第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1)経営方針

当社グループは、「価値ある製品を創造し、明るい未来社会づくりに貢献します。より良い地球環境の実現に努め、倫理的・社会的責任を果たすとともに、顧客・株主・従業員をはじめ全ての人々を大切に、企業価値の最大化を目指して、誠心誠意をもって「考働(※)」します。」を経営理念に掲げ、「モノづくりからコトづくり」「製造業から創造業への変革」の実践と、「品質、コスト、納期、サービス、技術」などあらゆる面で最上級を目指すトップノッチ経営を打ち出し、積極的な成長戦略を展開し、企業価値の向上を図ります。

当社グループでは、経営環境の変化に柔軟に対応するため、中長期的な持続的成長を見据えた単年度の事業計画に基づき事業運営を行っています。

※考働:考えて働くという当社の造語

 

(2)中期的な成長戦略

当社グループは、アルミ電解コンデンサ、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、小形リチウムイオン二次電池等の電子デバイスと、各種電源、機能モジュール、応用関連機器等の回路製品を主力製品とし、コンデンサと回路製品設計のコア技術を用いて「エネルギー・環境・医療機器」、「自動車・車両関連機器」、「白物家電・産業用インバータ機器」、「情報通信機器」の4市場を重点分野と定め、高信頼性、高安全性、高機能性を追求し、競争力に優れる新製品開発により社会課題の解決に貢献し、既存事業の拡大と新規事業の創出に努めています。

 

(3)経営環境および優先的に対処すべき事業上および財務上の課題

顧客ニーズがますます高度化、多様化するとともに、環境への配慮が企業活動にますます求められるなか、当社グループは、コア事業であるコンデンサ事業およびNECST(Nichicon Energy Control System Technology)事業について、社会が抱える課題を解決し、明るい未来社会づくりに貢献していくことを念頭に、成長製品に経営資源を集中し、さらなる企業価値の向上を図ってまいります。

一方で、新型コロナウイルスの感染拡大が続いております。当社グループは、お客さま、従業員とその家族の安全確保と感染拡大の防止を最優先としつつ、お客さまへの製品・サービス提供を続けてまいります。

 

①低炭素社会の実現とキーテクノロジーの進展に向けた事業機会の獲得

コンデンサ事業:

「車載/5G用アルミ電解コンデンサ」「車載用フィルムコンデンサ」については、自動車関連においてCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)や情報通信では5Gによる高速通信の開始、それに伴う基地局の整備、IoTの拡大など、成長が期待できる分野が数多くあります。また、「小形リチウムイオン二次電池」は、今後ますますIoT市場の拡大が加速するなか、ウェアラブル機器、情報通信端末に限らず、スマートホーム、スマートファクトリー、スマート農業、災害検知といったソリューションに期待が寄せられています。こうした機会を逃すことなく、需要に対する供給力を強化するとともに、競争力の高い新製品の開発を加速させてまいります。

NECST事業:

「家庭用蓄電システム」や「V2H(Vehicle to Home)システム」は、環境に配慮した電気の自家消費用途のみならず、度重なる自然災害を経て「もしもの時の備え」として注目されるようになってきました。こうした変化を受け「家庭用蓄電システム」では、気象警報情報に基づいて、自動で蓄電に切り替わる機能のほか、停電時に蓄電システムから給電する配線系統を選ばない「自動切替分電盤」で、家じゅうの部屋の電源をバックアップできる新製品も開発しました。また、来る分散型電源社会(電気の地産地消)に貢献するため、各種VPP(仮想発電所)実証実験に家庭用蓄電システムやV2Hシステムの提供と協力、そして公共・産業用蓄電システムを活用した実証への参画も継続していきます。今後、これらの機器を有機的に組み合わせた複合システムの製品化により、低炭素社会の実現やサステナビリティへの貢献を通じて事業拡大に努めてまいります。

「医療用加速器電源」は、がんの治療に貢献する製品で、粒子線治療装置の心臓部である粒子を加速させるために使用されています。2021年3月末現在、国内17施設、海外は北米を中心に9施設に採用されています。また、研究機関などで進められている最新の粒子線治療装置の開発にも参画し、安心な社会づくりにも役立っています。

 

②外部環境に左右されない強い経営体質への変革

アルミ電解コンデンサは、電極箔、電解液などの基本部材から自社で研究開発し、上記の各重点分野に向けてネジ端子の大形品から面実装に適したチップ品、また、導電性高分子材料を陰極に用いた導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ、さらにはこれら両製品の特長を併せ持つ導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサなど多彩なデバイスを取り揃え、使用環境がますます多様化する中でのさらなる高機能化のニーズに応える製品開発に取り組んでいます。

フィルムコンデンサは、基本材料である金属蒸着フィルムから開発し、自動車・車両関連機器分野、特に環境負荷が小さく、市場拡大の目覚しいEV、HV、PHVなどの動力モーター駆動用インバータ回路向け平滑用フィルムコンデンサの開発・製造に注力しています。これらの駆動用インバータユニットに用いられるフィルムコンデンサは、高周波特性、耐電流性能に優れ、長寿命で高信頼、高安全性に加え、顧客要求に応じたフレキシブルな対応が可能であることから、国内外の自動車メーカーへの採用が飛躍的に拡大しています。

NECST事業製品では、2050年にカーボンニュートラルを実現する政府方針が明確となり、その具現化に向けて再生可能エネルギーの活用を拡大する政策が打ち出されています。カーボンニュートラルを支える要素としてZEH(ネットゼロエネルギーハウス)が有望視されており、当社グループは住宅メーカーが販売しているZEHに家庭用蓄電システムや太陽光発電を含むハイブリッド型、さらにV2H機能も併せ持ったトライブリッド型などの複合システム製品を設置してZEHの拡大に貢献しています。また、電気自動車から家庭に電気を供給できるV2Hシステムを業界に先駆けて開発し、EVパワー・ステーション®として市場投入してきました。これらの製品は、公共・産業用蓄電システムや、電気自動車から独立電源を供給するパワー・ムーバー®(V2L)などとともに、最近増加している甚大な自然災害による長期停電時に避難所に電力供給できる製品として、非常時の安心、安全に大きく役立っています。

 

これらの強化に向けた全社の横断的な取組みとして、生産拠点においては自動化、省力化による生産性の向上と原価低減、絶対的な品質の確立に注力するとともに、販売、生産、研究開発、管理などのあらゆる業務のデジタル化を推進し、将来のイノベーションの創出に努めています。

 

③ESG経営の構築と推進

当社グループでは持続的な成長と企業価値の増大に向けて、当社製品による地球環境への貢献と自社での対応取り組み、多様な働き方など人材面の基盤強化、コーポレートガバナンスやコンプライアンス体制の強化に努めています。

環境課題については、自社拠点において太陽光で発電した電力を蓄電し、これを電気自動車への充電や生産設備への給電を無駄なく効率的に行う複合システムを設置し、生産工場などの大規模施設における再生可能エネルギーの新たな活用方法によるCO2削減に取り組んでいます。

また、当社グループでは「人」こそ最大の経営資源であり、会社のエネルギーであるとの観点に立ち、従業員一人ひとりが社会や時代のニーズを敏感に察知し、コンプライアンスへの意識を高く持ちながら考働していくこと、やりがいや成長を実感でき、能力を発揮できるよう、人材面での基盤強化を重視しています。社会との接点においては、産学連携にも注力しており、立命館大学との連携によるMOT(Management of Technology)教育や、エネルギーの地産地消とスマート社会の創造に寄与することを目的にスタートした東京大学生産技術研究所との包括的な産学連携研究協力協定など、大学機関との研究開発活動も積極的に推進しています。

これらに加え、コーポレートガバナンスについては、取締役会の経営の監督と執行の役割の一層の明確化を図るため、社外取締役比率を3分の1以上としており、さらに今般、取締役会の諮問機関として過半数を社外役員で構成する指名・報酬委員会を設置し、取締役の指名および報酬等に関する手続きの公正性、透明性、客観性を確保しています。コンプライアンス体制の強化では、業務の適正を確保するための体制ならびに財務報告の信頼性を確保するための体制を充実させ、一層の内部統制の整備・運用を推進しています。

2【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績、株価および財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下のようなものがあります。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

(1)経済状況について

 当社グループは世界各地で、アルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、回路製品などの製品を製造・販売しています。このため、当社グループ製品の需要は、製品を販売している国または地域の経済状況によって事業運営や経営成績および財務状況に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

 これに対し当社グループでは、グローバルでの経済状況の変化を毎月開催している経営会議や半期毎に開催しているグローバルの事業計画推進会議などで注意深く見守り、機動的な販売戦略や生産体制を講じるなど、状況に応じた対応が取れるように対策を行っています。

 2022年3月期の経済環境の見通しについても、引き続き新型コロナウイルス感染症拡大に伴う世界経済への影響や米中対立の長期化により先行きの不透明感と不確実性が高い状況が続いています。引き続き動向には注視するとともに、業績確保に向けた様々な対策、施策を講じてまいります。

(2)為替変動によるリスクについて

 当社グループの事業、経営成績および財務状況における外貨建ての項目については、連結財務諸表作成のため円換算されています。これらは、為替レートの変動により、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。当社グループは、為替リスクを軽減・ヘッジするために必要に応じて為替予約を締結していますが、当社グループの経営成績および財務状況への影響を完全に排除できる保証はありません。

(3)価格競争リスクについて

 当社グループは、アルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、回路製品などのコア事業の強化とグローバル体制の構築を目指し、国内外の生産拠点の強化および販売体制の拡充、新製品開発のスピード化を推進しています。このような中で、競合他社との間の価格競争激化の影響を受け、当社グループの製品・サービスが価格競争に直面し、当社グループの事業、経営成績および財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 これに対し当社グループでは、各事業分野において、競争優位性を高める新製品の企画・開発を継続的に行うとともに、コスト力の強化と適切な売価マネジメントに注力し、提案型営業を推進することで顧客満足を獲得してまいります。

(4)新製品の開発リスクについて

 当社グループでは、将来にわたり、ユーザーニーズを先取りした魅力ある新製品を開発し、提供できると考えていますが、以下のような能力が不足した場合、当社グループの事業、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

① 多様化・高度化する顧客の要求に対応する能力

② 新製品を適時かつ適正コストで開発し生産する能力

③ 顧客の新製品に当社グループの製品が使用されるようにする能力

④ 新たな製品・サービスおよび技術を使用し展開する能力

⑤ 既存の製品・サービスおよび技術を向上させる能力

⑥ 業界と市場の変化を十分に予測する能力

 あらゆる分野での技術革新がグローバル規模で進む中、お客様や社会が直面する課題をいち早く解決できる技術の重要性がますます高まっております。これらに対応するため、当社グループでは、日本と中国に研究開発拠点を設け、それぞれの製品分野ごとに、材料開発からの一貫した研究開発体制を構築しています。また、研究開発部門と生産部門が密接に連携することで、新技術の早期実用化・製品化を実現しています。さらに、変化の激しい市場環境に対応するために、必要な技術領域において強みのある大学・研究機関・企業と積極的に連携し、研究開発活動を加速させるオープンイノベーションと、立命館大学との連携によるMOT教育を通じて、将来の技術経営を担う人材育成にも注力しています。

(5)海外進出の潜在リスク、法的規制の変更・強化について

 当社グループが事業を展開する国または地域において、法令または規制の重要な変更、税制または税率の変更、その他経済的、社会的および政治的変動、為替政策の変更、輸出または輸入に関する法規制などの変更があった場合、それらの事象は当社グループの事業、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは、中国・無錫市および宿遷市にアルミ電解コンデンサなどの製造拠点を設けていますが、現地で政治、法的環境、経済状況などに予期せぬ事象が発生した場合、事業の遂行に問題が生じ、当社グループの事業、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、「(1)経済状況について」において説明のとおり、グローバルでの政治・経済状況の変化を注意深く見守り、状況に応じた対応が取れるように対策を行っています。

(6)原材料などの購入価格の高騰について

 国際市況に大きく影響を受ける当社グループの主要製品に使用する原材料の購入価格の高騰は、当社グループの経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、原材料のマーケット変動に柔軟に対応するべく、代替材料の検討や複数購買化を推進するとともに、吸収できない調達コスト上昇に関しては、市場価格も見つつ適切に製品売価に反映するようにしております。

(7)製造物責任について

 当社グループは、品質管理を徹底し、世界的な品質管理基準に従い製品を製造していますが、提供する製品・サービスには欠陥が生じる可能性があります。また、製造物賠償責任保険に加入していますが、賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。

 欠陥が原因で生じた損失は、多額のコストや当社グループの評価の低下を通じ、当社グループの事業、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、全製造事業所で「いつ」「どこで」「どの製品が」「どのような状況で」つくられたかを確実にチェックできる生産管理システムを導入しています。これはシステムで品質管理を徹底し、"不良ゼロ"による安定生産を実現するためのものです。このゼロ・ディフェクトに向けた取り組みを毎期生産事業所ごとに事業計画として策定するとともに、品質保証システムの国際的規格であるISO9001やIATF16949の取得や更新審査を通じて、常に最新の品質管理基準と運用体制の構築につなげております。

(8)環境規制などによる影響について

 当社グループの事業は様々な環境法令の適用を受けており、過去、現在および将来の生産活動に関し、環境責任のリスクを抱えています。将来、環境に関する規制が厳しくなり有害物質などを除去する義務が追加された場合、これにかかる費用が当社グループの事業、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 地球との共存を目指して、当社は全社・全グループの環境保全活動を進めるために、資源の有効活用、環境汚染防止を最優先としたニチコングループ環境憲章を1997年12月に制定(2015年8月改定)し、環境保全に向けた取り組みを推進してきました。現在、国内外の13製造事業所で環境マネジメントシステム規格ISO14001の認証を取得しており、全社・全グループをあげて、環境に配慮した技術と製品の提供に努めています。

(9)災害などによる影響について

 当社グループは、すべての生産設備における定期的な災害防止検査・点検を実施していますが、自然災害、事故、情勢変化や事件などによる悪影響を完全に阻止または軽減できる保証はありません。それらは、当社グループの事業、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、災害等の発生に備え、生命の安全確保・安否確認体制を整備するとともに、重要業務の継続・中断した場合を想定し、早期復旧を目指せる体制、事業継続計画(BCP)および事業継続マネジメント(BCM)の見直しと追加構築に取組んでいます。

 生産拠点のある中国やマレーシアにおけるコロナウイルス感染症拡大に伴う移動制限令への対応については、従来から行ってきたBCP対策(並行生産)を活用し、一部の製品生産を中国から日本やマレーシアの工場へ、マレーシアから日本や中国の工場へ適宜移管するなどして、顧客への製品納入や工場の操業度低下に対するリスク軽減策を講じています。今後も状況の変化に応じた対応を進めてまいります。

(10)その他

 上記に掲げたリスク要因は、当社グループの事業展開その他に関するリスクの全てを網羅しているものではありません。その他、知的財産権に係る法的リスク、情報漏洩に係る情報セキュリティリスク、顧客の信用リスク、人材育成・確保に係るリスクなども発生する恐れがあり、当社グループの事業、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 これら様々なリスクに対し、当社グループでは「ニチコングループ行動規範」(2002年10月制定・2013年4月に改訂)を全役職員に徹底し、法令・定款および社内規則はもとより、健全な社会規範、倫理規範に則った職務を遂行し、企業風土の醸成と教育・啓発活動の推進に努めています。また、これらを確保するための体制として、代表取締役社長を委員長とする「CSR推進委員会」を設置しています。

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりです。

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、経済・社会活動が停滞し消費が大きく落ち込みました。また、海外経済の悪化による外需の落ち込みにより設備投資が低調に推移するなど厳しい状況に陥りました。第2四半期以降徐々に経済活動が上向きましたが、変異株による感染の再拡大がみられるなど、先行きが不透明な状況が続きました。米国経済は、政府による景気対策が講じられ経済活動の再開の動きにより企業業績が持ち直していますが、米中対立などの影響から本格的な回復基調には至っておりません。欧州経済は、個人消費や企業業績が大幅に悪化し、景気の先行きに一段と不透明感が増しました。中国経済は、いち早く新型コロナウイルス感染症拡大を抑え込み、経済活動を再開し、緩やかな持ち直しの動きが見られました。

このような状況において当社は、コンデンサ事業では、EV、HVの進展によりモータ駆動インバータ平滑用のフィルムコンデンサがグローバルに採用車種の拡大を続けており、これに対応するため、日本国内と中国宿遷での増産体制構築を推進するとともに、原価改善に注力しました。また、アルミ電解コンデンサ事業においても、自動車電装用や電気自動車のオンボードチャージャー用として超高温度対応や耐振動の製品を開発するとともに、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサや導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサにおいて、自動車や5G市場をターゲットとした新製品開発や定格拡充を行いました。

また、当社の経営の新たな柱であるNECST事業におきましては、家庭用蓄電システムはFIT(固定価格買取制度)期間の終了、そして頻発する自然災害への備えを背景に、当社は「蓄電のニチコン」として、低炭素社会の実現に貢献するZEHに向けた太陽光発電とEVと蓄電池の3つをつなぐ「トライブリッド蓄電システム®」の拡販や、12kWh単機能蓄電システムの新製品をラインアップし、全負荷および200V対応の大容量単機能蓄電システムを開発するなど製品の充実を図りましたが、販売面では新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、売上・利益が落ち込みました。一方、EV関連では、系統連系が可能になった新型V2Hシステム「EVパワー・ステーション®」やEV、PHV、FCVから電気を取り出す可搬型給電器「パワー・ムーバー®」が、電動車の普及や災害時の復旧支援への活用などから伸長しました。当社はこれらのNECST製品により、再生可能エネルギーの活用およびEV普及の促進による地球温暖化防止に寄与しており、あわせて気候変動に起因する昨今の自然災害による大規模停電においては、非常用電源として災害対策支援に貢献しました。その結果、「革新的技術開発等による温室効果ガス排出削減と災害対策における社会貢献活動」が評価され、2020年11月に令和2年度気候変動アクション環境大臣表彰を受賞しました。当社は引き続き、社会的課題の解決に向けた独自のソリューション提案活動を推進してまいります。

これらの結果、当連結会計年度の売上高は116,073百万円と前期比3.0%の減収となりました。また、利益につきましては、営業利益は1,573百万円と前期比38.3%の減益、経常利益は3,015百万円と前期比16.7%の減益、親会社株主に帰属する当期純利益は1,703百万円と前期比39.4%の減益となりました。

製品区分別売上高につきましては、電子機器用は、インバータ関連機器向けなどの売上が減少したものの、上半期に落ち込んだ車載関連機器向けが下期以降に回復したことや、情報通信機器向けが伸長したことなどにより62,644百万円と前期比0.7%の増収となりました。

電力・機器用及び応用機器は、主としてEV・HV向け機器用フィルムコンデンサの売上が増加しましたが、応用機器などの売上が減少したことになどにより15,976百万円と前期比2.3%の減収となりました。

回路製品は、V2HシステムなどのEV関連機器の売上が増加したものの、家庭用蓄電システムの売上が減少したことなどにより37,215百万円と前期比8.4%の減収となりました。

設備投資につきましては、新規事業の成長を見据えた技術・開発投資および新製品の小形リチウムイオン二次電池のラインアップ強化のほか、EV向けフィルムコンデンサの増強を中心に6,542百万円の設備投資を実施しました。

 

 所在地別の経営成績は、次のとおりです。

a.日 本

 国内においては、米中貿易摩擦や新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、アルミ電解コンデンサではインバータ関連機器向けの売上が減少したことに加え、応用機器および家庭用蓄電システムの売上も減少したことなどにより、売上高は53,373百万円と前期比9.6%の減収となりました。営業損失は、調達コストや固定費の削減を進めましたが、売上高の減収による稼働損などにより923百万円(前期は324百万円の営業利益)となりました。

b.米 国

 米国地域においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、主に上半期においてアルミ電解コンデンサの自動車向け需要が減少したことなどにより、売上高は8,069百万円と前期比5.3%の減収となりました。営業利益は、販売コストの削減を進めた結果、292百万円と前期比52.5%の増益となりました。

c.アジア

 アジア地域においては、インバータ関連機器向けの売上が減少したものの、情報通信機器向けが伸長したことなどにより、売上高は47,866百万円と前期比7.5%の増収となりました。営業利益は、製造コストの削減を進めた結果、1,911百万円と前期比50.8%の増益となりました。

d.欧州他

 欧州その他の地域においては、自動車および産業機器向け需要が大幅に落ち込んだことなどにより、売上高は6,764百万円と前期比10.6%の減収となりました。営業利益は、売上高の減収などにより212百万円と前期比40.7%の減益となりました。

・所在地別の経営成績

 前連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)

 

日本

(百万円)

米国

(百万円)

アジア

(百万円)

欧州他

(百万円)

(百万円)

消去又は

全社

(百万円)

連結

(百万円)

売上高

 

 

 

 

 

 

 

 (1)外部顧客に対する売上高

59,064

8,517

44,531

7,562

119,675

119,675

 (2)所在地間の内部売上高又は振替高

31,765

0

7,367

39,133

△39,133

90,830

8,517

51,899

7,562

158,809

△39,133

119,675

  営業利益

324

191

1,267

358

2,141

407

2,549

 

 当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)

 

日本

(百万円)

米国

(百万円)

アジア

(百万円)

欧州他

(百万円)

(百万円)

消去又は

全社

(百万円)

連結

(百万円)

売上高

 

 

 

 

 

 

 

 (1)外部顧客に対する売上高

53,373

8,069

47,866

6,764

116,073

116,073

 (2)所在地間の内部売上高又は振替高

34,422

2

9,445

43,870

△43,870

87,796

8,072

57,311

6,764

159,944

△43,870

116,073

  営業利益または

  営業損失(△)

△923

292

1,911

212

1,492

81

1,573

 

 

・海外売上高

 前連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)

 

米州

アジア

欧州他

Ⅰ 海外売上高(百万円)

8,522

45,414

7,564

61,501

Ⅱ 連結売上高(百万円)

 

 

 

119,675

Ⅲ 連結売上高に占める海外売上高の割合(%)

7.2

37.9

6.3

51.4

 

 当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)

 

米州

アジア

欧州他

Ⅰ 海外売上高(百万円)

8,074

48,730

6,766

63,571

Ⅱ 連結売上高(百万円)

 

 

 

116,073

Ⅲ 連結売上高に占める海外売上高の割合(%)

7.0

42.0

5.8

54.8

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ1,325百万円増加し19,766百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、前年に比べ2,284百万円収入が増加し7,095百万円の収入となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益が2,752百万円、減価償却費を5,245百万円を計上したことに加え、仕入債務の増加額が1,016百万円となったことなどによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、前年に比べ751百万円支出が減少し4,014百万円の支出となりました。これは主に、有価証券・投資有価証券の売却及び償還による収入が4,733百万円となりましたが、一方で、有価証券・投資有価証券の取得による支出が1,764百万円、有形固定資産の取得による支出が5,922百万円となったことなどによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、2,125百万円の支出(前年は4,982百万円の収入)となりました。これは主に、短期借入金の純増減が4,600百万円となった一方で、配当金の支払額が1,642百万円、長期借入金の返済による支出が4,672百万円となったことなどによるものです。

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)における製品区分の生産実績は、次のとおりです。

製品区分

当連結会計年度(百万円)

前期比(%)

電子機器用

62,853

106.2

電力・機器用及び応用機器

15,699

94.4

回路製品

36,824

88.3

その他

237

49.7

合計

115,614

98.0

(注)1.金額は、販売価格によります。

2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

b.受注実績

 当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)における製品区分の受注実績は、次のとおりです。

製品区分

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期末比(%)

電子機器用

77,989

129.0

28,010

221.2

電力・機器用及び応用機器

16,404

98.6

4,247

111.2

回路製品

37,429

90.0

4,325

105.2

その他

331

62.5

342

138.1

合計

132,155

110.9

36,925

177.2

(注)上記の金額には、消費税等は含まれていません。

c.販売実績

 当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)における製品区分の販売実績は、次のとおりです。

製品区分

当連結会計年度(百万円)

前期比(%)

電子機器用

62,644

100.7

電力・機器用及び応用機器

15,976

97.7

回路製品

37,215

91.6

その他

237

49.7

合計

116,073

97.0

(注)上記の金額には、消費税等は含まれていません。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

①重要な会計方針および見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたって、財政状態および経営成績に影響を与える項目は下記のとおりです。なお、当社グループの重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等  注記事項  4.会計方針に関する事項」に記載しています。また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等  注記事項  (重要な会計上の見積り)」に記載しています。

a.固定資産の減損

 当社グループは、事業用の様々な有形固定資産および無形資産を所有しています。毎期、資産または資産グループに減損が生じている可能性を示す事象(減損の兆候)があるかどうかを判定し、減損の兆候がある資産または資産グループについて、帳簿価額がこれらの資産の継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる割引前の将来キャッシュ・フローの総額を超える場合に、減損損失を認識することとしています。また、資産または資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの割引現在価値と、正味売却価額のいずれか高い方の金額を資産の回収可能価額とし、帳簿価額が回収可能価額を上回る額を減損損失として測定しています。今後の事業計画との乖離や市況・需要の変化等によって、期待される収益やキャッシュ・フローが生み出せない可能性を示す事象(減損の兆候)が見られる場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。

b.貸倒引当金

 当社グループは、売掛債権、貸付金等による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権および破産更生債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しています。顧客の財政状態が悪化し、その支払能力が低下した場合は追加引当が必要となる可能性があります。

c.投資の減損

 当社グループは、長期的な取引関係の維持のために、特定の顧客等および金融機関の株式を所有しています。これらの株式には価格変動性が高い上場会社の株式と、株価の決定が困難である非上場会社の株式が含まれています。当社グループは連結会計年度末において、上場会社では株価が取得価額を50%以上下落した場合、非上場会社では会社の純資産額が欠損により50%以上下落した場合に減損損失を計上しています。また、株価が取得価額の30~50%程度下落した場合には、回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損損失を計上しています。将来の市況悪化または投資先の経営成績不振により、減損損失の計上が必要となる可能性があります。

d.繰延税金資産の回収可能性

 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等  注記事項  (重要な会計上の見積り) 2.繰延税金資産の回収可能性」に記載のとおりです。

e.退職給付に係る負債および年金制度

 当社の退職金規程では、勤続年数3年以上の従業員については、原則として退職時に退職一時金の受給資格を有することになります。この退職給付金は、通常、勤務年数、退職の事由、退職時の算定基礎額により算出されています。

 当社および一部の国内連結子会社は、従業員の退職給付に関し、確定給付型年金制度および退職一時金制度を採用しており、当社および在外連結子会社の一部につきましては、確定拠出型年金制度を採用しています。退職給付に係る負債および退職給付費用の計算は、数理計算上で設定された前提条件に基づいて算出されており、これらの前提条件には割引率、年金資産の長期期待運用収益率、将来の昇給率、退職率、死亡率などが含まれます。当社グループが使用した前提条件は妥当なものと考えていますが、実際の結果が異なる場合、または前提条件が変更された場合は、退職給付に係る負債および退職給付費用に影響を与える可能性があります。

f.製品保証引当金

 当社は、製品の販売に係る一定期間内の無償サービスの費用に備えるため、当該費用の発生割合および支出実績を勘案した見積額を計上していますが、実際の製品不良率や保証費用が見積りと異なる場合には、追加の引当が必要となる可能性があります。

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

イ.財政状態の分析

 当連結会計年度末の総資産は、前期末に比べて16,582百万円増加し156,008百万円(前期末比11.9%増)となりました。

 流動資産は、前期末に比べて10百万円増加して77,865百万円(前期末比0.0%増)となりました。これは主に、有価証券が前期末に比べ1,578百万円減少し1,044百万円となった一方で、現金及び預金が前期末に比べて1,325百万円増加し19,766百万円となったことなどによるものです。

 有形固定資産は、前期末に比べて1,739百万円増加して35,505百万円(前期末比5.2%増)となりました。これは主に、当連結会計年度における設備投資実施額が6,542百万円となり、減価償却費5,245百万円を上回ったことなどによるものです。

 投資その他の資産は、前期末に比べて14,793百万円増加して41,551百万円(前期末比55.3%増)となりました。これは主に、投資有価証券が前期末に比べて14,229百万円増加して38,605百万円となったことなどによるものです。

 流動負債は、前期末に比べて4,676百万円増加して41,183百万円(前期末比12.8%増)となりました。これは主に、未払費用および前受金を含むその他の流動負債が前期末に比べ1,292百万円減少し5,722百万円となった一方で、1年内返済予定の長期借入金を含む短期借入金が前期末に比べて4,600百万円増加し11,672百万円、支払手形及び買掛金が前期末に比べ1,580百万円増加し11,728百万円となったことなどによります。

 固定負債は、前期末に比べて89百万円増加して25,558百万円(前期末比0.3%増)となりました。これは主に、長期借入金が前期末に比べ4,672百万円減少し1,152百万円となった一方で、繰延税金負債が前期末に比べて4,763百万円増加して7,891百万円となったことなどによるものです。

 利益剰余金は、親会社株主に帰属する当期純利益1,703百万円を計上し、配当金の支払いを1,642百万円行ったことで、前期末に比べて61百万円増加して48,916百万円となりました。その他有価証券評価差額金は、前期末に比べて10,678百万円増加して18,512百万円となりました。また、為替換算調整勘定は、前期末に比べて854百万円増加して236百万円となりました。

 自己株式の期末残高は、前期末に比べて0百万円増加して11,625百万円となりました。

 以上の結果、純資産は前期末に比べて15.3%増加し89,266百万円となりました。

 直近3事業年度の自己資本比率および時価ベースの自己資本比率は次のとおりです。

 

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

自己資本比率(%)

56.6

54.2

55.9

時価ベースの

自己資本比率(%)

50.5

33.2

49.2

(注)1.自己資本比率:自己資本/総資産

2.時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

ロ.経営成績の分析

a.売上高

 当連結会計年度の売上高は、前期に比べ3,602百万円減少し、116,073百万円(前期比3.0%減)となりました。

 国内売上は、米中貿易摩擦や新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、アルミ電解コンデンサではインバータ関連機器向けの売上が減少したことに加え、応用機器および家庭用蓄電システムの売上も減少したことなどにより、売上高は52,502百万円と前期比9.7%の減収となりました。海外売上高については、アジア市場においてインバータ関連機器向けの売上が減少したものの、情報通信機器向けが伸長したことなどにより、売上高は48,730百万円と前期比7.3%の増収となりました。米州については新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、主に上半期においてアルミ電解コンデンサの自動車向け需要が減少したことなどにより、売上高は8,074百万円と前期比5.3%の減収となりました。また、欧州他は自動車および産業機器向け需要が大幅に落ち込んだことなどにより、売上高は6,766百万円と前期比10.5%の減収となり、海外市場全体では前期比3.4%の増収となりました。これらの結果、連結売上高に占める海外売上高の割合は、前期比3.4ポイント上昇し54.8%となりました。

b.売上原価・販売費及び一般管理費

 当連結会計年度の売上原価は、調達コストの低減や生産性向上を図りましたが、売上高の減収による固定費負担の割合が増加したことなどにより、前期に比べ2,277百万円減少し99,185百万円(前期比2.2%減)となり、売上原価率は前期比0.7ポイント上昇して85.5%となりました。

 販売費及び一般管理費は、前期に比べ349百万円減少し15,314百万円(前期比2.2%減)となりました。この結果、売上高販管費比率は前期比0.1ポイント上昇して13.2%となりました。

c.営業利益と親会社株主に帰属する当期純利益

 当連結会計年度の営業利益は、上記a.およびb.の結果、前期に比べ975百万円減少し1,573百万円(前期比38.3%減)となりました。

 営業外損益項目では、助成金収入を513百万円計上したことなどにより、経常利益は前期に比べ605百万円減少し3,015百万円(前期比16.7%減)となりました。

 特別損益項目では、特別利益として投資有価証券売却益を289百万円(前期は218百万円)計上し、特別損失には、新型コロナウイルス感染症による損失469百万円を計上しました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期に比べ1,108百万円減少し1,703百万円(前期比39.4減)となりました

ハ.キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ1,325百万円増加し19,766百万円となりました。

 変動要因は「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 なお、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリー・キャッシュ・フローは、3,081百万円となりました。資金調達の方法および状況ならびに資金需要の動向については次項「ニ.資本の財源及び資金の流動性」に記載のとおりです。

ニ.資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの主な資金需要は、設備投資、改修等に係る投資資金や、当社製品製造のための人件費や経費、材料および部品などの製造費用、研究開発費を含む販売費及び一般管理費等の運転資金です。

 これらに必要な資金の主な源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入による資金調達および社債の発行により対応します。当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響拡大に備えた手許資金や短期の運転資金の確保のため、金融機関から短期借入金4,600百万円を調達しました。

 当社グループは、手許資金ならびに直接・間接金融による資金調達を実施し、事業の拡大に必要な資金の流動性を確保できるものと考えています。

ホ.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 翌期(2022年3月期)の経済環境の見通しは、引き続き新型コロナウイルス感染症拡大に伴う世界経済への影響や米中対立の長期化により先行きの不透明感と不確実性が高い状況が続いています。

 当社グループにおいては、重点4市場と位置付ける「エネルギー・環境・医療機器」「自動車・車両関連機器」「白物家電・産業用インバータ機器」「情報通信機器」の各市場ともに、半導体不足などによるサプライチェーンの混乱や素材価格の上昇基調があるものの、カーボンニュートラルの動きの加速により需要は拡大する見通しです。

 当連結会計年度の計画の達成状況は以下のとおりです。

(百万円)

指標

当連結会計年度

(計画)

当連結会計年度

(実績)

当連結会計年度

(計画比)

売上高

116,000

116,073

( 0.1%)

営業利益

1,600

1,573

( △1.6%)

経常利益

2,500

3,015

( 20.6%)

親会社株主に帰属する当期純利益

1,750

1,703

( △2.7%)

 

 

4【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

5【研究開発活動】

 当社グループは、アルミ電解コンデンサ、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、小形リチウムイオン二次電池等の電子デバイスと、各種電源、機能モジュール、応用関連機器等の回路製品を主力製品とし、コンデンサと回路製品設計のコア技術を用いて「エネルギー・環境・医療機器」、「自動車・車両関連機器」、「白物家電・産業用インバータ機器」、「情報通信機器」の4市場を重点分野と定め、高信頼性、高安全性、高機能性を追求し、競争力に優れる新製品開発を展開しています。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は4,569百万円です。

製品区分毎の研究開発状況は、次のとおりです。

(1)コンデンサ事業

①アルミ電解コンデンサは、電極箔や電解液といった主要部材を自社で研究開発する強みを活かして、上記の重点分野向けに研究開発を進めました。陰極に導電性高分子を用いた導電性高分子アルミ固体電解コンデンサや電解質に導電性高分子と電解液の両方を使用した導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサは、車載機器や情報通信機器で需要拡大しており、高耐熱化や低ESR化といった高性能化を図るとともに、各種電源装置やインバータ機器向け需要の大きな低圧、高圧アルミ電解コンデンサは小形化や長寿命化による商品力強化に取り組みました。

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサでは、車載分野や産業機器分野および5G基地局などの情報通信分野におけるニーズに対応し、高容量タイプの「GYEシリーズ」を新たに開発するとともに、従来は63V定格までのラインアップであった「GYAシリーズ」に、80V定格を新たに追加して高電圧用途への対応を図りました。

導電性高分子アルミ固体電解コンデンサでは、業界最高クラスの長寿命化を実現している105℃20000時間保証のチップ形導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ「PCLシリーズ」に定格電圧2.5Vを追加しました。データ処理増大により回路電圧安定化が必要なサーバー機器や自動車ADAS機器などのアプリケーションに対して、MLCC(積層セラミック)と比較して静電容量や温度特性の安定性といったメリットを訴求しています。

チップ形アルミ電解コンデンサは、車載電装ユニットがエンジンルームや発熱の大きな電動車の走行モーター付近に搭載される機会が増加しているニーズに応えて、超高温度対応の150℃2000時間保証のチップ形アルミ電解コンデンサ「UBHシリーズ」を開発しました。従来品の150℃1000時間保証「UBCシリーズ」に対して長寿命化と最大1.5倍の静電容量を実現したことにより、特に部品搭載スペースの限られた電装ユニットの小形化と高信頼化の両立が実現できます。

小形リチウムイオン二次電池「SLBシリーズ」は負極にチタン酸リチウムを採用することで高レートでの急速充放電性能を有し、短絡や劣化の原因となるリチウム金属の析出が起こりにくいことで、破裂・発火の危険性が極めて低い安全な小形リチウムイオン二次電池であることが認められ、リード線形で直径3㎜長さ7㎜の超小形品をIoTエッジ端末やスマートフォン等のスタイラスペンに供給しています。新たに大容量化のニーズに応えて直径8㎜長さ11.5㎜、直径12.5㎜長さ40㎜サイズをラインアップに追加しました。

②フィルムコンデンサは、基本材料である金属蒸着フィルムから開発し、自動車・車両関連機器分野、特に環境負荷が小さく、市場拡大の目覚しいHV、EV、PHVなどの動力モーター駆動用インバータ回路向け平滑用フィルムコンデンサの開発に注力しました。これらの駆動用インバータユニットに用いられるフィルムコンデンサは、高周波特性・耐電流性能に優れ、長寿命で高信頼、高安全性に加え、顧客要求に応じたフレキシブルな対応が可能であることから、国内外の自動車メーカーへの採用が大きく拡大しています。今後の技術トレンドとして予想される次世代パワーデバイスSiC採用による高電圧化、高温度化に対応する誘電体や蒸着パターン技術開発、システムトータルで小形化に寄与するフィルムモジュール化技術といった製法や生産技術開発にも注力しています。

また、風力発電、太陽光発電などの再生可能エネルギー分野や汎用インバータなどの産機分野でも長寿命、高信頼の直流フィルタ用コンデンサが強く求められています。こうした市場ニーズに応える直流フィルタ用・平滑用コンデンサとして乾式樹脂モールド形「EJシリーズ」や円筒形「ERシリーズ」をとりそろえています。また当社のフィルムコンデンサは、金属蒸着フィルムに保安機構を採用することで安全性を高くするとともに長寿命化を実現しています。

③電力・機器用コンデンサでは、防災形進相コンデンサ「GeoDRY®」をはじめ、受変電高圧側、または、末端低圧負荷側に設置される用途に各種進相コンデンサとその附属機器をラインアップしています。進相コンデンサは、製品の安全性を重視し、誘電体絶縁破壊時に絶縁回復する信頼性の高い「金属蒸着電極(SH)コンデンサ」を全機種に採用しています。附属機器は、インバータ機器などによる発生高調波電流を起因とする電力系統の電圧ひずみや、お客さまの配電系統における高調波電流障害から設備や電気機器を保護するための高調波継電器を市場投入しました。この高調波継電器は、一般的な高調波に対する保護モードに加え、コンデンサ回路に特化した保護モードなど、保護対象に応じた保護モードの選定ができるほか、保護方式においても電圧ひずみ率、電流ひずみ率、電流値の3種類の保護方式に対応でき、高調波障害から電気機器を守ります。加えて、電力のバックアップや安定化に寄与する瞬時電圧低下/停電対策装置やパワーコントロールシステムなどの関連装置を取り揃え、BCP対策をはじめ総合的に高品位な電力の安定化を提案しています。

(2)NECST事業

当社グループは、「価値ある製品を創造し、明るい未来社会づくりに貢献します。」を経営理念に掲げ、その具現化を目指して、再生可能エネルギーの普及、エネルギーの地産地消、EVやPHVなど次世代自動車とそのインフラの普及を目指した取り組みを進めています。

2020年10月に政府が発表した方針において、2050年にカーボンニュートラルを実現することを掲げ、環境関連政策を重視する姿勢を明確にしました。その具現化に向けて化石燃料の使用を抑制し、再生可能エネルギーの活用を拡大する政策が打ち出されています。しかしながら太陽光発電や風力発電は気象状況に左右されるため、発電変動が大きいという課題があり、電力系統の安定とエネルギーの有効活用を実現するには蓄電システムとその効果的な運用が必要です。

大規模太陽光発電施設の増加に伴い、電力の需給バランスが変化し、大量の余剰電力の発生が生じ、出力抑制というせっかく発電した再生可能エネルギーを利用できない事態が発生しています。このように無駄になっている余剰電力を有効活用して水を電気分解し、水素に転換して貯蔵し、電力が不足する時に水素を用いて発電する試みが国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を得て山梨県で進められています。当社は、再生可能エネルギーが発電した電力で水素製造するための大電流電源の開発を担当し、再生可能エネルギーの有効活用に貢献しています。

カーボンニュートラルを支える要素としてZEH(ネットゼロエネルギーハウス)も有望視されており、当社は住宅メーカーが販売しているZEHに家庭用蓄電システムや太陽光発電を含むハイブリッド型、さらにV2H(Vehicle to Home)機能も併せ持ったトライブリッド型などの複合システム商品を設置してZEHの拡大に貢献しています。当連結会計年度は、自立時全負荷対応が可能な家庭用蓄電システムの新商品を開発し、発売しました。また、過年度においては、電気自動車から家庭に電気を供給できるV2Hシステムを業界に先駆けて開発し、EVパワー・ステーション®として市場投入してきました。これらの商品は、公共・産業用蓄電システムや、電気自動車から独立電源を供給するパワー・ムーバー®(V2L)などと共に、最近増加している甚大な自然災害による長期停電時に避難所に電力供給できる商品として、避難された方々に重宝されています。

医療関係分野では、がん治療として注目されている粒子線(陽子線・重粒子線)治療向けの医療用加速器電源の性能向上や小型化などに取り組み、国内外の医療機関への納入を増やしました。研究用途の加速器用電源では、東北地方に新たに建設される放射光施設向けの電源の開発が進展しました。

事務機器向けスイッチング電源関連では、環境関連であるLED用電源など新たな分野への展開を目指して技術開発を進めています。

(3)産学連携による研究開発

当社は、産学連携を技術開発の重要な要素と位置づけ、積極的に活用してきております。2016年9月に締結した東京大学生産技術研究所と包括的な産学連携研究協力協定では、当社の技術者を東大に派遣して研究開発を共同で推進し、独自の運営方式により、コンデンサの素材基礎開発からNECSTの次世代ビジネスに関わるシミュレーションまで、幅広い課題を解決するだけでなく、当社技術者の育成にも効果を発揮しています。一方、次世代半導体として期待され、一部に実用化が進んでいるSiCのモジュール化の開発においては、京都大学、大阪大学、大阪工業大学などと共同開発を継続的に行っており、NECSTの要素開発やプラットフォーム構築、および商品開発に寄与しています。こうした産学連携を数年来継続しており、大学の教員と当社社員との関係も深まり、当社の技術者に対する教育効果を含めて研究開発力強化が図られつつあります。