第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当連結会計年度の世界経済は、欧州の政治動向や米国の大統領選等の不確実性が高まる一方、年度の後半は、米国の新政権への期待や、資源価格の回復による新興国の持ち直しにより、世界全体では緩やかな回復が続きました。日本も、個人消費等に弱さがみられたものの、緩やかな回復が続きました。

自動車市場は、米国の過去最高販売や、中国の小型車減税策の継続により、世界全体では堅調に推移しました。日本は、軽自動車の落ち込みは続きましたが、新型車の好調な販売により3年ぶりに前年度を超えました。

 

このような環境のなかで、当社は、2020年デンソーグループ長期方針において、目指す姿として「地球環境の維持」と「安心・安全」を掲げ、それらを実現するために、グループを挙げて取り組んでいます。

当連結会計年度は、環境分野では、車両電動化における一層の技術開発と事業伸展のため、エレクトリフィケーションシステム事業グループを新設いたしました。また、安心・安全分野では、ADAS(高度運転支援システム)/AD(自動運転)に関連する技術開発に取り組むとともに、技術開発を加速させるため、社外との連携も積極的に進めてまいりました。

 

当連結会計年度の業績は、円高の影響があったものの、生産増加や拡販により、売上収益は、4兆5,271億円前年度比26億円増0.1%増)と増収になりました。営業利益は、円高の影響があったものの、売上増加による操業度差益、合理化努力、その他収支の良化により、3,306億円前年度比148億円増4.7%増)、税引前利益は3,609億円前年度比136億円増3.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,576億円前年度比134億円増5.5%増)と増益になりました。

 

セグメント別の業績については、日本は、車両生産の増加により、売上収益は2兆6,860億円前年度比394億円増1.5%増)と増収になりました。営業利益は、生産の増加や合理化努力があったものの、円高の影響等により1,302億円前年度比244億円減15.8%減)と減益になりました。

北米地域は、好調な経済により車両生産が増加したものの、円高の影響により、売上収益は1兆772億円前年度比355億円減3.2%減)と減収、営業利益は、操業度差益等により、600億円前年度比123億円増25.7%増)と増益になりました。

欧州地域は、市場の回復により車両生産が増加したものの、円高の影響により、売上収益は5,773億円前年度比163億円減2.7%減)と減収、営業利益は、操業度差益等により、202億円前年度比58億円増39.9%増)と増益になりました。

アジア地域は、車両生産が増加したものの、円高の影響により、売上収益は1兆1,393億円前年度比220億円減1.9%減)と減収、営業利益は、操業度差益等により、1,127億円前年度比162億円増16.7%増)と増益になりました。

その他地域は、売上収益は658億円前年度比63億円増10.6%増)と増収、営業利益は69億円前年度は20億円の営業損失)となりました。

 

(2) キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローの状況については、現金及び現金同等物(以下、「資金」)は、営業活動により4,678億円増加、投資活動により1,080億円減少、財務活動により2,405億円減少等の結果、当連結会計年度は前連結会計年度と比べ1,211億円増加し、7,936億円となりました。

営業活動により得られた資金は、法人所得税の支払額の増加(前年度比436億円増)等により、前年度に比べ851億円減少し、4,678億円となりました。

投資活動により使用した資金は、負債性金融商品の取得による支出の減少(前年度比4,821億円減)等により、前年度に比べ4,368億円減少し、1,080億円となりました。

財務活動により使用した資金は、借入金の返済による支出の増加(前年度比588億円増)等により、前年度に比べ1,359億円増加し、2,405億円となりました。

 

 

(3) 並行開示情報

IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに関する項目との差異に関する事項は次の通りです。なお、当社は日本基準に基づく連結財務諸表を作成していないため、記載した概算額は一定の仮定の下、把握できる範囲で算出したものです。

 

①有形固定資産の減価償却に関する事項

有形固定資産の減価償却方法について、日本基準では当社及び国内グループ会社は主として定率法を採用していましたが、IFRSでは定額法を採用しています。

この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて、営業利益が30,234百万円増加しています。

 

②確定給付型退職後給付制度に関する事項

数理差異及び過去勤務費用について、日本基準では発生時にその他の包括利益を通じて純資産の部に計上したうえで、従業員の平均残存期間以内の一定の年数により費用処理していました。IFRSでは数理差異は、発生時にその他の包括利益を通じて資本の部に認識後、直ちに利益剰余金へ振り替え、過去勤務費用は発生時に一括でその他の収益又はその他の費用で認識しています。

また、確定給付制度の純利息(日本基準における期待運用収益及び利息費用)について、日本基準では売上原価又は販売費及び一般管理費に計上していましたが、IFRSでは金融費用に計上しています。

この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて、営業利益が3,651百万円増加、金融費用が1,018百万円増加及びその他の包括利益が16,785百万円減少しています。

 

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2016年4月1日

  至  2017年3月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

日本

1,882,224

103.6

北米

1,055,775

97.9

欧州

556,269

96.8

アジア

990,897

96.9

  報告セグメント計

4,485,165

99.8

その他

63,155

102.8

合計

4,548,320

99.9

 

(注) 1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。

2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

(2) 受注実績

連結会社はトヨタ自動車株式会社を始めとして、各納入先より四半期ごとに生産計画の提示を受け、連結会社の生産能力を勘案して生産計画を立てる等、すべて見込生産を行っています。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2016年4月1日

  至  2017年3月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

日本

1,871,838

103.9

北米

1,050,460

97.2

欧州

550,244

96.8

アジア

989,505

97.5

  報告セグメント計

4,462,047

99.9

その他

65,101

110.3

合計

4,527,148

100.1

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しています。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。

相手先

前連結会計年度

(自  2015年4月1日

  至  2016年3月31日)

当連結会計年度

(自  2016年4月1日

  至  2017年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

トヨタ自動車㈱

1,071,967

23.7

1,114,163

24.6

 

3.本表の金額には、消費税等は含まれていません。

 

 

3 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において連結会社が判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

①  魅力ある製品で、お客様に満足を提供する。

②  変化を先取りし、世界の市場で発展する。

③  自然を大切にし、社会と共生する。

④  個性を尊重し、活力ある企業をつくる。

を経営の方針としています。

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

当社は売上収益及び営業利益を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として用いています。

 

(3) 対処すべき課題

当社は、2020年デンソーグループ長期方針として、「地球と生命を守り、次世代に明るい未来を届けたい。」を掲げ、「地球環境の維持と成長の両立」と「一人ひとりが幸せで、安心・安全に暮らせる社会」の実現を目指しています。

社会に目を向けてみますと、今後ますますクルマの保有台数が増加し、自由に移動することによる喜びや幸せを享受できる人々が増える一方で、温暖化ガス排出の増加、交通事故死者数の増加等の解決すべき問題は山積しています。このような中で、クルマが持つ「便利さ」「楽しさ」といった価値を最大化しつつも、温暖化ガスの排出や交通事故といった負の影響は最小化することを当社の使命として取り組んでいます。

また、自動車業界では、「100年に一度のイノベーション」と言われる時代を迎えています。電動化・自動運転・コネクティッド・カーシェアリング等のパラダイムが大きく変化しようとしており、これまで以上にお客様や社会のニーズを先取りして対応することで、社会に貢献してまいります。

 

事業環境の変化が激しいなかで、長期方針の目指す姿を実現していくためには、環境により配慮した電動化への対応やクルマの安心・安全にかかわる機能の高度化、クルマと社会をつなぐ新しいサービスの提供、そしてモノづくりの力を一層高めていくことが必要であり、特に以下の分野について注力いたします。

 

特に注力する分野

1.電動化(ハイブリッド車、電気自動車)
 2.ADAS(高度運転支援システム)/AD(自動運転)
 3.コネクティッド(つながるクルマ)
 4.モノづくり Factory IoT
 5.FA(ファクトリー・オートメーション)事業

 

電動化分野においては、当社は、地球にやさしく、人も快適に移動できる電動車両システムを作り上げることをクルマの中のエネルギーを最適にマネジメントすることにより実現していきます。

当社はこれまで20年間、ハイブリッド車向けに世界トップレベルの性能と品質並びに数量を誇る製品を開発し、提供してきました。更に、ハイブリッド車や電気自動車といった電動化分野での開発強化と事業伸展を加速させるべく、エレクトリフィケーションシステム事業グループを新設しました。

これまで培ってきた電動化製品の磨き上げに加え、車内のあらゆるシステムや製品をつなぎ、走行、発電や発熱といった車両内で発生するエネルギーを効率的に回収・利用し、飛躍的な燃費性能の向上・省電力化を実現します。更に車外情報との連携による道路環境の先読みや、電動化製品の性能を最大限に引き出すアルゴリズムにより、車両全体で最高効率のエネルギーマネジメントを実現します。

当社は、スマートな電動車両システムの提案、並びにそれを構成する製品の開発・提供をしてまいります。

 

ADAS(高度運転支援システム) /AD(自動運転)分野においては、当社は、全ての人が安心・安全に移動できるモビリティ社会を目指し、自動運転技術のリーディングカンパニーとして開発を推進しています。自動運転技術には「認知・判断・操作」という要素がありますが、「判断」・「操作」を適切に行うためには、まず、人の眼に相当する「認知」を高い信頼度で実現することが求められます。当社は、特に「認知」に注力し、これまで車載分野で培ってきたセンシング技術を活かして、ミリ波レーダ、画像センサ(カメラ)、LIDAR、ソナー等の走行環境認識センサをすでに製品化し、多くのカーメーカに採用されています。

また、全世界で適用可能な自動運転技術を確立するために、各国の道路環境や交通環境を踏まえた研究開発を推進しています。日本では、すでに2014年より公道で走行試験を実施しています。そして、日常的にハイウェイが使われるという北米特有の交通環境に合わせた研究開発のために、北米でも公道で走行試験を実施しています。

更に、自動運転技術の開発を加速するため、当社は、カーメーカ、自治体をはじめとする社外パートナーとの連携を強化しています。2015年には、シンガポール政府と基本合意を締結し、政府が主導するスマートシティの取り組みの一環として、シンガポール科学技術庁と自動運転技術の開発に関わる共同研究を行っています。今後も、アライアンスを含めたグローバルな仲間づくりを推進し、開発を加速させていきます。

 

 

コネクティッド(つながるクルマ)分野においては、今後、クルマとクルマ、クルマと人・道路・モノ・サービス等がつながるモビリティ社会の進展により、更に環境にやさしく、安心・安全な社会になっていきます。当社はバス・トラックといった商用車への取り組みを足掛かりとして、モビリティ社会において新たな価値を生み出してまいります。

トラックやバス等の商用車の台数は乗用車の1/10程度しかありませんが、商用車が原因となる環境負荷や交通事故の発生はどちらも1/3程度にもなります。その主な要因として、車両自体が大型であるためにCO2排出量が多いこと、走行距離が乗用車よりも長いことが挙げられます。

当社は、これまでも商用車が社会に与える環境・安全への影響を低減するため、運輸/旅客事業向けに運行管理・安全管理に関わるシステム・機器の開発や提供を行ってまいりました。

この度、車両のみならずドライバーの体調といった情報を含めたトータルでの安全向上システム等の新たなサービス事業を開拓・推進するために、コネクティッドサービス事業推進部を新設しました。社内のコネクティッドサービスに携わるリソーセスを集約し、企画・開発から営業活動までを一貫して推進することで、運輸/旅客事業向けサービスを中心とした事業を拡大させてまいります。

 

モノづくり分野においては、当社は、Factory IoT(F-IoT)を導入することで、人の知恵を引き出し、進化し続ける工場づくりをグローバルで進め、生産性を向上させていきます。

F-IoTにより「振動・音・温度といった製品・設備の微妙・微小な変化」「熟練した人の知恵・経験・カンコツ」「設備不具合の予知・予兆」等の情報を見える化し、人にフィードバックすることで、人の気づく感度を高め、改善につなげていきます。見える化・共有化した情報をもとに、脈々と受け継がれてきたモノづくりへの高い志や行動スキルを持った「人」が、知恵を絞って更なる改善や未然防止を行うことで、現場力を飛躍的に高めていきます。

また、レベルアップした工場同士がつながることが、グローバルな生産性向上につながります。全世界で、全ての仲間が一つ屋根の下にいるかのように「各工場の設備・生産状況等の情報」や「改善情報」をリアルタイムに共有・統合し、各工場の素早い改善サイクルにつなげ、進化し続けるモノづくりを実現します。

当社は、2015年よりF-IoT導入を開始し、2020年までにグローバル130工場をつなぎ、グループ全体での生産性30%向上(2015年比)を目指します。また、当社グループ内にとどまらず、2020年には協力会社へも展開し、ともにモノづくりの力を高めてまいります。

 

FA(ファクトリー・オートメーション)事業においては、当社は、グローバル130工場でのFAの導入実績を活かして、お客様に最適なFAシステムをソリューションとして提案・提供することで、社会・産業界の生産性向上に貢献していきます。

労働人口の減少といった社会構造の変化、AIやIoTの技術革新によるロボット技術の進化等から、FA市場は年々拡大し続けています。

当社は50年前の1967年に自社製ロボットの開発に着手し、自社の生産ラインで鍛えたロボットを外販し、累計9万台を超えるロボットを提供してきました。ロボットはFAには欠かせない要素であり、高速・高信頼という従来の強みに加え、AIやIoT技術を活用して、生産ラインへの導入のしやすさや、日々の生産活動・保全での使いやすさの向上、人の知恵を活かした知能化、といった進化を続けています。

また、FAには、組付けのみならず、検査、物流、保全、生産管理、IoT活用等の幅広い領域への広がりがあり、今回、全社のモノづくりを牽引する生産革新センターにFA事業部を新設しました。これより、当社130工場での導入実績を活かし、工場全体視点、ライフサイクル視点で、お客様のあらゆるニーズに対応できるFAシステムを提案・提供し、幅広く生産性向上に貢献していきます。

 

 

4 【事業等のリスク】

連結会社の事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しています。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資家の判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しています。連結会社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めていきます。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2017年6月20日)現在において連結会社が判断したものです。

 

(1) 経済状況

連結会社の全世界における営業収入のうち、重要な部分を占める自動車関連製品の需要は、連結会社が製品を販売している国又は地域の経済状況の影響を受けます。従って、日本、北米、欧州、アジアを含む連結会社の主要市場における景気後退及びそれに伴う自動車需要の縮小は、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、連結会社の事業は、競合他社が製造を行う地域の経済状況から間接的に影響を受ける場合があります。例えば、競合他社が現地でより低廉な人件費の労働力を雇用した場合、連結会社と同種の製品をより低価格で提供できることになり、その結果、連結会社の売上が悪影響を受ける可能性があります。さらに、部品や原材料を製造する地域の現地通貨が下落した場合、連結会社のみならず他のメーカでも、製造原価が下がる可能性があります。このような傾向により、輸出競争や価格競争が熾烈化し、いずれも連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになります。

 

(2) 為替レートの変動

連結会社の事業には、全世界における製品の生産と販売が含まれています。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されています。換算時の為替レートにより、これらの項目は元の現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。一般に、他の通貨に対する円高(特に連結会社の売上の重要部分を占める米ドル及びユーロに対する円高)は連結会社の事業に悪影響を及ぼし、円安は連結会社の事業に好影響をもたらします。

連結会社が日本で生産し、輸出する事業においては、他の通貨に対する円高は、当社製品のグローバルベースでの相対的な価格競争力を低下させ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。連結会社は、通貨ヘッジ取引を行い、米ドル、ユーロ及び円を含む主要通貨間の為替レートの短期的な変動による悪影響を最小限に止める努力をしていますが、中長期的な為替レートの変動により、計画された調達、製造、流通及び販売活動を確実に実行できない場合があるため、為替レートの変動は連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 原材料や部品の供給による影響

連結会社は、製品の製造に使用する原材料や部品を複数のグループ外供給元から調達しています。これらのグループ外供給元とは、基本取引契約を締結し、安定的な取引を行っていますが、市況の変化による価格の高騰や品不足、さらには供給元の不慮の事故等、原材料や部品の不足が生じないという保証はありません。その場合、連結会社製品の製造原価の上昇、さらには生産停止を招く等、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 新製品開発力

連結会社は継続して斬新で魅力ある新製品を開発できると考えていますが、新製品の開発と販売のプロセスは、その性質から複雑かつ不確実なものであり、以下をはじめとする様々なリスクが含まれます。

・新製品や新技術への投資に必要な資金と資源を、今後十分充当できる保証はありません。

・長期的な投資と大量の資源投入が、成功する新製品又は新技術の創造へつながる保証はありません。

・連結会社が顧客からの支持を獲得できる新製品又は新技術を正確に予想できるとは限らず、またこれらの製品の販売が成功する保証はありません。

・技術の急速な進歩と市場ニーズの変化により、連結会社製品が時代遅れになる可能性があります。

・現在開発中の新技術の商品化遅れにより、市場の需要について行けなくなる可能性があります。

上記のリスクをはじめとして、連結会社が業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新製品を開発できない場合には、将来の成長と収益性を低下させ、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(5) 価格競争

自動車業界における価格競争は大変厳しいものとなっています。特に、完成車メーカからの価格引き下げ要請は、近年、強まってきています。

また、連結会社は、連結会社が属している各製品市場と地域市場において、競争の激化に直面すると予想されます。競合先には他自動車部品メーカがあり、その一部は連結会社よりも低コストで製品を提供しています。さらに、自動車のカーエレクトロニクス化の進展に伴い、民生用エレクトロニクス製品メーカ等、新しい競合先又は既存競合先間の提携が台頭し、市場での大きなシェアを急速に獲得する可能性があります。

連結会社は、技術的に進化した高品質で高付加価値の自動車関連製品を送り出す世界的なリーディングメーカであると考える一方で、将来においても有効に競争できるという保証はありません。価格面での圧力又は有効に競争できないことによる顧客離れは、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。 

 

(6) 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク

連結会社の生産及び販売活動において、北米や欧州、並びにアジアの発展途上市場や新興市場等の日本国外に占める割合は、年々、高まる傾向にあります。これらの海外市場への事業進出には以下に掲げるようないくつかのリスクが内在しており、これらの事態が発生した場合には、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

・予期しない法律又は規制の変更

・不利な政治的又は経済的要因の発生

・人材の採用と確保の難しさ

・社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる事業活動への悪影響

・潜在的に不利な税影響

・テロ、戦争、疾病、その他の要因による社会的又は経済的混乱

 

(7) 知的財産権

連結会社は他社製品と差別化できる技術とノウハウを蓄積してきましたが、これらの技術とノウハウの一部は、特定の地域及び国では法的制限のため知的財産権として完全な保護が不可能な状況にあり、第三者が連結会社の知的財産権を使って類似した製品を製造することを効果的に防止できない可能性があります。また、連結会社の製品は広範囲にわたる技術を利用しているため、将来的に第三者の知的財産権を侵害しているとされる可能性があります。

 

(8) OEM(注)顧客企業の業績への依存

連結会社の事業の大部分を占めるOEM事業は、世界中の自動車メーカを対象としており、提供する製品は、自動車部品におけるパワトレインシステム、エレクトリフィケーションシステム、電子システム、サーマルシステム、インフォメーション&セーフティシステム等多岐にわたります。これらの分野における顧客企業への売上は、その顧客企業の業績や連結会社が管理できない要因により影響を受ける可能性があります。また、顧客の価格引き下げ要請は、連結会社の利益率を低下させる可能性があります。顧客企業の業績不振、予期しない契約の打ち切り、OEM顧客の調達方針の変化、大口顧客の要求に応じるための値下げは、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

連結会社の売上の約半分を、トヨタグループ向け売上が占めています。これらの特定の顧客グループへの売上は、その顧客企業の業績により大きな影響を受ける可能性があります。

(注) Original  Equipment  Manufacturingの略称。自動車メーカ向けの部品供給。

 

(9) 製品の欠陥

連結会社は世界中の工場で世界的に認められている品質管理基準に従って各種の製品を製造しています。しかし、全ての製品について欠陥が無く、将来にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入していますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。さらに、引き続き連結会社がこのような保険に許容できる条件で加入できるとは限りません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストや連結会社の評価に重大な影響を与え、それにより売上が低下し、連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

(10) 災害や停電等による影響

連結会社は製造ラインの中断による潜在的なマイナス影響を最小化するために、全ての設備における定期的な災害防止検査と設備点検を行っています。しかし、連結会社の生産施設及び連結会社の顧客企業、仕入先企業で発生する災害、停電又はその他の中断事象による影響を完全に防止又は軽減できる保証はありません。例えば、連結会社の事業所の多くは東海地震防災対策強化地域に所在しており、この地域で大規模な地震が発生した場合、生産・納入活動が停止する可能性があります。

 

 

(11) 退職給付債務

連結会社の従業員退職給付費用、退職給付債務及び制度資産は、割引率等数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、将来の連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

(12) 法的手続

連結会社はビジネス活動において、継続的なコンプライアンスの実践に努めています。それにも関わらず、様々な訴訟及び規制当局による法的手続の当事者となる可能性があり、その場合には連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
 なお、連結会社は、2012年1月に米国司法省と締結した司法取引契約等に関連して、米国等で提起された民事訴訟に対応しているほか、一部の自動車メーカとの間で和解交渉を行っております。その結果を予測することは困難ですが、連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社は、2017年4月28日開催の取締役会において、富士通株式会社(以下、「富士通」)より、富士通の連結子会社である富士通テン株式会社の株式の一部を譲り受け、当社の連結子会社とすることについて決議いたしました。

詳細については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 31.後発事象」に記載のとおりです。

 

 

6 【研究開発活動】

当社は、2013年4月に策定した「デンソーグループ2020年長期方針」で「地球と生命を守り、次世代に明るい未来を届けたい」をスローガンとして、「地球環境の維持」「安心・安全」にこだわり会社の使命として取り組んでいくことを宣言しました。この長期方針実現に向け、環境、安心・安全分野を中心に研究開発活動を強化し、社会に貢献する新しい製品、新しい価値を世界中のお客様にお届けすることを目指しています。

環境分野の開発体制としては、電動化分野における一層の開発強化と事業伸展を狙い、システム開発機能を集約し、エレクトリフィケーションシステム事業グループを新設しています。

排出ガス規制強化に対して、排出ガス浄化触媒の基材において、触媒の中心部と周辺部で断面積が異なるセルを一体成形した、世界初となる新設計「FLAD」(フラッド)基材をトヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ自動車)と共同開発しました。「FLAD」基材は、トヨタ自動車の新型排出浄化触媒に採用され、2017年春頃発売される新型車に順次搭載される予定です。触媒内部の排出ガスの流れの均一度を向上させ、従来型排出ガス浄化触媒と同等の排出ガス浄化性能を維持しながら、貴金属使用量を約20%低減させるとともに、触媒容量の約20%小型化を可能にしました。また、設計・製造技術の革新により、世界初となる一体成形を実現したことにより、量産を可能としました。

安心・安全分野では、小型のステレオ画像センサーを開発し、ダイハツ工業株式会社より2016年11月に発売された「ダイハツ タント」の衝突回避支援システム「スマートアシスト3」に採用されています。

ステレオ画像センサーは、道路上の白線や前方の物体を識別するのに左右2つのカメラを搭載することで、対象物までの距離測定の正確性を向上します。製品の搭載スペースが限られる軽自動車においては、画像センサーにおいても車両への搭載性の向上が求められていました。新型のセンサーは、高精度なレンズ歪み補正とステレオマッチング技術の組み合わせにより、求められる測定距離を保ちつつカメラ幅を半減するとともに、センサーを制御するECUを一体化することで、更なる搭載性の向上を実現しました。

高度運転支援・自動運転分野での技術開発を加速させるため、画像センサーや人工知能の技術開発において社外との連携を進めています。人工知能については、自動車における画像認識、機械学習分野への適用と技術開発を一段と加速すべく、カーネギーメロン大学ワイタカー記念全学教授 金出 武雄氏と技術顧問契約を締結しました。当社は、高度運転支援技術の開発・実用化を通じて交通事故の防止に寄与し、安心・安全なクルマ社会の実現に貢献していきます。

市販事業・新事業分野では、自動車のセンサーおよび制御技術やロボットシステム技術を活用して産業用UAV(ドローン)、農業支援、地域情報配信などに関する製品・システムの開発を行っています。例えば、社会問題となっている道路や橋などのインフラ点検の負荷急増に対して、産業用UAVを用いたインフラ点検の効率化に取り組んでいます。当社は、自動車で培ってきた技術を活用して、環境にやさしく、健康で安心・安全な生活に貢献していきます。

開発体制としては、世界各地域の事情やニーズに合った最適な製品を開発するため、世界7地域にテクニカルセンターを整備し、グローバル開発体制を強化しています。特に日本においては、高度運転支援・自動運転分野を中心に協業を推進しています。例えば、株式会社NTTデータMSEに出資することで、予防安全分野におけるソフトウェア開発の効率的な取組みを実施しています。昨今、高度運転支援を補助するために、運転者に安全運転を促すための警告等を表示するHMIの重要性は一層増していますが、このHMIを制御するソフトウェアを共同で開発していきます。また、日本電気株式会社(以下、NEC)との協業も開始しました。この協業においては、当社が自動車市場で培った“高度な技術力とモノづくり力”と、NECがICTによる事業で培った“AI(人工知能)やIoT、セキュリティなどの先進技術とシステム構築・運用の豊富な実績”を生かし、高度運転支援・自動運転、セキュリティ、モノづくりに関する技術の共同開発を行っていきます。

連結会社は、世界各地域でその社会に貢献する製品とサービスを提供していくことを目指しています。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は409,223百万円(資産計上分含む)、その内、日本セグメント344,459百万円、北米セグメント31,124百万円、欧州セグメント13,739百万円、アジアセグメント18,702百万円、その他1,199百万円となっています。日本セグメントが占める比率は約84%となっており、研究開発活動の中心を担っていますが、海外セグメントのリサーチ機能強化などを通じて、グローバルな先進モビリティ社会の実現を目指していきます。

 

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

連結会社に関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容です。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において連結会社が判断したものです。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

連結会社の連結財務諸表は、連結財務諸表規則第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成に当たり必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。

なお、当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記」に記載しています。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

①  概要

当連結会計年度の世界経済は、欧州の政治動向や米国の大統領選等の不確実性が高まる一方、年度の後半は、米国の新政権への期待や、資源価格の回復による新興国の持ち直しにより、世界全体では緩やかな回復が続きました。日本も、個人消費等に弱さがみられたものの、緩やかな回復が続きました。

自動車市場は、米国の過去最高販売や、中国の小型車減税策の継続により、世界全体では堅調に推移しました。日本は、軽自動車の落ち込みは続きましたが、新型車の好調な販売により3年ぶりに前年度を超えました。

為替レートについては、米ドル、ユーロに対する平均円レートは、それぞれ108円、119円と、前年度と比べてそれぞれ12円の円高、14円の円高となりました。

このような環境のもと、当連結会計年度の業績は、円高の影響があったものの、生産増加や拡販により、売上収益は、4兆5,271億円前年度比26億円増0.1%増)と増収になりました。営業利益は、円高の影響があったものの、売上増加による操業度差益、合理化努力、その他収支の良化により、3,306億円前年度比148億円増4.7%増)、税引前利益は3,609億円前年度比136億円増3.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,576億円前年度比134億円増5.5%増)と増益になりました。

 

②  売上収益

売上収益は、前連結会計年度と比べて26億円0.1%)増収4兆5,271億円となりました。

セグメント別の業績については、日本は、車両生産の増加により、前年度比394億円1.5%)増収2兆6,860億円となりました。北米地域は、好調な経済により車両生産が増加したものの、円高の影響により、前年度比355億円3.2%)減収1兆772億円となりました。欧州地域は、市場の回復により車両生産が増加したものの、円高の影響により、前年度比163億円2.7%)減収5,773億円となりました。アジア地域は、車両生産が増加したものの、円高の影響により、前年度比220億円1.9%)減収1兆1,393億円となりました。その他地域は、前年度比63億円10.6%)増収658億円となりました。

 

③  営業利益

営業利益は、前連結会計年度と比べて148億円4.7%)増益3,306億円となりました。

セグメント別の業績については、日本は、生産の増加や合理化努力があったものの、円高の影響により、前年度比244億円15.8%)減益1,302億円となりました。北米地域は、操業度差益等により、前年度比123億円25.7%)増益600億円となりました。欧州地域は、操業度差益等により、前年度比58億円39.9%)増益202億円となりました。アジア地域は、操業度差益等により、前年度比162億円16.7%)増益1,127億円となりました。その他地域は、営業利益は69億円(前年度は20億円の営業損失)となりました。

 

④  税引前利益

税引前利益は、前年度と比べて136億円3.9%)増益3,609億円となりました。

 

⑤  親会社の所有者に帰属する当期利益

親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年度と比べて134億円5.5%)増益2,576億円となりました。

 

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

①  キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローの状況については、現金及び現金同等物(以下、「資金」)は、営業活動により4,678億円増加、投資活動により1,080億円減少、財務活動により2,405億円減少等の結果、当連結会計年度は前連結会計年度と比べ1,211億円増加し、7,936億円となりました。

営業活動により得られた資金は、法人所得税の支払額の増加(前年度比436億円増)等により、前年度に比べ851億円減少し、4,678億円となりました。

投資活動により使用した資金は、負債性金融商品の取得による支出の減少(前年度比4,821億円減)等により、前年度に比べ4,368億円減少し、1,080億円となりました。

財務活動により使用した資金は、借入金の返済による支出の増加(前年度比588億円増)等により、前年度に比べ1,359億円増加し、2,405億円となりました。

 

②  財務政策

連結会社の運転資金及び設備投資資金は、主として自己資金により充当し、必要に応じて借入又は社債の発行等による資金調達を実施することを基本方針としています。

当連結会計年度は、連結会社の設備投資資金について、主として自己資金、借入及び社債の発行により充当しました。 

連結会社は、その健全な財務状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力、連結会社の成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えています。