第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において連結会社が判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

①  魅力ある製品で、お客様に満足を提供する。

②  変化を先取りし、世界の市場で発展する。

③  自然を大切にし、社会と共生する。

④  個性を尊重し、活力ある企業をつくる。

を経営の方針としています。

 

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

連結会社は売上収益、営業利益及びROE(自己資本利益率)を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として用いています。

 

 

(3) 対処すべき課題

地球温暖化や高齢化、交通事故等が大きな社会課題となる中、連結会社は「デンソーグループ2030年長期方針」を策定し、「環境」「安心」の提供価値を最大化することに加え、社会から「共感」していただける新たな価値の提供を通じて、笑顔広がる社会づくりに貢献する取り組みを進めてきました。この「デンソーグループ2030年長期方針」を実現させ、大きく変化する産業構造や事業環境に対応するために、中期でどのような活動に注力し、どのような姿を目指すのかという道筋と目標を示す「2025年中期方針」を策定しました。

2025年中期方針は人財に主眼を置き、実現力のプロフェッショナルを生みだす人づくりや、ダイバーシティ&インクルージョンを強力に推進し、変化に強く活力溢れる組織づくりが、社員一人ひとりの力を結集させ、方針実現の推進力になると考えています。そして安全/品質、危機管理、収益力向上等の盤石な経営基盤を確立し、事業ポートフォリオの変革を通じて新たな価値創出を進め、社会課題の解決と事業成長を両立させます。

また、当社は従来から「環境・安心・共感」を基に「地球に優しいモノづくり」と「安心で価値のある移動」の実現に取り組んできました。一方で世界は急激に変化し、地球規模の社会課題も一層深刻化しています。

・社会課題の深刻化(気候変動・人口増加・資源不足等)

・循環型社会への要請(再生可能エネルギー、リサイクル材利用が義務に)

・デジタル化の伸展(物理情報がデータ化され仮想空間で解析されるサイバーフィジカルシステムが現実に)

・価値観の多様化(世代差・地域差等価値観が多様に)

当社はこれらの社会課題に向き合い、「幸福の循環」の輪をモビリティから社会全体に広げるべく、「社会活動を止めない」「多様な価値観、幸福感に応える」ことを目指し、「人流」「物流」「エネルギー流」「資源流」「データ流」の5つの流れのアプローチに取り組みます。そして、5つの流れを相互につなげ、統合的に制御することで、幸福循環社会の実現を目指します。


 


注力する分野では、「環境」分野においては、「2035年生産活動でのカーボンニュートラルの実現」を目指すべく、「モノづくり」、「モビリティ製品」、「エネルギー利用」の3つの領域で取り組みを進めています。

「モビリティ製品」では、当社初となるSiC(シリコンカーバイド)パワー半導体を用いたインバータを市場投入しました。本製品は株式会社BluE Nexusの「eAxle」に組み込まれ、LEXUS初の電気自動車(BEV)専用モデル「RZ」に搭載されました。このSiCパワー半導体は、電力損失を大幅に低減する半導体の材料でつくられており、BEVの電費向上と航続距離の延伸に貢献します。

「モノづくり」と「エネルギー利用」では、当社と株式会社デンソー福島、トヨタ自動車株式会社は共同で株式会社デンソー福島工場内でのグリーン水素の製造、及び製造した水素の工場における活用の実証を開始します。今回の実証を通じて、「水素地産地消」モデルの構築や、カーボンニュートラル工場の実現を目指します。

(上記2つの事例は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの支援を得て推進しています。)

また、「安心」分野においては、「社会に『安心』を提供するリーディングカンパニー」を目指すべく、「交通事故死亡者ゼロ」、「快適空間」、「働く人の支援」の3つの領域で取り組みを進めています。

「交通事故死亡者ゼロ」では、車両周辺の歩行者や自転車を認識し、安全運転支援に貢献する画像センサについて、検知角度のさらなる広角化を実現しました。広角化により、道路脇からの自転車や歩行者の飛び出し検知に貢献します。

「働く人の支援」では、当社は熊本県と「食」・「農」分野に関する包括連携協定を締結しました。この協定を通じ、当社と熊本県がこれらの分野で緊密に連携し、モノづくり技術等を活用し、フードバリューチェーンの最適化に向けた生産・流通分野での効率化及び付加価値向上や、熊本由来の地域資源を生かした新商品開発等に取り組みます。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

⑴ 全体像

当社は創業以来、社会のため、お客様のために、事業を通じて社会課題解決に貢献するというサステナビリティ経営を進めてきました。サステナビリティ経営の考え方は、当社の社是にも同様の精神が記され、脈々と受け継がれた当社経営の根幹であり、成長の原動力と考えています。サステナビリティ経営の着実な実践に向け、サステナビリティ方針を策定するとともに、社会課題を当社の長期ビジョン、優先取組課題(マテリアリティ)に落とし込み、事業活動を通じてその解決に取り組んでいます。当社のサステナビリティ経営の推進に向けた基本的なマネジメント体制は以下のとおりです。

 

サステナビリティ経営全体像


*1:経営審議会/経営戦略会議にて戦略審議

*2:品質保証会議、全社安全衛生環境委員会等、主管部門が事務局となり、公式会議体にて方針審議

 

① ガバナンス

取締役・経営役員をサステナビリティ推進統括責任者として、経営戦略本部が全社のサステナビリティ経営推進機能を担っており、方針や活動計画の立案、各部署の活動支援・フォローアップ、社内外コミュニケーション等を行っています。サステナビリティ経営の方向付けや全社活動状況のフォローアップ等は、取締役会監督のもと、会社の公式会議体(経営審議会等)で審議・報告を行っています。個別のサステナビリティテーマについては、主管部署が各専門委員会で審議を受け、関係部署と連携して活動を推進しています。

 

② リスク管理

当社では、多様化するリスクを最小化すべく、自社にとってのリスクを常に把握し、被害の最小化と事業継続の両面からリスクマネジメントを行っています。

具体的には、リスクマネジメント統括責任者「チーフ・リスク・オフィサー(CRO)」を議長とする「リスクマネジメント会議」を設置し、グループ全体のリスクマネジメント体制・仕組みの改善状況の確認、社内外の環境・動向を踏まえた重点活動の審議・方向付け等、グループ全体として、平時における経営被害の未然防止と有事における最小化に向けた対応力強化を推進しています。

また、生命・信用・財産・事業活動に関し、発生頻度と影響度、取り巻く環境等から主要なリスク項目を抽出した上で、それぞれに責任部署や各リスクの影響度・発生の要因・事前予防策・初動/復旧対応等を明確化し、未然防止、初動・復旧対策の強化に取り組んでいます。

その中で、特にリソースを投入し、対策を推進するリスクを重点リスクと位置づけ、危機管理の更なる強化に向けた計画・目標の設定とリスクマネジメント会議への実績報告を行うとともに、会社目標に組み込み、取締役会においても活動の進捗状況を確認しています。サステナビリティに関しては、気候変動リスク(自然災害)のほか、品質問題、環境汚染、労働災害、火災・爆発事故、情報セキュリティ事故、遭遇事変(疫病・戦争・テロ)等を、重点リスクとして選定しています。

なお、主要なリスク項目および重点リスク項目は、社会で問題になっているテーマや当社グループでのリスク発生の頻度・影響度等を考慮し、適宜見直しを実施しています。

 


 

 

⑵ 気候変動

気候変動の危機が迫るなか、当社では、持続可能なモビリティ社会のあり方を模索し、2030年長期ビジョンで掲げた「環境」の提供価値を最大化する目標に向けてサステナビリティ経営を加速させています。2019年に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」への賛同を表明し、気候変動が事業に与える影響とそれによるリスクと機会をシナリオに基づいて分析、事業戦略へ反映していくよう検討を進めることで、事業の持続的な成長へとつなげる取り組みを推進しています。

 

① ガバナンス

当社は、全社安全衛生環境委員会において、気候変動に関わる重要事項を審議・決定しています。同委員会は年2回開催され、中長期目標の策定や省エネに関わる投資等の環境経営推進上の重要事項について協議・決定を行います。

また、事業に重要な影響を及ぼすと判断された案件(ビジョン、中期経営戦略、大型投資等)については経営審議会あるいは取締役会で審議しています。

全社安全衛生環境委員会の下部委員会には、事業グループごとの委員会、国内グループごとの委員会、海外地域別(北米、南米、欧州、中国、東南アジア)の委員会があり、委員長は担当役員です。さらにはエネルギー部会、物流部会、クリーン製品部会、生産環境部会の4つの部会が構成され、担当範囲を明確にして効率的、重点的に活動を推進しています。シナリオ分析結果を含む課題については、全社安全衛生環境委員会で共有する等、必要な手続きを検討・実施した上で、全社事業計画に反映し、速やかに実行していきます。

 

② 戦略

気候変動が事業に及ぼす影響の把握と気候関連の機会とリスクを具体化するために、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の外部シナリオをベンチマークとして参照しました。また、自動車産業のシナリオ分析を確認しつつ、自社の中長期戦略における事業環境認識と照合しながら総合的にシナリオを想定の上、シナリオと自社中長期戦略との差異分析を行い、事業に与える影響が100億円以上に相当する項目を重要項目として抽出しました。

なお、上記シナリオの想定について、移行リスクはIEA「World Energy Outlook」の中で想定される「B2DS」、「SDS」シナリオをそれぞれ推進的・野心的シナリオと定義し、範囲としては2040年までのCO2排出量、炭素税、原油価格、再生可能エネルギー率、新車電動車率を定量化し、自社戦略との差よりリスクと機会を分析しました。また物理的リスクでは、IPCC第5次評価報告書より、「RCP8.5」「RCP6.0」をそれぞれ鈍化、推進シナリオと定義し、気象災害、海面上昇、生態システム悪化、水食糧不足等を定性化し、自社戦略との差よりリスクと機会を分析しました。

主なリスクと機会、重要項目への対応策は以下のとおりです。

 

 

主なリスク

重要事項

時間軸/影響

主要な財務上の潜在的影響

財務影響

(2025年度)

対応策

対応費用

(2022年度)

既存の製品及びサービスに対する新たな命令・規制

長期/

やや高い

燃費・排ガス規制厳格化加速を背景とした売上減少

・燃費規制の厳格化(2018年から2030年にかけてCO2排出量(上限)は約3分の1)や自動車の電動化(ハイブリッド自動車を含む)の加速(2018年:2%→2030年:47%)を想定。当該変化に対応できず、規制不適合による販売停止等により売上減少

3,000億円

・航続距離の延伸に向けた電動化製品の省エネルギー技術開発加速

・新たな燃費規制に向けたハイブリッド自動車等の内燃機関の燃費向上に向けた開発加速

880億円

サイクロンや洪水等の異常気象の深刻化と頻度の上昇

長期/

やや高い

工場操業停止・サプライチェーン分断による売上減少

・洪水発生の可能性が高い日本・アジア(全生産の66%)で操業が停止することにより売上が減少

1,000億円

・建物・構造物への気象災害対策の実施

・部材等の購入先の複数社化等によるサプライチェーンに対するリスクマネジメント強化

・世界工場をIT・IoT技術でつなぐプラットフォームを開発。自然災害による生産変更等に即時に対応できるグローバル生産体制を構築

90億円

カーボンプライシングメカニズム

中期/

高い

カーボンプライシング導入加速に伴うコスト競争力低下

・世界における炭素税や排出量取引制度、炭素国境調整措置等の新たな規制の拡大・厳格化により、内燃機関向け製品をはじめとしたすべての車載用製品に炭素コストが付加

120億円

・国内外の製造に関わるエネルギー由来のCO2低減に向け、炭素税の影響を受けない再生可能エネルギー由来の電力への戦略的かつ段階的な切り替え

・省エネルギーや生産プロセスの効率化の活動継続

30億円

 

 

主な機会

重要事項

時間軸/影響

主要な財務上の潜在的影響

財務影響

(2025年度)

対応策

対応費用

(2022年度)

研究開発及び技術革新を通じた新製品やサービスの開発

中期/

高い

電動車の需要増加に起因する売上増加

・カーボンニュートラルを背景に各国で電動車が増加。ヒートポンプシステム等電動車の熱効率改善技術の需要も高まる

・インバータやサーマルの電動関連製品を含め、電動化対応により売上が増加

5,000億円

・省動力技術(エジェクタ、ヒートポンプ、蓄冷エパポレーター)、省能力技術(内外気2層ユニット)、小型化高出力技術(インバータ)等の電動化関連技術や、熱マネジメント技術(蓄熱、廃熱利用、吸着ヒートポンプ)の開発を加速

・新燃料(e-fuel、水素等)に対応するエンジン制御システム等の技術開発も推進

900億円

事業活動の多様化

長期/

中程度

脱炭素に資する技術需要増加に伴う売上増加

・農業、物流、FA等、今まで培ってきた車載領域の脱炭素に寄与する技術開発で非自動車領域における事業機会を創出

・CO2を吸収・再利用・貯蔵する技術を開発し2035年事業化を目指す

農業・

FA等

3,000億円

 

CO2吸収

・再利用

・貯蔵

3,000億円(2035年)

・センサ・制御・ロボットやバイオ関連技術を最大限活用した農業生産技術や自動車の排ガスを浄化する技術を活かしたCO2吸収・再利用・貯蔵する技術等を創出

・積極的なアライアンスによる新事業とその販路開拓

170億円

より効率的な生産及び物流プロセスの活用

中期/

やや高い

工場の省エネルギー推進によるエネルギーコスト低減

・全世界の工場における生産プロセスの効率化を進め、エコビジョン2025の「エネルギー使用量を原単位で2012年度比半減」が達成した場合、年間173万tCO2分の削減とともにエネルギーコストも削減

600億円

省エネルギー活動の継続と、さらなる生産プロセスの効率化に向けた省エネルギー生産技術開発の促進

90億円

 

(注)「財務影響(2025年度)」及び「対応費用(2022年度)」は2023年6月20日時点における暫定値です。

確定値は2023年9月末発行予定の「統合報告書2023」において記載予定です。

 

③ リスク管理

当社では、急速に変化する事業環境の中で、多様化するリスクを常に把握し、被害の最小化と事業継続の両面からリスク管理を行っています。気候変動関連のリスクについては、全社安全衛生環境委員会で報告した上、重要項目の把握と対応を明確化しています。なお、気候変動関連のリスク(物理的リスク)は、リスクマネジメント会議が特にリソーセスを投入して対策を推進する重点リスクの一つとして選定されており、全社リスク管理の観点からもグループ全体でリスク対応を強化しています。

 

④ 指標及び目標

「エコビジョン2025*1」に基づく活動計画の進捗状況や社会からの要請・期待等を踏まえ、2021年度より一層高い目標として「カーボンニュートラル」を掲げ、活動を開始しました。なお目標については、「2025年中期方針」にて明確化するとともに、優先取組課題(マテリアリティ)に関する「サステナビリティ目標」の一つとして会社経営目標にも落とし込み、前述の全社安全衛生環境委員会だけでなく、経営審議会及び取締役会で進捗状況を共有・フォローアップしています。「2025年中期方針」にて明確化した具体的な会社経営目標は以下のとおりです。

 

気候変動(CO2排出量削減)に関する目標

領域

目標(2035年)

モノづくり

完全なカーボンニュートラル達成(ガスも含む)

(2025年:電力のカーボンニュートラル達成(ガスはクレジット活用))

モビリティ製品(電動化)

CO2排出量2020年度比▲50% *2

新事業(エネルギー利用)

CO2排出量2020年度比▲50% *2

 

 

上記目標はパリ協定の1.5℃シナリオを前倒しして設定したものですが、ステークホルダーの皆様にさらに共感をいただけるように、科学的知見と整合したSBTi(Science Based Targets initiative)の認証取得を目指します。

 

CO2排出量(グローバル/Scope1+2)の状況

 


 

(注)1.*1「エコビジョン2025」:すべての企業行動を通じて、環境問題やエネルギー問題の解決と自然との共生を図り、2050年の持続可能な地域・社会の実現に向けた、その中間時点となる2025年までのアクションプラン

2.*2 基準値:2020年度モビリティ製品によるCO2排出量

3.CO2排出量(グローバル/Scope1+2)の状況について、2018年度以降のCO2排出量より、「温室効果ガス総排出量算定方法ガイドライン」に準じて算出方法を変更しており、2020年度よりSGSジャパン株式会社による独立した第三者検証を取得しています。

また、2022年度のCO2排出量について、2023年6月20日時点の社内算出値は150.7万tです。本算出値については、2024年1月にSGSジャパン株式会社による第三者検証を取得予定です。

 

⑶ 人的資本

① 人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する取組

i) 戦略

当社は、創業以来、「先進、信頼、総智・総力」というバリュー(デンソースピリット)を受け継ぎながら、100を超える世界初の技術や製品を生み出してまいりました。現在、自動車産業を取り巻く環境に大きな構造変化が起きるなか、環境と安心の大義実現に向け、モビリティだけでなく、インダストリー・ソサエティのフィールドでも新たな価値を提供すべく、これまで多様なお客さまに価値をお届けしてきた「実現力」にさらに磨きをかけています。実現力には、品質・コスト・供給を実現する「量産実現力」と、お客さま価値・コトの事業モデル・異業種パートナー連携を実現する「事業実現力」があり、この両輪が当社の強みであると考えています。これからも、多くのパートナーとともに、新しい“できる”を実現し、社会に実装・普及させていく存在でありたいと考え、「実現力のプロフェッショナル集団」を人と組織のビジョン(ありたい姿)に掲げました。ビジョン実現に向けた人財・組織改革を2021年度より具体的に着手し、「PROGRESS」という名称で人事施策・制度の刷新を進めています。

PROGRESSの主な取り組み

キャリア

キャリア研修、専門性の強化、キャリアイノベーションプログラム

人財育成

トレーニー制度、異業種連携の共創プログラム、経営リーダー研修

評価・処遇

評価・昇格・賃金制度の運用刷新、多様なライフを支える福利厚生

働き方・カルチャー

エンゲージメントを高める取り組み、DX人財育成、多様性(女性活躍推進等)

 

 

ii) 指標及び目標

a) エンゲージメントを高める取組

社員一人ひとりが成長し、挑戦し続け、成果を発揮するには、高いワークエンゲージメントが必要です。当社では、約2,500の職場、全社員約45,000人を対象としたエンゲージメント調査を毎年実施し、仕事のやりがい・働き方のポジティブ度・会社への愛着・職場への満足度等の観点で分析した上で、職場を11タイプに分類しています。自職場の結果は全員に開示され、話し合いを通じて、より良い職場づくりに取り組んでいます。

職場づくりの要である管理職に対しては、多様な人財を束ねるマネジメント力の向上に向けて、有識者の講演や対話スキル研修等を実施しています。獲得したスキルは、日頃の部下とのコミュニケーションや1on1、年3回の面談等で実践され、2022年度の「ワークエンゲージメント肯定回答率」は2021年度より3%上昇しました。

指標

実績

(2021年度)

実績

(2022年度)

目標

(2025年度)

ワークエンゲージメント

肯定回答率

70%

73%

78%

 

(注)「ワークエンゲージメント肯定回答率」は当社単体の数値を基に算出しています。

 

b) 人財ポートフォリオ変革の取組

当社の掲げる大義・戦略の実現に向け、3つのプロの獲得・育成・配置を進めています。

 

ア) 経営のプロ

未来の当社や新たな事業をけん引するリーダー人財を計画的に輩出するために、タレントマネージャーを設置し、グローバルに優秀人財を早期発掘しています。発掘した人財の育成・配置については、CHRO、地域CEO等で定期的に行い、成長を支援しています。次世代リーダーを育成するGlobal Leadership Development Programには、これまで約220人が受講しており、2030年度には、海外拠点長の現地人材比率50%を目指して、取り組みを強化しています。

 

イ) 領域のプロ

組織全体では、内燃領域から電動領域へのシフト、ハードウェアからソフトウェアへのシフト等、数千人規模で重点領域への人財流動性を高めています。一方、社員一人ひとりに対しては、激動の時代を切り拓く「実現力のプロフェッショナル」になるために、キャリアイノベーション施策を充実させています。特に重要なソフトウェア領域では、ソフトウェアエンジニア向けに保有スキルを客観的に認定する「ソムリエ認定制度」や、転身した後に必要となる知識・スキルを習得する、ソフトリカレントプログラムを展開しています。さらに2022年度には、事業ポートフォリオ転換を実現する組織能力の向上・最適配置に向け、約40領域で求められる専門性を約500分類に再定義し、約15,000人のオフィス勤務者の専門性レベルを5段階で可視化しました。今後は当データを活用し、事業戦略に必要なプロ人財の充足と活躍を目指していきます。

 

ウ) 多彩なプロ

性別・性自認・性的指向・年齢・人種・国籍・宗教、障がいの有無、経験、価値観等、目に見えない違いも含め、多彩なプロが活躍できる環境・組織風土の実現に向けて、グローバルに取り組みを進めています。

女性活躍については、採用・ライフイベントとの両立・昇格等フェーズごとにKPIを設定し、2021年度からは事技職に加え、生産関係職の管理職数も目標値として掲げ(2025年度 管理職数200人、班長以上数200人)女性向けロールモデル座談会や上司向けダイバーシティ研修といった取り組みを進めています。また、デンソーグループとして、国際女性デーには、北米・欧州・インド地域で講演会・パネルディスカッション等のイベントを開催し、一体感向上にも取り組んでいます。

指標

実績

(2021年度)

実績

(2022年度)

目標

(2025年度)

女性管理職人数

事技系 130人

技能系 132人

事技系 139人

技能系 136人

事技系 200人

技能系 200人

 

(注)「女性管理職人数」は当社単体の数値を基に算出しています。

 

② 社内環境整備に関する取組

i) 戦略

a) 安全衛生

デンソーグループとしての事業基盤の確立のためには、安全衛生管理の向上は必要不可欠です。
当社が制定した「安全衛生環境基本理念」(1969年)に基づき、「安全で働きやすい職場づくりこそ、人間尊重と高生産性を両立させ得る最善策」という方針のもと、デンソーグループにおける安全衛生の継続的な向上に取り組んでいます。

 

b) 社員とともに進める健康づくり

心身の健康は、いきいきと働くための源であり、社員とその家族の幸せに不可欠なものです。当社では、社員の健康増進を経営課題の一つと位置づけ、「健康経営*1」を推進しています。
2016年9月に「健康宣言」を発表するとともに、健康増進に向けた社員の意識向上と職場単位の活動促進を図るため、心身両面の健康施策の充実に取り組んでいます。

また、国内外のデンソーグループ各社で健康経営を推進するため、2019年2月に「デンソーグループ健康経営基本方針」を策定しました。この基本方針をグローバルに共有し、各国・各社の実情を踏まえた健康経営を実践することで、一人ひとりの健康意識(ヘルス・リテラシー)を向上させ、より働きやすい環境づくりにグループ全体で努めていきます。

(注)*1「健康経営」:NPO法人健康経営研究会の登録商標

 

ii) 指標及び目標

a) 安全衛生

安全衛生の向上のため、安全点(災害の大きさや種類に応じてリスクを点数化した指標、低いほど良好)について目標を設定し、災害発生に至った要因を未然防止の視点から、作業面・設備面・管理面について評価しています。

2022年度は「重大災害・爆発火災防止」と「機械作動部・重量物等の“1種災害”低減」を重点に、部門トップによる安全コミュニケーション巡回、異常処置等の際に手を出すことにより起こる災害の防止強化、リスクの高い設備等を重点とした爆発火災防止点検等、全員参加の活動に取り組みました。

結果、重大災害・爆発火災は0件を継続できましたが、安全点目標は、国内グループにおける災害増加により一部目標未達となりました。災害要因を分析した結果、その多くが“やり難い場所・姿勢”を伴い、安全確保が作業者に強く依存しており、「人に頼る作業のリスク再評価・低減」と「動くところに手を出すな」を重点方針に織り込み、災害抑止に向け、引き続き活動を展開しています。

 

安全点

区分

目標

(2022年度)

実績

(2022年度)

評価

(2022年度)

当社

50.0点

23.0点

国内グループ

36.0点

46.0点

×

海外グループ

48.5点

24.5点

 

 

b) 社員とともに進める健康づくり

「健康日本21*1」で目標値が設定されている「健康行動」と「健康データ」に該当する、一人ひとりの健診データより点数化した当社オリジナル指標「生活習慣スコア*2」を設定し、全社平均値を会社経営目標値としています。

職場の健康責任者(部門長)及び健康推進リーダーに職場別集計値を通知し、効果的な健康アクションプランを立案しています。

社員一人ひとりには強み・弱み・同年代の比較・今後取り組むべきアドバイスを記載した通知書を配布し、意識啓発を行っています。

2022年度は、健康的な生活習慣実施率の底上げによって、2017年度比10%アップを目指して活動を推進しました。また、自社開発した健康アプリ「デンソー健康ステーション(DKS)」は、生活習慣スコアのみならず、健康診断データ、社員食堂での喫食データ(カロリー・塩分量等)の確認、体重・歩数・血圧等も登録できる仕組みとなっており、日々の健康管理に活用されています。

 

生活習慣スコア

区分

2020年度

2021年度

2022年度

目標値

74.5点

76.0点

77.0点

実績値

72.5点

74.0点

74.5点

 

(注)1.*1「健康日本21」:厚生労働省が策定している生活習慣病の未然防止とともに健康寿命を延ばすことを目標に国民の健康増進を促進するための方針

2.*2「生活習慣スコア」の算出方法

「健康行動」が80点満点、「健康データ」が20点満点で構成される合計100点満点のスコアで、年に1回の健康診断の結果に基づき算出しています。

3.生活習慣スコアは当社単体の数値を基に算出しています。

 

 

3 【事業等のリスク】

連結会社の事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しています。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資家の判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しています。連結会社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めていきます。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年6月20日)現在において連結会社が判断したものです。

 

(1) 事業環境に関するリスク

① 経済状況

連結会社の全世界における営業収入のうち、重要な部分を占める自動車関連製品の需要は、連結会社が製品を販売している国又は地域の経済状況の影響を受けます。従って、日本、北米、欧州、アジアを含む連結会社の主要市場における景気後退及びそれに伴う自動車需要の縮小は、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、連結会社の事業は、競合他社が製造を行う地域の経済状況から間接的に影響を受ける場合があります。例えば、競合他社が現地でより低廉な人件費の労働力を雇用した場合、連結会社と同種の製品をより低価格で提供できることになり、その結果、連結会社の売上が悪影響を受ける可能性があります。さらに、部品や原材料を製造する地域の現地通貨が下落した場合、連結会社のみならず他のメーカでも、製造原価が下がる可能性があります。このような傾向により、輸出競争や価格競争が熾烈化し、いずれも連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになります。

 

② 為替レートの変動

連結会社の事業には、全世界における製品の生産と販売が含まれています。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されています。換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。一般に、他の通貨に対する円高(特に連結会社の売上の重要部分を占める米ドル、ユーロ及び元に対する円高)は連結会社の事業に悪影響を及ぼし、円安は連結会社の事業に好影響をもたらします。

連結会社が日本で生産し、輸出する事業においては、他の通貨に対する円高は、連結会社製品のグローバルベースでの相対的な価格競争力を低下させ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。連結会社は、為替相場や金利の変動リスクを軽減するために、現地生産や通貨ヘッジ取引を行い、主要通貨間の為替レートの短期的な変動による悪影響を最小限に止める努力をしていますが、中長期的な為替レートの変動により、計画された調達、製造、流通及び販売活動を確実に実行できない場合があるため、為替レートの変動は連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 原材料や部品の供給による影響

連結会社は、製品の製造に使用する原材料や部品を複数のグループ外供給元から調達しています。これらのグループ外供給元とは、基本取引契約を締結し、安定的な取引を行っていますが、市況の変化による価格の高騰や品不足、さらには供給元の不慮の事故等により原材料や部品の不足が生じないという保証はありません。その場合、連結会社製品の製造原価の上昇、さらには生産停止を招く等、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業内容に関するリスク

① 新製品開発力

連結会社は、直近売上収益の9%台を目安として研究開発投資を行う等、積極的な研究開発活動を実施しており、継続して斬新で魅力ある新製品を開発できると考えていますが、新製品の開発と販売のプロセスは、その性質から複雑かつ不確実なものであり、以下をはじめとする様々なリスクが含まれます。

ⅰ) 新製品や新技術への投資に必要な資金と資源を、今後十分充当できる保証はありません。

ⅱ) 長期的な投資と大量の資源投入が、成功する新製品又は新技術の創造へつながる保証はありません。

ⅲ) 連結会社が顧客からの支持を獲得できる新製品又は新技術を正確に予想できるとは限らず、また、これらの 製品の販売が成功する保証はありません。

ⅳ) 新たに開発した製品又は技術が、独自の知的財産権として保護される保証はありません。

ⅴ) 技術の急速な進歩と市場ニーズの変化により、連結会社製品が時代遅れになる可能性があります。

ⅵ) 現在開発中の新技術の製品化遅れにより、市場の需要について行けなくなる可能性があります。

上記のリスクをはじめとして、連結会社が業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新製品を開発できない場合には、将来の成長と収益性を低下させ、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 価格競争

自動車業界における価格競争は大変厳しいものとなっています。特に、自動車メーカからの価格引き下げ要請は、近年、強まってきています。

また、連結会社は、連結会社が属している各製品市場と地域市場において、競争の激化に直面すると予想されます。競合先には他自動車部品メーカがあり、その一部は連結会社よりも低コストで製品を提供しています。さらに、自動車のカーエレクトロニクス化の進展に伴い、民生用エレクトロニクス製品メーカ等、新しい競合先又は既存競合先間の提携が台頭し、市場での大きなシェアを急速に獲得する可能性があります。

連結会社は、技術的に進化した高品質で高付加価値の自動車関連製品を送り出す世界的なリーディングメーカであると考える一方で、将来においても有効に競争できるという保証はありません。価格面での圧力又は有効に競争できないことによる顧客離れは、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 製品の欠陥

連結会社は世界中の工場で世界的に認められている品質管理基準に従って各種の製品を製造しています。しかし、全ての製品について欠陥が無く、将来にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入していますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。さらに、引き続き連結会社がこのような保険に許容できる条件で加入できるとは限りません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストの発生や連結会社の評価が低下することに伴う売上の減少を招き、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 顧客企業の業績への依存

連結会社の事業の大部分を占める自動車メーカ向け部品供給事業は、世界中の自動車メーカを対象としており、提供する製品は、自動車部品におけるサーマルシステム、パワトレインシステム、モビリティエレクトロニクス、エレクトリフィケーションシステム、先進デバイス等多岐にわたります。これらの分野における顧客企業への売上は、その顧客企業の業績や連結会社が管理できない要因により影響を受ける可能性があります。また、顧客企業の価格引き下げ要請は、連結会社の利益率を低下させる可能性があります。顧客企業の業績不振、予期しない契約の打ち切り、顧客企業の調達方針の変化、大口顧客の要求に応じるための値下げは、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

連結会社の売上の約半分を、トヨタグループ向けが占めています。これらの特定の顧客グループへの売上は、その顧客企業の業績により大きな影響を受ける可能性があります。

 

⑤ 企業買収・資本提携

連結会社は、既存提携関係の強化又は新規提携を行うことにより、事業の拡大、機能強化又は新技術の開発を目指しています。このため、他社との提携による新会社設立や既存企業への投資を行っており、さらに、今後も投資活動を行う可能性があります。

新規投資については、幅広い視点から十分に議論を重ねた上で実行に移していますが、投資先企業の価値が低下した場合や提携企業との間で戦略性や優先順位について不一致が生じた場合には、投資に見合った効果を享受できず、投資金額の回収が困難となり、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク

連結会社の生産及び販売活動において、北米や欧州、アジア等の海外市場の占める割合は、年々、高まる傾向にあります。これらの海外市場への事業進出には以下に掲げるようないくつかのリスクが内在しており、これらの事態が発生した場合には、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

ⅰ) 予期しない法律又は規制の変更

ⅱ) 不利な政治的又は経済的要因の発生

ⅲ) 人材の採用と確保の難しさ

ⅳ) 社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる事業活動への悪影響

ⅴ) 潜在的に不利な税影響

ⅵ) ストライキ、テロ、戦争、疾病、その他の要因による社会的又は経済的混乱

 

⑦ 環境問題の重要性の高まりに係るリスク

連結会社は、国内及び海外の環境法規制を遵守した上で、環境負荷の低減と高効率な移動の実現に取り組んでいます。具体的には、会社の環境方針「エコビジョン2025」に基づき、事業活動における環境負荷の削減、環境効率・資源生産性の追求及び環境規制に適合した製品開発に努めています。

しかし、世界的な人口の増加や経済発展・利便性の追求により、エネルギーや資源の消費スピードが加速していることから、地球温暖化や資源枯渇、環境汚染等のリスクへの懸念が高まっています。それに伴い環境に関する取り組みの重要性は益々高まり、今後も様々な環境規制が改正・強化され、即時の対応や将来に向けての取り組みを求められる可能性があります。その対応が不十分な場合には、製品の売上減少、生産量の限定又はレピュテーション低下等、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 気候変動によるリスク 

 国連気候変動枠組条約第21回締結国会議(COP21)において「パリ協定」が採択され、平均気温の上昇を抑えるため、温室効果ガスの削減に向けた取り組みが世界的に進められています。また直近では、欧・米・中・日等の主要各国政府が脱炭素を宣言、国家成長戦略の重大な政策の1つとして位置づけています。このような背景から、気候変動への対応は、経済成長を制約するものではなく、競争力の源泉になるものと考えています。

連結会社では、持続可能なモビリティ社会のあり方を模索し、長期ビジョンで掲げた、「環境」の提供価値を最大化する目標に向けて、2019年に賛同を表明した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」のフレームワークを参照し、気候変動が事業に与える影響とそれによる機会とリスクをシナリオに基づいて分析、事業戦略に反映していくように検討を進めました。

気候変動によるリスクについては、以下のとおり連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。脱炭素社会への移行リスクとして、気候変動に伴う燃費・排ガス規制や電動化の拡大に、現行製品が適切に対応できないことで、販売機会を喪失する可能性があります。また物理リスクとしてサイクロンや洪水等の異常気象の深刻化と頻度の上昇が考えられ、工場の操業停止やサプライチェーンの分断により売上が減少する可能性があります。

これらのリスクへ対処すべく、移行リスクについては、エレクトリフィケーションシステム事業、サーマルシステム事業、パワトレインシステム事業において新たな燃費規制や電動化需要に応えるための研究開発の加速と得意先への提案をしています。また物理リスクについては、建物、構造物への気象災害対策(洪水含む)の実施のほか、部材等の購入先を複数社化することによりサプライチェーンに対するリスクマネジメントの強化に取り組んでいます。詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 気候変動」をご参照ください。

 

⑨ 情報セキュリティリスク

連結会社は、様々なグループ内専用ネットワークや情報技術システムを利用しています。さらに、連結会社の車載製品は、高度運転支援や自動運転等の高度な情報技術システムに使われています。

連結会社は、社内ネットワークや生産ライン等にセキュリティ対策を講じるとともに、社員へのセキュリティに対する更なるリテラシー向上教育を実施する等、情報資産の保護、安定的な供給の実現を図っているほか、車載製品をサイバー攻撃から守る技術を開発し、確実に搭載すべくグループ独自の仕組みを構築、運用の定着に取り組んでいます。

しかしながら、サイバー攻撃等の不正行為は脅威を増しており、連結会社を標的とした事象も発生しています。想定を大幅に超えるサイバー攻撃等を受けた場合、重要な業務の中断、機密情報の漏洩、車載製品の機能への悪影響等が生じる可能性もあります。その結果、競争力の喪失やレピュテーション低下を招き、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) その他のリスク

① 災害等による影響

連結会社は、大規模な自然災害、事故、疫病等の発生時に製造ラインの中断等による事業へのマイナス影響を最小化するため、全ての設備における定期的な災害防止検査と設備点検、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)や有事行動マニュアルの策定等の減災対応に取り組んでいます。

しかし、連結会社の生産施設及び連結会社の顧客企業、仕入先企業で発生する災害等による中断等の影響を完全に防止又は軽減できる保証はありません。例えば、連結会社の事業所の多くは東海地震防災対策強化地域に所在しており、この地域で大規模な地震が発生した場合、生産・納入活動が停止する可能性があります。

  

② 法的手続

連結会社はビジネス活動において、継続的なコンプライアンスの実践に努めています。それにも関わらず、様々な訴訟及び規制当局による法的手続の当事者となる可能性があり、その場合には連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

なお、連結会社は、特定の自動車部品の過去の取引に関する独占禁止法違反の疑いに関連して、一部の国において当局による調査を受けており、また、主要顧客(自動車メーカ)との間で和解交渉を行っています。その結果を予測することは困難ですが、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 人権

連結会社は、従来「デンソーグループサステナビリティ方針」 や「社員行動指針」において、人権を侵害する労働またはそれに準ずる行為の禁止を明文化し、グループで共有するとともに徹底を図っています。昨今、グローバル社会でビジネスにおける人権尊重への取り組みの重要性が高まる中、人権に関する取り組みをより一層推進すべきと考え、人権に関する個別方針「デンソーグループ人権方針」を策定しました。

しかしながら、差別やハラスメントによるコンプライアンス違反が発生した場合、社会的信頼が失墜し、連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

連結会社に関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容です。

連結会社の連結財務諸表は、連結財務諸表規則第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成に当たり必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。また、当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4) 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しています。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において連結会社が判断したものです。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症による経済活動の制限の緩和が進み、緩やかな回復基調となりました。一方、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化等の影響を受け、世界的にエネルギーや車載向け半導体が不足し、これらを中心に取引価格が高騰しました。また、欧米各国の金融引締め等による景気後退懸念や、中国でのゼロコロナ政策の影響による国内外混乱等、世界経済の不透明な状況が続きました。

 

① 事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとの状況

当連結会計年度の業績について、売上収益は、半導体不足や中国のロックダウン等により車両生産は影響を受けたものの、年間を通じて回復基調となりました。加えて、注力領域である電動化関連製品や先進安全製品を中心に、順調な拡販を進め、6兆4,013億円前年度比8,858億円増16.1%増)と前年比増収になりました。営業利益は、電子部品を中心とした部材費・素材費や、物流費・エネルギー費用の高騰等、厳しい外部環境の中、グローバルでの自社努力による合理化と、コスト上昇分の価格反映により、4,261億円前年度比849億円増24.9%増)、税引前利益は4,569億円前年度比721億円増18.7%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は3,146億円前年度比507億円増19.2%増)と増益になりました。

また半導体の安定調達に向けて、半導体メーカーとの長期契約締結やパートナーシップを強化したほか、型費の支払いについても、従来の分割支払いから一括支払いに変更する等、サプライチェーン全体での競争力向上や、経済循環への取り組みを強化しました。今後も社会課題の解決と企業価値向上を両立させ、持続可能な社会の実現に挑戦し続けます。

 

当連結会計年度の資産については、非流動資産に属するその他の金融資産の減少等により、前連結会計年度末に比べ236億円減少し、7兆4,087億円となりました。

負債については、社債及び借入金の減少等により、前連結会計年度末に比べ1,138億円減少し、2兆8,290億円となりました。

資本については、利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べ902億円増加し、4兆5,797億円となりました。

 

セグメント別の業績について、売上収益は、いずれの地域も直近の車両減産の影響があるものの、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復や、拡販の実現に伴い、前年比では全セグメントで増収となりました。営業利益は、外部環境の悪化等があるものの、変動対応力強化等の効果刈り取りがグローバルで進んだ結果、全セグメントで増益となりました。

日本の売上収益は、3兆7,058億円前年度比1,907億円増5.4%増)と増収、営業利益は、為替差益や車両生産の回復、外部環境の悪化に対する採算改善努力の効果により、2,156億円前年度比267億円増14.1%増)と増益になりました。資産は、その他の金融資産や退職給付に係る資産の減少等により、4兆7,156億円(前年度末比167億円減)となりました。

北米地域の売上収益は、1兆5,041億円前年度比3,439億円増29.6%増と増収、営業利益は、外部環境の悪化の影響が大きいものの、採算改善努力の効果により、179億円前年度比137億円増320.5%増)と増益になりました。資産は、営業債権及びその他の債権や有形固定資産の増加等により、8,307億円(前年度末比59億円増)となりました。

欧州地域の売上収益は、6,856億円前年度比1,241億円増22.1%増)と収、営業利益は、車両生産の回復や、採算改善努力の効果に加え前年度の構造改革費用の解消により、175億円(前年度は34億円の営業損失)と増益になりました。資産は、営業債権及びその他の債権や未収消費税等(未収付加価値税)の増加等により、4,893億円(前年度末比619億円増)となりました。

アジア地域の売上収益は、1兆9,317億円前年度比2,938億円増17.9%増)と増収、営業利益は、採算改善努力の効果と円安の進行により1,583億円前年度比145億円増10.0%増)と増益になりました。資産は、現金及び現金同等物の増加等により、1兆6,380億円(前年度末比1,293億円増)となりました。

その他地域の売上収益は、1,012億円前年度比246億円増32.2%増)と増収、営業利益は、車両生産の回復に加え、採算改善努力の効果により193億円前年度比38億円増24.5%増)と増益になりました。資産は、棚卸資産や営業債権及びその他の債権の増加等により、803億円(前年度末比129億円増)となりました。

 

② 生産、受注及び販売の状況

ⅰ) 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

  至  2023年3月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

日本

2,609,060

106.5

北米

1,453,416

116.5

欧州

620,389

118.0

アジア

1,666,863

111.0

  報告セグメント計

6,349,728

110.9

その他

108,792

135.5

合計

6,458,520

111.2

 

(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。

 

ⅱ) 受注実績

連結会社はトヨタ自動車株式会社を始めとして、各納入先より四半期ごとに生産計画の提示を受け、連結会社の生産能力を勘案して生産計画を立てる等、すべて見込生産を行っています。

 

ⅲ) 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

  至  2023年3月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

日本

2,509,604

105.6

北米

1,486,718

130.0

欧州

624,329

123.3

アジア

1,680,872

118.8

  報告セグメント計

6,301,523

115.8

その他

99,797

132.4

合計

6,401,320

116.1

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しています。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。

相手先

前連結会計年度

(自  2021年4月1日

  至  2022年3月31日)

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

  至  2023年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

トヨタ自動車㈱

1,483,154

26.9

1,525,936

23.8

 

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

① キャッシュ・フローの状況

キャッシュ・フローの状況については、現金及び現金同等物(以下、「資金」)は、営業活動により6,027億円増加、投資活動により3,637億円減少、財務活動により4,001億円減少等の結果、当連結会計年度は前連結会計年度と比べ1,340億円減少し、7,339億円となりました。

営業活動により得られた資金は、前年度の3,956億円に対し、6,027億円となり、2,071億円増加しました。この増加は、前年度と比べ税引前利益が721億円増加したことに加え、棚卸資産の増加額が1,936億円減少したこと等によるものです。

投資活動により使用した資金は、前年度の3,016億円に対し、3,637億円となり、621億円増加しました。この増加は、有形固定資産の取得による支出が242億円増加したこと等によるものです。

財務活動により使用した資金は、前年度の1,595億円に対し、4,001億円となり、2,406億円増加しました。この増加は、短期借入金の純増減額が1,395億円減少したことに加え、社債の償還による支出が600億円増加したこと等によるものです。

当連結会計年度における有形固定資産の取得額は、前連結会計年度の3,364億円から7.2%増加し、3,606億円となりました。この増加は、注力分野への投入強化と規律ある事業運営を両立しながら投資を推進したことによるものです。

 

② 資本の財源及び資金の流動性について

資本の財源及び資金の流動性について、連結会社の運転資金及び設備投資資金は、主として自己資金により充当し、必要に応じて借入又は社債の発行等による資金調達を実施することを基本方針としています。
 当連結会計年度は、連結会社の運転資金及び設備投資資金について、自己資金及び、借入・社債発行による資金を充当しました。
 連結会社の資本的支出は、生産拡大対応、次期型化、新製品切替及び新製品開発のための研究開発投資を重点的に推進する予定であり、その財源は、上記基本方針に従ったものとする予定です。

連結会社は、その健全な財務状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力等により、連結会社の成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えています。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

デンソーグループ2030年長期方針では、「地球に、社会に、すべての人に、笑顔広がる未来を届けたい」をスローガンとし、「環境」「安心」の提供価値を最大化することに加え、社会から「共感」していただける新たな価値の提供を通じて、笑顔広がる社会づくりに貢献することを宣言しています。

「環境」分野では、カーボンニュートラルの実現を目指し、「モビリティ製品」「エネルギー利用」「モノづくり」の3領域で技術開発を行っています。これまで当社は、高耐圧と低オン抵抗を両立し、発熱による電力損失を大幅に低減する為、独自のトレンチMOS構造のSiCパワー半導体を開発してきました。この度、そのSiC半導体を用いたインバータ(電気自動車のモータを駆動・制御する製品)を量産化し、2023年3月発売のLEXUS初の電気自動車(BEV)専用モデル「RZ」に採用されました。量産に際しては、車載品質で安定的な生産を行う為の素材品質の向上技術も開発しました。また、電動技術の自動車以外への展開も進めており、米Honeywell International Inc.と共同開発した電動航空機向けモータが、電動垂直離着陸機を開発中の独Lilium N.V.の機体に採用されることが2022年5月に決定しました。住宅用蓄電池システム向けの製品も開発し、2022年6月に受注開始されたトヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ自動車)の「おうち給電システム」にて、車両と連携する給電アダプタ、蓄電池システム内に搭載されるコンピュータ、スマートフォン向けの専用アプリケーション、蓄電池システムの情報を収集する蓄電池システムサーバーが採用されました。水素エネルギー利用の一例では、2023年3月より株式会社デンソー福島にて、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援のもと、トヨタ自動車と共同で、工場内でのグリーン水素の製造・活用の実証を始めました。カーボンニュートラル化促進と水素の地産地消モデル構築を目指しています。

「安心」分野では、車と交錯する歩行者や自転車をより早く認識するため、安全運転支援における画像センサの検知角度を広角化しました。道路脇からの飛び出しは、特に12歳以下の子どもの交通事故の約7割を占めると言われます(公益財団法人 交通事故総合分析センター ”2019年版 交通統計”)。広角化ではより多くの対象物を検知できる一方、実際の危険に至らない検知も増加します。人工知能(AI)による動き推定等を用いた危険の見極めにより、広角化のメリットと実用性を両立させました。2022年4月発表のSUBARU「アウトバック」(北米仕様)の一部グレード、及び9月公開の同社「クロストレック」(日本仕様)にも新たに採用されました。他の事例として2022年10月より、高齢者の安全運転支援を目的とした実証実験を愛知県豊田市で開始しています(豊田市の交通死亡事故ゼロを目指した官民連携事業「ジコゼロ大作戦」の一環。一般財団法人トヨタ・モビリティ基金、東京海上日動火災保険株式会社、東京大学大学院新領域創成科学研究科と共同)。ドライブレコーダーから収集した車内外の映像等をAIで分析し、安全運転のためのアドバイスを行うAI運転診断システムを活用して、高齢者の事故リスク低減を効果的に実現する方法を検証します。

社会から共感いただける新たな価値創造への取り組み事例としては、デンソーグループで培ってきたモビリティ関連の技術や製品等の資産を活用しながら、地域課題の解決や暮らしの利便性向上につながる新たなサービス開発を目指して、2022年5月より「DENSO OPEN INNOVATION PROJECT」を始動し、広くパートナー企業の募集を開始しました。募集テーマの1つは地域情報発信システムを活用した地域創生です。自治体や地域の情報をスマートフォンやタブレット等から地域住民へ届けるシステム「ライフビジョン」は「誰でも」「簡単」「確実」をコンセプトにこれまで65の自治体に導入されています。情報配信にとどまらず、防災・福祉・教育・コミュニケーション・移動等の多様な地域課題を解決するプラットフォーム機能として、暮らしを支えるサービス機能の拡充を目指しています。もう1つの募集テーマは、QRコードと組み合わせた本人認証の活用です。株式会社デンソーウェーブが保有する、顔特徴点をQRコード化する技術「顔認証SQRC」を用いて、新たなソリューションや市場の創出を目指します。顔情報をQRコードへ格納することで、なりすまし防止が求められるシーンにおいて、オフライン・低コスト・安心・安全な本人認証を行うことができます。今後当社はモビリティ企業・製造業・QRコード発明企業としての専門性をさらに発揮すべく、社会を「人流」「物流」「エネルギー流」「資源流」「データ流」という5つの流れとして分析し、不足するものを技術開発と社会連携により生み出していきます。

 

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は521,615百万円(資産計上分含む)、その内、日本セグメント461,264百万円、北米セグメント29,602百万円、欧州セグメント13,432百万円、アジアセグメント16,267百万円、その他1,050百万円となっています。日本セグメントが占める比率は約88%となっており、研究開発活動の中心を担っています。