第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

今後の見通しにつきましては、米国の関税政策により、世界的に貿易・投資・供給網が混乱するリスクや、日本の経済成長の下振れも懸念されており、先行きは不確実性がより高まる中で推移するものと思われます。

当社グループがターゲットとする市場におきましては、半導体・電子部品市場(機械部品事業)が、データセンター向けの投資拡大等、好調に推移することが見込まれ、また、衛生用品機器・医療用部品市場(機械・電機部品事業)は、緩やかながらも回復傾向で推移すると見込んでおります。産業用機器・部品市場では、けん引してきた二軸混錬押出機用の金属部品(機械部品事業)の需要の一服等もありますが、産業用設備向けのブレーカー用電気接点(電機部品事業)など引き続き堅調に推移することが見込まれます。一方、自動車部品市場(電機部品事業)では、コロナ禍前の水準に向けた回復基調にあるものの、米国の関税引き上げ等の影響も懸念され不透明な状況が見込まれます。

このような環境のもと、当社グループは、2024年度が最終年度となる中期経営計画を振り返り、得られた課題からさらなる企業成長に向けた全社的な戦略方針に基づき、戦略の実効性を高めるべく組織体制を強化していきながら、成長と収益拡大に向けた経営課題の達成に取り組んでまいります。サステナビリティに関する取組みにおいては、5つの成功の柱(マテリアリティ)に基づく各施策の組織への理解浸透及びその実践に注力しながら、長期ビジョンである「サステイナブルビジョン2050」の達成に取り組んでまいります。

 

(2024中期経営計画の振り返り及び次期中期経営計画の策定に向けて)

当社グループは、2024年度を最終年度とした4か年の計画である「日本タングステングループ2024中期経営計画」において、成長と収益拡大に向けた取組みとして、利益体質の強化、既存事業の収益拡大、成長期待事業の拡大や、新商品・新規事業の創出に注力し、また、サステナビリティを踏まえたパーパスの策定、マテリアリティの策定と実行等による経営への実装に取り組んでまいりました。

1stステージである前半2年は、コロナ禍において好調だった「半導体・電子部品市場」「産業用機器・部品市場」及び「自動車部品市場」が堅調だったこと等により、最終年度目標に近づく勢いで推移したものの、2ndステージとなる後半2年では、顧客の在庫調整の長期化や原材料・エネルギー価格の高騰等により、最終年度目標から乖離する中で推移しました。

 

「日本タングステングループ2024中期経営計画」計数計画及び実績

 

最終年度

(2024年度)

目標

2024年度

実績

売上高

  130億円

123億円

営業利益

 10億円

6.8億円

営業利益率

  8%

5.6%

ROE

  8%

5.5%

 

 

これまでの取組みと実績により得た経営課題に基づき、当社グループでは、全社戦略方針と、6つの柱からなる次期中期経営計画の骨子を策定し、次期(2025年度)は、全社戦略の実行を可能とする新たな組織の下で、組織機能の強化とともに、2026年度からスタートする次期中期経営計画の策定を進めてまいります。

 

 

成長と収益拡大に向けた経営課題

「全社戦略の抜本的強化」「組織間シナジーの最大化」「生産性と付加価値の向上」を 経営課題として取り組み、持続的な企業成長・収益拡大につなげていく。

 

 

全社戦略方針

● 多様化するお客様のニーズを深く理解し、当社の強みを最大限に活かして、価値ある製品・サービスを提供することで持続的な成長を実現する。

● 既存事業の根幹を成す粉末冶金技術の強化を企業の成長基盤とする。

● 収益改善に向けて全社視点で事業を分析しポートフォリオ再編の仕組みを強化する。

 

 

次期中期経営計画 骨子

① 全社ビジョンの見直し(2030 Vision)

② 事業ドメインの再定義(粉末冶金技術×グローバル市場)

③ コアコンピタンスの強化

④ 付加価値創造サイクルの構築・組織機能の強化

⑤ 事業ポートフォリオの再編

⑥ サステナビリティ経営との融合

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社グループでは、限りある資源をもとに“ものづくり”を支える私たちだからこそ持続可能な社会に貢献していくことが使命と考えております。

パーパス「より少なく、よりよく。 Building a better world from less.」及び「サステイナブルビジョン 2050 (Nippon Tungsten Sustainable Vision 2050)」のもとで、社会課題やメガトレンドから社会視点、自社視点による評価を行い、取り組むべき重要度が高く、かつ、サステイナブルビジョン達成に必要な課題を「成功の柱(≒マテリアリティ)」として特定しました。

また、サステナビリティ経営委員会において、持続可能性の観点から当社グループの企業価値を向上させるため、気候変動を含む環境・社会課題の解決に向けた具体的な取り組みを行っております。サステナビリティ経営委員会は、委員長を取締役社長とし、委員として各執行役員及び各本部長が参加するほか、傘下に「5つの成功の柱」における具体的な施策の検討・推進を担う下部組織としての主管部門(品質保証部門、調達部門、経営企画部門、人事部門、生産技術部門)を設け、重要事項等においては、取締役会に年2回以上、報告することとしております。

 

パーパス

より少なく、よりよく。

 Building a better world from less.

 

 

サステイナブルビジョン2050

(Nippon Tungsten Sustainable Vision 2050)

「より少なく、よりよく。」に共感する多くのパートナーと共に、物質的制約を超えていくソリューションを創造し続け、資源の枯渇や気候変動といった社会課題が解消された世界を実現している。

 

 

 

(2)戦略

当社グループでは、以下のプロセスにて「成功の柱≒マテリアリティ」を特定し、課題解決に向けて取り組みを進めております。

(Step1)社会課題の抽出(社会から見た重要性)

2050年を見据え、中長期的な社会環境について「社会」「技術」「経済」「環境」「政治」の5つの視点から分析を行い、重要な社会課題を抽出しました。

(Step2)妥当性の評価とサステイナブルビジョンの策定(自社から見た重要性)

Step 1で抽出した社会課題を、当社にとってのインパクトや貢献可能性などの観点で絞り込み、その解決に貢献している姿をサステイナブルビジョンとして策定しました。

(Step3)成功の柱≒マテリアリティの特定

Step 2で策定したサステイナブルビジョンの実現において重要な下記5つの取り組みを“成功の柱≒マテリアリティ”と定め、取締役会において妥当性を評価し、最終決定しました。

 

(5つの成功の柱≒マテリアリティ)

5つの成功の柱

2050年の目指す姿

CN

カーボンマイナスへの挑戦

実質カーボンマイナスを達成します。

Carbon Negative

CE

枯渇リスクの高い資源の有効活用

枯渇リスクの高い資源の最終廃棄をゼロにします。

Circular Economy

CV

提供価値の転換と新たな価値の創出

消費される資源あたりの価値を大きく飛躍させるとともに、省エネ、省資源、脱炭素などの社会課題解決につながるソリューションの提供を中核事業とします。

Creation of Value

CW

働きがいと創造力のスパイラルアップ

多様な価値観を持った人々が、働きがいを感じ、積極的に力を合わせて価値創造に挑戦する企業文化を醸成します。

Upward spiral of Creativity and Well-being

CX

リアルとデジタルの融合

データ活用とデジタル技術を基盤とし、価値創造サイクルを迅速に回して提供価値を高めます。

Creation with real & digital transformation

 

 

また、当社グループにおける人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は以下のとおりであります。

 

(人材の育成に関する方針

当社グループは、社員が必要なスキルや自らのキャリアについて主体的に意識し、実現に向け行動するための人材育成プログラムに取り組むことで、個人の能力開発・成長を支援します。

 

(社内環境整備に関する方針、戦略)

当社グループは、年齢・性別・国籍に捉われず、多様な属性・価値観を持った人材が互いに認め合い、多くのパートナーと共創しながら前向きに挑戦でき、かつ、社員が心身ともに健康で、差別がなく人権が保障されている「健全な職場環境」の構築に取り組みます。

 

(3)リスク管理

当社グループのリスクマネジメント推進体制におきましては、取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会により、リスクの対応方針や課題について識別・評価を行い、定期的に取締役会に報告しております。

サステナビリティに係るリスクにつきましても、リスクマネジメント委員会において識別・評価し、定期的に取締役会に報告することとしております。

 

 

(4)指標及び目標

当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、「5つの成功の柱」を達成するための具体的な指標及び目標について、2050年の目指す姿で設定した「実質カーボンマイナスの達成」(CN:Carbon Negative)や、「枯渇リスクの高い資源の最終廃棄をゼロ」(CE:Circular Economy)とする最終目標に対し、サステナビリティ経営委員会を中心に、取組みを行いながら段階的な目標値等の検討を進めております。

最終目標

取組み状況

実質カーボンマイナスの達成

(CN:Carbon Negative)

温室効果ガス(GHG)排出量については、2022年度に基山工場、宇美工場および飯塚工場ならびに本社ビル購入電力を100%再生可能エネルギー由来の電力に切り替えることでScope2の排出量を大幅に削減しております。また、2021年度に遡ってScope1、Scope2の排出量を算定し、当社ホームページに掲載しております。(https://www.nittan.co.jp/sustainability/cn/

枯渇リスクの高い資源の最終廃棄をゼロ

(CE:Circular Economy)

希少金属の再利用・再資源化に向けて、タングステンのほか、金、銀、銅、コバルト、ニッケルを対象に、他社製品を含む使用済製品を買い取り、金属リサイクルメーカーでの製錬後、リサイクル原料として生産に再利用することで、原料の安定調達及び資源循環を高める取組みを進めております。本取組みの実施にあたり、2024年度は古物営業法に基づく古物商の許可を得ました。

 

 

(人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標)

当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標について、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では、女性活躍推進法等による公表義務がなかったことから、指標の目標及び実績に関する整備が行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、連結グループにおいて主要な事業を営む提出会社の指標の目標及び実績を記載しております。

指標

目標

実績(当連結会計年度)

年間一人当たりの人材育成研修費用

翌連結会計年度まで54千円

41千円

 

 

 

3 【事業等のリスク】

 

(リスクマネジメント体制)

当社は、当社グループの事業活動に関するリスク管理を所管する「リスクマネジメント委員会」を設置しております。リスクマネジメント委員会は、取締役社長を委員長とし、各部門の部門長がリスクオーナーとしての責任を負っております。

当社グループでは、各部門がリスクを抽出、当該リスクについて管理レベル、業績等への影響度、緊急性の観点から重要性を評価し、当該リスクへの対応策を決定した上で、リスクマネジメント委員会事務局に提出しております。なお、各部門を通じて提出されたリスクのうち、特に重要性が高いリスクについては、リスクマネジメント委員会において対応策の実施状況をモニタリングし、その実効性を確認しております。

また、緊急事態が生じた場合には「緊急対策本部」を設置し、迅速かつ的確な対応を行うとともに、緊急事態による損害の軽減に必要な対策を行います。

 

(事業等のリスク)

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、当社グループの経営成績及び財務状況等(株価等を含む)に影響を及ぼす可能性のある特に重要性の高いリスクには以下のようなものがあると考えられます。
 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月27日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

リスク項目

リスク内容

対策

経営リスク

コンプライアンス

当社グループにおいて、万が一、コンプライアンス違反が生じた場合には、損害賠償責任や信用失墜等により業務運営に支障をきたす可能性があり、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、左記リスクに対応するため、内部通報制度を含むコンプライアンス体制を構築し、コンプライアンスファーストの意識を浸透させるための教育等を実施しているほか、取締役会やリスクマネジメント委員会等においてコンプライアンス遵守状況をモニタリングし、適宜改善活動を行っております。

人財育成・人員確保等

当社グループにおいて、有能な人財の育成や事業活動に必要な人員の確保、適正な配置ができなかった場合には、長期的視点から当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、左記リスクに対応するため、多様な価値観を持った人々が、働きがいを感じ、積極的に力を合わせて価値創造に挑戦する企業文化を醸成するとともに、経営理念や人財育成方針に基づくOJT、専門性を有するキャリア人財の獲得や、計画的かつ継続的な階層別・職種別教育を実施し、高度なスキル、高い専門性を有し、グローバルに活躍できる人財の育成・開発を行っております。

情報セキュリティ

当社グループで保有している秘密情報や個人情報が予期せぬ事態により外部に流出した場合には、当社グループのイメージ低下や損害賠償の発生、当社の優位性の低下・欠落の可能性など、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、左記リスクに対応するため、顧客情報や秘密情報、グループ各社が保有するノウハウ、技術等の情報の管理を徹底するとともに、情報セキュリティに関する外部診断による課題の改善を通じて、情報が外部に流出しないよう継続的に体制強化を図っております。

 

 

リスク項目

リスク内容

対策

事業リスク

市場環境・競争力等

当社グループは、「衛生用品機器・医療用部品市場」、「半導体・電子部品市場」、「自動車部品市場」、「産業用機器・部品市場」の4つのターゲット市場に、注力商品であるNTダイカッター、カテーテル用タングステンワイヤー製品、磁気ヘッド基板、二軸混錬押出機用部材、EVリレー用接点などを供給しておりますが、注力商品ごとの市場環境の急激な変動、主要顧客の設備投資抑制、対応困難な価格競争、技術革新、医療分野にあっては市場参入障壁の高さによって、売上高が大きく減少し、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、左記リスクに対応するため、次世代の主力を担う新商品のターゲット市場投入に注力するほか、現行の主力製品の技術改良、主要顧客・新規顧客への拡販強化、アフターフォロー体制の構築、価格競争力を維持するための原価低減活動、工程内スループット改善に向けた活動、品質維持・改善活動等を強化しております。

各国関税政策の急激な変動に対しましては、想定されるサプライチェーンの多様化に関連した顧客要望に柔軟に対応し、売上高の減少を最小限に抑えるための取り組みを推進しております。

新商品の開発

当社グループが計画している新商品の開発が未達または遅れた場合には、市場競争力を失い、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、左記リスクに対応するため、新商品開発への人的リソースの投入を強化し、お客様や市場のニーズに合致した新商品開発に注力するとともに、外部研究機関との共同研究や持続可能な社会への貢献に向けての新たな研究への取組みを推進することで、今後の成長市場において、継続的かつスピーディに新商品を創出するため、開発体制の強化に取り組んでおります。また、取締役会においても新商品開発状況に対するモニタリングを強化しております。

品質問題

当社グループが製造販売する製品の品質に欠陥が生じ、当社が加入している生産物賠償責任保険で補填される額を上回る損害賠償額が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、左記リスクに対応するため、すべての製品につきお客様が求める品質・仕様に適合し、欠陥が発生しないよう、工程の改善や管理を強化する取り組みを推進し、品質管理体制の強化を図っております。

原材料調達、価格の変動

当社グループの粉末冶金製品に係る原材料には、タングステン、コバルト等のレアメタルが使用されております。レアメタルは、主に中国や欧州からの輸入に依存しており、中国や欧州の政治・経済状況の変化、法律の改正、または世界的な需給逼迫等により調達できなくなった場合は、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、レアメタルは、地政学的リスクや市況により価格が急激に変動する可能性があり、当社グループの原材料調達価格もこの変動の影響を受ける可能性があります。

当社グループは、左記リスクに対応するため、関連情報の収集、適正在庫の見直し、複数取引先からの調達やグローバル調達体制の強化を実施しております。

海外での事業活動

当社グループは、主力製品であるNTダイカッターの主要顧客の海外展開に対応する形で、アメリカ、イタリア、中国、タイに関係会社を設立し、事業活動を行っておりますが、これら地域の政治的、経済的要因の変動、法的規制、税制度の改正、また、ストライキ、デモ等の労働争議、社会的混乱により当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、海外関係会社において、原材料価格の上昇、海外の事業環境の悪化、各海外拠点での競合他社との価格競争激化等により、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、左記リスクに対応するため、現地での情報収集及び営業体制の強化、新商品の投入、原価低減活動による収益の確保等、海外での事業リスクに対応した活動を行っております。

 

 

リスク項目

リスク内容

対策

財務リスク

為替変動

当社グループの海外での事業活動及び海外との輸出取引において、為替相場の変動による影響を受けております。これらについては換算時の為替レートにより、現地通貨による価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受けることがあり、その状況によっては当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、左記リスクに対応するため、為替感応度を低減させるための円建て取引や、外貨建て債権債務の残高管理により、リスク低減を図っております。

固定資産の減損

当社グループは、国内及び海外子会社の事業所で設備投資を実施しておりますが、当社グループの保有する固定資産について、当該資産又は資産グループが属する事業の経営環境の著しい変化や収益状況の悪化等により、固定資産の減損損失を計上する必要が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、中長期的な経営計画において取り組んでいる事業ポートフォリオの再編に向けた取組みの結果によっては、生産拠点の見直しや資産の処分に関する意思決定が行われたり、将来の使用が見込まれない遊休資産が発生したりするなど、減損の兆候が識別される可能性があります。

当社グループは、左記リスクに対応するため、将来の需要予測・市場分析、当社グループの競争力、想定されるリスクの洗い出し、投資効率等を勘案したうえで中長期的な経営計画・事業計画を立案し、取締役会等で十分審議したうえで投資を実施することとしております。また、事業の経営環境・市場環境に変化が生じた場合は、事業戦略の見直しについて取締役会で適宜審議・決定の上、対応することとしております。

なお、収益性の低い事業については、市場環境等の変化に合わせ事業戦略を見直すなど、事業構造の改善に取り組んでおります。

環境・災害 リスク

労働災害等

当社グループの事業所において重大な労働災害や設備事故が発生した場合には、多額の賠償、復旧及び再発防止対策費用の発生、さらには、行政罰やレピュテーションの棄損による受注の減少等、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、左記リスクに対応するため、労働安全衛生・防災管理体制を構築し、労働災害及び生産設備等の事故防止に向けて、ヒヤリハットやリスクアセスメントの重要性の再認識教育、PDCAサイクルに基づく安全衛生活動を行っております。また、労働災害や設備事故による関係各署からの改善指導された事項への対応や、同種の災害を再び起こさないための各対策にも取り組んでおります。

環境規制等

当社グループの企業活動に伴って発生する廃棄物、規制物資、副産物等について、万が一、環境関連法令に違反した場合、将来の法規制の改正・強化により新たな管理・処理費用の負担が発生した場合、又は天災、事故等による災害復旧費等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、左記リスクに対応するため、ISO14001(環境)の国際認証を取得し、環境規制に基づいて厳格に管理しているほか、自主基準による環境保全対策を行っております。また、省エネルギー対策、産業廃棄物の削減、太陽光発電事業等により、環境負荷への低減に取り組んでおります。また、社会的要求が加速する低炭素社会の実現に向けては、CO2削減に貢献する製品の販売や研究開発に取り組んでおります。

自然災害等

当社グループの事業所において台風、地震等の自然災害、または火災等の予期せぬ事故が発生した場合には、当社グループの生産設備、棚卸資産への被害、また、これに伴う生産・販売活動の中断等が発生することにより当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、左記リスクに対応するため、自然災害が予測される場合には万全の備えを行うとともに、万が一、予期せぬ事故等が発生したときに備え、工場ごとの災害発生時の初動マニュアル及びBCPの整備に取り組んでおります。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における経済環境は、堅調な企業業績を背景とした雇用・所得環境の改善や設備投資の増加に支えられたこと、また、インバウンド需要も回復していること等から、景気は緩やかな回復基調で推移しております。一方で、関税を巡る金融市場の混乱や、インフレーション加速の懸念、地政学リスクの継続等、先行きは依然として不透明な状況が継続しております。

当社グループがターゲットとする市場におきましては、半導体・電子部品市場では、ビッグデータなど大量のデータ保存需要が伸びており、データセンター向けが好調であったことや、衛生用品機器市場では、拡販活動が進むなど好調に推移し、医療用部品市場においても、在庫調整の終息等により、回復基調で推移しました。また、産業用機器・部品市場は、企業の設備投資が増加傾向にある中で、当社商品の需要も堅調に推移しました。一方、自動車部品市場は、北米でのEV販売台数の低下や中国での需要が減少傾向にあり、低調に推移しました。

このような経済環境のもと、当社グループの業績は、機械部品事業において、注力商品であるハードディスクドライブ(HDD)用磁気ヘッド基板や、NTダイカッターが好調に推移したことで増収となり、電機部品事業においても、EVリレー用接点や抵抗溶接用電極が低調だったものの、ブレーカー用電気接点の需要が回復したこと等により増収となりました。

上記の結果、当社グループの売上高は、前年度比8.1%増123億9千2百万円となりました。

損益面では、賃上げや、一部の主材料価格の上昇等によるコスト増加の要因はあったものの、特に機械部品事業の注力商品であるHDD用磁気ヘッド基板や、NTダイカッターが増収となったこと等により原価率が改善し、営業利益は、前年度比44.7%増6億8千9百万円となりました。経常利益は、為替差損を計上したことや、持分法投資利益が減少したものの、営業利益が増加したこと等により、前年度比21.2%増9億5千2百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度では特別損失を計上しましたが、当連結会計年度での特別損失の計上はなく、前年度比28.4%増6億7千6百万円となりました。

 

セグメント別の状況は次のとおりです。

なお、セグメント別の金額については、売上高はセグメント間の取引を含んでおり、営業損益は全社費用等調整前の金額であります。

 

(機械部品事業)

■半導体・電子部品市場

情報機器関連のHDD用磁気ヘッド基板は、データセンター等で使用される大容量HDDの在庫調整が解消し、安定した需要まで回復したこと等により、増収となりました。

■衛生用品機器・医療用部品市場

おむつなどの衛生用品製造設備の部品であるNTダイカッターは、中国市場向けで勢いを欠くものの、新材料及び新構造のロータリーカッターユニットの拡販により、中東やアフリカ等の新興国向けでは継続的な受注を獲得するなど好調に推移したことから増収となりました。

■産業用機器・部品市場

二軸混錬押出機用の金属部品が、当連結会計年度第1四半期及び第4四半期にまとまった需要があり、増収となりました。

 

この結果、機械部品事業の売上高は前年度比12.0%増71億4千6百万円となり、営業利益は同76.2%増8億8千5百万円となりました。

 

 

(電機部品事業)

■自動車部品市場

EVリレー用接点は、米国市場の需要低迷や、顧客の他材種への仕様変更の動き等もあり、減収となりました。また、電装部品溶接用の抵抗溶接用電極は、中国市場の低迷によるエンドユーザーの電極需要の減少等もあり、減収となりました。

■産業用機器・部品市場

産業用設備向けのブレーカー用電気接点は、前期の在庫調整を経て回復基調にあるなかで、原材料価格の上昇に伴う売価への転嫁も進んだこと等により、増収となりました。

■衛生用品機器・医療用部品市場

医療関連部材のカテーテル用タングステンワイヤー製品は、北米地域向けにおいて新規顧客を獲得したことや、東南アジア向けでは在庫調整が終息したこと等により、増収となりました。

 

この結果、電機部品事業の売上高は前年度比3.2%増52億7千1百万円となり、営業利益は同25.4%減3億9千8百万円となりました。

 

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ4億9千5百万円増加176億3千3百万円となりました。これは主に現金及び預金が減少したものの、有形固定資産、棚卸資産及び投資有価証券が増加したことによるものであります。負債は、4千5百万円増加50億7千万円となりました。これは主に仕入債務が減少したものの、未払法人税等、賞与引当金及び設備関係未払金が増加したことによるものであります。純資産は、4億5千万円増加125億6千3百万円となりました。これは主に利益剰余金及び為替換算調整勘定が増加したことによるものであります。

 

② キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物の期末残高は、営業活動により10億2千万円の資金を獲得し、投資活動により9億4千2百万円の資金を支出し、財務活動により2億6千1百万円の資金を支出した結果、前連結会計年度末と比較して、1億8千8百万円減少し、32億9千万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により獲得した資金は10億2千万円となり、前年度比7億3千万円の収入増となりました。これは主に、売上債権の増減額が減少したこと及び税金等調整前当期純利益が増加したことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により支出した資金は9億4千2百万円となり、前年度比1億2千8百万円の支出減となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出が減少したことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により支出した資金は2億6千1百万円となり、前年度比4千万円の支出減となりました。これは主に配当金の支払が減少したことによるものであります。

 

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

機械部品事業

6,365

13.9

電機部品事業

5,028

0.7

その他

合計

11,393

7.6

 

(注) 金額は、販売価額をもって表示しており、セグメント間の取引については、相殺消去しております。

 

b 受注状況

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

機械部品事業

6,531

1.7

1,399

△30.5

電機部品事業

5,496

7.3

1,246

22.0

その他

合計

12,028

4.2

2,646

△12.9

 

(注) セグメント間の受注高及び受注残高については、相殺消去しております。

 

c 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

機械部品事業

7,121

12.0

電機部品事業

5,271

3.2

その他

合計

12,392

8.1

 

(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成において見積りが必要となる事項につきましては、過去の実績やその時点で合理的と考えられる情報に基づき会計上の見積りを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果とは異なる場合があります。
 当社グループの連結財務諸表の作成において採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。また、当社グループの連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a 財政状態の分析

(流動資産)

当連結会計年度末の流動資産の残高は、前連結会計年度末と比較して1億1千8百万円増加101億4千5百万円となりました。これは主に現金及び預金が1億8千8百万円減少したものの、棚卸資産が2億3千7百万円増加したこと及び売上債権が9千8百万円増加したことによるものであります。

 

(固定資産)

当連結会計年度末の固定資産の残高は、前連結会計年度末と比較して3億7千7百万円増加74億8千8百万円となりました。これは主に退職給付に係る資産が4千9百万円減少したものの、有形固定資産が3億1百万円増加したこと及び投資有価証券が1億1千万円増加したことによるものであります。

 

(流動負債)

当連結会計年度末の流動負債の残高は、前連結会計年度末と比較して1千1百万円増加45億5千7百万円となりました。これは主に仕入債務が1億2千9百万円減少したものの、未払法人税等が8千2百万円増加したこと及び賞与引当金が7千5百万円増加したことによるものであります。

 

(固定負債)

当連結会計年度末の固定負債の残高は、前連結会計年度末と比較して3千4百万円増加5億1千3百万円となりました。これは主にリース債務が1千9百万円減少したものの、繰延税金負債が5千1百万円増加したことによるものであります。

 

(純資産)

当連結会計年度末の純資産の残高は、前連結会計年度末と比較して4億5千万円増加125億6千3百万円となりました。これは主に退職給付に係る調整累計額が9千3百万円減少したものの、利益剰余金4億3千4百万円増加したこと及び為替換算調整勘定が8千3百万円増加したことによるものであります。

 

b 経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度の売上高は、前年度比8.1%増123億9千2百万円となりました。

当社グループがターゲットとする市場におきましては、半導体・電子部品市場では、ビッグデータなど大量のデータ保存需要が伸びており、データセンター向けが好調であったことや、衛生用品機器市場では、拡販活動が進むなど好調に推移し、医療用部品市場においても、在庫調整の終息等により、回復基調で推移しました。また、産業用機器・部品市場は、企業の設備投資が増加傾向にある中で、当社商品の需要も堅調に推移しました。一方、自動車部品市場は、北米でのEV販売台数の低下や中国での需要が減少傾向にあり、低調に推移しました。

このような経済環境のもと、当社グループの業績は、機械部品事業において、注力商品であるハードディスクドライブ(HDD)用磁気ヘッド基板や、NTダイカッターが好調に推移したことで増収となり、電機部品事業においても、EVリレー用接点や抵抗溶接用電極が低調だったものの、ブレーカー用電気接点の需要が回復したこと等により増収となりました。

詳細につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

(売上総利益)

当連結会計年度の売上総利益は、賃上げや、一部の主材料価格の上昇等によるコスト増加の要因はあったものの、特に機械部品事業の注力商品であるHDD用磁気ヘッド基板や、NTダイカッターが増収となったこと等により原価率が改善し、前年度比14.4%増29億2千8百万円となりました。

 

(営業利益)

当連結会計年度の営業利益は、当期に実施した賃上げに伴う固定労務費や旅費交通費等が増加したものの、売上総利益が増益だったこと等により、前年度比44.7%増6億8千9百万円となりました。

 

(経常利益)

当連結会計年度の経常利益は、為替差損を計上したことや、持分法投資利益が減少したものの、営業利益が増加したこと等により、前年度比21.2%増9億5千2百万円となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度では特別損失を計上しましたが、当連結会計年度での特別損失の計上はなく、前年度比28.4%増6億7千6百万円となりました。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因

米国関税措置に関連する事業への影響につきましては、米国を含む各国の対応など不透明な要素が多いことから、現段階で影響額を見積もることは困難でありますが、米国の関税措置の動向等を注視するとともに、取引先とのコミュニケーションを高め、影響の把握とその対応に取り組んでまいります。

このほか、経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

ロシア・ウクライナ情勢をはじめとする地政学リスクに対する影響につきましては、原材料価格高騰の継続による業績への影響が懸念されますが、原材料調達、価格の変動のリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク 原材料調達、価格の変動」に記載しております。

 

 

④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

a キャッシュ・フロー

 当社グループの当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比較して、1億8千8百万円減少し、32億9千万円となりました。
 なお、各キャッシュ・フローの状況と増減につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フロー」に記載しております。

 

b 資金需要

当社グループの資金需要の主なものは、運転資金、設備資金、法人税等の支払、借入金の返済、配当金の支払等であります。
 また、その資金の源泉といたしましては、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入等により必要とする資金を調達しております。

なお、当社は、機動的な資金調達を目的として、限度額を20億円とするコミットメントライン契約を締結しており、大きく資金不足となることは想定しておりません。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、粉末冶金技術を基盤に、常に先進の技術を追求し、官学との共同研究にも積極的に取り組み、独創的な商品開発を進めております。

当連結会計年度におけるセグメント別の研究開発活動の状況は次のとおりであります。

機械部品事業については、半導体製造装置用部材への独自開発セラミックスの適用研究、二次電池製造用高耐久部品の開発など、お客様や市場のニーズに合致した商品開発に注力しております。

電機部品事業については、半導体製造装置などに用いられる新たな放熱部材の開発に取り組むと共に、自動車関係においては、持続可能な社会への貢献に向けての新たな研究への取り組みを行ってります。

また、AIを取り入れた材料開発「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」に取り組んでおり、新素材開発の加速への取り組みを行っております。

なお、当連結会計年度の研究開発費は334百万円であります。