第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において連結会社が判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

①  魅力ある製品で、お客様に満足を提供する。

②  変化を先取りし、世界の市場で発展する。

③  自然を大切にし、社会と共生する。

④  個性を尊重し、活力ある企業をつくる。

を経営の方針としています。

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

当社は売上収益及び営業利益を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として用いています。

 

(3) 対処すべき課題

世界では人口増加や地球温暖化、高齢化等の問題が、ますます大きな社会課題となっています。また情報化社会の進展により、人々の消費行動の多様化、ビジネスモデルの変化も起こっています。モビリティ領域も同様に、IoTやAIの進化、そして異業種からの参入により、電動化や自動運転、コネクティッド等の開発が加速し、当社を取り巻く環境は大変革期を迎えています。クルマに求められる価値も大きく変わり、IT技術を活用したソフト領域における価値がますます高まり、変化のスピードはより一層加速しています。

このような大変革期においても持続的に成長し続けるために、当社は2017年10月に、2030年の目指す姿を描いた、「デンソーグループ2030年長期方針」を策定しました。従来注力している「環境」、「安心」の提供価値を最大化することに加え、社会から「共感」していただける新たな価値の提供を通じて、笑顔広がる社会づくりに貢献していきたいと考えています。また、この長期方針を実現するための道筋として、「デンソーグループ2025年長期構想」を策定しています。「電動化」、「先進安全・自動運転」、「コネクティッド」、「非車載事業(FA※・農業)」を注力4分野として取り組みを加速し、2025年度の目標である、売上収益7兆円、営業利益率10%の達成を目指します。

 

※FA:ファクトリー・オートメーション(生産ラインの機械化による自動化)

 

電動化分野においては、地球にやさしく、より快適に移動できる電動車両システムを提供するために、長年、電動化技術の開発を行っています。その結果、ハイブリッド車に欠かせない主要製品の高性能化や小型化、省燃費を実現し、世界中で生産実績を積み上げてきました。今後は、当社の幅広い事業領域を活かし、車内のあらゆるシステムや製品をつなぎ、クルマの中のエネルギーを効率よくマネジメントすることで、さらなる燃費性能の向上や省電力化に貢献していきます。

そのための具体的な取り組みとして、トヨタ自動車株式会社と当社は、両社の主要な電子部品事業を当社に統合することを正式に決定し、事業譲渡契約を締結しました。開発・生産事業をあわせて、2020年4月に実施する予定です。様々な自動車部品の電子制御化が進むなか、電子部品事業の重要度は今後もますます高まっていきます。スピーディかつ競争力のある開発・生産体制の構築とリソーセスの最大活用を図り、グループ全体の競争力向上を目指します。

また、アイシン精機株式会社と当社は、電動車両の駆動に不可欠な主要コンポーネントをパッケージ化した、駆動モジュールの開発・販売を行う合弁会社、株式会社BluE Nexus(ブルーイー ネクサス)を2019年4月に設立しました。ハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車等、幅広い電動化ニーズに対応する駆動モジュールの品揃えや、求められる性能、地域事情等に合わせた適合までを含めて対応できる体制を構築することで、世界各地域への幅広い普及を目指します。

 

先進安全・自動運転分野においては、交通事故のない、誰もが安心・安全に移動できるモビリティ社会を目指し、品質と信頼性の高い安全技術の開発に取り組んできました。これまで培ってきたセンシング技術に加え、今後はAI・情報技術に磨きをかけることで、自動運転技術の発展にさらに貢献していきます。創業以来変わらない品質へのこだわりをつらぬき、モビリティ社会の未来に確かな安心を届けます。

そのための具体的な取り組みとして、アイシン精機株式会社、株式会社アドヴィックス、株式会社ジェイテクトと当社は、統合制御ソフトウェア開発の合弁会社を設立しました。自動運転の実現には、クルマの「走る・曲がる・止まる」に関わるセンサやステアリング、ブレーキを、より高度に連携させるための車両統合制御システムが必要になります。そのソフトウェアの高度化と開発の加速に向け、4社が持つ自動運転・車両運動制御等の技術知見を結集した合弁会社、株式会社J-QuAD DYNAMICS(ジェイクワッド ダイナミクス)を2019年4月に設立しました。

また、新車に加え、既販車の安全性向上に貢献する後付け装着可能製品を開発しました。後付けドライバーステータスモニタは、車室内のカメラで撮影したドライバーの顔の画像から、脇見、眠気、居眠り、不適切な運転姿勢等の運転状態を推定し、音声で警告します。また、トヨタ自動車株式会社と共同で、後付けペダル踏み間違い加速抑制装置を開発しました。駐車・停車状態からの発進時に、障害物を検知すると、表示機とブザーでドライバーに注意喚起します。それでもドライバーがブレーキと間違えて強くアクセルを踏み込んだ場合には、加速を抑制し、衝突被害の軽減に貢献します。

 

コネクティッド分野においては、クルマの「所有」から「利用・サービス化」へのシフトという大改革が起こるなか、MaaS(Mobility as a Service:ヒトやモノの移動をサービスとして提供するモビリティサービス)事業に取り組んでいます。当社は、クルマに乗る人だけでなく、クルマを持たない人にも安心・安全で便利な移動手段の提供を目指し、新たなモビリティ社会の実現に貢献していきます。

2019年1月には、アメリカで開催された世界最大級の家電見本市CES(Consumer Electronics Show)で、MaaSの実現に貢献するため当社が開発するコネクティッド技術を展示しました。多様な車両情報を一元管理、共有するためのクラウド技術「デジタルツイン」、車両とクラウドを連携させるための車載エッジコンピュータ「Mobility IoT Core」、車両のソフトウェアやデータの改ざん防止を目的とした「ブロックチェーン」の展示や、これらの技術を活用した、将来のモビリティサービスを体感できるデモを行いました。

 

 

2 【事業等のリスク】

連結会社の事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しています。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資家の判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しています。連結会社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めていきます。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2019年6月26日)現在において連結会社が判断したものです。

 

(1) 経済状況

連結会社の全世界における営業収入のうち、重要な部分を占める自動車関連製品の需要は、連結会社が製品を販売している国又は地域の経済状況の影響を受けます。従って、日本、北米、欧州、アジアを含む連結会社の主要市場における景気後退及びそれに伴う自動車需要の縮小は、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、連結会社の事業は、競合他社が製造を行う地域の経済状況から間接的に影響を受ける場合があります。例えば、競合他社が現地でより低廉な人件費の労働力を雇用した場合、連結会社と同種の製品をより低価格で提供できることになり、その結果、連結会社の売上が悪影響を受ける可能性があります。さらに、部品や原材料を製造する地域の現地通貨が下落した場合、連結会社のみならず他のメーカでも、製造原価が下がる可能性があります。このような傾向により、輸出競争や価格競争が熾烈化し、いずれも連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになります。

 

(2) 為替レートの変動

連結会社の事業には、全世界における製品の生産と販売が含まれています。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されています。換算時の為替レートにより、これらの項目は元の現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。一般に、他の通貨に対する円高(特に連結会社の売上の重要部分を占める米ドル及びユーロに対する円高)は連結会社の事業に悪影響を及ぼし、円安は連結会社の事業に好影響をもたらします。

連結会社が日本で生産し、輸出する事業においては、他の通貨に対する円高は、当社製品のグローバルベースでの相対的な価格競争力を低下させ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。連結会社は、通貨ヘッジ取引を行い、米ドル、ユーロ及び円を含む主要通貨間の為替レートの短期的な変動による悪影響を最小限に止める努力をしていますが、中長期的な為替レートの変動により、計画された調達、製造、流通及び販売活動を確実に実行できない場合があるため、為替レートの変動は連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 原材料や部品の供給による影響

連結会社は、製品の製造に使用する原材料や部品を複数のグループ外供給元から調達しています。これらのグループ外供給元とは、基本取引契約を締結し、安定的な取引を行っていますが、市況の変化による価格の高騰や品不足、さらには供給元の不慮の事故等、原材料や部品の不足が生じないという保証はありません。その場合、連結会社製品の製造原価の上昇、さらには生産停止を招く等、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 新製品開発力

連結会社は継続して斬新で魅力ある新製品を開発できると考えていますが、新製品の開発と販売のプロセスは、その性質から複雑かつ不確実なものであり、以下をはじめとする様々なリスクが含まれます。

・新製品や新技術への投資に必要な資金と資源を、今後十分充当できる保証はありません。

・長期的な投資と大量の資源投入が、成功する新製品又は新技術の創造へつながる保証はありません。

・連結会社が顧客からの支持を獲得できる新製品又は新技術を正確に予想できるとは限らず、またこれらの製品の販売が成功する保証はありません。

・技術の急速な進歩と市場ニーズの変化により、連結会社製品が時代遅れになる可能性があります。

・現在開発中の新技術の商品化遅れにより、市場の需要について行けなくなる可能性があります。

上記のリスクをはじめとして、連結会社が業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新製品を開発できない場合には、将来の成長と収益性を低下させ、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(5) 価格競争

自動車業界における価格競争は大変厳しいものとなっています。特に、完成車メーカからの価格引き下げ要請は、近年、強まってきています。

また、連結会社は、連結会社が属している各製品市場と地域市場において、競争の激化に直面すると予想されます。競合先には他自動車部品メーカがあり、その一部は連結会社よりも低コストで製品を提供しています。さらに、自動車のカーエレクトロニクス化の進展に伴い、民生用エレクトロニクス製品メーカ等、新しい競合先又は既存競合先間の提携が台頭し、市場での大きなシェアを急速に獲得する可能性があります。

連結会社は、技術的に進化した高品質で高付加価値の自動車関連製品を送り出す世界的なリーディングメーカであると考える一方で、将来においても有効に競争できるという保証はありません。価格面での圧力又は有効に競争できないことによる顧客離れは、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。 

 

(6) 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク

連結会社の生産及び販売活動において、北米や欧州、並びにアジアの発展途上市場や新興市場等の日本国外に占める割合は、年々、高まる傾向にあります。これらの海外市場への事業進出には以下に掲げるようないくつかのリスクが内在しており、これらの事態が発生した場合には、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

・予期しない法律又は規制の変更

・不利な政治的又は経済的要因の発生

・人材の採用と確保の難しさ

・社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる事業活動への悪影響

・潜在的に不利な税影響

・テロ、戦争、疾病、その他の要因による社会的又は経済的混乱

 

(7) 知的財産権

連結会社は他社製品と差別化できる技術とノウハウを蓄積してきましたが、これらの技術とノウハウの一部は、特定の地域及び国では法的制限のため知的財産権として完全な保護が不可能な状況にあり、第三者が連結会社の知的財産権を使って類似した製品を製造することを効果的に防止できない可能性があります。また、連結会社の製品は広範囲にわたる技術を利用しているため、将来的に第三者の知的財産権を侵害しているとされる可能性があります。

 

(8) OEM(※)顧客企業の業績への依存

連結会社の事業の大部分を占めるOEM事業は、世界中の自動車メーカを対象としており、提供する製品は、自動車部品におけるパワトレインシステム、エレクトリフィケーションシステム、電子システム、サーマルシステム、モビリティシステム等多岐にわたります。これらの分野における顧客企業への売上は、その顧客企業の業績や連結会社が管理できない要因により影響を受ける可能性があります。また、顧客の価格引き下げ要請は、連結会社の利益率を低下させる可能性があります。顧客企業の業績不振、予期しない契約の打ち切り、OEM顧客の調達方針の変化、大口顧客の要求に応じるための値下げは、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

連結会社の売上の約半分を、トヨタグループ向け売上が占めています。これらの特定の顧客グループへの売上は、その顧客企業の業績により大きな影響を受ける可能性があります。

 

※OEM:Original  Equipment  Manufacturing(自動車メーカ向けの部品供給)

 

(9) 製品の欠陥

連結会社は世界中の工場で世界的に認められている品質管理基準に従って各種の製品を製造しています。しかし、全ての製品について欠陥が無く、将来にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入していますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。さらに、引き続き連結会社がこのような保険に許容できる条件で加入できるとは限りません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストや連結会社の評価に重大な影響を与え、それにより売上が低下し、連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

(10) 災害や停電等による影響

連結会社は製造ラインの中断による潜在的なマイナス影響を最小化するために、全ての設備における定期的な災害防止検査と設備点検を行っています。しかし、連結会社の生産施設及び連結会社の顧客企業、仕入先企業で発生する災害、停電又はその他の中断事象による影響を完全に防止又は軽減できる保証はありません。例えば、連結会社の事業所の多くは東海地震防災対策強化地域に所在しており、この地域で大規模な地震が発生した場合、生産・納入活動が停止する可能性があります。

 

 

(11) 退職給付債務

連結会社の従業員退職給付費用、退職給付債務及び制度資産は、割引率等数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、将来の連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

(12) 法的手続

連結会社はビジネス活動において、継続的なコンプライアンスの実践に努めています。それにも関わらず、様々な訴訟及び規制当局による法的手続の当事者となる可能性があり、その場合には連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
 なお、連結会社は、2012年1月に米国司法省と締結した司法取引契約等に関連して、米国等で提起された民事訴訟に対応しているほか、一部の自動車メーカとの間で和解交渉を行っています。その結果を予測することは困難ですが、連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

連結会社に関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容です。

連結会社の連結財務諸表は、連結財務諸表規則第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成に当たり必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。また、当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4) 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しています。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において連結会社が判断したものです。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度の世界経済は、米中貿易摩擦等による混乱を背景に輸出や投資が減速した一方、各国政府のインフラ投資加速や景気刺激策が奏功し、全体としては堅調さを維持しました。日本経済は、中国向け輸出減等により、成長が鈍化しました。自動車市場は、経済堅調なインドやASEAN等の新興国で市場拡大がみられましたが、中国では低調な個人消費により、また、米国では金利上昇等により、二大市場はそれぞれ縮小しました。日本においては、軽自動車販売が下支えとなり、前年度を上回ったものの、経済減速を受け、伸びは鈍化しました。

 

連結会社は、「デンソーグループ2030年長期方針」を策定し、「地球に、社会に、すべての人に、笑顔広がる未来を届けたい」というスローガンを定めました。また、この長期方針を実現するための道筋として、「デンソーグループ2025年長期構想」を策定し、「電動化」、「先進安全・自動運転」、「コネクティッド」、「非車載事業(FA・農業)」を注力分野に定め、事業活動を通じて、笑顔広がる社会づくりに貢献していきます。

 

① 事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとの状況

当連結会計年度の経営成績については、欧州及び中国で市場の減速感があったものの、グローバルな車両生産の増加や拡販、及び一昨年11月に子会社化した株式会社デンソーテンの影響等により、売上収益は5兆3,628億円前年度比2,545億円増5.0%増)と増収になりました。営業利益は、将来の成長領域への投資の加速や、前年度に発生した一過性の収益がなくなったことによる影響、当第4四半期連結会計期間での品質費用の引当等により、3,162億円前年度比965億円減23.4%減)、税引前利益は3,560億円前年度比939億円減20.9%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,545億円前年度比660億円減20.6%減)と減益になりました。

当連結会計年度の財政状態については、有形固定資産の増加等により、資産は5兆7,924億円前年度末比280億円増)となりました。

負債は、社債及び借入金の増加等により、2兆220億円前年度末比319億円増)となりました。

資本は、利益剰余金の増加、投資有価証券の評価時価の下落等の結果、3兆7,704億円前年度末比39億円減)となりました。

 

セグメント別の状況については、日本は、予防安全製品の装着率拡大、並びに株式会社デンソーテン子会社化の影響により、売上収益は3兆2,660億円前年度比1,822億円増5.9%増)と増収になりました。営業利益は、操業度差益や合理化努力があったものの、将来の成長領域へ向けた投入による費用の増加に加え、前年度の一過性の収益がなくなったことによる影響、品質費用の引当等により1,260億円前年度比746億円減37.2%減)の減益になりました。資産は、有形固定資産や棚卸資産の増加等により、3兆5,314億円(前年度末比124億円増)となりました。

北米地域は、生産の増加や拡販等により、売上収益は1兆2,124億円前年度比561億円増4.9%増)と増収、営業利益は、合理化努力はあるものの、先行開発費用の増加や、生産能力増強のための投資等により、296億円前年度比129億円減30.3%減)と減益になりました。資産は、有形固定資産や棚卸資産の増加等により、6,149億円(前年度末比373億円増)となりました。

欧州地域は、売上収益は6,525億円前年度比98億円減1.5%減)と減収、営業利益は、合理化努力により、228億円前年度比28億円増13.8%増)と増益になりました。資産は、現金及び現金同等物や営業債権及びその他の債権の減少等により、4,099億円(前年度末比227億円減少)となりました。

アジア地域は、車両生産の増加により、売上収益は1兆4,164億円前年度比936億円増7.1%増)と増収、営業利益は、操業度差益や合理化努力があったものの、韓国拠点の事業減損等により、1,284億円前年度比83億円減6.1%減)と減益になりました。資産は、現金及び現金同等物の増加等により、1兆1,040億円(前年度末比590億円増)となりました。

その他地域は、売上収益は727億円前年度比63億円減7.9%減)と減収、営業利益は103億円(前年度比31億円減、23.1%減)と減益になりました。資産は、持分法で会計処理されている投資やその他の金融資産の減少等により、469億円(前年度末比96億円減)となりました。

 

② 生産、受注及び販売の状況

ⅰ) 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2018年4月1日

  至  2019年3月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

日本

2,334,411

107.9

北米

1,199,690

104.8

欧州

613,071

98.0

アジア

1,222,418

104.5

  報告セグメント計

5,369,590

105.2

その他

74,601

92.1

合計

5,444,191

105.0

 

(注) 1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。

2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

ⅱ) 受注実績

連結会社はトヨタ自動車株式会社を始めとして、各納入先より四半期ごとに生産計画の提示を受け、連結会社の生産能力を勘案して生産計画を立てる等、すべて見込生産を行っています。

 

ⅲ) 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2018年4月1日

  至  2019年3月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

日本

2,284,190

106.7

北米

1,182,012

105.3

欧州

609,417

98.3

アジア

1,215,115

106.0

  報告セグメント計

5,290,734

105.2

その他

72,038

91.8

合計

5,362,772

105.0

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しています。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。

相手先

前連結会計年度

(自  2017年4月1日

  至  2018年3月31日)

当連結会計年度

(自  2018年4月1日

  至  2019年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

トヨタ自動車㈱

 1,204,266

 23.6

1,321,901

24.6

 

3.本表の金額には、消費税等は含まれていません。

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

① キャッシュ・フローの状況

キャッシュ・フローの状況について、現金及び現金同等物(以下、「資金」)は、営業活動により5,335億円増加、投資活動により5,147億円減少、財務活動により922億円減少等の結果、当連結会計年度は前連結会計年度と比べ717億円減少し、7,116億円となりました。

営業活動により得られた資金は、税引前利益の減少(前年度比939億円減)等により、前年度に比べ245億円減少し、5,335億円となりました。

投資活動により使用した資金は、資本性金融商品の取得による支出の減少(前年度比606億円減)等により、前年度に比べ144億円減少し、5,147億円となりました。

財務活動により使用した資金は、借入金の返済による支出の増加(前年度比626億円増)等により、前年度に比べ519億円増加し、922億円となりました。

 

② 資本の財源及び資金の流動性について

資本の財源及び資金の流動性について、連結会社の運転資金及び設備投資資金は、主として自己資金により充当し、必要に応じて借入又は社債の発行等による資金調達を実施することを基本方針としています。
 当連結会計年度は、連結会社の設備投資資金について、主として自己資金、借入及び社債の発行により充当しま
した。
 連結会社の資本的支出は、生産拡大対応、次期型化、新製品切替及び新製品開発のための研究開発投資を重点的に推進する予定であり、その財源は、上記基本方針に従ったものとする予定です。

連結会社は、その健全な財務状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力、連結会社の成長を維持
するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えています。

 

(3) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報

IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに関する項目との差異に関する事項は次のとおりです。なお、当社は日本基準に基づく連結財務諸表を作成していないため、記載した概算額は一定の仮定の下、把握できる範囲で算出したものです。

 

① 有形固定資産の減価償却に関する事項

有形固定資産の減価償却方法について、日本基準では当社及び国内グループ会社は主として定率法を採用していましたが、IFRSでは定額法を採用しています。

この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて、営業利益が26,364百万円増加しています。

 

② 確定給付型退職後給付制度に関する事項

数理差異及び過去勤務費用について、日本基準では発生時にその他の包括利益を通じて純資産の部に計上したうえで、従業員の平均残存期間以内の一定の年数により費用処理していました。IFRSでは数理差異は、発生時にその他の包括利益を通じて資本の部に認識後、直ちに利益剰余金へ振り替え、過去勤務費用は発生時に一括でその他の収益又はその他の費用で認識しています。

また、確定給付制度の純利息(日本基準における期待運用収益及び利息費用)について、日本基準では売上原価又は販売費及び一般管理費に計上していましたが、IFRSでは金融費用に計上しています。

この影響により、当連結会計年度において、IFRSでは日本基準に比べて、営業利益が3,823百万円増加、金融費用が739百万円増加及びその他の包括利益が9,384百万円減少しています。

 

4 【経営上の重要な契約等】

当社は、トヨタ自動車株式会社より、主要な電子部品事業を譲り受けることについて、2019年4月5日付でトヨタ自動車株式会社との事業譲渡契約を締結しました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記33「後発事象」をご参照ください。

 

 

5 【研究開発活動】

デンソーグループ2030年長期方針では、スローガン「地球に、社会に、すべての人に、笑顔広がる未来を届けたい」を宣言し、「環境」「安心」「共感」の3つをキーワードに、従来から注力している「環境」「安心」の提供価値を最大化することに加え、社会から「共感」頂ける新たな価値の提供を通じて、笑顔広がる社会づくりに貢献していきます。この経営思想を事業活動に結びつけ、社会の持続的発展と、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」への貢献を果たしていくために、2018年7月に当社優先取組課題(マテリアリティ)を明確化しました。

2025年度の成長目標として、電動化、自動運転の実現に伴うモビリティの新領域で成長することで、売上収益7兆円、営業利益率10%を実現します。そのために、「経営改革5本の柱」を定め、経営改革を推進するとともに、「電動化」「先進安全・自動運転」「コネクティッド」「非車載事業(FA・農業)」の4分野を注力分野として取り組みます。

近年、自動車の電動化は世界中で急速に進んでおり、電動化製品の世界的な需要の高まりを受け、今後さらなる開発、生産体制を強化するため、当社グループ全体で2018年度から2020年度末までの3ヵ年で約1,800億円の投資を行います。その一環として、2020年5月にデンソー安城製作所内に「電動開発センター」を開設します。また、アイシン精機株式会社と当社は、電動車両の駆動に不可欠な、トランスアクスル、モータージェネレーター、インバーターというキーコンポーネントが一つのパッケージになった、駆動モジュールの開発及び販売を行う合弁会社「株式会社BluE Nexus(ブルーイー ネクサス)」を2019年4月に設立しました。自動運転の実現には、クルマの「走る・曲がる・止まる」に関わるセンサーやステアリング、ブレーキを、より高度に連携させるための車両統合制御システムが必要になります。この度、アイシン精機株式会社、株式会社アドヴィックス、株式会社ジェイテクト、及び当社は、自動運転・車両運動制御等のための統合制御ソフトウエアを開発する合弁会社「株式会社J-QuAD DYNAMICS(ジェイクワッド ダイナミクス)」を2019年4月に設立しました。また、ドライバーの視認性を向上させ、車両の安全性能向上に貢献するデジタルアウターミラー用のECU(Electronic Control Unit)を開発しました。レクサス新型「ES」に採用され、量産車として世界初となるデジタルアウターミラーの製品化を実現しました。従来の光学ミラーに比べ、視界の拡大や悪天候時の視認性向上等、車両の安全性向上に貢献できる技術として期待されています。

コネクティッドカーの進化を支える自動車のソフトウエアを遠隔地から無線で更新するOTA(Over the Air)システムの開発を加速させるため、コネクティッドカー関連のソフトウエア開発で実績を持つAirbiquity社(本社:米シアトル)に、トヨタ自動車株式会社、豊田通商株式会社と共同で出資を行いました。また、営業車等社有車を保有する法人向けに、車両管理からドライバーの安全運転までをサポートするクラウド型社有車管理システム、「フリートオペレーションサービスmobi-Crews」を発売しました。本サービスは、新たに開発した車載通信端末を車両に取り付け、リアルタイムに車両の情報を収集、提供することで、運行管理や安全運転を支援するサービスです。

産業用ロボットを導入する工場では、5Gを活用することで、工場内の有線回線をモバイル通信で代替可能にできます。高精度な三次元計測センサーを導入した場合においても、大容量のセンサー情報の伝送を可能にできます。当社は、工場における大容量通信の実現を目指すため、5Gによる産業用ロボット制御の実証試験を九州工業大学、株式会社デンソー九州の工場内で開始しました。また、株式会社浅井農園と当社は、大規模ハウスにおける次世代施設園芸モデルの構築と普及拡大を目指し、合弁会社「株式会社アグリッド」を2018年8月に設立しました。合弁会社では、三重県いなべ市に国内最大級の農業用ハウスを建設し、野菜生産を通じて、栽培の生産性向上を実現する技術の開発に取り組みます。

当社は、2018年4月に品川に自動運転領域の研究開発オフィス、「Global R&D Tokyo」を開設し、車両メーカー、大学や研究機関、スタートアップ企業等様々なパートナーとの連携、オープンイノベーションを強化しています。今回、新たに羽田空港跡地エリアにおいて、自動運転技術の試作開発、実証を行う拠点を2020年6月に開設して、品川で企画、研究開発する自動運転技術を、羽田で試作開発、実証を行い、東京エリアで完結できる体制を構築します。また、自動運転ライドシェア車両の開発と実用化を加速するため、トヨタ自動車株式会社、ソフトバンク・ビジョン・ファンド及び当社は、UberのAdvanced Technologies Groupへ合計10億ドルの出資を合意しました。今回の合意を受け、自動運転ライドシェア車両の開発を継続するとともに、次世代自動運転キットの設計と開発を共同で行い、本格的な自動運転ライドシェアサービス車両の量産化とサービス実用化に目処をつけることを狙います。

連結会社は、世界各地域でその社会に貢献する製品とサービスを提供していくことを目指しています。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は497,417百万円(資産計上分含む)、その内、日本セグメント438,879百万円、北米セグメント31,185百万円、欧州セグメント12,536百万円、アジアセグメント13,760百万円、その他1,057百万円となっています。日本セグメントが占める比率は約88%となっており、研究開発活動の中心を担っています。