第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループが属している電池やエレクトロニクス分野における価格競争や受注の急変動は大変厳しいものとなっております。

当社グループは、FDKグループ戦略Framework「10年の計」で掲げた「Smart Energy Partnerとして、先進技術を結集し、お客様に電気エネルギーを安心して、効率的に活用いただき、持続可能な社会の実現と発展に貢献する」というVisionのもと、人々の暮らしと社会を支える企業と個々のユーザーにクリーン且つ、安全な電気エネルギーを安定的に活用できるオファリングをお届けすることで、株主様、お客様をはじめとするステークホルダーの皆様の期待に応えることが、当社グループの目指す姿であると考えております。

当社グループは、2030年3月期のあるべき姿の実現に向けて、現在、2026年3月期を最終年度とする中期事業計画「R2」の達成に向けて取り組んでおり、伸びる市場・付加価値の高い市場への注力による「主力ビジネスの利益ある成長の加速」、次世代電池ビジネスおよびソリューションビジネスの本格稼働、次々世代電池・ソリューションビジネスの要素開発による「新規ビジネスの始動と開拓」のためのさまざまな施策を計画・実行してまいります。また、当社グループのステークホルダーであるお客様・パートナー様、従業員、株主様、社会すべてに応えるため、各自が能力を発揮できる仕組みの構築、ガバナンスを含む経営の質の向上による「認め合い・高め合う文化の醸成」に努めてまいります。当社グループは、「Smart Energy Partner」としてのミッションを果たしていくとともに、ニッケル水素電池とリチウム電池、電子事業の三事業の強化により、事業のレジリエンスを高め、経営の質をより一層高めることで、当社グループの持続的な発展と企業価値の向上に努めていくことが今後の課題であると認識しております。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方は、経営理念である「進化に挑戦 輝く未来と笑顔のために」のもと、ステークホルダーと協働し、すべての事業活動を通じて様々な社会問題を解決することで、持続可能な社会の実現に貢献していくことを基本方針としております。また、サステナビリティの実現にあたっては、当社グループが特定したマテリアリティに重点的に取り組み、サステナビリティに対して責任ある経営を実践しております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社グループは、当社グループの横断的なSDGsの実現や環境・社会・ガバナンス分野における中長期的な課題を議論・決定・評価するため、サステナブル推進委員会を設置しております。また、サステナブル推進委員会は、代表取締役社長を委員長、執行役員を委員として構成しており、当社グループのサステナビリティに関する取り組みや持続可能な社会とビジネスの在り方などについて定期的なレビューを行なうとともに重要事項については経営会議で決定し、取締役会へ報告する体制としております。

 

(2)リスク管理

当社グループは、事業遂行上に生じうる一定の損失の危険の顕在化を防止し、顕在化した損失の危険に適確に対応するとともに再発を防止するため、代表取締役社長を委員長、執行役員を委員として構成するリスク・コンプライアンス委員会を設置しております。当社グループでは定期的にリスク調査を実施し、当社グループに損失を与える可能性のあるリスクを評価、分析、検証するとともに経営会議へ報告し、未然防止策の策定等のリスクコントロールを行なっております。また、顕在化した重要なリスクに関しては取締役会へ定期的に報告する体制としております。

 

 

(3)戦略

①当社グループのサステナビリティに関する戦略

  当社グループの事業活動における重要性と社会の重要性の双方の視点から当社グループのマテリアリティを特定しております。当社グループは特定したマテリアリティに事業活動を通して注力することで、当社グループの持続的な成長および持続可能な社会へ貢献していくことを推進しております。

 


 

②人的資本経営に関する考え方

  当社グループは中期事業計画「R2」において当社グループにおける人的資本経営の考え方を表明しております。当社グループの描く人的資本経営の考え方は、経営戦略と人材戦略の密接な連動を図ることで、経営目標の達成に繋げることであります。人材戦略としては「人材価値の強化」、「働きがい改革」、「働く環境改革」の3つのカテゴリに注力し推進してまいります。また、それぞれのカテゴリに対する具体的な取り組みにつきましては、当社グループのサステナビリティ活動の重点課題として掲げるとともに、サステナブル推進委員会で定期的に進捗度のレビューを行ない、重要事項については経営会議で決定し、その結果を取締役会に定期的に報告する体制としております。

 


 

 

③人材の多様性の確保に関する方針

  当社グループの多様性の確保に向けた方針としましては、「企業と個人がともに成長できるよう、国籍、性別、性的指向、年齢、障がいの有無、宗教、価値観にかかわらず、多様な人材を受け入れ、活かす」多様性の受容を掲げております。ダイバーシティの観点から、「多様性の尊重」と「働きやすい職場環境整備」の取り組みを進め、ダイバーシティ全般の理解教育、LGBTへの理解教育、多機能トイレの設置、バリアフリー施策の実施などを進めております。 また、さまざまな個性・能力・知見を備えた個々の人材を大切にし、外国人・障がい者の積極採用を行ない、互いを認め合い、個々の価値観を尊重する文化の醸成についても推進しております。

 

④人材育成および社内環境整備に関する方針

  当社グループは、「地球と社会に貢献する人材の育成」を目標に掲げ、次世代ビジネスリーダー・プロフェッショナル人材育成(企業の成長戦略を具現化していく人材の育成)とグローバル人材の育成に注力しております。また、2020年度よりタレントマネジメントを導入し、2021年度より昇格前研修の充実を図り、中長期的なビジネスリーダー候補の育成を進めております。また、多様な従業員の更なる活躍に向けた環境整備にも力を入れており、社員の中長期的な意識、行動、能力の成長を促し、高い目標へのチャレンジを支援するための一般職の人事制度の改定、シニア社員の経験やスキルを最大限に発揮いただくためのシニア社員制度の改定などを実施することで社内環境整備を進めております。また、中期事業計画「R2」に掲げる「自律的に高みを目指す文化の醸成」に向けて、従業員が自律的に自己研鑽することを目的として、「道場」制度を推進しております。「道場」では従業員が自律的に自己研鑽するテーマを選定するとともに当該テーマを学びたい従業員を募集し、従業員自らが道場を運営する仕組みとしており、「道場」を通じて従業員が組織横断的なコミュニケーションの充実を図ることで、組織力の強化に繋げております。

  当社グループの教育体系については、大きく以下のテーマに分け、それぞれのテーマに沿った教育に取り組んでおります。

 ①階層別研修(底上げ教育)

     新入社員から幹部社員まで、各職責に求められる教育の充実を図っております。

  ②プロフェッショナル育成研修

各専門分野でのプロフェッショナルの育成を目的に、技術検定を始めとした各種検定の受験、専門セミナーの受講、先端技術、先端スキルの取り組みを図っております。

 ③ビジネスリーダー育成

次世代リーダー研修、グローバル人材の育成(語学留学)、組織活性化につながるマネジメント力の強化および人材育成への理解・働きかけを行なっております。

     ④多様な個の成長支援

キャリアデザイン研修・キャリア支援等を通じて個々の人材サポート・モチベーションの向上を図っております。

       ⑤道場の充実

多分野において自己研鑽し、知識・能力・心技体を磨く活動の充実を図るとともに他部署、世代間のコミュニケーションを充実させ、組織の活性化を図っております。

 

(4)指標及び目標 (2023年度実績)

項目

指標

目標

実績

タレントマネジメント制度の運用

タレントマネジメントの継続的実施

毎年1の実施

役員および部長職を対象に2023年5月に実施

障がい者採用

障がい者雇用の法定雇用率の充足

法定雇用率2.2の充足と
継続採用

2023年度新規採用:3名

2023年度法定雇用率:2.37%

拠点のユニバーサル

デザイン化の拡張

全ての従業員等が使用しやすいファシリティの構築

各拠点の計画的なユニバーサルデザイン化の実施

当社湖西工場に多機能トイレ設置

ダイバーシティー教育

ダイバーシティの理解と浸透

年間教育計画にもとづく開催

新入社員研修内で実施

 (23名参加)

各階層別研修内で実施

 (133名参加)
マネジメント研修内の実施(466名参加)
国際女性デーにおける講演会の実施(102名参加)

LGBTの理解と浸透

年間教育計画にもとづく開催

新入社員研修内で実施

 (23名参加)
各階層別研修内で実施

  (133名参加)

階層別研修

資格等級別の必要スキルの習得と役割の理解

年間教育計画にもとづく開催

一般社員向け階層別研修の実施(106名参加)
幹部社員向け階層別研修の実施(27名参加)

ビジネスリーダー研修

次世代のビジネスリーダーの育成

年間教育計画にもとづく開催

畑村塾(15名参加)
次世代リーダー研修
  <ベーシック>(16名参加)
次世代リーダー研修
 <アドバンス>(11名参加) 
次世代マネジメント人材育成研修(9名参加)
次世代リーダー研修

プロフェッショナル研修

当社グループの成長戦略を具現化する人材育成

年間教育計画にもとづく開催

価値創造力養成研修の開催(9名参加)
顧客価値実践推進者コースの開催(6名参加)

キャリアデザイン研修

キャリアデザインの強化

年間教育計画にもとづく開催

2023年度で5開催

(158名参加)

組織活性化研修

組織マネジメント力の強化

年間教育計画にもとづく開催

2023年度で3開催

(60名参加)

語学留学制度(米国)

グローバル人材の育成

年間2の留学

2023年度で1名の留学実施

道場

学び合う文化の醸成

2024年3月末時点:道場数23(171名参加)

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業展開上のリスクについて、投資家の判断に影響をおよぼす可能性が考えられる主な事項については、以下の内容が挙げられます。当社グループは、これらのリスクを適切に把握し、対応することを経営における重要な課題と位置付け、リスクマネジメントおよびコンプライアンスにかかる最高決定機関として、リスク・コンプライアンス委員会を設置しております。リスク・コンプライアンス委員会を中心として、これらのリスクの発生の可能性を認識・評価したうえで、リスクの回避・軽減を判断し、発生した場合には影響の極小化のための対応に努める所存であります。

なお、以下の内容は、当社グループのすべてのリスクを網羅するものではありません。また、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月26日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 市場環境

当社グループの電池事業および電子事業は、当社グループが製品を販売している国または地域の経済状況の影響を受けます。また、同様に電池市場や電子製品市場の需要変動の影響を受けます。従いまして、北米、欧州、アジアを含む当社グループの主要市場における景気後退や製品市場の縮小は、当社グループの業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。

 

(2) 為替レート

当社グループは、海外での事業拡大を進めております。そのため米国ドルに代表される為替の急激な変動は、海外ビジネスの売上および損益に影響し、海外に提供する製品の価格競争力の低下などを招くおそれがあります。また、当社グループは、各地域における資産、負債、収益および費用を含む現地通貨建ての項目を連結財務諸表の作成のために円換算しております。換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。一般に、他の通貨に対する円高は当社グループの事業に悪影響をおよぼし、円安は当社グループの事業に好影響をもたらします。当社グループが生産を行なう地域の通貨価値の上昇は、それらの地域における製造と調達のコストを押し上げる可能性があります。コストの増加は、当社グループの利益率と価格競争力を低下させ、業績に悪影響をおよぼす可能性があります。

 

(3) 金利の動向

当社グループの当連結会計年度末における連結有利子負債残高は145億55百万円となっており、金利変動の影響を受けるものが含まれています。このため、金利変動により当社グループの業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。

 

(4) 新製品開発力

当社グループは、スピードをあげて新製品・新技術の開発に取り組んでおりますが、エレクトロニクス分野では技術の進歩が大変早く、新製品や新技術は急速に陳腐化します。そのため、当社グループが市場と業界の変化を十分に予測できず、魅力ある新製品を開発できない場合や当社グループの製品の価値を著しく低下させるような、画期的な新技術などが他社によって開発された場合には、将来の成長と収益性を低下させ、業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。

 

(5) 価格競争

エレクトロニクス分野における価格競争は大変厳しいものとなっております。そのため、当社グループが属している各製品市場において、競争の激化に直面する可能性があります。また、当社グループは、高品質で高付加価値のキーデバイスを開発するとともに、コストダウンに取り組んでおりますが、価格下落が当社グループの想定を上回るリスクや調達価格の変動などにより当社グループが十分なコストダウンを実現できない場合、将来においても有効に競争できるという保証はありません。価格面での圧力または有効に競争できないことによる顧客離れは、当社グループの業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。

 

 

(6) 新規参入者を含めた競争

エレクトロニクス分野では、既存の競合他社に加え、新規参入者との競争も激しくなっています。現在、当社グループが競争優位性を持っている分野でも、新規参入者を含めた競合他社との競争に晒されており、当社グループが競争力を失い、将来の事業において優位性を確保できない可能性があります。

 

(7) グローバルでの事業展開

当社グループの生産活動の一部は、中国、台湾で行なわれております。そのため、予期しない法律または規制の変更、テロ、戦争、人材の流出、その他の要因による混乱、対応コストの増加などがおきる可能性があります。従いまして、これらの事象は業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。

 

(8) サプライヤー

当社グループは、原材料の調達につきましては、基本的には複数のサプライヤーと契約を結び安定的な調達を心がけておりますが、材料高騰、供給不足、災害、品質管理の問題が同時に発生した場合など、当社グループの業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。

 

(9) 顧客への依存

当社グループの電池事業は、電池が使用される機器の拡大・縮小や使用量、長期的な天候状況による消費者の購買動向に影響を受けます。また、電子事業はエレクトロニクス関連のセットメーカーなどを対象としております。これらの企業への売上は、その顧客企業の業績、顧客企業の製品やサービスの売れ行きや当社グループが管理できない要因により大きな影響を受けます。

 

(10) 投資判断に関するリスク

エレクトロニクス分野においては、競争力維持のため、多額の研究開発投資および設備投資ならびに事業再編などが必要な場合があります。当社グループは、今後も必要な投資や事業再編などを実行してまいりますが、これらの実施の成否は、当社グループの業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。当社グループでは、投資や事業再編にあたって、市場動向、顧客のニーズや当社事業の優位性などを勘案して決定しておりますが、当社グループが有望と考えた市場や技術が、実際には想定ほど成長しなかったり、需要変動や価格下落が予想以上に早くおきる可能性があります。

 

(11) 知的財産保護

当社グループは他社製品と差別化を図れる技術とノウハウを蓄積してまいりましたが、当社グループ独自の技術とノウハウの一部は、特定の地域では法的制限のため知的財産権による完全な保護が不可能または限定的にしか保護されない状況にあります。そのため、第三者が当社グループの知的財産を使って類似した製品を製造するのを効果的に防止できない可能性があります。また、当社グループでは他社の知的財産権を侵害することのないよう、社内規程の整備、調査の徹底などを行なっておりますが、当社グループの将来の製品または技術について、将来的に他社の知的財産権を侵害しているとされる可能性があります。

 

(12) 製品の欠陥

当社グループの工場は、品質保証に関する国際規格「ISO9001」を取得するとともに、当社の厳しい品質管理基準に従って各種製品を製造しております。しかし、すべての製品について欠陥がなく、将来にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、それにより売上が低下し、当社グループの業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。

 

 

(13) 人材に関するリスク

当社グループの成長と利益は、人材に大きく依存します。従って、経営者、優秀な技術者など、必要とする人材を採用および育成し、ならびに流出を防止することは当社グループにとって重要であり、このような人材を採用または育成することができない場合や優秀な人材の流出を防止できない場合、当社グループの成長や利益に悪影響をおよぼす可能性があります。また、従業員との間で解雇または退職に関する合意が円滑になされない場合、法令にもとづく適切な労務管理ができないことなどにより従業員に重大な労働災害が発生した場合など、これらの労務問題による社会的な企業評価の毀損や紛争につながる可能性があります。

 

(14) 環境に関するリスク

当社グループでは、環境保全への取り組みを経営の重点課題に位置付け、環境負荷の低減、環境汚染の発生防止などに努めておりますが、事業活動を通じて環境汚染などが発生しないという保証はありません。また、当社グループ工場跡地において、土壌および地下水の調査ならびに浄化活動を行なっておりますが、今後新たな汚染が発生しないとも限りません。このような環境汚染が発生または判明した場合、当社グループの社会的な信用低下または浄化処理などの対策費用発生などにより損益に悪影響をおよぼす可能性があります。

 

(15) 情報セキュリティに関するリスク

お客様、お取引先様、当社グループの秘密情報または個人情報(マイナンバーを含みます。)の保護については、社内規程の制定、従業員への教育、情報インフラの整備、業務委託先も含めた指導等の対策を実施しておりますが、情報漏洩を完全に防げる保証はありません。万が一、情報漏洩が起きた場合、当社グループの信用は低下し、お客様の情報を漏洩した場合には法的責任が発生するおそれがあります。また、当社グループの重要な事業活動基盤の一つである社内ネットワークにつきましては、安定した運用を行なうための体制を構築しておりますが、コンピュータウイルスの侵入またはサイバー攻撃などの不正アクセスによる運用困難および情報漏洩などを完全に防げる保証はありません。

 

(16) 当社グループの施設に関するリスク

当社グループでは、国内外に工場、営業所など様々な施設を所有または賃借しております。いずれの施設についても、各国の建築基準その他の規制を遵守し、また、独自の安全基準を設けるなどの対策を行なっております。しかしながら、地震、大規模な水害、火災、放射能汚染などの災害またはテロ、デモ、ストライキ、施工品質の不足、運用ミスなどが発生した場合、生産ラインの停止など、施設の運用が停止することにより、当社グループの事業に悪影響をおよぼす可能性があります。

 

(17) 訴訟に関するリスク

当社グループは、事業を遂行するうえで、訴訟等を提起されることがあり、その結果、予期せぬ多額の損害賠償を命じられる可能性があります。その額によっては、当社グループの業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。

 

(18) コンプライアンスに関するリスク

当社グループは、当社グループで働くすべての人が積極的に実践すべき内容を示した「FDK企業行動指針」を定めるとともに、富士通グループ共通の理念である「Fujitsu Way」を遵守することにより、社内ルールの浸透と徹底、指針遵守の企業風土の醸成と、そのための社内体制や仕組みの構築を推進しています。しかしながら、このような施策を講じても、コンプライアンス上のリスクを完全に排除することはできない可能性があり、国内外の関連法令、規制などに抵触する事態が発生した場合には、当社グループの社会的な信用が低下し、あるいは多額の課徴金や損害賠償が請求されるなど、当社グループの事業に悪影響をおよぼす可能性があります。

 

 

(19) 災害や停電等による影響

当社グループは製造ラインの中断による潜在的なマイナス影響を最小化するために、すべての設備における定期的な災害防止検査と設備点検を行なっております。しかし、生産拠点で発生する災害、停電またはその他の中断事象による影響を完全に防止または軽減できる保証はありません。

 

(20) 地震やその他の自然災害、事故等によるリスク

当社グループでは、防災訓練の実施をはじめ、防災に関する連携体制の構築を進めております。また、地震やその他の自然災害が発生しても、重要な事業を継続し、企業としての社会的責任を遂行するとともに、お客様が必要とする高性能・高品質の製品を安定的に供給するために、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を策定し、その継続的な見直し、改善を実施する事業継続マネジメント(BCM)を推進しております。

しかしながら、近年、世界的な気候変動により、台風、水害、大雪などの自然災害の発生頻度や影響度は高まっております。また、首都直下、東海地方、南海トラフなどにおける巨大地震やテロ、事故による電力供給停止、感染症のパンデミック、火山噴火など不測の事態は、十分に影響度を検討して策定した事業継続計画においても、被害想定を超えた規模で発生する可能性がありうると考えられます。当社グループは、防災対策や事業継続マネジメントを今後も継続して推進してまいりますが、このような事態が発生した場合、事業所の機能停止、設備の損壊、電力・水・ガスなどの供給停止、公共交通機関や通信手段の停止、サプライチェーンへの被害などにより、お客様への製品出荷の停止など、当社グループの事業活動の継続に影響をおよぼす可能性があります。

また、新型コロナウイルス(COVID-19)については、2023年5月には感染症法上の分類が5類に変更されるとともに、現状においては収束している状態にありますが、今後、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染再拡大により、当社グループ、委託先またはお客様先の感染者の発生、部材メーカーからの部品供給の不足・遅れ、国内外の政府当局の今後の施策によっては、製品・サービスの持続的な提供に影響を与える可能性があります。また、今後、経済活動の低迷を起点とした市況変化によっては、当社グループのビジネス領域における市場動向に変化をもたらし、当社グループの事業に影響をおよぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態、経営成績等の状況

当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境につきましては、新型コロナウイルス(COVID-19)が5月に感染症法上の分類において5類に移行され、経済活動の正常化で設備投資の持ち直しの動き、生産の持ち直しの兆し、材料調達や原材料価格の一部で改善が見られたものの、原材料価格が依然高い水準であることに加え、ウクライナ情勢の長期化、物価の上昇、円安、世界的な金融引き締め、中国経済の先行き懸念や中東地域の情勢など景気の先行きが不透明な状況で推移しました

このような状況のなか、当社グループは当連結会計年度が初年度となる中期事業計画「R2」の目標の達成に向けて、柱に掲げた「主力ビジネスの利益ある成長の加速」、「新規ビジネスの始動と開拓に向けた取り組み」を推し進めており、技術VEによるコスト削減、徹底的な経費削減など原材料価格の高騰に対するレジリエンスの強化と新規ビジネスの獲得、深耕開拓に取り組みました。電子事業では「Bluetooth® Low Energyモジュール」を製品化、電池事業ではニッケル水素電池で車載アクセサリ市場向けおよび電源バックアップ市場向けの開発、累計生産50億個の達成、ふるさと納税返礼品への追加登録や音響機材の電源として使用するコンサートへの継続協賛、アルカリ乾電池でミニ四駆ジャパンカップへの継続協賛など販売促進に努めました。また、ニッケル水素電池の主要原材料である水素吸蔵合金の安定確保や今後の水素社会に対応し、水素貯蔵分野で世界に誇れるグループに成長させるため、電池材料、希土合金の生産を行なう包頭三徳電池材料有限公司(BAOTOU SANTOKU BATTERY MATERIALS CO., LTD.)を取得し、包頭富士電気化学有限公司(BAOTOU FDK CO., LTD.)に商号変更のうえ、連結子会社化しました。新規ビジネスではニッケル亜鉛電池でサンプル出荷拡大など実用化に向けた取り組みに努めました

当連結会計年度の経営成績につきましては、電池事業の売上高はリチウム電池が国内外のセキュリティ・スマートメータ用途向けで増加やニッケル水素電池が海外の市販・車載用途向けで増加、さらに設備関連ビジネスが増加したことから、事業全体として増収となりました。電子事業の売上高はスイッチング電源が増加しましたが、モビリティ・タブレット用途向け各種モジュールが減少したことや前連結会計年度に実施したコイルデバイスの事業譲渡などによる売上減により、事業全体として減収となりました。この結果、売上高は前連結会計年度に比べ1億7百万円(△0.2%)減の626億76百万円となりました

損益面につきましては、電池事業は原材料価格高騰による利益減があったものの、販売価格の見直しや円安効果も加わり黒字化しました。電子事業は経費削減による利益増があったものの、売上減による影響が大きく減益となりました。この結果、営業利益は前連結会計年度に比べ2億20百万円減少の5億68百万円となりました。経常利益は前連結会計年度に比べ1億31百万円減少の7億20百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益はBAOTOU SANTOKU BATTERY MATERIALS CO., LTD.の出資持分取得に伴なう負ののれん発生益として5億17百万円の特別利益を計上したものの、SMD対応小型全固体電池とアルカリ乾電池に関わる固定資産の減損損失7億18百万円の計上により、前連結会計年度に比べ1億97百万円減少の1億20百万円となりました

(注)1.Bluetooth®ワードマークは、Bluetooth SIG, Inc.が所有する商標です。

2.ミニ四駆は株式会社タミヤの登録商標です。

 

セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

 

電池事業

電池事業はリチウム電池やニッケル水素電池、設備関連ビジネスなどすべてが増加したことにより、前連結会計年度を上回りました

製品別につきましては、リチウム電池は、国内外のセキュリティ・スマートメータ用途向けが堅調に推移したことや円安効果も加わったことにより、前連結会計年度を上回りました。ニッケル水素電池は、海外の市販・車載用途向けが増加したことや円安効果も加わったことにより、前連結会計年度を上回りました。設備関連ビジネスは、自動車関連設備が増加したことにより、前連結会計年度を上回りました。アルカリ乾電池は、前連結会計年度を上回りました

 

この結果、当事業全体の売上高は、前連結会計年度に比べ55億65百万円増加の477億29百万円、セグメント利益は2億62百万円(前連結会計年度は1億83百万円のセグメント損失)となりました

 

電子事業

電子事業はスイッチング電源が増加しましたが、各種モジュールが減少したことや前連結会計年度に実施したコイルデバイスの事業譲渡などにより、前連結会計年度を下回りました。

製品別につきましては、各種モジュールは、モビリティ・タブレット用途向けが減少したことにより、前連結会計年度を下回りました。スイッチング電源は、半導体装置用途向けが堅調に推移したことにより、前連結会計年度を上回りました。

この結果、当事業全体の売上高は、前連結会計年度に比べ56億73百万円減少の149億47百万円、セグメント利益は3億6百万円(前連結会計年度は9億72百万円のセグメント利益)となりました

 

当連結会計年度の総資産は、前連結会計年度に比べ44億26百万円(9.4%)増(うち、BAOTOU FDK CO., LTD.連結子会社化による増19億16百万円)の515億56百万円となりました。流動資産は前連結会計年度に比べ47億70百万円(15.0%)増の365億93百万円、固定資産は前連結会計年度に比べ3億44百万円(△2.3%)減の149億62百万円となりました。流動資産増加の主な要因は、未収入金などのその他流動資産が減少した一方、電子記録債権の増加や受取手形及び売掛金の増加、仕掛品や原材料及び貯蔵品などの棚卸資産が増加(うち、BAOTOU FDK CO., LTD.連結子会社化による増6億18百万円)したことによるものです。固定資産減少の主な要因は、SMD対応小型全固体電池などにかかわる固定資産の減損により、有形固定資産が3億19百万円減少したことによるものです

当連結会計年度の負債合計は、前連結会計年度に比べ19億77百万円(5.8%)増(うち、BAOTOU FDK CO., LTD.)連結子会社化による増13億5百万円)の359億11百万円となりました。流動負債は前連結会計年度に比べ32億91百万円(10.6%)増の342億19百万円、固定負債は前連結会計年度に比べ13億13百万円(△43.7%)減の16億91百万円となりました。流動負債増加の主な要因は、短期借入金の増加(うち、BAOTOU FDK CO., LTD.連結子会社化による増12億40百万円)や支払手形及び買掛金が増加したことによるものです。固定負債減少の主な要因は、退職給付債務に係る負債が12億68百万円減少したことによるものです

なお、有利子負債残高は、主に借入金の増加により前連結会計年度に比べ23億32百万円増の145億55百万円となりました

当連結会計年度の純資産合計は、前連結会計年度に比べ24億48百万円(18.6%)増の156億45百万円となりました。純資産増加の主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が1億20百万円、退職給付に係る調整累計額が12億75百万円、為替換算調整勘定が9億33百万円それぞれ増加したことによるものです

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の増加や棚卸資産の増加および未払費用の減少や仕入債務の減少などによる現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の減少はありましたが、税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上、未収入金の減少などにより、16億20百万円の資金増加(前連結会計年度は27億83百万円の資金増加)となりました

当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出、連結の範囲の変更を伴なう子会社出資金の取得による支出などにより25億33百万円の資金減少(前連結会計年度は29億78百万円の資金減少)となりました

当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、フリー・キャッシュ・フローのマイナス等を補填したことによる短期借入金の増加などにより18億13百万円の資金増加(前連結会計年度は1億16百万円の資金減少)となりました。

これらの結果、当連結会計年度における資金の期末残高は期首残高より11億44百万円増加し、37億15百万円と

なりました。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

電池事業

47,067

12.5

電子事業

15,189

△26.1

合計

62,256

△0.2

 

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

電池事業

49,772

18.7

11,212

22.4

電子事業

13,769

△23.8

3,707

△23.5

合計

63,541

5.9

14,919

6.5

 

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

電池事業

47,729

13.2

電子事業

14,947

△27.5

合計

62,676

△0.2

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

当社グループの連結売上高は、626億76百万円(前連結会計年度比0.2%減)となりました。電池事業のリチウム電池、ニッケル水素電池や設備関連ビジネスなどすべてと電子事業のスイッチング電源の売上増があったものの、電子事業の各種モジュールや前連結会計年度に実施した事業譲渡によってコイルデバイスの売上減により、前連結会計年度を下回りました。連結営業利益は、販売価格の見直しや経費削減に加えて円安効果による利益の増加がありましたが、電子事業の各種モジュールの売上減や電池事業での原材料高騰による利益の減少により、前連結会計年度に比べ2億20百万円減少の5億68百万円となりました。

当社グループは、中期事業計画「R2」において、営業利益率やROIC(投下資本利益率)を経営の指標としており、特に営業利益率を主指標としております。これは当社グループにおいては本業での収益性の向上が最も重要な課題であると認識しているためであります。

 

中期事業計画「R2」における経営指標

2024年3月期
実績

2025年3月期
予想

2026年3月期

目標

 売上高

626億円

630億円

680億円

 営業利益率

0.9%

1.6%

4.1%

 

 

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであることに加え、当社グループ事業の製品の売上は、電池事業においては電池が使用される機器の拡大・縮小や使用数の影響を受け、また、電子事業は主たる顧客であるエレクトロニクス関連のセットメーカーの製品やサービスの売れ行きに影響を受けるなど、当社グループが管理できない要因により大きな影響を受けます。

また、当社電池製品の主要材料であるニッケル、亜鉛、リチウムやレアアース類は需給バランスや投機的要因などにより原材料価格が大きく変動することや、光熱費の価格変動も営業利益に大きな影響を与えます。

さらに、当社グループの売上高の42.9%は海外ビジネスであるため、為替レートの変動により円換算による増減の影響を与えます。この為替変動のリスクに関しては、売上と調達のバランスを取ること、為替予約などにより対処を図っております。

主にこれらの要因が当社グループの経営成績、事業の収益性に影響するものと認識しております。そのため、当社は、毎月1回受注状況、受注見込み、年間予算との乖離などの最新の業績の状況を把握するとともに、必要な改善の立案、実施を行なっております。

 

当社グループの資本の財源および資金の流動性については、当社グループは、主に事業の継続性の確保と収益性向上を図るため、その生産設備類の維持・更新や能力増強、生産効率向上を主とした設備投資に加え、新電池の研究開発と量産体制構築に向けた設備投資を継続しており、その財源は営業活動から得られたキャッシュ・フローおよび外部より調達した資金を主としております。

 

セグメントごとの財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容は、次のとおりであります。

 

 

電池事業

当連結会計年度における電池事業の売上高はリチウム電池、ニッケル水素電池や設備関連ビジネスなどすべてが増加したことにより事業全体として増収となり、営業利益は原材料価格高騰の影響があったものの販売価格の見直しや円安効果も加わり黒字化しました。

売上高の確保・拡大のためには需要が伸張する地域、販路、市場、新規機器メーカーへの拡販が必要であるとの認識のもと、新製品開発、マーケティング、営業力の強化に努めております。市販用途向けニッケル水素電池、アルカリ乾電池はコモディティ化が進んでいるため、市販用途向けニッケル水素電池については品質、特性面での差別化、商品力の強化や環境・安全面での訴求をすすめ、利益率の向上を図っており、アルカリ乾電池については国内市販向けビジネスで新規顧客の開拓と既存顧客の深耕で売上拡大と事業規模に合った人員体制により、引き続き付加価値向上に取り組んでおります。

また、電池の主要材料価格の変動に関しては、適切な時期での予約などの施策に加え、材料使用量の低減、より安価な材料へのシフト、リサイクル材の活用などの技術VEとコストダウンを行ない、対応力の強化に努めております。

さらに、電池事業のニッケル水素電池の基盤強化を図る上では主要原材料である水素吸蔵合金の安定確保が必要不可欠であり、当連結会計年度においてBAOTOU FDK CO., LTD.を連結子会社化いたしました。

 

電子事業

当連結会計年度における電子事業の売上高は前連結会計年度から減少し、営業利益率は2.6ポイント減少の2.1%となりました。

電子事業については、さらなる事業価値の向上が必要であると認識しており、当連結会計年度においては製品モデル毎の選択と集中を継続する一方、差別化、技術力を生かした新規用途・顧客獲得での売上拡大による付加価値向上を図っております。

 

② 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営上の目標の達成状況は、1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等に記載した方針にもとづき、当社グループは「Smart Energy Partnerとして、先進技術を結集し、お客様に電気エネルギーを安心して効率的に活用いただき、持続可能な社会の実現と発展に貢献する」というFDKグループ戦略Framework「10年の計」のVisionとそのあるべき姿の実現に向けて当連結会計年度を初年度とする中期事業計画「R2」を策定しております。

 

   <中期事業計画「R2」期間累計目標>

指標

「R2」期間累計
 目標

 売上高

2,000億円

 営業利益

50億円

 ROIC

5%

 営業活動から得られるキャッシュ・フロー

130億円

 

   「R2」期間累計のキャピタル・アロケーション方針

      営業活動から得られるキャッシュ・フロー130億円

                財務基盤強化(20億円)

   新電池・DX等成長に向けた投資(20億円)

        既存ビジネスの強化(90億円)

 

 

   <中期事業計画「R2」の最終年度目標>

指標

2026年3月期
 目標

売上高

680億円

営業利益率

4.1%

 

 

「R2」の初年度となる当連結会計年度の経営上の目標として、売上高650億円、営業利益5億円、経常利益4億円、親会社株主に帰属する当期純利益1億円を目指してまいりました。

その結果、当連結会計年度における売上高は626億76百万円、営業利益は5億68百万円、経常利益は7億20百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1億20百万円となり、売上高を除いて目標値を上回りました。

その主な要因としましては、売上高は電池事業のニッケル水素電池と電子事業の各種モジュールが期初の見込みを下回ったことにより、目標値を下回りました。営業利益は売上減の影響はあったものの、経費削減や販売価格の見直しなどに加え円安効果も加わったことにより、目標値を上回りました。経常利益は受取利息や為替差益などの営業外損益の好転が加わったことにより、目標値を上回りました。親会社株主に帰属する当期純利益はSMD対応小型全固体電池とアルカリ乾電池にかかわる固定資産の減損損失を計上したものの、BAOTOU FDK CO., LTD.の出資持分取得に伴なう負ののれん発生益を計上したことにより、目標値を上回りました。

 

   <2024年3月期の目標と結果>

指標

2024年3月期
 目標

2024年3月期
 実績

目標比

売上高

65,000百万円 

62,676百万円

△2,324百万円

営業利益

500百万円

568百万円

68百万円

経常利益

400百万円

720百万円

320百万円

親会社株主に帰属する当期純利益

100百万円

120百万円

20百万円

 

 

中期事業計画「R2」の2年目となる2025年3月期の経営成績の見通しは、売上高630億円、営業利益10億円、経常利益8億円、親会社株主に帰属する当期純利益2億円を予想しており、「R2」計画を下回る進捗となっておりますが、「主力ビジネスの利益ある成長の加速」についてはニッケル水素電池、リチウム電池と電子事業で伸びる市場・付加価値の高い市場に注力し、「新規ビジネスの始動と開拓」についてはSMD対応小型全固体電池、ニッケル亜鉛電池やパワーマネジメントソリューションの要素開発を継続、「認め合い・高め合う文化の醸成」については能力を発揮できる仕組みの構築や経営の質向上のためのさまざまな施策に取り組み、最終年度である2026年3月期の目標値の達成を目指してまいります。

 

③ 重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準にもとづき作成されております。

なお、個々の「重要な会計方針及び見積り」については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表、注記事項、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表、注記事項、重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、エネルギーの安全かつ効率的な利用を目指し、エネルギー・環境分野における各種電池(ニッケル水素、リチウム、アルカリ、次世代電池)、パワーマネジメントソリューションおよび蓄電システムに関する研究開発を行なっております。

研究開発につきましては、新事業開発本部の基盤技術統括部、パワーソリューション事業推進室が当社の研究開発活動を統括し、将来の市場環境と技術動向を見据えた新製品・新技術の開発を推し進めております。

また、産学および富士通グループの研究機関等との連携により先端技術の導入を効率的に推し進め、技術開発スピードの加速化を図っております。

当社グループの当連結会計年度における研究開発費は703百万円であります。その内訳は、電池事業で619百万円、電子事業で83百万円であります。

当連結会計年度における研究開発の主要目的および研究開発成果は次のとおりであります。

 

(1) 次世代技術開発(次世代電池開発、要素技術開発、環境対応)

次世代電池として以下の開発を進めております。

ニッケル亜鉛電池については、材料開発などの成果を学会で発表し、サイクル寿命改善をアピールするなど、電池性能向上を着実に進めてまいりました。今後は、動力用電源、バックアップ用電源で使用している鉛蓄電池からの切替えを目的にサンプル出荷先を拡大し、量産化へ向けた取り組みを強化してまいります。SMD対応小型全固体電池SoLiCell®については、より汎用性の高い製品仕様とするため、充電特性向上、容量アップ等に集中し、次世代に向けた新材料・プロセスの開発に取り組んでおります。さらに、充電回路を内蔵するモジュール開発も電子事業部と取り組んでおり、様々な市場ニーズに応える準備を進めております。

要素技術開発では、MI(マテリアルインフォマティクス)を用いて材料開発、分析評価、およびCAE技術による技術開発に取り組みました。

また、既存電池製品については、ニッケル水素電池では、車載アクセサリ市場向けに耐久性に優れた新規材料を採用した長寿命電池の開発や、大型蓄電池向けニッケル水素電池用極板の量産化を進めました。アルカリ電池では市場ニーズに合わせた放電性能の改良と、環境負荷を軽減したパッケージの導入検討を引き続き進めました。リチウム電池では、スマートシティの実現に向けた製品開発、高エネルギー密度化開発に挑戦してきました。今後は主力ビジネスの成長と新規ビジネスの獲得に繋がる開発を行なってまいります。

環境対応として電池事業ではリサイクル材の活用、電子事業では低温はんだ採用によるCO2排出量の削減(カーボンニュートラル)に継続して取り組んでおります。

 

(2) 次世代技術開発(パワーソリューション)

パワーソリューション事業推進室については、当社が有する電気エネルギーの供給・貯蔵・制御技術を応用した、全種類の蓄電デバイスを対象としたパワーマネージメント応用事業・製品の研究・開発を行なっています。

当連結会計年度においては、バッテリマネージメント機能を有した電池モジュール・電池パックの試作機を用い、その性能・機能のブラッシュアップ開発とパフォーマンスの向上を図ってきました。

また、それら開発資産を応用し動力用バッテリとして特定パートナーとの共同開発に着手しました。

今後は、動力用バッテリ試作機の完成とその応用シーンでの実証実験を行ない、e-MaaS実現ソリューション技術と合わせ、スマート化機能を搭載したパワーマネージメント応用事業・製品の研究・開発を継続してまいります。