文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において連結会社が判断したものです。
① 魅力ある製品で、お客様に満足を提供する。
② 変化を先取りし、世界の市場で発展する。
③ 自然を大切にし、社会と共生する。
④ 個性を尊重し、活力ある企業をつくる。
を経営の方針としています。
連結会社は売上収益、営業利益及びROE(自己資本利益率)を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として用いています。
(3) 対処すべき課題
世界中で温暖化や資源の枯渇といった社会課題が複雑化・高度化しています。同時に、先端技術の急速な発展により、未来を見通すことが難しい時代に突入しました。特に近年、AIやデジタル技術の進化は、人や組織の在り方を根本から変えつつあり、企業間の競争環境にも大きな変化をもたらしています。
自動車業界においては、CASEの進展に伴い、電動車やSDVが普及しています。モビリティと社会が密接につながり、単なる移動手段を超えた新たな価値創出が求められています。
このような状況下では、変化に柔軟に適応しつつ、目指す姿の実現に向けた着実な取り組みが不可欠です。
当社は自動車業界を取り巻く大きな変化を機会と捉え、「環境」と「安心」を軸に、モビリティを起点として、より広い領域で環境と安心の価値を提供し、社会課題の解決に貢献する企業を目指します。
これらの取り組みを通じて、人々が安心して暮らせる未来創りに挑戦していきます。また、その挑戦を通じて、持続的な事業成長を図り、多くのステークホルダーの皆様に価値を提供していきます。

当社は、目指す姿の実現に向けて、「社会課題の解決」と「人の幸せ・成長」を中長期の経営の目的に据え、企業活動を進めていきます。
「社会課題の解決」は、「環境」と「安心」の2つの軸で、様々な価値を提供することで実現していきます。
それらの活動を通じ得られた共感が、私たちを「幸せ・成長」へと導き、大きな力を生み出していくと考えています。
2つの目的を達成するための正の循環により、事業を成長させ、ステークホルダーの皆様に継続的に貢献して参ります。
(1) 全体像
当社は創業以来、社会のため、お客様のために、事業を通じて社会課題解決に貢献するサステナビリティ経営を進めてきました。サステナビリティ経営の考え方は、当社の社是にもその精神が記され、脈々と受け継がれた当社経営の根幹であり、成長の原動力と考えています。サステナビリティ経営の着実な実践に向け、社会課題を当社の長期ビジョン、優先取組課題(マテリアリティ)に落とし込み、事業活動を通じてその解決に取り組んでいます。長期ビジョンでは事業を通して貢献できる分野を「環境」「安心」及び「共感」と設定しました。また、社会課題の中から、持続可能な社会実現のために重要度が高く、当社が貢献すべきテーマをマテリアリティに選定するとともに、各テーマに対し目標を定め、その達成に向けた取り組みを進めています。
昨年、社会課題及び当社を取り巻く事業環境の変化を踏まえ、マテリアリティの見直しを行いました。当社にとっての財務的影響と当社が社会に与えるインパクトの両観点から機会とリスクの特定を行い、また顧客、取引先、投資家、従業員等のステークホルダーとの対話を通じていただいた意見や期待を加味してマテリアリティを再設定しました。現在、マテリアリティごとの目標・指標や活動計画等を策定しています。なお、昨今のサステナビリティを取り巻く社会動向を踏まえ、サステナビリティ経営のガバナンス体制の強化を見据えて「サステナビリティ会議」を創設しました。
当社のサステナビリティ経営の推進に向けた基本的なマネジメント体制は以下のとおりです。
サステナビリティ経営推進体制

① ガバナンス
<責任機関(役割・権限、スキル等)>
当社にとっての財務的影響と当社が社会に与えるインパクトの両観点から機会とリスクの特定を行い、策定したデンソーグループのマテリアリティ案の審議及び活動のフォローアップと軌道修正を行う等、サステナビリティ経営の推進に責任をもつ機関としてサステナビリティ会議を設置しています。取締役副社長が議長を務め、経営戦略部が事務局を担っています。またマテリアリティごとに推進責任者(役員クラス)を構成メンバーとして任命しています。議長は、サステナビリティ担当役員の経験を有しており、また各マテリアリティ推進責任者も各マテリアリティに関する業務経験を有しています。加えて、マテリアリティの選定プロセスの参画や、最新の社会課題動向等の共有・議論等、同会議への参画を通じて、サステナビリティに関する専門知識・スキルを深めています。習得した専門知識やスキルを基に、社会への影響やリスク・機会の特定、及びそれに基づくマテリアリティの見直しに反映しています。
マテリアリティごとの目標・指標や活動計画の策定にあたっては、マテリアリティ推進責任部門が各専門委員会等で審議した目標・指標案や活動計画案をサステナビリティ会議へ報告・審議にかけます。サステナビリティ会議における審議事項は、必要に応じて経営審議会にて審議し、最終的に取締役会が承認し決定します。
リスクの特定にあたっては、「リスクマネジメント会議」が主体となり、関連部門に対して定期的にリスクの洗い出しやリスク低減計画の策定等を行います(詳細は「②リスク管理」を参照)。サステナビリティ会議はリスクマネジメント会議とリスクの情報を共有・連携をとりながら、マテリアリティ選定に向けたリスクの特定を行っています。
なお社会への影響やリスク・機会の特定を含むマテリアリティの見直しは年1回、また各マテリアリティ目標に向けた活動計画の進捗状況の確認は年2回実施しています。
<事業戦略・意思決定プロセスへの統合>
当社は、社会課題の解決を経営の目的のひとつとして位置づけ、現在、マテリアリティごとの目標・指標や活動計画等を検討しています。特に、環境・安心の重要戦略等については、「財務目標」だけでなく、社会への価値提供を可視化するよう「社会インパクト目標」の両観点から目標を設定しています。
<サステナビリティ関連指標と報酬の連動>
当社は、サステナビリティ経営への意欲向上を目的に、2022年度より取締役(非業務執行取締役及び社外取締役を除く)の業績連動報酬額の決定にサステナビリティ関連指標の達成度評価を導入しています。サステナビリティ関連指標の評価ウェイトは20%、指標の種類は「CO2総排出量」「環境・安心製品の普及」「従業員エンゲージメント」「海外拠点長における非日本人比率」「女性マネジメント比率」です。これらの指標の当該事業年度の目標に対して、達成状況を総合的に評価しています。
<情報発信・コミュニケーション>
当社はサステナビリティに関する情報(非財務情報)に関し、積極的に情報発信あるいはコミュニケーションを行っています。社外ステークホルダーに対しては、会社WEBサイトや統合報告書等の媒体、あるいは決算発表やダイアログデー等の対話の機会を通じて情報発信を行っています。
また社内に対しては、従業員の個人年度目標の設定において、自身が関わる社会課題とのつながりを見える化することで、当社のサステナビリティ経営の担い手としての意識を醸成しています。なお、職場におけるサステナビリティ浸透の牽引役として、当社では各部門1名、国内グループ会社は各社1名、海外グループ会社は各地域統括会社1名のサステナビリティリーダーを選任し、サステナビリティの浸透・定着・情報発信を図っています。
② リスク管理
当社では、多様化するリスクを最小化すべく、自社にとってのリスクを常に把握し、被害の最小化と事業継続の両面からリスクマネジメントを行っています。
具体的には、リスクマネジメント統括責任者「チーフ・リスク・オフィサー(CRO)」を議長とする「リスクマネジメント会議」を設置し、グループ全体のリスクマネジメント体制・仕組みの改善状況の確認、社内外の環境・動向を踏まえた重点活動の審議・方向付け等を推進しています。事業部、地域統括会社、国内外グループ会社においては、それぞれにリスクマネジメント責任者である「リスクオフィサー」「リスクマネージャー」を任命し、平時における経営被害の未然防止と有事における被害最小化に向けた対応力強化を推進しています。また、クライシス発生時(有事)に迅速かつ的確に対応できるよう「緊急事態初動対応マニュアル」を制定し、事態の重要レベル判断、報告基準、報告ルート、社内外対応の基本等を明確にしています。さらに、事態の大きさや緊急度によって専門の「対策組織」を編成し、責任機能部が対策リーダーとなり、被害の最小化に向けて機動的に対応できるようにしています。
2024年度は、取り巻く事業環境を踏まえて、当社の生命・環境・信用・財産・生産を毀損する可能性のあるリスクを抽出し、各リスク責任機能部にてその発生原因と発生後の被害拡大要因を洗い出し、それらを防ぐための未然防止策と初動・復旧対応策を明確にしました。その対策の実施状況を踏まえて、各リスク項目の残存リスクの大きさを影響度と発生頻度の観点から査定しました。その中で、特に残存リスクが大きく、リソースを投入し対策を推進するリスクを「重点リスク」に選定し、リスクマネジメントのさらなる強化に向けた2025年度の活動計画と目標を設定し、リスクマネジメント会議で決定しました。なお、重点リスクへの対策活動は、重点リスクそれぞれに会社目標として定量的な業績評価指標(KPI)を設定し、取締役会においてもその進捗状況を確認しています。さらに、これらのリスクマネジメントプロセスは、内部監査・外部機関による監査対象として、点検を実施しています。
また、当社は法令遵守及び倫理的な事業運営を最優先事項とし、コンプライアンスの意識向上に向けた活動にも注力しています。具体的には役員が率先してコンプライアンスを順守する姿勢と行動を示すとともに、各職場での定期的な教育とトレーニングを通じて社員に法令や規則順守の重要性の浸透を図っています。これらの取り組みを通じて、全従業員がコンプライアンスの重要性を認識し、法令遵守と倫理的行動を徹底する企業文化の醸成を目指しています。

(2) 気候変動
気候変動の危機が迫るなか、当社では、持続可能なモビリティ社会のあり方を模索し、2030年長期方針で掲げた「環境」の提供価値を最大化する目標に向けてサステナビリティ経営を加速させています。2019年に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」への賛同を表明し、気候変動が事業に与える影響とそれによるリスクと機会をシナリオに基づいて分析、事業戦略へ反映していくよう検討を進めています。
① ガバナンス
当社は、環境方針「エコビジョン2025」の実現に向けた短・中・長期の目標や、シナリオ分析結果を含む環境全般に関する課題と活動の進捗状況の共有、対応策を指示する等、デンソーグループ全体の環境活動推進に関し責任を負う会議体として、全社安全衛生環境委員会を設置しています。同委員会は取締役副社長が委員長を、安全衛生環境部が事務局を務め、年2回開催されます。事業に重要な影響を及ぼすと判断された案件(中期経営戦略、大型投資等)については経営審議会あるいは取締役会で審議しています。
特に「気候変動関連」については、デンソーグループのマテリアリティの1つとして設定しており、全社安全衛生環境委員会が審議・策定した目標・指標案や活動計画案はサステナビリティ会議及び経営審議会にて審議し、最終的に取締役会が承認し決定します。
また目標の達成状況のモニタリングは、全社安全衛生環境委員会のほか、サステナビリティ会議、経営審議会及び取締役会が行っています。
② 戦略
気候変動が事業に及ぼす影響の把握と気候関連の機会とリスクを具体化するために、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の外部シナリオをベンチマークとして参照しました。また、自動車産業のシナリオ分析を確認しつつ、自社の中長期戦略における事業環境認識と照合し、総合的にシナリオを想定の上、シナリオと自社中長期戦略との差異分析により気候関連の機会とリスクを抽出しました。
なお、上記シナリオの想定移行リスクはIEA「World Energy Outlook」の「SDS」「NZE」シナリオをそれぞれ推進的・野心的シナリオと定義し、範囲は2040年までのCO2排出量、炭素税、原油価格、再エネ率、新車電動車率を定量化し、自社戦略との差より機会とリスクを分析しました。また物理的リスクでは、IPCC第6次報告書の「SSP5-8.5」「SSP2-4.5」をそれぞれ鈍化、推進シナリオと定義し、気象災害、海面上昇、生態システム悪化、水食糧不足等を定性化し、自社戦略との差より機会とリスクを分析しました。
主なリスクと機会、重要項目への対応策は以下のとおりです。
主なリスク
主な機会
(注1)2025年6月11日時点における暫定値です。確定値は2025年9月末発行予定の「統合報告書2025」において記載予定です。
(注2)SOEC:Solid Oxide Electrolysis Cell(固体酸化物形水電解用セル)
(注3)SOFC:Solid Oxide Fuel Cell(固体酸化物形燃料電池)
<経営戦略への影響>
前述のとおり、2030年を想定した気候変動に対する機会とリスクの分析結果より、特にカーボンニュートラルの動きは当社の製品開発と生産に大きな影響を与えることが分かりました。
そのような状況を踏まえ、環境への目標を、野心的な「カーボンニュートラル」へと引き上げ、経営戦略に反映しました。
具体的には、会社の環境経営方針「エコビジョン2025」(2016年策定)に定めるCO2排出量削減計画に「カーボンニュートラル」の視点を追加し、モノづくり(生産)に関しては、「2025年度には電力のカーボンニュートラル(ガスはクレジット活用)・2035年度にはガスも含めたモノづくりにおける完全なカーボンニュートラル」を掲げ、当社が得意とする省エネルギー活動を継続するとともに、質がよく経済的にも最適な再生可能エネルギー由来電力の導入やクレジット活用等の取り組みを進めています。このような省エネルギーや再生可能エネルギー等CO2排出量削減に寄与する投資の加速に向けて、投資判断にインターナル・カーボンプライシング(ICP)を導入しています。
モビリティ製品については、電動化技術開発を推進することで可能な限りCO2排出量を削減し、さらには水素を使ってグリーンエネルギーをつくる技術等により、CO2をマイナスにすることで、社会全体のカーボンニュートラルを目指していきます。さらに環境への貢献と事業成長を両立させるために、収益性・成長性に加えCO2排出量/削減量も評価軸に据えて、事業ポートフォリオの入れ替えを定期的に議論し、推進しています。
このカーボンニュートラル戦略を着実に推進させる体制として、安全衛生環境部に専門部隊を発足させるとともに、工場の生産活動まで踏み込んだカーボンニュートラルな製造業を全社一丸となって実現するため、環境ニュートラルシステム開発部、水素事業推進部を設置しています。
一方、気候変動により増加する洪水等の物理的リスクに対しては、工場への被害やサプライチェーン分断による操業停止リスクの最小化に向け、工場(建物・構造物等)への災害対策の実施や部材発注先の複数化、F-IoTプラットフォームの導入等により、気象災害等による生産変動にも即座に対応できるグローバルな生産需給体制を構築していきます。
<財務計画への影響>
カーボンニュートラルを背景に、電動化技術開発の加速や水素燃料、バイオ燃料等の新燃料に対応した製品へのシフトが必要です。またモノづくりにおけるカーボンニュートラルに向けた、再生可能エネルギー由来電力の調達費用やCO2オフセットの証書、クレジットの購入も必要となります。したがって、財務計画には、電動化や新燃料対応等への研究開発費の増加や再生可能エネルギー等の導入関連費用を反映しています。
③ リスク管理
当社では、急速に変化する事業環境の中で、多様化するリスクを常に把握し、被害の最小化と事業継続の両面からリスク管理を行っています。気候変動関連のリスクについては、サステナビリティ会議が毎年1回、マテリアリティを見直し、全社安全衛生環境委員会が、サステナビリティ会議と連携してリスク・機会を含めた見直しを行い、重要項目の把握と対応を明確化しています。
なお、気候変動関連のリスク(物理的リスク)は、リスクマネジメント会議が特にリソーセスを投入して対策を推進する重点リスクの一つとして選定されており、全社リスク管理の観点からグループ全体でリスク対応を強化しています。
④ 指標及び目標
「エコビジョン2025」に基づく活動計画の進捗状況や社会からの要請・期待を踏まえ、2021年度より一層高い目標として「カーボンニュートラル」を掲げ、活動を開始しています。
目標については、2025年中期方針で明確化するとともに、優先取組課題(マテリアリティ)に関するサステナビリティ目標の一つとして会社経営目標に落とし込みました。前述の全社安全衛生環境委員会だけでなく、サステナビリティ会議で進捗状況をフォローアップし、経営審議会及び取締役会に報告しています。
なお、指標及び目標はデンソーグループ全体に効果的にアプローチするため、連結子会社(持分比率50%超)の排出量100%を対象とする、経営支配力アプローチに従って算定しています。

<Scope1・2 モノづくりにおける完全なカーボンニュートラルを達成>
製造工程のさらなる効率化によりエネルギー使用量を減らしてCO2排出量を減少させていくことや、太陽光等の再生可能エネルギーの利用、さらには、再生可能エネルギーを使って生成したグリーン水素の利活用によって、生産の過程で発生するCO2を削減し、モノづくりにおけるカーボンニュートラルを目指します。
これまでの実績及び従来の強みである省エネルギー活動を徹底的にやり切り、再生可能エネルギーの導入やクレジットの活用等により、2023年度にはCO2排出量を2020年度比–50%の目標を達成、2024年度も目標-75%を達成する見込みです。なお、確定値は2025年9月末発行予定の「統合報告書2025」において記載予定です。
<Scope3(上流) 当社とサプライヤーとの協働によりカーボンニュートラルを実現>
カーボンニュートラル実現を目指すため、サプライヤーとの対話を通じ、相互理解のもと、サプライヤーとともに活動を進めています。
具体的には、サプライチェーンの排出量を見える化した上で、サプライヤーと中期目標「CO2排出量を2030年度までに2020年度比25%( = 2.5%/年)削減」、長期目標「2050年度にカーボンニュートラル実現」を共有し、活動の推進をお願いしています。2021年10月には、当社の省エネルギーの進め方や事例をご覧いただけるショールームの常設、お客様・サプライヤーから行政機関・地方自治体等、現在までに延べ1,500名が来場しました。省エネルギー診断やエネルギー計測器の貸し出し等の支援により、サプライヤーの省エネルギーを促進しています。また、再生可能エネルギー導入支援や低CO2材(アルミ、樹脂材料等)の積極採用等の取り組みも行っていきます。
さらには、活動を通じて得たサプライヤーの困りごとや要望を取りまとめ、業界団体等へ提言することで、サプライチェーン全体の活動環境の整備を牽引していきます。
<Scope3(下流) クルマの電動化に貢献しCO2を可能な限り削減>
HEV・BEV・FCEV等の電動車の普及を支える製品・システムの開発を通して、クルマ使用時のCO2排出量削減に貢献します。また、自動車業界で培った電動化技術を空のモビリティにも応用し、CO2排出量削減への貢献に向けて取り組んでいきます。
<エネルギー利用におけるCO2排出量 再生可能エネルギーを有効活用する技術を開発・普及>
場所や時間の制約なく、エネルギーを高効率に利活用する技術を確立し、世の中に広く普及させることで、エネルギー循環社会の実現に貢献します。
例えば、クルマで培ってきた熱マネジメント技術と材料技術を応用して、水素から電気をつくるSOFCと、電気から水素をつくるSOECの実証実験を開始しました。今後様々な実証を通じて、グリーン水素エネルギーをムダなく使う「効率性」と、システムを安全に長期間使用できる「耐久性」を探求し、環境と経済合理性の両立を目指した開発に挑戦していきます。
環境パフォーマンスデータ/デンソーグループ(グローバル)
Scope1 排出量とその内訳 (千t-CO2)
(注)GHGプロトコル、IPCCガイドラインに基づいて算出
Scope2 排出量とその内訳
(1) マーケット基準に基づく排出量 (千t-CO2)
(2) ロケーション基準に基づく排出量 (千t-CO2)
Scope3 排出量内訳 (千t-CO2)
(注1)Scope2で計上
(注2)該当事業なし
CO2排出量算定方法
CO2排出量算定は見積法にて実施しています。算定時に使用した活動量及び排出係数は以下のとおりです。
排出係数
・Scope1:温室効果ガスインベントリのためのIPCCガイドライン/第2章:定置燃焼/表2.3、
IPCC第6次報告書(AR6)
・Scope2:環境省 温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度 算定方法・排出係数一覧
電気事業者別排出係数一覧、IEA Emissions Factors -2023 edition
・Scope3:「Scope3 排出係数一覧」を参照
活動量(Scope1・2)
Scope3 排出係数一覧
(3) 人的資本
① 人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する取組
ⅰ) 戦略
<資本強化の取組概要>
当社で働くすべての社員の幸せと、会社理念の実現を両立し、持続的な企業価値向上を図ることが当社の経営の根幹です。そのため、人と組織のビジョン&アクション「PROGRESS」のもと、目指す人財像として「情熱で自己新記録に挑むプロフェッショナル」、目指す組織像として「多彩なプロが出会い・共創する舞台」を掲げ、人事施策・制度の改革等を通じ、人的資本の価値を最大化することを経営の中心に据えた人的資本経営を推進しています。
<当社の人的資本経営に対する想い>
当社は、1949年の創業以来、“人”を最も重要な資本と位置付け、人を大切にする経営を進めてきました。1954年、技術と技能の両輪を強化すべく技能者養成所を開設したことを皮切りに、人財の育成に力を注ぎながら、まだこの世に存在しないモノを生み出す力、すなわち「実現力」を高め続けてきました。その結果、180を超える世界初の技術・製品を生み出してきました。そしていま、変化の激しい時代だからこそ、改めて創業の原点を大切にし、人と組織が生み出す実現力を一層高めることにより、企業価値をさらに向上させていく必要があります。
人的資本経営の実践にあたっては、人財戦略を事業・経営戦略と連動させることが肝要と考えています。それは、人的資本の価値を高める活動(インプット)が、どのような結果(アウトプット)を生み出し、最終的にどのような事業的・財務的価値、そして社会への新たな価値創出(アウトカム)につながるかを明確化することです。これが、創業以来継承してきた「モノづくりはヒトづくり」という考え方そのものであり、当社の人的資本経営だと考えています。
<当社における人的資本経営の考え方(価値創造パス)>
活動(インプット):社員のキャリア実現支援や学び・成長促進、風通し良く活力ある職場づくり等、人と組織のビジョン&アクション「PROGRESS」として推進する人事施策・制度の改革です。時代・環境に見合わなくなった福利厚生等を見直し、原資を有効に生み出しながら、人的資本の価値向上に効果的な活動への投資を強化していきます。
結果(アウトプット):人の観点では、当社で働いて良かった、夢がかなったと実感する社員がより多くなること、つまり、社員エンゲージメントの向上です。組織の観点では、事業・経営戦略実現に必要な人財の質・量がより充足し、人財ポートフォリオの変革が進むことです。具体的なKPIを設定し、課題の明確化と対応スピードの向上を図ります。
提供価値(アウトカム):人の観点では、人的資本を最大限に磨き上げ、社会・お客様に対し価値を創出することです。組織の観点では、成長事業と総仕上事業のポートフォリオ入れ替えを通じて、環境・安心の理念の実現と収益性を両立すること、つまり事業ポートフォリオ変革です。経営として、当社で働くすべての人と組織が、社会・お客様に喜んでいただける価値を持続的に提供できているか、すなわち「人と組織の実現力」が高まっているかを検証するため、「人的投資生産性」を設定し、トレンドを確認しています。

人と組織の実現力(人的投資生産性)は、社員エンゲージメントの向上と、事業・経営戦略実現に必要な人財の質・量の充足(人財ポートフォリオ変革)によって高まると考えています。エンゲージメントの向上により、個人として高い目標に挑戦する人財の集団となり、人財ポートフォリオ変革によって組織として成果を上げる力がさらに高まるからです。そのため、この2点を人的資本経営で目指す結果(アウトプット)としてコミットしています。世界中で働く約16万人の社員のエンゲージメント向上は重要な経営課題の一つであり、サステナビリティ経営KPIに位置付け、グループ各社で実態を把握し、課題を可視化して改善に向けたアクションを重ねています。
ⅱ) 指標及び目標
デンソーグループでは、全社員・全職場を対象としたエンゲージメント調査をグローバルに実施し、調査結果を科学的アプローチで分析することで、どの要素が人と組織の実現力につながるエンゲージメント向上に寄与するかを見極めています。例えば、北米では、事務・技術職場の社員よりも製造職場の社員のエンゲージメントが低いことや退職率が高いことを踏まえ、製造部門の社員のキャリアの選択肢や育成ステップを見える化し、研修体系の整備を進めています。また、日本においては、職種・世代等、多角的な切り口で課題を特定し、全員総活躍に資するアクションにつなげています。結果として、2024年度は、北米地域で前年度比+1%、日本地域で前年度比+2%となる等、全体的に緩やかな改善が見られました。
人財ポートフォリオ変革全社戦略として取り組んでいる事業ポートフォリオ変革では、人財の質・量を充足させるための人財獲得・育成・最適配置を通じ、人財ポートフォリオ変革を実践しています。人財の質の観点では、当社においては、全社40領域で求められる専門性を計535分類に定義し、約15,000人の事務・技術系社員は、自身の専門性をどこでどのように伸ばしたいのか、上司との面談を通じて目標の明確化を行うとともに5段階で申告します。その上で、ソフトウェア・システム・デジタル・半導体等の各領域に人財育成コミッティを設置し、専門性の向上につながる育成・配置策を実行しています。
人財の量(社員数)の観点では、特に注力している電動化・ソフトウェア領域へ、採用強化と社内公募を合わせ2025年度までに約4,000人という大規模人財シフトを進めています。中でもソフトウェア領域では、ソフトウェアリカレントプログラムを通じ、2024年度までの実績として約220人の技術者がハードからソフトウェア技術者への転身に挑戦しました。2030年に向け、メカ・エレクトロニクス・ソフトウェア人財の最適なポートフォリオを実現しつつ、特に、社会・車両視点で事業をまたいだ最適な機能設計ができ、当社の技術開発の要となるシステム人財の増強を計画的に実行していきます。
全社員のITデジタル活用力強化も経営課題として推進しており、社員の内発的な挑戦意欲を大切にしながら、実践を通した効果の高い人財育成を行っています。24年度の実績として、チームで学ぶDX基礎コースは約5,300人の社員が自らの希望で受講しました。また、機械学習勉強会(より高度なAIの利活用)には約1,500人の社員が自主参加しました。加えて、自身のITデジタルスキルを他部門の課題解決に活用するデジタル越境チャレンジ(社内副業)においては、38人が挑戦を開始しました。ITデジタルツールの高度活用人財も41%に到達する等、取り組みを強化しています。
高い専門性を持ち、イノベーションと価値を生み出せる人財が、多様な事業・領域で活躍していることが当社の競争力の源です。以上の活動を通じ、事業・経営戦略の実現に必要な人財の質・量の充足を図ります。
結果(アウトプット)の目標KPIと実績
エンゲージメント向上率(肯定回答率) 対前年度比
女性管理職比率
今後も当社らしい人的資本経営に向けて人的資本への戦略的な投資を強化し、社員とチームの挑戦をさらに後押しすることで、人と組織の実現力を高め、企業価値を向上させるという新たな経営のステージを目指します。これからも、当社らしさを大切に、現場で人が育ち、社会課題解決に向けた新しい価値を生み出す人的資本経営を推進していきます。
② 社内環境整備に関する取組
ⅰ) 戦略
a) 安全衛生
デンソーグループとしての事業基盤の確立のためには、安全衛生管理の向上は必要不可欠です。
当社が制定した「安全衛生環境基本理念」(1969年)に基づき、「安全で働きやすい職場づくりこそ、人間尊重と高生産性を両立させ得る最善策」という方針のもと、デンソーグループにおける安全衛生の継続的な向上に取り組んでいます。
b) 社員とともに進める健康づくり
心身の健康は、いきいきと働くための源であり、社員とその家族の幸せに不可欠なものです。当社では、社員の健康増進を経営課題の一つと位置づけ、「健康経営(注)」を推進しています。
2016年9月に「健康宣言」を発表するとともに、健康増進に向けた社員の意識向上と職場単位の活動促進を図るため、心身両面の健康施策の充実に取り組んでいます。
また、国内外のデンソーグループ各社で健康経営を推進するため、2019年2月に「デンソーグループ健康経営基本方針」を策定しました。この基本方針をグローバルに共有し、各国・各社の実情を踏まえた健康経営を実践することで、一人ひとりの健康意識(ヘルス・リテラシー)を向上させ、より働きやすい環境づくりにグループ全体で努めていきます。
(注)健康経営:NPO法人健康経営研究会の登録商標
ⅱ) 指標及び目標
a) 安全衛生
<デンソーグループ安全衛生管理状況>
労働安全衛生上の指標である、休業度数率(延べ労働時間100万時間当たりの死傷者数)において、デンソーグループは同業他社と比較し良好な状態を継続しています。
休業災害度数率 実績
(注)「厚生労働省 労働災害動向調査(事業所調査(事業所規模100人以上)及び総合工事業調査)の概況」の「輸送用機械器具製造業」より抜粋
<目標及び実績>
災害の原因となった危険源の種類のうち、社会的災害防止の要求が強い、機械作動部、重量物、薬液、高所、感電等による災害を1種災害と定義しました。「2020年度比で1種災害件数の半減」を2025年度中期目標として設定しています。
2024年度は部門トップによる安全コミュニケーション巡回、チョコ停リスク低減、高リスク設備の爆発火災防止点検等、全員参加の安全衛生活動を推進しました。結果、重大災害・爆発火災はグループ全体で0件を継続できましたが、1種災害件数目標は国内グループで未達となりました。今後苦戦拠点の支援を強化するとともに、全体の更なるレベルアップに向け「人の弱みを補う設備防護対策・改善の促進」を進めていきます。
1種災害件数(単位:件)
b) 社員とともに進める健康づくり
当社オリジナル指標「生活習慣スコア(注)」を2024年度にリニューアルし、国内グループ共通の健康経営指標として「健康スコア」を導入しました。「健康スコア」は、健康診断時の問診回答内容に基づき、一人ひとりの健康行動の実践状況を見える化した指標です。健康経営KPIを「健康スコア8個の評価項目の内、6個以上達成している社員割合」とし、国内グループ全体の目標値を35年度までに60%以上の社員が達成することと定めて、活動を実施しています。
各職場へは、健康推進リーダー経由で健康経営KPIの職場別集計値を通知し、効果的な健康アクションプランの立案を促進しています。また個人に対しては、健康診断の結果に基づき、各個人の強みや弱み、同年代の比較・今後取り組むべきアドバイスを記載した通知書を配布しています。さらに、各健康サポートセンターと製作所や食堂とも連携し、啓発支援を実施しています。
(注)生活習慣スコア:厚労省策定の方針である「健康日本21」で目標値が設定されている「健康行動」と「健康データ」に該当する、個々人の健診データより点数化した指標で、2017~2023年度に当社のみで運用し、全社平均値を会社経営目標としていました。
<健康スコア6個以上達成率の実績と目標値(国内デンソーグループ)>

健康スコア8項目
連結会社の事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しています。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資家の判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しています。連結会社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めていきます。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月11日)現在において連結会社が判断したものです。
(1) 事業環境に関するリスク
① 経済状況
連結会社の全世界における営業収入のうち、重要な部分を占める自動車関連製品の需要は、連結会社が製品を販売している国又は地域の経済状況の影響を受けます。従って、日本、北米、欧州、アジアを含む連結会社の主要市場における景気後退及びそれに伴う自動車需要の縮小は、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、連結会社の事業は、競合他社が製造を行う地域の経済状況から間接的に影響を受ける場合があります。例えば、競合他社が現地でより低廉な人件費の労働力を雇用した場合、連結会社と同種の製品をより低価格で提供できることになり、その結果、連結会社の売上が悪影響を受ける可能性があります。さらに、部品や原材料を製造する地域の現地通貨が下落した場合、連結会社のみならず他のメーカでも、製造原価が下がる可能性があります。このような傾向により、輸出競争や価格競争が熾烈化し、いずれも連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになります。
② 為替レートの変動
連結会社の事業には、全世界における製品の生産と販売が含まれています。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されています。換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。一般に、他の通貨に対する円高(特に連結会社の売上の重要部分を占める米ドル、ユーロ及び元に対する円高)は連結会社の事業に悪影響を及ぼし、円安は連結会社の事業に好影響をもたらします。
連結会社が日本で生産し、輸出する事業においては、他の通貨に対する円高は、連結会社製品のグローバルベースでの相対的な価格競争力を低下させ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。連結会社は、為替相場や金利の変動リスクを軽減するために、現地生産や通貨ヘッジ取引を行い、主要通貨間の為替レートの短期的な変動による悪影響を最小限に止める努力をしていますが、中長期的な為替レートの変動により、計画された調達、製造、流通及び販売活動を確実に実行できない場合があるため、為替レートの変動は連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 原材料や部品の供給による影響
連結会社は、製品の製造に使用する原材料や部品を複数のグループ外供給元から調達しています。これらのグループ外供給元とは、基本取引契約を締結し、安定的な取引を行っていますが、市況の変化、並びに通商課題による価格の高騰や品不足、さらには供給元の不慮の事故等により原材料や部品の不足が生じないという保証はありません。その場合、連結会社製品の製造原価の上昇、さらには生産停止を招く等、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業内容に関するリスク
① 新製品開発力
連結会社は、直近売上収益の9%台を目安として研究開発投資を行う等、積極的な研究開発活動を実施しており、継続して斬新で魅力ある新製品を開発できると考えていますが、新製品の開発と販売のプロセスは、その性質から複雑かつ不確実なものであり、以下をはじめとする様々なリスクが含まれます。
ⅰ) 新製品や新技術への投資に必要な資金と資源を、今後十分充当できる保証はありません。
ⅱ) 長期的な投資と大量の資源投入が、成功する新製品又は新技術の創造へつながる保証はありません。
ⅲ) 連結会社が顧客からの支持を獲得できる新製品又は新技術を正確に予想できるとは限らず、また、これらの製品の販売が成功する保証はありません。
ⅳ) 新たに開発した製品又は技術が、独自の知的財産権として保護される保証はありません。
ⅴ) 技術の急速な進歩と市場ニーズの変化により、連結会社製品が時代遅れになる可能性があります。
ⅵ) 現在開発中の新技術の製品化遅れにより、市場の需要について行けなくなる可能性があります。
上記のリスクをはじめとして、連結会社が業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新製品を開発できない場合には、将来の成長と収益性を低下させ、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 価格競争
自動車業界における価格競争は大変厳しいものとなっています。特に、自動車メーカからの価格引き下げ要請は、近年、強まってきています。
また、連結会社は、連結会社が属している各製品市場と地域市場において、競争の激化に直面すると予想されます。競合先には他自動車部品メーカがあり、その一部は連結会社よりも低コストで製品を提供しています。さらに、自動車のカーエレクトロニクス化の進展に伴い、民生用エレクトロニクス製品メーカ等、新しい競合先又は既存競合先間の提携が台頭し、市場での大きなシェアを急速に獲得する可能性があります。
連結会社は、技術的に進化した高品質で高付加価値の自動車関連製品を送り出す世界的なリーディングメーカであると考える一方で、将来においても有効に競争できるという保証はありません。価格面での圧力又は有効に競争できないことによる顧客離れは、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 製品の欠陥
連結会社は、世界中の工場で世界的に認められている品質管理基準に従って各種の製品を製造しています。しかし、全ての製品について欠陥が無く、将来にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入していますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。さらに、引き続き連結会社がこのような保険に許容できる条件で加入できるとは限りません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストの発生や連結会社の評価が低下することに伴う売上の減少を招き、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 顧客企業の業績への依存
連結会社の事業の大部分を占める自動車メーカ向け部品供給事業は、世界中の自動車メーカを対象としており、提供する製品は、自動車部品におけるサーマルシステム、パワトレインシステム、モビリティエレクトロニクス、エレクトリフィケーションシステム、先進デバイス等多岐にわたります。これらの分野における顧客企業への売上は、その顧客企業の業績や連結会社が管理できない要因により影響を受ける可能性があります。また、顧客企業の価格引き下げ要請は、連結会社の利益率を低下させる可能性があります。顧客企業の業績不振、予期しない契約の打ち切り、顧客企業の調達方針の変化、大口顧客の要求に応じるための値下げは、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
連結会社の売上の約半分を、トヨタグループ向けが占めています。これらの特定の顧客グループへの売上は、その顧客企業の業績により大きな影響を受ける可能性があります。
⑤ 企業買収・資本提携
連結会社は、既存提携関係の強化又は新規提携を行うことにより、事業の拡大、機能強化又は新技術の開発を目指しています。このため、他社との提携による新会社設立や既存企業への投資を行っており、さらに、今後も投資活動を行う可能性があります。
新規投資については、幅広い視点から十分に議論を重ねた上で実行に移していますが、投資先企業の価値が低下した場合や提携企業との間で戦略性や優先順位について不一致が生じた場合には、投資に見合った効果を享受できず、投資金額の回収が困難となり、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク
連結会社の生産及び販売活動において、北米や欧州、アジア等の海外市場の占める割合は、年々、高まる傾向にあります。これらの海外市場への事業進出には以下に掲げるようないくつかのリスクが内在しており、これらの事態が発生した場合には、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
ⅰ) 予期しない法律又は規制の変更
ⅱ) 不利な政治的又は経済的要因の発生
ⅲ) 人材の採用と確保の難しさ
ⅳ) 社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる事業活動への悪影響
ⅴ) 潜在的に不利な税影響
ⅵ) ストライキ、テロ、戦争、疾病、その他の要因による社会的又は経済的混乱
⑦ 環境問題の重要性の高まりに係るリスク
連結会社は、国内及び海外の環境法規制を遵守した上で、環境負荷の低減と高効率な移動の実現に取り組んでいます。具体的には、会社の環境方針「エコビジョン2025」に基づき、事業活動における環境負荷の削減、環境効率・資源生産性の追求及び環境規制に適合した製品開発に努めています。
しかし、世界的な人口の増加や経済発展・利便性の追求により、エネルギーや資源の消費スピードが加速していることから、地球温暖化や資源枯渇、環境汚染等のリスクへの懸念が高まっています。それに伴い環境に関する取り組みの重要性は益々高まり、今後も様々な環境規制が改正・強化され、即時の対応や将来に向けての取り組みを求められる可能性があります。その対応が不十分な場合には、製品の売上減少、生産量の限定又はレピュテーション低下等、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 気候変動によるリスク
国連気候変動枠組条約第21回締結国会議(COP21)において「パリ協定」が採択され、平均気温の上昇を抑えるため、温室効果ガスの削減に向けた取り組みが世界的に進められています。また直近では、主要各国政府が脱炭素を宣言、国家成長戦略の重大な政策の1つとして位置づけています。このような背景から、気候変動への対応は、経済成長を制約するものではなく、競争力の源泉になるものと考えています。
連結会社では、持続可能なモビリティ社会のあり方を模索し、長期ビジョンで掲げた、「環境」の提供価値を最大化する目標に向けて、2019年に賛同を表明した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」のフレームワークを参照し、気候変動が事業に与える影響とそれによる機会とリスクをシナリオに基づいて分析、事業戦略に反映していくように検討を進めました。
気候変動によるリスクについては、以下のとおり連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。脱炭素社会への移行リスクとして、気候変動に伴う燃費・排ガス規制や電動化の拡大に、現行製品が適切に対応できないことで、販売機会を喪失する可能性があります。また物理リスクとしてサイクロンや洪水等の異常気象の深刻化と頻度の上昇が考えられ、工場の操業停止やサプライチェーンの分断により売上が減少する可能性があります。
これらのリスクへ対処すべく、移行リスクについては、エレクトリフィケーションシステム事業、サーマルシステム事業、パワトレインシステム事業において新たな燃費規制や電動化需要に応えるための研究開発の加速と得意先への提案をしています。また物理リスクについては、建物、構造物への気象災害対策(洪水含む)の実施のほか、部材等の購入先を複数社化することによりサプライチェーンに対するリスクマネジメントの強化に取り組んでいます。詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 気候変動」をご参照ください。
⑨ 情報セキュリティリスク
連結会社は、様々なグループ内専用ネットワークや情報技術システムを利用しています。さらに、連結会社の車載製品は、高度運転支援や自動運転等の高度な情報技術システムに使われています。
連結会社は、社内ネットワークや生産ライン等にセキュリティ対策を講じるとともに、社員へのセキュリティに対する更なるリテラシー向上教育を実施する等、情報資産の保護、安定的な供給の実現を図っているほか、車載製品をサイバー攻撃から守る技術を開発し、確実に搭載すべくグループ独自の仕組みを構築、運用の定着に取り組んでいます。
しかしながら、サイバー攻撃等の不正行為は脅威を増しており、連結会社を標的とした事象も発生しています。想定を大幅に超えるサイバー攻撃等を受けた場合、重要な業務の中断、機密情報の漏洩、車載製品の機能への悪影響等が生じる可能性もあります。その結果、競争力の喪失やレピュテーション低下を招き、連結会社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) その他のリスク
① 災害等による影響
連結会社は、大規模な自然災害、事故、疫病等の発生時に製造ラインの中断等による事業へのマイナス影響を最小化するため、全ての設備における定期的な災害防止検査と設備点検、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)や有事行動マニュアルの策定等の減災対応に取り組んでいます。
しかし、連結会社の生産施設及び連結会社の顧客企業、仕入先企業で発生する災害等による中断等の影響を完全に防止又は軽減できる保証はありません。例えば、連結会社の事業所の多くは南海トラフ地震防災対策推進地域に所在しており、この地域で大規模な地震が発生した場合、生産・納入活動が停止する可能性があります。
② 法的手続
連結会社は、ビジネス活動において、継続的なコンプライアンスの実践に努めています。それにも関わらず、様々な訴訟及び規制当局による法的手続の当事者となる可能性があり、その場合には連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
③ 人権
連結会社は、従来「デンソーグループサステナビリティ方針」や「社員行動指針」において、人権を侵害する労働又はそれに準ずる行為の禁止を明文化し、グループで共有するとともに徹底を図っています。年々、グローバル社会でビジネスにおける人権尊重への取り組みの重要性が高まる中、人権に関する取り組みをより一層推進すべきと考え、人権に関する個別方針「デンソーグループ人権方針」に沿って対応を進めています。
しかしながら、差別やハラスメントによるコンプライアンス違反が発生した場合、社会的信頼が失墜し、連結会社の業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
連結会社に関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容です。
連結会社の連結財務諸表は、連結財務諸表規則第312条の規定によりIFRS会計基準に準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成に当たり必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。また、当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4) 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しています。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において連結会社が判断したものです。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、インフレが落ち着きつつある米国の堅調な拡大、中国の景気減速、欧州の停滞等、地域により成長レベルは異なりましたが、全体として底堅さを維持しました。一方、地政学的な緊張と景気後退への懸念継続に加え、世界各国での政策の転換により、不確実性が高まっています。
① 事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとの状況
当連結会計年度の業績について、売上収益は、アジア地域での車両販売不振や日本顧客の稼働停止に伴う車両減産があるものの、円安の進行や研究開発費の回収強化等により、7兆1,618億円(前年度比170億円増、0.2%増)となりました。営業利益は、操業度差損や部材費の高騰があるものの、円安の進行や合理化努力により、5,190億円(前年度比1,384億円増、36.4%増)、税引前利益は5,780億円(前年度比1,418億円増、32.5%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は4,191億円(前年度比1,063億円増、34.0%増)となりました。
当連結会計年度の資産については、その他の金融資産の減少等により、前連結会計年度末に比べ9,684億円減少し、8兆1,250億円となりました。
負債については、繰延税金負債の減少等により、前連結会計年度末に比べ4,108億円減少し、2兆9,361億円となりました。
資本については、有価証券の評価時価の下落等により、前連結会計年度末に比べ5,576億円減少し、5兆1,889億円となりました。
セグメント別の業績については、日本の売上収益は、日本顧客の稼働停止に伴う車両減産があるものの、円安の進行により、4兆2,164億円(前年度比501億円増、1.2%増)、営業利益は、操業度差損や部材費の高騰があるものの、前年度に計上した品質費用の引当影響や合理化努力により、2,205億円(前年度比1,354億円増、158.9%増)となりました。資産は、その他の金融資産や売却目的で保有する資産の減少等により、5兆1,214億円(前年度末比9,710億円減)となりました。
北米地域の売上収益は、電動化及び、安心・安全製品等の拡販による構成良化により、1兆8,632億円(前年度比961億円増、5.4%増)、営業利益は、操業度差損があるものの、合理化努力により、981億円(前年度比435億円増、79.8%増)となりました。資産は、棚卸資産やその他の金融資産の減少等により、9,837億円(前年度末比151億円減)となりました。
欧州地域の売上収益は、車両販売不振により、7,187億円(前年度比627億円減、8.0%減)、営業利益は、合理化努力があるものの、操業度差損や構造改革費用の発生により、87億円(前年度比223億円減、72.1%減)となりました。資産は、営業債権及びその他の債権や棚卸資産の減少等により、5,289億円(前年度末比121億円減)となりました。
アジア地域の売上収益は、車両販売不振により、1兆9,401億円(前年度比449億円減、2.3%減)、営業利益は、合理化努力があるものの、操業度差損により、1,695億円(前年度比150億円減、8.1%減)となりました。資産は、棚卸資産やその他の金融資産の減少等により、1兆7,445億円(前年度末比616億円減)となりました。
その他地域の売上収益は、1,190億円(前年度比39億円増、3.3%増)、営業利益は、223億円(前年度比25億円減、10.1%減)となりました。資産は、営業債権及びその他の債権や棚卸資産の増加等により、912億円(前年度末比22億円増)となりました。
② 生産、受注及び販売の状況
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しています。
連結会社はトヨタ自動車株式会社を始めとして、各納入先より四半期ごとに生産計画の提示を受け、連結会社の生産能力を勘案して生産計画を立てる等、すべて見込生産を行っています。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注1)セグメント間の取引については相殺消去しています。
(注2)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。
① キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況については、現金及び現金同等物(以下、「資金」)は、営業活動により7,587億円増加、投資活動により1,219億円増加、財務活動により6,774億円減少等の結果、当連結会計年度は前連結会計年度と比べ1,971億円増加し、9,865億円となりました。
営業活動により得られた資金は、前年度の9,618億円に対し、7,587億円となり、2,031億円減少しました。この減少は、前年度と比べ税引前利益が1,418億円増加した一方、売上債権の増減額が1,613億円減少したことに加え、引当金の増減額が1,948億円減少したこと等によるものです。
投資活動により使用した、又は得られた資金は、前年度の4,595億円減少に対し、1,219億円増加となり、5,814億円増加しました。この増加は、前年度と比べ資本性金融商品の売却による収入が4,101億円増加したこと等によるものです。
財務活動により使用した資金は、前年度の4,967億円に対し、6,774億円となり、1,808億円増加しました。この増加は、前年度と比べ借入金による調達額が831億円減少したことに加え、短期借入金の純増減額が828億円減少したこと等によるものです。
当連結会計年度における有形固定資産の取得額は、前連結会計年度の3,916億円から3.0%減少し、3,801億円となりました。この減少は、注力分野への投入強化と規律ある事業運営を両立しながら投資を推進したことによるものです。
② 資本の財源及び資金の流動性について
資本の財源及び資金の流動性について、連結会社の運転資金及び設備投資資金は、主として自己資金により充当し、必要に応じて借入又は社債の発行等による資金調達を実施することを基本方針としています。
当連結会計年度は、連結会社の運転資金及び設備投資資金について、自己資金及び、借入・社債発行による資金を充当しました。
連結会社の資本的支出は、生産拡大対応、次期型化、新製品切替及び新製品開発のための研究開発投資を重点的に推進する予定であり、その財源は、上記基本方針に従ったものとする予定です。
連結会社は、その健全な財務状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力等により、連結会社の成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えています。
該当事項はありません。
デンソーグループ2030年長期方針では、「環境」「安心」の提供価値を最大化することに加え、社会から「共感」していただける「新価値創造」を通じて、笑顔広がる社会づくりに貢献することを宣言しています。
(1)環境分野ではカーボンニュートラル実現を目指して、モビリティーの電動化に貢献する従来の車載製品だけでなく電動車の普及に貢献するインフラシステムやカーボンニュートラル実現に不可欠なサーキュラーエコノミー(CE)まで開発領域を拡げています。
インフラシステム領域では、電動車を保有する企業や商業施設、集合住宅にむけたEV充電制御システム「EVECOM(イブコム)」の販売を開始しました。EVECOMはEV充電器に接続するコントローラーやクラウドサーバー等から構成され、使用電力ピークを抑制する最適化制御やユーザー認証、電力計量等の機能を提供し、インフラ導入におけるコスト抑制、サービス提供のための環境サポートを行います。本システムを活用して、株式会社東急コミュニティーと、居住者へのEV充電サービスを含めたマンション管理に関するサービスを一元管理した体制を目指す実証を開始しています。
また、充電の手間を省き、無限に走行できる未来を目指し、走行中給電技術の研究開発も進めています。この技術は、EVが走行中に地面に埋め込まれた送電装置から自動的に給電されるもので、これにより、EVの普及が進み、環境負荷の軽減にも貢献します。現在、愛知県国際展示場の駐車場にも埋設し、社会実証を開始しています。
CE領域では、限られたクルマ資源を最大限活用するために、クルマのすべての構成部品を原材料に戻し次なるクルマの製造へと循環する「Car to Car」の事業化に挑戦しています。この取り組みの一環として、環境省の令和5年度自動車リサイクルにおける再生材利用拡大に向けた産官学連携推進事業として、自動車リサイクルにおける再生材利用拡大を目指し、解体事業者、材料メーカー、部品メーカー等と連携した自動車部品解体プロセス等の技術実証を開始しています。これまでの開発・実証により、精緻解体により使用済自動車から重量ベースで80%以上を単一素材化可能であること、自動精緻解体の導入によりバリューチェーン全体で使用済自動車1台あたり630kgのCO2の削減ポテンシャルがあることを確認しています。また、欧州でのCE施策の一つである欧州電池規則により、2027年2月以降に欧州域内で販売されるEV/産業用電池には「バッテリーパスポート」の導入が義務付けられます。デンソーは、既存の自動車部品ビジネスに加え、サブスクリプション型デジタルサービスという新収益源も見据え、バッテリーパスポート用アプリケーションの開発を進めています。これにより、欧州の自動車業界におけるデータ連携の取組みであるCatena-Xに準拠した安全なデータ交換が出来るEcoPass認定を日本企業として初めて取得しました。
(2)安心分野では交通事故ゼロを目指して、運転支援システムを支える基盤技術(材料や半導体)の開発を進めています。材料開発では、極めて高い導電性・熱伝導性を持つ、カーボンナノチューブを活用した透明ヒータや透明電極を開発しています。特に、自動車の窓ガラスや運転支援システムに関わるセンサー類において、透明性を損なうことなく均一かつ迅速な加熱を可能とすることから、エネルギー効率の高い除霜・曇り防止機能と、自動運転に関わるセンサーの検知精度の向上の実現に貢献します。この開発の一環として、フィンランドのCanatu社と、戦略的パートナーシップに関する覚書を締結しました。Canatu社とは過去に出資を行い、長年にわたり、革新的なカーボンナノチューブ材料・製造技術の共同開発を進めています。
また半導体開発では、将来のAI向け車載用半導体のIPコア (Intellectual Property Core)の開発にむけて、デンソーのプロセッサーと米国クアドリック社のChimera GPNPU (General Purpose Neural Processing Unit)を組合せた共同開発を開始しました。デンソーのプロセッサーIPは、ISOのASIL(Automotive Safety Integrity Level)Dに対応しており、安全性の確保が重要となる自動車に最適です。GPNPUは特有の設計構造により、複雑化するAIモデルが持つ多様な演算処理に対応可能なため、製品開発からリリース後まで長期間に渡るAI潮流の変化に柔軟に対応可能な車載SoC(System on a Chip)実現へ貢献します。またGPUよりも5倍以上の電力効率で、先端のAIモデルの処理下でも空冷を実現することで、環境に配慮した製品づくりで先端の安心安全技術を取り込むことが可能です。
(3)新価値創造領域では、水素エネルギー関連や基盤となるソフトウェアの開発強化、食農領域まで開発しています。
水素エネルギー関連では、国内最大の火力発電事業者であり、燃料水素・アンモニアサプライチェーン構築を推進するJERAと、SOEC(固体酸化物形水電解用セル、Solid Oxide Electrolysis Cell)と排熱活用を組合せた高効率水素生成技術の共同開発に関わる契約を締結しました。JERA火力発電所にて共同実証試験の実施を予定しています。水は高温になるほど少ない電力で電気分解される特性を有しており、SOECは600℃以上の水蒸気を電気分解することで、常温付近で作動させる類似の電解方法と比べて2~3割の消費電力の削減が可能です。
また、株式会社NTTデータとソフトウェア領域での包括提携を結びました。デンソーの車載ソフトウェア技術とNTTデータのクラウド等の技術の融合を進め、2030年までに両社で3,000人規模の開発体制を整備し、大規模・高度化する車載ソフトウェアの効率的な開発を目指します。
最後に、食農領域では、房取りミニトマトの全自動収穫ロボット「Artemy®(アーテミー)」の欧州地域での受注をセルトンと共同で開始しました。Artemy®はAIやロボットアーム等の技術を活用し、自動収穫、自動レーンチェンジ、収穫箱の自動交換と自動移載まで、収穫に関する一連の作業を昼夜問わず全て自動で行うことができ、施設園芸先進国でありながらも深刻な労働力不足に直面する欧州地域において人手不足の解消に貢献します。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は