第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1)経営方針

当社グループは、「価値ある製品を創造し、明るい未来社会づくりに貢献します。より良い地球環境の実現に努め、倫理的・社会的責任を果たすとともに、顧客・株主・従業員をはじめ全ての人々を大切に、企業価値の最大化を目指して、誠心誠意をもって「考働(※)」します。」を経営理念に掲げ、「モノづくりからコトづくり」「製造業から創造業への変革」の実践と、「品質、コスト、納期、サービス、技術」などあらゆる面で最上級を目指すトップノッチ経営を打ち出し、積極的な成長戦略を展開し、企業価値の向上を図ります。

これらを踏まえ、当社グループは中期成長目標「Vision 2025」に基づき、売上高と営業利益率の持続的な成長を経営指標として事業運営を行っています。また、これらに付随してROE、ROICの持続的向上とPBRの改善につなげていきます。

※考働:考えて働くという当社の造語

(2)中期的な成長戦略、経営環境と対処すべき課題

当社グループは、アルミ電解コンデンサ、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、小形リチウムイオン二次電池等の電子デバイスを主体としたコンデンサ事業と、家庭用/公共・産業用蓄電システム、EV・PHV用急速充電器、V2Hシステムの環境関連製品、スイッチング電源、機能モジュール、研究・医療・産業用特殊電源等の回路製品を主力製品としたNECST事業を展開し、「エネルギー・環境・医療機器」、「自動車・車両関連機器」、「白物家電・産業用インバータ機器」、「情報通信機器」の4市場を重点分野と定め、高信頼性、高安全性、高機能性を追求し、競争力に優れる新製品開発により社会課題の解決に貢献し、既存事業の拡大と新規事業の創出に努めています。

①低炭素社会の実現とキーテクノロジーの進展に向けた事業機会の獲得

コンデンサ事業では、アルミ電解コンデンサの最先端技術と国内外の生産・販売体制を強みとし、モビリティ、情報通信、環境関連の成長市場にフォーカスし、品質、コスト、納期、サービスに渡る事業基盤を強化、拡充します。また、金属蒸着フィルムから独自開発、生産するxEV用フィルムコンデンサでは、需要の拡大を成長機会と捉え、販売拡大と生産体制の強化を着実に進めてまいります。コンデンサ事業で創業以来培った強みを今後も継続的に進化させていくため、技術面ではニーズ開発から商品開発、産学連携によるシーズ開発を、生産面では継続的な品質向上等の推進に加えて、共通指標をベースとしたKPI目標管理を導入し、プロセス強化に取り組んでいきます。

NECST事業では、脱炭素化のメガトレンドを受けて、エネルギー・環境関連の幅広い製品群とスイッチング電源から研究・医療・産業用などの特殊電源までをカバーする回路技術を生かし、価値提供のさらなる充実を図ります。とりわけ、環境関連製品では、世界的な脱炭素化の高まりやエネルギー価格の高止まりによる再エネ、蓄電市場拡大への対応と、蓄電、電力制御技術を活かしたトータルシステム展開を強化します。また、EVシフトへの対応として、急速充電器、外部給電器「パワー・ムーバー®」、V2Hシステムで社会充電インフラを拡充していきます。これらの環境関連製品では、くらしの中のエネルギーパフォーマンスを高めるという新しい価値提案と市場を創造するとともに、お客さま(最終消費者)の認知度を上げるため、新ブランドコピー「くらしに、エネパ!」を掲げブランド力の向上に注力しています。回路製品では、スイッチング電源においては、これまで培ってきた省電力制御基板技術を生かし、特に空調機器、ロボット、通信機器などの成長市場へ拡大を目指します。また、大型特殊電源、医療用/学術用加速器電源ではグローバル展開を図り、社会インフラシステムへ貢献します。加えて、小形リチウムイオン二次電池、家庭用蓄電システム、V2Hシステムに代表されるナンバーワン、オンリーワンの革新的な製品・技術開発体制を強化し、社会課題の解決に貢献する製品開発をさらに加速していきます。

②外部環境に左右されない強い経営体質への変革

SDGsやカーボンニュートラル等により、産業構造や社会経済に変革がもたらされ、DX(デジタルトランスフォーメーション)化の進展と相まって、大きなビジネスチャンスを生み出す可能性が高まっています。今後、クルマの電動化とEVへのシフトが進み、人びとの生活ではAI、IoT等デジタルテクノロジーの革新的進歩が見られ、自動化や省電力化の需要が先進国だけでなく新興国にも拡大し、これを支えるための発電コストの低減による再生可能エネルギーの主力電源化が進展していくことが予想されます。当社グループは、一般財団法人日本特許情報機構(Japio)のSDGs指向性評価指標「Japio-SDGs特許インデックス」企業ランキングにおいて、電子部品・デバイス・電子回路製造業部門で第2位にランクされました。豊富な技術シーズを活かし、今後も環境・エネルギー分野を中心に社会のサステナビリティに貢献できる製品・ソリューションを創出していきます。

パラダイムシフトと不確実性がより一層増すなか、中長期視点での成長を成し遂げていくにあたり、「G:グリーン(環境)」と「D:デジタル(DX)」をキーワードとした「価値」提供が重要なポイントになると考えています。

G(環境)については、気候変動問題が世界的な課題になるなか、関連マーケットもさらに巨大化し、環境配慮型の当社の製品・ビジネスのチャンスもさらに大きくなると予想されます。再生可能エネルギーの活用を拡大する蓄電システムをはじめ、気候変動ニーズに対応したコンデンサ事業、NECST事業の各製品をさらにレベルアップしていくことで競争優位性をさらに高めていきます。

また、D(デジタル)については、企業競争力の強化という面でDXの推進がより不可欠になっています。事業成長では単に良い製品・技術を生み出すだけでなく、DXを駆使してお客さまへのサービス向上や生産性の向上、投資効率の向上によって収益体質を高めることに注力しています。この様にして「稼ぐ力」に磨きをかけることで、次なる成長のための設備投資や研究開発投資、持続的な賃上げを含む優秀な人材の確保といった好循環を生み出していきます。サステナブルな社会に貢献していくには、まず当社グループ自身が収益を上げ持続可能であることを念頭に、DXを成長ドライバーとして各部門の業務を合理化・効率化し、ビジネスの創出と利益体質の構築に取り組んでいきます。

③ESG経営の構築と推進

当社グループではESGで評価される企業を目指して「サステナビリティ方針」を定め、持続的な成長と企業価値の増大に向けて、当社製品による地球環境への貢献と自社での対応取り組み、多様な働き方など人材面の基盤強化、コーポレートガバナンスやコンプライアンス体制の強化に努めていきます。

環境課題については、地球温暖化抑制のための取り組みに貢献するため、CO2をはじめとした温室効果ガス排出量(Scope1,2,3)の削減目標として、2030年度に46%削減(2021年度比)を目指しています。その一例として、家庭用蓄電システムの中核生産拠点であるニチコンワカサにおいて100%再生可能エネルギー利用工場としたほか、自社拠点において太陽光で発電した電力を蓄電し、これをEVへの充電や生産設備への給電を無駄なく効率的に行う複合システムを設置し、生産工場などの大規模施設における再生可能エネルギーの新たな活用方法によるCO2削減に取り組んでいます。さらに気候変動が事業に与えるリスク・機会について分析を進め、中長期的な事業展開やCO2削減活動に生かすとともに、CO2排出量(Scope1,2,3)実績やTCFDに基づく情報開示にも取り組んでいます。2024年度のCDP気候変動レポートにおいては、気候変動分野で最高評価の「Aリスト」に選定され、水セキュリティ分野におきましてもリーダーシップレベルである「A-(Aマイナス)」の評価を得ました。また温室効果ガス排出削減目標の国際的なイニシアチブであるSBT(Science Based Targets)認定を取得しており、引き続きこれらの取組みを推進していきます。

また、当社グループでは「人こそニチコンのエネルギー」を人事理念とし、「人」が最大の経営資源であるとの観点に立ち、従業員一人ひとりが社会や時代のニーズを敏感に察知し、コンプライアンスへの意識を高く持ちながら考働していくこと、やりがいや成長を実感でき、能力を発揮できるよう人事制度や社内環境の整備に努めています。社会との接点においては産学連携にも注力しており、東京大学生産技術研究所との包括的な産学連携研究協力協定では、素材やデバイス、デザインに至るまでの多様なカテゴリーで共同研究を行うなど、大学機関との研究開発活動も積極的に推進し、知的資本の強化に努めていきます。

コーポレートガバナンスについては、取締役会の多様性や知識・経験・能力のバランスの最適化を確保するため、スキルマトリクスを整備するとともに半数を社外取締役としています。さらに、取締役会の諮問機関として過半数を社外役員で構成する指名・報酬委員会を設置し、取締役の指名および報酬等に関する手続きの公正性、透明性、客観性を確保しています。コンプライアンス体制の強化では、業務の適正を確保するための体制ならびに財務報告の信頼性を確保するための体制を充実させ、一層の内部統制の整備・運用を推進していきます。

これらに加え、政策保有株式は、中長期的な視点に基づいた保有先企業との取引状況や関係性、ならびに保有先企業の財政状態および株価、配当等の状況など、継続保有の合理性や経営資源の有効活用について取締役会にて定期的に検証を行っています。保有意義の薄れてきた銘柄については、取引先等との対話・交渉を実施しながら、縮減を進めています。

政策保有株式の連結貸借対照表上の合計額(2025年3月31日現在)

区分

第88期

(2023年3月期)

第89期

(2024年3月期)

第90期

(2025年3月期)

銘柄数

42

38

33

連結貸借対照表計上額の

合計額(百万円)

23,581

26,722

21,719

連結純資産比率(%)

23.3

23.5

19.1

(注)みなし保有株式に該当する株式を保有していません。

2【サステナビリティに関する考え方および取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組は次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(サステナビリティ方針)

 私たちは、ニチコングループ経営理念に基づき、価値ある製品の創造を通じて明るい未来社会づくりに貢献するとともに、より良い地球環境の実現に努めます。

 また、全てのステークホルダーに対し誠心誠意をもって対応し、企業の社会的・倫理的責任を果たすことで、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します。

 

 1.素材開発からシステム設計まで幅広い技術を融合し、デジタルトランスフォーメーションとオープンイノベーションの推進により気候変動など社会の課題を解決し、明るい未来社会づくりに貢献します。

 2.全てのステークホルダーとの対話と連携を大切にし、共有価値の創造と公正かつ透明性の高い経営を実現します。

 3.人権の尊重と多様性の確保、人材の育成、トップノッチ経営(※)によりお客様価値を高め、企業の発展と全従業員の幸福を目指します。

 ※品質、コスト、納期、サービス、技術などあらゆる面において最上級を目指すこと。

 

(1)ガバナンス

(サステナビリティ推進体制)

 ニチコングループは2021年11月30日に、中期成長目標「Vision 2025」と同時に、目標の達成を通して持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指す「サステナビリティ方針」を定めました。この方針に基づく経営を実践していくため、サステナビリティ推進室を設置し(2022年2月)、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を運営しています。

 サステナビリティ推進委員会は、これまでの「CSR推進委員会」(2003年6月発足)の機能を強化・発展させたもので、全社的な取り組みの方針検討や決定に加え、進捗管理や改善指示などの機能を担います。そのため、本推進委員会に紐づく委員会もESGに対応させた「環境・エネルギー」(E)、「ダイバーシティ」(S)、「コンプライアンス・リスク管理」(G)としています。サステナビリティ推進委員会は月1回開催し、3つの委員会で議論したサステナビリティ課題への検討結果を議論します。

 

≪サステナビリティ推進体制図≫

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(2)リスク管理

 サステナビリティ推進委員会は、社長・取締役・執行役員のほか各部門の部長クラスの幹部社員も参加し、現場の実態を踏まえた意見やアイデアを出すことにより議論の活性化を図っています。各委員会での検討を踏まえた問題提起や具体的な提案を検討する場として、会議体としての実効性をより高めています。

 ダイバーシティ推進やCO2排出削減など、各活動に関するKPIの選定および目標を設定し、目標達成のための課題などについて議論を重ねるとともに、関連情報の収集・アップデートやベンチマーク設定を進めています。

 サステナビリティ推進委員会の活動は「サステナビリティ方針」や中期成長目標「Vision 2025」に基づいたもので、根底には当社の経営理念が礎となっています。そのことを常に念頭に置きつつ、総務・人事をはじめ社内の各部門や他の会議体とも連携を図りながら、スピーディ、かつダイナミックな活動を進めています。

 サステナビリティ全般に係るリスク管理は、サステナビリティ推進委員会内にコンプライアンス・リスク管理委員会を設け、関連部門の責任者がメンバーとなり、コンプライアンス全般、環境安全衛生、情報セキュリティをはじめ、あらゆるリスクに対して横断的に対処できる体制としています。

≪サステナビリティ経営の概念≫

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(3)戦略

①人材の多様性の確保を含む人材の育成

(人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針)

 当社グループにおける≪人事理念≫、≪求める人材像≫、≪人事ポリシー≫と、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針は以下のとおりです。

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 従業員の働きがい・やりがいを意識した人事施策として、2024年度から1on1ミーティングを実施した結果、2023年度、2024年度のエンゲージメント調査における管理職と管理職未満のコミュニケーションギャップは改善されました。今後も上司/部下や組織の枠を超えたコミュニケーション施策を推進することで、全従業員の「個」の力を高め、チーム力を発揮し、みなが相互理解のうえで経営理念の実現を目指します。

 「階層別研修」「職能別研修」「コンプラインス研修」「競争法研修」「エチケット・マナー研修」「女性リーダー研修」等、従業員の育成・成長支援への施策(特に女性が活躍できる施策)を加速するとともに、QC検定合格や資格取得奨励のほか多彩な通信教育の受講を推奨し、意欲ある従業員の能力向上の機会を充実させています。また、2024年度より、社員の英会話力向上のため、英会話学習講座プログラムを新設することで、グローバルに活躍できる人材育成を推進しています。

 若手技術者育成の一環として、産学連携研究協力協定を締結している東京大学生産技術研究所に若手技術者を派遣し、最先端技術の共同研究を通して技術者育成支援を積極的に行うとともに、事業本部を跨いだ若手中心の新規商品開発会議ならびに事業化推進を実施する等、さまざまな人材育成の施策を行っています。

 

(社内環境整備に関する方針)

 当社グループにおける社内環境整備に関する方針は以下のとおりです。

 当社グループは2024年度に行動規範の見直しを行い、すべての人の基本的人権・個人の尊厳とプライバシーの尊重を掲げ、国籍・人種・性別等による差別を行わないことに加え、ハラスメントに関する教育教材を刷新することで、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどの名誉棄損行為による人権侵害を一切行わないことを繰り返し教育しています。

 企業の健全な成長のためには従業員一人ひとりが心身ともに健康であることが重要であり、法定健診はもとより、生活習慣病健診や人間ドックの実施により疾病の早期発見、早期治療のための取り組みを行うとともに、健康障害の予防として、長時間労働の抑制や、一斉有給休暇取得日を設け、休暇取得を促進するなど就業環境の向上に取り組んでいます。

 「労働災害・通勤途上災害の発生ゼロを目標に安全指導・教育の徹底」を重点テーマとして、2カ月に一度、事業所間で活動状況の取組事例を共有し、優れた点については横展開することで、安全衛生活動のレベルアップを図っています。

 2025年の新卒採用実績は92名で、内女性は22名、外国留学生は12名です。また、2024年の中途採用実績は141名で、新卒採用に偏ることなく、スキルのある人材を積極的に採用することで、多様な人材が活躍できる組織体制と組織風土を築いています。

 

②気候変動

 当社グループは1997年12月にニチコングループ環境憲章を制定(2015年8月改訂)し、経営理念として、価値ある製品の創造を通じて明るい未来社会づくりに貢献するとともに、より良い地球環境の実現に努めてまいりました。中期成長目標「Vision 2025」では、サステナビリティ方針に基づき気候変動への対応を重要課題のひとつとして設定し、取締役会において低炭素社会の実現に向けた事業機会の獲得やESG経営の構築と推進について対応方針や施策を決定しています。また、これらの推進体制として、サステナビリティ推進委員会内に環境・エネルギー委員会を設け、関連部門の責任者がメンバーとなり、横断的な体制としています。

 環境・エネルギー委員会において、全社的な環境保全や気候変動に関する戦略・方針・目標・計画・施策などを審議し設定するとともに、毎月のサステナビリティ推進委員会にて環境・エネルギー委員会による実施状況のレビューを実施しています。また、本社管理本部に環境管理総括責任者、製造事業所にEMS(環境マネジメントシステム)管理責任者、EMS事務局を置き、環境方針・環境保全計画に沿って活動する体制としています。加えて、サステナビリティ推進委員会においては、気候関連リスクのほか、同推進委員会内のコンプライアンス・リスク管理委員会を中心にその他の重要リスクの洗い出しと管理を行っています。事業継続計画(BCP)や事業継続マネジメント(BCM)に基づくリスク発生時の全社連絡体制を整備しており、危機発生時には、規模、レベルに応じた対策本部を設置して対策立案と指揮・命令を実行する仕組みとしています。

 

 当社グループは、世界的な地球温暖化抑制のための取り組みに貢献するため、当社グループの事業活動に伴う温室効果ガス排出量(Scope1、2、3)の削減目標として、2030年に46%削減(2021年度比)、2050年にカーボンニュートラルを目指します。また、環境保全や資源維持に向けた産業廃棄物排出量の管理、再資源化量・再資源化率の向上にも積極的に取り組んでいます。

 さらに、当社製品やサービスを活用いただくことによって、お客さまの気候変動対策に関する役立ちをわかりやすくすることにも注力しています。

 当社グループは、これらの目標設定を踏まえ、より一層の地球環境の保全に向けた事業活動を推進していくことにより、サステナブルな社会の実現への貢献と企業価値の向上を図ります。

 

 当社グループの主要事業であるコンデンサ事業およびNECST事業について、気候変動がおよぼすリスクと機会について事業を取り巻く環境を整理し、ステークホルダーや当社グループにとっての重要性を考慮したうえで、事業活動への影響を「大」「中」「小」の3段階で評価しています。

 

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③情報セキュリティの強化

 情報通信技術の普及により利便性が飛躍的に高まる一方で、近年、企業を標的にしたサイバー攻撃や、従業員による故意または過失の行為による情報漏えいなども多数発生しています。これらに適時適切に対応しなければ、社会的信用の失墜、システムの修復やお客さまへの補償などの経済的損失、システムダウンによる事業活動の停止など、当社のみならず、取引先や株主・投資家などあらゆるステークホルダーへ悪影響を及ぼす可能性があります。また、世界各国でデータ保護や個人情報保護の規制・法令の制定・強化が進められており、これらに違反した場合の罰則が厳罰化している傾向にあります。

 当社グループでは、情報セキュリティリスクへの対策として、人的対策と技術的対策の2つの側面からその取り組みを進めています。人的対策としては、「情報セキュリティ基本方針」「情報システムセキュリティ規程」「個人情報保護方針」「個人情報管理規程」など、従業員が遵守すべき事項を定めた各種規程を制定し、これらの規程に基づいた情報セキュリティ教育や、標的型攻撃メールの訓練などを定期的に実施しています。また、今年度からは、国内の一部拠点を対象にした情報セキュリティの内部監査を実施いたしました。

 技術的対策としては、マルウェア対策、パソコンの操作履歴などの各種ログの収集、情報へのアクセスコントロール、脆弱性診断の受診、疑似アタックの実施、通信内容の監視による不正侵入の防止、USBメモリ・SDカード等の記憶媒体の使用制限などを実施しています。

 また、従業員が使用するパソコンは外部の専門機関が24時間365日監視しており、不審な挙動を検知した場合には、早期に発見・対処する体制を整備しています。その他、情報セキュリティに関する事件・事故の発生に備え、グループ全体でサイバーセキュリティ保険に加入しています。

(4)指標と目標

 当社グループにおけるサステナビリティ(全般、人的資本、情報セキュリティ)に関する方針について、次の指標を用いており、当該指標に関する目標および実績は次のとおりです。

指  標

目  標

実績

(前連結会計年度)

実績

(当連結会計年度)

サステナビリティ推進委員会

開催回数

毎月開催

12回

12回

管理職に占める女性労働者の割合

(注)1

2026年3月7

4.7%

6.3

従業員エンゲージメント指数の改善(注)2

前年対比従業員のエンゲージ指数を改善

△0.09

度数率(注)3

2026年3月までにゼロを達成

0.72

0.89

情報セキュリティ教育

1回

1回

1回

情報セキュリティ内部監査

5拠点/年

5拠点/年

標的型メール訓練

1回

1回

※国内のメールユーザ4分の1が対象

1回

※全メールユーザが対象

疑似アタックによるリスク調査

1回

1回

1回

脆弱性診断

1回

1回

 (注)1.提出会社の目標と2025年3月末時点の実績

   2.当社独自の従業員エンゲージメント指数

    3.100万延べ実労働時間当たりの労働災害による死傷者数をもって災害発生の頻度を表したもの

提出会社を含む国内連結子会社の目標と2024年度の実績

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績、株価および財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下のようなものがあります。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。

(1)経済状況について

 当社グループは世界各地で、アルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、回路製品などの製品を製造・販売しています。このため、当社グループ製品の需要は、製品を販売している国または地域の経済状況によって事業運営や経営成績および財務状況に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

 これに対し当社グループでは、グローバルでの経済状況の変化を毎月開催している経営会議や年1回に開催しているグローバルの事業計画推進会議などで注意深く見守り、機動的な販売戦略や生産体制を講じるなど、状況に応じた対応が取れるように対策を行っています。

 2026年3月期の経済環境の見通しについても、米国による関税問題をはじめ、経済安全保障体制の懸念、政策金利の上昇や急激な為替変動、さらにロシア・ウクライナ情勢や中東情勢による原材料、エネルギー価格の高止まりや物流網の混乱など不確定要素が多く、世界経済の先行きは極めて不透明な状況が続いています。引き続き動向には注視するとともに、業績確保に向けた様々な対策、施策を講じていきます。

(2)為替変動によるリスクについて

 当社グループの事業、経営成績および財務状況における外貨建ての項目については、連結財務諸表作成のため円換算されています。これらは、為替レートの変動により、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。当社グループは、為替リスクを軽減・ヘッジするために必要に応じて為替予約を締結していますが、当社グループの経営成績および財務状況への影響を完全に排除できる保証はありません。

(3)価格競争リスクについて

 当社グループは、アルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、回路製品などのコア事業の強化とグローバル体制の構築を目指し、国内外の生産拠点の強化および販売体制の拡充、新製品開発のスピード化を推進しています。このような中で、競合他社との間の価格競争激化の影響を受け、当社グループの製品・サービスが価格競争に直面し、当社グループの事業、経営成績および財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 これに対し当社グループでは、各事業分野において、競争優位性を高める新製品の企画・開発を継続的に行うとともに、コスト力の強化と適切な売価マネジメントに注力し、提案型営業を推進することで顧客満足を獲得していきます。

(4)新製品の開発リスクについて

 当社グループでは、将来にわたり、ユーザーニーズを先取りした魅力ある新製品を開発し、提供できると考えていますが、以下のような能力が不足した場合、当社グループの事業、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

① 多様化・高度化する顧客の要求に対応する能力

② 新製品を適時かつ適正コストで開発し生産する能力

③ 顧客の新製品に当社グループの製品が使用されるようにする能力

④ 新たな製品・サービスおよび技術を使用し展開する能力

⑤ 既存の製品・サービスおよび技術を向上させる能力

⑥ 業界と市場の変化を十分に予測する能力

 あらゆる分野での技術革新がグローバル規模で進む中、お客様や社会が直面する課題をいち早く解決できる技術の重要性がますます高まっています。これらに対応するため、当社グループでは、日本と中国に研究開発拠点を設け、それぞれの製品分野ごとに、材料開発からの一貫した研究開発体制を構築しています。また、研究開発部門と生産部門が密接に連携することで、新技術の早期実用化・製品化を実現しています。さらに、変化の激しい市場環境に対応するために、必要な技術領域において強みのある大学・研究機関・企業と積極的に連携し、研究開発活動を加速させるオープンイノベーションと、東京大学生産技術研究所との包括的な産学連携研究協定を通じて、将来の技術経営を担う人材育成にも注力しています。

(5)海外進出の潜在リスク、法的規制の変更・強化について

 当社グループが事業を展開する国または地域において、法令または規制の重要な変更、税制または税率の変更、その他経済的、社会的および政治的変動、為替政策の変更、輸出または輸入に関する法規制などの変更があった場合、それらの事象は当社グループの事業、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは、中国・無錫市および宿遷市にアルミ電解コンデンサなどの製造拠点を設けていますが、現地で政治、法的環境、経済状況などに予期せぬ事象が発生した場合、事業の遂行に問題が生じ、当社グループの事業、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、「(1)経済状況について」において説明のとおり、グローバルでの政治・経済状況の変化を注意深く見守り、状況に応じた対応が取れるように対策を行っています。

(6)原材料などの購入価格の高騰について

 国際市況に大きく影響を受ける当社グループの主要製品に使用する原材料の購入価格の高騰は、当社グループの経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、原材料のマーケット変動に柔軟に対応するべく、代替材料の検討や複数購買化を推進するとともに、吸収できない調達コスト上昇に関しては、市場価格も見つつ適切に製品売価に反映するようにしています。

(7)製造物責任について

 当社グループは、品質管理を徹底し、世界的な品質管理基準に従い製品を製造していますが、提供する製品・サービスには欠陥が生じる可能性があります。また、製造物賠償責任保険に加入していますが、賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。

 欠陥が原因で生じた損失は、多額のコストや当社グループの評価の低下を通じ、当社グループの事業、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、全製造事業所で「いつ」「どこで」「どの製品が」「どのような状況で」つくられたかを確実にチェックできる生産管理システムを導入しています。これはシステムで品質管理を徹底し、"不良ゼロ"による安定生産を実現するためのものです。このゼロ・ディフェクトに向けた取り組みを毎期、生産事業所ごとに事業計画として策定するとともに、品質保証システムの国際的規格であるISO9001やIATF16949の取得や更新審査を通じて、常に最新の品質管理基準と運用体制の構築につなげています。

(8)環境規制などによる影響について

 当社グループの事業は様々な環境法令の適用を受けており、過去、現在および将来の生産活動に関し、環境責任のリスクを抱えています。将来、環境に関する規制が厳しくなり有害物質などを除去する義務が追加された場合、これにかかる費用が当社グループの事業、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 地球との共存を目指して、当社は全社・全グループの環境保全活動を進めるために、資源の有効活用、環境汚染防止を最優先としたニチコングループ環境憲章を1997年12月に制定(2015年8月改定)し、環境保全に向けた取り組みを推進してきました。現在、国内外の13製造事業所で環境マネジメントシステム規格ISO14001の認証を取得しており、全社・全グループをあげて、環境に配慮した技術と製品の提供に努めています。

(9)災害などによる影響について

 当社グループは、すべての生産設備における定期的な災害防止検査・点検を実施していますが、自然災害、事故、情勢変化や事件などによる悪影響を完全に阻止または軽減できる保証はありません。それらは、当社グループの事業、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、災害等の発生に備え、生命の安全確保・安否確認体制を整備するとともに、重要業務の継続・中断した場合を想定し、早期復旧を目指せる体制、事業継続計画(BCP)および事業継続マネジメント(BCM)の見直しと追加構築に取組んでいます。

(10)情報セキュリティについて

 当社グループは、事業活動において顧客・取引先から入手した機密情報(取引先情報、個人情報、営業秘密情報、技術情報など)を保有しています。一方で、近年、企業を標的にしたサイバー攻撃や、社内の従業員による故意または過失の行為による情報漏えいなども多数発生しています。これらに適時適切に対応しなければ、社会的信用の失墜、システムの修復やお客様への補償などの経済的損失、システムダウンによる事業活動の停止など、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、世界各国でデータ保護や個人情報保護の規制・法令の制定・強化が進められており、これらに違反した場合の罰則が厳罰化している傾向にあります。

 当社グループでは、情報セキュリティリスクへの対策として、人的対策と技術的対策の2つの側面からその取り組みを進めています。人的対策としては、情報セキュリティ基本方針、情報システムセキュリティ規程、個人情報保護方針、個人情報管理規程など、従業員が遵守すべき事項を定めた各種規程を制定しています。また、これらの規程に基づいた情報セキュリティ教育や、標的型攻撃メールの訓練などを定期的に実施しています。技術的対策としては、マルウェア対策、パソコンの操作履歴などの各種ログの収集、情報へのアクセスコントロール、脆弱性診断の受診、疑似アタックの実施、通信内容の監視による不正侵入の防止、USBメモリ・SDカード等の記憶媒体の使用制限などを実施しています。また、従業員が使用するパソコンは外部の専門機関が24時間365日監視しており、不審な挙動を検知した場合には、早期に発見・対処する体制を整備しています。その他、情報セキュリティに関する事件・事故の発生に備え、グループ全体でサイバーセキュリティ保険に加入しています。

(11)その他

 上記に掲げたリスク要因は、当社グループの事業展開その他に関するリスクの全てを網羅しているものではありません。その他、知的財産権に係る法的リスク、顧客の信用リスク、人材育成・確保に係るリスクなども発生する恐れがあり、当社グループの事業、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 これら様々なリスクに対し、当社グループでは「ニチコングループ行動規範」(2002年10月制定・2013年4月・2024年4月に改訂)を全役職員に徹底し、法令・定款および社内規則はもとより、健全な社会規範、倫理規範に則った職務を遂行し、企業風土の醸成と教育・啓発活動の推進に努めています。また、これらを確保するための体制として、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を設置しています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりです。

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、エネルギーコストや物価の上昇が続きましたが、企業の堅調な設備投資に加え、個人消費やインバウンド需要の増加により、景気は緩やかに回復しました。米国経済は、金融政策転換の影響を受けながらも、良好な雇用情勢により個人消費が堅調に推移しました。中国経済は、経済対策による内需の活性化が図られましたが、個人消費と不動産市況の不況が長引き景気の減速が続きました。欧州経済は、ドイツを中心に製造業の低迷が見られたものの、インフレ圧力の緩和により長引く景気低迷から持ち直しの兆しが見られました。

これらの結果、当連結会計年度の売上高は175,751百万円と前期比3.2%の減収となりました。また、利益につきましては、営業利益は5,203百万円と前期比41.6%の減益、経常利益は7,511百万円と前期比34.2%の減益、親会社株主に帰属する当期純利益は、5,877百万円と前期比28.8%の減益となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりです。

 

(コンデンサ事業)

コンデンサ事業における売上高は99,168百万円(前期比6.8%減)、セグメント営業利益は1,551百万円(前期比78.8%減)と減収減益となりました。

自動車・車載関連機器向けは、BEVの成長期待が鈍化傾向となっており、各国の完成車メーカーをはじめ各社とも生産減や計画の見直しが見られますが、その反面でハイブリッド車の需要が増加するなど全体的な市況は底堅く、自動車の電動化の動きも着実に進展しています。車載関連機器向けアルミ電解コンデンサでは、欧州を中心とした一部の顧客で在庫調整や減産の局面が続きましたが、ADAS(先進運転支援システム)や電動化ユニット向けに搭載されている導電性高分子アルミ固体電解コンデンサや導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサについては需要が拡大しており、引き続き増産体制を整えていきます。情報通信機器向けでは、生成AIサーバーなどデータセンター用途の導電性高分子アルミ固体電解コンデンサや導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサが好調に推移し、今後もさらに拡大が見込まれます。これらに向けて、販売体制を強化するとともに技術リソースを最大限投入して成長を目指します。また、白物家電・産業用インバータ機器向けは、産機インバータやパワーコンディショナーおよびエアコン用途の大形アルミ電解コンデンサが一部の顧客で在庫消化が進み、ようやく需要の下げ止まりとなり今後の回復が見込まれます。当社は引き続き、需要拡大が見込まれる導電性高分子アルミ固体電解コンデンサおよび導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサの製品ラインアップ強化、xEV用フィルムコンデンサの生産能力拡大と技術開発体制の強化により、各重点市場における受注拡大に取り組んでまいります。

 

(NECST事業)

NECST事業における売上高は76,583百万円(前期比1.8%増)、セグメント営業利益は3,648百万円(前期比130.5%増)と増収増益となりました。

家庭用蓄電システムは第3四半期にかけて大きく伸長し、NECST事業の成長を牽引しました。昨年リリースした新製品は、再エネの利活用を進める上で新築だけでなく既築建物への導入も進めるべく販路拡大・整備を進めており、顧客ニーズに合わせた製品ラインアップを展開しています。EV関連機器については、日本政府のEV充電インフラ網整備方針に基づき、EV走行の環境整備が推進されており、その中で当社の急速充電器の設置が進みました。一方で、V2Hシステムは、補助金制度の交付条件の変更とEV販売の低迷により影響を受けています。その様な中でも輸入EVは年々増加しており、V2H対応車もそれに合わせて増加しています。これらの機会を通じて当社V2Hの優れた機能の認知度を高め、普及に繋がる活動を進めています。また、事務機器などに使われる電源製品は、販売活動や事業構造の改善を進め、収益性が改善しました。学術用・医療用等の大型特殊電源は、計画どおり堅調に推移しました。当社は、より良い地球環境の実現に繋がる家庭用/公共・産業用蓄電システム、急速充電器およびV2Hをはじめとした環境関連製品・サービスの価値提供を通じて、社会課題の解決と明るい未来社会づくりに貢献してまいります。

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

増 減

金 額

(百万円)

構成比

(%)

金 額

(百万円)

構成比

(%)

金 額

(百万円)

増減比

(%)

コンデンサ事業

106,429

58.6

99,168

56.4

△7,261

△6.8

NECST事業

75,214

41.4

76,583

43.6

1,369

1.8

合  計

181,643

100.0

175,751

100.0

△5,892

△3.2

 

 

・海外売上高

 前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

 

米州

アジア

欧州他

Ⅰ 海外売上高(百万円)

15,226

59,528

12,153

86,908

Ⅱ 連結売上高(百万円)

 

 

 

181,643

Ⅲ 連結売上高に占める海外売上高の割合(%)

8.4

32.8

6.7

47.9

 

 当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

 

米州

アジア

欧州他

Ⅰ 海外売上高(百万円)

13,852

63,042

10,003

86,898

Ⅱ 連結売上高(百万円)

 

 

 

175,751

Ⅲ 連結売上高に占める海外売上高の割合(%)

7.9

35.8

5.7

49.4

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ3,868百万円減少し25,519百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、前期に比べ2,025百万円収入が増加し、18,346百万円の収入となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益が8,465百万円、減価償却費を8,465百万円計上、また、仕入債務の減少額が2,160百万円となった一方で、売上債権の減少額が3,185百万円および棚卸資産の減少額が3,725百万円となったことなどによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、前期に比べ4,372百万円支出が減少し、8,361百万円の支出となりました。これは主に、有価証券・投資有価証券の売却・償還による収入が3,525百万円となりましたが、有形固定資産の取得による支出が10,650百万円、有価証券・投資有価証券の取得による支出が897百万円となったことなどによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、前期に比べ13,747百万円支出が増加し14,319百万円の支出となりました。これは主に、長期借入れによる収入が12,000百万円となった一方で、転換社債型新株予約権付社債の償還による支出12,000百万円、短期借入金の純減少額が7,300百万円、長期借入金の返済による支出が2,500百万円、配当金の支払額が2,326百万円、自己株式の取得による支出が1,600百万円となったことなどによるものです。

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)におけるセグメント別の生産実績は、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度(百万円)

前期比(%)

コンデンサ事業

98,336

94.0

NECST事業

75,441

95.9

合計

173,777

94.8

(注)金額は、販売価格によります。

 

b.受注実績

 当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)におけるセグメント別の受注実績は、次のとおりです。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期末比(%)

コンデンサ事業

98,725

134.7

31,108

98.6

NECST事業

75,076

109.7

9,084

85.8

合計

173,802

122.7

40,192

95.4

 

c.販売実績

 当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)におけるセグメント別の販売実績は、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度(百万円)

前期比(%)

コンデンサ事業

99,168

93.2

NECST事業

76,583

101.8

合計

175,751

96.8

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

①重要な会計方針および見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたって、財政状態および経営成績に影響を与える項目は下記のとおりです。なお、当社グループの重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等  注記事項  4.会計方針に関する事項」に記載しています。また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等  注記事項  (重要な会計上の見積り)」に記載しています。

a.固定資産の減損

 当社グループは、事業用の様々な有形固定資産および無形資産を所有しています。毎期、資産または資産グループに減損が生じている可能性を示す事象(減損の兆候)があるかどうかを判定し、減損の兆候がある資産または資産グループについて、帳簿価額がこれらの資産の継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる割引前の将来キャッシュ・フローの総額を超える場合に、減損損失を認識することとしています。また、資産または資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの割引現在価値と、正味売却価額のいずれか高い方の金額を資産の回収可能価額とし、帳簿価額が回収可能価額を上回る額を減損損失として測定しています。今後の事業計画との乖離や市況・需要の変化等によって、期待される収益やキャッシュ・フローが生み出せない可能性を示す事象(減損の兆候)が見られる場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。

b.貸倒引当金

 当社グループは、売掛債権、貸付金等による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権および破産更生債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しています。顧客の財政状態が悪化し、その支払能力が低下した場合は追加引当が必要となる可能性があります。

c.投資の減損

 当社グループは、長期的な取引関係の維持のために、特定の顧客等および金融機関の株式を所有しています。これらの株式には価格変動性が高い上場会社の株式と、株価の決定が困難である非上場会社の株式が含まれています。当社グループは連結会計年度末において、上場会社では株価が取得価額を50%以上下落した場合、非上場会社では会社の純資産額が欠損により50%以上下落した場合に減損損失を計上しています。また、株価が取得価額の30~50%程度下落した場合には、回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損損失を計上しています。将来の市況悪化または投資先の経営成績不振により、減損損失の計上が必要となる可能性があります。

d.繰延税金資産の回収可能性

 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等  注記事項  (重要な会計上の見積り) 2.繰延税金資産の回収可能性」に記載のとおりです。

 

e.退職給付に係る負債および年金制度

 当社の退職金規程では、勤続年数3年以上の従業員については、原則として退職時に退職一時金の受給資格を有することになります。この退職給付金は、通常、勤務年数、退職の事由、退職時の算定基礎額により算出されています。

 当社および一部の国内連結子会社は、従業員の退職給付に関し、確定給付型年金制度および退職一時金制度を採用しており、当社および在外連結子会社の一部につきましては、確定拠出型年金制度を採用しています。退職給付に係る負債および退職給付費用の計算は、数理計算上で設定された前提条件に基づいて算出されており、これらの前提条件には割引率、年金資産の長期期待運用収益率、将来の昇給率、退職率、死亡率などが含まれます。当社グループが使用した前提条件は妥当なものと考えていますが、実際の結果が異なる場合、または前提条件が変更された場合は、退職給付に係る負債および退職給付費用に影響を与える可能性があります。

f.製品保証引当金

 当社は、製品の販売に係る一定期間内の無償サービスの費用に備えるため、当該費用の発生割合および支出実績を勘案した見積額を計上していますが、実際の製品不良率や保証費用が見積りと異なる場合には、追加の引当が必要となる可能性があります。

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

イ.財政状態の分析

 当連結会計年度末の総資産は、前期末に比べて14,355百万円減少して192,582百万円(前期末比6.9%減)となりました。

 流動資産は、前期末に比べて10,214百万円減少して108,254百万円(前期末比8.6%減)となりました。これは主に、現金及び預金が前期末に比べて3,868百万円減少し25,519百万円、棚卸資産が前期末に比べ3,443百万円減少し33,215百万円、電子記録債権が前期末に比べ1,646百万円減少し5,969百万円となったことに加え、受取手形、売掛金及び契約資産が前期末に比べ1,195百万円減少し38,963百万円となったことなどによるものです。

 有形固定資産は、前期末に比べて1,103百万円増加して53,086百万円(前期末比2.1%増)となりました。これは主に、当連結会計年度における設備投資実施額が11,129百万円となり、減価償却費8,465百万円および減損損失1,820百万円を上回ったことなどによるものです。

 投資その他の資産は、前期末に比べて5,444百万円減少して29,312百万円(前期末比15.7%減)となりました。これは主に、投資有価証券が前期末に比べて4,696百万円減少して26,688百万円となったことなどによるものです。

 流動負債は、前期末に比べて23,665百万円減少して51,558百万円(前期末比31.5%減)となりました。これは主に、1年内償還予定の転換社債型新株予約権付社債の償還により12,016百万円減少したことに加え、短期借入金が前期末に比べ7,300百万円減少し6,700百万円、電子記録債務が前期末に比べ1,681百万円減少し13,566百万円となったことなどによります。

 固定負債は、前期末に比べて9,335百万円増加して27,209百万円(前期末比52.2%増)となりました。これは主に、繰延税金負債が前期末に比べて997百万円減少して4,587百万円となった一方で、長期借入金が前期末に比べ9,500百万円増加し15,750百万円、製品保証引当金が前期末に比べ724百万円増加し3,786百万円とことなどによるものです。

 利益剰余金は、親会社株主に帰属する当期純利益を5,877百万円計上、配当金の支払いを2,371百万円、自己株式の消却を行ったことで、前期末に比べて6,176百万円減少して60,826百万円となりました。その他有価証券評価差額金は、前期末に比べて3,721百万円減少して10,772百万円となりました。また、為替換算調整勘定は、前期末に比べて1,303百万円増加して11,188百万円となりました。

 自己株式の期末残高は、取得および消却を実施したことで前期末に比べて8,130百万円減少して3,497百万円となりました。

 以上の結果、純資産は前期末に比べて25百万円減少して113,814百万円(前期末比0.0%減)となりました。

 直近3事業年度の自己資本比率および時価ベースの自己資本比率は次のとおりです。

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

自己資本比率(%)

51.4

53.6

57.3

時価ベースの

自己資本比率(%)

49.1

42.5

42.7

(注)1.自己資本比率:自己資本/総資産

2.時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

 

ロ.経営成績の分析

a.売上高、営業利益

 セグメントごとの経営成績は、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。

b.親会社株主に帰属する当期純利益

 営業外損益項目では、為替差益を1,203百万円(前期は1,748百万円)計上しましたが、営業利益の減益により経常利益は前期に比べ3,896百万円減少し7,511百万円(前期比34.2%減)となりました。

 特別損益項目では、特別利益として投資有価証券売却益を2,645百万円(前期は331百万円)計上し、特別損失には事業構造改革費用2,087百万円(前期は減損損失664百万円)を計上しました。これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期に比べ2,376百万円減少し5,877百万円(前期比28.8%減)となりました。

 

ハ.キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ3,868百万円減少し25,519百万円となりました。

 変動要因は「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 なお、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリー・キャッシュ・フローは、9,985百万円のプラスとなりました。資金調達の方法および状況ならびに資金需要の動向については次項「ニ.資本の財源及び資金の流動性」に記載のとおりです。

 

ニ.資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの主な資金需要は、設備投資、改修等に係る投資資金や、当社製品製造のための人件費や経費、材料および部品などの製造費用、研究開発費を含む販売費及び一般管理費等の運転資金です。

 これらに必要な資金の主な源泉は、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入による資金調達により対応します。当連結会計年度においては、転換社債の償還資金の一部を金融機関からの長期借入金にて調達していますが、特筆すべき重要な事項はありません。

 当社グループは、手許資金ならびに間接金融による資金調達を実施し、事業の拡大に必要な資金の流動性を確保できるものと考えています。

 

ホ.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 翌期(2026年3月期)の経済環境の見通しは、米国による関税問題をはじめ、経済安全保障体制の懸念、政策金利の上昇や急激な為替変動、さらにロシア・ウクライナ情勢や中東情勢による原材料、エネルギー価格の高止まりや物流網の混乱など不確定要素が多く、世界経済の先行きは極めて不透明な状況が続いています。

 当社グループにおいては、重点4市場と位置付ける「エネルギー・環境・医療機器」「自動車・車両関連機器」「白物家電・産業用インバータ機器」「情報通信機器」の各市場ともに、素材価格の上昇圧力があるものの、カーボンニュートラルの動きの加速により環境関連需要は拡大する見通しです。このような状況のもと、次期の連結業績予想を次のとおりとしました。

 当連結会計年度の期初計画の達成状況は以下のとおりです。

指標

当連結会計年度

(計画)

当連結会計年度

(実績)

当連結会計年度

(計画比)

売上高(百万円)

176,000

175,751

△249(△0.1%)

営業利益(百万円)

5,200

5,203

3(0.1%)

営業利益率(%)

3.0

3.0

0.0ポイント

経常利益(百万円)

7,000

7,511

511(7.3%)

親会社株主に帰属する当期純利益(百万円)

6,100

5,877

△233(△3.6%)

 当社グループは、2021年11月、2026年3月期を最終年度とする中期成長目標「Vision 2025」を公表しています。2026年3月期において売上高2,000億円、営業利益率10%以上の目標としており、4期目となる当連結会計年度においては営業利益および経常利益が年度計画を達成しました。また、経常利益は4期連続で計画を達成しています。中期計画目標に対する当連結会計年度の実績は以下のとおりです。

指標

2025年3月期

(当連結会計年度)

2026年3月期

(「Vision 2025」最終年度)

売上高(百万円)

175,751

2,000億円

営業利益率(%)

3.0

10%以上

設備投資額(百万円)

11,129

年間100億円以上

連結配当性向(%)

40.7

30%以上

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、アルミ電解コンデンサ、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、小形リチウムイオン二次電池等の電子デバイスを主体としたコンデンサ事業と、家庭用/公共・産業用蓄電システム、EV・PHV用急速充電器、V2Hシステムの環境関連製品、スイッチング電源、機能モジュール、研究・医療・産業用特殊電源等の回路製品を主力製品としたNECST事業を展開し、「エネルギー・環境・医療機器」、「自動車・車両関連機器」、「白物家電・産業用インバータ機器」、「情報通信機器」の4市場を重点分野と定め、高信頼性、高安全性、高機能性を追求し、競争力に優れる新製品開発により社会課題の解決に貢献し、既存事業の拡大と新規事業の創出に努めています。

 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は7,230百万円であり、セグメントごとの内訳は、コンデンサ事業2,146百万円、NECST事業5,084百万円です。

セグメント区分ごとの研究開発状況は、次のとおりです。

(1)コンデンサ事業

①アルミ電解コンデンサは、カーボンニュートラルを目指して急速に電動化が進む「自動車・車両関連機器」向け、また高度化するネットワーク社会においては生成AIサーバーなど「情報通信機器」向けで需要が拡大する導電性高分子アルミ固体電解コンデンサおよび導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサの開発に取り組みました。さらに情報通信機器や各種インフラ装置に電力を供給するために不可欠な高性能電源、省力化ロボットなどの産業用インバータ、EV(電気自動車)・PHEV(プラグインハイブリッド)において不可欠なOBC(車載充電器)に向けたアルミ電解コンデンサにおいては、小形・高容量化、高温度対応、長寿命化による商品力強化に取り組みました。

これらの研究成果として、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサにおいては、AIサーバー、通信基地局などの情報通信機器で課題になっているデータ処理量増加に伴う消費電力増加、機内温度上昇といった市場ニーズに対して、業界最高水準の125℃ 12,000時間保証のチップ形導電性高分子アルミニウム固体電解コンデンサ「PCYシリーズ」を市場投入、情報通信機器におけるデータ処理の高度化、高信頼化に貢献します。

導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサでは、xEV(EV、HEV、PHEV、FCEV)のみならずICE(内燃機関)も含めて電動化が急速に進んでいます。これら各種ECUでは小形化、高性能化が進んでおり、搭載コンデンサに対してさらなる高容量化、大電流対応を求めるニーズが高まっており、当社は従来の標準シリーズ「GYAシリーズ」から3ランク上の高容量化と最大1.8倍の高リプル化を実現した「GYGシリーズ」を開発しました。特に大電流対応が求められているEPS(電動パワーステアリング)、EWP(電動ウォーターポンプ)、EOP(電動オイルポンプ)といった用途において機器の小形化、軽量化へ貢献します。

アルミ電解コンデンサでは、車載関連機器用途で要求が高まっている高リプル電流重畳保証のリード線形アルミニウム電解コンデンサ「UTFシリーズ」を開発しました。コンデンサに出し入れ可能な充放電電流を表す許容リプル電流値を最大51.1%向上させました。EV、PHEVに不可欠なOBC(車載充電器)では搭載電池の大容量化を背景に短時間充電が求められており、大電流対応コンデンサはこの実現に貢献します。また、情報通信分向け製品として、通信基地局用電源では、部品実装の高密度化およびデータ通信量の増加による高出力化に伴い電源内部の高温度化が進んでおり、この市場ニーズに対応すべく、従来シリーズに対して2.5倍の長寿命化を図った125℃ 5,000時間保証の「UBRシリーズ」を開発、市場投入しました。

②小形リチウムイオン二次電池「SLBシリーズ」は、異常時にも発煙発火の可能性が極めて低い特長が評価されて2019年の販売開始以来、累計5,000万個以上を出荷する小形二次電池市場におけるベストセラー製品です。現在、カーボンニュートラルに向け、使い捨て一次電池から自然界のエネルギーを電気に変換する「環境発電」と「二次電池」の組み合わせへの置き換え検討が進行しており、電池には極低温から高温まで対応できる広範な温度耐久性が求められています。この市場ニーズに対して、製品の使用温度範囲を従来製品の最高使用温度60℃から80℃に高めた高温耐久品を開発しました。従来電池を使用することが難しかった環境、用途への採用拡大を見込んでいます。

③フィルムコンデンサは、xEVに搭載される走行用モータの駆動インバータに不可欠なDC-LINKコンデンサ用途で需要が引き続き拡大しています。当社は主要材料である金属蒸着フィルムを自社開発する強みを活かして、高耐電圧化、大電流対応を実現、車種ごとに形状、搭載性を考慮したモジュール設計技術をさらに進化させたことで、国内外メーカーの多くの車種に採用されています。大容量電池を搭載するEVでは、充電時間短縮を背景とした800V以上の高電圧化ニーズ、SiC(シリコンカーバイド)などパワー半導体の進化に伴い、125℃を超える高温度化ニーズが見込まれることから、当社はフィルム材料の性能向上や蒸着パターン技術の開発、DC-LINKコンデンサ本体と周辺部品も融合させ高度なモジュール化技術を実現するための製法、設備など、生産技術開発にも注力しています。

④電力・機器用コンデンサでは、防災形進相コンデンサ「GeoDRY®」をはじめ、受変電高圧側、または末端低圧負荷側に設置される用途に各種進相コンデンサとその附属機器をラインアップしています。進相コンデンサは、社会インフラを支えるために製品安全性を最優先に、誘電体絶縁破壊時に自己回復する信頼性の高い「金属蒸着電極(SH)コンデンサ」を全機種に採用しています。附属機器は、省エネルギー化を目的としてさらに導入が進むインバータ機器から発生する高調波電流に起因した電力系統の電圧ひずみや、お客さまの配電系統における高調波電流障害から設備や電気機器を保護するため高調波継電器を市場投入、高調波障害から電気機器を守るとともに、電力バックアップや電力供給の安定化に寄与する瞬時電圧低下/停電補償装置などの関連装置を取り揃え、BCP対策をはじめ総合的に高品位な電力の安定化を提案しています。

 

(2)NECST事業

当社グループは、「価値ある製品を創造し、明るい未来社会づくりに貢献」することを経営理念に掲げ、その具現化を目指して、再生可能エネルギーの普及、エネルギーの地産地消、EVやPHVなどの次世代自動車とそのインフラの普及を目指した取り組みを進めています。

2020年10月に日本政府が発表した方針において、2050年にカーボンニュートラルを目指すことを掲げ、環境関連政策を重視する姿勢を明確にしました。世界中でガソリン車からEVに大きくシフトが始まっていますが、日本においてもEVや充電インフラ設備の購入や設置費用に対して政府や地方自治体から様々な導入支援策が出され、それに伴いV2H、急速充電器の需要が広がってきています。この状況に対応する製品として当社は、新型EVパワー・ステーション(V2H)や大容量の急速充電器の開発、提供を進めています。また、運輸事業者の車両の電動化に対応すべく、商用EV(EVバス、EVトラック)向け急速充電器「サイクリックマルチ充電器」を開発しました。

TCFDやCDPといった世界的な気候変動対策の広がりを受け、企業各社からはカーボンニュートラルに向けた具体的な取り組みや計画が開されており、企業の投資行動を後押しする国の支援策も多くなってきました。この動向を先取りする製品として、公共・産業用蓄電システムにV2Hを3台直流リンクで接続したシステムが再生可能エネルギーを効率よく使える装置を開発、それが評価され、令和5年度の新エネルギー大賞を受賞することができました。

さらに、将来的に期待される水を電気分解して水素を製造するシステムの電源の開発をNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業として山梨県と共に進めています。水電解システム開発のNEDO事業に6年前から参加し、この電源部分を開発、その成果を500kWワンパックモデルとして製品化しました。今後は規模を拡大して効率よく水素を発生するシステムの開発も進めます。

医療関係分野では、がん治療として注目されている粒子線(陽子線・重粒子線)治療向けの医療用加速器電源の性能向上や、小型化など次世代の粒子線治療装置に求められる電源の開発に取り組みました。研究用途の加速器電源では、東北地方に新たに建設される日本国内初の高輝度中型3GeV級放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」向けに電源を開発、納入し、現地試験の上、引き渡しが完了しました。

また、事務機器向けスイッチング電源関連では、新たな分野への展開を目指して技術開発を進めています。

 

(3)産学連携による研究開発

最近は技術の進歩が早く、最新の技術を取り入れた製品の開発には産学連携を効果的に活用することが重要になってきています。そうした状況の中、当社は、2016年9月に東京大学生産技術研究所と包括的な産学連携研究協力協定を締結し、一定額のファンドを原資として複数のテーマをその道の専門家である教授陣と柔軟に共同研究できる体制を構築しました。この共同研究実施にあたり当社技術者を東京大学生産技術研究所へ派遣し、コンデンサの素材基礎開発からNECST事業の次世代ビジネスに関わるシミュレーションや、家庭用蓄電システムやV2Hの先進デザインにより、製品価値の向上とブランドイメージ確立を行っていきます。一方、次世代半導体として期待され、一部に実用化が進んでいるSiCのモジュール化の開発においては、大阪大学などと共同開発を継続的に行っており、NECST製品やサービスの要素開発やプラットフォーム構築、および製品開発に寄与しています。また、2024年10月に長崎総合科学大学と「未来指向グリーンエネルギー変換ニチコン共同研究講座」を設置しました。電力変換器の効率改善だけでなく、負荷の変動に応じて電力変換器を最適動作させるEMS(エネルギーマネジメントシステム)の開発と機器の開発効率を向上させるためのシミュレーション技術の構築を目指します。こうした産学連携を継続することで大学の教員と当社社員との交流を通じて知のネットワークが広がりつつあります。