(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、株主様、お客様・お取引先様、社員とその家族、地域社会、地球という5つの存在が当社グループを支えていただく主体であると認識し、当社グループとの間に「信頼」を築き上げていくことを企業使命として、これに基づき企業価値向上を目指すことを経営の基本方針としております。
(2) 経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
今後の経済見通しにつきましては、世界の景気は回復傾向にあるものの、地政学的な緊張、米国の貿易政策による物価上昇やデカップリングの進行等により、先行きは引き続き非常に不透明感が強い状況にあります。
当社グループの属する電子部品業界におきましては、カーボンニュートラルの実現に向けて環境対応車への移行が進んでおり、中長期的には自動車向け市場の拡大が見込まれますが、足元では自動車向けの需要は堅調に推移する一方、産業機器向けは立ち上がりが鈍く回復が遅れる等、次期の受注動向に対しては慎重な見方が必要であります。利益面においても、原材料価格の上昇、為替変動等の懸念材料があります。
このような経営環境下において当社グループは、2030年に向けた長期ビジョン、『2030ビジョン』を策定しております。
さらに、当社グループでは『2030ビジョン』を実現するために当社グループが対処すべき経営上の重要課題を「マテリアリティ」と定義し、機会とリスクの両面から次の通りマテリアリティを特定しました。これらマテリアリティへの取組みを通して経済的価値(事業)と社会的価値(ESG)の創出を目指します。
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カテゴリー |
マテリアリティ |
取組テーマ |
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環境 |
CO2削減と経済性の両立 |
デジタルツールを活用し製品・設備の両面から生産性を向上 Scope1+2とScope3のGHG排出量を削減 |
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社会 |
未来を創る人材の確保と育成 |
多様性の向上 |
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自律的なキャリアの支援 |
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社員が生き生きと働ける環境の整備 |
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人財ポートフォリオの構築 |
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地域社会との連携による価値の創造 |
将来にわたる地域の活性化とKOAの発展の好循環の実現 |
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ガバナンス |
ガバナンス強化によるグループ経営基盤強化 |
グループ全体での情報セキュリティの強化 |
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株主・投資家と企業との建設的な対話の実現 |
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事業 |
自社の基盤技術を核とした、社会課題の解決に向けた価値提供 |
技術環境・産業構造の変化への対応 |
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事業ポートフォリオ経営の強化 |
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顧客との信頼関係の強化 |
B2B事業における信頼性・専門性・差別化要素の強化 |
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強靭でフェアなサプライチェーンの構築 |
グローバル供給体制の最適化 |
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お取引先様との信頼の強化 |
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経済安全保障対策 |
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製品の安全性と品質の追求 |
また、2022年度から2024年度の3年間の中期経営計画を実行してまいりました。この中期経営計画は2030ビジョン実現に向けた当社グループの挑戦におけるフェーズ1「確実な成長のための基盤づくり」と位置付けており、重点施策である「2030年に向けた供給体制の構築」、「KPS※の『しんか』」、「イノベーション・マネジメントシステム(IMS)の導入」、「再生可能エネルギーの導入と電力使用量の削減」、「未来を創造する人づくり」、「ガバナンスの新たな取り組み」に注力してまいりました。2025年度よりフェーズ2にあたる次期中期経営計画(2025-2027)を開始するための準備を進めてまいりましたが、米国関税政策起因による世界景気への影響により先行きが非常に不透明であることから、数値目標を含め中長期戦略の再検討を行っており、開示を延期しております。
※KPS(KOA Profit System) = 全員参加の経営改善活動
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
エレクトロニクス業界は、CASE(Connectedコネクテッド、Autonomous自動運転、Shared & Servicesシェアリングとサービス、Electrification電動化)をキーワードに進化する自動車分野における技術革新に代表されるように、更なる市場の発展が見込まれる一方、国際的な価格競争力、製品品質と信頼性、顧客への技術提案力に加えて、将来にわたり安定した製品供給ができる企業が求められております。
このような業界のなかで当社グループは、今後も抵抗器事業を中心に、品質と信頼性を重視する分野にフォーカスし、お客様と共に安心・安全な未来の社会を創る活動を進めることで、お客様から最初にお声がかかる会社を目指します。また、抵抗器事業で培った基盤技術を活用したセンサ/センサモジュールなどにより、社会課題の解決に取り組んでまいります。
具体的には、カーボンニュートラル実現に向けた自動車メーカーの電動化戦略が加速しており、当社の主力製品である面実装抵抗器の需要が拡大することから、お客様の成長を支えるための供給体制の構築を進めてまいりました。足元では上記のような市場環境の変化がありますが、「ゼロディフェクト・フローの構築」を目指した品質・信頼性の向上やデジタル技術を活用した劇的な生産性の向上、顧客ニーズを先読みしたデザインイン活動からの新製品提案などの競争優位性をさらに磨き上げ、積極的な拡販およびコスト構造の変革を実践してまいります。
(1) ガバナンスとリスク管理
当社では、企業倫理の重要性を認識し、かつ経営の健全性向上を図ることを目的として、より一層株主価値を重視したコーポレート・ガバナンスの構築に取り組んでおります。経営上の意思決定、執行及び監督にかかる経営管理組織その他のコーポレート・ガバナンス体制は次のとおりであります。
当社は、2025年6月21日開催予定の定時株主総会の議案(決議事項)として「取締役12名選任の件」を提案しており、当該議案が承認可決されますと、取締役は引き続き12名(うち5名は社外取締役)で構成されることになります。また、直後に開催される取締役会において執行役員を選任し、執行役員会は8名となる予定であります。
当社グループのリスクマネジメントは、当社グループに物理的、経済的もしくは信用上の損失または不利益を生じさせるすべての可能性(リスク)を積極的に予見し、適切に評価するとともに、最小のコストで最良の結果が得られるよう、機会損失の低減やリスクの回避・軽減及び移転その他必要な措置を事前に講じるよう取り組んでいます。あわせて、物理的、経済的もしくは信用上の利益を生じさせるすべての可能性(機会)についても同時に把握・評価し、対応を行っています。
KOAグループの全社的な機会とリスクを管理するため「リスク管理委員会」を設けています。委員長を社長執行役員とし、執行役員と委員長が指名したメンバーで構成されています。リスク管理委員会は、年2回開催しており、経営の重点テーマとなる機会とリスクの特定(見直し・更新)、対応方針の決定、活動進捗のモニタリングを実施しています。委員会で特定されたサステナビリティ関連を含む機会とリスクへの対応策は経営の重点テーマとして取締役会に報告され、中期経営計画などの経営方針・経営戦略の立案や見直しに反映しています。マテリアリティ評価の結果、気候変動および人的資本の重要性が高いため、(2)、(3)にて開示いたします。
(2) 気候変動への対応
近年、世界中で異常気象や自然災害による被害が甚大化し、気候変動への対応は企業経営の大きな課題となっています。当社は、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures : TCFD)提言に準じて、気候変動が当社の活動に影響を及ぼす気候変動の財務上の影響について分析を行い、リスクの低減と機会の獲得のための対応を進めています。
① ガバナンス
取締役会の監督のもと、委員長を社長執行役員とし、執行役員と委員長が指名したメンバーで構成されたリスク管理委員会において気候変動を含むリスクと機会を特定しています。委員会で特定された機会とリスクへの対応策は経営の重点テーマとして取締役会に報告され、中期経営計画などの経営方針・経営戦略の立案や見直しに反映しています。
あわせて、連結経営戦略会議の中で年2回環境委員会を開催し、関係部門や各拠点の責任者も参加して、目標進捗・設定及び脱炭素に向けたアクションを審議しています。
② 戦略
ⅰ.シナリオ分析
a.シナリオ分析の前提
当社は、気候変動が将来にわたって与えるリスク・機会とその影響を評価し、リスクへの対応策の柔軟性と戦略のレジリエンスを高めることを目的に、段階的にシナリオ分析に取り組んでいます。
シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照し、パリ協定の目標である「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること」を想定した1.5℃シナリオ、および、不十分な気候関連政策・規制により気温上昇幅が最大となる3℃シナリオの2つのシナリオを想定しています。
その上で、事業環境に関わる重要なトレンド(自然環境や社会の変化、技術革新など)を踏まえた影響要因を抽出し、TCFD提言に沿って移行リスクや物理リスク、気候変動への対応による機会を特定しました。
参照した既存シナリオ
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1.5℃シナリオ |
「Net‐Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)」(IEA、2022年) |
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「Representative Concentration Pathways(RCP2.6)」(IPCC、2014年) |
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3℃シナリオ |
「Stated Policy Scenario(STEPS)」(IEA、2022年) |
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「Representative Concentration Pathways(RCP8.5)」(IPCC、2014年) |
b.シナリオ分析の結果
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KOAとしての重要事項 |
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環境規制 |
技術革新 |
地域・社会分断 |
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社会状況とKOAへの影響 |
1.5 ℃シナリオ |
・環境規制が高まり、自社・サプライチェーンの規制が強化され、再エネ需要拡大やEV移行も進む。 [機会] ・環境対応車関連部品の売上増加 ・再エネ関連機器向け部品売上増加 [リスク] ・自社・サプライチェーンへの炭素税による事業運営(製造・原料調達)コストの増加 ・EV移行に伴う中国国籍企業の販売割合拡大による日本製品の売上減少 |
・創エネ・蓄エネ・省エネを中心に革新技術が次々と導入される(例:水素・蓄電池)。 [機会] ・エネルギー関連機器向け部品売上増加 ・再エネ普及・価格低下による自社・サプライチェーンの脱炭素化コスト減少 [リスク] ・希少資源の需要増加による再エネ関連資材の調達コスト増加 |
・国際的な分断の中で環境対策が進んだ場合、過度な国境炭素税の導入などが想定される。 [機会] ・激甚災害減少による自社のBCP対策コスト減少 [リスク] ・非効率な規制対策コスト(移行リスク)の増加 |
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3℃シナリオ |
・不十分な対策による激甚災害の多発。加えて、水資源の利用に対する制限も生まれる。 [機会] ・BCP関連機器向け部品売上増加 [リスク] ・サプライチェーン断絶リスクに備えたBCP対策コスト増加 ・取水制限に伴う操業停止による売上減少 |
・エネルギー関連の既存技術が残り、再エネ新技術の普及・開発が遅れる。 [リスク] ・再エネ調達が困難になり自社脱炭素化コストの増加 |
・国際的な分断から、対応策が遅れて激甚災害が増加する。 [リスク] ・自社のBCP対策コスト増加 |
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シナリオ共通影響 |
- |
・CASE技術の進展やトリリオンセンサ社会への転換の中で、デジタル機器の需要が増加する。 [機会] ・車載センサなどの関連機器向け売上増加 [リスク] ・加速度的な技術革新による研究開発コスト増加 |
・国際的な分断が進んだ場合は経済成長が停滞する一方、国際協調が達成できた場合、南アジア・アフリカを含む世界全体での経済が成長する。 ・国内でも、地方部の発展が達成された場合、地方企業でも人材・競争力が確保できる。 [機会] ・南アジア・アフリカなどでの市場発展で売上増加 ・国内地方発展に伴う競争力確保で売上増加 [リスク] ・デカップリングによる市場縮小で売上減少 ・国内都市集中に伴う地方の人材不足により、競争力が低下し売上減少 |
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ⅱ.当社事業に重大な影響を及ぼすリスクと機会
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種別 |
概要 |
影響の時間軸 |
影響額 |
対応 |
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リスク |
[物理的リスク:緊急性] 生産拠点の豪雨災害による道路の寸断、サプライチェーンの物流停止に伴う売上高減少 |
短期 |
6億~19億円 長野県南部の生産規模(約50%)・復旧期間1~3週間と想定 |
製品の複数拠点生産によるリスク分散 |
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[移行リスク:規制] エネルギーコスト増加、燃料調整費や再エネ賦課金など社会システム上避けられない負担の増加 |
中期 |
1億~4億円/年 炭素税($50~$150/t)が導入されることを想定 |
拠点ごとに最適な省エネ・創エネ施策の推進 |
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機会 |
車の電動化による抵抗器の搭載数量の増加、ADASの拡大による高精度抵抗器の大幅な需要増加 |
中期 |
次期中期経営計画策定プロセスにおいて検討中 |
2030年に向けた供給体制を構築(生産能力の拡大) |
影響を受ける時間軸は、 短期:0~3年、中期3~10年、長期10~30年程度と想定しています。
③ リスク管理
リスク管理委員会が実施する機会とリスクの管理プロセスにおいて、重要性評価や対応状況のモニタリングを実施しています。
④ 指標・目標
当社は、2030ビジョン実現のためGHG(温室効果ガス)排出量の削減に取り組み、カーボンニュートラル社会を実現し、地球との共生を目指しています。この取り組みの基本方針として、「カーボンフリー製品の実現に挑戦する取り組みを通じて、5つの主体との信頼関係を構築する」を掲げ、サプライチェーン全体のGHG排出量の削減、ガバナンス体制の強化、積極的な情報開示などに取り組んでいます。
2024年度の実績は以下の通りとなる見通しです。
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2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
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Scope1 (t-CO2) |
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Scope2 (t-CO2) |
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(3) 人的資本
当社の人材に関する基本的な考え方は以下のとおりで、主にKOA単体での取組みとなります。
(戦略)
「人材育成方針」
当社は、「人こそが持続的成長の源泉である」との考えのもと、経営戦略の実現に向けた人材戦略を人的資本経営の中核に位置付けています。以下の4つの経営課題に対応した人材育成を推進することで、組織の競争力と社会への価値提供力を高めてまいります。
1.新製品・新事業の事業化加速
─ 仮説立案・検証力の強化を目的としたイノベーション人材の育成、ならびに高度専門人材の獲得と育成に注力します。産学官との連携も推進し、先端技術・知見の社内展開を図ります。
2.成長市場へのビジネス拡大
─ DX推進・KPS改善を牽引できる人材の育成を通じて、業務革新およびグローバル市場への対応力を高めます。専門性と実践力を併せ持つ人材を継続的に育成します。
3.組織力の向上
─ 適所適材の実現に向けた人材ポートフォリオの見直しと、次世代リーダー育成を推進します。あわせて挑戦を評価する新たな人事制度の定着により、社員の成長と組織パフォーマンスの向上を目指します。
4.働きがい・多様性の実現
─ 多様な人材が活躍できる環境整備を進め、特に女性管理職比率の向上を重要目標として取り組んでいます。グローバル人材の採用・育成にも注力し、多様性と包摂性のある職場文化の醸成を進めます。
当社は今後も、全ての社員が自律的に成長し、挑戦できる環境を整備することで、「未来を創造する人づくり」を強化し、持続可能な企業価値の向上に取り組んでまいります。
「社内環境整備の方針」
当社は、すべての社員が多様な個性を活かし、最大限の能力を発揮できるよう、以下の整備に取り組みます。
1.柔軟な働き方
―社員の能力向上や能力発揮につながる柔軟な働き方の制度として、資格取得支援・フレックスタイム制度の導入や副業・在宅勤務・短時間勤務制度等の見直しを推進します。
2.心理的安全性の高い職場づくり
―エンゲージメントサーベイ、ハラスメント防止研修や1on1ミーティングを通じて、誰もが安心して意見を言え、失敗を恐れず挑戦できる職場環境を目指します。
3.ダイバーシティ推進
―性別・年齢・国籍・障がいの有無などに関係なく、多様な価値観を受け入れ誰もが活躍できる環境を整える取り組みを推進します。
4.健康で安全な労働環境
―社員の健康を守る健康経営と職場環境の改善により、安全に働ける職場づくりを推進します。
これらを通じて、社員の自律と挑戦を後押しし、企業価値の持続的向上を実現します。
(指標・目標)
人材育成の更なる強化のため、2024中期経営計画期間中の人材開発・育成への投資額は、2021年度実績額を100として、2024年度までに200へ増やしていく目標を置き、毎年新しい研修の開催や参加者数の増加への取り組みを強化してまいりました。しかし2024年度は業績悪化の影響を考慮し、止む無く一部の研修開催を抑制する措置を取らせていただきました。その結果、2021年度比で196と目標値に対し概ね達成の結果となりました。
社員の働きがいや挑戦の進捗を図るための指標として、社員エンゲージメント・レーティング※1を導入しています。2025年3月期の目標をBB(52以上)と置き、職場内のコミュニケーションを高める等の活動を進めてまいりましたが、残念ながら目標値には届かない結果となりました。このエンゲージメント調査の結果を通じて、経営課題を再確認し、解決に向けて取り組むことで、社員が働きがいをもって仕事に取り組む環境を整えてまいります。
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ESG |
項目 |
2022年3月期 実績 |
2023年3月期実績 |
2024年3月期 実績 |
2025年3月期実績 |
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Society 人的資本 (KOA単体) |
・ ・ |
CCC(47.1)
100 |
B(49.7)
167 |
B(49.2)
173 |
CCC(
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(注)提出会社を対象範囲としているため、連結子会社は含んでおりません。
※1 株式会社リンクアンドモチベーションの「モチベーションクラウド」によるエンゲージメント・レーティング。KOA株式会社(単体)の全社員。AAA~DDの全11段階に分かれており、「CCC」は上1から7番目。
※2 2022年3月期を100とした場合の比較数値。
2025年度は多様な人材が活躍する環境を整えるため、2027年3月末までに課長級以上の管理職に対する女性管理職比率を3%とする目標を掲げました。今後、女性活躍推進に向けて社内環境の制度整備とともに社員への気づきの機会を数多く提供し、多様な人材が力を発揮できるように取り組んでいきます。
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ESG |
項目 |
2025年3月期 実績 |
目標 |
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Society 人的資本(KOA単体) |
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(注)提出会社を対象範囲としているため、連結子会社は含んでおりません。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等に与える定量的な影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。
当社は、グループのリスク管理について、全社的な機会とリスクを管理するため、リスク管理規程に基づき、リスク管理委員会を設けています。委員は、これまで全ての取締役と互選により選出された委員長が指名したメンバーで構成されておりましたが、2025年1月より、執行役員および社長執行役員である委員長が指名したメンバーで構成するように変更いたしました。リスク管理委員会は、年2回開催しており、経営の重点テーマとなる機会とリスクの特定(見直し・更新)、対応方針の決定、活動進捗のモニタリングを実施しています。委員会で特定された機会とリスクへの対応策は経営の重点テーマとして取締役会に報告され、中期経営計画などの経営方針・経営戦略の立案や見直しに反映しています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 海外展開について
当社グループは、市場のグローバル化に対応して生産及び販売拠点を海外に展開しております。このため、進出国の経済動向及び政治・社会情勢に変化が起こった場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、経済安全保障をはじめとする輸出入規制や外貨規制、米国貿易政策の変更、法令・税制等の変更など予測できない事態が発生した場合も当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、移転価格税制に基づく課税リスクへの対応として、グループ内に移転価格ポリシーを導入の上、税務の専門家を利用してグループ内の移転価格税制に係る文書を作成し当該リスクの低減に努めております。
(2) 原材料について
当社グループは、調達先の分散やお取引先様との信頼関係の構築等により安定的に原材料を調達できるように努めておりますが、調達先の生産活動・サプライチェーンが、紛争や自然災害・事故の発生あるいは法律・規制の予期しない変更等の要因により停止される場合や、調達先の事業運営上のトラブル、事業性判断等の都合により生産中止となる場合、原材料の安定調達が困難となり顧客への供給責任を果たせず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 自然災害やパンデミック、紛争等の発生について
当社グループの一部の製品は世界の複数拠点で生産するなどの一定のリスク分散が図られておりますが、地震・洪水等の大規模な自然災害やパンデミック、紛争等の発生により、当社の営業拠点や生産拠点の使用が困難な状況になり、あるいは従業員の多くが被害を受けた場合や交通網の遮断・エネルギー供給の停止・通信の不通などにより、営業活動の混乱や生産の遅延・停止等を受けて当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 人材について
当社グループは、社員・家族との間に信頼関係を構築することを企業ミッションの一つとする中で人材の採用と育成を行っております。事業計画の達成やイノベーションへのチャレンジのために社員一人ひとりが信頼しあったチームワークの中で自分の力を精一杯出し切り、仕事の充実感を味わいつつ目標を達成していける職場環境を目指しております。また、多様な社員が適所適材で活躍し、能力を発揮してもらうために、年齢・性別・場所に限定されずに働ける職場環境整備や制度改訂を進めております。しかしながら少子高齢化や人材の流動化、人材の採用・育成が不十分である場合や、多様性を重要な意思決定に活かすことができない場合、経営戦略の実行力不足・イノベーションの停滞などにより競争力を失い、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) サイバーセキュリティについて
コンピューターウイルスの侵入や高度なサイバー攻撃等により、情報漏洩や改ざん、システム停止等の被害を受けるリスクがあります。これに対して当社グループは、サイバー攻撃に対してハードウエアの装備と機密情報の保護のための全社的な研修の実施、情報の機密性・完全性・可用性を維持・向上することを目的とした「情報セキュリティ委員会」の設置等により情報セキュリティの確保に取り組んでおりますが、このような事態が発生した場合は、追加対応や損害賠償等の多額の費用負担により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 競争力の低下について
当社グループは事業を展開する市場において激しい競争にさらされており、電子部品の製品価格が低下する傾向にあります。当社グループでは価格低下に対して新製品の投入並びにコスト削減等により利益の確保に努めておりますが、競争の更なる激化が予想され、新製品のリリースが遅延した場合や、コスト削減が実現できなかった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、製品価格が大きく下落する場合は棚卸資産の評価損を計上する可能性があります。また、業績の悪化により有形固定資産の減損の要否の判定が行われた場合に、その結果として減損処理を行う可能性があります。
(7) 製品の欠陥について
当社グループは、「Quality 1st」を経営方針のひとつとして掲げ、「ゼロディフェクト・フローの構築」に向けた改善活動を進めておりますが、万一製品の欠陥により市場クレームやリコールなどの重大な問題が発生した場合、多額の損害賠償金の支払いや売上の減少等が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 為替レートの変動について
当社グループは、生産及び販売拠点を海外に展開しているため各国での外貨建て取引があります。このため、為替変動リスクに関しては為替予約を締結する事によりリスクを最小にする努力を行っておりますが、為替の大幅な変動により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 棚卸資産について
当社グループの棚卸資産は、生産拠点においては受注生産を基本にリードタイム短縮を図り棚卸資産の削減に努めております。一方で、供給責任を果たすための同一品目の複数拠点生産推進による生産移管時の仕掛品や、災害時における事業継続に備えるための原材料など、目的を持った在庫は増やしてきております。
また、お客様の短納期要求に対応するため、主に海外の販売拠点においては製品在庫を保有しておりますが、今後のお客様の需要回復に備えるために、近年は適正在庫量を増加させております。
このような在庫の増加については、生産、販売の拠点ごとに棚卸回転率による管理や、リスクの変化による適正在庫量の見直しを徹底しておりますが、予想を超える急激な環境変化により、保有在庫の中に販売が見込まれない在庫が発生した場合は、棚卸資産の評価損を計上する可能性があります。
(10) 経済状況について
当社グループは、売上高の9割以上を電子部品が占めております。電子部品は家電等の民生機器や自動車、産業機器等の幅広い分野で使用されているため、特定業界の景気動向による影響を受けにくい傾向にありますが、景気変動に伴う個人消費や企業の設備投資の動向が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの主力製品である抵抗器において、自動車向けの販売比率が高まってきており、自動車の販売台数や技術動向の変化による当社グループへの影響について注視が必要です。
(11) 気候変動について
近年、世界中で異常気象や自然災害による被害が甚大化し、気候変動への対応は企業経営の大きな課題となっています。当社グループでは、気候関連財務情報開示タスクフォース提言に準じて、気候変動がグループの財務に及ぼす影響について分析を行い、リスクの低減と機会の獲得のための対応を進めています。当社グループ事業に重大な影響を及ぼす主なリスクは、物理的リスクとして、生産拠点の豪雨災害による道路の寸断、サプライチェーンの物流停止に伴う売上高の減少、移行リスクとして、エネルギーコスト増加、燃料調整費や再エネ賦課金などの社会システム上避けられない負担の増加などがあります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社、連結子会社及び持分法適用会社(以下、「当社グループ」という。)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、個人消費の回復やインフレ率が低下しつつあるものの、地政学的な緊張、金融および貿易政策の変化など依然として先行きが不透明な状況が続いております。
当社グループの属する電子部品業界におきましては、カーボンニュートラルの実現に向けて環境対応車への移行が進んでおり、中長期的には自動車向け市場の拡大が見込まれます。当期においては全体として需要は横ばいで推移しました。
このような環境のもと、当社グループは2030ビジョンの実現、2024中期経営計画の目標達成に向けて、EVなどのモビリティ市場・産業機器市場の成長を支えるための供給体制の構築、KPS活動の『しんか』、イノベーション・マネジメントシステムの導入、再生可能エネルギーの導入と電力使用量の削減、未来を創造する人づくりやガバナンスの新たな取り組み等の重点施策に注力してまいりました。
販売面におきましては、為替が円安傾向にあり、また中国、欧州、北米の自動車向けが堅調に推移したものの、産業機器向け等が減少したこと等により、当連結会計年度の売上高は64,120百万円(前年同期比714百万円減、1.1%減)、利益面におきましては、経費削減に努めましたが売上の減少や減価償却費等の固定費の増加等により営業利益1,176百万円(前年同期比2,137百万円減、64.5%減)、経常利益1,243百万円(前年同期比3,242百万円減、72.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益260百万円(前年同期比2,508百万円減、90.6%減)となりました。
セグメントの経営成績は、日本においては売上高51,638百万円(前年同期比72百万円増)、セグメント損失1,056百万円(前年同期比1,489百万円減)、アジアにおいては売上高33,786百万円(前年同期比1,317百万円増)、セグメント利益1,393百万円(前年同期比86百万円増)、アメリカにおいては売上高10,962百万円(前年同期比357百万円減)、セグメント利益248百万円(前年同期比366百万円減)、ヨーロッパにおいては売上高12,125百万円(前年同期比174百万円増)、セグメント利益473百万円(前年同期比51百万円減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ4,366百万円減少し、当連結会計年度末には24,799百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動により増加した資金は8,101百万円(前連結会計年度は7,089百万円の増加)となりました。主な増加要因は、税金等調整前当期純利益1,253百万円の計上、減価償却費5,860百万円の非資金項目の調整等によるものです。主な減少要因は、法人税等の支払741百万円等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動により減少した資金は23,939百万円(前連結会計年度は17,399百万円の減少)となりました。主な減少要因は、有形固定資産の取得による支出25,072百万円等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動により増加した資金は11,252百万円(前連結会計年度は12,292百万円の増加)となりました。主な増加要因は、長期借入れによる収入13,270百万円等によるものです。主な減少要因は、配当金の支払額1,847百万円等によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
日本 |
44,260 |
92.4 |
|
アジア |
19,252 |
114.3 |
|
アメリカ |
85 |
46.5 |
|
ヨーロッパ |
- |
- |
|
合計 |
63,598 |
98.0 |
(注)1.金額は、販売価格によっております。
2.上記の金額には、商品仕入を含んでおります。
b. 受注実績
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
日本 |
19,651 |
113.4 |
4,505 |
92.0 |
|
アジア |
20,718 |
112.9 |
3,296 |
92.3 |
|
アメリカ |
10,816 |
105.1 |
1,703 |
92.3 |
|
ヨーロッパ |
12,278 |
100.8 |
997 |
118.3 |
|
合計 |
63,465 |
109.2 |
10,502 |
94.1 |
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
日本 |
20,043 |
93.4 |
|
アジア |
20,995 |
104.4 |
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アメリカ |
10,958 |
96.9 |
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ヨーロッパ |
12,123 |
101.4 |
|
合計 |
64,120 |
98.9 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の当社グループの資産は、有形固定資産等の増加により、前連結会計年度末と比べて11,798百万円増加し、当連結会計年度末は141,365百万円となりました。
当連結会計年度の負債は、長期借入金等の増加により、前連結会計年度末と比べて12,261百万円増加し、当連結会計年度末は63,255百万円となりました。
当連結会計年度の純資産は、利益剰余金等の減少により、前連結会計年度末と比べて463百万円減少し、当連結会計年度末は78,110百万円となりました。
売上高は、64,120百万円(前年同期比714百万円減、1.1%減)となりましたが、この要因としましては、アジアでは、2023年度に落ち込んだ中国における需要が、自動車、電源、通信・ネットワーク向け等で好調となり、5%の増加となりました。日本では、産業機器、電源、自動車向けを中心に、全般的に需要が低迷し、9%の減少となりました。北米では、約5%の為替の円安効果に加えて、自動車向け需要の増加が見られましたが、代理店や産業機器市場における在庫調整影響が大きく、全体では3%の減少となりました。ヨーロッパにおいても、北米と同様に約4%の為替の円安効果に加えて、自動車向け需要が堅調に推移しましたが、産業機器向け需要が減速したことから、全体では1.5%の増加に留まりました。
利益面におきましては、営業利益は1,176百万円(前年同期比2,137百万円減、64.5%減)となりましたが、この要因は、受注の伸び悩みに対し、費用圧縮に努めましたが、増産投資による減価償却費や研究開発拠点新設による研究開発費の増加等、固定費が増加したこと等によるものと分析しています。経常利益は、1,243百万円(前年同期比3,242百万円減、72.3%減)となりましたが、この要因は前述の営業利益の減少によるものと分析しています。親会社株主に帰属する当期純利益は、260百万円(前年同期比2,508百万円減、90.6%減)となりましたが、この要因は、法人税等992百万円を計上したことによるものと分析しています。
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等として、当社グループは、ROE(自己資本利益率)4.1%以上を目標値とした(2024年4月24日に当初目標値11%以上から修正)2025年3月期を最終年度とする中期経営計画を策定し、高品質・長期信頼性を重視する市場を中心に、高機能製品を提供し継続的に競争力を高めるとともに、イノベーションの動向を予測し、そこで必要とされる技術や製品開発に経営資源を投入し、お客様と共に新たな価値を創造する活動を進めてまいりました。しかしながら、当連結会計年度におけるROEは0.3%(前年同期比3.3ポイント悪化)となりました。中期経営計画の目標値未達、また前連結会計年度と比較して指標が悪化した要因としましては、前述の通り売上高と営業利益が悪化したことによるものと分析しています。引き続き高品質・長期信頼性を重視する市場を中心に、高機能製品の拡販等の活動を進めるとともに、お客様の成長を支えるための供給体制を構築し、当該指標の改善を目指してまいります。
② キャッシュ・フローの状況分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。当社グループの研究開発費は営業費用の一部として計上されていますが、研究開発に携わる従業員の人件費が主要な部分を占めています。研究開発費については、前連結会計年度の3,195百万円と比較し380百万円(11.9%)増加し、3,576百万円となりました。また、当社グループの投資資金需要のうち主なものは、注力する製品の生産能力拡大、新製品の開発、国内外の製造拠点での品質や生産性向上等のための設備投資です。当連結会計年度の設備投資額は、前連結会計年度の17,835百万円と比較し、7,675百万円(43.0%)増加し、25,510百万円となりました。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。このため、当社グループの運転資金及び設備投資資金は、主として自己資金により充当し、必要に応じて金融機関からの借入れによる資金調達を実施することとしています。設備投資に充当する資金調達の一環として、複数の金融機関との間でシンジケートローン契約を締結し借入れを実施しておりますが、これらの借入金について、営業活動から得られるキャッシュ・フローによって十分に完済できるとともに、引き続き今後の成長に必要となる資金を適切に調達することが可能であると考えています。また主要な取引金融機関とは良好な取引関係を維持しており、安定的な資金調達が適時実施可能と認識しています。なお、当社は資金調達の機動性を高めるため、複数の金融機関との間に1,900百万円の借入枠(コミットメントライン)を設定しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
a. 貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒損失に備えるため、一般債権については過年度実績率を基礎とした将来の貸倒予測率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しています。将来、顧客の財政状態が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。
b. 退職給付債務の算定
当社グループは確定給付制度を採用しております。退職給付債務及び勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、昇給率、期待運用収益率等の様々な計算基礎があり、当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
c. 繰延税金資産
繰延税金資産については、将来の課税所得等を検討し、回収可能な範囲において資産計上しております。しかしながら、将来の課税所得等を検討し、繰延税金資産の全部または一部を将来回収できないと判断し法人税率が引き下げられた場合、繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。
d. 投資有価証券の減損処理
当社グループでは投資有価証券を保有しており、評価方法は市場価格のない株式等以外のものについては時価法を、市場価格のない株式等については原価法を採用しております。保有する有価証券につき、市場価格のない株式以外のものは株式市場の価格変動リスクを負っていること、市場価格のない株式等は投資先の業績状況等が悪化する可能性があること等から、合理的な基準に基づいて投資有価証券の減損処理を行っております。
当社グループでは投資有価証券について必要な減損処理をこれまでに行ってきておりますが、この基準に伴い、将来の市況悪化または投資先の業績不振等により、現状の簿価に反映されていない損失または簿価の回収不能が発生し、減損処理が必要となる可能性があります。
「ローン契約と社債に付される財務上の特約」につきましては、改正府令の施行日(2024年4月1日)前に締結した契約であるため、経過措置により記載を省略しております。
当社グループは、持続可能な社会を実現するための社会課題の解決に貢献するために、新たな価値を創出する活動を継続しています。特に高品質・長期信頼性が要求される自動車や産業機器の分野に引き続き注力し、人々が安心・安全で豊かな生活を持続できる新しい社会の実現のために、お客様の困りごとを解決する新製品やセンサ素子およびセンサモジュール製品の開発に取り組んでいます。
自動車分野では、2050年にカーボンニュートラルを実現するために、2030年代での自動車販売のZEV(Zero Emission Vehicle)化に向けて、自動車メーカはBEV(バッテリー電気自動車)をメインとした環境対応車の開発に注力しています。直近では、先進国でのBEV販売の伸びが低迷している状況で、BEVの開発強化だけではなく、PHEV(プラグインハイブリッド自動車)やHEV(ハイブリッド自動車)の開発強化、合成燃料(e‐Fuel)や水素を燃料とした自動車の実用化の動きもあり、さまざまな環境対応車における技術革新が進んでいます。自動運転車は、アメリカや中国の一部地域でレベル4の自動運転タクシーが実用化されるなど、AI機能の搭載や各種センサの進化などにより自動運転技術の開発が急速に進んでいます。産業機器分野では、生産性向上のために生産設備のIoT化、AIの導入、ビッグデータの解析、ロボットの活用など、人に頼らないモノづくりの実現、さらに、故障する前に不具合を見つけ修理する予知保全、消費電力を可能な限り最小に抑えた生産設備の省エネ化など、各種産業の現場において生産システムの技術革新が進んでいます。また、近年はあらゆる場面での生成AIの活用が進んでおり、高性能AIサーバーの需要が急増し、AIサーバー用の高性能ハードウェア、高機能電源、冷却装置などの技術革新が進んでいます。これら各分野における技術革新にはさまざまなセンシングが必要不可欠であり、高精度なセンサの開発が期待されています。
このような背景から、当社グループは抵抗器で培った基盤技術を活かし、センサ素子やセンサモジュール製品の開発に力を入れています。環境対応車向けには、高圧用バッテリーの高電圧を精度良く長期間安定して測定できる高信頼性高圧デバイダー、大電流を高精度に検出するシャントモジュール、パワーモジュールの温度検出用にワイヤーボンディング対応温度センサ、非常に低い温度を測定できる極低温温度センサなど、安全性や性能の向上に貢献できる新製品の開発を進めています。また、新事業創出では、マーケティング活動を推進し“新たな価値”を提供できるような新製品の創出を進めています。
また、新たにeVTOL(空飛ぶクルマ)や宇宙分野にも注力し活動を開始しています。eVTOLは、次世代の新たなモビリティーとして実用化が見えてきており、将来大きな市場が期待できますので、マーケティング活動を推進し、環境対応車で培った技術を応用し新製品を創出していきます。宇宙分野は、従来の大型人工衛星に対して、小型人工衛星による宇宙ビジネスの商用化が進んできており、衛星データが気象、農業、インフラ、防災など地上の課題解決に利用されてきています。小型人工衛星で使用される電子部品は、車載品質レベルの信頼性が要求されることから、車載ビジネスで培った技術や品質で宇宙分野でのワンストップビジネスを進めています。
産・学・官の連携では、計算化学の技術を取り入れた将来必要とされる新材料の開発加速、製品開発のリードタイム短縮のために新たなシミュレーション技術の構築、新製品のための材料やプロセスなどの基礎開発など、将来に向けた研究開発を進めています。そして、国内だけでなく海外の研究機関や大学と各種材料の共同研究も実施しています。
2024年8月に新たな研究開発拠点“さくらウイング”が完成し、今まで分散していた研究開発の技術者を集め、また新製品開発に使用する各種装置や材料や試作品の分析・評価する最新装置の導入など、研究開発強化のための環境を整え、新技術の導入や新製品・新事業のための研究開発を積極的に進めてまいります。
なお、当連結会計年度の研究開発費は
また、当社グループの研究開発活動は、セグメント区分における「日本」、「ヨーロッパ」にて行われております。