文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
当社は、医用電子機器専門メーカとして、「病魔の克服と健康増進に先端技術で挑戦することにより世界に貢献すると共に社員の豊かな生活を創造する」ことを経営理念としています。そしてその実現に向け、商品、販売、サービス、技術、財務体質や人財などすべてにおいて、お客様はもとより、株主の皆様、取引先、社会から認められる企業として成長し、信頼を確立することを基本方針としています。
この基本方針の実現および当社グループの中長期的な企業価値向上のため、経営の健全性・透明性・効率性の向上を目指す経営管理体制の構築により、コーポレート・ガバナンスの充実を図ることが重要な経営課題であると考えています。当連結会計年度において、ジェンダーや国際性の面を含む多様性の確保を検討する中、女性取締役2名、外国人取締役1名を選任しました。取締役会に占める独立社外取締役の比率は50%ですが、2025年6月26日開催の第74回定時株主総会での承認を前提として独立社外取締役の比率は過半数となる予定です。
当社は、監督機能の強化、経営の健全性・透明性の向上、経営の意思決定の迅速化を図るため、監査等委員会設置会社を選択するとともに、社外取締役3名で構成され社外取締役が委員長を務める指名・報酬委員会を設置しています。
当社は、企業価値・株主価値増大に向けて連結ROE(連結自己資本当期純利益率)を重要な経営指標としており、2024年度からスタートした3ヵ年中期経営計画「BEACON 2030 Phase II」において、資本コストを上回る12%を目標としています。資本コストは毎年見直しており、現在8%前後と見ています。
中期経営計画の推進による利益率の改善を最優先としつつ、日本光電版ROICの導入、在庫圧縮や債権回収の早期化などキャッシュ・コンバージョン・サイクルの短縮による運転資本の改善、投資判断基準の設定、株主還元の充実等により、経営指標の達成を目指します。
2020年度以降、増加傾向にあった部品・製品在庫は減少したものの、2024年度のキャッシュ・コンバージョン・サイクルは目標の190日に対し225日となりました。2025年度は、需要予測の精度向上により需給バランスを最適化し、在庫管理を強化するとともに、債権回収を早期化し、2021年度水準である190日への回復を目指します。
また、成長投資による企業価値向上に向けて、2022年度に投資判断基準に正味現在価値(NPV)と内部収益率(IRR)を採用し、新規投資案件の評価を開始しています。Phase IIでは、資本コストを上回る12%をIRRの目標としています。一定額を超える投資案件の場合、投資後の進捗状況、効果を毎年取締役会で検証しています。
当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、欧米では金融政策が緩和傾向にあるものの、地政学リスクもあり景気の先行きは不透明な状況で推移しました。国内では、昨年4月に施行された医師の働き方改革および昨年6月の診療報酬改定を受け、各医療機関はタスクシフトや業務の効率化に取り組む一方、物価や賃金の上昇により厳しい経営環境となりました。海外では、中国において反腐敗運動や景気減速の影響により医療機器の設備投資に慎重な姿勢が続いたものの、米国においては検査・手術件数の増加に伴い病院経営に改善傾向が見られました。国内外ともに、医療機関における医療の質向上と効率化が急務であり、データヘルス、遠隔医療、AI、ICTの活用など医療DXが推進されました。
米国の関税政策により世界経済の不確実性が高まるとともに、地政学リスクもあり景気の先行きは不透明な状況にあります。国内では、物価や賃金の上昇により医療機関の経営が悪化しており、政府による緊急支援が進められるとともに、2040年を見据えた地域医療構想に関する議論が本格化する見込みです。海外では、相互関税に伴うサプライチェーンの混乱が見込まれます。北米、中南米、東南アジアを中心に医療機器の需要は底堅く推移すると見込まれるものの、新興国では保護主義的政策や医療機器に関する法規制が強化されています。医療機器業界においては、こうした環境の変化と医療の質向上や効率化といった医療機関のニーズへの迅速かつ柔軟な対応が求められ、厳しい経営環境が続くと予想されます。
(4) 会社の対処すべき課題と中長期的な経営戦略
当社グループは、2020年に10年後の2030年に向けた長期ビジョン「BEACON 2030」を策定し、「グローバルな医療課題の解決で、人と医療のより良い未来を創造する」ことを目指しています。そして、3つの変革「グローバルな高付加価値企業への変革」「顧客価値を追求するソリューション型事業への変革」「オペレーショナルエクセレンスを軸とするグローバル組織への変革」に取り組んでいます。
<第2フェーズである中期経営計画「BEACON 2030 Phase II」(2024~2026年度)>
激変する世界情勢の中、厳しい経営環境にありますが、前中期経営計画の成果と課題を踏まえ、「BEACON 2030 Phase II」では、全社収益改革を実行し成長領域への投資を本格化するとともに、新たな事業モデルの構築および既存事業との連携を強化します。
1. 3つの指標と6つの重要施策
成長性、収益性、資本効率性の強化に取り組み、サステナビリティ経営を実践します。
(成長性)売上高CAGR 5%(2024/3期~2027/3期):製品競争力の強化、北米事業の成長に注力
(収益性)営業利益率 15%(2027/3期):全社収益改革の実行、グローバルサプライチェーンの進化
(資本効率性)ROE 12%(2027/3期):日本光電版ROICの導入、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの短縮
(1)(成長性)製品競争力の強化
主力の生体情報モニタリング事業の強化、高成長が期待できる人工呼吸器を含む治療機器事業、消耗品・サービス事業、DHS(デジタルヘルスソリューション)を含むソリューション事業の拡大に注力。
設計プラットフォームの共通化、マルチプラント設計、サイバーセキュリティの高度化、QA/RA体制の強化。PLM/MESシステムの導入に加え、開発プロセス改革を推進し、新製品開発期間を短縮。
※ QA(Quality Assurance):品質保証、RA(Regulatory Affairs):規制関連業務。
PLM(Product Life-cycle Management):製品ライフサイクル管理、MES(Manufacturing Execution System):製造実行システム。
(2)(成長性)北米事業の成長に注力
日本、北米、その他の海外の3地域における市場戦略を強化。成長ポテンシャルの高い北米事業に優先的に資源を配分し、シェア拡大と収益改革を推進。
[日本]顧客価値提案の高度化による、顧客基盤の強化と持続的な成長
[北米]大手IDN/GPO市場、DoD/VA市場深耕によるブランド認知度向上と収益改革
[海外]医療機器に関する法規制対応、現地開発・生産・販売・サービス体制の強化
※ IDN(Integrated Delivery Network):総合医療ネットワーク、
GPO(Group Purchase Organization):グループ購買組織。
DoD(Department of Defense):米国国防総省、VA(Veterans Affairs):米国退役軍人省。
(3)(収益性)全社収益改革の実行
商品ミックス、生産性、サプライチェーンの改善に向けた各種施策を実行
(4)(収益性)グローバルサプライチェーンの進化
PSI(生産・販売・在庫)管理を高度化、グローバルQMS(Quality Management System:品質管理システム)の強化、マルチプラント生産の推進
(5)(資本効率性)日本光電版ROICの導入
利益率改善と投資対効果のモニタリング強化
(6)(資本効率性)キャッシュ・コンバージョン・サイクルの短縮
新設した生産本部を中心に、調達・生産管理機能を強化。債権回収の早期化
2.サステナビリティ経営
サステナビリティ経営の実践に向けては、Phase Iのマテリアリティ・KPIを一部見直し、医療課題、環境課題、社会課題の解決に取り組みます。
グローバル共通価値基準に基づき、Phase Iで導入したBEACON人事制度の浸透および運用定着・強化を図るとともに、働き方改革・人員生産性の向上に取り組みます。ダイバーシティ&インクルージョンの推進に加え、グローバル人財やDX人財の育成などキャリア支援の充実により、医療への貢献にやりがいと誇りを持てる組織風土の醸成に取り組みます。
グループガバナンスの一層の強化に向け、取締役会の多様性を確保するとともに、CxO体制の導入による意思決定の迅速化を図ります。また、株主価値との連動性を高めることを目的として、役員報酬制度の見直しを進めます。
3.経営目標値
当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
当社では、サステナビリティを推進するため、「サステナビリティ推進委員会」(社長をはじめとする経営執行役員・執行役員・部門長で構成)と「サステナビリティ推進会議」(合計19部門の代表者で構成)を設けています。また、サステナビリティの推進に社外の視点を取り入れるため、「アドバイザリーボード」(社外有識者3名で構成)を設置しています。
サステナビリティ推進委員会は年2回開催され、サステナビリティ活動の方向性を議論・決定しています。推進委員会委員長である社長が活動の評価や管理を行う権限を持ち、年間計画の進捗や評価について定期的に取締役会で報告し、取締役会が当社におけるサステナビリティの推進状況を監督しています。サステナビリティ推進会議は年4回開催され、推進委員会が決定した方針や指示に基づき年間計画を策定・推進し、進捗状況を推進委員会に報告しています。中期経営計画に基づき、経営層がサステナビリティに関するサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)とKPI(Key Performance Indicator)を設定するとともに、社内における担当部門を定めています。各担当部門を代表する推進会議メンバは、サステナビリティ活動の進捗状況を報告するとともに、他のメンバとの意見交換を行っています。また、リスクマネジメント委員会、コンプライアンス委員会、品質管理委員会、環境委員会とも連携を図り、日常業務の中でサステナビリティ活動が実践されるよう取り組んでいます。アドバイザリーボードミーティングは年2回開催され、サステナビリティの推進全般について助言をいただき、活発な議論を行っています。さらに、社内でのSDGsに対する意識向上を図るため、ウェビナーを用いた国内外の社員向け教育等を行っています。
サステナビリティ推進体制図

サステナビリティ推進会議体制図

(2) 戦略
当社は、事業と企業活動を通じて、世界的な社会課題の解決やSDGsの達成に貢献すべく、2021年度にSDGsに関連する合計12個の非財務目標であるサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を特定し、前中期経営計画「BEACON 2030 Phase I」の中に組み入れました。
2024年度からスタートした中期経営計画「BEACON 2030 Phase II」では、サステナビリティ経営の実践に向けて、これまでの成果・課題を踏まえ、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)・KPIを一部見直すとともに、SDGsマトリクスを作成しました。SDGsを羅針盤としてマテリアリティを整理し、持続可能性の視点を経営に組み込み、戦略的に医療課題、環境課題、社会課題の解決に取り組みます。事業戦略とサステナビリティ戦略の連動を一層高め、経済価値と社会価値の双方を創出することで、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します。詳細については、当社ウェブサイト
(
「医療」では、長期ビジョン「BEACON 2030」で掲げた5つの新たな世界観(アクセシブル、インテリジェント、患者視点、コネクテッド、最適化)の実現を目指して6つの課題に取り組んでいます。マテリアリティの一つであるDHS構想の推進においては、2024年度に国内で患者容態把握ダッシュボードソフトウェア、米国で遠隔ICUソリューションを発売し、医療従事者の業務負荷軽減、患者さんの予後改善への貢献を期待しています。
「環境」では、カーボンニュートラルの実現、循環型経済の推進に取り組んでいます。2024年度は、水資源保護の取り組み・情報開示を推進し、CDPによる水セキュリティ評価で当社初となる「A-」を獲得しました。また、2024年3月から、環境配慮型製品の基準を見直すとともに、基準を満たす製品・サービスについて、国際規格 タイプII ISO 14021に準拠した自己宣言ラベル「Green Product Label(グリーンプロダクトラベル)」として認定する取り組みを開始しました。
「社会」では、人権・人財、品質、ガバナンスの3つの分野で課題解決に取り組んでいます。人権・人財では、健康経営の推進・開示充実により、2025年3月に当社初となる「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に認定されました。品質では、製品セキュリティの取り組みをウェブサイトに公開しました。ガバナンスでは、2024年9月に税務方針を策定・公開しました。また、リスクマネジメント委員会で特定した重要リスクを中心に、各部門のリスク管理責任者と連携の上、定期的にリスク評価し対策を見直しました。
特に、気候変動対策はグローバル社会が直面している最も重要な社会課題であり、当社にとっても重要な経営課題の一つであることから、2022年5月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、7月に気候変動に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目について情報を開示しました。2024年7月には、本開示に事業インパクト評価を追加しました。引き続き、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)に掲げる「カーボンニュートラルの実現」「循環型経済の推進」に向けて気候変動対策を推進するとともに、TCFD提言に沿った情報開示の拡充に取り組みます。詳細については、当社ウェブサイト(
また、当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針は、以下のとおりです。
<多様性の確保についての考え方>
当社は、多様性を尊重し、個人の能力を最大限発揮できる職場環境を実現することで「働きがいの向上」と「新しい価値の創造」を図り、「組織の活性化と企業価値の向上」を目指しています。また、従来から性別や国籍、職歴に関係なく、能力や実績を重視した採用・登用を実施しています。
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進の一環として、女性活躍推進法に基づき行動計画を策定し、女性が活躍できる職場環境の整備を進めるとともに、女性のみならず日本光電で働くすべての従業員が働きやすく、働きがいのある職場環境を実現することで、一人ひとりがその能力を最大限発揮できるよう取り組みを推進しています。
<多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針>
当社グループの行動指針となる「グローバル共通価値基準」を体現する人財の育成を推進し、グローバルで整合性・一貫性のある人財マネジメントシステム(人財育成システム・人事制度など)を目指しています。中期経営計画Phase IIでは、Phase Iに続き、「医療への貢献にやりがいと誇りを持てる組織風土の醸成」をサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)に特定し、5つのKPIを定めました。そのうち、人財育成に関するKPI「学習・教育時間」の目標値として、3年間累計の教育時間(国内)を1人当たり45時間以上(※)と設定しました。2024年度の1人当たり教育時間は28.9時間でした。
また、働く価値観の変化や新たな働き方の浸透をふまえ、当社で働く社員が高いモチベーションを持ち、多様なキャリアパスや働き方を実現できる取り組みを進めています。
「グローバル共通価値基準」は、当社ウェブサイト
(
※当社フェニックス・アカデミー(人財開発センタ)が主催する階層別の研修時間であり、開発・販売・サービス等の各部門が主催する学習・教育時間は含みません。
当社グループの業務全般のリスク管理に関する基本方針等の制定、グループ全体のリスク管理体制の整備・推進状況の把握、監督は取締役会が行っています。リスク分類毎に「リスク管理部門」と「リスク関係委員会」を定めています。「リスク管理部門」は、担当するリスク分類について、業務執行部門・子会社の教育やサポートを行うとともに、体制の整備・推進状況を「リスク管理統括部門」に報告しています。「リスク関係委員会」は、関連するリスク分類について、マネジメントシステムの適切性・妥当性・有効性の評価等を取締役会および経営会議に報告しています。2024年度は、リスクマネジメント委員会で特定した重要リスクを中心に、各部門のリスク管理責任者と連携の上、定期的にリスク評価し対策を見直しました。
当社グループに影響を及ぼす気候変動リスクを特定・評価するために、組織横断的なTCFD対応プロジェクトを2021年10月から開始・運営しています。特定された気候変動リスクおよび対応策は、サステナビリティ推進委員会で審議・承認するとともに進捗管理を行っており、取締役会にも報告しています。
気候変動に関するリスクの詳細については、
「3 事業等のリスク (7)気候変動・自然災害・感染症等について」、および、当社ウェブサイト
(
中期経営計画の中で、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)について、それぞれKPIを設定しています。
各KPIの目標および実績は、当社ウェブサイト
(https://www.nihonkohden.co.jp/sustainability/nk_sustainability/materiality.html)の「
「BEACON 2030 Phase II」


<中核人材における多様性の確保に関する実績と目標>
当社グループでは、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針に基づき具体的な取り組みを実施しているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、次の※1、※2の指標に関する目標および実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しています。
※1 対象は提出会社の従業員
※2 対象は提出会社の取締役・経営執行役員・執行役員
※3 CxO:CEO、COO、CTO、CFOなどの経営幹部
※4 本書提出日現在
※5 第74回定時株主総会(2025年6月26日)決議予定
なお、管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあり、特に重要なのは、医療機器の許認可申請等および品質問題に関するリスクです。
当社グループの業務全般のリスク管理に関する基本方針等の制定、当社グループ全体のリスク管理体制の整備・推進状況の把握は取締役会が行っています。リスク分類毎に「リスク管理部門」と「リスク関係委員会」を定めています。「リスク管理部門」は、担当するリスク分類について、「業務執行部門・子会社」の教育やサポートを行うとともに、体制の整備・推進状況を「リスク管理統括部門」に報告しています。「リスク関係委員会」は、関連するリスク分類について、マネジメントシステムの適切性・妥当性・有効性の評価等を取締役会および経営会議に報告しています。また、「リスクマネジメント委員会」で特定した重要リスクを中心に、各部門のリスク管理責任者と連携の上、定期的にリスク評価し対策を見直しています。
リスク分類表は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 <その他の事項> リスク管理体制の整備状況」に記載しています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
医療機器の製造販売は、国内での医薬品医療機器等法、米国でのFDA(米国食品医薬品局)等、各国・各地域で法令・規制等の適用を受けます。直近では、欧州におけるMDR(医療機器規則、2021年5月から適用)、IVDR(体外診断用医療機器規則、2022年5月から適用)、米国におけるFDAサイバーセキュリティ・ガイダンス(2018年10月公表)、AI対応医療機器のガイドライン(2023年9月公表)等への対応が必要となっています。今後これらの法令・規制等の改廃や新たな法令・規制等が設けられた場合、許認可申請の審査体制の変更や追加試験等により新製品発売までの時間が延長する等の影響がでて、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。但し、当社グループの製品は多品種少量であり、更新サイクル毎に随時新製品を投入していることから、大きな影響を及ぼすようなリスクは低減されています。
医療機器は極めて高度な品質が要求されるため、国際規格ISOの基準等に基づいて品質マネジメントシステムを構築、運営しています。品質方針に基づきグループ品質目標を定め、開発から生産、販売、アフターサービスに至る全てのプロセスで、品質確保およびお客様満足度の向上に取り組んでいます。また、商品が医療事故につながるリスクを重点的に管理しています。通常時の体制、事故のあった場合の体制・報告をはじめとするルールなどを規定で明確化し、運用しています。予防および迅速な連絡のために、広く医療現場から迅速・正確に情報を収集するための仕組み、情報発信するための仕組みも整備しています。しかしながら、品質に問題が生じた場合、商品の販売停止、リコール等の措置を講じる場合があります。また、医療事故が発生し、当社に損害賠償責任を求める訴訟を提訴されたり、大きく社会的に取り上げられた場合、事実関係の当否とは別に、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度においては国内外で4件のリコールが発生し、ソフトウェアの品質向上等に取り組みました。また、当連結会計年度末における製品保証引当金は17億5千万円です。製品保証引当金には、保証期間内の無償修理に係る費用や将来のリコール等に係る費用が含まれます。
当社グループは、日本での持続的成長とともに、米国および中国を含む新興国での事業基盤の強化により、海外事業の一層の拡大を目指しています。日本では、医療費抑制や医療の質の向上を目的とした医療制度改革が進められています。また、AEDの普及により、当社グループの顧客は医療機関だけでなく景気動向の影響を受けやすい民間企業に広がっています。当社グループの連結売上高の約6割は国内におけるものであり、医療制度改革や景気動向などの影響を受けます。また、当社グループは海外子会社および代理店を経由して世界各国に製品を供給しています。新興国では官公立病院の占める割合が高く、医療インフラ整備に向けた入札案件が多いことから、選挙や予算執行のタイミングなどの影響を受けます。中長期的には、国産優遇の動きが見られる新興国において、組立生産等の対策が必要となる可能性があります。また、各国の景気後退、これに伴う需要の減少、政治的・社会的混乱や法令・規制等の変更があった場合、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、高い倫理観に基づき、良識に従った公正で適法な企業活動を実践するために、グローバル・コンプライアンス・プログラムを導入し、厳格な法令遵守を貫くコンプライアンス体制を構築することに真摯に取り組んでいます。グローバル・コンプライアンス・プログラムにおいては、コンプライアンスの基本方針・ルールを定めた「日本光電行動憲章」および「日本光電倫理行動規定」、ならびにコンプライアンスを徹底するための仕組みと運用方法の基本事項を定めた「コンプライアンス推進規定」を制定し、「コンプライアンス委員会」が法令・規制等への対応や教育研修、内部通報窓口の運営、遵守状況のモニタリング等を実施しています。また、海外子会社のリスク管理体制の整備・運用に関する監督の強化を図っています。
当社グループの事業活動は、国内においては医薬品医療機器等法等の医療機器の製造・販売に関する法規、会社法、金融商品取引法、税法、労働法、独占禁止法、貿易関連法規、環境関連法規等、海外においても各国・各地域で多岐にわたる法令・規制等の適用を受けています。コンプライアンスの徹底に努めていますが、適用法令等に抵触する事態が発生した場合、刑罰、処分、その他の制裁を受け、さらに当社グループの社会的信用や企業イメージが毀損して、経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの経営成績および財務状況に重要な影響を及ぼすおそれのある訴訟等は現在ありません。しかしながら、当社グループの国内および海外における事業活動等が、製造物責任、品質問題、知的財産権、労務問題、法令・規制違反、その他何らかの請求・紛争に関連して今後重要な訴訟等の対象となり、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは事業全般において各種ITシステムを活用しており、セキュリティやバックアップ等の対策を実施するとともに機密情報や個人情報の漏洩がないよう情報管理に努めています。また、通信ネットワークを利用する当社製品・サービスにおいても様々なセキュリティ対策を講じています。2022年4月にPSIRT(Product Security Incident Response Team)を発足し、製品・サービスのセキュリティ向上、インシデント対応に取り組んでいるほか、2023年5月に製品セキュリティに関する基本方針を定め、実践しています。また、2024年10月に製品セキュリティの取組みをウェブサイトに公開しました。しかしながら、自然災害やサイバー攻撃、新種のコンピュータ・ウイルスの感染、通信ネットワークの障害等により、ITシステムの停止やサービス提供の中断、情報漏洩が発生した場合、当社グループの社会的信用や企業イメージが毀損して、経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは日本各地および世界各国で事業を行っています。各地域において気候変動に伴う自然災害や水等の資源の供給不足、テロ、戦争、感染症の拡大等が発生した場合、部品調達や商品供給、販売・サービス活動などに支障が生じ、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
製品に使われる原材料・部品は日本をはじめ世界各国から調達していますが、調達先で供給に問題が発生した場合でも、製品の生産に影響が出ないよう代替品の検討を含めた対策を行っています。また、大規模地震が発生した時においても円滑に商品供給を継続できるよう、事業継続計画(BCP)を策定の上、全社的な教育・訓練を定期的に実施しています。
ウクライナ情勢による不透明な状況が継続していますが、ロシアおよびウクライナでの売上は、欧州売上高の1割未満、連結売上高の1%未満であり、業績に与える影響は軽微です。
また、気候変動対策はグローバル社会が直面している最も重要な社会課題であり、当社にとっても重要な経営課題の一つです。2022年5月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、7月に気候変動に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4項目について情報を開示し、2024年10月に事業インパクト評価を追加しました。また、2024年3月から自社の製品・サービスについて、Green Product Label(グリーンプロダクトラベル)の認定を開始しました。引き続き、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)に掲げる「カーボンニュートラルの実現」「循環型経済の推進」に向けて気候変動対策を推進するとともに、TCFD提言に沿った情報開示の拡充に取り組みます。
当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、欧米では金融政策が緩和傾向にあるものの、地政学リスクもあり景気の先行きは不透明な状況で推移しました。国内では、昨年4月に施行された医師の働き方改革および昨年6月の診療報酬改定を受け、各医療機関はタスクシフトや業務の効率化に取り組む一方、物価や賃金の上昇により厳しい経営環境となりました。海外では、中国において反腐敗運動や景気減速の影響により医療機器の設備投資に慎重な姿勢が続いたものの、米国においては検査・手術件数の増加に伴い病院経営に改善傾向が見られました。国内外ともに、医療機関における医療の質向上と効率化が急務であり、データヘルス、遠隔医療、AI、ICTの活用など医療DXが推進されました。
このような状況下、当社グループは、2024年度からスタートした3ヵ年中期経営計画「BEACON 2030 Phase II」を推進し、3つの指標「成長性」「収益性」「資本効率性」の目標達成に向け、「製品競争力の強化」「北米事業の成長に注力」「全社収益改革の実行」など6つの重要施策に取り組みました。商品面では、ミドルローエンドベッドサイドモニタ、医科向け除細動器を国内外で発売しました。また、患者容態把握ダッシュボードソフトウェア、中小病院向けクリニカルアシスタントサービスを国内で上市するとともに、現地開発した遠隔ICUソリューションの提供を米国で開始するなど、顧客価値の高い新製品・サービスを相次いで投入しました。さらに、昨年5月に日本光電ベトナム㈲を設立、9月にインドで検体検査試薬の新工場が稼働開始、11月に米国アドテック㈱の親会社の株式71.4%を取得し子会社化するなど、海外事業の基盤強化を図りました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は前期比1.5%増の2,254億2千4百万円となりました。利益面では、在庫評価減の減少、売価アップ、商品構成の良化により売上総利益率が改善したことから、営業利益は前期比5.7%増の207億1千3百万円となりました。一方、経常利益は、為替差損益が差損に転じたことから、前期比20.4%減の203億7千3百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益を特別利益に計上した一方で、投資有価証券評価損を特別損失に計上した結果、前期比17.2%減の140億9千8百万円となりました。
<市場別の状況>
国内市場においては、急性期病院、中小病院、診療所といった市場別の取り組みを強化するとともに、医療安全、診療実績、業務効率につながる顧客価値提案を推進、消耗品・サービス事業の強化に注力した結果、売上を伸ばすことが出来ました。市場別には、PAD市場(※1)でAEDの販売が好調でした。大学、診療所市場は堅調に推移し、官公立病院市場も前期並みを確保しました。一方、私立病院市場は大口商談の受注もあり好調だった前期実績を下回りました。商品別には、治療機器が二桁成長となり、生体計測機器も堅調に推移しました。一方、生体情報モニタ、その他商品群は、前期実績を下回りました。この結果、国内売上高は前期比2.0%増の1,452億3千7百万円となりました。
海外市場においては、前期の米国子会社再編に伴うデフィブテック LLCの決算期変更の影響(※2)に加え、アジア州他、中南米で低調に推移したことから、現地通貨ベースでは前期実績を下回りました。円ベースでは、為替の影響により増収となりました。北米では、AEDは減収となった一方、生体情報モニタ、人工呼吸器、脳神経系群が二桁成長となりました。中南米では、ブラジルは好調に推移したものの、前期に大幅増収となったコスタリカ、コロンビアを中心に減収となりました。欧州では、ドイツ、イタリアは増収となりましたが、イギリス、オランダが減収となり、前期実績を下回りました。アジア州他では、中国での減収に加え、前期にモロッコでの大口商談の受注もあり大幅増収となった中近東・アフリカも前期実績を下回りました。商品別には、その他商品群が好調に推移し、生体情報モニタも前期実績を上回りました。一方、治療機器、生体計測機器は減収となりました。この結果、海外売上高は前期比0.7%増の801億8千7百万円となりました。
※1 PAD(Public Access Defibrillation):一般市民によるAEDを用いた除細動。PAD市場には公共施設や学校、民間企業などが含まれる。
※2 前連結会計年度において、米国子会社再編に伴い、デフィブテック LLCの決算日を12月31日から3月31日に変更しています。前連結会計年度は、2023年1月1日から2024年3月31日までの15ヵ月決算を連結しています。
<商品群別の状況>
[生体計測機器]国内では、脳神経系群が二桁成長となり、心臓カテーテル検査装置群、心電計群も堅調に推移しました。一方、診断情報システムは好調だった前期実績を下回りました。海外では、脳神経系群、心電計群ともに、アジア州他、特に中国での減収が影響し、前期実績を下回りました。この結果、売上高は前期比0.8%増の468億7千4百万円となりました。
[生体情報モニタ]国内では、センサ類など消耗品は堅調に推移したものの、臨床情報システムが好調だった前期実績を下回りました。海外では、北米で二桁成長となり、欧州も前期実績を上回りました。一方、アジア州他、中南米では減収となりました。この結果、売上高は前期比1.0%増の849億6千5百万円となりました。
[治療機器]国内では、更新需要が回復したAEDに加え、人工呼吸器もマスク型人工呼吸器がけん引し、二桁成長となりました。海外では、決算期変更影響に加え代理店での在庫調整もあり、デフィブテック LLCのAEDが減収となりました。一方、人工呼吸器は、北米で大幅増収となり、アジア州他、中南米でも好調に推移しました。この結果、売上高は前期比2.9%増の531億8千4百万円となりました。
[その他]国内では、検体検査装置・試薬、医療機器の保守サービスは好調に推移した一方、現地仕入品が減収となりました。海外では、欧州、中南米で検体検査装置・試薬が二桁成長となりました。この結果、売上高は前期比1.8%増の404億円となりました。
売上高を商品群別に分類すると次のとおりです。
(参考)地域別売上高
報告セグメント別の経営成績は次のとおりです。
(日本)売上高は1,465億2千5百万円(前期比1.8%増)、セグメント利益は219億2千6百万円(同6.4%増)となりました。
(北米)売上高は448億9千9百万円(同6.9%増)、セグメント損失は9億4千1百万円(前期は22億3百万円の損失)となりました。
(その他の地域)売上高は339億9千9百万円(同5.7%減)、セグメント利益は18億6千9百万円(同19.1%減)となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ250億4千2百万円増加し、2,582億7千6百万円となりました。
流動資産は前連結会計年度末に比べ12億4千8百万円減少し、1,830億8千5百万円となりました。これは、在庫が減少したことなどによるものです。
固定資産は前連結会計年度末に比べ262億9千1百万円増加し、751億9千1百万円となりました。これは、保有銘柄の売却により投資有価証券が減少した一方で、ニューロアドバンスド㈱を取得したことにより、のれんおよびその他無形固定資産が増加したことや、鶴ヶ島新工場建設のための建設仮勘定が増加したことなどによるものです。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ248億3千万円増加し、769億8千1百万円となりました。これは、未払法人税等が減少した一方で、ニューロアドバンスド㈱の株式取得のための短期借入金が増加したことなどによるものです。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ2億1千2百万円増加し、1,812億9千4百万円となりました。これは、利益剰余金の増加、自己株式の取得などによるものです。
これらの結果、1株当たり純資産額は、前連結会計年度末に比べ21.91円増加して1,101.11円となり、自己資本比率は、前連結会計年度末の77.6%から8.1ポイント減少し69.5%となりました。
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ68億1千6百万円減少して430億6千1百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、前期比3億2千1百万円減の152億8千6百万円となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純利益215億7千万円、棚卸資産の減少24億5千2百万円、売上債権の減少7億1千6百万円、仕入債務の減少2億7千1百万円などです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、前期比199億3千万円増の251億3千8百万円となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得71億2千6百万円、無形固定資産の取得15億8千3百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出188億6千9百万円(株式の取得対価の支払159億9千5百万円、取得に伴う新規連結子会社の借入金の返済32億3千6百万円、新規連結子会社の現金および現金同等物の増加3億6千2百万円)などです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、25億5千万円(前期は69億6千8百万円の支出)となりました。主な内訳は、短期借入金の増加253億7千4百万円、自己株式の取得による支出100億1百万円、配当金の支払51億円などです。
当連結会計年度における生産、受注および販売の状況をセグメントごとに示すと次のとおりです。
イ. 生産実績
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しています。
2 上記金額には、商品購入高が合計で32,163百万円含まれています。
3 上記金額は、製造原価によっています。
当社グループの商品は、需要予測による見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しています。
2 上記金額は、販売価格によっています。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りは、主に貸倒引当金、賞与引当金、退職給付に係る資産であり、見積りおよび判断・評価については、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っています。
詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しています。
イ.当連結会計年度の経営成績および「BEACON 2030 Phase II」の進捗状況
当連結会計年度においては、日本では、物価や賃金の上昇により医療機関の経営が厳しい中、顧客価値提案を推進、消耗品・サービス事業の強化に注力した結果、売上を伸ばすことが出来ました。消耗品・サービス、AEDが想定を上回って推移した一方、自社品販売に注力し現地仕入品の抑制が進んだことから、期初計画を下回りました。北米では、決算期変更影響に加え代理店での在庫調整もありAEDは減収となった一方、生体情報モニタ、人工呼吸器、脳神経系群が二桁成長となり、期初計画を上回ることが出来ました。その他の地域においては、中国での減収に加え、中近東・アフリカにおける前期の大口商談の反動もあり、前期実績および期初計画を下回りました。以上の結果、2025年3月期の業績は、国内売上高、海外売上高ともに、前期実績を上回ったものの計画未達となりました。
商品群別では、生体計測機器は、国内で脳神経系群が二桁成長となり、心臓カテーテル検査装置群、心電計群も堅調に推移した一方、海外では中国を中心に脳神経系群、心電計群が低調だったことから、前期比0.8%の増収となりました。国内では診断情報システムが減収となり、海外では特に中国での減収が影響し、計画を下回りました。生体情報モニタは、国内で臨床情報システムが好調だった前期実績を下回ったものの、海外では北米が二桁成長となり、欧州も前期実績を上回ったことから、前期比1.0%の増収となりました。一方で、国内において臨床情報システムやベッドサイドモニタが減収となり、海外ではアジア州他、中南米で減収となったことから、計画を下回りました。治療機器は、国内でAED、人工呼吸器が二桁成長となりました。海外ではAEDは低調だった一方で人工呼吸器が大幅増収となりました。この結果、前期比2.9%の増収となり、概ね計画どおりに推移しました。その他商品群は、国内で現地仕入品が減収となった一方、国内、海外ともに検体検査装置・試薬が好調に推移したことから、前期比1.8%の増収となりました。国内で現地仕入品の抑制が進んだことから、計画を下回りました。
営業利益については、在庫評価減の減少、売価アップ、商品構成の良化により売上総利益率が改善したことから、増益を確保することが出来ました。一方、海外実質売上の計画未達に加え、為替影響や賃上げ対応により販管費率が上昇したことから、計画を下回りました。
2025年度は、国内において顧客価値提案の推進、消耗品・サービスの強化に取り組みます。海外では、為替およびアドテック㈱の連結影響を除く実質ベースでは、二桁の売上成長を見込みます。利益面では、国内外での価格政策の見直しを継続し、売上総利益率の改善を想定しています。販管費は、賃上げ等による人件費の増加を見込んでいますが、全社収益改革プロジェクトにおいて人員生産性の向上に注力します。
ロ.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源および資金の流動性
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
事業への資源配分については、新製品の投入による売上、利益の成長に資する投資を最優先としながら、研究開発や設備投資、M&A・提携、人財育成など将来の企業成長のために必要な資源配分を安定的かつ継続的に実施します。設備投資は94億円程度、研究開発費は72億円程度を計画しています。
株主還元については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しています。
資金調達については、当社グループの主な運転資金および設備資金として自己資金を充当しており、M&Aや新規事業など資金調達が必要になった場合には、資金需給のバランスを見ながら、借入を資金調達の有効な手段として検討し、負債コストも考慮した加重平均資本コストの最適化を図ります。
また、当社グループでは、財務健全性を維持した持続的成長と企業価値の向上を目指して、資金の効率化と流動性の確保に努めています。資金の効率化については、キャッシュ・コンバージョン・サイクルを指標とし、売上債権回収の早期化や棚卸資産の適正化により、運転資金の効率化を図っています。なお、グループ内の資金効率を高めるため、資金は当社に集中し、不足するグループ会社に配分する制度を運用しています。安定的な経営に必要な手元現預金の水準は、概ね月商の3ヵ月程度と考えています。当連結会計年度末における流動比率は、253.2%となっており、十分な流動性を確保しています。なお、資金の流動性を確保するため、複数の取引金融機関と当座貸越契約を締結しています。
ハ.経営指標の分析
当社は、企業価値・株主価値増大に向けて連結ROE(連結自己資本当期純利益率)を重要な経営指標としており、2024年度からスタートした3ヵ年中期経営計画「BEACON 2030 Phase II」において、資本コストを上回る12%を目標としています。資本コストは毎年見直しており、現在8%前後と見ています。
中期経営計画の推進による利益率の改善を最優先としつつ、日本光電版ROICの導入、在庫圧縮や債権回収の早期化などキャッシュ・コンバージョン・サイクルの短縮による運転資本の改善、投資判断基準の設定、株主還元の充実等により、経営指標の達成を目指します。
2020年度以降、増加傾向にあった部品・製品在庫は減少したものの、2024年度のキャッシュ・コンバージョン・サイクルは目標の190日に対し225日となりました。2025年度は、需要予測の精度向上により需給バランスを最適化し、在庫管理を強化するとともに、債権回収を早期化し、2021年度水準である190日への回復を目指します。
また、成長投資による企業価値向上に向けて、2022年度に投資判断基準に正味現在価値(NPV)と内部収益率(IRR)を採用し、新規投資案件の評価を開始しています。Phase IIでは、資本コストを上回る12%をIRRの目標としています。一定額を超える投資案件の場合、投資後の進捗状況、効果を毎年取締役会で検証しています。
当社は、2024年9月12日開催の取締役会において、米国アドテック㈱の親会社であるニューロアドバンスド㈱の株式71.4%を取得することを決議しました。また、同日付で、ニューロアドバンスド㈱の株式を100%保有するファンドNeuroNewCo, LP(NNC-LP)と株式譲渡契約を締結しました。2024年11月9日付で株式71.4%の取得を完了したことから、ニューロアドバンスド㈱とアドテック㈱に加え、両社の間にある特別目的会社(SPC)2社は、当社の連結子会社となりました。
また、NNC-LPと新たな資本構成(当社 71.4%:NNC-LP 28.6%)でのアドテック㈱の事業運営および今後の株式取得等に係る株主間契約を2024年11月8日付で締結しました。株主間契約では、将来の経営体制の変更可能性を見据え、NNC-LPにプットオプション(NNC-LPが保有するニューロアドバンスド㈱株式28.6%を当社に売却できる権利)を設定しています。本オプションが行使された場合、当社はニューロアドバンスド㈱の株式28.6%を追加取得することとなり、ニューロアドバンスド㈱は当社の100%子会社となります。また、株主間契約には、本オプション行使を前提条件とする、アドテック㈱の業績目標達成に応じたアーンアウト条項を設定しています。
詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりです。
当社グループでは、「病魔の克服と健康増進に先端技術で挑戦する」ことを目指して、各種の医用電子機器の研究開発を行っています。当社グループのうち研究開発活動を行っているのは、当社のほかデフィブテック LLC、日本光電オレンジメッド LLC、日本光電デジタルヘルスソリューションズ LLC、日本光電イノベーションセンタ LLC、アドテック㈱、上海光電医用電子儀器㈲等です。
日本では、荻野記念研究所で新しい計測方法の研究や患者さんの負担が少なくしかも効果の高い治療方法の研究、あるいは国その他の医学研究機関との共同研究等、比較的長期的な視野での研究活動を行っています。各事業部門においては、担当する医用電子機器の改良、関連新製品および周辺機器の開発を行っています。
北米では、連結子会社のデフィブテック LLCで救命救急医療機器、日本光電オレンジメッド LLCで人工呼吸器、日本光電デジタルヘルスソリューションズ LLCでDHS関連製品、アドテック㈱で頭蓋内電極の開発を行うとともに、日本光電イノベーションセンタ LLCでトランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)を行っています。
その他の地域では、連結子会社の上海光電医用電子儀器㈲で新興国市場向けの医用電子機器の開発を行っています。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、
なお、当連結会計年度の主要な成果としては、ミドルローエンドベッドサイドモニタ、医科向け除細動器を国内外で発売しました。また、患者容態把握ダッシュボードソフトウェア、中小病院向けクリニカルアシスタントサービスを国内で上市するとともに、現地開発した遠隔ICUソリューションの提供を米国で開始するなど、顧客価値の高い新製品・サービスを相次いで投入しました。