当連結会計年度の世界経済は、米国や欧州の回復により、全体としては緩やかな回復を続けましたが、中国を中心とした新興国景気の減速の影響が大きく、回復のペースは鈍化しました。日本は、外需の低迷、内需も本格的な回復には至らず足踏みが続いています。自動車市場は、米国で過去最高の販売を記録する等北米の好調が牽引し、世界全体では前年度より拡大したものの、中国の減速や、日本、アセアン、ブラジル等の前年度割れにより、拡大のペースは緩やかとなりました。当社においては、日本での軽自動車を中心とする車両生産の減少による影響があったものの、海外での生産増加や拡販により、生産量は前年度を上回りました。
このような環境のなかで、当社は達成すべき目標や取り組むべき施策を「デンソーグループ中期方針」(以下、2018年中期方針)にまとめ、グループを挙げて取り組んでいます。注力分野としている「環境、安心・安全」「市販・新事業」「海外市場」での成長に向け、当連結会計年度は、環境、安心・安全分野での製品開発に加え、高度運転支援技術開発の加速に向けた新組織の立ち上げや、ダントツ工場のグローバル展開とIoT※1を活用したモノづくりの革新等、機能強化にも積極的に取り組みました。また、バイオ分野での研究開発やヘルスケア分野での製品開発等、クルマの技術を活かした新事業分野での事業領域の拡大にも取り組みました。
※1 Internet of Things 世の中に存在する様々なモノに通信機能を持たせ、インターネットに接続したり相互に通信することにより、自動認識や制御等を行うこと
当連結会計年度は、環境、安心・安全分野を中心に、次のとおりの成果を出すことができました。
安心・安全分野では、全社付組織として関係部署を統合した「ADAS推進部」※2を新設し、高度運転支援・自動運転分野での技術開発の加速に取り組んでいます。また、2016年1月に移転・機能を強化した東京支社を活用し、関東圏での優秀人材を獲得していくとともに、先端技術開発や産学等の社外連携も強化していきます。当社は、「いつもの安心、もしもの安全」をキャッチフレーズに、重大事故の防止と被害の軽減に加え、平常時からドライバーの安全運転を支援し、危険に近づけないシステムの開発にも注力しています。走行環境認識の分野では、車両だけでなく歩行者の検知を高い信頼性で実現するミリ波レーダと画像センサを開発し、トヨタ自動車株式会社の「Toyota Safety Sense P」に採用されました。現在は、新型プリウスやランドクルーザーに搭載されており、今後も搭載車種が拡大する予定です。また、2018年を目途に衝突回避の対象を拡大させ、自転車や夜間の歩行者の検知も実現します。衝突回避支援等の安全製品のニーズは高まっており、今後急速に普及することが予想されます。当社は、社会ニーズを反映した高い品質の製品を幅広く揃えることで、交通事故ゼロの実現を目指してまいります。
※2 Advanced Driver Assistance System 高度運転支援システム
環境分野においても、トヨタ自動車株式会社と共同で、新型プリウス向けの製品を開発しました。冷却構造の改善や電子制御回路の集積化によって、従来のプリウス搭載品に比べて、約33%の小型化を実現した新型パワーコントロールユニットを開発しました。また、独自の新しい巻線方式を用いた高回転モータ用のステータを共同で開発し、従来のプリウス搭載品に比べ2割以上の軽量化を実現しました。
市販事業・新事業分野では、自動車や産業機器の分野で培ってきた高度なセンシング技術とロボット技術を活用し、新しい分野に積極的に参入してきました。今回は、手術時に医師の腕を支え、手の震えや、疲れを軽減する手術支援ロボット「iArmS(アイアームス)」を開発しました。アームは医師の手・腕が動く際に滑らかに追従し、術中には医師の腕をしっかり支えて震えや疲れを抑えます。特徴は、高い安全性と軽やかな操作性です。動作はモータを使わず、重力バランスと手の動きによって実施します。また、内蔵されたセンサが「腕をおく」「腕を静止する」「腕を浮かせる」という動作を感知して自動で切り替えることができます。医師の負担軽減をもたらす優れた機能が高く評価され、グッドデザイン・未来づくりデザイン賞を受賞しました。iArmSは現在、脳神経外科と耳鼻咽喉科が対象ですが、今後は他の診療科や更にはグローバル展開も視野に入れ、より一層開発を加速させていきます。
海外市場分野では、今後も拡大していく海外市場での競争力を高めるために、世界中の工場をネットワークでつなぐ独自のIoTの導入に本格着手しています。デンソーグループ内のすべてのモノ・コト・人(知恵)情報を共有・フル活用することで、当社のモノづくりを更に進化させます。例えば、工場管理の進化のため、リアルタイムに生産状態を把握・共有し、素早くアクションを起こすことでロスを最少化するだけでなく、蓄積する大量のデータ・情報をリアルタイムに分析し、次に起きうる事象を予知することでロスゼロを図ります。これにより、「停まらない」「不良をつくらない」「消費エネルギー最少」のダントツ工場をグローバルに実現してまいります。また、当社の強みである改善が、瞬時にグローバルに共有できる情報システムの構築に取り組んでいます。この取り組みでは、日々行う改善が素早く情報化され、部署や国を超えて関連する業務を行う人へタイムリーに配信されます。これにより、改善のサイクルが回り続け、進化し続けるモノづくりを実現してまいります。
当連結会計年度の業績は、海外での生産増加や拡販に加え、円安の影響により、売上収益は4兆5,245億円(前年度比2,147億円増、5.0%増)と増収になりました。その他収支を除く営業利益は、コストダウンや生産性向上による合理化努力に加え、売上増加による操業度差益により、3,652億円(前年度比71億円増、2.0%増)と増益になりました。その他収支を含む営業利益は3,157億円(前年度比156億円減、4.7%減)、税引前利益は3,473億円(前年度比246億円減、6.6%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,443億円(前年度比141億円減、5.5%減)と減益になりました。
セグメント別の業績については、日本は、軽自動車を中心とする車両生産の減少により、売上収益は2兆6,466億円(前年度比180億円減、0.7%減)と減収になりました。営業利益は、研究開発費等の将来の成長に向けた費用や、生産減少による操業度差損、その他の費用の増加により1,545億円(前年度比423億円減、21.5%減)と減益になりました。
北米地域は、好調な経済による車両生産の増加により、売上収益は1兆1,127億円(前年度比1,462億円増、15.1%増)と増収、営業利益は、売上増加による操業度差益等により477億円(前年度比82億円増、20.8%増)と増益になりました。
欧州地域は、市場の回復による車両生産の増加により、売上収益は5,936億円(前年度比388億円増、7.0%増)と増収、営業利益は、生産の増加や拡販があったものの、生産立ち上げに伴う償却費や一時的なコストの増加により144億円(前年度比24億円減、14.3%減)と減益になりました。
アジア地域は、車両生産の増加により、売上収益は1兆1,612億円(前年度比1,115億円増、10.6%増)と増収、営業利益は、売上増加による操業度差益や合理化努力により966億円(前年度比157億円増、19.4%増)と増益になりました。
その他地域は、売上収益は595億円(前年度比143億円減、19.4%減)と減収、営業損失は20億円(前年度は3億円の営業利益)となりました。
キャッシュ・フローの状況については、現金及び現金同等物(以下、「資金」)は、営業活動により5,529億円増加、投資活動により5,448億円減少、財務活動により1,047億円減少等の結果、当連結会計年度は前連結会計年度と比べ1,199億円減少し、6,725億円となりました。
営業活動により得られた資金は、法人所得税の支払額の減少(前年度比872億円減)等により、前年度に比べ1,697億円増加し、5,529億円となりました。
投資活動により使用した資金は、負債性金融商品への投資の取得による支出の増加(前年度比2,345億円増)等により、前年度に比べ4,333億円増加し、5,448億円となりました。
財務活動により使用した資金は、借入金による調達額の増加(前年度比579億円増)等により、前年度に比べ310億円減少し、1,047億円となりました。
(3) 並行開示情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに関する項目との差異に関する事項は次の通りです。なお、当社は日本基準に基づく連結財務諸表を作成していないため、記載した概算額は一定の仮定の下、把握できる範囲で算出したものです。
① 有形固定資産の減価償却に関する事項
有形固定資産の減価償却方法について、日本基準では主として定率法を採用していましたが、IFRSでは定額法を採用しています。
この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて、営業利益が24,095百万円増加しています。
② 確定給付型退職後給付制度に関する事項
数理差異及び過去勤務費用について、日本基準では発生時にその他の包括利益を通じて純資産の部に計上したうえで、従業員の平均残存期間以内の一定の年数により費用処理していました。IFRSでは数理差異は、発生時にその他の包括利益を通じて資本の部に認識後、直ちに利益剰余金へ振り替え、過去勤務費用は発生時に一括でその他の収益又はその他の費用で認識しています。
また、確定給付制度の純利息(日本基準における期待運用収益及び利息費用)について、日本基準では売上原価又は販売費及び一般管理費に計上していましたが、IFRSでは金融費用に計上しています。
この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて、営業利益が9,687百万円減少、金融費用が1,051百万円増加及びその他の包括利益が3,013百万円減少しています。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2015年4月1日 至 2016年3月31日) (百万円) |
前年同期比(%) |
|
日本 |
1,816,658 |
97.8 |
|
北米 |
1,078,284 |
111.8 |
|
欧州 |
574,841 |
108.1 |
|
アジア |
1,022,692 |
109.1 |
|
報告セグメント計 |
4,492,475 |
104.7 |
|
その他 |
61,421 |
81.7 |
|
合計 |
4,553,896 |
104.3 |
(注) 1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
連結会社はトヨタ自動車株式会社を始めとして、各納入先より四半期ごとに生産計画の提示を受け、連結会社の生産能力を勘案して生産計画を立てる等、すべて見込生産を行っています。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2015年4月1日 至 2016年3月31日) (百万円) |
前年同期比(%) |
|
日本 |
1,801,547 |
98.0 |
|
北米 |
1,081,058 |
114.7 |
|
欧州 |
568,183 |
108.3 |
|
アジア |
1,014,708 |
109.0 |
|
報告セグメント計 |
4,465,496 |
105.4 |
|
その他 |
59,026 |
80.3 |
|
合計 |
4,524,522 |
105.0 |
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2014年4月1日 至 2015年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2015年4月1日 至 2016年3月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
トヨタ自動車㈱ |
1,075,806 |
25.0 |
1,071,967 |
23.7 |
3.本表の金額には、消費税等は含まれていません。
当社は、世界人口増加に伴うエネルギー問題や環境問題、また新興国の交通事故死者数の大幅な増加等が予想されるなかで、今後も社会に貢献し持続的に成長していくため、2013年4月に「デンソーグループ 2020年 長期方針」を策定しました。「地球と生命を守り、次世代に明るい未来を届けたい。」をスローガンに、「地球環境の維持と成長の両立」と「一人ひとりが幸せで、安心・安全に暮らせる社会」の実現を目指します。
また、2018年を達成年度とする中期方針を設定し、当連結会計年度より取り組みを開始しました。「環境、安心・安全分野」では、社会課題の解決に向けたシステム商品を創出し、環境負荷・交通事故の低減に向けて信念を持って挑戦し続けます。「市販・新事業分野」では、市販・新事業の拡大への挑戦を通じ、社会ニーズ・エンドユーザ視点で新しい価値を創造していきます。「海外市場分野」では、顧客との信頼関係の強化と地域のプレゼンス向上により、多くの国の人々にクルマの利便性・喜びを届けます。このように、「地球環境の維持」と、「安心・安全な社会づくり」にこだわった技術開発とモノづくりで、長期方針の実現に向けて、挑戦し続けます。
当社は、一部自動車部品の過去の取引に関し、一部の国において独占禁止法に違反したとして、当局より指摘を受けております。独占禁止法の遵守は、当社グループの重要な経営基盤のひとつです。当社は、今後もこれまで徹底してきた独占禁止法コンプライアンス体制をより一層強化し、信頼回復に努めてまいります。
連結会社の事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しています。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資家の判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しています。連結会社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めていきます。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2016年6月21日)現在において連結会社が判断したものです。
(1) 経済状況
連結会社の全世界における営業収入のうち、重要な部分を占める自動車関連製品の需要は、連結会社が製品を販売している国又は地域の経済状況の影響を受けます。従って、日本、北米、欧州、アジアを含む連結会社の主要市場における景気後退及びそれに伴う自動車需要の縮小は、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、連結会社の事業は、競合他社が製造を行う地域の経済状況から間接的に影響を受ける場合があります。例えば、競合他社が現地でより低廉な人件費の労働力を雇用した場合、連結会社と同種の製品をより低価格で提供できることになり、その結果、連結会社の売上が悪影響を受ける可能性があります。さらに、部品や原材料を製造する地域の現地通貨が下落した場合、連結会社のみならず他のメーカーでも、製造原価が下がる可能性があります。このような傾向により、輸出競争や価格競争が熾烈化し、いずれも連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになります。
(2) 為替レートの変動
連結会社の事業には、全世界における製品の生産と販売が含まれています。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されています。換算時の為替レートにより、これらの項目は元の現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。一般に、他の通貨に対する円高(特に連結会社の売上の重要部分を占める米ドル及びユーロに対する円高)は連結会社の事業に悪影響を及ぼし、円安は連結会社の事業に好影響をもたらします。
連結会社が日本で生産し、輸出する事業においては、他の通貨に対する円高は、当社製品のグローバルベースでの相対的な価格競争力を低下させ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。連結会社は、通貨ヘッジ取引を行い、米ドル、ユーロ及び円を含む主要通貨間の為替レートの短期的な変動による悪影響を最小限に止める努力をしていますが、中長期的な為替レートの変動により、計画された調達、製造、流通及び販売活動を確実に実行できない場合があるため、為替レートの変動は連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) 原材料や部品の供給による影響
連結会社は、製品の製造に使用する原材料や部品を複数のグループ外供給元から調達しています。これらのグループ外供給元とは、基本取引契約を締結し、安定的な取引を行っていますが、市況の変化による価格の高騰や品不足、さらには供給元の不慮の事故等、原材料や部品の不足が生じないという保証はありません。その場合、連結会社製品の製造原価の上昇、さらには生産停止を招く等、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4) 新製品開発力
連結会社は継続して斬新で魅力ある新製品を開発できると考えていますが、新製品の開発と販売のプロセスは、その性質から複雑かつ不確実なものであり、以下をはじめとする様々なリスクが含まれます。
・新製品や新技術への投資に必要な資金と資源を、今後十分充当できる保証はありません。
・長期的な投資と大量の資源投入が、成功する新製品又は新技術の創造へつながる保証はありません。
・連結会社が顧客からの支持を獲得できる新製品又は新技術を正確に予想できるとは限らず、またこれらの製品の販売が成功する保証はありません。
・技術の急速な進歩と市場ニーズの変化により、連結会社製品が時代遅れになる可能性があります。
・現在開発中の新技術の商品化遅れにより、市場の需要について行けなくなる可能性があります。
上記のリスクをはじめとして、連結会社が業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新製品を開発できない場合には、将来の成長と収益性を低下させ、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5) 価格競争
自動車業界における価格競争はたいへん厳しいものとなっています。特に、完成車メーカーからの価格引き下げ要請は、近年、強まってきています。
また、連結会社は、連結会社が属している各製品市場と地域市場において、競争の激化に直面すると予想されます。競合先には他自動車部品メーカーがあり、その一部は連結会社よりも低コストで製品を提供しています。さらに、自動車のカーエレクトロニクス化の進展に伴い、民生用エレクトロニクス製品メーカー等、新しい競合先又は既存競合先間の提携が台頭し、市場での大きなシェアを急速に獲得する可能性があります。
連結会社は、技術的に進化した高品質で高付加価値の自動車関連製品を送り出す世界的なリーディングメーカーであると考える一方で、将来においても有効に競争できるという保証はありません。価格面での圧力又は有効に競争できないことによる顧客離れは、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6) 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク
連結会社の生産及び販売活動において、北米や欧州、並びにアジアの発展途上市場や新興市場等の日本国外に占める割合は、年々、高まる傾向にあります。これらの海外市場への事業進出には以下に掲げるようないくつかのリスクが内在しており、これらの事態が発生した場合には、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
・予期しない法律又は規制の変更
・不利な政治的又は経済的要因の発生
・人材の採用と確保の難しさ
・社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる事業活動への悪影響
・潜在的に不利な税影響
・テロ、戦争、疾病、その他の要因による社会的又は経済的混乱
(7) 知的財産権
連結会社は他社製品と差別化できる技術とノウハウを蓄積してきましたが、これらの技術とノウハウの一部は、特定の地域及び国では法的制限のため知的財産権として完全な保護が不可能な状況にあり、第三者が連結会社の知的財産権を使って類似した製品を製造することを効果的に防止できない可能性があります。また、連結会社の製品は広範囲にわたる技術を利用しているため、将来的に第三者の知的財産権を侵害しているとされる可能性があります。
(8) OEM(注)顧客企業の業績への依存
連結会社の事業の大部分を占めるOEM事業は、世界中の自動車メーカーを対象としており、提供する製品は、空調関連製品、エンジン関連製品、安全走行関連製品、情報通信関連製品等多岐にわたります。これらの分野における顧客企業への売上は、その顧客企業の業績や連結会社が管理できない要因により影響を受ける可能性があります。また、顧客の価格引き下げ要請は、連結会社の利益率を低下させる可能性があります。顧客企業の業績不振、予期しない契約の打ち切り、OEM顧客の調達方針の変化、大口顧客の要求に応じるための値下げは、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
連結会社の売上の約半分を、トヨタグループ向け売上が占めています。これらの特定の顧客グループへの売上は、その顧客企業の業績により大きな影響を受ける可能性があります。
(注) Original Equipment Manufacturingの略称。自動車メーカー向けの部品供給。
(9) 製品の欠陥
連結会社は世界中の工場で世界的に認められている品質管理基準に従って各種の製品を製造しています。しかし、全ての製品について欠陥が無く、将来にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入していますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。さらに、引き続き連結会社がこのような保険に許容できる条件で加入できるとは限りません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストや連結会社の評価に重大な影響を与え、それにより売上が低下し、連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
(10) 災害や停電等による影響
連結会社は製造ラインの中断による潜在的なマイナス影響を最小化するために、全ての設備における定期的な災害防止検査と設備点検を行っています。しかし、連結会社の生産施設及び連結会社の顧客企業、仕入先企業で発生する災害、停電又はその他の中断事象による影響を完全に防止又は軽減できる保証はありません。例えば、連結会社の事業所の多くは東海地震防災対策強化地域に所在しており、この地域で大規模な地震が発生した場合、生産・納入活動が停止する可能性があります。
(11) 退職給付債務
連結会社の従業員退職給付費用、退職給付債務及び制度資産は、割引率等数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、将来の連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
(12) 法的手続
連結会社はビジネス活動において、継続的なコンプライアンスの実践に努めています。それにも関わらず、様々な訴訟及び規制当局による法的手続の当事者となる可能性があり、その場合には連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
なお、連結会社は、2012年1月に米国司法省と締結した司法取引契約等に関連して、米国等における損害賠償を求める民事訴訟に対応しているほか、一部の自動車メーカーとの間で損害賠償に関する交渉を行っております。その結果を予測することは困難ですが、連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
該当事項はありません。
当社は、2013年4月に策定した「デンソーグループ2020年長期方針」で「地球と生命を守り、次世代に明るい未来を届けたい」をスローガンとして、「地球環境の維持」「安心・安全」にこだわり会社の使命として取り組んでいくことを宣言しました。この長期方針実現に向け、環境、安心・安全分野を中心に研究開発活動を強化し、社会に貢献する新しい製品、新しい価値を世界中のお客様にお届けすることを目指しています。
当連結会計年度の成果として、環境分野では特にトヨタ自動車株式会社と共同で、新型プリウス向けに、小型軽量化された新型パワーコントロールユニットとモータステータを開発しました。
パワーコントロールユニットは、電池からモータジェネレータに流す電流を調整するインバータなどを備えた製品です。車両の高機能化、高性能化に伴い、小型化、高出力化が求められており、今回開発した新型パワーコントロールユニットは、冷却構造の改善や電子制御回路の集積化によって、従来のプリウス搭載品に比べて約33%の小型化を実現しています。
ステータは、モータの基幹部品で、コイルに電流を流すことで磁力を発生させロータを回転させます。今回、当社は、独自の新しい巻線方式を用いた高回転モータ用のステータを開発し、従来のプリウス搭載品に比べ2割以上の軽量化を実現しました。
安心・安全分野では、ミリ波レーダと画像センサ、及びITS Connect対応車載器を開発し、トヨタ自動車株式会社のプリウスに搭載されています。ミリ波レーダは電波により前方の走行車両や物体までの距離や方位を検知し、画像センサはカメラにより道路上の白線や前方の物体を識別するセンサです。これらのセンサ機能を組み合わせて、より早くより正確な検知を可能とすることにより、衝突回避支援(対車両、対歩行者)、全車速ACC、車線逸脱防止、夜間視界支援などの安全機能の実現に貢献しています。
ITS ConnectとはITS専用周波数(760MHz)による路車間・車車間通信を活用した協調型運転支援システムであり、車載機により交通事故防止や交通の効率化を実現するための無線通信を行います。開発した車載機は、(1)数百メートル以内の車両・路側装置とリアルタイムに情報交換できる無線通信機能、(2)周囲に伝達するための自車位置の緯度・経度を決定する位置検出機能、(3)無線通信で得た情報から、周辺状況を判断し、実施すべき運転支援を決定する状況判断機能を備えており、これにより自動車とインフラ、自動車同士を通信でつなげるITS Connectの実現に貢献しています。
高度運転支援・自動運転分野での技術開発を加速させるため、2016年1月に全社付組織として関係部署を統合した「ADAS推進部」を新設しました。当社は、ドライバーの意思を尊重しつつ運転をより安心・安全なものとするため、高度運転支援技術の開発・実用化を通じて交通事故の防止に寄与し、安心・安全なクルマ社会の実現に貢献していきます。
市販事業・新事業分野では、自動車のセンシング&制御技術やロボットシステム技術を活用したヘルスケア、農業支援、セキュリティなどに関する製品・システムの開発を行っています。例えば、ヘルスケアでは、手術時に医師の腕を支え、手の震えや、疲れを軽減する手術支援ロボット「iArmS(アイアームス)」を販売しました。当社は、自動車で培ってきた技術を活用して、環境にやさしく、健康で安心・安全な生活に貢献していきます。
開発体制としては、世界各地域の事情やニーズに合った最適な製品を開発するため、世界7地域にテクニカルセンターを整備し、グローバル開発体制を強化しています。日本におきましては、自動運転の技術開発が進む中、車載用電子システムを開発する当社と、車載分野で実績が豊富な組込みソフトウェアの開発を行うイーソル株式会社、ネットワークシステムや組込みシステムに関する大規模ソフトウェアを開発する日本電気通信システム株式会社の3社で合弁会社 株式会社オーバスを設立し、車載用電子システムの基本ソフトウェアを開発、販売する体制を整えております。特に、カメラやセンサ類とそれらを制御するECU間の情報量の飛躍的増大に伴う高速通信やマルチコアマイコンへの対応、サイバーセキュリティへの対応をしていきます。また、ユーザーにとって使いやすい基本ソフトウェアを提供することで、自動車メーカー及びECU開発メーカーの開発効率及び品質の向上に貢献していきます。
連結会社は、世界各地域でその社会に貢献する製品とサービスを提供していくことを目指しています。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は399,238百万円(資産計上分含む)、その内、日本セグメント336,648百万円、北米セグメント27,015百万円、欧州セグメント13,407百万円、アジアセグメント20,813百万円、その他1,355百万円となっています。現在、研究開発費において海外セグメントが占める比率は約16%ですが、開発体制の整備により、今後、この比率を増やしていく予定です。
連結会社に関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容です。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において連結会社が判断したものです。
(1) 重要な会計方針及び見積り
連結会社の連結財務諸表は、連結財務諸表規則第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成に当たり必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。
なお、当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記」に記載しています。
(2) 当連結会計年度の経営成績の分析
① 概要
当連結会計年度の世界経済は、米国や欧州の回復により、全体としては緩やかな回復を続けましたが、中国を中心とした新興国景気の減速の影響が大きく、回復のペースは鈍化しました。日本は、外需の低迷、内需も本格的な回復には至らず足踏みが続いています。自動車市場は、米国で過去最高の販売を記録する等北米の好調が牽引し、世界全体では前年度より拡大したものの、中国の減速や、日本、アセアン、ブラジル等の前年度割れにより、拡大のペースは緩やかとなりました。
為替レートについては、米ドル、ユーロに対する平均円レートは、それぞれ120円、133円と、前年度と比べてそれぞれ10円の円安、6円の円高となりました。
このような環境のもと、当連結会計年度の業績は、海外での生産増加や拡販に加え、円安の影響により、売上収益は、4兆5,245億円(前年度比2,147億円増、5.0%増)と増収になりました。営業利益は、コストダウンや生産性向上による合理化努力に加え、売上増加による操業度差益があったものの、将来の成長のための研究開発費や新製品立ち上げ費用の増加により、3,157億円(前年度比156億円減、4.7%減)、税引前利益は3,473億円(前年度比246億円減、6.6%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,443億円(前年度比141億円減、5.5%減)と減益になりました。
② 売上収益
売上収益は、前連結会計年度と比べて2,147億円(5.0%)増収の4兆5,245億円となりました。
セグメント別の業績については、日本は、軽自動車を中心とする車両生産の減少により、前年度比180億円(0.7%)減収の2兆6,466億円となりました。北米地域は、好調な経済による車両生産の増加により、前年度比1,462億円(15.1%)増収の1兆1,127億円となりました。欧州地域は、市場の回復による車両生産の増加により、前年度比388億円(7.0%)増収の5,936億円となりました。アジア地域は、車両生産の増加により、前年度比1,115億円(10.6%)増収の1兆1,612億円となりました。その他地域は、前年度比143億円(19.4%)減収の595億円となりました。
③ 営業利益
営業利益は、前連結会計年度と比べて156億円(4.7%)減益の3,157億円となりました。
セグメント別の業績については、日本は、研究開発費等の将来の成長に向けた費用や、生産減少による操業度差損、その他の費用の増加により、前年度比423億円(21.5%)減益の1,545億円となりました。北米地域は、売上増加による操業度差益等により、前年度比82億円(20.8%)増益の477億円となりました。欧州地域は、生産の増加や拡販があったものの、生産立ち上げに伴う償却費や一時的なコストの増加により、前年度比24億円(14.3%)減益の144億円となりました。アジア地域は、売上増加による操業度差益や合理化努力により、前年度比157億円(19.4%)増益の966億円となりました。その他地域は、20億円の営業損失(前年度は3億円の営業利益)となりました。
④ 税引前利益
税引前利益は、前年度と比べて246億円(6.6%)減益の3,473億円となりました。
⑤ 親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年度と比べて141億円(5.5%)減益の2,443億円となりました。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フロー
当連結会計年度の現金及び現金同等物(以下、「資金」)の期末残高は、前年度に比べ1,199億円減少し6,725億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローでは、前年度に比べて1,697億円多い5,529億円の資金を得ました。これは主に法人所得税の支払額の減少(前年度比872億円減)等によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローでは、前年度に比べて4,333億円多い5,448億円の資金を使用しました。これは主に負債性金融商品への投資の取得による支出の増加(前年度比2,345億円増)等によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローでは、前年度に比べて310億円少ない1,047億円の資金を使用しました。これは主に借入金による調達額の増加(前年度比579億円増)等によるものです。
② 財務政策
連結会社の運転資金及び設備投資資金は、主として自己資金により充当し、必要に応じて借入又は社債の発行等による資金調達を実施することを基本方針としています。
当連結会計年度は、連結会社の設備投資資金について、主として自己資金、借入及び社債の発行により充当しました。
連結会社は、その健全な財務状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力、連結会社の成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えています。