中国経済の不振により訪日客数が回復しなかったことから、2024年は2019年に比してまだ7割強の回復の状況であり売上回復につながりませんでした。また、コロナ下においてリスク回避のために在庫水準を最低水準としたことやファイナンスの約定弁済に伴う運転資金の減少等により、在庫水準がコロナ前の水準と比べ約22億円減少(36億円規模、現在14億円規模)したことによるものです。売上の内訳は、リアル店舗全体での売上高(リアル店舗による販売のこと:以下「リアル」という。)は増加し、5,996百万円(前年同期比162百万円増加、同2.8%増)となり、本部商品売上高
(古物業者市場等への販売のこと) は、1,961百万円(前年同期比511百万円減少、同20.7%減)となりました。ま た、ネット店舗商品売上高(インターネットによる店舗販売のこと:以下「ネット」という。)においては広告効率の改善などの継続的なEC販売の強化活動を展開したものの、在庫水準の低下により962百万円(前年同期比301百万円減少、同23.9%減)となりました。併営する質料収入においては、質屋事業が庶民金融として生活に定着しており、質料(貸付金利息)は841百万円(前年同期比38百万円減少、同4.4%減)となりました。なお、質草預りに伴う営業貸付金残高 (2,118百万円)はほぼ横ばいで推移しており、今後も質料アップが期待されます。
さらに、越境関連としましては、越境EC、ライブショッピングの売上が163百万円(前年同期比210百万円減少、同 56.2%減)となりました。なお、Chrono24は131百万円と減少しています。
(利益)
当社グループ営業損失は904百万円(前年同期比760百万円悪化)となりましたが、その主な要因は以下のとおりであります。
まず、大黒屋において売上総利益は2,920百万円(前年同期比243百万円減少、同7.7%減)となりました。この要因は 店舗商品売上総利益(リアル)が1,391百万円(前年同期比43百万円の増加、同3.2%増)、店舗商品売上総利益
(ネット)は223百万円(前年同期比93百万円減少、同29.4%減)となり、本部商品売上高の売上総利益は455百万円
(前年同期比123百万円減少、同21.4%減)となりました。
大黒屋全体の売上総利益率は29.5%(前期比0.1%減)とほぼ同水準を維持していますが、インバウンド回復等に伴い、買取価格及び販売価格を見直していることが安定的利益率の確保に資しています。また、質料(貸付金利息)は 841百万円(前年同期比38百万円減少、同4.4%減)となりました。なお、質料収入はそのすべてが売上総利益となります。
大黒屋の販売費及び一般管理費につきましては、ポスト・コロナを見据え費用対効果の観点から広告宣伝効率を改善しながら広告投資を積極的に行った結果、3,946百万円(前年同期比466百万円増加、同13.4%増)となりました。 なお、大黒屋では、のれんを計上しているため、当連結会計年度の償却費541百万円を販売費及び一般管理費に含めておりますが、連結決算においては、のれん償却費を消去するため、当該金額を控除した金額で記載しております。
以上の結果、大黒屋の営業損失は1,026百万円(前年同期比710百万円減少)となりました。
一方、連結決算では上記のとおり大黒屋ののれん償却費が相殺されることにより、904百万円の営業損失(前年同期比 760百万円悪化)となりました。当社グループの経常損失は、1,076百万円(前年同期比630百万円悪化)となりました。これは上記営業利益の減少によるものです。
以上の結果、当社グループの税金等調整前当期純損失につきましては1,123百万円(前年同期比570百万円悪化)と
なりました。また、親会社株主に帰属する当期純損失は968百万円(前年同期比429百万円悪化)となりました。
なお、大黒屋において企業評価指標の一つであるEBITDAは、売上総利益率を維持はしたものの、営業利益の減少により△209百万円(前年同期比481百万円の減少)となりました。
以上のとおり、当連結会計年度において減収減益決算となりました。
セグメント別の業績の状況につきましては以下のとおりであります。
イ.質屋、古物売買業
当連結会計年度における質屋、古物売買業の売上高及び営業損失は、それぞれ9,901百万円(前年同期比770百万円の減少、同7.2%減)、517百万円(前年同期比710百万円の減少)となりました。
その主な要因につきましては、業績の概況にて記載しましたように、大黒屋における在庫水準の低下によるもので、売上高及び営業利益は減少しております。
ロ.電機事業
当連結会計年度における電機事業の売上高及び営業利益は、それぞれ330百万円(前年同期比35百万円の増加、同 12.0%増)、113百万円(前年同期比35百万円の増加、同46.6%増)となりました。電機事業においては、今もなお電機業界全体において設備投資の抑制が続いていることもあり、最終ユーザーによる設備の新設工事や点検工事などは年々減少しているのが実情であります。また、資材(原材料)価格の上昇や後継者不足による小規模下請け業者の廃業など、より一層厳しい環境が続いており、当社の電機事業にも大きな影響を与えています。このような状況の下、当社電機事業部門におきましては、適正な利益を確保するため常に販売価格の見直しを行うとともに、製造原価の上昇を抑えるべく仕入先の転換(新規仕入先の拡充等)、現行取引ユーザーとの協力体制の拡充等、さまざまな手法をとって利益率の確保を目指し改善を行っております。
(2)財政状態に関する説明
当連結会計年度における、資産、負債及び純資産の状況は以下のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は、4,870百万円となり、前連結会計年度末に比べ294百万円の減少となりました。これは主に商品及び製品が125百万円増加した一方、現金及び預金が389百万円減少したことによるものであります。固定資産は、1,408百万円となり、前連結会計年度末に比べ55百万円の増加となりました。
この結果、総資産は6,279百万円となり、前連結会計年度末に比べ238百万円減少いたしました。
(負債)
当連結会計年度における流動負債は4,538百万円となり、前連結会計年度末に比べ304百万円の減少となりました。これは主に短期借入金が390百万円減少したことによるものであります。固定負債は746百万円となり前連結会計年度末に比べ 293百万円の減少となりました。これは主に長期借入金が300百万円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は、5,284百万円となり、前連結会計年度末に比べ598百万円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、994百万円となり、前連結会計年度末に比べ359百万円の増加となりました。この結果、自己資本比率は6.3%(前連結会計年度末は△0.0%)となりました。なお、今後、新株予約権の行使が進むことにより純資産が増加し、自己資本比率が改善していく見込みです。
(3)当期のキャッシュ・フローの概況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は559百万円となり、前連結会計年度末から389百万円の減少となりました。 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は、1,193百万円の支出(前年同期は、430百万円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失の増加570百万円、棚卸資産の増加139百万円が影響を与えております。
(投資活動のキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、20百万円の支出(前年同期は、3百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出23百万円及び差入保証金の回収による収入5百万円が影響を与えております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果増加した資金は、824百万円(前年同期は、466百万円の増加)となりました。これは、主に、短期借入金の増減額△390百万円、長期借入金の返済による150百万円、新株予約権付社債の発行による収入100百万円、新株予約権の行使による株式の発行による収入1,260百万円が影響を与えております。
(2)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
電機事業(千円) |
147,222 |
5.6 |
(注)金額は製造原価によっております。
②商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
電機事業(千円) |
51,423 |
19.0 |
|
質屋、古物売買業(千円) |
7,105,552 |
△2.1 |
|
合計(千円) |
7,156,976 |
△2.0 |
③受注実績
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
電機事業(千円) |
336,210 |
9.8 |
60,366 |
10.1 |
(注)金額は販売価格に基づいており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
④販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
電機事業(千円) |
330,692 |
12.0 |
|
質屋、古物売買業(千円) |
9,901,355 |
△7.2 |
|
報告セグメント計(千円) |
10,232,047 |
△6.7 |
|
その他(千円) |
- |
- |
|
合計 |
10,232,047 |
△6.7 |
(注)金額は販売価格に基づいております。
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
(1)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成に際しましては、当連結会計年度末における資産・負債の報告数値及び当連結会計年度における収益・費用の金額に影響を与える重要な会計方針及び各種引当金等の見積り方法(計上基準)につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(2)当連結会計年度の経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、 「業績等の概要(1)業績」 に記載のとおりであります。
(3)当連結会計年度末の財政状態の分析
当連結会計年度における、資産、負債及び純資産の状況は以下のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は、4,870百万円となり、前連結会計年度末に比べ294百万円の減少となりました。これは主に商品及び製品が125百万円増加した一方、現金及び預金が389百万円減少したことによるものであります。固定資産は、1,408百万円となり、前連結会計年度末に比べ55百万円の増加となりました。
この結果、総資産は6,279百万円となり、前連結会計年度末に比べ238百万円減少いたしました。
(負債)
当連結会計年度における流動負債は4,538百万円となり、前連結会計年度末に比べ304百万円の減少となりました。これは主に短期借入金が390百万円減少したことによるものであります。固定負債は746百万円となり前連結会計年度末に比べ293百万円の減少となりました。これは主に長期借入金が300百万円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は、5,284百万円となり、前連結会計年度末に比べ598百万円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、994百万円となり、前連結会計年度末に比べ359百万円の増加となりました。
この結果、自己資本比率は6.3%(前連結会計年度末は△0.0%)となりました。なお、今後、新株予約権の行使が進むことにより純資産が増加し、自己資本比率が改善していく見込みです。
(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析
①当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「業績等の概要 (3)当期のキャッシュ・フローの概況」 に記載のとおりであります。
キャッシュ・フロー関連指標の推移
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|
2021年 3月期 |
2022年 3月期 |
2023年 3月期 |
2024年 3月期 |
2025年 3月期 |
|
自己資本比率(%) |
14.4 |
9.3 |
6.0 |
△0.0 |
6.3 |
|
時価ベースの自己資本比率(%) |
60.6 |
77.8 |
102.9 |
66.4 |
61.7 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
- |
12.1 |
18.5 |
- |
- |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
- |
3.5 |
2.2 |
- |
- |
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
(注2)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
(注3)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
(注4)有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。
(注5)2021年3月期、2024年3月期及び2025年3月期の「キャッシュ・フロー対有利子負債比率」及び「インタレスト・カバレッジ・レシオ」については、営業キャッシュ・フローがマイナスのため、記載しておりません。
②資金需要の主な内容
当社グループの経常的な資金需要のうち主なものは、電機事業における製品製造のための原材料購入、外注費
用及び製造経費、質屋、古物売買業における中古ブランド品の買取及び質草を担保とした資金の貸付け、その
他、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。
当社グループは、営業キャッシュ・フローや金融機関からの借入れ、必要に応じて株式発行等を行い、十分な
資金を確保し財政基盤を強化してまいります。
(4)経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(5)経営者の問題認識と今後の方針について
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(当座貸越契約の期限延長)
1.経緯
大黒屋では、2023年6月13日付「当社連結子会社の株式会社大黒屋における当座貸越契約締結に関するお知らせ」にて公表しました、りそな銀行との極度500百万円の当座貸越契約につきまして、同年10月23日及び同年11月30日付開示の「当社連結子会社の株式会社大黒屋における当座貸越契約の期限延長に関するお知らせ」にて、同年12月29日まで期限延長しておりますが、その期限到来に基づき、鋭意交渉を重ねてまいりましたところ、同年12月28日付で当該当座貸越極度額を100百万円減額して期限を2024年4月30日まで延長していましたが、同日をもって当座貸越契約の延長は終了しております。
2.変更内容
(1)契約期限及び極度額
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|
(変更前) |
(変更後) |
|
期限 |
2023年12月29日 |
2024年4月30日 |
|
極度額 |
400百万円 |
300百万円 |
(資金の借替)
1.経緯
大黒屋では、2020年10月20日に東京スター銀行他より総額5,500百万円、資金の借入を行い、約定弁済を重ねてまいりました結果、2023年10月18日時点で4,500百万円の借入残高、当該借入金の期限は2023年10月23日となっておりました。
当該借入金4,500百万円の返済に対応するため、大黒屋において東京スター銀行、りそな銀行及びハナ銀行との間で交渉を行い、総額4,600百万円の融資(借替え)を受けることについて同年10月18日付けで、3行との間で融資契約の締結に至っております。なお、ハナ銀行は契約当初100百万円提供しておりましたが、2024年10月23日のコミットメントライン引出可能期限をもって貸出を停止したため、元本100百万円及び利息の支払いを行い終了しています。
2.本借入の概要
(1)コミットメントライン(2025年3月31日現在)
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借入先 |
東京スター銀行、りそな銀行 |
|
設定する資金調達枠 |
3,500百万円 |
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借入額に対する金利 |
日本円 TIBOR+2.25% |
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契約締結日 |
2023年10月18日 |
|
借入日 |
2023年10月23日 |
|
当初借入金額 |
東京スター銀行 1,750百万円 りそな銀行 1,750百万円 合計 3,500百万円 |
|
資金使途 |
運転資金 |
|
担保 |
有担保 |
(2)タームローン(2025年3月31日現在)
|
借入先 |
東京スター銀行及びりそな銀行 |
|
借入金額 |
東京スター銀行 425百万円 りそな銀行 425百万円 合計 850百万円 |
|
金利 |
日本円 TIBOR+2.25% |
|
契約締結日 |
2023年10月18日 |
|
借入日 |
2023年10月23日 |
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満期日 |
2026年10月23日 |
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担保 |
有担保 |
(3)財務制限条項
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契約会社名 |
契約締結先 |
契約内容 |
契約期間 |
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株式会社大黒屋 東京都港区港南 四丁目1番8号 代表取締役社長 小川 浩平 |
株式会社東京スター銀行 株式会社りそな銀行 (以上、商業銀行) |
2023年10月18日付け金銭消費貸借契約書に基づき2023年10月23日付けで実行したコミットメントライン借入金3,600百万円及びタームローン1,000百万円には、財務コベナンツ遵守条項として、レバレッジ・レシオ、経常利益維持、純資産維持が付されており、財務コベナンツに違反した場合、本契約に基づく債務について期限の利益を喪失する可能性があります。 なお、コミットメントライン借入金及びタームローンの2025年3月31日現在の残高は3,500百万円及び850百万円となっております。 保有資産に対する担保設定の対象となるのは、エージェントに開設した口座にかかる預金債権、在庫商品その他の動産のうち貸付人が指定するもの、営業貸付債権、クレジットカード会社その他の決済代行業者等に対する売掛債権となっています。 |
(タームローン) 2023年10月18日から 2026年10月23日まで (コミットメントライン借入金) 2023年10月23日以降、毎月15日をコミットメントライン貸付実行希望日とする |
3.本借入の資金の使途
2023年10月18日時点で、大黒屋の2020年10月20日に締結した借入金の残高は、コミットメントライン3,500百万円、タームローン1,000百万円となっております。
2023年10月18日付けの融資契約締結に基づき2023年10月23日付けで実行するコミットメントライン借入金3,600百万円及びタームローン1,000百万円により、3,500百万円の既存借入金を返済し、残り100百万円は運転資金に充当することで借替えを完結しています。
該当事項はありません。