当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループが属している電池やエレクトロニクス分野における価格競争や受注の急変動は大変厳しいものとなっております。
当社グループは、FDKグループ戦略Framework「10年の計」で掲げた「Smart Energy Partnerとして、先進技術を結集し、お客様に電気エネルギーを安心して、効率的に活用いただき、持続可能な社会の実現と発展に貢献する」というVisionのもと、人々の暮らしと社会を支える企業と個々のユーザーにクリーン且つ、安全な電気エネルギーを安定的に活用できるオファリングをお届けすることで、株主様、お客様をはじめとするステークホルダーの皆様の期待に応えることが、当社グループの目指す姿であると考えております。
当社グループは、2030年3月期のあるべき姿の実現に向けて、現在、2026年3月期を最終年度とする中期事業計画「R2」の達成に向けて取り組んでおり、伸びる市場・付加価値の高い市場への注力による「主力ビジネスの利益ある成長の加速」、次世代電池ビジネスおよびソリューションビジネスの本格稼働、次々世代電池・ソリューションビジネスの要素開発による「新規ビジネスの始動と開拓」のためのさまざまな施策を計画・実行してまいります。また、当社グループのステークホルダーであるお客様・パートナー様、従業員、株主様、社会すべてに応えるため、各自が能力を発揮できる仕組みの構築、ガバナンスを含む経営の質の向上による「認め合い・高め合う文化の醸成」に努めてまいります。当社グループは、「Smart Energy Partner」としてのミッションを果たしていくとともに、ニッケル水素電池とリチウム電池、電子事業の三事業の強化により、事業のレジリエンスを高め、経営の質をより一層高めることで、当社グループの持続的な発展と企業価値の向上に努めていくことが今後の課題であると認識しております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方は、経営理念である「進化に挑戦 輝く未来と笑顔のために」のもと、ステークホルダーと協働し、すべての事業活動を通じて様々な社会問題を解決することで、持続可能な社会の実現に貢献していくことを基本方針としております。また、サステナビリティの実現にあたっては、当社グループが特定したマテリアリティに重点的に取り組み、サステナビリティに対して責任ある経営を実践しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、当社グループの横断的なSDGsの実現や環境・社会・ガバナンス分野における中長期的な課題を議論・決定・評価するため、サステナブル推進委員会を設置しております。また、サステナブル推進委員会は、代表取締役社長を委員長、執行役員を委員として構成しており、当社グループのサステナビリティに関する取り組みや持続可能な社会とビジネスの在り方などについて定期的なレビューを行なうとともに重要事項については経営会議で決定し、取締役会へ報告する体制としております。
当社グループは、事業遂行上に生じうる一定の損失の危険の顕在化を防止し、顕在化した損失の危険に適確に対応するとともに再発を防止することを目的に代表取締役社長を委員長、執行役員を委員として構成するリスク・コンプライアンス委員会を設置しております。また、当社グループでは定期的にリスク調査を実施し、当社グループに影響を与える可能性のあるリスクおよび機会の評価、分析、検証結果ならびに顕在化した重要なリスクに関しては経営会議および取締役会へ定期的に報告する体制としております。また、定期的に実施するリスク調査から抽出される潜在化リスクについては、未然防止策の策定等のリスクコントロールを行なっております。
①当社グループのサステナビリティに関する戦略
当社グループの事業活動における重要性と社会の重要性の双方の視点から当社グループのマテリアリティを特定しております。当社グループは特定したマテリアリティに事業活動を通して注力することで、当社グループの持続的な成長および持続可能な社会へ貢献していくことを推進しております。

②人的資本経営に関する考え方
当社グループは中期事業計画「R2」において当社グループにおける人的資本経営の考え方を表明しております。当社グループの描く人的資本経営の考え方は、経営戦略と人材戦略の密接な連動を図ることで、経営目標の達成に繋げることであります。人材戦略としては「人材価値の強化」、「働きがい改革」、「働く環境改革」の3つのカテゴリに注力し推進してまいります。また、それぞれのカテゴリに対する具体的な取り組みにつきましては、当社グループのサステナビリティ活動の重点課題として掲げるとともに、サステナブル推進委員会で定期的に進捗度のレビューを行ない、重要事項については経営会議で決定し、その結果を取締役会に定期的に報告する体制としております。

③人材の多様性の確保に関する方針
当社グループの多様性の確保に向けた方針としましては、「企業と個人がともに成長できるよう、国籍、性別、性的指向、年齢、障がいの有無、宗教、価値観にかかわらず、多様な人材を受け入れ、活かす」多様性の受容を掲げております。ダイバーシティの観点から、「多様性の尊重」と「働きやすい職場環境整備」の取り組みを進め、ダイバーシティ全般の理解教育、LGBTへの理解教育、多機能トイレの設置、バリアフリー施策の実施などを進めております。 また、さまざまな個性・能力・知見を備えた個々の人材を大切にし、外国人・障がい者の積極採用を行ない、互いを認め合い、個々の価値観を尊重する文化の醸成についても推進しております。
④人材育成および社内環境整備に関する方針
当社グループは、「地球と社会に貢献する人材の育成」を目標に掲げ、次世代ビジネスリーダー・プロフェッショナル人材育成(企業の成長戦略を具現化していく人材の育成)とグローバル人材の育成に注力しております。
当社グループは毎年、各部門でタレントマネジメントを実施し、タレントマネジメントの状況を経営層でモニタリングすることを実施しております。また、昇格前研修の充実を図ることで中長期的なビジネスリーダー候補の育成を進めております。
多様な従業員の更なる活躍に向けた環境整備にも力を入れており、社員の中長期的な意識、行動、能力の成長を促し、高い目標へのチャレンジを支援するための一般職の人事制度の改定、シニア社員の経験やスキルを最大限に発揮いただくためのシニア社員制度の改定などを実施することで社内環境整備を進めております。また、中期事業計画「R2」に掲げる「認め合う・高め合う文化の醸成」に向けて、従業員が自律的に自己研鑽することを目的として、「道場」制度を推進しております。「道場」では従業員が自律的に自己研鑽するテーマを選定するとともに当該テーマを学びたい従業員を募集し、従業員自らが道場を運営する仕組みとしており、「道場」を通じて従業員が組織横断的なコミュニケーションの充実を図ることで、組織力の強化に繋げております。
当社グループの教育体系については、大きく以下のテーマに分け、それぞれのテーマに沿った教育に取り組んでおります。
①階層別研修(底上げ教育)
新入社員から幹部社員まで、各職責に求められる教育の充実を図っております。
②プロフェッショナル育成研修
各専門分野でのプロフェッショナルの育成を目的に、技術検定を始めとした各種検定の受験、専門セミナーの受講、先端技術、先端スキルの取り組みを図っております。
③ビジネスリーダー育成
次世代リーダー研修、グローバル人材の育成(語学留学)、組織活性化につながるマネジメント力の強化および人材育成への理解・働きかけを行なっております。
④多様な個の成長支援
キャリアデザイン研修・キャリア支援等を通じて個々の人材サポート・モチベーションの向上を図っております。
⑤道場の充実
多分野において自己研鑽し、知識・能力・心技体を磨く活動の充実を図るとともに他部署、世代間のコミュニケーションを充実させ、組織の活性化を図っております。
当社グループの事業展開上のリスクについて、投資家の判断に影響をおよぼす可能性が考えられる主な事項については、以下の内容が挙げられます。当社グループは、これらのリスクを適切に把握し、対応することを経営における重要な課題と位置付け、リスクマネジメントおよびコンプライアンスにかかる最高決定機関として、リスク・コンプライアンス委員会を設置しております。リスク・コンプライアンス委員会を中心として、これらのリスクの発生の可能性を認識・評価したうえで、リスクの回避・軽減を判断し、発生した場合には影響の極小化のための対応に努める所存であります。
なお、以下の内容は、当社グループのすべてのリスクを網羅するものではありません。また、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月23日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 市場環境
当社グループの電池事業および電子事業は、当社グループが製品を販売している国または地域の経済状況の影響を受けます。また、同様に電池市場や電子製品市場の需要変動の影響を受けます。従いまして、北米、欧州、アジアを含む当社グループの主要市場における景気後退や製品市場の縮小は、当社グループの業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。
(2) 為替レート
当社グループは、海外での事業拡大を進めております。そのため米国ドルに代表される為替の急激な変動は、海外ビジネスの売上および損益に影響し、海外に提供する製品の価格競争力の低下などを招くおそれがあります。また、当社グループは、各地域における資産、負債、収益および費用を含む現地通貨建ての項目を連結財務諸表の作成のために円換算しております。換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。一般に、他の通貨に対する円高は当社グループの事業に悪影響をおよぼし、円安は当社グループの事業に好影響をもたらします。当社グループが生産を行なう地域の通貨価値の上昇は、それらの地域における製造と調達のコストを押し上げる可能性があります。コストの増加は、当社グループの利益率と価格競争力を低下させ、業績に悪影響をおよぼす可能性があります。
(3) 金利の動向
当社グループの当連結会計年度末における連結有利子負債残高は147億8百万円となっており、金利変動の影響を受けるものが含まれています。このため、金利変動により当社グループの業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。
(4) 新製品開発力
当社グループは、スピードをあげて新製品・新技術の開発に取り組んでおりますが、エレクトロニクス分野では技術の進歩が大変早く、新製品や新技術は急速に陳腐化します。そのため、当社グループが市場と業界の変化を十分に予測できず、魅力ある新製品を開発できない場合や当社グループの製品の価値を著しく低下させるような、画期的な新技術などが他社によって開発された場合には、将来の成長と収益性を低下させ、業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。
(5) 価格競争
電池およびエレクトロニクス分野における価格競争は大変厳しいものとなっております。そのため、当社グループが属している各製品市場において、競争の激化に直面する可能性があります。また、当社グループは、高品質で高付加価値の製品を開発するとともに、コストダウンに取り組んでおりますが、価格下落が当社グループの想定を上回るリスクや調達価格の変動などにより当社グループが十分なコストダウンを実現できない場合、将来においても有効に競争できるという保証はありません。価格面での圧力または有効に競争できないことによる顧客離れは、当社グループの業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。
(6) 新規参入者を含めた競争
電池およびエレクトロニクス分野では、既存の競合他社に加え、新規参入者との競争も激しくなっています。現在、当社グループが競争優位性を持っている分野でも、新規参入者を含めた競合他社との競争に晒されており、当社グループが競争力を失い、将来の事業において優位性を確保できない可能性があります。
(7) グローバルでの事業展開
当社グループの生産活動の一部は、中国、台湾で行なわれております。そのため、予期しない法律または規制の変更、テロ、戦争、人材の流出、その他の要因による混乱、対応コストの増加などがおきる可能性があります。従いまして、これらの事象は業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。
(8) サプライヤー
当社グループは、原材料の調達につきましては、基本的には複数のサプライヤーと契約を結び安定的な調達を心がけておりますが、材料高騰、供給不足、災害、品質管理の問題が同時に発生した場合など、当社グループの業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。
(9) 顧客への依存
当社グループの電池事業は、電池が使用される機器の拡大・縮小や使用量、長期的な天候状況による消費者の購買動向に影響を受けます。また、電子事業はエレクトロニクス関連のセットメーカーなどを対象としております。これらの企業への売上は、その顧客企業の業績、顧客企業の製品やサービスの売れ行きや当社グループが管理できない要因により大きな影響を受けます。
(10) 投資判断に関するリスク
電池およびエレクトロニクス分野においては、競争力維持のため、多額の研究開発投資および設備投資ならびに事業再編などが必要な場合があります。当社グループは、今後も必要な投資や事業再編などを実行してまいりますが、これらの実施の成否は、当社グループの業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。当社グループでは、投資や事業再編にあたって、市場動向、顧客のニーズや当社事業の優位性などを勘案して決定しておりますが、当社グループが有望と考えた市場や技術が、実際には想定ほど成長しなかったり、需要変動や価格下落が予想以上に早くおきる可能性があります。
(11) 知的財産保護
当社グループは他社製品と差別化を図れる技術とノウハウを蓄積してまいりましたが、当社グループ独自の技術とノウハウの一部は、特定の地域では法的制限のため知的財産権による完全な保護が不可能または限定的にしか保護されない状況にあります。そのため、第三者が当社グループの知的財産を使って類似した製品を製造するのを効果的に防止できない可能性があります。また、当社グループでは他社の知的財産権を侵害することのないよう、社内規程の整備、調査の徹底などを行なっておりますが、当社グループの将来の製品または技術について、将来的に他社の知的財産権を侵害しているとされる可能性があります。
(12) 製品の欠陥
当社グループの工場は、品質保証に関する国際規格「ISO9001」を取得するとともに、当社の厳しい品質管理基準に従って各種製品を製造しております。しかし、すべての製品について欠陥がなく、将来にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、それにより売上が低下し、当社グループの業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。
(13) 人材に関するリスク
当社グループの成長と利益は、人材に大きく依存します。従って、経営者、優秀な技術者など、必要とする人材を採用および育成し、ならびに流出を防止することは当社グループにとって重要であり、このような人材を採用または育成することができない場合や優秀な人材の流出を防止できない場合、当社グループの成長や利益に悪影響をおよぼす可能性があります。また、従業員との間で解雇または退職に関する合意が円滑になされない場合、法令にもとづく適切な労務管理ができないことなどにより従業員に重大な労働災害が発生した場合など、これらの労務問題による社会的な企業評価の毀損や紛争につながる可能性があります。
(14) 環境に関するリスク
当社グループでは、環境保全への取り組みを経営の重点課題に位置付け、環境負荷の低減、環境汚染の発生防止などに努めておりますが、事業活動を通じて環境汚染などが発生しないという保証はありません。また、当社グループ工場跡地において、土壌および地下水の調査ならびに浄化活動を行なっておりますが、今後新たな汚染が発生しないとも限りません。このような環境汚染が発生または判明した場合、当社グループの社会的な信用低下または浄化処理などの対策費用発生などにより損益に悪影響をおよぼす可能性があります。
(15) 情報セキュリティに関するリスク
お客様、お取引先様、当社グループの秘密情報または個人情報(マイナンバーを含みます。)の保護については、社内規程の制定、従業員への教育、情報インフラの整備、業務委託先も含めた指導等の対策を実施しておりますが、情報漏洩を完全に防げる保証はありません。万が一、情報漏洩が起きた場合、当社グループの信用は低下し、お客様の情報を漏洩した場合には法的責任が発生するおそれがあります。また、当社グループの重要な事業活動基盤の一つである社内ネットワークにつきましては、安定した運用を行なうための体制を構築しておりますが、コンピュータウイルスの侵入またはサイバー攻撃などの不正アクセスによる運用困難および情報漏洩などを完全に防げる保証はありません。
(16) 当社グループの施設に関するリスク
当社グループでは、国内外に工場、営業所など様々な施設を所有または賃借しております。いずれの施設についても、各国の建築基準その他の規制を遵守し、また、独自の安全基準を設けるなどの対策を行なっております。しかしながら、地震、大規模な水害、火災、放射能汚染などの災害またはテロ、デモ、ストライキ、施工品質の不足、運用ミスなどが発生した場合、生産ラインの停止など、施設の運用が停止することにより、当社グループの事業に悪影響をおよぼす可能性があります。
(17) 訴訟に関するリスク
当社グループは、事業を遂行するうえで、訴訟等を提起されることがあり、その結果、予期せぬ多額の損害賠償を命じられる可能性があります。その額によっては、当社グループの業績と財務状況に悪影響をおよぼす可能性があります。
(18) コンプライアンスに関するリスク
当社グループは、当社グループで働くすべての人が積極的に実践すべき内容を示した「FDK企業行動指針」を定めるとともに、「FDK企業行動指針」を遵守することにより社内ルールの浸透と徹底、指針遵守の企業風土の醸成と、そのための社内体制や仕組みの構築を推進しています。しかしながら、このような施策を講じても、コンプライアンス上のリスクを完全に排除することはできない可能性があり、国内外の関連法令、規制などに抵触する事態が発生した場合には、当社グループの社会的な信用が低下し、あるいは多額の課徴金や損害賠償が請求されるなど、当社グループの事業に悪影響をおよぼす可能性があります。
(19) 災害や停電等による影響
当社グループは製造ラインの中断による潜在的なマイナス影響を最小化するために、すべての設備における定期的な災害防止検査と設備点検を行なっております。しかし、生産拠点で発生する災害、停電またはその他の中断事象による影響を完全に防止または軽減できる保証はありません。
(20) 地震やその他の自然災害、事故等によるリスク
当社グループでは、防災訓練の実施をはじめ、防災に関する連携体制の構築を進めております。また、地震やその他の自然災害が発生しても、重要な事業を継続し、企業としての社会的責任を遂行するとともに、お客様が必要とする高性能・高品質の製品を安定的に供給するために、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を策定し、その継続的な見直し、改善を実施する事業継続マネジメント(BCM)を推進しております。
しかしながら、近年、世界的な気候変動により、台風、水害、大雪などの自然災害の発生頻度や影響度は高まっております。また、首都直下、東海地方、南海トラフなどにおける巨大地震やテロ、事故による電力供給停止、感染症のパンデミック、火山噴火など不測の事態は、十分に影響度を検討して策定した事業継続計画においても、被害想定を超えた規模で発生する可能性がありうると考えられます。当社グループは、防災対策や事業継続マネジメントを今後も継続して推進してまいりますが、このような事態が発生した場合、事業所の機能停止、設備の損壊、電力・水・ガスなどの供給停止、公共交通機関や通信手段の停止、サプライチェーンへの被害などにより、お客様への製品出荷の停止など、当社グループの事業活動の継続に影響をおよぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境につきましては、設備投資や生産の持ち直しの動きが見られたものの、ウクライナ・中東地域での地政学的不安定さが長期化するなか、物価や人件費の上昇、欧米での高い金利水準の継続、中国における不動産市場の停滞の継続に伴なう影響、米国の政権交代による今後の政策動向など景気の先行きが不透明な状況で推移しました。
このような状況のなか、当社グループは当連結会計年度が2年目となる中期事業計画「R2」の目標の達成に向けて、柱に掲げた「主力ビジネスの利益ある成長の加速」、「新規ビジネスの始動と開拓に向けた取り組み」を推し進めており、技術VEによるコスト削減、徹底的な経費削減など原材料価格の高騰に対するレジリエンスの強化と新規ビジネスの獲得、深耕開拓に取り組みました。
電池事業ではニッケル水素電池で車載アクセサリ市場向けの量産出荷、電源バックアップ市場向けのサンプル出荷、音響機材の電源として使用するコンサートへの継続協賛、アルカリ乾電池で吉本新喜劇とのコラボレーションによる防災備蓄啓発のデザインを施した乾電池の発売、ミニ四駆ジャパンカップへの継続協賛、リチウム電池で累計出荷数15億個の達成など販売促進に努めました。電子事業では「Bluetooth® Low Energyモジュール」のサンプル出荷を開始しました。また、新規ビジネスではニッケル亜鉛電池でサンプル出荷拡大など実用化に向けた取り組みに努めました。
当連結会計年度の経営成績につきましては、電池事業の売上高はニッケル水素電池が国内外の市販・工業用途向け、海外の車載用途向けでの増加、前連結会計年度に出資持分を取得したBAOTOU FDK CO., LTD.の売上高も加わったこと、設備関連ビジネスが増加したこと、さらに円安効果も加わったことにより、事業全体として増収となりました。電子事業の売上高はスイッチング電源やトナーが減少したことにより、事業全体として減収となりました。この結果、売上高は前連結会計年度と比べ4億95百万円(0.8%)増の631億71百万円となりました。
損益面につきましては、電池事業は原材料価格の変動や技術VEによるコストダウン、さらに円安効果が加わったことにより、増益となりました。電子事業は売上減により、減益となりました。この結果、営業利益は前連結会計年度と比べ8億26百万円増加の13億94百万円となりました。経常利益は前連結会計年度と比べ5億41百万円増加の12億61百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度と比べ4億15百万円増加の5億36百万円となりました。
(注)1.ミニ四駆は株式会社タミヤの登録商標です。
2.Bluetooth®ワードマークは、Bluetooth SIG, Inc.が所有する商標です。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
電池事業
電池事業の売上高はニッケル水素電池、設備関連ビジネスが増加したことにより、前連結会計年度を上回りました。
製品別につきましては、ニッケル水素電池は、国内外の市販・工業用途向け、海外の車載用途向けで増加したこと、BAOTOU FDK CO., LTD.の売上高や円安効果も加わったことにより、前連結会計年度を上回りました。リチウム電池は、海外のセキュリティ・スマートメータ用途向けが減少したことにより、前連結会計年度を下回りました。設備関連ビジネスは、自動車関連設備が増加したことにより、前連結会計年度を上回りました。
この結果、当事業全体の売上高は、前連結会計年度と比べ12億26百万円増加の489億56百万円、セグメント利益は売上増、原材料価格の変動や円安効果も加わったことにより、11億43百万円(前連結会計年度は2億62百万円のセグメント利益)となりました。
電子事業
電子事業の売上高は半導体装置用途向けスイッチング電源や市場在庫調整の影響によりトナーが減少したことにより、前連結会計年度を下回りました。
この結果、当事業全体の売上高は、前連結会計年度と比べ7億31百万円減少の142億15百万円、セグメント利益は、売上減により、2億51百万円(前連結会計年度は3億6百万円のセグメント利益)となりました。
当連結会計年度の総資産は、前連結会計年度と比べ52億16百万円(△10.1%)減の463億40百万円となりました。流動資産は前連結会計年度と比べ48億59百万円(△13.3%)減の317億34百万円、固定資産は前連結会計年度と比べ3億56百万円(△2.4%)減の146億6百万円となりました。流動資産減少の主な要因は、連結子会社で売掛金回収が進んだことや早期資金化の実施などにより受取手形及び売掛金や電子記録債権が減少したことに加え、仕掛品や原材料及び貯蔵品などの棚卸資産が減少したことによるものです。固定資産減少の主な要因は、各種モジュールで一部機種生産終了に伴なう固定資産処分などにより、有形固定資産が減少したことによるものです。
当連結会計年度の負債合計は、前連結会計年度と比べ59億85百万円(△16.7%)減の299億25百万円となりました。流動負債は前連結会計年度と比べ53億39百万円(△15.6%)減の288億79百万円、固定負債は前連結会計年度と比べ6億45百万円(△38.2%)減の10億46百万円となりました。流動負債減少の主な要因は、下請代金の支払サイトの短縮などにより短期借入金が増加した一方、支払手形及び買掛金や電子記録債務が減少したことによるものです。固定負債減少の主な要因は、退職給付に係る負債が減少したことによるものです。
なお、有利子負債残高は、主にリース債務や借入金の増加により前連結会計年度と比べ1億52百万円増の147億8百万円となりました。
当連結会計年度の純資産合計は、前連結会計年度と比べ7億68百万円(4.9%)増の164億14百万円となりました。純資産増加の主な要因は、為替換算調整勘定が減少した一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が5億36百万円、退職給付に係る調整累計額が5億15百万円、それぞれ増加したことによるものです。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入債務の減少などによる現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の減少はありましたが、税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上、売上債権の減少などによる現金及び現金同等物の増加などにより、37億73百万円の資金増加(前連結会計年度は16億20百万円の資金増加)となりました。
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、リチウム電池の鳥取工場改修工事に伴なう有形固定資産の取得による支出などにより28億25百万円の資金減少(前連結会計年度は25億33百万円の資金減少)となりました。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、ファイナンス・リース債務の返済による支出はありましたが、短期借入金の増加などにより、24百万円の資金増加(前連結会計年度は18億13百万円の資金増加)となりました。
これらの結果、当連結会計年度における資金の期末残高は期首残高より8億84百万円増加し、46億円となりました。
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結売上高は、631億71百万円(前連結会計年度比0.8%増)となりました。電池事業のリチウム電池や電子事業のスイッチング電源などの売上減があったものの、電池事業のニッケル水素電池や設備関連ビジネスの売上増により、前連結会計年度を上回りました。連結営業利益は、販売価格改定の影響や経費増加による利益の減少がありましたが、電池事業での原材料価格の変動や技術VEによるコストダウン、さらに円安効果による利益の増加により、前連結会計年度に比べ8億26百万円増加の13億94百万円となりました。
当社グループは、中期事業計画「R2」において、営業利益率やROIC(投下資本利益率)を経営の指標としており、特に営業利益率を主指標としております。これは当社グループにおいては本業での収益性の向上が最も重要な課題であると認識しているためであります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであることに加え、当社グループ事業の製品の売上は、電池事業においては電池が使用される機器の拡大・縮小や使用数の影響を受け、また、電子事業は主たる顧客であるエレクトロニクス関連のセットメーカーの製品やサービスの売れ行きに影響を受けるなど、当社グループが管理できない要因により大きな影響を受けます。
また、当社電池製品の主要材料であるニッケル、亜鉛、リチウムやレアアース類は需給バランスや投機的要因などにより原材料価格が大きく変動することや、光熱費の価格変動も営業利益に大きな影響を与えます。
さらに、当社グループの売上高の43.6%は海外ビジネスであるため、為替レートの変動により円換算による増減の影響を与えます。この為替変動のリスクに関しては、売上と調達のバランスを取ること、為替予約などにより対処を図っております。
主にこれらの要因が当社グループの経営成績、事業の収益性に影響するものと認識しております。そのため、当社は、毎月1回受注状況、受注見込み、年間予算との乖離などの最新の業績の状況を把握するとともに、必要な改善の立案、実施を行なっております。
当社グループの資本の財源および資金の流動性については、当社グループは、主に事業の継続性の確保と収益性向上を図るため、その生産設備類の維持・更新や能力増強、生産効率向上を主とした設備投資に加え、新電池の研究開発と量産体制構築に向けた設備投資を継続しており、その財源は営業活動から得られたキャッシュ・フローおよび外部より調達した資金を主としております。
セグメントごとの財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容は、次のとおりであります。
電池事業
当連結会計年度における電池事業の売上高はニッケル水素電池や設備関連ビジネスが増加したことにより事業全体として増収となり、営業利益率は1.7ポイント増の2.3%となりました。
売上高の確保・拡大のためには需要が伸張する地域、販路、市場、新規機器メーカーへの拡販が必要であるとの認識のもと、新製品開発、マーケティング、営業力の強化に努めております。市販用途向けニッケル水素電池、アルカリ乾電池はコモディティ化が進んでいるため、市販用途向けニッケル水素電池については品質、特性面での差別化、商品力の強化や環境・安全面での訴求をすすめ、利益率の向上を図っており、アルカリ乾電池については国内市販向けビジネスで新規顧客の開拓と既存顧客の深耕で売上拡大と事業規模に合った人員体制により、引き続き付加価値向上に取り組んでおります。
また、電池の主要材料価格の変動に関しては、適切な時期での予約などの施策に加え、材料使用量の低減、より安価な材料へのシフト、リサイクル材の活用などの技術VEとコストダウンを行ない、対応力の強化に努めております。
電子事業
当連結会計年度における電子事業の売上高は前連結会計年度から減少し、営業利益率は0.3ポイント減少の1.8%となりました。
電子事業については、さらなる事業価値の向上が必要であると認識しており、当連結会計年度においては製品モデル毎の選択と集中を継続する一方、Bluetooth® Low Energyモジュールの製品化や差別化、技術力を生かした新規用途・顧客獲得での売上拡大による付加価値向上を図っております。
経営上の目標の達成状況は、1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等に記載した方針にもとづき、当社グループは「Smart Energy Partnerとして、先進技術を結集し、お客様に電気エネルギーを安心して効率的に活用いただき、持続可能な社会の実現と発展に貢献する」というFDKグループ戦略Framework「10年の計」のVisionとそのあるべき姿の実現に向けて翌連結会計年度を最終年度とする中期事業計画「R2」を策定し、その達成に向けて取り組んでおります。
<中期事業計画「R2」期間累計目標>
「R2」期間累計のキャピタル・アロケーション方針
営業活動から得られるキャッシュ・フロー130億円
財務基盤強化(20億円)
新電池・DX等成長に向けた投資(20億円)
既存ビジネスの強化(90億円)
<中期事業計画「R2」の最終年度目標>
「R2」の2年目となる当連結会計年度の経営上の目標として、売上高630億円、営業利益10億円、経常利益8億円、親会社株主に帰属する当期純利益2億円を目指してまいりました。
その結果、当連結会計年度における売上高は631億71百万円、営業利益は13億94百万円、経常利益は12億61百万円、親会社株主に帰属する当期純利益5億36百万円となり、すべての目標値を上回りました。
その主な要因としましては、売上高は電池事業のニッケル水素電池と設備関連ビジネスが期初の見込みを上回ったことにより、目標値を上回りました。営業利益は原材料価格の変動、技術VEによるコストダウンや経費削減、さらに円安効果も加わったことにより、目標値を上回りました。経常利益は為替差益などの営業外損益の好転が加わったことにより、目標値を上回りました。親会社株主に帰属する当期純利益はアルカリ乾電池にかかわる投資最適化による固定資産の減損損失の減少により、目標値を上回りました。
<2025年3月期の目標と結果>
なお、前述のとおり当社グループは、10年後のあるべき姿を示したFDKグループ戦略Framework「10年の計」と中期事業計画「R2」を策定し、「R2」の最終年度である2026年3月期に売上高680億円、営業利益率4.1%、「10年の計」の最終年度である2030年3月期に売上高800億円、営業利益率7.5%を経営上の目標として取り組んでおります。
中期事業計画「R2」の最終年度となる2026年3月期の経営成績の見通しは、売上高600億円、営業利益14億円、経常利益13億円、親会社株主に帰属する当期純利益6億円を予想しており、「R2」計画を大きく下回る見通しとなっております。「R2」目標との差異の要因は車載用途向けニッケル水素電池が堅調な見通しであるものの、電源バックアップ用途やモビリティ用途向けのニッケル水素電池での売上見通しの減少や電子事業の各種モジュールでの売上見通しの減少などによる減収により営業利益が減少するためであります。
これらの課題に対して、「主力ビジネスの利益ある成長の加速」についてはニッケル水素電池、リチウム電池と電子事業で伸びる市場・付加価値の高い市場に注力し、「新規ビジネスの始動と開拓」についてはSMD対応小型全固体電池、ニッケル亜鉛電池やパワーマネジメントソリューションの要素開発を継続、「認め合い・高め合う文化の醸成」については能力を発揮できる仕組みの構築や経営の質向上のためのさまざまな施策に取り組んでまいります。販売価格の見直しや新規ビジネスの獲得、深耕開拓に加えて、技術VEによるコスト削減、徹底的な経費削減などに加え、新たに当社の筆頭株主となったSILITECH TECHNOLOGY CORPOARTIONと同社が属している企業グループの販売チャネル活用、グローバルリソース活用による調達・製造分野の効率改善、国際法務や税務の経験共有、新たな事業分野への展開により、公表した営業利益見通しと「R2」計画目標値との差異縮小に取り組んでまいります。
③ 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準にもとづき作成されております。
なお、個々の「重要な会計方針及び見積り」については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表、注記事項、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表、注記事項、重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。
当社は、当社の株主である富士通株式会社との間で、当社の役員候補者を指名する権利を有する旨の取締役の派遣に関する合意書を締結いたしました。
合意書に関する内容等は、以下のとおりであります。
(1) 合意の概要
(2) 合意の目的
富士通株式会社は、当事業年度において当社株式の一部を売却しておりますが、新たな資本構成のもとで、当社への経営参加を目的として当該合意書を締結しております。
(3) 取締役会における検討状況
2025年2月12日開催の当社取締役会において検討がなされ、決議されました。
(4) 合意が当社の企業統治におよぼす影響
取締役の選任は、社内取締役1名と独立社外取締役2名からなる指名・報酬委員会への諮問事項であり、富士通株式会社から指名された候補者においても、他の候補者同様にポジション要件、スキルマトリックスに照らしてその適格性を検討し、取締役会にて答申・決議されることから、本合意は当社の企業統治に大きな影響はありません。
当社グループは、エネルギーの安全かつ効率的な利用を目指し、エネルギー・環境分野における各種電池(ニッケル水素、リチウム、アルカリ、次世代電池)、パワーマネジメントソリューションおよび蓄電システムに関する研究開発を行なっております。
研究開発につきましては、新事業開発本部の基盤技術統括部、パワーソリューション事業推進室が当社の研究開発活動を統括し、将来の市場環境と技術動向を見据えた新製品・新技術の開発を推し進めております。
また、産学の研究機関等との連携により先端技術の導入を効率的に推し進め、技術開発スピードの加速化を図っております。
当社グループの当連結会計年度における研究開発費は
当連結会計年度における研究開発の主要目的および研究開発成果は次のとおりであります。
(1) 次世代技術開発(次世代電池開発、要素技術開発、環境対応)
次世代電池として以下の開発を進めております。
ニッケル亜鉛電池については、当連結会計年度、年間で数十社にご紹介し、特に電源バックアップ、モビリティ用途のお客様には現在お使いの鉛電池代替としてメリットを感じて頂き、組電池サンプルを出荷、実機でのご評価を頂いている状況です。2025年4月には「ニッケル亜鉛電池事業推進室」を新たに発足し、量産化に向けて電池特性、生産品質、コストの両立を目指して開発を加速しております。
SMD小型全固体電池SoLiCell®については、引き合いに応じてサンプル提出を行ない、実機でのご評価をいただいております。量産体制の構築にも取り組んでおります。引き続き、より汎用性の高い製品の開発として、充電特性向上、容量アップに取り組むとともに、次世代に向けて負荷特性向上、信頼性向上、コストダウン等を図るべく、外部機関と連携した新材料・プロセスの開発に取り組んでおります。さらに、充電回路を内蔵するモジュール開発も電子事業部と取り組んでおり、様々な市場ニーズに応える準備を進めております。
要素技術開発では、MI(マテリアルインフォマティクス)を用いて材料開発、分析評価、およびCAE技術による技術開発に取り組みました。
また、既存電池製品については、ニッケル水素電池では、2024年3月に連結子会社となったBAOTOU FDK CO., LTD.と水素吸蔵合金の共同開発を進め、車載アクセサリ市場向けにBAOTOU FDK CO., LTD.製水素吸蔵合金を採用した新モデルを開発いたしました。新モデルは、既存モデル比約1.2倍の電池容量および-40℃の環境下における放電時間約6倍を実現し、2024年8月より量産出荷を開始いたしました。アルカリ電池においては、日常的な使用や防災用途に適した性能の向上を図るとともに、環境負荷の軽減を目指した部材およびパッケージの開発を進めております。 リチウム電池では主力ビジネスの成長と新規ビジネスの獲得に繋がる開発に取り組んでまいりました。来期は新製品開発・サンプル提供に加え、新たなモデルの量産化に取り組んでまいります。
環境対応として電池事業ではリサイクル材の活用、電子事業では低温はんだ採用によるCO2排出量の削減(カーボンニュートラル)に継続して取り組んでおります。
(2) 次世代技術開発(パワーソリューション)
パワーソリューション事業推進室については、当社が有する電気エネルギーの供給・貯蔵・制御技術を応用した、全種類の蓄電デバイスを対象としたパワーマネージメント応用事業・製品の研究・開発を行なっております。
当連結会計年度においては、これまでの開発資産を応用し、製品化する上で必要とされる安全性評価試験への取り組みを進めております。また、e-MaaS実現ソリューションに対するアプローチとして電池モジュール・電池パックに使用する電池セルの状態や充電率などをモニタリングする機能の基礎検討を行ないました。
今後は、遠隔地における電池状態の見える化を実現すべく、通信ユニットの開発と監視アプリなどのソリューション開発を進めていき、パワーマネージメント応用事業・製品の研究・開発を継続してまいります。