第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において連結会社が判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

①  魅力ある製品で、お客様に満足を提供する。

②  変化を先取りし、世界の市場で発展する。

③  自然を大切にし、社会と共生する。

④  個性を尊重し、活力ある企業をつくる。

を経営の方針としています。

 

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

連結会社は売上収益及び営業利益を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として用いています。

 

 

(3) 対処すべき課題

地球温暖化や高齢化、交通事故等が大きな社会課題となる中、連結会社は「デンソーグループ2030年長期方針」を策定し、「環境」「安心」の提供価値を最大化することに加え、社会から「共感」していただける新たな価値の提供を通じて、笑顔広がる社会づくりに貢献する取り組みを進めてきました。この「デンソーグループ2030年長期方針」を実現させ、大きく変化する産業構造や事業環境に対応するため、現在「2025年中期方針」の策定を進めています。

中期方針は人財に主眼を置き、実現力のプロフェッショナルを生みだす人づくりや、ダイバーシティ&インクルージョンを強力に推進し、変化に強く活力溢れる組織づくりが、社員一人ひとりの力を結集させ、方針実現の推進力になると考えています。そして安全/品質、危機管理、収益力向上等の盤石な経営基盤を確立し、事業ポートフォリオの変革を通じて新たな価値創出を進め、社会課題の解決と事業成長を両立させます。連結会社は不透明な事業環境の下、自ら将来を切り拓き、さらなる企業価値向上を目指します。

 


 

中期方針では、環境変化と中長期での目指す姿を踏まえ、経営基盤強化と事業成長を軸に、「ありたい姿・目標」と「グローバル経営の5本柱」を策定しています。

 


 

注力する分野では、まず電動化戦略においてグローバルでの電動化市場拡大に向け、2015年より天津電装電子有限公司(天津)、2019年デンソー・マニュファクチュアリング・テネシー(北米)にてインバーターの生産を開始し、2021年には急拡大が予想される中国市場対応として天津電装電機有限公司(天津)に電動化工場を新設しインバーターの生産を開始しております(2023年よりMGも生産予定)。今後は、中国南部、欧州、アセアンへの進出を計画しており、グローバル5極での生産体制構築を目指します。また、愛三工業へのフューエルポンプモジュール事業、成都華川電装有限責任公司(以下、華川電装)に、Ⅲ型オルタネータを事業譲渡することを決定しました。華川電装は、主に中国及び欧米・アジア太平洋地域のお客様向けに自動車部品の製造・販売を行っており、1996年に技術援助契約を締結し、当社から技術指導や部品供給等の支援を行ってきました。こうしたパートナーとの連携を進め、お客様への供給責任を果たすとともに、事業ポートフォリオの変革を推進し、注力分野の強化を加速させてまいります。

また、事業活動を通じ社会に「安心」を提供することは当社としての目標です。交通事故や大気汚染、感染症、自然災害、少子高齢化といった社会課題の解決を実現し、社会に「安心」を提供するリーディングカンパニーとなるべく取り組みを進めます。交通事故死亡者ゼロを目指すには、当社での取り組みに加えて関係省庁や車両メーカ、関連業界と連携し、「人」「クルマ」「交通環境」の三位一体での対策が重要です。当社は技術を通じて貢献し、交通死亡事故ゼロの社会を目指します。2021年度は予防安全・運転支援シーンの拡大と、小型・低コストの両立をコンセプトに「Global Safety Package 3」を開発しました。今後も高度運転支援に関する技術開発を推進し、安心・安全な移動の実現に取り組んでまいります。

 

 

2 【事業等のリスク】

連結会社の事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しています。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資家の判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しています。連結会社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めていきます。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月21日)現在において連結会社が判断したものです。

 

(1) 事業環境に関するリスク

① 経済状況

連結会社の全世界における営業収入のうち、重要な部分を占める自動車関連製品の需要は、連結会社が製品を販売している国又は地域の経済状況の影響を受けます。従って、日本、北米、欧州、アジアを含む連結会社の主要市場における景気後退及びそれに伴う自動車需要の縮小は、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、連結会社の事業は、競合他社が製造を行う地域の経済状況から間接的に影響を受ける場合があります。例えば、競合他社が現地でより低廉な人件費の労働力を雇用した場合、連結会社と同種の製品をより低価格で提供できることになり、その結果、連結会社の売上が悪影響を受ける可能性があります。さらに、部品や原材料を製造する地域の現地通貨が下落した場合、連結会社のみならず他のメーカでも、製造原価が下がる可能性があります。このような傾向により、輸出競争や価格競争が熾烈化し、いずれも連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになります。

 

② 為替レートの変動

連結会社の事業には、全世界における製品の生産と販売が含まれています。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されています。換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。一般に、他の通貨に対する円高(特に連結会社の売上の重要部分を占める米ドル、ユーロ及び元に対する円高)は連結会社の事業に悪影響を及ぼし、円安は連結会社の事業に好影響をもたらします。

連結会社が日本で生産し、輸出する事業においては、他の通貨に対する円高は、連結会社製品のグローバルベースでの相対的な価格競争力を低下させ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。連結会社は、為替相場や金利の変動リスクを軽減するために、現地生産や通貨ヘッジ取引を行い、主要通貨間の為替レートの短期的な変動による悪影響を最小限に止める努力をしていますが、中長期的な為替レートの変動により、計画された調達、製造、流通及び販売活動を確実に実行できない場合があるため、為替レートの変動は連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 原材料や部品の供給による影響

連結会社は、製品の製造に使用する原材料や部品を複数のグループ外供給元から調達しています。これらのグループ外供給元とは、基本取引契約を締結し、安定的な取引を行っていますが、市況の変化による価格の高騰や品不足、さらには供給元の不慮の事故等により原材料や部品の不足が生じないという保証はありません。その場合、連結会社製品の製造原価の上昇、さらには生産停止を招く等、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業内容に関するリスク

① 新製品開発力

連結会社は、直近売上収益の9%台を目安として研究開発投資を行う等、積極的な研究開発活動を実施しており、継続して斬新で魅力ある新製品を開発できると考えていますが、新製品の開発と販売のプロセスは、その性質から複雑かつ不確実なものであり、以下をはじめとする様々なリスクが含まれます。

ⅰ) 新製品や新技術への投資に必要な資金と資源を、今後十分充当できる保証はありません。

ⅱ) 長期的な投資と大量の資源投入が、成功する新製品又は新技術の創造へつながる保証はありません。

ⅲ) 連結会社が顧客からの支持を獲得できる新製品又は新技術を正確に予想できるとは限らず、また、これらの 製品の販売が成功する保証はありません。

ⅳ) 新たに開発した製品又は技術が、独自の知的財産権として保護される保証はありません。

ⅴ) 技術の急速な進歩と市場ニーズの変化により、連結会社製品が時代遅れになる可能性があります。

ⅵ) 現在開発中の新技術の製品化遅れにより、市場の需要について行けなくなる可能性があります。

上記のリスクをはじめとして、連結会社が業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新製品を開発できない場合には、将来の成長と収益性を低下させ、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 価格競争

自動車業界における価格競争は大変厳しいものとなっています。特に、自動車メーカからの価格引き下げ要請は、近年、強まってきています。

また、連結会社は、連結会社が属している各製品市場と地域市場において、競争の激化に直面すると予想されます。競合先には他自動車部品メーカがあり、その一部は連結会社よりも低コストで製品を提供しています。さらに、自動車のカーエレクトロニクス化の進展に伴い、民生用エレクトロニクス製品メーカ等、新しい競合先又は既存競合先間の提携が台頭し、市場での大きなシェアを急速に獲得する可能性があります。

連結会社は、技術的に進化した高品質で高付加価値の自動車関連製品を送り出す世界的なリーディングメーカであると考える一方で、将来においても有効に競争できるという保証はありません。価格面での圧力又は有効に競争できないことによる顧客離れは、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 製品の欠陥

連結会社は世界中の工場で世界的に認められている品質管理基準に従って各種の製品を製造しています。しかし、全ての製品について欠陥が無く、将来にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入していますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。さらに、引き続き連結会社がこのような保険に許容できる条件で加入できるとは限りません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストの発生や連結会社の評価が低下することに伴う売上の減少を招き、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 顧客企業の業績への依存

連結会社の事業の大部分を占める自動車メーカ向け部品供給事業は、世界中の自動車メーカを対象としており、提供する製品は、自動車部品におけるサーマルシステム、パワトレインシステム、モビリティエレクトロニクス、エレクトリフィケーションシステム、先進デバイス等多岐にわたります。これらの分野における顧客企業への売上は、その顧客企業の業績や連結会社が管理できない要因により影響を受ける可能性があります。また、顧客企業の価格引き下げ要請は、連結会社の利益率を低下させる可能性があります。顧客企業の業績不振、予期しない契約の打ち切り、顧客企業の調達方針の変化、大口顧客の要求に応じるための値下げは、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

連結会社の売上の約半分を、トヨタグループ向けが占めています。これらの特定の顧客グループへの売上は、その顧客企業の業績により大きな影響を受ける可能性があります。

 

⑤ 企業買収・資本提携

連結会社は、既存提携関係の強化又は新規提携を行うことにより、事業の拡大、機能強化又は新技術の開発を目指しています。このため、他社との提携による新会社設立や既存企業への投資を行っており、さらに、今後も投資活動を行う可能性があります。

新規投資については、幅広い視点から十分に議論を重ねた上で実行に移していますが、投資先企業の価値が低下した場合や提携企業との間で戦略性や優先順位について不一致が生じた場合には、投資に見合った効果を享受できず、投資金額の回収が困難となり、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク

連結会社の生産及び販売活動において、北米や欧州、アジア等の海外市場の占める割合は、年々、高まる傾向にあります。これらの海外市場への事業進出には以下に掲げるようないくつかのリスクが内在しており、これらの事態が発生した場合には、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

ⅰ) 予期しない法律又は規制の変更

ⅱ) 不利な政治的又は経済的要因の発生

ⅲ) 人材の採用と確保の難しさ

ⅳ) 社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる事業活動への悪影響

ⅴ) 潜在的に不利な税影響

ⅵ) ストライキ、テロ、戦争、疾病、その他の要因による社会的又は経済的混乱

 

⑦ 環境問題の重要性の高まりに係るリスク

連結会社は、国内及び海外の環境法規制を遵守した上で、環境負荷の低減と高効率な移動の実現に取り組んでいます。具体的には、会社の環境方針「エコビジョン2025」に基づき、事業活動における環境負荷の削減、環境効率・資源生産性の追求及び環境規制に適合した製品開発に努めています。

しかし、世界的な人口の増加や経済発展・利便性の追求により、エネルギーや資源の消費スピードが加速していることから、地球温暖化や資源枯渇、環境汚染等のリスクへの懸念が高まっています。それに伴い環境に関する取組みの重要性は益々高まり、今後も様々な環境規制が改正・強化され、即時の対応や将来に向けての取組みを求められる可能性があります。その対応が不十分な場合には、製品の売上減少、生産量の限定又はレピュテーション低下等、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 気候変動によるリスク 

 国連気候変動枠組条約第21回締結国会議(COP21)において「パリ協定」が採択され、平均気温の上昇を抑えるため、温室効果ガスの削減に向けた取り組みが世界的に進められています。また直近では、欧・米・中・日などの主要各国政府が脱炭素を宣言、国家成長戦略の重大な政策の1つとして位置づけています。このような背景から、気候変動への対応は、経済成長を制約するものではなく、競争力の源泉になるものと考えています。

連結会社では、持続可能なモビリティ社会のあり方を模索し、長期ビジョンで掲げた、「環境」の提供価値を最大化する目標に向けて、2019年に賛同を表明した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」のフレームワークを参照し、気候変動が事業に与える影響とそれによる機会とリスクをシナリオに基づいて分析、事業戦略に反映していくように検討を進めました。

最近では、気候変動によるリスクについては、以下の通り連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。脱炭素社会への移行リスクとして、気候変動に伴う燃費・排ガス規制や電動化の拡大に、現行製品が適切に対応できないことで、販売機会を喪失する可能性があります。また物理リスクとしてサイクロンや洪水などの異常気象の深刻化と頻度の上昇が考えられ、工場操業停止やサプライチェーンの分断により売上が減少する可能性があります。

これらのリスクへ対処すべく、移行リスクについては、エレクトリフィケーションシステム事業、サーマルシステム事業、パワトレインシステム事業において新たな燃費規制や電動化需要に応えるための研究開発の加速と得意先への提案をしています。また物理リスクについては、建物、構造物への気象災害対策(洪水含む)の実施のほか、部材などの購入先を複数社化することによりサプライチェーンに対するリスクマネジメントの強化に取り組んでいます。

2021年度から、「35年カーボンニュートラル」の実現を目指して「モノづくり」「モビリティ製品」「エネルギー利用」の3つの領域において脱炭素に向けた取り組みを加速させています。具体的には、「モノづくり」においては、再生可能エネルギーの利用、徹底した省エネ活動の実行、低カーボンな材料・設備・生産工程の採用、Factory-IoTの導入などを加速させ、2025年には工場から排出されるCO2を証書・クレジットを利用してゼロ、2035年にはクレジットなしでゼロを目指します。「モビリティ製品」においては、駆動システムとサーマルシステムを核としたエネルギーマネジメント技術により、BEV・HEV・PHEV・FCEVからe-VTOL(electric Vertical Take-Off and Landing)まで全方位で技術開発を推進するなど、電動化の普及に貢献することで可能な限りCO2排出量を削減、2025年に電動化分野で売上1兆円を目指します。「エネルギー利用」においては、再生可能エネルギーを貯める技術や、人工光合成のような新技術など、CO2を再エネルギー化・再資源化する技術開発に取り組みます。この技術により、家庭や産業から排出されるCO2、大気中のCO2を、必要な場所でどこでも回収・再利用できるシステムを開発し、2025年には社会実証、2030年には事業化、そして2035年にはこの分野で売上3,000億円を目指します。

 

⑨ 情報セキュリティリスク

連結会社は、様々なグループ内専用ネットワークや情報技術システムを利用しています。さらに、連結会社の車載製品は、高度運転支援や自動運転等の高度な情報技術システムに使われています。

連結会社は、社内ネットワークや生産ライン等にセキュリティ対策を講じ、情報資産の保護、安定的な供給の実現を図っているほか、車載製品をサイバー攻撃から守る技術を開発し、確実に搭載すべくグループ独自の仕組みを構築しています。

しかしながら、サイバー攻撃等の不正行為は脅威を増しており、連結会社を標的とした事象も発生しています。想定を大幅に超えるサイバー攻撃等を受けた場合、重要な業務の中断、機密情報の漏洩、車載製品の機能への悪影響等が生じる可能性もあります。その結果、競争力の喪失やレピュテーション低下を招き、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(3) イベント性のリスク

① 災害等による影響

連結会社は、大規模な自然災害、事故、疫病等の発生時に製造ラインの中断等による事業へのマイナス影響を最小化するため、全ての設備における定期的な災害防止検査と設備点検、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)や有事行動マニュアルの策定等の減災対応に取り組んでいます。

しかし、連結会社の生産施設及び連結会社の顧客企業、仕入先企業で発生する災害等による中断等の影響を完全に防止又は軽減できる保証はありません。例えば、連結会社の事業所の多くは東海地震防災対策強化地域に所在しており、この地域で大規模な地震が発生した場合、生産・納入活動が停止する可能性があります。

  

② 法的手続

連結会社はビジネス活動において、継続的なコンプライアンスの実践に努めています。それにも関わらず、様々な訴訟及び規制当局による法的手続の当事者となる可能性があり、その場合には連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

なお、連結会社は、特定の自動車部品の過去の取引に関する独占禁止法違反の疑いに関連して、一部の国において当局による調査を受けており、また、ドイツにおいて顧客1社が当社子会社を相手に提起した民事訴訟に対応しているほか、主要顧客(自動車メーカ)との間で和解交渉を行っています。その結果を予測することは困難ですが、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 新型コロナウイルス感染症拡大の影響

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して、連結会社では、顧客、取引先及び従業員の安全や健康を第一に考え、また、更なる感染拡大を防ぐために、WHO及び各国政府当局の指針に従った感染防止策の徹底をはじめとして、感染リスクが高い国や地域との往来の制限、イベントの休止、テレワーク(在宅勤務)の推進等に努めながら事業活動を行っています。

しかしながら、新型コロナウイルス感染症が拡大した場合には、原材料や部品の確保等が困難となり生産に支障をきたすことや、世界的な景気の悪化等によって自動車メーカによる車両販売数の減少が深刻となること等が想定され、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

連結会社に関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容です。

連結会社の連結財務諸表は、連結財務諸表規則第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成に当たり必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。また、当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4) 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しています。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において連結会社が判断したものです。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の防疫や各国の政策対応により、国や地域での差異はあるものの回復傾向でした。しかし、世界の自動車生産は、第1四半期連結会計期間では前年を上回り好調だったものの、第2四半期連結会計期間以降から半導体や原材料不足が深刻化し、車両の減産や一時稼働停止を余儀なくされました。そのほか、部品価格や材料費の高騰、米国を中心とした物流混乱や輸送費高騰、新型コロナウイルス感染症の変異株拡大、ウクライナの情勢悪化など、事業活動に影響を与える事象が多数発生しました。

当連結会社は「デンソーグループ2030年長期方針」を策定し、「地球に、社会に、すべての人に、笑顔広がる未来を届けたい。」というスローガンの下、「環境」「安心」への企業活動を通じた社会課題の解決と、持続的社会の実現への貢献を目指しています。足元では、車両の減産や、部品費・材料費の高騰等の厳しい外部環境が続く中、当社は品質問題とコロナ禍を契機に、2020年より進めてきた変革プラン「Reborn(リボーン)21」を通じて、経営基盤や財務体質の強化、「環境」「安心」を軸にした成長戦略の立案に取り組んできました。仕事のデジタル化による効率化や事業ポートフォリオの組替えによるリソーセス適正化など成果が出始めており、活動の定着とともに、今後更なる発展に努めます。

 

① 事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとの状況

当連結会計年度の業績は、売上収益は、半導体不足等による車両減産があったものの、新型コロナウイルス感染症による影響からの回復等により、5兆5,155億円前年度比5,788億円増11.7%増)と前年比増収になりました。営業利益は車両減産影響による操業度差損や電子部品を中心とした部材費、物流費、素材費、エネルギー費の高騰等、外部環境の影響があったものの、固定費の低減や研究開発の効率化等、採算改善努力の効果により、3,412億円前年度比1,861億円増120.0%増)、税引前利益は3,848億円前年度比1,911億円増98.6%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,639億円前年度比1,388億円増111.0%増)と増益になりました。

当連結会計年度の財政状態については、資産については、棚卸資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ6,646億円増加し、7兆4,323億円となりました。

負債については、社債及び借入金の増加等により、前連結会計年度末に比べ2,518億円増加し、2兆9,427億円となりました。

資本については、投資有価証券の評価時価の上昇等により、前連結会計年度末に比べ4,128億円増加し、4兆4,895億円となりました。

 

セグメント別の業績について、いずれの地域も直近の車両減産の影響があるものの、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復に伴い、前年比では全地域で増収となりました。営業利益については、外部環境の悪化等があるものの、上期の操業度良化に加え、体質変革活動の効果刈り取りがグローバルで進んだ結果、北米、欧州を除き増益となりました。

日本は、トヨタ自動車株式会社向けを中心とする販売の増加等があり、売上収益は、3兆5,151億円前年度比3,381億円増10.6%増)と増収、営業利益は、1,889億円前年度比1,663億円増735.6%増)と増益になりました。資産は、棚卸資産やその他の金融資産の増加等により、4兆7,323億円(前年度末比1,468億円増)となりました。

北米地域は、売上収益は、1兆1,602億円前年度比1,340億円増13.1%増と増収、営業利益は、外部環境の影響を大きく受け43億円前年度比104億円減70.9%減)と減益になりました。資産は、営業債権及びその他の債権や棚卸資産の増加等により、8,248億円(前年度末比1,494億円増)となりました。

欧州地域の売上収益は、5,614億円前年度比417億円増8.0%増)と収、営業損失は、構造改革費用の計上により34億円(前年度は31億円の営業利益)と減益になりました。資産は、棚卸資産やその他の流動資産の増加等により、4,274億円(前年度末比110億円増)となりました。

アジア地域は中国以外の地域における新型コロナウイルス感染症からの回復等により、売上収益は、1兆6,379億円前年度比3,341億円増25.6%増)と増収、営業利益は、1,438億円前年度比324億円増29.1%増)と増益になりました。資産は、営業債権及びその他の債権や棚卸資産の増加等により、1兆5,087億円(前年度末比2,468億円増)となりました。

その他地域は、売上収益は、766億円前年度比362億円増89.6%増)と増収、営業利益は155億円前年度比85億円増121.1%増)と増益になりました。資産は、現金及び現金同等物や棚卸資産の増加等により、674億円(前年度末比248億円増)となりました。

 

② 生産、受注及び販売の状況

ⅰ) 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2021年4月1日

  至  2022年3月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

日本

2,450,825

105.4

北米

1,247,641

123.2

欧州

525,831

109.7

アジア

1,501,835

131.4

  報告セグメント計

5,726,132

115.4

その他

80,276

177.7

合計

5,806,408

116.0

 

(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。

 

ⅱ) 受注実績

連結会社はトヨタ自動車株式会社を始めとして、各納入先より四半期ごとに生産計画の提示を受け、連結会社の生産能力を勘案して生産計画を立てる等、すべて見込生産を行っています。

 

ⅲ) 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2021年4月1日

  至  2022年3月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

日本

2,375,673

104.2

北米

1,143,929

114.4

欧州

506,203

105.0

アジア

1,414,347

124.7

  報告セグメント計

5,440,152

111.1

その他

75,360

189.3

合計

5,515,512

111.7

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しています。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。

相手先

前連結会計年度

(自  2020年4月1日

  至  2021年3月31日)

当連結会計年度

(自  2021年4月1日

  至  2022年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

トヨタ自動車㈱

1,474,409

29.9

1,483,154

26.9

 

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

① キャッシュ・フローの状況

キャッシュ・フローの状況については、現金及び現金同等物(以下、「資金」)は、営業活動により3,956億円増加、投資活動により3,016億円減少、財務活動により1,595億円減少等の結果、当連結会計年度は前連結会計年度と比べ296億円減少し、8,678億円となりました。

営業活動により得られた資金は、前年度の4,372億円に対し、3,956億円となり、416億円減少しました。この減少は、売上債権の増減額が前年度と比べ、1,129億円減少した一方で、棚卸資産の増減額が前年度と比べ1,947億円増加したこと等によるものです。

投資活動により使用した資金は、前年度の3,959億円に対し、3,016億円となり、943億円減少しました。この減少は、トヨタ自動車株式会社から主要な電子部品事業を取得したことによる収支等が1,016億円減少したこと等によるものです。

財務活動により得られた又は使用した資金は、前年度の2,387億円の資金の増加に対し、1,595億円の資金の減少となり、3,982億円減少しました。この減少は、借入金の調達額が8,829億円減少した一方で、借入金の返済額も4,827億円減少したこと等によるものです。

当連結会計年度における有形固定資産の取得額は、前連結会計年度の3,955億円から15.0%減少し、3,364億円となりました。この減少は、止血施策の一環として投資案件の精査を強化したことによるものです。

 

② 資本の財源及び資金の流動性について

資本の財源及び資金の流動性について、連結会社の運転資金及び設備投資資金は、主として自己資金により充当し、必要に応じて借入又は社債の発行等による資金調達を実施することを基本方針としています。
 当連結会計年度は、連結会社の運転資金及び設備投資資金について、自己資金及び、借入・社債発行による資金を充当しました。
 連結会社の資本的支出は、生産拡大対応、次期型化、新製品切替及び新製品開発のための研究開発投資を重点的に推進する予定であり、その財源は、上記基本方針に従ったものとする予定です。

連結会社は、その健全な財務状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力等により、連結会社の成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えています。

 

4 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

5 【研究開発活動】

デンソーグループ2030年長期方針では、スローガン「地球に、社会に、すべての人に、笑顔広がる未来を届けたい」を宣言し、「環境」「安心」「共感」の3つをキーワードに、「環境」「安心」の提供価値を最大化することに加え、社会から「共感」頂ける新たな価値の提供を通じて、笑顔広がる社会づくりに貢献していきます。

2020年より「環境」「安心」分野での成長戦略の立案・実行と、環境変化に左右されない「引き締まった強靭な企業体質への転換」を同時に推進する変革プラン「Reborn(リボーン)21」を起動し、2021年を達成の年として推進して参りました。更に「環境」と「安心」の軸はぶらさず、当社が貢献する領域を、「モビリティ」と「モノづくり」から、新たに「ソサエティ」まで広げ、より多くのお客さまのお役に立てるよう、新しい選択肢・新しい価値の創造に挑んでいます。

「環境」分野では、2035年までに二酸化炭素(CO2)排出を実質的にゼロにするカーボンニュートラルを実現することを目指し、「モノづくり」「モビリティ製品」「エネルギー利用」を重要3領域と定め、「工場から排出されるCO2をゼロにする取り組み」「HEV・BEV・FCEVからe-VTOL(空モビ)に至る全方位の技術」「CO2を回収・再利用する技術」の技術開発を進めて参りました。「モビリティ製品」領域では、航続距離の延長や、充電時間の短縮、バッテリーの長寿命化等、電気自動車の実用性向上に貢献する製品を開発し、5月に発売されたTOYOTA「bZ4X」および2022年半ばに発売予定のSUBARU「ソルテラ」に採用される予定です。今回、新たに開発した電動化製品は、電流を検知する電流センサー、充電・電力変換・電力分配の各機能を集約したESU(Electricity Supply Unit)、大気中の熱をエアコンの熱源とする高効率エコヒートポンプシステム、乗員の膝元を温める輻射ヒーターです。その他にも、当該電池の温度・電圧を検知するセンサー、電池の状態をモニタリングする電池監視ECU、情報を集約しエネルギーを制御するBEV ECU等も採用されます。また、株式会社BluE Nexusの「新型eAxle」に当社製のインバーターが搭載されています。カーボンニュートラルを実現するためには、クルマの電動化に貢献し、CO2を可能な限り削減することが重要です。引き続き当社は、電気自動車が社会やユーザーにとって新たな価値や選択肢となるよう、これからも電動化技術の開発を推進していきます。

「安心」分野では、社会に「安心」を提供するリーディングカンパニーを目指すべく、「交通事故ゼロ」「快適空間」「働く人の支援」を安心の3本柱として、技術開発を進めて参りました。例えば当社は、車両の周辺環境を認識し、安全性能向上に貢献する「Global Safety Package 3」を開発しました。2021年8月に発売された「日野レンジャー」、2021年10月に発売されたLEXUS「NX」、2022年1月に発売されたTOYOTA「ノア」「ヴォクシー」に搭載される予防安全システム向けの製品として採用されています。「Global Safety Package 3」は、車両や道路等の形状を検知する「ミリ波レーダー」と、カメラで自車の前方環境を検知する「画像センサー」を組み合わせることで、ドライバーの運転を支援するシステムで、今回の製品は第3世代に該当します。交通事故をなくし、自由な移動を実現するためには、安全製品をさらに進化させ最先端の技術を車両に搭載していくこと、また価格面でも魅力ある製品を開発し、より多くの車両に普及させることが重要です。引き続き当社は、高度運転支援に関する技術開発を推進し、ドライバー、歩行者をはじめとする、世界中のすべての人にとって安全で自由な移動の実現に取り組んでいきます。

最後に「ソサエティ」に関する事例として、学校法人東海大学、国立大学法人豊橋技術科学大学、学校法人中部大学、当社は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構の支援のもと、新型コロナウイルス検査機器の開発に取り組んでおり、新しい仕組みのバイオセンサーを開発し、新型コロナウイルスの検出に成功したことを2021年8月に発表いたしました。今後は、感染症の早期診断に貢献することを目指し、実用化に向けた開発を加速していきます。

 

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は497,556百万円(資産計上分含む)、その内、日本セグメント444,467百万円、北米セグメント26,179百万円、欧州セグメント11,270百万円、アジアセグメント14,804百万円、その他836百万円となっています。日本セグメントが占める比率は約89%となっており、研究開発活動の中心を担っています。