(1) 会社の経営の基本方針について
2023年4月に創立80周年を迎えた当社グループは、新しい理念「Purpose」 (存在意義) と「Brand Slogan」を、10月に「Values」 (価値観) を制定いたしました。
新理念の制定は、CKDブランディングプロジェクトとして、海外を含む多様なCKDグループ社員が参画し、最終選考ではCKDグループ全社員の投票により決定いたしました。
会社の存在意義と目指す方向を定めた「パーパス」は、「自動化技術の探求と共創を続け、健やかな地球環境と豊かな未来を拓きます」とし、「お客様やビジネスパートナー、仲間と共に、豊かな未来を実現する」という意味が込められています。
Valuesの「C-SHIP」とは、CKD-SHIPを略したもので、「CKDグループ社員として持つべき価値観」を表しています。
そして、理念体系を包含し、未来に向けた私たちの考えや行動を象徴的に表した「ブランドスローガン」は、「Creating Solutions Together」といたしました。
新たな理念をCKDグループ社員全員で共有し、私たちCKDはこれからも健やかな地球環境と豊かな未来の実現に向けて取組んでいきます。

当社グループは、各事業の経営計画の目標達成を軸に利益を確保しつつ、新しい事業と市場に挑戦するため、売上高、営業利益率の向上と、株主資本利益率 (ROE) を安定的に維持することを経営目標として企業価値の向上に努めてまいります。
① 事業環境
世界では、世界経済の見通しは、依然続くロシア・ウクライナ情勢の長期化と中東情勢の緊迫などの地政学リスク拡大による資源・エネルギー価格の高騰や、景気下振れの懸念はあるものの、IT関連財での在庫調整が進み、世界貿易や生産には底打ちの兆しがあります。また、気候変動とともに高齢化や労働力不足が大きな社会的課題となっており、企業は持続可能な社会の実現に向けた課題解決につながる活動が求められています。
一方、IoT (Internet of Things) やAI (人工知能) などテクノロジーの進展により、ビジネスモデルの変化が進んでおり、製造業においても環境保護への取組みとともに、製品の高機能化や製造工程の自動化・省人化への取組みが一段と加速しております。
社会の価値観や市場そのものが大きく変化し、デジタル化が促進される中、人に頼らない生産設備や、設備の遠隔操作など製造業の自動化・省人化需要の一層の高まり、半導体設備投資といった電子産業における投資拡大、自動車の電動化に向けた需要の増加などを想定しております。
② 長期経営ビジョン及び中期経営計画
<長期経営ビジョン>
当社グループは、上述したパーパス「自動化技術の探求と共創を続け、健やかな地球環境と豊かな未来を拓きます」のもと、自動機械装置と機器商品の開発・生産・販売・サービスを通じて、「技術革新と価値創造によって社会の課題解決に貢献」することを目指しております。
そして、2016年に策定した長期経営ビジョン「10年VISION GO CKD!」を、環境変化に合わせて、2度改訂し、2025年までの10年間における長期目線の取組みを強化しながら進めております。
「より豊かな社会づくりに貢献すること」「社員、そして家族を幸せにすること」「株主の皆様からの期待に応えること」の3つを目標として掲げ、4つの基本方針「新しい事業と市場に挑戦」「グローバル化を加速し海外市場を拡大」「サスティナブルな経営基盤の確立」「人材重視の企業風土を構築」に基づき、高い目標に向かって果敢に挑戦を続け、その結果生み出される新しい価値を世界に示してまいります。
そして、将来を見据えた新たな技術・商品の開発や、海外市場への積極的な展開、お客様第一のサービス体制強化を通じて、すべてのステークホルダーの皆様と共に、真のサスティナブル企業を目指してまいります。

<中期経営計画>
2023年3月期からスタートさせました第5次中期経営計画『Exciting CKD 2025』は、2026年3月期までの4年間の中期経営計画です。長期経営ビジョン「10年VISION GO CKD!」を達成し、次の長期経営ビジョンへつなげる基盤構築の位置づけとなります。事業を通じて社会に貢献し、新たな価値を創出しながら心躍る4年間として、次の10年につなげる意味を込めて「Exciting」といたしました。
成長が見込まれる半導体や電池などの産業、電動事業や新事業、海外市場に注力するとともに、サービスビジネスにつながるカスタマーサービスを強化し、経営効率を向上させながら、経営基盤の強化に取組み、企業価値向上を目指してまいります。
2024年3月期を振り返りますと、自動機械事業では、包装、産業機械ともに社会の課題解決につながる商品を拡充し、機器事業では、自動化・省人化ニーズ、半導体や電池産業など成長する産業に対応した生産能力増強と生産性向上に継続して努めました。また、専門知識がなくても、パソコンだけで誰でも簡単に電動機器や空気圧機器、そして画像検査までを自在に制御可能なプログラミングツールを発売し、DXを活用した新たなサービスビジネスの強化を加速させるとともに、環境負荷低減型商品で新たな価値の創出に取組んでおります。
さらに海外市場では、引き続き米国・欧州・ASEANへの強化を進めています。2022年10月から稼働している米国工場や、子会社化したイタリアの販売会社CKD ITALIA S.R.L.での活動を強化するとともに、今後市場の拡大が見込まれる新興国における機器商品の需要拡大を見据え、生産体制の強化を目的に、マレーシア工場とインド工場を2024年度に立ち上げます。
今後も、中長期的な成長と企業価値向上を考え、将来に向けた事業基盤を築くための投資を進めていきます。






(4) 会社の対処すべき課題について
① 中長期的な成長に向けた取組み
新しい価値観が生まれる中、事業環境及び社会的変化を考慮し、2016年に策定した長期経営ビジョン「10年VISION GO CKD!」を2021年に見直しいたしました。
また、長期経営ビジョンを実現するために、企業の進むべき方向性を明確にした、2025年度を最終年度とする中期経営計画「Exciting CKD 2025」を策定いたしました。基本方針の方向性は変えず、グローバル化を加速させるとともに、サスティナブルな経営基盤の確立を目指します。さらに、人材重視をより明確にするため、3つの基本方針から、新たに1つ加えて4つといたしました。
a) 新しい事業と市場に挑戦
新事業の立ち上げと新市場の開拓に向け、様々な挑戦をいたします。新しい事業の中で最も注力する電動事業では、当社が従前より保有する空気圧機器のコンパクトで力が強くメンテナンスし易いといった特徴に、高精度の位置制御ができる電動機器の特徴を加え、多様化するお客様のご要望にお応えできるよう取組んでまいります。また、グループ会社のCKD日機電装 (株) とのシナジー効果も高め、開発から販売までの取組みを強化してまいります。医薬品市場で培った検査技術を生かした新たな検査装置、安全で働きやすい労働環境を実現するための助力装置 (パワフルアーム) など、新しい技術で豊かな社会づくりに貢献してまいります。
b) グローバル化を加速し、海外市場を拡大
成長する地域・市場へ経営資源を集中させ、海外市場の拡大を目指します。
自動機械事業では、ハイブリッドを含む電気自動車の普及拡大に伴い、北米を中心にリチウムイオン電池製造システムの需要が増加しております。また、世界的な電子部品やデバイスといったIT関連材の生産増を背景に、三次元はんだ印刷検査機需要が増加しております。市場の拡大を見据え、更なる生産性の向上に取組んでまいります。
機器事業では、2019年に稼働した東北工場及び2024年度上期より稼働を開始する北陸工場を活用し、高機能製品の世界に向けた展開を一段と強化してまいります。米国では、テクニカルセンターの機能強化により、お客様に密着した商品企画と開発を進めるとともに、生産拠点である北米オースティン工場によって、現地ニーズに対応してまいります。欧州市場では、オランダに在庫センターを設置し、イタリアには販売会社を設立いたしました。これらの新しい基盤を活用し、更なる市場開拓を積極的に推進してまいります。このように、海外市場の地域や国ごとに合わせた商品開発や事業戦略を展開し、その国の文化や人材を取り込みながら、現地に根付いた活動を推し進め、現地対応力を高めてまいります。
c) サスティナブルな経営基盤の確立
事業を通じて環境や社会に貢献しながら、持続可能な成長を実現するための経営基盤を確立してまいります。そのためには、デジタル技術や基幹システムを活用し、最適な組織編成で生産性を一段と向上させてまいります。また、CSR (企業の社会的責任) 活動を推進し、環境や社会の課題解決に向けた取組みを進めて、サスティナブルな企業を目指します。
d) 人材重視の企業風土を構築
当社グループでは、「人材重視の企業風土」を経営理念の一つとして掲げており、「人材」を「人財」として企業の持続的な発展・成長のための重要な経営資源と位置付けております。
CKDグループの全ての人を活かす経営を推進していくため、2023年に新たな組織として、「人材戦略委員会」を発足し、さらに、全ての社員がいきいきと働ける会社・職場を実現するために、あるべき姿を描き、理想の人材戦略を推進していくことを目的に、「人材戦略委員会」の下部組織として「未来人材プロジェクト」を発足いたしました。
なお、女性活躍推進に関する行動計画については、2030年度までに女性管理職比率10%以上を目標と設定し、推進してまいります。
② ESG (環境・社会・ガバナンス) に対する取組み
当社グループでは、社会情勢や事業環境の変化を踏まえ、長期的な視点で企業活動を行っております。SDGs (持続可能な開発目標) のゴールにつながる活動に取組み、ステークホルダーの皆様との信頼関係を築きながら、事業を通じて社会の課題解決と発展に貢献してまいります。
環境負荷低減型商品について、自動機械事業では、環境に優しいバイオマスプラスチックを用いたPTPシートを3社連携で実用化し、2023年2月に日本オープンイノベーション大賞「環境大臣賞」を受賞することができました。機器事業では、省エネ、省資源に加えて、ライフサイクルの視点を考慮し、長寿命製品で『止まらない生産設備』と『安定稼働の実現』に貢献する空気圧機器製品を開発・販売し、インフラ・生産工程の改善やエネルギー使用量の削減に努めております。
さらに、カーボンニュートラル社会の実現に向け、2030年度までにCO2排出量を50%削減(売上高原単位目標:2013年度比、総量目標:2022年度比)、2050年度までにCO2排出量実質ゼロを中長期の目標と設定いたしました。徹底した省エネルギー改善の推進、太陽光発電設備の拡充、グリーン電力導入等の再生可能エネルギーの活用に取組んでおります。また、2022年6月にTCFD提言への賛同を表明し、情報開示を進めています。
今後も、法律、規則を順守し、メーカーとして長年培ってきた自動化技術、流体制御技術を活かした環境にやさしい商品を開発し、お客様にお届けすることにより、地球環境の保全に貢献してまいります。

当社グループのサスティナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
ESGやSDGsへの対応を推進し、事業活動を通して地球環境や豊かな社会づくりに貢献するため、取締役会の諮問機関としてサスティナビリティ委員会を設置しています。サスティナビリティ委員会は、代表取締役社長を委員長とし、サスティナビリティに関する経営課題について確認及び審議しています。審議された内容は、取締役会に報告しています。
サスティナビリティに関するリスク管理については、
(3) 気候変動への対応
① ガバナンス
気候変動に関するガバナンスについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) ガバナンス」を参照ください。
② 戦略
当社グループは、サプライチェーン全体を対象に気候変動に伴い生じ得るリスクと機会について洗い出し、事業への影響の分析及び考察を行っています。分析にはIEAが公表する4℃シナリオと1.5℃未満シナリオを用いており、それぞれの世界観における2030年時点の当社グループへの影響について考察を行っています。
a. 分析結果
各シナリオで想定されるリスクと機会を特定しました。4℃シナリオでは、台風や大雨などの異常気象の激甚化に伴い、操業停止や物流機能の停止による対応コストの増加が大きなリスクになると推測されます。
一方で1.5℃未満シナリオでは、世界的な脱炭素の取組みにより炭素税・排出権取引の導入や化石燃料由来の電力価格が高騰することが予測され、操業コストの増加が大きなリスクと推測されます。
〔気候変動に関するリスク・機会と当社グループの対応〕
b. 気候変動に関するリスク・機会に対する当社グループの対応
③ リスク管理
気候変動に関するリスク管理については、
当社グループでは“脱炭素社会の実現”に貢献するため、2050年度CO2排出量実質ゼロを基準として、バックキャスティングによりCO2排出量の中長期削減目標を設定し、CO2排出量削減に取組んでいます。
〔指標〕
〔CO2排出量削減目標〕
2030年度 50%削減 (総量、2022年度対比)
2030年度 50%削減 (売上高原単位、2013年度対比)
2050年度 実質排出ゼロ
(注)1. CO2排出量はスコープ1・2の合計です。
2. スコープ1は、当社、国内子会社及び在外子会社 (工場のみ) の主な排出量の合計で、環境
省HP公開の排出係数を使用しています。
3. スコープ2は、当社、国内子会社及び在外子会社 (工場のみ) の主な排出量の合計で、環境
省HP公開の基礎排出係数を使用しています。なお、当社営業所及び在外子会社 (工場) は本
社と同じ排出係数を使用しています。
4. J-クレジット制度、グリーン電力証書によるCO2排出量の相殺分を含みます。
5. CO2排出量削減率の2023年度実績は第三者検証前の参考値であり、第三者検証後の実績値
は統合報告書に掲載予定です。
(4) 人的資本
① 戦略
人材重視の企業風土の構築に向けて人材育成方針及び社内環境整備の方針を定めております。
〔人材育成方針〕
当社グループは、エンゲージメントの高い働きがいのある職場づくり、計画的な未来人材の育成、ダイバーシティ&インクルージョンを通じて「人材重視の企業風土」を築いていきます。
〔社内環境整備方針〕
当社の人材育成方針を実現するために、3つの重点方策毎に効果的な施策や制度の整備・意識改革を推進しております。
1. エンゲージメントの高い働きがいのある職場づくり
・イノベータ・チャレンジ制度や社内公募制度など、社員の自己実現に向けた施策
・優れた取組みを表彰する場としてGO CKD! Awardの開催
・健康経営への取組み
2. 計画的な未来人材の育成
・次世代リーダーの計画的な育成に向けた外部研修
・グローバル人材の育成に向けた海外拠点へのトレーニー派遣制度
・デジタル人材育成に向けた研修
3. ダイバーシティ&インクルージョン
・海外拠点から日本へのトレーニー派遣制度
・育児休業を取得しやすい雇用環境整備
・女性社員の活躍促進
・シニア(60歳以上)の活躍促進
・障がい者の職場開発
② 指標及び目標
社内環境整備方針について、以下の指標を用いております。当該指標に関する目標と実績については、以下のとおりであります。
(注) 1. ワークエンゲージメントとは、仕事に対する意識・行動(外部調査結果に基づく偏差値)となりま
す。
2. 健康経営優良法人認定制度とは、経済産業省と日本健康会議が共同で、優良な健康経営を実践して
いる法人を顕彰する制度となります。認定法人の上位500社が「ホワイト500」に認定されます。
当社グループは、事業の継続と企業価値の向上を確保していくために企業活動に付随する様々なリスクを識別し、そのリスクを適正に評価した上で効率的、効果的な経営活動を行っています。
取締役会直轄の組織としてリスク管理委員会を設置し、活動の進捗及び結果を定期的に取締役会へ報告し、リスク管理を推進しています。
また、リスク管理委員会の下部組織としてリスク管理室を設置しており、監査部門による監視体制も構築することで、リスクへの管理体制を強化しています。
具体的な活動として、リスク管理室はCKD全体のリスクを網羅的に抽出・分析し、それぞれのリスクに対する業務部門の取組み状況をチェックし必要に応じて改善を促す役割を担い、リスク管理委員会へ定期的に報告を上げています。
第3線である監査部門は、リスク管理の第1線である業務部門と第2線となるリスク管理室がしっかりと機能していることを監視しております。

(3) リスクの特定プロセス
各事業部門、グループ会社及び本社管理部門にて企業価値の向上及び経営目標の達成を阻害するリスクと対策を洗い出しています。リスクを識別し、発生する頻度と発生した時の影響度からリスクの重要度を評価し特定しています。また、特定されたリスクに関して取締役会に報告し共有しています。

(4) リスクと機会
当社グループは、企業価値に影響を与える可能性のあるリスクに対応できる体制を整えるとともに、必要に応じて選定したリスクを見直しています。また、リスクは必ずしもマイナスの要因となるだけではなく、当社の一層の成長の機会となる可能性もあるため、適切に機会を捉えて果敢に挑戦を続けていきます。リスクマネジメントを推進し、事業を通じた取組みを通して企業価値を向上させるとともに、持続可能な社会の実現を目指しています。
当社グループのリスクに対する考え方としては、外部環境や内部環境の変化により経営目標の達成や社会的信用など企業価値に影響を与える可能性のある不確実な事象をリスクと定義しています。グローバルに事業を展開していくためには、リスクを適切に管理することが極めて重要な経営課題であると考え、リスク管理体制を整備しています。
当社グループの経営成績及び財政状態などに影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループ (当社及び連結子会社) の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー (以下、「経営成績等」という。) の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績
自動機械部門では、産業機械のリチウムイオン電池製造システム及び三次元はんだ印刷検査機の売上高が増加いたしました。
その結果、売上高は17,674百万円(前期比13.5%増)、セグメント利益は収益改善の効果にセールスミックスも加わり、2,964百万円(前期比47.6%増)となりました。
機器部門では、国内市場において、コロナ特需の反動によるパソコンやスマートフォン需要の減少に伴う最終製品や部品の在庫調整の長期化を背景に、半導体製造装置向け売上高が減少いたしました。
海外市場も同様に、半導体設備投資需要が減少した北米及び東アジア、製造業では調整局面が続いた欧米や中国、景気減速の影響を受けた東南アジアなどそれぞれの地域で売上高が減少いたしました。
その結果、売上高は116,750百万円(前期比18.9%減)、セグメント利益は売上減少により、14,842百万円(前期比37.5%減)となりました。
このような状況のもとで、当連結会計年度における業績は、売上高134,425百万円(前期比15.7%減)、営業利益13,113百万円(前期比38.1%減)、経常利益13,048百万円(前期比38.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益8,338百万円(前期比43.6%減)となり、営業利益率は前期比3.5ポイント減少の9.8%となりました。これにより、1株当たり当期純利益は前連結会計年度と比較して96円82銭減少し、124円94銭となりました。また、ROEも利益減少により12.9%から6.7%に下降いたしました。
次年度の見通しと方針について、次期の世界経済の見通しは、依然続くロシア・ウクライナ情勢の長期化と中東情勢の緊迫などの地政学リスク拡大による資源・エネルギー価格の高騰や、景気下振れの懸念など、不確実性は高いものと予想されます。
社会の価値観や市場そのものが大きく変化する中、当社グループを取り巻く事業環境は、製造業の自動化・省人化需要は底堅く推移することが見込まれるものの、半導体設備投資の本格回復は2024年後半になると見ております。また、エネルギー価格は引き続き上昇が見込まれ、人件費や物価の上昇による仕入コストの増加が予想されるため、経費削減や生産性の向上、そして価格転嫁による採算性の改善等に努めてまいります。
また、株主還元のさらなる充実を図るため、30%を目安から40%を目安へと変更した配当政策は、通期配当性向40.0%といたしました。
成長が見込まれる分野への事業戦略を強化し、創出したキャッシュを活用した成長投資・基盤強化を前倒しで実施しながら、引き続き、企業価値向上に取組んでおります。


当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、販売価格によっております。
3.当連結会計年度において、自動機械部門の生産高が著しく増加しております。これは主として、リチウムイ
オン電池製造システムの受注増の影響によるものであります。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 自動機械部門以外は、需要見込による生産方法をとっております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
当連結会計年度における東京エレクトロン九州㈱に対する販売高は、当該販売実績の総販売実績に対する
割合が100分の10に満たないため記載しておりません。
(2) 財政状態
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ22,658百万円増加の208,285百万円となりました。これは主に、受取手形が2,415百万円、売掛金が2,207百万円それぞれ減少したものの、商品及び製品が2,914百万円、有形固定資産が16,353百万円、投資有価証券が2,987百万円、退職給付に係る資産が1,851百万円それぞれ増加したことによるものであります。
特に、事業拡大に向けた工場建設等の設備投資により有形固定資産が増加したことで、資産が増加しております。
負債は、前連結会計年度末に比べ13,291百万円増加の79,186百万円となりました。これは主に、支払手形及び買掛金が6,691百万円減少したものの、長期借入金が20,058百万円増加したことによるものであります。
特に、事業拡大に向けた工場建設等への投資資金として、シンジケーション方式によるタームローン契約を締結し、資金調達したことにより借入金が増加し、負債が増加しております。
純資産は、前連結会計年度末に比べ9,367百万円増加の129,098百万円となりました。
当連結会計年度では、親会社株主に帰属する当期純利益の減少により、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ2.5ポイント減少の62.0%となりました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物 (以下「資金」といいます。) は、前連結会計年度末に比べ1,086百万円増加の27,740百万円となりました。
当連結会計年度に係る区分ごとのキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、7,600百万円 (前期比31.2%減) となりました。
これは主に、税金等調整前当期純利益12,904百万円、減価償却費6,815百万円、売上債権及び契約資産の減少 4,207百万円並びに前受金の増加4,018百万円による資金の増加、未払賞与の減少720百万円、棚卸資産の増加3,499 百万円、仕入債務の減少8,715百万円及び法人税等の支払額6,552百万円による資金の減少によるものであります。
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、20,232百万円 (前期比58.2%増) となりました。
これは主に、有形固定資産の取得による支出19,856百万円による資金の減少によるものであります。
当連結会計年度における財務活動による資金の増加は、13,055百万円 (前期は5,743百万円の減少) となりました。
これは主に、長期借入れによる収入20,835百万円による資金の増加、短期借入金の純減額3,071百万円、配当金の支払額4,733百万円による資金の減少によるものであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきまして、当社グループの主要な資金需要は、製品製造のための材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用、研究開発費並びに当社グループの設備新設、改修等にかかる投資であり、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、金融機関からの借入れによる資金調達にて対応していくこととしております。
当社グループは、円滑な事業活動に必要となる流動性の確保と財源の健全性及び安全性の確保を資金調達の基本としており、市場環境等を考慮した上で、有効かつ機動的な資金調達を実施しております。資金需要を満たすための資金は、原則として営業活動によるキャッシュ・フローを主とした内部資金を財源としますが、多額の投資に対する資金需要が見込まれる場合などは、銀行等からの借入れなどの外部資金を活用いたします。
資金調達を行う場合は、期間や国内外の市場金利動向、自己資本比率、DEレシオ (負債資本倍率) などの財務指標への影響度などを総合的に勘案しながら、最適な資金調達を実施してまいります。
設備投資資金については、2023年度は、設備投資22,128百万円、研究開発費3,554百万円となりました。2024年度以降も事業拡大に向けた生産能力増強及び自動化投資を行ってまいります。
株主還元については、経営における重要課題の一つとして考えており、連結配当性向40%を目安としております。当社の配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」 をご確認下さい。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたっては、資産、負債、収益及び費用の数値に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらの見積りとは異なることがあります。
連結財務諸表を作成するにあたって、半導体メーカーによる在庫調整の長期化、米国が主導する中国に対する先端半導体や関連する製造装置の輸出規制、地政学リスクの拡大等の不確実な環境下にあるなかで、主要得意先が属する半導体、自動車及び工作機械等の市況の変化の影響を考慮した仮定を用いて、その不確実性を見積りに反映しております。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りの仮定のうち、機器部門の棚卸資産の評価、繰延税金資産の回収可能性及び固定資産の減損について見積り特有の不確実性により、財政状態及び経営成績に重要な影響が及ぶ可能性があると考えております。
なお、機器部門の棚卸資産の評価の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。当該評価について、市況の変動等により見直しが必要になった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社は、今後の事業拡大に向けた工場建設等への投資資金調達を目的に、2023年5月26日付で、総額200億円のシンジケートローン契約 (契約期間:2023年5月31日から2031年5月30日まで) を締結し、200億円の資金の借入れを実行いたしました。
当社グループは、創造的な知恵と技術で多種多様な流体制御と自動化の技術を活かし、豊かな社会づくりに貢献できる商品の開発をしております。また、市場のタイミングを逃がさないスピードでお客様に満足いただける商品とサービスが提供できるように、開発・生産・販売の各部門が組織的な活動を進めております。
商品開発の基本指針としましては、「グローバル化を推進するための海外商品開発の活動」「環境対応ビジネスを促進するエコ商品の開発活動」「5年10年後を見据えた先端技術開発活動」に取組んでまいりました。
当連結会計年度における各事業部門の研究開発項目は次のとおりであります。なお、当連結会計年度の研究開発費は、
当部門では、自動化技術の探求と共創を継続し、安全で安心な自動化設備をお客様に提供するべく研究開発活動に取組んでおります。
薬品包装部門では、お客様の環境意識の高まりを受け、包材のケミカルリサイクルやスクラップ削減への取組みを加速させています。新規設備だけではなく、既にお客様ラインで稼働している設備においても環境負荷を低減させるべく包材評価と機構の研究を進めています。また、更なる省人化を提案する為、人に依存する作業のロボット化も取組んでいきます。
自動機械はお客様での生産性を飛躍的に改善することをねらいとしており、サービス業務においては蓄積されたお客様情報、装置情報を活用し、CKDフィールドエンジニアリング (株) ではICT技術を活用した予防・保全や生産状況の記録・監視などを可能とする取組みを提案してまいります。お客様のお困りごとに迅速に対応するとともに新たなサポート提案を行ってまいります。
食品包装部門においても環境負荷低減としてスクラップ削減や食の安全及びフードロスへの取組みを進め、お客様の生産性に貢献できる装置を展開してまいります。
電池事業部門では、車載用電池の市場拡大に伴いリチウムイオン電池用巻回機で培った技術を基に安全で高品質な電池生産を実現させるとともに、多様化する電池仕様に対応し更なる市場拡大をねらいます。急速に技術革新が行われる電池技術に追従し、生産性の高い設備を構築することで省スペース化と電池の性能・寿命を向上させる技術開発に取組んでまいります。
はんだ印刷検査部門では、海外市場の要求に応えるグローバル機種で欧州市場への販売にも注力していきます。2024年度は、さらにデザイン性と操作性にこだわった「VP9000シリーズ」を拡張し、生産性を向上させるための商品開発に取組みます。海外規格の取得や言語対応とともに車載や通信機器などのお客様要求に応える対応を進める事で新たな付加価値を提供してまいります。
新市場へは、薬品包装機で培った画像検査技術をブラッシュアップし、AI技術を活用した検査や目視では困難な透明体検査技術を加え、新たな検査市場の構築に取組んでまいります。
研究開発費の金額は、
カーボンニュートラル社会の実現に向け、空圧・流体制御機器事業と電動機器事業で培った開発力と技術力を生かし、市場の変化に柔軟かつ迅速に対応する事でお客様の多様なニーズに応えられるよう、空圧・流体制御と電動のそれぞれの長所を最大限に生かし組み合わせたベストミックス商品やサービスを開発・提案し、お客様の生産性向上と環境負荷低減に貢献できるよう研究開発活動を行っています。
昨今の人手不足に直面する生産ラインにおいて、生産性向上とインテリジェント化のニーズに応えるべくプラグインバルブTVGシリーズを発売しました。本商品は、プラグイン方式やIP67等のグローバルスタンダードに対応しているだけでなく、長寿命化によるお客様の生産性向上と、エア漏れ低減によるカーボンニュートラルへの貢献を実現します。1.2億回の長寿命化 (従来比2倍) 、0.1Wの低消費電力オプション、IO-Link Wireless(無線)対応など、お客様の設置性とメンテナンス性、ランニングコストの低減を徹底的に追求した設計を採用しています。これによりCO2排出量の抑制を同時に達成し、お客様の環境負荷低減に寄与する商品といたしました。また電動アクチュエータ高速形FFLD-Hを発売しました。FFLDシリーズを2020年度に発売し、国内メーカーでは最大把持力、最長ストロークで確固たる地位を築きつつありますが、一般的な作動速度では装置のタクトタイムに追従できないケースに対し高速仕様として作動速度30mm/sの製品を開発しました。さらに、アブソデックスAX1R、AX2R、AX4R、AXDシリーズを発売しました。新型ドライバは体積が従来比で50%小形化を実現し、またビジュアルプログラムの追加や全サイズのオートチューニングが可能な新しいゲイン調整機能により、装置立上げ時の作業時間を短縮します。
その他に、労働力の高齢化や多様化が進む中で人に優しく使いやすい機器の開発にも注力し、ものづくりの現場に寄り添った開発活動を推進しております。ヒューマンアシスト機器ではコンパクトアームCAWシリーズとフレックスアームFAWシリーズを発売しました。CAWシリーズは15kg以下の工具を扱う作業において腕や手首への負担を低減し、作業性の改善や労働災害の予防に貢献できます。FAWシリーズは低天井エリアで広い作業範囲をカバーでき、最大50kgの重量物を手で持って搬送する感覚で簡単に作業できます。
また、流体制御バルブの水素ガス対応シリーズを拡充しました。ガス燃焼システムは水素化によりCO2排出量を削減していきますが、この水素ガス向けに最適化した機器によりCO2排出量の削減に貢献いたします。
さらに、ファインレベルスイッチKML502シリーズ、メカインデックスZRSシリーズなど、お客様のニーズに応える新商品を多数発売しました。
これらの研究開発活動を通じて、環境にやさしいグリーンエネルギーに対応しつつ省エネ性能の向上に取組み、カーボンニュートラルの実現とSDGsの達成に寄与する高品質な製品・サービスをお客様に提供してまいります。
研究開発費の金額は、