第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

以下の文中における将来に関する事項については、有価証券報告書提出日(2025年3月31日)現在、入手しうる情報に基づいて判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、社是「おもしろおかしく」のもと世界で事業展開する分析・計測機器メーカーとして「真のグローバルカンパニー」をめざし、様々な産業分野のグローバルな市場に対して、分析技術を中心とした事業活動を通じて、「地球環境の保全」「ヒトの健康」「社会の安全・利便性向上」「科学技術の発展」等をもたらすことにより社会貢献することを基本理念としています。

また、連結経営を重視し、世界47社にのぼる当社グループの「人財(※1)」「技術」リソースを活かした連携強化及び融合を積極的に推進しています。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、2028年を目標年度とする中長期経営計画「MLMAP2028(Mid-Long Term Management Plan 2028)(※2)」を2024年2月に策定し、「MAXIMIZE VALUE(※3)」のスローガンのもと、連結売上高4,500億円、営業利益800億円、ROE(自己資本当期純利益率)12%以上をめざしています。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題

当社グループは、社是「おもしろおかしく」のもと、5つのセグメント(自動車、環境・プロセス、医用、半導体、科学)と、4つの地域(日本、アジア、欧州、米州)によるマトリックス組織を通じてグループ一体となった経営を行い、事業成長を実現してきました。

昨今、持続可能な社会実現の機運が高まり、AI・IoTをはじめとした技術革新がますます進んでいます。一方で、パンデミックの発生や政情不安等、予測困難な事象も発生しています。そのような中、当社グループの使命は、外部環境の変化に柔軟に対応していくとともに、ビジョン「Joy and Fun for All おもしろおかしくをあらゆる生命へ」のもと、「ほんまもん(※4)」と多様性を礎にソリューションで社会課題の解決を実現することです。

ビジョン「Joy and Fun for All おもしろおかしくをあらゆる生命へ」の実現に向けた第一歩として、また、さらなる事業成長と企業価値向上を実現するため、当社グループは「MAXIMIZE VALUE」をスローガンに据えた中長期経営計画「MLMAP2028」を策定しスタートしました。後述する3つの戦略の実現を通じて、2028年に売上高4,500億円、営業利益800億円、ROE12%以上の達成をめざします。

また、「MLMAP2028」実行による事業成長に加え、創出した資金を将来の成長分野に積極的に再投資していくことにより、企業価値を長期的かつ継続的に向上させます。そのための施策として、2017年より導入しているHORIBA Premium Value(※5)を活用することにより、資本コストを意識した経営を引き続き推進します。

 

① 3つの注力分野(エネルギー・環境、バイオ・ヘルスケア、先端材料・半導体)における社会課題解決をめざす事業戦略

新しい社会に欠かせない次の3つの注力分野において、当社グループがグローバルに培ってきたコア技術、生産能力、顧客ネットワーク、サービス能力を有機的に組み合わせ、独自のソリューションを創出し、社会課題の解決に貢献します。

 

<エネルギー・環境>

・ビジョン

「持続可能な地球環境を実現するために、お客様の課題を解決し、信頼される真のパートナーとなる」

・2028年財務目標

売上高 1,580億円 営業利益 158億円 営業利益率 10%

 

 

当分野で解決をめざす社会課題は、おもにエネルギー分野での取り組みが重要となっている「カーボンニュートラル」の実現です。当社グループは、研究開発・法規認証等の各プロセスに対して、当社グループが培ってきた技術と経験を統合し、お客様のニーズに合わせた最適なソリューションを展開します。

 

<バイオ・ヘルスケア>

・ビジョン

「ユニークなソリューションで、あらゆる生命のヘルスケアジャーニーを変革し、社会価値を創造する」

・2028年財務目標

売上高 570億円 営業利益 57億円 営業利益率 10%

 

当分野で解決をめざす社会課題は、あらゆる生命が健康でいるために、ウェルビーイングや予防を含めたヘルスケアジャーニーの変革です。当社グループが持つ多様なコア技術とグローバルネットワークを活用し、ユニークなソリューションを提供。POCT(※6)を用いた臨床現場の課題解決やバイオ医薬品の開発・生産プロセスの最適化等に貢献します。

 

<先端材料・半導体>

・ビジョン

「持続可能な社会実現に向けて、先端材料・半導体分野への革新的なソリューションで市場を形成する」

・2028年財務目標

売上高 2,350億円 営業利益 585億円 営業利益率 25%

 

当分野で解決をめざす社会課題は、半導体製造プロセス、関連先端材料、そしてファシリティが互いに関係するバリューチェーンのマトリックス「ウーブンバリューチェーン(※7)」における技術革新です。当社グループは、先端材料分野等に最先端のソリューションを提供し、半導体分野において全方位でお客様のオペレーションをサポートします。

 

<グローバル経営基盤の強化(開発、サービス、生産、ディストリビューション)>

事業戦略を推進するにあたり、各ファンクションでのグローバル経営基盤の強化が不可欠です。それぞれ以下の施策を行い、グローバルレベルでの最適化を実現します。

 

開  発        技術と人財を有機的に結びつけ、ほんまもんの技術を磨く

サービス        高品質なサービスと分析ソリューションで独自のサービスモデルを確立する

生  産        持続可能なバリューチェーンにより安定的に高品質な製品を提供する

ディストリビューション 顧客価値に繋がるソリューションの拡充・流通チャネルの構築を実現する

 

② ホリバリアン(※8)の力を最大限引き出す人財戦略

・ビジョン

「ホリバリアン一人ひとりが『おもしろおかしく』の実践によりその力を発揮し、『ほんまもん』を追求する舞台をグループ全体で創りあげる」

・2028年非財務目標

「全ホリバリアンによるバリュー(※9)の実践」

「『ほんまもん』の価値の創出」

 

当社グループが社会価値を創出するためには、多様なホリバリアンがそれぞれの個性、強み、能力を発揮し、HORIBA(※10)のバリューを実践していくことが不可欠であると考えます。その実現に向け、人財が持つ力を最大限に発揮し、「ほんまもん」を追求する「舞台」をグローバルに創りあげます。

 

 

③ ソーシャル・インパクトを生み出すサステナビリティ戦略

・ビジョン

「HORIBA独自の手法で、持続可能な社会実現に貢献する」

・2028年非財務目標

「2050年カーボンニュートラル」

「2033年CO2排出量42%削減(Scope 1,2)(※)11」

 

当社グループの使命は、独自性の高い製品とソリューションの提供を通じ、持続可能な社会の実現に貢献することです。また、当社グループを含むサプライチェーン全体での対応強化と社会貢献活動の促進に、グローバルレベルで取り組みます。

 

(注)※1.人財:当社グループでは、従業員を大切な財産と考えて「人財」と表現しています。

※2.MLMAP(Mid-Long Term Management Plan):当社グループでは中長期経営計画を「MLMAP」として社内浸透させています。

※3.MAXIMIZE VALUE:「HORIBAグループのあらゆるVALUE(価値)を最大限に発揮する」ことを表現する「MLMAP2028」のスローガン。「VALUE(価値)」には「ホリバリアンの『価値』」、「社会『価値』」、「顧客提供『価値』」、「技術『価値』」の意味を込めています。

※4.ほんまもん:「ほんもの」から派生した、京都で使われている言葉。当社グループでは、「心をこめてより良いものを追い求めつづけた先に生まれる、唯一無二の価値」を表しています。「ほんまもん」を追い求めるひと、そのひとの行動や努力、その結果として生まれることやもののすべてが「ほんまもん」であり、それらは「ほんもの」を越えて人の心を揺さぶる存在になっていきます。

※5.HORIBA Premium Value:前回の中長期経営計画「MLMAP2023」で導入された、資本効率の最大化を実現するための当社グループ独自の経営指標です。

※6.POCT(Point of Care Testing):診察室等「患者に近い場所」で行われる検査の総称。

※7.ウーブンバリューチェーン:当社グループでは、半導体製造プロセスを横糸、その工程ごとに存在する関連材料市場を縦糸とし、複合化したバリューチェーン全体を織物(ウーブン)に例えて「ウーブンバリューチェーン」と表現しています。

※8.ホリバリアン:当社グループで働くすべての人を同じファミリーであると考え、ホリバリアンと呼んでいます。

※9.バリュー:我々ホリバリアンを突き動かし、独自性あふれるソリューションを生み出しつづけるための道しるべとして、「チャレンジ精神」、「誠実と信頼」、「卓越の追求」をかかげています。

※10.HORIBA:当社並びに連結子会社及び持分法適用関連会社を指します。

※11.2024年2月発表時には2032年を目標年度としていましたが、温室効果ガス排出量算定のために必要な情報の一部に不備があったため、2033年に修正しました。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取り組み】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2025年3月31日)において当社グループが判断したものです。

 

(1) サステナビリティ全般

当社グループは、社是「おもしろおかしく」のもと「HORIBA Corporate Philosophy」を制定し、「事業」、「顧客対応」、「投資への責任」、「ホリバリアン」の4項目にて企業価値向上のための基本姿勢を示しています。

HORIBA Corporate Philosophyは当社グループのサステナビリティ方針の根幹です。分析・計測ソリューションプロバイダーとして様々な産業分野のグローバルな市場に対して、分析・計測技術を中心とした事業活動を通じて、「地球環境の保全」「ヒトの健康」「社会の安全・利便性向上」「科学技術の発展」等をもたらすことにより持続可能な社会を実現することを基本理念としています。

さらに、社是「おもしろおかしく」及び「HORIBA Corporate Philosophy」のもと「Code of Ethics (倫理綱領)」を制定し、当社の役員および従業員すべてがオープンでフェアに様々な企業活動を行っていくうえで果たすべき使命と役割を認識し、グローバル企業として将来にわたり持続的な発展を遂げていくために、企業倫理に関する8項目(①コンプライアンス、②優れた製品・サービス、③政治・行政との健全な関係、④働き甲斐のある職場づくり、⑤人権尊重、⑥ステークホルダーとの対話、⑦環境保全、⑧危機管理)を定めています。

当社グループは、ビジョン「Joy and Fun for All おもしろおかしくをあらゆる生命へ」実現のため、多様な人財が活躍する舞台を提供し、あらゆる企業活動を通じて、社会、自然、次世代、世界中の全てのステークホルダーに対する価値を創造し続け、持続可能な社会の発展に貢献します。


 

① ガバナンス

当社グループでは、取締役を委員長とする「サステナビリティ委員会」を発足させ、関係する部門長を委員に任命し、サステナビリティの取り組みを推進しています。また、同委員会で議論された内容は委員長から年に1回以上取締役会に報告されます。当社グループは、事業、オペレーション、社会貢献の3つの側面からサステナビリティに取り組み、気候変動への対応をはじめ、社会全体から期待される役割に対し具体的に応えるための検討を、同委員会を中心に実施します。

また、サステナビリティ委員会の下部組織として、国内外の実務者によるグローバルな組織横断的協議、情報交換の場であるHORIBA Group Sustainability System(以下、HGSS)を設置しています。サステナビリティ委員会によるトップダウンアプローチや、HGSSによるボトムアップアプローチとの双方向からのアプローチで、当社グループは全方位的にサステナビリティに対応しています。


 

② 戦略

当社グループでは5年後を目標年度とした中長期経営計画「Mid-Long term Management Plan (以下、MLMAP)」を策定しており、2024年2月には2028年を目標年度としたMLMAP2028を新たに策定し、発表しました。事業戦略としてMLMAP2028では、過去20年に渡って進めてきた5セグメント制から3フィールドグループ制に移行し、当社グループが保有する事業ノウハウと技術を、新しい社会に欠かせない3つの注力分野(フィールド)に対して提供、拡大を実現します。また同時に人財戦略とサステナビリティ戦略の遂行を事業目標と同じく3本柱の一つとして取り上げ、中期的な戦略立案と実行を推進します。

サステナビリティ戦略「Creating Social Impact by HORIBA」では、「HORIBA独自の手法で、持続可能な社会実現に貢献する」をビジョンに掲げ、HORIBAならではの発想で、持続可能な社会の実現に貢献する活動を進めます。

上記の3つの戦略の実現を通じて、売上高や営業利益等の財務目標を達成するとともに、さらなる事業成長と企業価値向上を実現します。

 

③ リスク管理

当社グループは、持続的な企業価値の向上のために、サステナビリティ項目を含めた全社横断的に対応が必要となるリスクへの対応を、当社取締役を委員長とする「サステナビリティ委員会」及び「グループリスク管理委員会」で、リスク管理の方向性の策定や取組の進捗管理等を行っています。リスク管理の詳細は、「第2事業の状況 3事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

(2) 気候変動

当社グループは、気候変動への対応は経営上の重要課題の一つとして捉えており、国際的な枠組みである気候変動問題に関するパリ協定目標達成と2050年のカーボンニュートラル社会実現に貢献するため、気候変動に対応する自社の目標を定め、事業を通して積極的にGHG(Greenhouse Gas, 温室効果ガス)を削減するための取り組みを進めています。

自社の活動に伴う直接的、間接的なGHG排出量の削減と共に、当社グループが提供する全ての分析・計測装置やソリューションによって、お客様の拠点でのGHG排出削減に貢献します。また、その分析データをお客様が活用することによって、お客様が提供する製品の性能を飛躍的に高め、サプライチェーン全体でのGHG排出量の削減に貢献します。

 

① ガバナンス

当社グループは、経営戦略、事業計画に関連する気候変動への対応を最重要課題の一つとして取り組んでいます。気候関連のリスクと機会は、当社取締役を委員長とする「サステナビリティ委員会」及び「グループリスク管理委員会」で、リスク管理の方向性の策定や取り組みの進捗管理等を行い、TCFDの提言を参照してリスクや機会について定期的に確認、審議し、また必要に応じて取締役会へ報告しています。

 

② 戦略

当社グループの事業活動に影響を与える可能性がある気候関連のリスクと機会を、シナリオ分析によって特定し影響度の評価を開始しています。気候リスクについては、当社グループからの直接排出に当たるスコープ1の排出削減の検討を開始するとともに、エネルギーの間接排出にあたるスコープ2の再生エネルギー使用への転換検討を開始しています。2024年は連結子会社において自社敷地内での太陽光発電設備の導入や、再生可能エネルギー由来の電気の購入を進めました。

スコープ3の算定も進めており、2023年度の当社の排出量を算定しました。資材購入や製品稼働時におけるGHG排出量が大部分を占めており、当社グループ全体でも同様の計算結果になると想定しています。当社グループ全体の算定を進めるとともに、重点対応項目を特定し、削減対策の立案と実行を進めます。

 

③ リスク管理

当社グループでは、経営に関わる全てのリスク管理を行い、取締役会の監督のもと、各種委員会が対策を協議、決定しています。気候変動に関してはサステナビリティ委員会がリードし、シナリオ分析による影響度評価で特定したリスクを中心に評価を実施します。

 

④ 指標及び目標

当社グループでは、2050年カーボンニュートラルの実現を目標にしています。中間目標として2033年度の当社グループの事業活動によるGHG排出量(スコープ1とスコープ2)を2023年度比42%削減することを定めています。更に、特に排出量が大きく顧客の関心も高い、販売した製品の使用等によるGHG排出量(スコープ3カテゴリ11)の削減に向け、環境貢献製品シリーズを定義し、新製品での採用率を高める活動に取り組みます。

また、当社グループとして最も社会貢献度が大きいと考えるのは、当社グループが提供する製品・ソリューションを活用するお客様が、分析・計測ソリューションを通じてGHG削減に直接貢献することです。すなわち、当社グループのビジネスの最大化が、脱炭素社会を実現し、気候関連リスクの低減と機会の増大につながると考えます。

 

当社グループのGHGの削減目標と実績、及び削減に向けた取り組みの詳細は、ウェブサイトを参照ください。

「https://www.horiba.com/jpn/company/social-responsibility/environment/environmental-activities/」

 

 

(3) 人財戦略(人的資本に関する取り組み)

① 戦略
a.人財戦略

当社グループの事業を通じた社会価値創出の原動力は、多様な人財がそれぞれの個性、強み、能力を主体的に発揮していくことで生み出されます。2024年2月に発表した中長期経営計画「MLMAP2028」において、「ホリバリアン一人ひとりが『おもしろおかしく』の実践によりその力を発揮し、『ほんまもん』を追求する舞台をグループ全体で創りあげる」というビジョンを掲げ、人財育成及び社内環境の整備に取り組んでいます。

 

b.人財育成方針

ホリバリアン一人ひとりの「おもしろおかしく」を活かし、当社グループのバリュー「チャレンジ精神」、「誠実と信頼」、「卓越の追求」の実践に向けた育成の取り組みを進めていくことで、人財という最も重要な資産の価値を最大化していくことを目指します。

 

施策の例

・一人ひとりの人財の多様な強みの発揮と「ほんまもん」へのチャレンジを支え、対話を生む資格・評価制度の定着と活用

・創業時からのHORIBAのスピリットを受け継ぎ、「ほんまもん」を追求していくための記念日の制定、顕著な成果を称える表彰制度の創設

・リーダーシップ研修等を通じたグローバルに活躍するリーダー、次世代グループ経営基幹人財の育成

・高度な専門性を有する人財の活躍を促す人事制度の推進

・ブラックジャック活動(※1)の更なる推進

 

c.社内環境整備方針

ホリバリアンがHORIBAで働くことに「誇り」や「喜び」を感じる気持ち(エンゲージメント)の向上に向けて、人事部門内に設けた専任チームを中心におこなうダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの取り組み、健康で安全な職場環境の整備、「チャレンジ精神」の発揮を応援する施策等を推進するとともに、ホリバリアンのエンゲージメントの継続的な検証、改善に取り組みます。

 

施策の例

・エンゲージメントの継続的な検証、改善への取り組みを進めるためのグローバル・サーベイの実施

・新たに入社するホリバリアンの早期活躍に向け、入社後のスムーズな業務推進と活躍を支援する施策の実施

・海外公募研修をはじめとした国際間の人財交流・異動を通じたグローバルでの多様なキャリア開発、チャレンジの機会の創出

・国籍を問わず誰もが活躍できる組織風土醸成のための異文化コミュニケーション研修の実施

・育児休業取得者による体験共有及び復帰時のネットワーク形成のサポート等を通じた育児休業取得の推進

・人権、労働マネジメント体制の整備

・「こころとからだの健康づくり宣言」及び「当社グループ安全宣言」に基づく安全衛生マネジメント体制の推進

・Good Place勤務制度(テレワーク制度)、時差出勤制度等の多様な働き方の効果的な活用の推進

・自律的なキャリア開発を支援する公募型の異動制度等の積極的な推進

・付加価値の向上と従業員報酬引き上げの持続的な好循環

 

※1.ブラックジャック活動:1997年から継続している「従業員の意識と行動の変革」を目的として現場の挑戦を後押しする当社グループ独自のボトムアップ活動。活動のプロセスから得られる「気づき」「学び」「喜び」が「ほんまもん」の追求を目指す人財育成の起点となっています。

 

 

② 指標及び目標

多様な人財の活躍をめざす取り組みの一環として、積極的な採用活動や、育児休業制度の社内周知等を推進しており、中長期経営計画「MLMAP2028」の目標年度の2028年度に向けて、管理職に占める女性従業員の割合及び育児休業取得率向上を図っています。なお、従業員に占める男性、女性の割合及び育児休業取得率は以下のとおりです。

 

a.従業員に占める男性、女性の割合

 

 

2024年12月期実績

男性

女性

人数(名)

比率(%)

人数(名)

比率(%)

採用人数(新卒入社)

54

64.3

30

35.7

採用人数(キャリア入社)

119

76.8

36

23.2

従業員数

2,435

75.3

797

24.7

 

(注) 当社及び国内連結子会社在籍者

 

b.管理職に占める女性従業員の割合

(単位:%)

 

2024年12月期実績

2028年12月期目標

株式会社堀場製作所

10.3

15.0

株式会社堀場エステック

5.6

10.0

株式会社堀場アドバンスドテクノ

9.5

15.0

株式会社堀場テクノサービス

6.4

10.0

 

 

c.男性育児休業取得率

(単位:%)

 

実績

2020年12月期

2021年12月期

2022年12月期

2023年12月期

2024年12月期

株式会社堀場製作所

50.0

75.0

90.7

97.4

89.5

株式会社堀場エステック

72.7

71.4

71.4

104.3

83.3

株式会社堀場アドバンスドテクノ

116.7

33.3

63.6

75.0

66.7

株式会社堀場テクノサービス

16.7

66.7

78.9

61.9

83.3

 

 

 

3【事業等のリスク】

重要リスクを選定するにあたり、リスクに関するグループ規程に定めるリスク項目をベースに現業部門及び管理部門が当社グループにおける個別のリスク項目を抽出し、各リスクについて、発生の可能性と経営への影響度において3段階の点数付けを行っています。その後、点数化したリスク項目を整理して、当社グループにおけるリスクマップを作成し、リスクに関するグループの管理委員会にて協議・承認を行いました。

リスクマップに挙げた項目のうち、下図の網掛け部分に該当するリスク項目を当社グループにおける重要リスクと位置付けて、有価証券報告書に記載しています。

なお、文中における将来に関する事項については、有価証券報告書提出日(2025年3月31日)現在、入手しうる情報に基づいて当社グループが判断したものです。

 

<当社グループのリスクマップ>


 

(1)3事業部門(フィールド)に関するリスクについて

当社グループは、これまで自動車、環境・プロセス、医用、半導体、科学という5つのセグメントで事業を推進していました。2024年2月発表の中長期経営計画(MLMAP2028)において、当社グループがグローバルに培ってきたコア技術、生産能力、顧客ネットワーク、サービス能力を有機的に組み合わせ、独自のソリューションを創出し、社会課題の解決に貢献するため、エネルギー・環境、バイオ・ヘルスケア、先端材料・半導体という3事業部門(フィールド)の体制に変更いたしました。個々の事業部門には以下のような業績変動要因があります。

 

① エネルギー・環境

エネルギー・環境では、自動車メーカー、自動車部品メーカー及び官公庁が主たるユーザーであり、エンジン排ガス測定装置や大気・水質汚染分析装置等が主力製品となっています。そのため、排ガス・燃費規制の動向による需要の変動や、官公庁による環境関連の法的規制動向及び一般企業の研究開発・投資動向により需要が増減することから、今後の規制・市場の動向によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、自動車の電動化や自動運転技術の進展等、自動車産業の構造変化がもたらす自動車関連メーカーの研究開発・設備投資動向、加えて各国補助金を受けた事業者が主たるユーザーとなる水素等の新エネルギーや、カーボンニュートラルといった領域におけるビジネスについては補助金の打ち切り等、政策動向によっては当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。更に、ECT(自動車開発全般に関するエンジニアリング・試験)事業では事業の性格上、多額の固定資産を所有しています。自動車メーカーの研究開発動向等により、固定資産の稼働率が低下した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、世界的に環境問題への規制強化が進む中、特に地政学的なリスクは短期間に変化・顕在化する可能性があり、行政機関から発信される最新情報の収集を継続的に行うとともに、規制適合や排ガス低減技術開発に必要なエンジン排ガス測定装置の開発と供給に努めています。また、世界的な電動車両に対する需要の高まりを背景に、市場規模の拡大が見込まれるバッテリーや燃料電池の評価装置の生産能力を増強しています。さらに、コネクテッド・自動運転車(CAV)の設計から実車検証、衝突安全や予防安全等の車両開発支援まで包括的なサポートを行う開発エンジニアリング機能を増強し、幅広い需要に応えるため事業基盤の強化に取り組んでいます。引き続き、グループ間の情報連携を強化し、諸外国の環境関連規制動向を把握するとともに、環境規制関連以外で使用される製品等、製品群を拡大することで、リスク低減を図っています。

 

② バイオ・ヘルスケア

バイオ・ヘルスケアでは、血球計数装置や理化学用分析装置が主力製品となっています。今後、競争激化や価格競争、官公庁の研究開発予算及び民間企業の研究開発や生産向けの設備投資の動向で需要が増減し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、グループ間の情報連携を強化し、市場要求・競合他社の動向に合わせて新しい製品・事業の拡大を推進するとともに、現地生産を含むローカライズの推進、医薬品開発や製造プロセスといった成長が見込める産業へ、バイオ・ヘルスケアが有する様々な分析・計測技術の投入を強化することでリスクの低減に努めています。

 

③ 先端材料・半導体

先端材料・半導体では、半導体製造装置用の流量制御機器、半導体メーカーにおける品質管理や研究開発サポート機器が主力製品となっています。当社グループでは、半導体市況の変動による影響を低減するため、受注から納品までのリードタイムの短縮や顧客ニーズに迅速に対応する体制作りに取り組んでいますが、半導体及び半導体製造に関わる技術変化や半導体の急激な需要変動による半導体製造装置及び半導体メーカー等の設備投資動向は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、顧客と地理的に近い場所に拠点を置き、顧客の設備投資情報をはじめとする最新情報を収集し、市場ニーズを迅速に取り込んだ開発を強化する体制を構築しています。生産体制においても需要の増減に合わせ、調達を含めた柔軟な対応ができる体制をとることでリスクの低減に努めています。

 

 

 

(2) 全社に関するリスク

① 気候変動に関するリスク

気候変動は世界共通の解決すべき社会課題と考えられており、多くの国や地域で脱炭素やカーボンニュートラルをめざす政策や規制の導入が進むとともに、社会からの要求が増大しています。当社グループはこのような変化を事業機会と捉え、環境変化に対する取り組みを進めていますが、対応が極めて困難な事象が発生する場合や、各国補助金を受けた事業者が主たるユーザーとなる水素等の新エネルギー及びカーボンニュートラルといった領域におけるビジネスについては、補助金の打ち切り等、政策動向によっては事業活動の大幅な見直しや費用の増加等、当社グループの財政状況及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、当社グループが展開する国や地域の情勢や規制動向等を適切に見極め、経営への影響が最小限になるように取り組んでいます。

当社グループが提供する分析・計測ソリューションは、それを活用するお客様が提供するサービスにおいてCO2削減を実現しています。環境汚染の低減や関連規制への対応に貢献する分析・計測技術の発展に取り組み続けており、気候変動に対しても、エネルギー社会の変革という視点を中心に当社独自の技術を展開し、課題解決に向けて積極的に取り組んでまいります。

 

② ビジネスと人権に関するリスク

事業活動を推進する上で、人権への配慮がこれまで以上に求められており、社会からの要求も増大しています。当社グループはもとより人権擁護に努めていますが、予期せぬ事態により人権問題が発生した場合、当社グループの財政状況及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、当社グループは、グローバルでの規範となる「Code of Ethics」を制定しており、その制定にあたり「人権」を重要事項と捉えて、差別の排除・労働の自主性・労働基本権の尊重・救済と再発防止の措置を明示し、社内浸透を図っています。また、国連グローバル・コンパクトへの支持も表明しており、ここで謳われている人権方針と国際的な人権規範も尊重しています。サプライチェーンにおける人権の取り組みについても、人権尊重の指針を示し、人権侵害の未然防止を図っています。

 

③ 情報セキュリティに関するリスク

業務上の人為的ミスや内部不正による情報漏洩、サイバー攻撃による情報の改ざん・破壊・漏洩、各国で整備・強化が進む個人情報保護の法規制に関するリスク等が考えられ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、個人情報保護方針及びセキュリティポリシーを制定し、教育により従業員のセキュリティ意識の向上に努めています。また、情報セキュリティアセスメントを通じて、個人情報・営業情報・技術情報等の機密情報に対してリスクに応じたグローバルな組織的・技術的な安全管理措置を講じています。

 

④ 為替変動に関するリスク

当社グループは世界各国で事業活動を行っていますが、為替相場の変動は連結決算における円貨換算額に影響を与えるため、当社グループの予想の範囲を超えて為替相場が大きく変動した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、進出国の政治経済情勢や金融市場動向等の情報収集に努めています。また、適地調達・適地生産の推進、社内規程に基づく輸出入取引金額の範囲内の為替予約取引等を行っています。

 

 

⑤ 国際情勢に関するリスク

当社グループは世界各国で事業活動を行っていますが、ロシア・ウクライナ、イスラエル・パレスチナの情勢、米中関係の複雑化等、当社グループの事業を取り巻く国際情勢は大きく変化しています。特に海外市場においては、対象市場の経済状況及び製品需給の急激な変動、法律・規制・税制の変更、テロ・戦争等の社会的混乱等のリスクが伴い、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、進出国の政治経済情勢、市場動向、税制、法規制動向等の情報収集に努めています。

 

⑥ 自然災害による設備の破損とそれに伴う納期遅延等のリスク

地震等の自然災害により、製造拠点の設備修復等に多額の費用の発生、営業・生産等の事業活動の停止を余儀なくされることで、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、当社グループではISO22301の認証を自主返上しましたが、自然災害等による事業の中断・阻害に対して、購買先の複数化、在庫の適正化、また生産拠点間での生産の多重化に取り組み、事業継続計画(BCP)の運用が経営と確実に密接に結びついた形で実施され、効果的・効率的・継続的に運用するための体制を整備しています。

 

⑦ 買収や提携に伴う業績や財政状態の変化のリスク

当社グループは、自社の成長や事業の拡大を目的に、企業買収や業務提携を積極的に行っています。しかし、それらの買収・提携による事業展開が当初の計画通りに進まなかった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、買収・提携前のデューデリジェンスを通じてリスクの洗い出しを行っています。また、買収後・提携後には定期的に事業計画と実績との比較・解析を行い事業環境の変化に対応できる仕組み作りを行うと同時に、既存事業との統合等、業務効率の向上に努めています。

 

⑧ 固定資産の減損損失リスク

当社グループが保有する土地・建物等について、時価が著しく下落した場合及び事業の損失が継続するような場合並びに事業の収益性が低下し帳簿価額の全部又は一部を回収できないと判断した場合には固定資産の減損損失の計上により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、投資判断を行う際、その収益性・投資回収予定時期を社内で厳格に精査することに加え、設備投資後は、業績進捗について毎期モニタリングを実施するとともに、業績評価を行っています。また、採算性の悪化が見込まれ、キャッシュ・フローの獲得が期待できない場合には、戦略を立案し、実行することで減損損失の計上リスクの低減を図っています。

 

⑨ パンデミックに関するリスク

感染症拡大によるパンデミックは、営業・生産等の事業活動の停止を余儀なくされることで、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性はあり、リスクが顕在化した際の影響は大きいと認識しています。対応策として、社内においてワクチン接種の実施、感染防止策の励行等、WHOや厚生労働省が発出するパンデミック基準の各フェーズにおける社内や従業員の家庭における対応内容をまとめ、社内に周知しています。また、リモートワークであるGood Place勤務制度も導入しています。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要は次のとおりです。

 

① 経営成績

当社グループの当連結会計年度における経営成績は、円安の進行により欧州や米州での売上高が円換算で増加したことに加え、自動車セグメント、半導体セグメントを中心に販売が増加したこと等から、売上高は317,369百万円と前期比9.2%の増収営業利益は48,340百万円経常利益は50,170百万円、それぞれ前期比2.2%4.0%の増益となりました。また、前年に関係会社株式売却益6,615百万円を計上したことに加え、当連結会計年度に自動車セグメントにおいて、ホリバ・フューエルコン社(ドイツ)に関連する減損損失1,305百万円を計上したこと等から、親会社株主に帰属する当期純利益は33,591百万円と、前期比16.7%の減益となりました。

この間、為替相場を見ますと、当連結会計年度の平均為替レートは、1USドル151.69円、1ユーロ164.05円と、前年と比べUSドル、ユーロともに7.8%の円安になりました。

 

セグメント別の業績は次のとおりです。

 

(自動車セグメント)

日本や米州においてエンジン排ガス測定装置や、MCT(※)事業の販売が増加したこと等から、売上高は93,498百万円と前期比16.3%の増収となりました。利益面では、水素事業において、事業立ち上げに伴う投資が継続した一方で、エンジン排ガス測定装置等の販売が増加した結果、営業利益は1,493百万円と同23.5%の増益となりました。

※ MCT:Mechatronics(自動車計測機器)

 

(環境・プロセスセグメント)

欧州において、環境規制需要の停滞に伴い、大気汚染監視用分析装置の販売が低調であったものの、日本やアジアでのプロセスガス計測機器及び水質計測装置の販売が増加したこと等から売上高は28,194百万円と前期比13.0%の増収となりました。利益面では、欧州での販売減に加え、前年度に買収したアメリカでの産業プロセス計測事業の立ち上げに伴う投資負担等により、営業利益は1,835百万円と同23.9%の減益となりました。

 

(医用セグメント)

円安の進行により売上高が円換算で増加したこと等から、売上高は33,706百万円と前期比3.1%の増収となりました。利益面では、日本での血球計数装置の販売が減少したこと等から、150百万円の営業損失となりました(前期は638百万円の営業利益)。

 

(半導体セグメント)

生成AI関連需要の拡大等を背景に、アジアにおいて半導体製造装置メーカー向けの販売が増加したこと等から、売上高は120,466百万円と前期比6.7%の増収となりました。利益面では、円安の進行に加え、アジアでの販売が増加したこと等から、営業利益は44,178百万円と同8.9%の増益となりました。

 

(科学セグメント)

欧州において、最先端材料分析用途のラマン分光分析装置の販売が増加したこと等から、売上高は41,503百万円と前期比4.7%の増収となりました。利益面では、製品売上構成の変化や、ライフサイエンス市場向け等の新製品開発の加速による研究開発費の増加等により、営業利益は982百万円と同60.0%の減益となりました。

 

 

② 財政状態

当連結会計年度末における財政状態につきましては、総資産は前連結会計年度末に比べ32,585百万円増加し、481,616百万円となりました。現金及び預金や受取手形、売掛金及び契約資産が増加したこと等によります。

負債総額は前連結会計年度末に比べ1,613百万円増加し、166,911百万円となりました。短期借入金が増加したこと等によります。

純資産は前連結会計年度末に比べ30,972百万円増加し、314,704百万円となりました。利益剰余金が増加したことや、円安により為替換算調整勘定が増加したこと等によります。

 

③ キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ13,412百万円増加し、143,963百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とその主な要因は、次のとおりです。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上等により、40,335百万円のプラス(前連結会計年度は16,652百万円のプラス)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、日本等における有形固定資産の取得による支出等により、17,562百万円のマイナス(前連結会計年度は7,315百万円のマイナス)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払等により、15,933百万円のマイナス(前連結会計年度は20,963百万円のマイナス)となりました。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

自動車

93,335

0.5

環境・プロセス

27,371

△1.1

医用

31,830

△12.0

半導体

124,052

△8.7

科学

38,407

△15.0

合計

314,996

△6.8

 

(注)金額は販売価格により算出しています。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前期比(%)

受注残高

(百万円)

前期比(%)

自動車

106,472

24.9

90,731

16.7

環境・プロセス

26,968

△0.1

9,389

△11.5

医用

34,571

3.5

6,714

14.8

半導体

108,353

12.5

43,207

△21.9

科学

41,520

8.3

17,941

0.1

合計

317,886

13.4

167,984

0.3

 

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

自動車

93,498

16.3

環境・プロセス

28,194

13.0

医用

33,706

3.1

半導体

120,466

6.7

科学

41,503

4.7

合計

317,369

9.2

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析、検討内容

経営者の視点による当社グループ経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容は次のとおりです。なお、文中における将来に関する事項については、有価証券報告書提出日(2025年3月31日)現在、入手しうる情報に基づいて当社が判断したものです。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成において採用している重要な会計方針は、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に記載しています。

連結財務諸表の作成にあたって、会計上の見積りを必要とする繰延税金資産、貸倒引当金、製品保証引当金、棚卸資産の評価、固定資産の減損、退職給付に係る会計処理等については、過去の実績や当該事象の状況を勘案して、合理的と考えられる方法に基づき見積り及び判断をしています。ただし、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあるものについては、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しています。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容

a.経営成績等

当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析につきましては「第2事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載しています。

 

b.経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては「第2事業の状況 3事業等のリスク」に記載しています。

 

c.資本の財源及び資金の流動性の分析

当社グループの財務政策は、資産構成に合わせた最適な資金調達を行うことを基本方針としています。事業成長に向けた投資資金需要に対しては、その投資の内容に加え、資本コスト、資金調達環境及び条件、自己資本比率、手許流動性の水準等を総合的に勘案し、長期的な企業価値向上に最も資すると考える方法により対応しています。運転資金需要に対しては内部留保や短期借入等により対応しています。借入については、主に社債の発行や金融機関からの調達です。なお、連結子会社が資金調達を実施する際には、グローバルな資金効率を向上させる観点から、グループ内で資金融通を行う一方、経営規律向上、ガバナンス強化を目的として、金融機関からの借入も実施させています。

 

d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、2028年度を目標年度とする中長期経営計画「MLMAP2028(Mid-Long Term Management Plan 2028)」を2024年2月に策定し、連結売上高4,500億円、営業利益800億円、ROE(自己資本当期純利益率)12%以上をめざしています。

当連結会計年度における経営成績は、自動車セグメントを中心に販売が増加し、売上高は3,173億円営業利益は483億円、ROE(自己資本当期純利益率)は11.3%となりました。MLMAP2028達成に向けて、引き続き諸施策を推し進めます。達成に向けた施策及び当連結会計年度における取り組みにつきましては、「第2事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題」に記載しています。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は22,980百万円であり、報告セグメントごとの研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は次のとおりです。

 

(1) 自動車セグメント

当連結会計年度には、欧州次期排ガス規制Euro 7に対応した、可搬型排ガス分析計測システムを開発し、2025年に上市を予定しています。当社独自の赤外線分析技術IRLAMを搭載することで、実路のみならずラボでも高精度測定が可能となりました。また、水素・アンモニア・バイオ燃料といったカーボンニュートラル燃料の排ガスにも対応することで、自動車だけでなく多様な次世代モビリティ開発にも貢献します。車両エンジニアリングの分野では、ホリバMIRA社(イギリス)において、自動車安全性評価のEuro NCAP(欧州新車アセスメントプログラム)要求を満たすPassive Safety(衝突安全性能)評価施設が本格稼働しました。本施設は、イギリス初となるMPDB(前面衝突)試験認証を取得しており、お客様の多様なニーズに応じた車両開発支援を強化します。

当セグメントに係る研究開発費は5,895百万円です。

 

(2) 環境・プロセスセグメント

当連結会計年度には、微量なガス成分を長期間安定稼働で計測可能な新微量ガス分析計を上市しました。大気環境・モビリティ・半導体・製薬等各種分野の微量ガス分析に貢献します。水質計測分野においては、上水関連規制の主要7項目を高精度に測定可能な自動水道水質測定装置を上市しました。モジュール式水質計を採用し、分析計の校正・交換作業を効率化したことに加え、専用アプリケーションの開発により、遠隔操作の利便性を向上させました。人手不足解消等働き方改革の推進に貢献し、お客様の様々な計測ニーズに対応します。

当セグメントに係る研究開発費は2,235百万円です。

 

(3) 医用セグメント

当連結会計年度には、全血1滴で糖尿病や感染症の診断サポートに貢献する遠心方式血液分析装置を国内市場向けに開発し、2025年に上市を予定しています。本製品は従来製品よりもヘモグロビンA1cの測定時間を短縮し、ユーザーの利便性を向上させました。また、アジア市場における動物血球計数装置市場の活性化に向けて、動物用自動血球計数装置を開発し、上市しました。当社グループ機器の稼働状況を見守るリモートモニタリングサービスにおいては、適用製品を拡充しました。高い品質と幅広いサービスを提供することで、医療従事者の負担減に寄与し、迅速で信頼性の高い医療サービスに貢献します。

当セグメントに係る研究開発費は3,233百万円です。

 

(4) 半導体セグメント

当連結会計年度には、半導体製造装置におけるフットプリント削減に貢献する超薄型マスフローモジュールや、エッチングプロセスの終点検知性能を向上したレーザーガス分析計を開発し、上市しました。また、ウエハやフォトマスクの薄膜分析自動化のニーズに応え、ウエハの膜厚、光学特性、組成、結晶化度、欠陥等の重要パラメーターを計測・検知する全自動薄膜検査装置を上市しました。半導体製造におけるウェットプロセス向けでは、薬液中に含まれる微量成分を前処理なしで検出可能な薬液モニタリングシステムを上市しました。大学や研究機関等、アカデミアとの共同研究を通じて要素技術開発も継続投資しています。

当セグメントに係る研究開発費は6,660百万円です。

 

(5) 科学セグメント

当連結会計年度には、主に研究開発・品質管理用途で使用されてきた理化学分析技術を、生産工程における状態監視モニタリングへ適用する開発に注力し、燃料電池・水電解装置部材の触媒塗布モニターや、ラマン分光、微小粒子径分布測定モニターの開発に注力しました。高機能汎用装置については、半導体・二次電池・医薬品等の幅広い分野で活用できるレーザー回折や、動的画像方式を1台に標準搭載した粒子径・形状解析装置を開発し、2025年に上市を予定しています。ライフサイエンス分野では、細胞の状態観察等に用いられる蛍光寿命イメージング装置を開発し、2025年に上市を予定しています。グループ内に保有する多くのコア技術を活かし、フランス、アメリカ、日本の各拠点で連携しながら技術・装置開発を加速させています。

当セグメントに係る研究開発費は4,954百万円です。