当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、「創造と開発」を基本とし、常に世界最高の技術に挑戦し、製品を通じて科学の進歩と社会の発展に貢献することを経営理念としております。今般、長期ビジョンとして『ビジョン2035』を設定し、「最先端テクノロジーに挑戦するお客様とイノベーションを共創する、グローバルリーダー*になる」を掲げております。
*「グローバルリーダー」とは、半導体やライフサイエンスなどの重点市場において、トップクラスのシェアを目指すことを意味する。
(2)経営戦略等
当社グループは、中期経営計画「Evolving Growth 2.0 -A New Horizon-」を策定致しました。
2025年度よりスタートする新中期経営計画「Evolving Growth 2.0 -A New Horizon-」は、2029年度を達成目標年度とし、従来取り組んでいる「YOKOGUSHI」戦略を深化させ、「YOKOGUSHI 2.0」として分野別のソリューション提供の基盤を更に強化します。特に高い市場成長性が見込まれ、かつ当社グループの持つニッチなテクノロジーが活用できる半導体・ライフサイエンスの分野を重点領域に設定し、この分野での成長を実現します。そして、製品ごとにマーケットへアプローチする方法を変え、マーケットが必要とする課題解決型のソリューションを創出し、最先端テクノロジーに挑戦するお客様の想像を超えるイノベーションを提供できるグローバルリーダーになることを目指します。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中期経営計画「Evolving Growth 2.0 -A New Horizon-」において、売上高営業利益率20%、自己資本当期純利益率(ROE)15%以上、投下資本利益率(ROIC)15%以上を最終年度である2029年度の達成目標としております。
(4)経営環境
当連結会計年度における我が国の経済状況は、物価高によるマイナス影響が一部見られるものの、底堅い設備投資需要やインバウンド需要回復などが下支えとなり、緩やかな回復傾向にあります。一方で、イスラエル・パレスチナ情勢およびウクライナ情勢などの地政学的リスクや円安に起因する原材料・エネルギー価格の高止まり、中国経済減速など、景気の先行きが不透明な状況が続いております。
(5)事業上および財務上の対処すべき課題
従来取り組んでいる「YOKOGUSHI」戦略を深化させ、「YOKOGUSHI 2.0」として分野別のソリューション提供の基盤を更に強化します。特に高い市場成長性が見込まれ、かつ当社グループの持つニッチなテクノロジーが活用できる半導体・ライフサイエンスの分野を重点領域に設定し、この分野での成長を実現します。そして、製品ごとにマーケットへアプローチする方法を変え、マーケットが必要とする課題解決型のソリューションを創出し、最先端テクノロジーに挑戦するお客様の想像を超えるイノベーションを提供できるグローバルリーダーになることを目指します。
基本的な考え方
① 長期ビジョン『ビジョン2035』の策定
「最先端テクノロジーに挑戦するお客様とイノベーションを共創する、グローバルリーダーになる」を長期ビジョンとして掲げ、半導体、ライフサイエンス分野を重点領域として設定。
② 『YOKOGUSHI 2.0』の設定
「YOKOGUSHI」を「YOKOGUSHI 2.0」に進化させ、3軸(①機器/機能、②アプリケーション/サービス、③共創)の革新・拡張を通じて、高い付加価値創出による分野別ソリューションを強化。
③ 収益性の向上への取り組み
持続的な成長に向け、資本効率を重視した経営を促進し、コア事業の「稼ぐ力」を磨くとともに、強い事業基盤の構築を進める。
④ 投資・株主還元への取り組み
戦略的な投資による成長機会の追求と株主への還元を通じて、収益性の改善と株主満足度の向上を実現する。
⑤ “人・組織・社会”に力点をおいた持続可能な成長に向けた社会的責任の取り組み
顧客満足度や従業員エンゲージメントの向上を図り、ガバナンスの強化やゼロカーボンアクションの推進を通じて、持続可能な成長を目指す。
当社グループは、「創造と開発」を基本とし、常に世界最高の技術に挑戦し、製品を通じて科学の進歩と社会の発展に貢献することを経営理念としております。新中期経営計画「Evolving Growth 2.0 -A New Horizon-」への取り組みにより、この経営理念とビジョンの具現化に向けて、持続可能性と資本効率の両立を重視した経営の推進を目指してまいります。
(1)サステナビリティ全般
当社グループは、“日本電子は、「創造と開発」を基本とし、常に世界最高の技術に挑戦し、製品を通じて科学の進歩と社会の発展に貢献します”という経営理念のもと、科学技術の振興に寄与する活動を続けております。
科学技術の振興に寄与し、科学の進歩と社会の発展に貢献するために、当社グループは環境と社会の持続可能性への貢献と健全な事業活動による社会課題の解決を通じて企業価値の向上を追求してまいります。また、その事業活動が株主・取引先・顧客・従業員などのステークホルダーや環境に与える影響に十分配慮して行動するとともに、ステークホルダーとの対話を通じて信頼を築くよう努めてまいります。
①ガバナンスおよびリスク管理体制について
当社では、サステナビリティ全般に関する重要課題の審議・検討やリスク管理について下図の体制を構築しております。各部門(事業部・本部・グループ会社)では、自らのサステナビリティに関する課題やリスクの抽出、評価、コントロールを実施しており、内部統制・リスクマネジメント推進を担う各委員会が全社的なリスクコントロールを実行しております。これらの委員会がサステナブル課題を含むリスク情報を集約して、審議すべき全社重要リスクを取りまとめ、代表取締役社長兼CEOを委員長とし、社外弁護士も参加するCSR委員会へ報告します。CSR委員会ではこの報告内容について審議・検討を行い、各部門に諮問・提言するとともに結果を取締役会および監査役会に報告します。これら一連の流れにより経営層がサステナビリティに関する全社重要リスクの審議と決定に関与する仕組みとなっております。
なお、当社のコーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方および企業統治の体制の概要については、「
(2)気候変動
当社グループは、気候変動に伴うリスクや機会は、事業戦略に大きな影響を及ぼすものと認識しており、2021年に新たに特定した「地球環境の保全と持続可能性に貢献」を重要なマテリアリティと位置づけ、TCFDの提言に準じた気候変動シナリオの分析やガバナンス/リスク管理体制の開示、温室効果ガス(GHG)の継続的な算定を進めています。
①ガバナンスについて
2006年には、サステナビリティの取り組みを効率的に進めるための専門組織であるCSR委員会を立ち上げました。取締役会は委員会で検討した気候変動に関する課題について審議、必要に応じて委員会へ諮問を行い、これらの課題の決定と取り組み(KPIとしてのGHG排出量の削減など)をCSR委員会委員長の責任のもと、モニタリングします。
②戦略について
当社グループは、2種のシナリオ(1.5℃および4℃)に基づき事業に与えるリスク・機会に関して、以下の項目を抽出し、対応策を立案しております。
■リスク
1.5℃シナリオにおいては規制の強化によるエネルギー転換にかかる費用の増加、低炭素商品のニーズへの対応不足による売上減少、4℃シナリオでは自然災害の激甚化による費用の増加リスクが予想されます。
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リスク |
分類 |
ドライバー |
リスク内容 |
時間軸 |
影響度 |
対応策 |
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移 行 リ ス ク |
法規制・政策 |
炭素価格の導入・炭素価格の高騰 |
自社排出量(Scope1-2)に対する費用の発生 |
中期 |
中 |
[Scope1] ■省エネ設備の導入 ・クリーンルームの空調 機の更新・省エネ設備 の導入・照明器具のL ED化 ・生産用電力設備の運転 制御の最適化 [Scope2] ■再生可能エネルギーの 導入 ・再エネ電力メニューの 適用を関係会社へも拡 大 |
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法規制・政策 |
再生可能エネルギー価格の高騰 |
電源構成において再生可能エネルギーの割合が高まった場合の電力費用の増加 |
中期 |
小 |
■PPAによる再生可能エネルギーの導入 ・契約完了、2026年度より導入予定 ■自家発電設備導入による再生可能エネルギーの導入 ・太陽光発電設備の導入 |
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法規制・政策 |
炭素価格の導入・炭素価格の高騰 |
サプライヤーの製造コストが増加し原料への価格転嫁が発生した際の調達コストの増加 |
中期 |
小 |
■サプライヤーと共に、地球環境に配慮した事業展開を遂行 ■サプライヤー企業へGHG算定、削減依頼 |
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技術 |
低炭素製品の開発 |
低炭素商品のニーズの増加に対応できず、低炭素商品を開発できなかった際の売上の減少 |
中期 |
大 |
■CO2排出削減効果の高い技術の開発・実証を進め、同業他社との差別化 ・環境設計基準を見直し、GHG排出量が少ない装置を市場導入 |
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評判 |
情報開示対応 |
半導体・スマホメーカーからの情報開示要請の増加や規格の厳格化の中で対応ができなかった際の売上の減少 |
短期~中期 |
大 |
■継続的なステークホルダーへの情報開示 ・有価証券報告書、統合報告書による情報開示 ■気候変動に関する外部格付けへの対応 ・継続的なCDP質問書への回答 |
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物 理 リ ス ク |
急性 |
自然災害の激甚化 |
台風等の自然災害における車両損傷対応(自動車保険料)の負担の増加 |
短期~中期 |
小 |
■自動車の浸水対策の計画と実施 ・水害ハザードマップ拠点の抽出 ・該当拠点における駐車場の高台移転 |
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急性 |
自然災害の激甚化 |
災害対策のためのBCP対策によるコストの増加 |
中期 |
小 |
■BCP対策拠点の抽出 ・部門BCPマニュアルの更新と防災教育および訓練の実施 ・災害時の通信強化策の検討と対応 ■対応策の検討および実施、スケジュールの明確化 ・BCPの全社見える化対応 |
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急性 |
自然災害の激甚化 |
自然災害によるサプライチェーンの分断による製造停止に伴う売上の減少 |
中期 |
中 |
■サプライチェーンの多角化 |
■機会
環境配慮型事業の拡大や気温上昇による新薬開発需要の拡大に伴う売上増加が予想されます。
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機会 |
分類 |
ドライバー |
機会内容 |
時間軸 |
影響度 |
対応策 |
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機 会 |
製品およびサービス |
気温上昇による感染症の蔓延 |
気温上昇による感染症が蔓延した際の新薬開発需要に伴う売上の増加 |
中期 |
大 |
■抗ウィルス薬の開発に必要な装置の開発 ・ウィルスの観察・特定・構造解析ができ、効能がある薬剤の分子構造を決定できる装置を開発 ■開発投資額の増強 |
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製品およびサービス |
電池開発分野の参画 |
EVや蓄電池等、電池使用製品需要に合わせた研究設備投資に伴う売上の増加 |
短期~中期 |
大 |
■ソリューション情報の提供による販売拡大 ・バッテリーの開発に対応したJEOL装置の紹介と使用方法を提供 ・お客様要求事項に対するアドバイスと分析・装置使用方法のスキル向上支援 ■開発投資額の増強 |
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製品およびサービス |
環境配慮型事業の拡大 |
低炭素素材需要に合わせた研究設備投資に伴う売上の増加 |
中期 |
大 |
■低炭素排出製品の開発 ・環境配慮設計基準の見直し ■開発投資額の増強 |
・使用シナリオ:[移行リスク]IEA WEO2023 NZE2050 [物理リスク]・IPCC RCP8.5 ・IPCC AR6 SSP5-8.5
・時間軸 短期:1年以内、中期:~2030年、長期:~2050年
・影響度 小:売上額1億円未満、中:売上額1億円以上10億円未満、大:売上額10億円以上
③リスク管理について
当社グループでは、情報セキュリティ、品質・環境、輸出管理、安全衛生、災害発生等に係るリスクについてそれぞれ責任部署や委員会を定め、事業運営上において発生しうるあらゆるリスクの予防、発見、是正、および再発防止に係る管理体制の整備と発生したリスクへの対応を行っております。気候変動に関するリスクについては、当社グループの環境責任者が参加する「ゼロカーボン推進委員会」で識別・評価・議論を行い、その課題への対応について「CSR委員会」に報告します。CSR委員会は、特に当社の事業活動に影響を及ぼす可能性が大きいと判断したリスクの対応策について取締役会へ報告しマネジメントレビューを受けるとともに、監査役会へ報告します。気候変動のみならず、報告を受けた取締役会はCSR委員会および各委員会を経由して指示・監督を行うことにより常に対応状況をモニタリングおよび全社的なリスク管理体制を構築しています。
④指標および目標について
当社グループは、気候関連問題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、GHGプロトコルの基準に基づき当社および国内連結子会社の温室効果ガス排出量(Scope1-2)の算定を実施いたしました。温室効果ガス排出量の削減目標は、2030年度までに2021年度比38%削減を目指して活動します。2025年度はScope3の算定、削減目標の見直しを行いSBTiの取得を目指し、グループ全体で削減活動を推進します。
(単位:tCO2)
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2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
2030年度 |
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Scope1 |
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Scope1+2 38%削減 (2021年度比) |
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Scope2 |
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Scope1,2合計 |
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(3)人的資本
①戦略について
■前中期経営計画「Evolving Growth Plan」における「人材のGrowth」戦略の振り返り
当社が2022年度に策定した中期経営計画「Evolving Growth Plan」(2022年度~2024年度)では、事業規模の拡大と高収益化の実現に向けて3つのGrowthを掲げ、その一つを「社員・人材のGrowth」として積極的に投資し様々な施策を行ってまいりました。
具体的な項目と目標に対する結果は以下のとおりです。
ダイバーシティ&インクルージョンの推進に関しては、「えるぼし(3段階目)」「プラチナくるみん」の取得はできましたが、女性の新卒採用比率等の数値目標は未達に終わりましたので、継続して取り組んでまいります。人材の育成、エンゲージメントについては、博士号取得者支援制度の新設や学習管理システム(LMS)の導入、エンゲージメント研修の開催など、やるべき施策は実施し、一定の成果に繋がっていますので、新中期経営計画の実現のための人事戦略に切り替えていきます。
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ダイバーシティ&インクルージョンの推進 |
目標 |
実績 |
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( |
(2024年度末) |
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( |
(2025年4月1日) |
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( |
(2024年度末) |
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女性活躍推進法への対応 |
2023年に「えるぼし(3段階目)」の認定を取得 |
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次世代法への対応 |
2024年に「プラチナくるみん」の認定を取得 |
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※男性労働者の育児休業取得率は2024年度末の目標である50%を2023年度に達成したため、新たに5か年計画を設定
しております。
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人材の育成、エンゲージメント |
施策 |
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技術者の育成強化 |
博士号取得社員数(2024年4月現在124名)を増員するため従来の博士号取得者表彰制度に加え「博士号取得者支援制度」を新設し取得奨励金の支給など処遇改定を実施 |
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教育・研修体制の充実 |
2022年にLMS(学習管理システム)を導入しオンライン教育を充実を図るとともに、2024年にはeラーニングのサブスクリプションサービスを導入し社員のリスキリングを推進 |
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従業員エンゲージメント |
2023年10月にエンゲージメントサーベイを実施し、サーベイ結果をもとに社長メッセージの配信や以下の全社研修を実施 ・2024年4~6月全管理職を対象とした研修 ・2024年7月に一般職1、2級を対象とした研修 |
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離職者の減少 |
2.0%以下の目標に対して実績1.6% (2025年3月) |
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安全・健康に働くことができる環境の整備 |
施策 |
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健康経営の取り組み |
2022年~2024年と3年連続で「健康経営優良法人(大規模法人の部)」の認定を取得、2026年に「ホワイト500」の認定取得を目指す |
■人的資本戦略
日本電子は、電子ビーム等のコアテクノロジーを軸に成長してきた会社です。技術領域がニッチなため、社外から即戦力を採用することが困難な職種が多くありますので、採用した人財を、時間をかけて大切に育成することを重視しており、それは今後も変えるつもりはありません。
一方で、新中期経営計画「Evolving Growth 2.0 -A New Horizon-」では半導体・ライフサイエンスの分野を重点領域としており、これまでの日本電子の主要なお客様である大学・研究機関に比べると、圧倒的なスピードや変化への対応力が求められるようになってきております。この「長期目線での人財育成」と「スピード・柔軟性」の両立という、矛盾した課題を如何に解決していくかが、人的資本戦略の肝だと考えています。
■役割の再定義
新中期経営計画で掲げたビジョン、特に半導体・ライフサイエンス企業の期待に応えていくためには、我々自身が自らの役割を再定義し、特に「スピード・柔軟性」の面で大きく進化することが求められると考えています。
まず管理職、中でも部下を持つライン長の役割は、従来の管理監督から、最前線にいる社員一人ひとりへの権限委譲や部下の成長支援へとシフトしていくと考えています。
半導体・ライフサイエンス企業と共創することは、日本電子にとってまだまだ未知の部分が大きく、最も鮮度の高い情報を持つ前線メンバーが、適切な権限を持ち、スピーディーに意思決定・行動していくことは必須だと言えます。まだ仮説の段階ですが、前線には、圧倒的な当事者意識と実力を持った専門職を配置し、ライン長がそれを後方から支援していくようなイメージです。
これに伴って人財部門の役割も変わります。従来はオペレーションを効率的にこなし、人事制度を公正に運用していくことを重視してきましたが、今後は、変化に挑戦する管理職層に伴走者として寄り添い支援する役割や、社員のポテンシャル発揮を促す設計者としての役割が加わり、ビジネスへのより直接的な貢献が求められてくると考えています。
②指標および目標について
上記①の戦略を前提として、先に挙げた矛盾の解消のために、直近で優先度が高い施策は、公正な評価・報酬とタレントマネジメントの仕組みを通じて育成スピードを上げること、会社主導のタレントマネジメントと当事者意識を持った社員のキャリア自律の同時促進、ウェルビーイング経営の3つだと考えています。
■育成のスピードを上げる
現在、評価・等級・報酬といった人事諸制度の改定を進めております。2025年の4月より、管理職の評価制度のみを先行して改定し、目標管理の再徹底、行動目標設定による管理職層の成長促進、エンゲージメントサーベイのアクションプランと行動目標の連動、フィードバックの徹底などを盛り込みました。いずれも目新しいものではありませんが、高い目標へのチャレンジと絶えざる成長を促すための基礎となる、重要な一歩だと考えています。今後、管理職の他の制度や、一般職の諸制度の改定も検討を進めていきます。先述した専門職に適切な人をアサインし、適切に処遇していく仕組みも検討していきます。
この中で特に意識して進めたいのが、育成のスピードを上げることです。日本では今後急速に労働力が不足していきますが、日本電子は研究開発も製造も日本が中心であり、この点への対応は非常に重要です。従来の制度に残っている年功的な部分を改め、各人の成長スピードに合わせた、より柔軟な制度運用を通して、適所適材の実現に近づけていけると考えています。なお、平均的な昇格スピードを上げるというよりも、特に投資すべき人財を選抜し、その層を重点的に育成していくことを志向します。具体的な内容について、今後検討を進めます。
これら一連の施策をモニタリングしていくための指標ですが、現時点では、結果指標としての性格が強い以下の二つを設定しております。人事諸制度改定の検討と並行して、施策の進捗をモニタリングできるような中間KPIについても、設定していく予定です。
(人事諸制度の改定)
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項目 |
実施施策 |
KPI(原則対前年度改善を目指す) |
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評価・等級・報酬 |
・評価/等級/報酬制度改定 ・ミドルマネージャー開発支援 |
・エンゲージメントスコア(評価への納得感、給与への納得感):対前年度改善 ・エンゲージメントスコア(やりがい、達成感):対前年度改善 |
■タレントマネジメントとキャリア自律
タレントマネジメントは会社起点、キャリア自律は個人起点の取り組みですが、世界観や目指すところは共通しています。根底にあるのは「人的資本の所有者は個人であって会社ではない」ということです。会社は、一人ひとりの社員から人的資本を一時的に借り受け、それを運用して資産を増やし、結果として人的バランスシートとでも言うべき人的資本を拡大させていくというのが、人的資本経営の考え方です。この考え方を、日本電子が直面している課題に当てはめ、意欲ある人財が、成長し続けていけるための環境を作ります。
タレントマネジメントは、諸々の人財開発施策を通して、人的資本を拡大させていくための中核であり、具体的には、後継者管理やハイポテンシャル人財の育成に力を入れていきたいと考えています。全社タレントレビューを通して、少なくとも経営陣の中ではキー人財が見える化されている状態を作り出し、戦略的なローテーションなども実施していきたいと考えています。一方で、一人ひとりの社員にはキャリア自律を促し、自らのキャリアについて、上司との話し合いを通じて、オーナーシップを持てるような仕掛けを作っていきます。会社・個人両面からの取り組みを同時に実施していくことで、社内人財を流動化させ、全社的な適所適材の実現を目指します。
並行して、要員管理の仕組みも整えていきます。現状では人員数と労務費の管理までですが、将来的には職種やスキルを追加して解像度を上げ、動的人財ポートフォリオの策定ができるようにしていきたいと考えています。
KPIとしては、タレントマネジメントに関連するものを中心に設定しています。キャリア自律や人財ポートフォリオに関する具体的な施策は目下検討中となりますので、KPIについても、これから検討していきます。
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項目 |
実施施策 |
KPI(原則対前年度改善を目指す) |
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タレントマネジメント |
・後継者計画/育成計画 ・若手発掘/育成 ・グローバル人財発掘/育成 |
・キーポジションの後継者計画策定率:対前年度改善 ・後継者およびその他選抜人財の個別育成計画策定率:対前年度改善 |
■ウェルビーイング経営
そして最後がウェルビーイング経営です。今後労働力不足が進む日本において、働く場として魅力的であることは、日本電子の持続的な成長の必須要件です。内容としてはDOI(Diversity, Opportunity & Inclusion)とエンゲージメントが中心になります。
DOIについては、当社はこれまで両立支援の取り組みを進め、2023年に「えるぼし(3段階目)」、2024年に「プラチナくるみん」の認定を受けており、引き続き社員が働きやすい環境づくりを推進してまいります。多様な視点での考えや発想は事業成長のためには不可欠な要素であり、更なるイノベーションの創出のためにDOIの推進をより一層進めてまいります。
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項目 |
実施施策 |
KPI(原則対前年度改善を目指す) |
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DOI |
・ジェンダーダイバーシティ推進(女性積極採用/登用他) ・障がい者雇用 |
・女性管理職比率:2024年度末5.2%→2029年度末10% ・女性新卒採用比率:2025年4月12.5%→2030年4月25% ※女性キャリア採用を含めて2030年4月35%以上を目指す ・男性育児休業取得率:2024年度末55.9%→2029年度末100% ・障がい者雇用率:2025年度末までに2.7%(2025年3月末2.41%) |
エンゲージメントについては、2023年度に初めてのエンゲージメントサーベイを実施し、現在その結果に基づいたアクションを実施中であり、2025年度には二回目を実施予定です。DOI、エンゲージメントともに、全社的な数値目標は設けますが、各部署・マネージャー単位の目標はあえて設定しません。これは、エンゲージメントのスコアや登用・配置にバイアスや歪みが入らないようにするためです。代わりに、アクションそのものを着実に実行できるように、数値ではなく、アクションの実施を各人の行動目標に盛り込み、着実な実施に繋げていきます。数値は後からついてくると考えています。
(エンゲージメント向上)
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項目 |
実施施策 |
KPI(原則対前年度改善を目指す) |
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エンゲージメント |
エンゲージメント向上 ・エンゲージメントサーベイの定例化 ・フォローアップアクションと行動評価への紐づけ |
・エンゲージメントサーベイ:総合スコア対前年度改善(2023年度:63pt) ・アクションプラン策定率:90% |
■安全・健康に働くことができる環境の整備
当社は、全ての従業員が活躍できるよう安全・健康に働くことができる環境整備に努めてまいります。
a.健康経営の取り組み
当社は、経営理念を実現するため、社員一人ひとりが心身ともに健康であり、健康づくりを通じて活力ある社員を増やすべく、健康経営に取り組んでいます。健康経営では、「JEOLグループ 健康経営戦略マップ」を策定し、健康上の課題を明確にするとともに、KPI(指標・目標)を設定し推進しています。戦略マップでの「運動」「食事」「こころ」「疾病」「教育」「喫煙」などの課題に対しては、様々な施策を実行し、PDCAサイ
クルを回して改善を図っています。
2025年度は、健康経営推進事務局を新設し、更なる健康経営の推進を図っていきます。喫煙対策では、2025年度より会社敷地内を全面禁煙にするとともに、喫煙者に対して引き続き「禁煙・卒煙」をサポートする「禁煙応援プログラム」を実施していきます。
b.健康経営優良法人取得について
当社は、「健康経営優良法人認定制度」にて2022年度、2023年度、2024年度、2025年度と4年連続で「健康経営優良法人(大規模法人の部)」の認定を取得しております。今後は活動内容をさらに充実させ、健康経営優良法人認定取得を継続させるとともに、2029年度には「ホワイト500」の認定取得を目指してまいります。
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項目 |
実施施策 |
KPI(原則対前年度改善を目指す) |
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健康経営 |
健康経営の推進 ・「運動」「食事」「こころ」「疾病」「教育」「喫煙」への改善施策 |
・認定取得:①健康経営優良法人(大規模法人の部)認定取得(2022年度~2025年度取得)の継続、②2029年度に「ホワイト500」の認定取得 |
(注)指標および目標における取り組みは、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、提出会
社の数値のみ記載しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの経営成績および財務状況等(株価等を含む)に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあり、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月25日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 海外での事業活動について
当社グループは、海外市場の開拓を積極的に進めております。その結果、主な販売先である米国、欧州、中国、東南アジアの経済変動の影響を受けやすくなっております。また、当社グループはグローバルな事業展開のなかで、海外法人は現地社会との協調・相互信頼に努めておりますが、海外での事業活動では次のようなリスクがあり、当社グループの経営成績および財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
① 予期しえない法律・規制、不利な影響を及ぼす租税制度の変更
② 安全保障に起因する各国の輸出管理規制および経済摩擦
③ テロ、戦争等による社会的混乱
(2) 為替相場の変動について
当社グループの連結売上高の約7割は海外におけるものであり、当社グループは為替相場の変動に対処するために為替予約を中心とする為替変動リスクをヘッジする取引を必要に応じて行っていますが、中長期的な為替レートの変動は当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 金利変動のリスクについて
当社グループは、支払金利の変動リスクを回避し支払利息の固定化を図るために、個別契約ごとにデリバティブ取引(金利スワップ)をヘッジ手段として利用しておりますが、有利子負債の一部には、金利変動の影響を受けるものも含まれております。従って、金利上昇によって支払金利や調達コストが増加することにより、当社グループの経営成績および財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4) 各セグメントのリスクについて
当社グループは、理科学・計測機器、産業機器および医用機器という3つの分野で事業を行っており、個々の事業には以下のような業績変動要因があります。
① 理科学・計測機器事業
理科学・計測機器事業では、各国における官公庁の研究開発予算や民間企業の設備投資の動向により需要が増減し、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
② 産業機器事業および医用機器事業
産業機器事業および医用機器事業では、市況の急激な変動による設備投資動向により、当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 研究開発活動および人材育成について
当社グループは電子顕微鏡など最先端機器を世界市場で販売しており、グローバル市場での製品の競争力強化のため、新製品を継続的に投入しております。当社グループの事業では新製品を継続的に市場に投入していく必要があるため、研究開発が経営の重要なテーマとなっており、そのため、将来の企業成長は主に新製品の開発の成果に依存するというリスクがあります。
また、製品開発における人材確保や育成、また、大型装置の開発などでは多額の支出を行っても、それに応える充分な需要が確保できないリスク等があり、当社グループの企業成長および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6) 当社グループの売上高における第4四半期の割合が高いことによる影響について
当社グループの四半期別の売上高は、第4四半期が他の四半期に比べ高くなる傾向にあります。これは、官公庁や多くの民間企業において、年度末である3月に当社グループの製品の検収作業が行われることが多いためです。当社グループでは、この季節変動を考慮した計画策定を行い、当該時期の売上の維持・拡大に努めておりますが、製品の検収作業の遅延等により売上計上のタイミングが翌期にずれ込む等、当社グループの経営成績および財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7) 棚卸資産の廃棄、評価損について
当社グループは、製品や部品の品質・環境基準や在庫管理には充分留意しておりますが、市場動向、技術革新、製品のライフサイクル等の急激な変化に伴い、棚卸資産の廃棄および評価損の計上等を実施した場合には、当社グループの経営成績および財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8) 法的規制等について
当社グループは、国内の法的規制のほかに国際ルール、現地での労働法、税法、環境法など各国の法的規制などを受けており、また、事業・投資の許可や製品の品質における規格取得義務などがあり、これらの法的規制等により、当社グループの事業活動が制限される可能性があります。
(9) のれんおよび無形固定資産について
当社グループは、JEOL KOREA LTD.およびジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社を連結子会社としたことに伴い、のれんおよび無形固定資産を計上しております。当社グループは、当該のれんおよび無形固定資産につきましては、それぞれの事業価値および将来シナジー効果が発揮された結果得られる将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、景気の悪化や業績が想定どおり進捗しない等の理由により収益性が低下した場合には、のれんの減損損失計上により、当社グループの経営成績および財政状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 保有資産における価格変動リスクについて
当社グループは、金融機関や販売または仕入等に係る取引会社の投資有価証券(非上場を含む)を保有しているため、市場価格のあるものは相場価格の変動により、市場価格のない非上場株式等については当該会社の純資産、将来の事業計画等を総合的に勘案し、減損損失を計上する価格変動リスクを負っております。株式の価格変動リスクについては特別のヘッジ手段を用いておりません。なお、時価に関する情報は「第5 経理の状況」の金融商品関係および有価証券関係の注記に記載しております。
(11) 重要な訴訟等について
当社グループは、国内および海外事業に関連して、訴訟、紛争、その他法律的手続きの対象となるリスクがあります。これらの法的リスクについては、本社および関係会社に対する法令遵守の徹底を図るとともに、経営の効率化を進めるために内部監査室を設置し、本社監理および関係会社監理を行うこととしております。また、社長を委員長とし、社外弁護士も参加する「CSR(企業の社会的責任)委員会」を設置しております。当連結会計年度において当社グループの事業に重大な影響を及ぼす訴訟は提起されていませんが、将来重要な訴訟等が提起された場合には当社グループの経営成績および財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
(12) 自然災害等の影響について
当社グループでは、災害・事故などの発生に備えたリスク管理として、生産拠点の分散化および事業継続計画(BCP)の策定等を実施しております。しかし、大地震などの大規模自然災害や火災などの突発的な事故が発生した場合は、生産設備などに多大な損害を被る可能性があり、操業の中断により出荷に遅れが生じ、また破損した建物や設備の復旧に多額の費用がかかる恐れがあります。このような場合、当社グループの経営成績および財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
(13) 部材調達およびサプライチェーンの影響について
当社グループは、信頼のおける仕入先を選定し、原材料、部品等の安定的な調達を行っております。自然災害や戦争・テロ等、社会の混乱によるサプライチェーンへの大きな影響、需要増加による部材の供給不足および価格の高騰等が生じた場合、当社グループの経営成績および財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
(14) 情報セキュリティ等のリスクについて
当社グループでは、事業活動における技術情報や顧客情報等の秘密情報を保有しており、資産の盗難、紛失による情報漏洩やサイバー攻撃による情報の流出やシステム停止等の被害を防ぐため、情報セキュリティ委員会を設置し、下部の組織として各部門から選出された情報セキュリティ責任者、担当者を設置しております。さらに、社規として情報セキュリティポリシーを規定し、定期的な教育およびサイバー攻撃訓練メールの実施により、従業員のセキュリティ意識の向上に努めています。しかし、災害やサイバー攻撃、人的要因による障害が発生した場合、業務の停止や秘密情報の紛失、漏洩等のインシデントを起こし、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概況は、次のとおりであります。
① 財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度における我が国の経済状況は、物価高によるマイナス影響が一部見られるものの、一定の設備投資需要や雇用・所得環境の改善、インバウンド需要回復などが下支えとなり、全体として底堅く推移しました。一方で、長期化するウクライナ情勢や中東情勢などの地政学的リスクの高まりや、中国経済の停滞など、景気の先行きが不透明な状況が続いております。
このような状況下、当社グループは、中期経営計画「Evolving Growth Plan」(2022年度~2024年度)に掲げる重点戦略を強力に推進し、企業価値の向上および経営基盤の強化を図るとともに受注・売上の確保に努めました。
この結果、当連結会計年度の財政状態および経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ7,726百万円減少し、222,486百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ18,866百万円減少し、85,833百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ11,139百万円増加し、136,653百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の売上高は196,695百万円(前期174,336百万円に比し12.8%増)となりました。損益面におきましては、営業利益は35,501百万円(前期27,531百万円に比し28.9%増)、経常利益は34,424百万円(前期30,023百万円に比し14.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は18,688百万円(前期21,704百万円に比し13.9%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
1) 理科学・計測機器事業
各国政府の活発な科学技術投資および半導体や次世代電池の研究開発関連の活況な需要により、電子顕微鏡を中心に、受注・売上ともに堅調に推移しました。
この結果、当事業の売上高は124,793百万円(前期比4.0%増)となりました。
2) 産業機器事業
マルチビームマスク描画装置は市況回復の遅延が継続しましたが、シングルビームマスク描画装置およびスポットビーム型電子ビーム描画装置は、受注・売上ともに好調に推移しました。
この結果、当事業の売上高は56,483百万円(前期比44.8%増)となりました。
3) 医用機器事業
国内市場は安定した需要が継続していますが、一方で、海外市場においては中国の内製化政策などの影響もあり、受注・売上ともに低い水準にとどまりました。
この結果、当事業の売上高は15,418百万円(前期比0.7%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は34,605百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,797百万円増加しました。
当連結会計年度における各活動によるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動による資金の増加は23,104百万円(前期は15,301百万円の資金の増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益が24,962百万円、投資有価証券評価損益が12,381百万円、減価償却費が4,925百万円であったことに対して、仕入債務の減少が13,855百万円、法人税等の支払額が9,772百万円であったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動による資金の減少は855百万円(前期は18,028百万円の資金の減少)となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入が3,041百万円であったことに対して、有形固定資産の取得による支出が2,960百万円、無形固定資産の取得による支出が1,303百万円であったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動による資金の減少は17,116百万円(前期は798百万円の資金の減少)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出が6,943百万円、配当金の支払額が5,797百万円であったことによるものであります。
なお、不測の事態に備え、従来より銀行融資枠(コミットメントライン)を設定しております。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) (百万円) |
前年同期比(%) |
|
理科学・計測機器事業 |
129,151 |
103.8 |
|
産業機器事業 |
50,065 |
95.3 |
|
医用機器事業 |
15,515 |
97.7 |
|
合計 |
194,732 |
101.0 |
(注)金額は、販売価格で表示しております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
理科学・計測機器事業 |
121,777 |
100.2 |
50,182 |
94.3 |
|
産業機器事業 |
49,632 |
89.6 |
51,047 |
88.2 |
|
医用機器事業 |
15,030 |
98.4 |
1,975 |
83.6 |
|
合計 |
186,440 |
97.0 |
103,204 |
91.0 |
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) (百万円) |
前年同期比(%) |
|
理科学・計測機器事業 |
124,793 |
104.0 |
|
産業機器事業 |
56,483 |
144.8 |
|
医用機器事業 |
15,418 |
100.7 |
|
合計 |
196,695 |
112.8 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積りと見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、当社グループの連結財務諸表および当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
a.経営成績等
1) 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末から7,726百万円減少し222,486百万円となりました。主な要因としては、繰延税金資産が4,801百万円、現金及び預金が4,640百万円増加し、投資有価証券が14,832百万円減少したこと等によります。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末から18,866百万円減少し85,833百万円となりました。主な要因としては、電子記録債務が10,519百万円、長期借入金が4,413百万円、支払手形及び買掛金が3,117百万円減少したこと等によります。
当連結会計年度末の純資産合計は利益剰余金が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ11,139百万円増加し、136,653百万円となりました。以上の結果、当連結会計年度末の自己資本比率は前連結会計年度末から6.9ポイント増加し61.4%となりました。
2) 経営成績の状況
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比の12.8%増の196,695百万円となりました。この要因としては、産業機器事業を中心とした売上の増加および円安による為替などの影響を受けたことが挙げられます。
損益面においては、営業利益35,501百万円(前期27,531百万円に比し28.9%増)、経常利益34,424百万円(前期30,023百万円に比し14.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益18,688百万円(前期21,704百万円に比し13.9%減)となりました。この要因としては、売上高が増加したことが挙げられます。この結果、営業利益は前期に比し7,970百万円増加し、前期に比し補助金収入の減少かつ為替差損が増加したものの、経常利益は4,401百万円増加しました。
また、親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券評価損の増加に伴い、前期に比し3,016百万円減少しました。
当社グループでは、理科学・計測機器事業で培った技術を軸として産業機器事業および医用機器事業をグローバルに展開しております。
理科学・計測機器事業においては、各国政府の活発な科学技術投資および半導体や次世代電池の研究開発関連の活況な需要により、電子顕微鏡を中心に、受注・売上ともに堅調に推移しました。
産業機器事業においては、マルチビームマスク描画装置は市況回復の遅延が継続しましたが、シングルビームマスク描画装置およびスポットビーム型電子ビーム描画装置は、受注・売上ともに好調に推移しました。
医用機器事業においては、国内市場は安定した需要が継続していますが、一方で、海外市場においては中国の内製化政策の影響などもあり、受注・売上ともに低い水準にとどまりました。
2022年度から2024年度を対象とする中期経営計画「Evolving Growth Plan」では前中期経営計画「Triangle Plan 2022」の基本的なビジョンである「70年目の転身」を基本としながら「YOKOGUSHI」戦略をさらに発展させるとともに、研究開発力、ものづくり力、サービス力のUPにより顧客満足度の向上を図ることを通じ、事業規模の拡大と高収益化につなげてまいりました。2025年度よりスタートする新中期経営計画「Evolving Growth 2.0 -A New Horizon-」は2029年度を達成目標年度とし、従来取り組んでまいりました「YOKOGUSHI」戦略を深化させた「YOKOGUSHI 2.0」として分野別のソリューション提供の基盤を更に強化します。この戦略を着実に遂行し、目標を達成するため、重点領域である半導体・ライフサイエンス分野への戦略的な成長投資を継続するとともに、全社的な収益性の向上と資本効率の改善を図ってまいります。
b.経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
③資本の財源および資金の流動性についての分析
1) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
2) 資金需要
当社グループの資金需要は、営業活動については、生産活動に必要な運転資金(材料・外注費および人件費等)、受注獲得のための販売費、製品競争力強化および新製品開発を目的とした研究開発費が主な内容であります。投資活動については、製造用冶具設備および研究開発用設備への設備投資等が主な内容であります。
今後、成長分野に対しては必要な設備投資や研究開発投資等を継続していく予定です。
3) 財務政策
当社グループは、運転資金、投資資金についてはまず営業キャッシュ・フローで獲得した資金を投入し、不足分については有利子負債の調達を実施しております。
長期借入金、社債等の長期資金の調達については、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金の償還時期等を考慮の上、調達規模、調達手段を適宜判断し公募増資も視野にいれつつ実施していくこととしております。
また、資金調達コストの低減に努める一方、過度に金利変動リスクおよび為替変動リスクに晒されないよう、適切なヘッジ手段を検討・実施しております。
④経営上の目標の達成・進捗状況
当社グループは、企業価値の向上と継続的な成長を確保するため、適正な利益を継続的に確保することを重点に置いております。このため、経営指標として、売上高営業利益率、自己資本当期純利益率(ROE)、投下資本利益率(ROIC)を重視しております。
当連結会計年度における売上高営業利益率は18.0%(対前期比2.2ポイント増)、自己資本当期純利益率(ROE)は14.3%(対前期比4.8ポイント減)、投下資本利益率(ROIC)18.5%(対前期比2.6ポイント増)、となりました。
今後も引き続き当該指標の改善に邁進していく所存でございます。
該当事項はありません。
当社グループにおける研究開発活動は、中長期的な観点で選択された基盤的研究、各事業の核となる基幹製品の開発、および国立研究開発法人理化学研究所等の外部機関との共同研究を実施しております。
当社グループは、2025年度よりスタートする新中期経営計画「Evolving Growth 2.0 -A New Horizon-」において、従来取り組んでいる「YOKOGUSHI」戦略を深化させ、「YOKOGUSHI 2.0」として分野別のソリューション提供の基盤を更に強化します。特に高い市場成長性が見込まれ、かつ当社グループの持つニッチなテクノロジーが活用できる半導体・ライフサイエンスの分野を重点領域に設定し、この分野での成長を実現します。そして、製品ごとにマーケットへアプローチする方法を変え、マーケットが必要とする課題解決型のソリューションを創出し、最先端テクノロジーに挑戦するお客様の想像を超えるイノベーションを提供できるグローバルリーダーになることを目指します。
当連結会計年度における事業の種類別セグメントの研究開発成果は次のとおりであり、研究開発費の総額は
(1)理科学・計測機器事業
当セグメントに係る研究開発費は
理科学・計測機器事業においては、世界最高水準の性能を誇る電子顕微鏡をはじめとする製品群の更なる競争力向上への取り組みを進めております。
透過電子顕微鏡では、初心者から熟練者まで幅広いユーザーが、操作やメンテナンスを簡単に行えるコンパクトな次世代電子顕微鏡「JEM-120i」の販売を開始しました。
走査電子顕微鏡では、従来の優れた操作性に加え、自動観察・分析機能や自動校正機能を新たに搭載することで、業務の効率化と生産性の向上を実現した新型ショットキー電界放出形走査電子顕微鏡「JSM-IT810」の販売を開始しました。
核磁気共鳴装置では、チューニング範囲のシームレス化、マジックアングル自動調整機能、測定温度範囲の拡張などを新たに搭載したハイスループット固体NMRプローブ「ROYALプローブ™ AUTOMAS」の販売を開始しました。また、低温冷却技術により低ノイズかつ高感度な測定が可能な、多核(1H, 13C, 19F, 31Pなど)対応型の高感度冷却プローブ「SuperCOOL MARVEL」を発表しました。
(2)産業機器事業
当セグメントに係る研究開発費は
産業機器事業においては、市場が求める装置性能を有する電子ビーム描画装置(Spot Beam方式/VSB方式)の新機種開発および性能向上をすすめるとともに、IMS Nanofabrication社と協業にて市場導入している電子ビーム描画装置(Multi Beam方式)に対しても市場ニーズに合ったコンポーネントをスピーディーに開発・提供しています。また、電子ビーム金属3Dプリンターの要素技術である高融点金属の積層造形に関しても、開発・改良を継続しています。
(3)医用機器事業
当セグメントに係る研究開発費は
生化学自動分析装置は、最適なソリューション提供を目的として検査業務の迅速化と自動化を進めております。微量・ハイスループットを特徴とした現行装置の拡販を通じ課題解決を図りながら、海外展開に向けた最適化を視野に投資を継続しております。さらに、IoTを活用したサポート体制の強化、品質向上および生産性向上を進め、競争力の向上を図っていきます。