文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「独自の製品を供給して文化の発展に貢献する」ことを中核とした社是にもとづく経営を実践しております。また、エレクトロニクス産業のイノベーションを先導していく存在でありたいという思いを込めたスローガン「Innovator in Electronics」を全従業員で共有しています。
今後も真のInnovator in Electronicsとして主体的に価値創造をしていくためには、価値提供の軸を「お客様に対するイノベーション」だけでなく、「社会課題に対するイノベーション」へとその範囲を広げていくことが重要であると考えております。当社グループが大切な価値観として掲げる「CS(Customer Satisfaction=お客様が認めてくださる価値を創造し、提供し続けること)とES(Employee Satisfaction=仕事を通じて従業員一人ひとりがやりがいを感じ、成長し続けること)」を原動力に、「先を読む力」、「ニーズをカタチにする力」、「価値を届ける力」という3つのコア・コンピタンスを相互に結びつけて総合力を発揮し、社会価値と経済価値の好循環を生み出すことにより、豊かな社会の実現に貢献していくことをありたい姿として掲げています。
なお、この実現のためには、多様な人材が組織を超えて連携し合い、イノベーションを創出していくことに加え、ステークホルダーとの共創を積極的に進めていくことがこれまで以上に大切であると考えています。今後さらにステークホルダーの皆様との関係を強固なものにし、社会課題の解決に向けて取り組み、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
「当社グループの価値創造プロセス」
当連結会計年度に当社グループは、価値創造の源泉である経営資本の再整理を行うとともに、「CSとESによる総合力」をコンピタンスの中心に据えるなど、価値創造プロセスの見直しを行っております。
(2) 中長期的な会社の経営戦略
Ⅰ Vision2030(長期構想)
当社グループは2021年度に、長期構想「Vision2030」を策定いたしました。
Vision2030では「ムラタのイノベーションで社会価値と経済価値の好循環を生み出し、豊かな社会の実現に貢献していく」ことをありたい姿として掲げています。さらに、「基盤事業の深化とビジネスモデルの進化」及び「4つの経営変革の実行」を成長戦略として位置づけています。これらをビジョンとして示すことで2030年までの取り組みに一貫性を持たせ、ありたい姿を実現していくことによりお客様や社会にとって当社グループが「最善の選択」であり続けることが、「Global No.1部品メーカー」としてめざす姿でもあります。
「Vision2030ありたい姿」
成長戦略① 基盤事業の深化とビジネスモデルの進化
大きな変化を迎えているエレクトロニクス市場において、当社グループが今後もイノベーターとして価値を生み出していくためには、技術や社会変化の潮流を大局的に捉えた経営が求められます。長期視点で将来を見据えて多様なイノベーションを生み出すために、当社グループでは3層構造のポートフォリオを用いた経営を行い、5つの事業領域を重要な事業機会として位置づけ価値を創出してまいります。
「3層ポートフォリオ」
「5つの事業機会」
当連結会計年度に策定した「中期方針2027」では、事業機会を従来の4つから5つへ変更しております。当社グループの基盤領域である「通信」領域を「エッジデバイス」と「ITインフラ」の2つに捉えなおすことで、AIやクラウドなどの技術革新により創出される事業機会をより具体化いたしました。これら5つの事業機会を捉えることにより、価値を創出していくことを目指してまいります。
成長戦略② 4つの経営変革の実行
・経営変革1「社会価値と経済価値の好循環を生み出す経営」
当社グループは、社会に対して提供する価値(社会価値)を向上させ、経済価値との好循環を生み出していくことで、ステークホルダーの皆様に信頼され、選ばれ続ける存在であることを目指しています。これを実現するために、社会課題を起点とした重点課題(マテリアリティ)を定めています。
・経営変革2「自律分散型の組織運営の実践」
会社の規模や事業範囲が拡大する中でも、社是が定められた当時と変わらずに社員一人ひとりが日々の仕事において社是を実践し、価値を提供し、成長を続けるために、より自律分散型の組織運営へと変革してまいります。
・経営変革3「仮説思考にもとづく変化対応型経営」
激化する環境変化の中でも、受け身でなく、将来起こり得ることについて仮説を立てて備え、柔軟に軌道修正を行うことができる変化対応型の事業経営を実践していきます。各機能、各組織が将来の変化に対する情報収集、議論、アクション、モニタリングを継続的に実行することで、変化対応力を強化してまいります。
・経営変革4「デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進」
当社グループではデジタルトランスフォーメーション(DX)を「ムラタ内外の人・組織(業務)を、デジタルで縦横無尽につなぎ、プロセスを短く、早く、かつ見える化を進めることで、飛躍的に顧客価値と競争力の向上をドライブし続けるもの」と定義しています。全社DXの戦略推進組織と実行組織がともに強化領域と基盤領域のあるべき姿の実現に向け、全体的なデジタル推進を加速してまいります。
Ⅱ 中期方針2027
中期方針2024の振り返り
当社グループは2021年度に、Vision2030のありたい姿に向かっていくための第1フェーズとして「中期方針2024」(2023年3月期~2025年3月期)を策定しました。
① 経済価値目標の達成状況
中期方針2024の経済価値目標については、売上収益・営業利益率・ROIC(税引前)のいずれも未達となりました。
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中期方針2024 目標 |
2025年3月期 実績 |
目標比 |
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売上収益 |
2,000,000百万円 |
1,743,352百万円 |
△256,648百万円 |
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営業利益率 |
20%以上 |
16.0% |
△4.0% |
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ROIC(税引前)(注) |
20%以上 |
13.0% |
△7.0% |
(注)ROIC(税引前)= 営業利益 / 期首・期末平均投下資本(有形固定資産・使用権資産・のれん・
無形資産+棚卸資産+営業債権-営業債務)
売上収益については、AIサーバー向け需要の盛り上がりやモビリティ市場における電動化の加速や円安の進行などはありましたが、スマートフォンやPCなどの民生市場において、コロナ禍で生じた需要増の反動減による在庫調整が長期化し部品需要が想定よりも大きく下振れしたこと、2層目事業におけるモジュールのシェア拡大が遅れたことなどにより、当社グループの想定を下回りました。営業利益率については、部品需要減に対してコストダウンや生産性向上の取り組みを進めましたが、工場操業度の低下や低収益事業の改善遅れなどにより目標に届きませんでした。ROIC(税引前)について、上述の通り営業利益率が低下するなかで、エレクトロニクス領域の拡大に備えた先行投資を継続したことにより、目標を下回る結果となりました。
② キャピタル・アロケーションの実績
中期方針2024では、キャピタル・アロケーションを明確化し、長期視点での環境投資や技術獲得、リスク対策、ITインフラ強化などを戦略投資と位置付け、新たに「戦略投資枠」を設定しております。
戦略投資の進捗は、最近3連結会計年度の実行済および実行決裁済案件の累計が850億円となりました。また、株主還元については、最近3連結会計年度の配当金の支払いおよび自己株式の取得の累計が4,480億円となりました。さらに社債償還については、最近3連結会計年度に1,100億円の償還を実行しました。
今後も主力事業であるコンポーネント、デバイス・モジュールへ投資を継続し、着実なキャッシュ創出を目指していくとともに、事業環境に応じた追加的な株主還元を機動的に実施することでステークホルダーの皆様の期待に応えてまいります。
※ 2021年度末時点の手元余剰資金および当該期間中に経費処理したものなどが含まれる。
③社会価値目標の達成状況
「社会価値1:環境」
・「GHG排出量(2019年度比)」、「再生可能エネルギー導入比率」、「持続可能な資源利用率」及び「循環資
源化率」の目標達成に向けた取り組みを進めてまいりました。中期方針2024期間における実績については、後掲
「(3)当社グループのマテリアリティ」に記載の当社ウェブサイトを参照ください。
「社会価値2:多様性」
・「海外間接部門従業員の他拠点での勤務経験比率」の目標達成に向けた取り組みを進めてまいりました。中期方
針2024期間における実績については、後掲「(3)当社グループのマテリアリティ」に記載の当社ウェブサイトを参照ください。
「社会価値3:ES」
・当連結会計年度において、国内外全拠点の約72,000人の全従業員を対象としたグローバルサーベイを実施しまし
た。回答率は95%、「従業員エンゲージメント肯定回答比率」は67%となり、2024年度目標を3ポイント下回る
結果となりました。従業員のボトムアップによる活動は実を結び始め、着実に改善はしておりますが、会社全体
の戦略・方向性を従業員が十分に理解し、行動につなげていく取り組みに対しては改善余地を残す結果となった
ため、今後は経営層からの声をより確実に届けるような施策を実行してまいります。
<中期方針2024期間での主な取り組み>
・国内外の各拠点・各組織における好事例を全社に共有する事例共有会をウェビナーにて実施し、1,000名以上
がリアルタイムで視聴しました。動画データや日・英の多言語対応した発表資料を全従業員へ配信しました。
・従業員向け研修(役員主催研修・階層教育・理念教育など)や社内のポータルサイトを通じた経営層と従業員
の対話促進に取り組みました。
・組織風土変革活動の推進を目的として、部門長向けのワークショップ、管理職向けの研修を実施しました。
・エンゲージメント向上のために注力すべき属性である中途・シニア・製造に対し、各々の課題に合わせた取組
みを実施しました。
④ 中期経営課題への取り組み
中期方針2024では、中期構想2021において顕在化した課題を解決していくとともに、長期視点で環境変化を捉え、バックキャストをして今から必要な備えを着実に進めていくために、「経営変革の推進」、「ポートフォリオ経営の実践(高度化)」、「筋肉質な経営基盤の形成」、「2030年への備え」の4つの中期経営課題に対する取り組みを進めてまいりました。
・経営変革の推進
当社グループでは「Vision2030(長期構想)」の成長戦略として、「社会価値と経済価値の好循環を生み出す経営」、「自律分散型の組織運営の実践」、「仮説思考にもとづく変化対応型経営」、「デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進」の4つの経営変革を掲げております。
中期方針2024の期間では、社会課題を起点とした重点課題(マテリアリティ)に対する各種取り組みを推進するとともに、社会価値と経済価値の好循環を促進するための新たな経営管理制度の仕組みとして、サステナビリティ投資促進制度とインターナルカーボンプライシング(ICP)制度を導入いたしました。加えて、環境課題を解決する事業として、統合型再エネ制御ソリューション「efinnos」、当社製品と協業パートナーであるMutron社製AI省エネ制御を組み合わせた省エネルギーシステムの社内外への展開を推進しております。また、自律分散型組織を担保する仕組みとして、事業計画の管理プロセスに仮説思考アプローチを導入し、予算策定、事業中期計画策定、事業性評価プロセスの見直しを実施いたしました。事業性評価プロセスでは、ROICと市場成長率の2軸において一定の基準を下回るプロダクトを対象とし、改善計画を策定して定期的なモニタリングを実行してまいりました。その他にも、次世代デジタルプラットフォームおよびインフラ基盤の構築に向けた課題整理、構想・計画策定、PoC(Proof of Concept)実施に加えて、社内の意識醸成やDX人材の獲得・育成を推進いたしました。Vision2030実現に向けて、経営変革の取り組みを今後も推進してまいります。
・ポートフォリオ経営の実践(高度化)
「Vision2030(長期構想)」の成長戦略として掲げた「基盤事業の深化とビジネスモデルの進化」を実現するために、前掲の「3層ポートフォリオ」を用いたポートフォリオ経営の高度化を進めております。
1層目は、需要の成長に追随した供給力、技術的な限界を破って実現するカッティングエッジの技術力、事業効率の向上の3つをもって業界トップの位置づけを確実にするための取り組みを推進してまいりました。積層セラミックコンデンサやインダクタの中長期的な需要拡大への備えとして、中国、タイ、ベトナムでの新生産棟建設、合弁会社「MFマテリアル株式会社」の設立を進めたほか、将来的なインドでの生産活動への準備としてインドの工業団地内での工場賃借の契約を開始しております。また、カッティングエッジ技術の追求により、電子機器のさらなる小型化・高機能化に貢献する世界最小016008Mサイズ(0.16mm×0.08mm)の積層セラミックコンデンサを世界で初めて開発したほか、同サイズの世界最小クラスのチップインダクタの開発にも着手しております。
2層目は、差異化技術の強化を進めることで市場シェアの獲得に努めるとともに、事業の選択と集中などポートフォリオの見直しを行うことで財務体質の改善に努めてまいりました。高周波・通信では、2022年3月期に当社による買収が完了したResonant社のXBAR技術の開発を推進し、翌連結会計年度での出荷開始に向けて準備を進めております。電池事業においては、環境領域での事業機会創出、筋肉質な事業基盤の構築、経営資本の強化と再配分を通して、黒字化に向けた取り組みを推進しております。
3層目は、当社の強みを活かせる領域の探索を進めてまいりました。中期方針2024の期間では、当社グループのハードウェアを活用して、スタートアップや大学などのアイデア実現を目指す「KUMIHIMO Tech Camp with Murata」を始動し、当連結会計年度には初めて日本国外(ブルガリア)での開催を実現するなど、イノベーションの創出・加速に向けた社外との共創活動も積極的に拡大してまいりました。また、PIECLEXや作業者安全モニタリングシステム、efinnos、無線センシングソリューションの展開など、3層目事業の社会実装事例は着実に増加しており、今後は事業のスケール化に向けて、ステークホルダーと共創をしながら取り組みを加速させてまいります。
・筋肉質な経営基盤の形成
筋肉質な経営基盤の形成を実現するために、人的資本および品質基盤の強化に注力してまいりました。
社会価値指標として掲げる「ES」、「多様性」の向上に向けて、グローバル組織サーベイの実施とその結果に基づくアクションプランを検討・実行したほか、グローバルに他拠点での業務経験ができる機会の積極的な提供に努めてまいりました。さらに、将来の幹部人材育成を目的とした国内外の選抜教育プログラムを整備・実行するとともに、モノづくり現場でのムダ取りやスマート技術・デジタル活用による生産性向上、グローバル生産体制や現場改善を支える人材育成を推進いたしました。また、ビジネスリスクアセスメントの仕組みの導入、3層ポートフォリオ経営を支える品質保証・品質管理体制を強化いたしました。今後も、プロセスの源流から科学的管理を実践することで、すべてのお客様から信頼される品質の追求に努めてまいります。
・2030年への備え
重要経営リスクの評価を進め、必要な備えを確立していくとともに、将来の競争力の源泉となる技術の発掘・育成や、それを支える知的財産戦略の立案・実行に取り組んでまいりました。
具体的には、「備えプロジェクト」、「η(イータ)プロジェクト」の推進など、2030年以降を見据えたバックキャスティングを意識した取り組みを強化してきました。「備えプロジェクト」では、「次世代通信/6G」、「環境」、「光/半導体」、「生体エレクトロニクス」の4つのテーマに加えて、当連結会計年度には新たに「スペース」と「ロボティクス」を追加し、調査探索・研究開発・事業化を推進しております。さらに、多様化する顧客ニーズに応えるための営業・マーケティング力の強化、東京ロジスティクスセンターの開設をはじめとするBCM体制の整備、サプライチェーンの複線化を推進することにより、地政学リスクをはじめとした将来の経営リスクに対するリスクマネジメントを強化してきました。今後も短期視点にとどまらず、中長期の成長を見据えた経営を推進してまいります。
中期方針2027
当社グループは当連結会計年度に、Vision2030のありたい姿に向かっていくための第2フェーズとして「中期方針2027」(2026年3月期~2028年3月期)を策定しました。
① 中期方針2027の位置づけ
「中期方針2027」は、Vision2030で描いた「ありたい姿」の実現に向けた「解像度を上げる3年」と位置付けています。AIの登場により、当社グループが2030年の世界観として想定する「デジタルツイン」の実現がより加速していくと考えております。2030年の世界観に至る2027年までの3年間がエレクトロニクス産業の大きな変革期となる中で、当社グループが「お客様や社会にとって最善の選択となる」ための取り組みを3つの基本方針として掲げ、解像度を上げて実行してまいります。
② 全社経営目標
中期方針2027における全社経営目標は、以下図の通りです。
※1 当中期方針から、開示するROICを税引前から税引後に変更しています。
ROIC(税引後)=営業利益×(1-実効税率)/期首・期末平均投下資本(有形固定資産・
使用権資産・のれん・無形資産+棚卸資産+営業債権-営業債務)
なお、計算で用いる実効税率は、平均実際負担税率を用いております。
※2 Greenhouse Gas 温室効果ガス
※3 カーボンニュートラル
※4 主に枯渇リスクの高い24資源におけるリサイクル材使用の重量割合
※5 当社グループの排出物(廃棄物 + 有価物)が循環資源化された重量割合
※6 2025年以降に、自国以外への異動や研修・リモートアサインメントでグローバルな経験を
した国内外社員の累積数
※7 村田製作所単体
③ キャピタル・アロケーション方針
中期方針2027に基づき、事業拡大および企業価値最大化を目指したキャピタル・アロケーション方針を以下の通り定めています。
中長期的な稼ぐ力の強化に向けて、生産能力の増強やサプライチェーンの複線化への投資に加え、非連続な成長を実現するための戦略的な投資を積極的に実施します。株主還元においては、収益性の改善を通じてDOE(親会社所有者帰属持分配当率)の目標を引き上げることで安定した配当につなげ、事業環境に応じた追加的な株主還元を機動的に実行します。
※ 2021年度末時点の手元余剰資金および当該期間中に経費処理したものなどが含まれる。
④ 3つの「基本方針」
・基本方針1「AIがドライブするエレクトロニクスにおける飛躍的な成長」
AI技術の発展に伴い、サイバー(仮想)空間とフィジカル(物理)空間が途切れなくつながる「デジタルツイン」の世界観が実現していくことで、当社グループの事業機会はより一層拡大すると想定しております。
「エッジデバイス」、「モビリティ」、「ITインフラ」を当社グループの基盤領域として捉え、コンデンサやインダクタ・EMIフィルタにおけるシェアNo.1の確立、機能デバイス、高周波・通信、エナジー・パワーにおける高い売上成長の実現を目指してまいります。
また、「環境」、「ウェルネス」、「3層目事業」を挑戦領域として捉え、事業拡大に向けた取り組みを進めるとともに、2030年以降の超長期を見据えた技術の探索を進めてまいります。
・基本方針2「持続可能な事業プロセスの追求」
当社グループでは、軽薄短小・高効率な製品の追求による電子機器の小型化への貢献、持続可能な事業プロセスを通じた環境負荷低減の取り組みに率先して取り組むことで、これまで事業成長を遂げてまいりました。今後は、「気候変動対策」と「資源循環」の2つを主要テーマとして掲げ、ステークホルダーとの共創を通じて取り組みを加速させてまいります。
また、ハザードリスクの脅威や地政学リスクの複雑化が見られる経営環境において、安定的な製品の供給を実現するために、グローバルでの拠点間ネットワークの強化や、適正な在庫政策、サプライチェーンの強靭化・複線化に向けた取り組みを一層強化してまいります。
・基本方針3「経営資本の中核である人・組織力の強化」
当社グループでは、「組織・人的資本」がすべての経営資本をつなぐ中核であると考え、イノベーションにあふれる個と組織への変容を促進することによって、Vision2030の実現を目指しております。自律分散型の組織運営において、個と組織が取るべき行動を明らかにした「個と組織の好循環」モデルを新たに描き、「ダイナミックな適所適材」、「未来変革リーダーの育成」、「個と組織の好循環モデルの実現」を3つの重点テーマとして掲げ、取り組みを推進してまいります。
また、DXの推進によって、エンジニアリングチェーン、サプライチェーン、デマンドチェーンの可視化・効率化を通じた事業プロセスのハイサイクル化の実現を目指します。これにより、業務本来の目的やお客様に向き合う時間を増やし、CSとESの最大化につなげてまいります。
(3) 当社グループのマテリアリティ
当社グループでは、重要な環境・社会課題(マテリアリティ)を特定し、製品・サービス及び事業プロセスの両面から取り組みを推進しています。マテリアリティは三か年の中期方針策定にあわせて見直しを行っており、2024年度を最終年度とする中期方針2024の実績につきましては、当社ウェブサイト(https://corporate.murata.com/ja-jp/csr/materiality/activities-2022)にて公表予定です。中期方針2027でも引き続き経営変革の一環として社会価値と経済価値の好循環を生み出す経営を掲げ、マテリアリティを「エレクトロニクス社会の発展」「持続可能な地球環境の実現」「社会との共栄」に分け取り組みを推進してまいります。
<特定プロセス>
STEP1:環境・社会課題抽出
ESRS、SASB、SDGs、グローバルリスクから環境・社会課題を抽出しました。
STEP2:環境・社会へのインパクト / 自社財務への機会・リスクの特定・評価
CSRD、ESRSが提唱する「ダブルマテリアリティ」の考え方に則り、外部ステークホルダーからの意見を踏まえて、当社グループのバリューチェーン全体での「環境・社会へのインパクト」と「自社財務への機会・リスク」を特定し、評価しました。
STEP3:マテリアリティの特定
代表取締役社長を委員長とするCSR統括委員会で議論を重ね、マテリアリティを特定し、取締役会で決定しました。
「エレクトロニクス社会の発展」
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マテリアリティ |
2030年 目指す姿 |
ムラタの思い |
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エッジデバイスによるデジタル革新の実現 |
最先端技術による多様なニーズへの価値提供と、積み重ねてきた供給力によってエッジデバイスの普及を促し、エレクトロニクスの恩恵を受ける人を増やすとともに、デジタル革新による社会課題解決に貢献できている状態 |
当社グループは、軽薄短小・無線通信技術を追求した最先端部品や高シェア部品の安定供給を果たすことで、スマートフォンをはじめとするエッジデバイスの小型化・多機能化や通信の高速・大容量化、エレクトロニクスの人々の暮らしへの浸透に貢献してきました。 デジタル社会の進展に伴い、エッジデバイスは人々の生活にますます欠かせない存在となり、グローバルでの人口増加に伴い裾野の広がりも期待されます。 当社グループは、高効率・低消費電力・センシングソリューションなどの新たな価値創出の追求と、積み重ねてきた供給力によってエッジデバイスの普及を促すことで、エレクトロニクスの恩恵を受ける人を増やすとともに、デジタル革新による社会課題解決への貢献を目指します。 |
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マテリアリティ |
2030年 目指す姿 |
ムラタの思い |
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次世代モビリティ社会の実現 |
拡張していくモビリティ社会のニーズに応じた製品・サービスを提供することで、安全・安心で便利な社会の実現と、持続可能な地球環境の両立に貢献できている状態 |
当社グループは、高信頼性、高性能な製品を生み出す技術力、あるいは同一品質の製品を大量生産できる供給力という強みを活かしながら、電気自動車の普及や自動車の安全性向上へと貢献してきました。 脱炭素社会への移行や交通事故防止、都市・過疎地での交通問題の解消、移動手段・消費者ニーズの多様化など、当市場は今後さらに大きく変革することが予想されます。 このような環境変化の中、“モビリティ”として市場を広く捉え、高機能・高信頼な製品の安定供給を通じたxEVのさらなる普及、自動運転技術とこれを支える都市インフラの進化に貢献することで、安全・安心で便利な社会の実現と、持続可能な地球環境の両立を目指します。 |
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持続可能なITインフラの実現 |
高速・大容量・高効率を軸とした信頼性の高い製品を提供することで、エレクトロニクス社会の発展を支え続けるとともに、環境に配慮した持続可能なITインフラの実現に貢献できている状態 |
当社グループは、集積化に寄与する小型部品や、エネルギー効率の改善に寄与する各種電源装置などの製品を提供することで、社会とともに発展してきたITインフラの構築に貢献してきました。 クラウド化の進行やAIの登場にともなって、通信のトラフィック量やITインフラ側での演算量も飛躍的に増加しています。これに伴い、データセンターのエネルギー消費量の急増など新しい課題も浮上しています。 当社グループは、高速・大容量、高効率を軸とした信頼性の高い製品を安定供給することで、エレクトロニクス社会の発展を支え続けるとともに、環境に配慮した持続可能なITインフラの実現を目指します。 |
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心身ともに健康で豊かな社会の実現 |
ウェルネス市場における新たな価値を創出し、人々の身体的、精神的、そして社会的に健康で安心な生活に貢献できている状態 |
当社グループは、最先端の技術や部品を創出するなどエレクトロニクスを通じてその時代に応じた社会課題解決に貢献してきました。 健康志向が高まる今、身体的な健康だけでなく、精神的・社会的にバランスのとれた健康や生活者自身の幸せの追求など健康概念は変化しています。 当社グループは、小型化・センシング・通信・流体制御技術といった要素技術や培ってきたエレクトロニクス領域の知見を製品・サービスに展開することで、医療の発展や病気の予防、さらに心の健康や人と人との良好な関係といった新しい豊かさを実現していくためのイノベーションを生み出し、すべての人が健康で豊かな人生を送ることができる社会の実現を目指します。 |
「持続可能な地球環境の実現」
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マテリアリティ |
長期目標 |
中期目標 (2025年度~2027年度) |
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脱炭素社会の実現 |
2050年度目標 GHG※1排出量(Scope1,2,3):カーボンニュートラル
2040年度目標 GHG排出量(Scope1,2):カーボンニュートラル
2035年度目標 再生可能エネルギー導入比率:100%
2030年度目標 GHG排出量(Scope1,2):87.3万t-CO2e(2019年度比46%減) GHG排出量(Scope3):324.6万t-CO2(2019年度比27.5%減) 再生可能エネルギー導入比率:75%
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GHG排出量(Scope1,2):97.6万t-CO2e (2019年度比39%減) GHG排出量(Scope3):データの精緻化 再生可能エネルギー導入比率:55% |
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循環型社会の実現 |
2050年度目標 持続可能な資源利用率※2:100% 循環資源化率※3:100%
2030年度目標 持続可能な資源利用率:25% 循環資源化率:50% |
持続可能な資源利用率:16% 循環資源化率:41% |
「社会との共栄」
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マテリアリティ |
長期目標 |
中期目標 (2025年度~2027年度) |
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ダイバーシティと働きがいの実現 |
2030年度目標 従業員エンゲージメント肯定回答比率:76%以上 グローバル経験者数※4:3,000人(6年累計) 女性管理職比率※5:10% 主観的健康観※6:80% 労働災害千人率(休業4日以上):0.39未満 |
従業員エンゲージメント肯定回答比率:71%以上 グローバル経験者数:1,500人(3年累計) 女性管理職比率:7% 主観的健康観:79% 労働災害千人率(休業4日以上):0.44未満 |
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人権の尊重 |
2030年度目標 特定した顕著な人権リスクに対する防止・軽減、モニタリング、情報開示の実施率:100% |
特定した顕著な人権リスクに対する防止・軽減、モニタリング、情報開示の実施率:100% |
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社会・地域の発展 |
2030年度目標 地域における会社の印象度調査肯定回答率:75%以上 STEAM教育プログラム体験者数(当社グループ所在地の小中学生中心):34,000人 / 年 |
地域における会社の印象度調査肯定回答率:70%以上 STEAM教育プログラム体験者数(当社グループ所在地の小中学生中心):31,000人 / 年 |
※1 GHG:Greenhouse gas。温室効果ガスの総称。
※2 持続可能な資源利用率:主に枯渇リスクの高い24資源におけるリサイクル材使用の重量割合。
※3 循環資源化率:当社グループの排出物(廃棄物+有価物)が循環資源化された重量割合。
※4 2025年以降に、自国以外への異動や研修・リモートアサインメントでグローバルな経験をした国内外社員の累積数。
※5 提出会社。
※6 健康診断などの数値結果ではなく、自身の健康状態を主観的に評価する指標。評価対象を国内従業員とし、肯定回答率で把握。
当社グループでは、持続可能な社会の実現に向けて、CSRに関する各事項の取り組み(環境、社会、従業員、人権の尊重、腐敗防止、贈収賄防止、ガバナンス、サイバーセキュリティ、データセキュリティなど)を行っています。これらの取り組みを通じて、社会価値を向上させ、さらには経済価値との好循環を生み出すことで、ステークホルダーの皆様に信頼され、選ばれ続ける存在であることを目指しています。
(1)サステナビリティへの対応
Ⅰ ガバナンス
当社グループでは、CSRに関する各事項の取り組みを経営における重要な課題の一つと位置付けており、ガ
バナンス体制を強化しています。取締役会は、すべてのリスクと機会について説明責任を負っています。
また、当社グループのCSR活動の方向付けを行うために、取締役会監督のもと、CSR統括委員会を設置しています。当委員会の委員長を務める代表取締役社長は、CSRを監督する責任を負っています。
当委員会では、整合性の取れた全社的なCSR経営を継続的かつ計画的に推進するため、次に掲げる事項を実施し、活動状況などについては、定期的に取締役会に報告を行っています。
①CSRの理念・方針・ガイドライン等の策定と決定
②CSRに関わる全社的に重要な事項(課題)の抽出と取り組みの指示
③下部委員会活動(下記にて記載)の枠を越えた重要事項(課題)に対する会社としての方向付けと活動結果の
共有
④全社で共有すべき下部委員会が担うCSRテーマの方針とその目標及び活動結果の共有
⑤CSRに関わる顧客対応結果、顧客要求の状況把握と顧客対応への助言
さらに、CSR統括委員会には、コンプライアンス推進委員会、環境委員会、気候変動対策委員会、社会・地域貢献委員会、健康安全推進委員会、人権委員会の6つの下部委員会を設置し、組織横断的な活動を必要とするCSRテーマについて議論を進めています。
<CSR推進体制>
Ⅱ 戦略
先述のとおり、当社グループでは、ステークホルダーとの共創を通じて、今を支え、未来を切りひらき、社会と調和することで、社会価値と経済価値の好循環を生み出し、豊かな社会の実現に貢献することを「Vision2030」のありたい姿として掲げています。Vision2030の実現にむけて第2フェーズである「中期方針2027」でも引き続き経営変革の一環として社会価値と経済価値の好循環を生み出す経営を掲げています。この好循環を実現するために、当社はマテリアリティを定め、製品・サービス及び事業プロセスの両面から取り組みを推進してまいります。
Ⅲ リスク管理
当社グループでは、CSRに関する各事項(環境、社会、従業員、人権の尊重、腐敗防止、贈収賄防止、ガバナンス、サイバーセキュリティ、データセキュリティなど)においてリスク及び機会を識別しています。マテリアリティとして特定した環境・社会課題については、CSR統括委員会のもと、構造化したプロセスで定期的に評価しています。
また、オペレーション面においては、事業所で環境や安全、人権などのマネジメントシステムを構築・運用し、CSRに関するリスクを評価しながら継続的な改善を推進しています。なお、これらのリスクはCSR統括委員会のみならず、リスク管理委員会のもと全社的な管理項目に組込まれています。包括的に評価を行い、必要に応じて追加対策を講じるなど、さらなるリスク低減へと努めております。
Ⅳ 指標と目標
当社グループでは、中期方針2027において経営変革の一環として社会価値と経済価値の好循環を生み出す経営を掲げています。重要な環境・社会課題(マテリアリティ)を特定し、それぞれの課題について目標を掲げ、取り組みを推進しています。詳細は前掲「
(2)気候変動への対応
当社グループは気候変動の課題に向き合う企業のひとつとして、世界の気候変動対策に向けて果たすべき重要な役割があると考えています。気候変動は、コストの増加や事業の中断といったリスクをもたらす一方、社会に新たなニーズを生み、当社グループとして新たな価値を創出する機会でもあると認識しています。そのため、Vision2030に向けた期間は、「文化の発展に貢献する」という当社グループの使命を果たしながら、革新的な技術やソリューションを生み出し、新しい領域に事業を拡大する機会であると捉えています。
以下内容において、気候変動関連の財務情報開示に関するタスクフォース(TCFD)が推奨するフレームワークを活用し、気候変動がもたらすリスクと機会及びそれぞれに対する取り組みについて説明します。
Ⅰ ガバナンス
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当社グループのアプローチ |
●取締役会は、気候変動を含むすべてのリスクと機会について説明責任を負っており、気候変動対策委員会等からの施策や判断に関する報告を受けて監督 ●代表取締役社長を委員長としたCSR統括委員会に、代表取締役専務執行役員が委員長を務める気候変動対策委員会より年2回の報告による、気候変動対策について経営レベルでの監督 ●環境目標の進捗管理、脱炭素関連の投資判断の審議 ●気候変動対策委員会での決定に基づき主管部門が全社の気候変動施策推進 ●役員報酬の株式報酬の一部において、社会価値目標の達成状況に応じて変動する報酬体系を導入(監査等委員を除く) |
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2024年度 取り組み状況 |
●気候変動対策委員会(臨時開催含む)を4回実施 取り組み実績: ▶事業所へのオンサイト再エネ導入・PPA等オフサイトからの再エネ調達 ▶次期中期目標の気候変動対策にまつわるマテリアリティを設定 ▶再エネ導入比率100%達成時期の前倒しと、Scope1,2,3含めたカーボンニュートラル目標を設定 ▶省エネ施策の創出を目的とした製品CFP※算出および顧客開示 ▶Scope3の削減にむけた仕入先様を対象にした説明会やヒアリングの継続実施、モーダルシフトの取り組み推進
取締役会での気候変動対策に関する審議事項: ▶2024年度までのマテリアリティ「気候変動対策の強化」に関する目標達成状況、2025年度からのマテリアリティ「脱炭素社会の実現」の設定と、その評価指標・目標の報告 ▶再エネ導入比率100%の達成時期前倒しやカーボンニュートラルにむけたアプローチ |
当社グループでは気候変動対策委員会を中心に議論を進め、RE100やSBT等のイニシアティブへの対応やカーボンプライシング制度導入の意思決定を行っております。今後も中長期的な視点で企業価値を高めていくために、ガバナンス体制を強化してまいります。気候変動対策委員会では、イニシアティブ・Scope3推進部会・再エネ推進部会・省エネ推進部会の3つの下部組織と連携して当社の気候変動対策の方針について議論しています。2024年度は委員会を臨時開催含む4回実施し、当社拠点内外での再エネ調達、2025年度から始まる中期の気候変動対策にまつわるマテリアリティ設定、また、再エネ導入比率100%達成時期の前倒しやScope1,2,3含めたカーボンニュートラルの目標設定について議論を行いました。
※ Carbon Footprint of Productの略。ライフサイクル全体を通して排出されるGHGの排出量を算出したもの
Ⅱ 戦略
当社グループは気候変動対策をモノづくりの企業として極めて重要な課題と考えており、Vision2030及び中期方針2027においても「脱炭素社会の実現」をマテリアリティのひとつに設定しています。気候変動を「機会」と「リスク」の両面で捉え、企業としての社会的責任の実践とさらなる競争優位性の構築を図ります。
当社グループは、IPCC※1やIEA※2などが発表する「世界の平均気温が4℃以上上昇する」「世界の平均気温がパリ協定で合意した2℃未満の上昇に抑えられる(一部1.5℃以内)」の2つのシナリオでリスクと機会を分析しました。その結果、2024年まで重点課題としていた「気候変動対策の強化」を、自社だけではなく世の中の脱炭素化にも貢献する意図で、「脱炭素社会の実現」として改定いたしました。具体的な取り組みとしては、省エネ・再エネニーズの高まり、EV転換に伴う自動車産業の変容、情報通信インフラのさらなる高速化・大容量化等の社会変化に要求される高効率部品の需要に応えるため、軽薄短小・高効率・長寿命を競争優位とした製品開発を継続的に推進してまいります。また、自社拠点に導入している太陽光発電システムと自社製品の蓄電池やエネルギーマネジメントシステムを組み合わせた省エネ・再エネ施策を社外にも展開することによる脱炭素社会への貢献と新規事業の探索を目指します。
2023年度は当社の主要な製造拠点及び事業所(当社グループ従業員数の8割をカバー)を対象とした物理リスク分析のさらなる深掘り、2024年度は移行リスク、移行機会について最新の前提条件に基づいた影響度の見直しを行っております。当該分析結果については、今後の経営計画の戦略に反映し、対応を具体的に計画してまいります。
<移行リスクとその対応方針(1.5℃シナリオ)※3 ※4 ※5>
<移行機会とその対応方針(1.5℃シナリオ) ※4 ※5>
<物理リスクとその対応方針(4℃シナリオ)※5>
※1 IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change): 気候変動に関する政府間パネル
※2 IEA (International Energy Agency): 国際エネルギー機関
※3 CFP:Carbon Footprint of Productの略。ライフサイクル全体を通して排出されるGHGの排出量を算出したもの。
※4 短期:直近3年以内、中期:直近3年以上5年以内、長期:直近5年以上10年以内
※5 影響度 大:200億円以上、中:100~199億円、小:100億円未満 移行分析は事象に対しトータルの金額影響、物理分析は災害発生頻度を加味した年間影響の金額を表している
Ⅲ リスク管理
CSR統括委員会が、社会、環境、経済の様々なマテリアリティ(重点課題)を、構造化されたプロセスで定期的に評価しています。最新のマテリアリティ評価では、気候変動による影響は重大なリスクとして認識しており、それに対しての監督や取組みを経営の重要課題として取締役会で承認しています。戦略面においては、気候変動対策委員会が変化する気候関連リスクを継続的に注視し、当社グループの気候変動に関する課題を設定し、その対応状況を管理しています。
将来の気候変動がもたらす潜在的なリスクと機会及び事業戦略のレジリエンスを評価するために、2021年度から物理シナリオ・移行シナリオの分析と継続的な深掘りを行っています。そのほかにも、サステナビリティ投資促進制度を2022年度より本格導入、社内カーボンプライシング制度活用を含むこれまでにない非連続なチャレンジも視野に入れた脱炭素化に取り組みます。Scope3の精緻化/削減に向けて国内250社以上を対象とした脱炭素に向けた説明会や、仕入先様へのヒアリングも継続して実施しており、結果としてカテゴリ1CO2排出量の1次データ比率を16.8%※まで引き上げることができました。
オペレーション面においては、事業所でISO14001認証を取得し、環境及び気候変動リスクを評価しながら継続的な改善を推進しています。
気候変動に起因するリスクは、リスク管理委員会のもと全社的なリスク管理の項目に組込まれています。
たとえば、悪天候時の対応のガイドラインは、事業の中断を最小限に抑えるために事業継続計画(BCP)に定められています。
また、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)などの業界団体や、RE100などのグローバルアライアンスに加盟し、気候変動に関連する新たなリスクや機会を含む最新動向の把握に努め、自社の取り組みや対応に活用しています。
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当社グループのアプローチ |
●気候変動に起因するリスクは、リスク管理委員会のもと全社的なリスク管理の項目に組込み、グループ重要リスクと識別・評価。シナリオ分析によるリスクと整合させ、取組みのモニタリングを実施していく ●気候変動影響による「移行リスク」「物理リスク」を網羅的に抽出。それぞれの影響度を評価 ●オペレーション面においては、事業所でISO14001認証を取得し、環境リスクを評価しながら継続的な改善を推進 |
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2024年度 取り組み状況 |
●移行リスク、移行機会について最新の前提条件に基づいた影響度の見直しを実施 ●世界の気候変動を取り巻くトレンドをキャッチし、自社の取り組み・対策に活用 |
※ 2024年度のエネルギーデータは2025年6月時点での暫定値です。確定値につきましては当社ホームページにて2025年8月頃に掲載予定です。
https://corporate.murata.com/ja-jp/csr/environment_murata/climate_change
Ⅳ 指標と目標
当社グループは気温上昇を1.5℃に抑える世界的な取り組みに貢献するため、SBT認証取得やRE100への加盟を進めてきました。当社グループの事業規模は拡大する見込みですが、GHG排出削減や再エネ導入比率向上を目指し、バリューチェーン全体での脱炭素化を加速させてまいります。2024年度のGHG排出量(Scope1,2)は104万t-CO2e※、再エネ導入比率は39.1%※であり2024年度GHG排出量(Scope1,2)目標・再エネ導入目標ともに中期目標を達成いたしました。
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考え方 |
・省エネ/再エネ/再エネ証書を自社の脱炭素を進める3本柱とし、CO2排出量の削減を行ってまいります。またサプライチェーン全体を通じたCO2排出量の削減も進めるべく、取引先とも今まで以上に連携に努め、対策を講じられるよう検討しています。 |
ムラタグループ 環境目標(脱炭素化社会の実現)

GHG総排出量・再エネ導入比率の推移と中長期目標

※ 2024年度のエネルギーデータは2025年6月時点での暫定値です。確定値につきましては当社ホームページにて2025年8月頃に掲載予定です。
https://corporate.murata.com/ja-jp/csr/environment_murata/climate_change
(3)人的資本に関する取り組み
当社グループの経営資本は社是の実践を通じて培われてきたものです。「組織・人的資本」は、ほかの資本を繋ぐ役割を担い、価値の最大化(=総合力の発揮)を実現するための重要な資本であるという考えのもと、すべての経営資本の中核に位置付けています。
全社経営戦略である中期方針2027では、「人・組織力の強化」を重要経営課題のひとつとして掲げております。そこでこの度、組織・人的資本強化の方向性を示すものとして「個と組織のグローバルビジョン」および「グローバル重点テーマ」を新たに掲げ、当社グループの人材戦略を明確にいたしました。これまでの取り組みに加え、今後はこの戦略に沿った施策を具体化、実行し、Vision2030の実現に向けた取り組みを加速してまいります。
Ⅰ ガバナンス
当社では、組織・人的資本に関わる取り組みについて、人事担当執行役員の責任のもと、人事グループが戦略・方針策定および推進を図り、経営会議および取締役会に報告しています。具体的には、Japan HR会議やGlobal HR会議の開催を通して国内外人事機能と連携し、戦略に関わる議論や施策の進捗状況、課題の共有等を行っています。また、人材戦略に関わるKPIの一部は重要な環境・社会課題(マテリアリティ)とも連動しており、管理体制を強化しながら取り組みの充実と加速を促しています。
Ⅱ リスク管理
当社の経営資本は、経営理念である社是の実践を通して培われてきたものであり、リスク軽減においては、どれだけ規模が拡大し、人材が多様化してもなお、社是に込められた思いがグローバル全従業員に浸透していることが欠かせません。そのため役員も参画しながら、浸透のためのアクションを過去から変わらず実施しています。また理念浸透含め、資本強化の取り組み結果を図る指標として、エンゲージメントスコアをモニタリングしています。グローバルサーベイを毎年実施し、組織を良くするためのアクションが各職場で自律的に行われるようにしています。さらに主要なリスクについては、リスク管理委員会のなかで全社リスクとして認識、管理され、必要に応じて事業リスクと連携して適切に対応できる体制としています。いずれの取り組みも、取締役会及び経営会議で定期的に報告・審議されています。
Ⅲ 戦略
①個と組織のグローバルビジョン
当社が未来に向けて飛躍的に成長していくためには、エレクトロニクスの波を捉えたイノベーションの創出が不可欠です。強い一体感や組織間連携を活かして課題解決していくというこれまでに培ってきた強みは引き続き大事にしながら、今後はもっと多様な個の力を活かし、侃々諤々の議論を行うことができる組織へと変容していく必要があると考えています。これが次のイノベーションを生み出していくための挑戦であると考え、個はおもしろい挑戦をし、組織はそれを価値創造につなげていく「個と組織の好循環」をめざすグローバルビジョンを打ち出しました。
なお、個と組織の好循環を生み出していくことは、当社がVision2030で掲げる経営変革のひとつである「自律分散型の組織経営の実践」そのものです。自律分散経営は、個人と組織それぞれに、自律性・進歩性・全体性を求めるものであり、それぞれの役割や期待を明確にしたものが「個と組織の好循環モデル」です。従業員一人ひとりがその意味を理解し、体現していくことで、組織・人的資本がさらに強固なものになっていくと考えています。
・個と組織のグローバルビジョン
・「個と組織の好循環」モデル
②グローバル重点テーマ
個と組織のグローバルビジョン実現していくための重点テーマとして「ダイナミックな適所適材」「未来変革リーダーの育成」「個と組織の好循環の実現」を掲げています。
・「ダイナミックな適所適材」
経営戦略と連動した人材ポートフォリオの再構築および、ポートフォリオを活用できる仕組みの強化を図っていきます。事業の規模やスピードに対応した人材の獲得・配置を実行し、これまでのやり方や考え方といった前例にとらわれずに、事業や機能、国を超えて多様な経験ができる機会を積極的に提供していきます。また、さまざまなライフステージに柔軟に対応したキャリア形成支援を充実させるなど、世の中の変化を先読みしながら“ダイナミック”に人を活かしきることができる状態をめざしていきます。
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取り組み事例 ・多様な専門性と経験を活かす人事制度 ・リスキル付き社内公募制度 ・新卒学生むけ実務実践型インターンシップの充実 ・グローバルローテーションの推進、等
※取り組み詳細についてはこちらをご参照ください。 https://corporate.murata.com/ja-jp/company/hr/resource |
・「未来変革リーダーの育成」
当社にはこれまでに構築してきた強固な人材育成基盤があります。これに加え今後は、未来に向かって誰もが変革リーダーになることができるという考えのもと、さらなる人材育成の強化を図っていきます。好循環の実現において重要な役割を果たすマネジメントの改革、イノベーション創出をリードしていくことを期待するモノづくり人材やDX人材、技術・専門系人材への育成強化、さらに次世代経営リーダーの継続輩出のための施策充実など、より戦略的に取り組みを進めてまいります。
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取り組み事例 ・次世代経営リーダーの育成(管理職と一般中堅層向け選抜教育プログラムの提供) ・モノづくり人材の育成(現場改善士、保全技能者、製造監督者向け施策) ・ベンチャー留学プログラムによる異文化・実践経験の提供、等
※取り組み詳細についてはこちらをご参照ください。 https://corporate.murata.com/ja-jp/company/hr/development |
・「個と組織の好循環の実現」
好循環モデルの実現にはまず、当社の組織・人的資本の根底にある経営理念(社是)への理解・共感を促していくことがこれまでと変わらず重要です。さらに、今後より多様な個の力を生かして、侃々諤々の議論を行うことができる組織へと進化していくために、好事例を共有できる機会や、対話する場の創出、それを促進していくための仕組みや仕掛けを構築するなど、コミュニケーションの強化を図っていきます。これに加え、制度変革や環境整備も進めながら、好循環をイノベーションにつなげていくための文化・風土を醸成してまいります。
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取り組み事例 ・多様なキャリアパスの構築 ・社内共創を推進する“有識者紹介サービス”の提供 ・M-DIP(Murata Diversity & Inclusion Plaza)を通じたD,E&Iの推進、等
※取り組み詳細についてはこちらをご参照ください。 https://corporate.murata.com/ja-jp/company/hr/vision |
Ⅳ 指標と目標
重点テーマに関連する指標として以下を設定し、組織・人的資本の強化を図ってまいります。
※1:2025年以降に、自国以外への異動や研修・リモートアサインメントでグローバルな経験をした国内外社員の累積数。
※2:提出会社
※3:「経営幹部ポジション数」に対する「後継者候補プール数」の割合
(1)リスク管理体制と運用状況
当社では、当社グループの事業活動に影響を及ぼす全社的なリスクについて、その内容と対策を審議するため、代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会を設置しています。当委員会はリスクマネジメント室が事務局となり、年2回定期的(必要に応じて臨時)に開催しており、その活動内容は取締役会や経営会議において定期的に報告され、経営陣が当社を取り巻くリスクを把握し、適切なリスク対策を講じられるようにしております。また下部組織として情報セキュリティ分科会、BCM分科会を設け、個別のリスクに対する対策を検討・実施しております。
(2)リスクの把握と対策
リスクについては、リスクの主管部門である総務、人事、経理、財務、企画、広報、知的財産、環境、情報システム、法務などの機能スタッフ部門と事業部門が、当社グループが現在直面しているリスク、あるいは近い将来に予想されるリスクを抽出しております。そして機能スタッフ部門が、①事業部門が抽出したリスクのうち全社的なリスクとして把握しておく必要のあるリスク、②機能スタッフ部門と事業部門が相互に共有し連携する必要のあるリスク、を正しく認識することで、リスク把握の漏れを防ぎ、全社的なリスクに対して適切に対応できる体制を構築しております。
そして抽出したリスクについては、発生頻度と影響度から重要度を評価し、それらのリスクをリスクマップ上に表示することで、俯瞰的に当社のリスクを把握・管理しております。リスク管理委員会ではこのように抽出されたリスクのうち、重要度・緊急度の高いリスク対策の実施状況と対策後の残余リスクを確認し、必要に応じて追加対策を指示しております。
また、内部監査部門は、リスク管理委員会、機能スタッフ部門及び業務執行部門への直接・間接の監査を通じて、当社におけるリスクマネジメントのPDCAが適切に実施されているかモニタリングしております。
なお、当社は企業価値を大幅に低下させる重大な事案を「危機」と定義し、リスクが顕在化し「危機」が発生した場合に備え、経営陣が迅速に事態を把握するための報告ルールを定め、運用しております。さらに当該「危機」に対し全社的に対応する必要がある場合は、代表取締役社長を本部長とする危機対策本部を立ち上げ対応にあたっております。
(3)事業等のリスク
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。各リスク対策実施後の残余リスクについて、影響度と発生頻度を「大」「中」「小」の3段階に分類しております。なお、影響度については「組織的な影響」「生産活動等への影響」「法令・行政上の影響」「商取引上の影響」「報道・風評上の影響」の5つの指標から1つの指標を選択し、各指標であらかじめ定めた基準に基づき分類しております。ただし、以下に記載された項目以外のリスクが生じた場合においても、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在入手し得る情報に基づいて当社グループが判断したものであります。
① 外部環境リスク
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(1)グローバルでの事業展開に関するリスク |
発生頻度 中 |
影響度 大 |
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リスク内容 |
当社グループの海外売上収益比率は90%を超えており、販売・生産・調達等の事業活動をグローバルに展開しております。従って、当社グループの業績は、進出当該国・地域の政情、税制等の法制度、金融・輸出入に関する諸規制、社会資本の整備状況、その他の地域的特殊性、及びこれらの諸要因の急激な変化の影響を受ける傾向にあります。 |
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対策 |
当社グループは、事業展開にあたり、市場や顧客の変化を的確に捉え、高品質の製品と充実したサービスを提供できる体制を構築すべく、販売拠点は世界の主要市場を網羅できる地域に、生産拠点は採算性、周辺市場の拡大予測、顧客動向等から総合的に判断した地域に配置し、仕入先はQCDS等の合理的な基準に基づいて選定することとしております。また、新たな国への進出や新たな仕入先との取引に際しては、そのリスクを慎重に検討、評価した上で適切に判断しております。その上で、進出した地域や仕入先への貢献を重視し、価値向上に努めて、信頼を勝ち得る努力をしております。 一方で、昨今、地政学リスクが常態化してきており、直接・間接的に事業に影響を及ぼす可能性があります。特に当社グループ連結売上収益の約50%、生産高の約20%を中華圏が占めており、中国の内外情勢による経営へのインパクトは高まっております。また、トランプ政権の関税措置により、当社グループの米国向け輸出取引において直接的な影響があるのに加え、最終需要の下押しやそれに伴う競争環境の悪化等の間接的な影響も想定されます。これに対して、地域動向、市場動向、顧客動向等、多方面から情報を収集し迅速に対応できる体制を構築し、サプライチェーン全体の複線化・効率化の検討・実行に努めております。加えて、事業継続計画(BCP)の観点からのアセアン等での生産強化、日本を含めた代替生産体制の実現等による生産体制の多極化を進めております。 |
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残余リスク |
上記の対策を講じたとしても、想定を超える政治・経済・社会的要因の急激な変化が起きた場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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(2)為替変動に関するリスク |
発生頻度 大 |
影響度 大 |
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リスク内容 |
当社グループの海外売上収益比率は90%を超えており、またグローバルに事業を展開していることから、生産・販売等の事業活動が為替変動の影響を大きく受けます。また、為替変動は当社グループの外貨建取引から発生する収益・費用及び資産・負債の円換算額を変動させ、業績及び財政状態に影響を及ぼします。翌連結会計年度において為替変動が営業利益に及ぼす影響は、米ドルに対して円高方向に1円変動した場合に年間約45億円の減益と見ております。 |
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対策 |
当社グループでは、為替変動リスクを軽減させるため、海外での販売について為替の変動を販売価格に反映させるよう努めており、また為替変動による損益への影響をヘッジする目的で、為替ヘッジコストを考慮しながら外貨建取引金額の一定比率に対して為替予約契約を締結しております。 |
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残余リスク |
上記対策を講じたとしても、為替変動による影響を完全に排除することは困難であり、米ドルなど他の通貨に対して、円高が急激に進んだり長期に及んだ場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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(3)資金調達に関するリスク |
発生頻度 中 |
影響度 中 |
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リスク内容 |
当社グループでは、設備投資及びその他の事業資金については、自らの事業活動により獲得した内部資金で対応することを基本方針としておりますが、事業の成長に向けた投資や運転資金のための資金需要に対して内部資金だけでは不足する場合があります。 |
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対策 |
当社グループでは、時々の金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部から調達することで対応しており、銀行からの借入及び国内普通社債発行による資金調達を適宜実施しております。 |
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残余リスク |
上記対策を講じたとしても、金融市場の不安定化により、金融機関が貸出を圧縮した場合、円の金利が上昇した場合、また格付機関による当社信用格付けの引下げの事態が生じた場合などには、資金調達の制約を受け、資金調達コストが増加し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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(4)環境規制に関するリスク |
発生頻度 中 |
影響度 中 |
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リスク内容 |
当社グループは、国内外において、大気汚染、水質汚濁、土壌・地下水汚染、廃棄物処理、製品に含有する化学物質など、様々な環境法令の規制を受けております。当社グループでは、これら法令を遵守し、事業活動を進めておりますが、地球環境保全の観点、事業の継続的な発展の観点において、今後ますます国内外での環境規制が強化され、これに適応するための費用の増大が予想されます。 |
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対策 |
当社グループでは、近年、気候変動や資源循環と事業との調和に関して重要性を強く認識するとともに、それらを事業の機会とリスクと捉え、各取り組みを進めております。この他、化学物質の使用に関する規制や揮発性有機溶剤の大気放出に関する規制への対応など、環境保全に関する当社グループの課題認識とその対応に関して、CSR統括委員会の下部組織として環境委員会及び気候変動対策委員会を設置し、当社グループ全体で対策を推進しております。 |
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残余リスク |
上記対策を講じたとしても、環境規制への適応が極めて困難な場合、想定を超える費用の発生や事業からの部分撤退、または当社グループへの社会的信用が損なわれることにより、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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(5)気候変動に関するリスク |
発生頻度 中 |
影響度 大 |
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リスク内容 |
近年、世界各地で深刻化している環境問題に対応するため、資源循環や脱炭素に対する取り組みが企業に求められております。当社グループでは脱炭素社会の実現、及び循環型社会の実現をマテリアリティ(重点課題)として設定し対策を実施しておりますが、ステークホルダーからの要請への適応が極めて困難な場合や、対応に不足、又は遅れが生じた場合、以下のリスクが顕在化する可能性があります。 (移行リスク) ・全世界での脱炭素製品のニーズ拡大や環境意識の向上に後れを取ることによる顧客の逸失や企業価値の低下、カーボンプライシング導入や省エネ基準の厳格化が進むことによる工場建設・運用コストの増加等は、経営戦略や財務計画、設備投資の意思決定において見込むべき潜在的なリスクになっております。 (物理リスク) ・台風や大雨などの異常気象は、工場やサプライチェーンに影響を及ぼし、洪水や停電による主要工場の全面停止、異常気象による原材料の供給途絶などのリスクが想定されます。 |
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対策 |
当社グループは、CO2排出量削減等の「脱炭素社会の実現」を企業経営の非財務重点課題の1つとして選定し、気候変動対策に関する課題認識とその対応に関して担当取締役を委員長とする気候変動対策委員会を組織し、対策を推進しております。 (移行リスク) ・カーボンプライシング(以下CP)導入への対応として、サステナビリティ投資促進制度(社内CP制度等)を活用し、省エネ/再エネ活動をさらに加速させます。 ・脱炭素製品のニーズに応えるべく、再エネを積極的に導入・サプライヤーとも連携したCO2排出削減に取り組むことでバリューチェーン全体の脱炭素化を促進するとともに、軽薄短小・高効率化・長寿命化の継続的な製品開発を進めていきます。 ・工場建設や運用コストの上昇に対しては、省エネ補助金/税制優遇措置の積極的な活用によりコスト負担を軽減し、低環境負荷建築などの採用による運用コスト軽減を図ります。 (物理リスク) ・台風の強大化等による異常気象によって、工場の立地によっては甚大な被害を受ける可能性があります。そのため当社グループでは、ハザードマップを活用し、各工場のリスク評価を実施しており、輸送を途絶えさせないよう生産製品の分散化・輸送ルートの複数化を図っております。 ・その他気候変動に関するリスクや機会に関しては、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言に基づいた内容を開示しております。具体的な各施策については、SBT(Science Based Targets)として認定された目標値を達成するため、さらに取り組みを強化します。将来的には2035年度のRE100達成、2050年度にサプライチェーン全体におけるカーボンニュートラルを実現するため、活動してまいります。 |
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残余リスク |
上記対策を講じたとしても、中長期的にステークホルダーの要請が変化し、その要請に応えられないことによって当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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(6)資源枯渇に関するリスク |
発生頻度 小 |
影響度 中 |
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リスク内容 |
当社グループは、多種多様な鉱物資源を原材料として電子部品を製造しています。世界的な人口増加と経済成長に伴い、これら資源の需給逼迫や長期的な枯渇リスクが高まっており、将来的に安定的な原材料調達に支障をきたす可能性があります。 |
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対策 |
当社グループは、「循環型社会の実現」を重要な環境・社会課題と位置づけ、CSR統括委員会の下部組織として環境委員会を設置して全社的に資源枯渇リスクの低減に取り組んでおります。具体的には、製品の軽薄短小化・高効率化・長寿命化を追求して投入材料を削減するとともに、枯渇リスクの低い代替資源やリサイクル材を積極的に導入し、自社廃棄物の再利用・循環資源化を推進しております。また、仕入先や自治体、研究機関などステークホルダーと連携し、資源循環ネットワークを構築することでバリューチェーン全体の資源効率を高めています。さらに、2027年度までに持続可能な資源利用率を16%、2030年度に25%、2050年度に100%とする目標を掲げるとともに、廃棄物の循環資源化率も段階的に向上させています。 |
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残余リスク |
上記対策を講じたとしても、主要原材料の需給逼迫による生産停止や納期遅延、原材料コストの急騰による製造コスト増大が懸念されます。さらには代替資源やリサイクル材への切り替えが計画どおり進まず、当社グループへの社会的信用が損なわれることにより、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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(7)災害・感染症等による事業活動の停止に関するリスク |
発生頻度 小 |
影響度 大 |
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リスク内容 |
当社グループは、事業所所在地における大規模な自然災害の発生や感染症の流行等により、事業活動が長期間停止する可能性があります。 |
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対策 |
当社グループでは、大規模災害や感染症の流行による主要製品の操業停止の影響を最小限にし、「お客様に製品を安定供給する」という責任を果たすため、事業継続計画(BCP)を策定しております。また、一定規模の地震災害を想定して建物・生産設備の耐震性・安全性確保、通信・情報システムのバックアップ体制、在庫による供給維持、生産拠点の国内外への分散などの施策を講じております。さらに、定期的な防災訓練や事業継続訓練の実施により、初動対応の実効性確認と継続的な改善や危機対応能力の向上とBCPの改善点の把握に取り組んでおります。 |
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残余リスク |
上記対策を講じたとしても、想定を超える大規模災害の発生や新型感染症の流行、原子力発電所の事故等による、長期にわたる製造ラインや情報システムの機能低下、世界レベルでの経済活動の停滞に伴う大幅な事業活動の縮小や停止が、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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② 戦略リスク
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(1)当社製品の需要変動に関するリスク |
発生頻度 中 |
影響度 大 |
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リスク内容 |
当社グループは、各種エレクトロニクス製品を生産する電子機器メーカーに対して、電子部品を供給することを主たる事業としております。 エレクトロニクス製品の需要動向は、世界の経済情勢に大きく左右されます。従って、経済情勢の急激な変化は、当社グループの業績に大きな影響を及ぼします。加えて、特に成長性の高いエレクトロニクス製品に使用される電子部品については、実態とは乖離する部品需要が発生することもあり、その場合、当社グループは需要変動の影響をさらに増幅して受けることになります。 |
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対策 |
当社グループでは、これに対して、1)エッジデバイス・ITインフラ・モビリティ市場の3つを基盤領域としつつ、環境・ウェルネス市場を挑戦領域として、より広い事業機会を捉えることでのリスク分散を図る、2)世界経済の動向を注視し、中長期的な需要予測に基づき生産設備と必要人員を迅速に手配し生産能力を拡充する、3)DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進等による生産効率の継続的改善に注力する、4)生産能力や稼働日数の柔軟な調整を行う、等の対策により、需要の急激な増加への対応と余剰資産等ロスの発生を抑制するよう対策を講じております。 |
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残余リスク |
上記対策を講じたとしても、世界経済やエレクトロニクス産業全般の急激な変化により当社グループの製品の需要が予測を大幅に下回る事態となった場合には、手配した生産設備、人員、資材、製品等が余剰となり、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。一方、想定を超える需要が急激に発生した場合には、顧客の要求に応じられず販売機会を逃し、そのことが将来の競争力低下につながる可能性があります。 |
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(2)製品の競争力(市場シェア)に関するリスク |
発生頻度 中 |
影響度 中 |
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リスク内容 |
当社グループが属する電子部品業界は、中長期的に需要機会は大きく伸長すると見込まれますが、同時に競合他社との競争は激しく、製品の特性、供給力、コスト競争力等総合力で競合他社に劣後する場合、当社市場シェアが低下するリスクがあります。従来からの競合に加え、昨今、中国ローカルの部品サプライヤーが急速に力をつけてきており、競合との競争はさらに激化する傾向にあります。 |
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対策 |
当社グループは、将来の市場、製品及び技術動向の予測に基づいた研究開発の元で、小型、薄型、高信頼性、低消費電力等を実現する付加価値の高い新商品を継続的に投入し、また独自の材料技術や生産技術、現場のモノづくり力を統合した継続的かつ積極的なコストダウンの推進、顧客需要にタイムリーに応える供給力の整備、顧客との安定した取引関係を構築する販売ネットワーク力等の総合力により、マーケットシェアの維持拡大に注力し、売上の拡大や収益性の向上に努めております。 |
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残余リスク |
上記の対策を講じたとしても、競合他社が革新技術を獲得して技術的に先行する、圧倒的なコスト低減に成功する等々の要因により、当社の市場シェアが低下し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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(3)特定の取引先、製品への依存に関するリスク |
発生頻度 中 |
影響度 中 |
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リスク内容 |
当社グループにおいては、当連結会計年度における連結売上収益の10%を超える顧客グループは存在しないものの、依存度の高い取引先があります。また、当連結会計年度において、コンデンサが連結売上収益の48%を占めており、依存度の高い製品となっております。 |
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対策 |
当社グループでは、強みであるグローバルな販売ネットワークを駆使して、当社グループの製品を幅広い用途、顧客に販売するなど、特定の顧客への依存度を下げる取り組みを実施しております。 また、5G/6G化の進展、AI技術の進歩、CASEと呼ばれる自動車産業の変革による需要機会は大きく、今後も継続して当事業の強化を図っていくとともに、通信用デバイス、モジュール、バッテリー事業等の拡大により収益の多角化を進め、特定の製品への依存度を下げる取り組みを実施しております。 |
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残余リスク |
上記の対策を講じたとしても、特定の取引先からの受注が減少したり、特定の取引先製品の販売が低迷した場合は、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。 また、コンデンサを代替しうる革新技術、製品の出現、強力な競合の台頭は、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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(4)M&A、業務提携、戦略的投資に関するリスク |
発生頻度 中 |
影響度 大 |
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リスク内容 |
当社グループは、事業ポートフォリオマネジメントを念頭に、新規技術の獲得、新たな事業領域への進出、既存事業の競争力強化などを目的としたM&A、業務提携、戦略的投資を必要に応じて実施しておりますが、市場環境や競争環境の影響を受ける潜在的なリスクが常に存在します。 |
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対策 |
当社グループは、M&A、業務提携、戦略的投資に際して、事業ポートフォリオ上での位置づけを明確化するとともに、対象となる市場や事業並びに相手先企業の経営状況などのリスク分析を行った上で判断しております。また、M&A等を実施後も定期的に事業統合や事業状況を検証し、必要に応じて戦略の軌道修正や組織再編を図り、事業ポートフォリオマネジメントの実行に取り組んでおります。 |
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残余リスク |
上記の対策を講じたとしても、市場環境や競争環境の著しい変化により適確にM&A、業務提携、戦略的投資を実施することができないというリスクは残ります。また、M&A等の実施後においても、市場環境などの著しい変化や、当事者間の利害の不一致、又は人材の流出などが発生した場合には、想定していた事業ポートフォリオマネジメントを実行することができず、投下資金の未回収や追加的な費用の発生、のれん及び長期性資産の減損損失などにより、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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③経営基盤リスク
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(1)情報セキュリティに関するリスク |
発生頻度 大 |
影響度 大 |
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リスク内容 |
近年、退職者による情報漏えい事件や標的型メール攻撃などが報道されているように、企業の保有する情報をターゲットとした内部不正やサイバーアタックによる情報漏洩、事業活動停止のリスクが高まっております。 また、個人情報に関する権利意識の高まりとともに、世界各国でGDPR(EU一般データ保護規則)をはじめ個人情報保護のための法令が検討、制定されており、個人情報の安全管理措置や漏えい事故の監督官庁への通報など、会社に求められる法令対応事項が増加し、違反した場合の罰則が厳罰化しております。 |
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対策 |
当社グループが持続的に成長を続けるためにも、技術情報や経営情報などの企業機密、会社で取り扱う個人情報、取引先・お客様やパートナーから提供いただいた情報などを守ることが大切であり、そのため国際標準(ISO27001)をベースにした情報セキュリティマネジメントを実施しております。具体的には、情報セキュリティ基本方針、情報セキュリティ管理規定、個人情報保護方針、個人データ保護グローバル規定などのルールを制定し、情報セキュリティと個人情報保護の施策を人的・技術的・物理的の三側面から、整備・運用しております。 まず人的側面では、情報を正しく取り扱えるよう、ルールを分かりやすく解説した「情報セキュリティガイドブック」の配付、情報セキュリティ意識を高める年次教育、フィッシングメール訓練、階層別社内研修などを実施しております。また、情報セキュリティ事故への対応体制を整備しております。 つぎに技術的側面では、マルウェア対策、システムへのアクセスコントロール、脆弱性診断と対応、情報端末や通信の監視、各種ログの収集、セキュリティ事故になりうるインシデントへの対応体制の構築、生産現場でのセキュリティ強化などを行い、日々変化するサイバー攻撃やリスクへの対応・対策を進めております。 そして物理的側面では、入出門管理、機密管理レベルに合わせたセキュリティゾーン設定とアクセスコントロールで社内外からの不正侵入を多重に防いでおります。 上記国際標準(ISO27001)をベースにした情報セキュリティマネジメントの取組みに加え、自動車業界において情報セキュリティの重要性が高まっていることから、ドイツ自動車工業会による情報セキュリティ評価である「TISAX(Trusted Information Security Assessment Exchange)」認証を本社含む主要な国内外拠点において取得しております。 |
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残余リスク |
上記対策を講じたとしても、想定した防御レベルを超える技術による不正アクセスや、予期せぬ不正使用があった場合には、情報の外部流出、検知されないままの情報改ざん、社内システムへの影響による事業活動停止などのリスクが残り、当社グループの社会的信用に影響を及ぼすのみならず、その対応のために多額の費用負担が発生し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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(2)公的規制とコンプライアンスに関するリスク |
発生頻度 小 |
影響度 大 |
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リスク内容 |
当社グループは、国内外において、商取引、独占禁止法、知的財産権、製造物責任、環境、労務、人権、租税等の法規制、事業投資の許認可、輸出入規制など、様々な公的規制の適用を受けて事業を行っております。これらの公的規制に違反した場合、監督官庁による処分、訴訟の提起、さらには事業活動の停止に至るリスクや企業ブランド価値の毀損、社会的信用の失墜等のリスクがあります。 |
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対策 |
当社グループでは、公的規制の対象領域ごとに主管する部門を決め、公的規制に対応した社内ルールを定めるなど、未然に違反を防止するための方策を講じ、適時にモニタリングを実施しております。 さらに、これらの取り組みに加え、当社ではコンプライアンス推進委員会を設け、法令遵守のみならず、役員・従業員が共有すべき倫理観、遵守すべき倫理規範等を「企業倫理規範・行動指針」として制定し、当社グループにおける行動指針の遵守並びに法令違反等の問題発生を全社的に予防するとともに、コンプライアンスの実効性を担保するため、コンプライアンス上の問題を報告する通報窓口を社内・社外に設けております。 |
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残余リスク |
上記対策を講じたとしても、グローバルに事業を展開するなかで、国や地域において、公的規制の新設・強化や想定外の適用等により、結果として当社グループが公的規制に抵触することになった場合には、事業活動に制約が生じたり、公的規制を遵守するための費用が増加したりするなど、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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(3)知的財産権に関するリスク |
発生頻度 中 |
影響度 中 |
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リスク内容 |
当社グループは、技術革新が著しく競合他社との競争が激しい電子部品業界に属していることから、他者の知的財産権を尊重しつつ、自社の技術開発を進めていく必要があります。他者の知的財産権の存在とその内容によっては、自社の技術開発やそれに基づく事業遂行が妨げられる可能性があります。特に自社の存在する事業領域についての情報が乏しい新規事業領域においては、その可能性が高まることが想定されます。 |
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対策 |
当社グループでは、材料から製品まで一貫生産体制を構築しており、材料開発、プロセス開発、製品開発、生産技術開発を行う中で、適切なタイミングで他者の知的財産権を調査し、必要に応じて設計回避等の対策を講じております。また研究開発の際に創出される発明等について、発明考案等取扱規定により適切に取り扱い、その発明等に基づく適切な知的財産の獲得・蓄積により、他社に対する牽制力を強化しています。 また、知的財産に関する階層・職能教育や知的財産に関する啓発フォーラムなどの様々な社内イベントを開催することにより、当社グループ従業員の知財マインドを醸成しております。 |
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残余リスク |
上記対策を講じたとしても、競合他社その他の第三者の知的財産権の取得及び活用動向次第では、当社グループの製品等が第三者の知的財産権を侵害しているとの主張を受けることで、技術開発や事業の方針を変更せざるを得なくなるなど、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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(4)税務に関するリスク |
発生頻度 中 |
影響度 中 |
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リスク内容 |
当社グループは、世界各国で販売や生産などの事業活動を行っており、各国税務当局から多額の追徴課税を課されるリスク、さらにそれに伴って発生する信用毀損リスク及び移転価格税制の課税による二重課税リスク等の税務リスクがあります。 |
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対策 |
当社グループでは、「グローバルタックスポリシー」に従い、早期に税務リスク情報を収集し、法令の立法趣旨に照らして税務処理を決定し、税務処理に不確実性が残った場合は、税務当局への事前照会や外部専門家への相談を行い不確実性の排除に努めております。また、税務専門組織を独立した組織として設置し、専門的知識と経験豊富な人材の確保・育成を行い、税務リスク極小化のための体制を整備しております。 |
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残余リスク |
上記対策を講じたとしても、近年のビジネスの拡大とグローバル化の進展に伴い、税務リスクが顕在化する可能性は高まっており、また、その金額的重要性も高まる傾向にあります。税務リスクが顕在化した場合は、法人税等の追加負担が発生し、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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(5)人材の採用・確保に関するリスク |
発生頻度 中 |
影響度 中 |
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リスク内容 |
当社グループは、材料から商品までの一貫生産を行うとともに、主要な生産設備を内作するなど技術の独自性を追求しておりますが、技術の高度化、技術革新が加速する今日、多様な技術分野において優れた専門性を有した人材の必要性がますます高まっております。 一方、各産業分野における技術革新の進展、とりわけエレクトロニクス分野の広がりにより、当社グループが必要とする多様な技術領域の人材ニーズの産業界全体における増大や日本国内の少子高齢化に伴う労働人口の減少など、優秀な人材の獲得は競争状態となっております。 なお、高度技術人材の獲得競争がグローバルで激化することを踏まえ、シニア層含めての技術領域及び競争力観点でノウハウを有する人材の定着確保も重要となっております。 |
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対策 |
当社グループでは、計画的な新卒採用に加え、ニーズに基づいた過年度卒の通年採用を実施しており、基盤領域であるエッジデバイス・ITインフラ・モビリティを中心とした事業機会に加え、挑戦領域である環境・ウェルネスにおける事業機会向け人材やDX(デジタルトランスフォーメーション)に必要な人材の採用強化を進めております。また、製造現場を支えるモノづくり人材の採用も強化しております。 制度面では、能力開発を支援する教育制度の拡充、専門系人材の適切なキャリアルートの設定、ワークライフバランスを支援する制度、さらには2024年4月から導入した65歳定年制の整備により、シニア層を含めた社員のモチベーションを高めることに努めています。加えて、多様な社員の能力が十分に発揮できるよう、適性を重視した配置や適切な処遇を行い、人材の定着と動機づけを行っております。 |
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残余リスク |
上記対策を講じたとしても、雇用環境の変化などにより人材の獲得競争が激化し、当社グループが求める人材の確保やその定着・育成が計画通りに進まなかった場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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(6)人権に関するリスク |
発生頻度 中 |
影響度 中 |
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リスク内容 |
当社グループは、国内外より資材を調達し、製品を生産しており、それらの製品は世界中のお客様のさまざまな電子機器に組み込まれて使用されています。この資材調達から製品の利用・リサイクルに至るバリューチェーン全体において、当社グループ自身や取引を通じて人権侵害を引き起こす、または助長するおそれがあります。これらの人権リスクが顕在化した場合には、訴訟や行政制裁などの法的リスクのみならず、人材流出や労働争議、企業ブランドの毀損、そして社会的信用の失墜といった重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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対策 |
当社グループは、企業として人権尊重への強いコミットメントを明確に示し、人権デュー・ディリジェンス体制を構築して継続的に運用しております。また、バリューチェーン全体で人権が守られるよう、ビジネスパートナーをはじめ関係者に当社グループの人権方針および同等の方針を採用するよう働きかけ、協働して人権尊重を推進するとともに、すべてのステークホルダーが不利益を恐れずに懸念を申し立てられるよう社内外に複数の相談窓口を設置し、外部専門家の知見を活用した迅速かつ適切な苦情対応体制を整備しております。 |
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残余リスク |
上記対策を講じたとしても、トレーサビリティ強化の過程で新たな人権リスクが顕在化した場合には、当社グループの業績および財務状況に重大な影響を与える可能性があります。 |
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④事業遂行リスク
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(1)新技術・製品の開発に関するリスク |
発生頻度 小 |
影響度 大 |
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リスク内容 |
当社グループが属する電子部品業界は、技術革新のスピードが加速し、製品のライフサイクルが短期化しており、将来にわたって当社グループの売上収益を維持・拡大していくためには、革新的な新製品の開発を適切なタイミングで実施していくことが重要となっております。 |
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対策 |
当社グループでは、新技術や新製品開発に必要な研究開発投資を継続的かつ積極的に行っており、売上収益に占める研究開発費の割合は7~8%で電子部品業界の中でも比較的高い水準にあります。 研究開発のテーマについては、将来の市場、製品及び技術動向の予測に基づいて選定し、研究開発活動の各段階において研究開発成果の評価を行うなど、その実効性と効率性の向上に努めております。 |
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残余リスク |
上記対策を講じたとしても、市場、製品動向の変化や当社グループの技術を代替しうる技術革新が予測を超えて起こった場合には、期待した製品需要の減退、開発期間の長期化や開発費用の増大を招き、当社グループの業績及び財政状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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(2)調達に関するリスク |
発生頻度 中 |
影響度 中 |
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リスク内容 |
資材調達におけるリスクとしては、仕入先の事業運営上のトラブル、治安の悪化、感染症の蔓延、災害(人災・自然災害)、資源の枯渇等の発生に伴う資材品の供給停止や価格高騰が想定されます。 |
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対策 |
当社グループは、サプライチェーンの複線化、在庫政策に基づく適正在庫の確保、仕入先の事業継続計画(BCP)体制の点検及び対応施策の実行等を通じてそれらのリスクを低減しております。 また、資材仕入先の生産場所をデータベース化し、災害発生時に速やかに仕入先と連携できるシステムを構築しており、災害発生時の初動対応フローを策定し、迅速な復旧対応ができる体制を整えております。 |
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残余リスク |
上記対策を講じたとしても、想定を超える規模・期間の災害等が発生した場合、資材の調達が困難となり当社グループの業績及び財政状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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(3)品質に関するリスク |
発生頻度 中 |
影響度 大 |
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リスク内容 |
当社グループは、各種エレクトロニクス製品を生産する電子機器メーカーに対して電子部品を供給することを主たる事業としております。事業を取り巻く環境は日々変化しており、特に環境負荷物質に関する法規制は厳格化され、それら関連法規制を遵守した上での品質保証体制整備が求められています。また当社グループのモビリティやITインフラ向けの売上は増加しており、重大な品質問題が起こった場合の業績に与える影響度も増大しております。 |
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対策 |
当社グループは、ISO・IATFをはじめとする、各種品質マネジメント規格に準拠した品質保証活動を行っております。 製品の生産に関しては、関連法規制の調査/周知徹底・設計審査・製品アセスメント・内部品質監査・工程管理・各種評価試験・取引先など協力者との改善活動・M&A先や業務提携先との仕組みの融合等を通じ、開発から出荷に至るサプライチェーンを含めた全ての段階における品質保証体制整備に努めております。さらに各種品質イベント活動を通じて品質意識の向上・コンプライアンス遵守風土の醸成に努めており、品質基本方針として全社に広く周知しております。 |
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残余リスク |
上記対策を講じたとしても、現時点での技術、管理レベルを超える事故が発生する可能性は皆無ではなく、品質に関わる重大な問題が起こった場合には、多額の損害賠償金の支払や売上の減少又は当社グループ製品に対する信頼の低下等により、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
①経営成績の概要
当連結会計年度の世界の経済情勢は、中東情勢の緊迫化や米国の政策動向等、先行き不透明な状況が続くものの、緩やかな回復基調で推移しました。米国では、底堅い雇用・所得環境を背景とした個人消費に支えられ景気は堅調に推移しました。欧州では、ドイツを中心に製造業の低迷が続いているものの、インフレ率の低下や所得環境の改善による消費者マインドの回復もあり、底堅く推移しました。中国では、不動産市況の落ち込みの継続や輸出の弱さが景気の下押し要因となり、景気の回復は力強さを欠いていますが、景気刺激策や春節の影響もあり内需を中心に持ち直しの動きがみられました。
当社グループが属するエレクトロニクス市場の部品需要は、AIサーバー等のITインフラ投資の拡大を背景にコンピュータ向けで増加しました。
そのような中、当連結会計年度の売上収益は、表面波フィルタやコネクティビティモジュールがスマートフォン向けで減少しました。一方で、コンデンサがコンピュータやモビリティ向けで、樹脂多層基板やインダクタがスマートフォン向けで増加しました。その結果、為替変動(前連結会計年度比7円95銭の円安)の影響はありましたが、前連結会計年度比6.3%増の1,743,352百万円となりました。
利益につきましては、製品価格の値下がりや固定費の増加といった減益要因はありましたが、操業度の回復やコストダウンなどの増益要因により、営業利益は前連結会計年度比29.8%増の279,702百万円、税引前当期利益は同27.2%増の304,404百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同29.3%増の233,818百万円となりました。
当連結会計年度のROIC(Return On Invested Capital)(税引前)は営業利益が大きく増加したことに加え、棚卸資産などの投下資本が減少したことにより、前連結会計年度比3.0ポイント増の13.0%となりました。
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前連結会計年度 (2023年4月1日~2024年3月31日) |
当連結会計年度 (2024年4月1日~2025年3月31日) |
増 減 |
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金額 (百万円) |
百分比 (%) |
金額 (百万円) |
百分比 (%) |
金額 (百万円) |
増減率 (%) |
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売上収益 |
1,640,158 |
100.0 |
1,743,352 |
100.0 |
103,194 |
6.3 |
|
営業利益 |
215,447 |
13.1 |
279,702 |
16.0 |
64,255 |
29.8 |
|
税引前当期利益 |
239,404 |
14.6 |
304,404 |
17.5 |
65,000 |
27.2 |
|
親会社の所有者に帰属する 当期利益 |
180,838 |
11.0 |
233,818 |
13.4 |
52,980 |
29.3 |
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ROIC(税引前) (%) |
10.0 |
- |
13.0 |
- |
3.0 |
- |
|
対米ドル平均為替レート(円) |
144.62 |
- |
152.57 |
- |
7.95 |
- |
(注)ROIC(税引前)= 営業利益 / 期首・期末平均投下資本(有形固定資産・使用権資産・のれん・
無形資産+棚卸資産+営業債権-営業債務)
(参考)事業別セグメントROIC(税引前)
コンポーネント 2024年3月期 19.0% 2025年3月期 21.2%
デバイス・モジュール 2024年3月期 △ 1.5% 2025年3月期 1.2%
事業別セグメントについては、コンポーネントは売上収益が1,043,956百万円(前連結会計年度比10.8%増)で営業利益が275,150百万円(同17.5%増)、デバイス・モジュールは売上収益が697,176百万円(同0.3%増)で営業利益9,995百万円(前連結会計年度は営業損失12,999百万円)、その他は売上収益が67,274百万円(同0.3%減)で営業損失5,443百万円(前連結会計年度は営業損失5,735百万円)となりました。
②製品又は事業別の売上収益概況
当連結会計年度の製品又は事業別の売上収益を前連結会計年度と比較した概況は、以下のとおりであります。
〔コンデンサ〕
この区分には、積層セラミックコンデンサなどが含まれます。
当連結会計年度は、積層セラミックコンデンサがコンピュータやモビリティ向けで増加しました。
その結果、コンデンサの売上収益は前連結会計年度に比べ10.4%増の831,845百万円となりました。
〔インダクタ・EMIフィルタ〕
この区分には、インダクタ、EMI除去フィルタが含まれます。
当連結会計年度は、インダクタがスマートフォン、コンピュータ、モビリティ向けで、EMI除去フィルタがモビリティ向けで増加しました。
その結果、インダクタ・EMIフィルタの売上収益は前連結会計年度に比べ11.7%増の201,273百万円となりました。
〔高周波・通信〕
この区分には、高周波モジュール、樹脂多層基板、コネクティビティモジュール、表面波フィルタなどが含まれます。
当連結会計年度は、表面波フィルタやコネクティビティモジュールがスマートフォン向けで減少しましたが、樹脂多層基板がスマートフォン向けで、高周波モジュールがPC向けで増加しました。
その結果、高周波・通信の売上収益は前連結会計年度に比べ0.8%増の443,602百万円となりました。
〔エナジー・パワー〕
この区分には、リチウムイオン二次電池、電源モジュールが含まれます。
当連結会計年度は、電源モジュールが産業機器向けで減少しました。また、リチウムイオン二次電池がサーバー向けで増加しましたが、ゲーム機やパワーツール向けで減少しました。
その結果、エナジー・パワーの売上収益は前連結会計年度に比べ5.3%減の155,741百万円となりました。
〔機能デバイス〕
この区分には、センサ、タイミングデバイスなどが含まれます。
当連結会計年度は、アクチュエータやセンサがコンピュータ向けで増加しました。
その結果、機能デバイスの売上収益は前連結会計年度に比べ7.9%増の97,822百万円となりました。
③用途別の売上収益概況
当連結会計年度の用途別の売上収益を前連結会計年度と比較した概況は、以下のとおりであります。
〔通信〕
当連結会計年度は、スマートフォン向けで樹脂多層基板が増加しましたが、表面波フィルタやコネクティビティモジュールが減少しました。
その結果、通信用途の売上収益は前連結会計年度に比べ0.3%減の674,188百万円となりました。
〔モビリティ〕
当連結会計年度は、自動車向けで積層セラミックコンデンサ、EMI除去フィルタ、インダクタが増加しました。
その結果、モビリティ用途の売上収益は前連結会計年度に比べ4.7%増の453,081百万円となりました。
〔コンピュータ〕
当連結会計年度は、サーバー向けで積層セラミックコンデンサやリチウムイオン二次電池が、PC向けで積層セラミックコンデンサや高周波モジュールが増加しました。
その結果、コンピュータ用途の売上収益は前連結会計年度に比べ38.8%増の281,942百万円となりました。
〔家電〕
当連結会計年度は、ゲーム機やパワーツール向けでリチウムイオン二次電池が減少しましたが、AV機器向けで積層セラミックコンデンサが増加しました。
その結果、家電用途の売上収益は前連結会計年度に比べ1.3%増の150,392百万円となりました。
〔産業・その他〕
当連結会計年度は、産業機器向けで電源モジュールが減少しましたが、代理店向けで積層セラミックコンデンサが増加しました。
その結果、産業・その他用途の売上収益は前連結会計年度に比べ2.4%増の183,749百万円となりました。
④生産、受注及び販売の実績
イ)生産実績
当連結会計年度のセグメント別の生産実績は、下表のとおりであります。
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生産実績 (2024年4月1日~2025年3月31日) |
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金額(百万円) |
構成比(%) |
前連結会計 年度比(%) |
||
|
|
コンデンサ |
850,019 |
48.9 |
22.2 |
|
|
インダクタ・EMIフィルタ |
207,499 |
11.9 |
24.7 |
|
|
コンポーネント |
1,057,518 |
60.8 |
22.7 |
|
|
高周波・通信 |
434,318 |
25.0 |
4.6 |
|
|
エナジー・パワー |
140,341 |
8.1 |
6.4 |
|
|
機能デバイス |
93,338 |
5.4 |
5.3 |
|
|
デバイス・モジュール |
667,997 |
38.5 |
5.1 |
|
|
その他 |
12,016 |
0.7 |
△0.0 |
|
|
計 |
1,737,531 |
100.0 |
15.1 |
(注)1.金額は、販売価格で表示しております。
2.セグメント間取引については、相殺消去しております。
3.以下のセグメント別諸表については、主たる事業である電子部品並びにその関連製品の生産、受注及び販売の実績を記載しております。
ロ)受注実績
当連結会計年度のセグメント別の受注高及び受注残高は、下表のとおりであります。
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受注高 (2024年4月1日~2025年3月31日) |
受注残高 (2025年3月31日現在) |
|||||
|
金額 (百万円) |
構成比 (%) |
前連結会 計年度比 (%) |
金額 (百万円) |
構成比 (%) |
前連結会計 年度末比 (%) |
||
|
|
コンデンサ |
832,684 |
48.4 |
9.7 |
142,007 |
49.4 |
0.6 |
|
|
インダクタ・EMIフィルタ |
203,048 |
11.8 |
12.2 |
31,457 |
10.9 |
6.0 |
|
|
コンポーネント |
1,035,732 |
60.2 |
10.2 |
173,464 |
60.3 |
1.5 |
|
|
高周波・通信 |
433,295 |
25.2 |
2.2 |
43,696 |
15.2 |
△19.1 |
|
|
エナジー・パワー |
143,010 |
8.3 |
△4.0 |
49,180 |
17.1 |
△20.6 |
|
|
機能デバイス |
95,763 |
5.6 |
10.2 |
15,939 |
5.6 |
△11.4 |
|
|
デバイス・モジュール |
672,068 |
39.1 |
1.9 |
108,815 |
37.9 |
△18.7 |
|
|
その他 |
12,900 |
0.7 |
17.9 |
5,216 |
1.8 |
△3.1 |
|
|
計 |
1,720,700 |
100.0 |
6.8 |
287,495 |
100.0 |
△7.3 |
(注)1.金額は、販売価格で表示しております。
2.セグメント間取引については、相殺消去しております。
ハ)販売実績
当連結会計年度のセグメント別の販売実績は、下表のとおりであります。
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販売実績 (2024年4月1日~2025年3月31日) |
|||
|
金額(百万円) |
構成比(%) |
前連結会計 年度比(%) |
||
|
|
コンデンサ |
831,845 |
47.7 |
10.4 |
|
|
インダクタ・EMIフィルタ |
201,273 |
11.5 |
11.7 |
|
|
コンポーネント |
1,033,118 |
59.2 |
10.6 |
|
|
高周波・通信 |
443,602 |
25.4 |
0.8 |
|
|
エナジー・パワー |
155,741 |
8.9 |
△5.3 |
|
|
機能デバイス |
97,822 |
5.6 |
7.9 |
|
|
デバイス・モジュール |
697,165 |
39.9 |
0.3 |
|
|
その他 |
13,069 |
0.9 |
17.2 |
|
|
計 |
1,743,352 |
100.0 |
6.3 |
(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。
ニ)用途別販売実績
当連結会計年度の用途別の販売実績は、下表のとおりであります。
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販売実績 (2024年4月1日~2025年3月31日) |
|||
|
金額(百万円) |
構成比(%) |
前連結会計 年度比(%) |
||
|
|
通信 |
674,188 |
38.7 |
△0.3 |
|
|
モビリティ |
453,081 |
26.0 |
4.7 |
|
|
コンピュータ |
281,942 |
16.2 |
38.8 |
|
|
家電 |
150,392 |
8.6 |
1.3 |
|
|
産業・その他 |
183,749 |
10.5 |
2.4 |
|
|
計 |
1,743,352 |
100.0 |
6.3 |
(注)当社推計値に基づいております。
ホ)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
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相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
Hon Hai Technology Group |
166,541 |
10.2 |
162,348 |
9.3 |
(2)財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、その他の金融資産や繰延税金資産が増加しましたが、棚卸資産やその他の非流動資産の減少により、前連結会計年度末に比べ9,701百万円減少し、3,028,194百万円となりました。
負債合計は、主に社債及び借入金やその他の金融負債の減少により、前連結会計年度末に比べ34,067百万円減少し、448,219百万円となりました。
資本合計は、資本剰余金やその他の資本の構成要素は減少しましたが、利益剰余金の増加により、前連結会計年度末に比べ24,366百万円増加し、2,579,975百万円となりました。親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末に比べ1.1ポイント上昇の85.2%となりました。
(3)キャッシュ・フロー
①キャッシュ・フローの状況
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、451,905百万円のキャッシュ・イン(前年同期比37,732百万円の収入減少)となりました。
これは、主にキャッシュ・フローの源泉となる当期利益が232,973百万円、減価償却費及び償却費が173,335百万円となったことによるものです。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、208,070百万円のキャッシュ・アウト(前年同期比6,499百万円の支出増加)となりました。
これは、主に生産能力増強や生産棟の建設を中心とした有形固定資産の取得による支出が182,936百万円となったことによるものです。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、242,733百万円のキャッシュ・アウト(前年同期比77,412百万円の支出増加)となりました。
これは、主に配当金の支払額が101,581百万円、自己株式の取得による支出が80,006百万円、社債の償還による支出が50,000百万円となったことによるものです。
②資本の財源及び資金の流動性
イ)財務戦略と経営資源の配分に関する考え方
当社グループは、健全な財務体質と高い資本効率を両立することを目指し、市場環境・競争環境に応じた最適な経営資源配分を行ってまいります。
財務体質については、事業環境の変化に機敏に対応し、持続的な利益成長を達成するとともに、厳しい環境下においても経営の安定を維持し、金融市場の市況悪化等のリスクへ備えるため自己資本の充実に努めております。また、信用格付は「AA+(信用力は極めて高く、優れた要素がある)」(格付投資情報センターによる)を取得し、資金調達が必要な場合に円滑かつ低コストの調達を可能としております。
経営資源の配分につきましては、「中期方針2027」に記載のキャピタル・アロケーション方針に基づき、資本効率と成長性を重視した投資と株主還元を行ってまいります。
資本効率については、継続的な資本効率の改善を目的として2027年度のROIC(税引後)12%以上を目標値として設定しております。また、資本コストを投資の意思決定と事業評価に反映しており、安定的にROICが資本コストを上回る構造を維持しております。なお、当連結会計年度末における当社グループの資本コスト(WACC)は7.4%(当社推計値)となっております。
株主還元については、長期的な企業価値の拡大と企業体質の強化を図りながら、2027年度を目標にDOE(親会社所有者帰属持分配当率)5%に引き上げることを実現することといたします。また、自己株式の取得につきましても株主還元の手段として、資本効率の改善等を目的として適宜実施することといたします。
ロ)資金調達と手許流動性
当社グループは、設備投資及びその他の事業資金については、自らの事業活動により獲得した内部資金で対応することを基本方針としておりますが、事業の成長に向けた投資や運転資金のために資金需要が生ずる場合には、時々の金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部から調達することとしており、銀行からの借入及び国内普通社債発行による資金調達を適宜実施しております。健全な財務体質を維持し、また主要な取引先金融機関と良好な関係を構築しており、今後の事業資金の調達に関して問題はないと認識しております。
完全子会社の資金需要に対しては、原則として銀行など外部からの資金調達を行わず、当社及び関係会社からのグループファイナンスにより対応しており、資金調達の一元化と資金効率の向上を図っております。
また、当社グループは、事業活動による資金需要への機動的な対応と金融市場の市況悪化等のリスクを最小限に抑えるため、月平均売上収益2.5か月~3.5か月を必要な資金流動性の水準としております。事業の状況によりこの水準を一時的に超過する場合もありますが、キャピタル・アロケーション方針に基づく資源配分へ資金の充当を進めることにより適正化を図ってまいります。当連結会計年度末における現金及び現金同等物、短期投資、有価証券の流動性資金の残高は666,522百万円となり月平均売上収益4.6か月となっております。事業投資の原資として手許資金を保有しているため、投機目的の運用は行わず、信用リスクが小さいと考えられる銀行への預金など、安全性の高い金融商品に分散して資金を保有しております。なお、当連結会計年度末における借入金等の有利子負債の残高は2,437百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は625,148百万円となっております。
(4)重要性がある会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。当連結会計年度において、当社グループにおいて重要性があると認識している会計方針及び見積りは、連結財務諸表注記の「3.重要性がある会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループは、「Innovator in Electronics」として、新たな価値を創造し続けるために、研究開発活動を推進しています。材料から製品までの一貫生産体制を構築しており、材料技術、生産技術、商品設計技術、分析評価技術まで自社内で独自に開発しております。これら技術をプラットフォーム化し、コア技術に磨きをかけることで、さらなる差異化技術、そしてイノベーションを生み出してまいります。今後も新しい価値を生み出し続けるために、外部コンソーシアムや大学、企業等との積極的な協業を推進し、イノベーションの促進に努めております。また、基盤領域である通信(エッジデバイス、ITインフラ)、モビリティにおいては、6GおよびAIの進化・普及・拡大や自動車の電動化・電装化などを背景とした成長ステージにおいて、競争力のある独自製品の開発を行っております。さらに、挑戦領域である環境やウェルネスにおいては、社会課題解決に向けて新規事業創出を目指しております。当社グループは研究開発活動を通じ、新たな価値創造に挑戦し、社会価値と経済価値の好循環を生み出してまいります。
コンポーネント事業分野では、小型化、大容量化、高信頼性をキーワードに、積層セラミックコンデンサ、インダクタ、EMI除去フィルタ等の開発を推進しました。今年度、世界最小016008Mサイズ(0.16mm×0.08mm)の積層セラミックコンデンサを開発しました。加えて、世界最小クラス016008サイズ(0.16mm×0.08mm)のチップインダクタの開発に着手し、試作に成功しました。今後も、業界をリードする革新的な製品や技術を提供して、電子機器の小型化・多様化および製品を通した環境への貢献に取り組みます。
デバイス・モジュール事業分野では、小型化、高性能化、低消費電力化をキーワードに、表面波フィルタ、高周波モジュール、樹脂多層基板、コネクティビティモジュール、リチウムイオン二次電池、センサ等の開発を推進しました。今年度、通信市場向けにWi-Fi 6、Bluetooth® Low Energy、Threadの3種類の規格に対応した世界最小サイズの通信モジュールを開発、自動運転市場向けに世界最高水準の同期機能付き高精度6軸慣性力センサの開発を行いました。また、レーダーの信号処理技術を保有するSensoride 社を買収しました。今後も市場ニーズに対応した製品開発に取り組み、事業成長を目指します。
新規事業創出に向けて、長期構想「Vision 2030」で掲げる5つの事業機会(エッジデバイス・ITインフラ・モビリティ・環境・ウェルネス)において、新技術・新商品、並びに当社グループの事業を幅広く支える基盤技術+事業開発の開発を行っております。今年度、コンデンサやインダクタを内蔵・一体化し、高性能半導体や電源供給ラインの省スペース化、省電力化、高機能化を可能とする製品「iPaS™」が、CEATEC2024において「CEATEC AWARD 2024」イノベーション部門賞を受賞しました。また、当社工場において再生可能エネルギー100%に貢献した、人工知能(AI)によって太陽光発電や蓄電池のシステムを最適制御する統合型再エネ制御ソリューション「efinnos」の外販を開始しました。今後も幅広い領域でイノベーションを創出し、社会課題の解決に貢献してまいります。
当社グループは、国内外の拠点で研究開発を行っていますが、新たな研究開発拠点として福井県越前たけふ駅前に「セラミックコンデンサ研究開発センター」ならびに滋賀県守山駅前に「守山イノベーションセンター」を2026年に設立いたします。また、オープンイノベーションの取り組みとして、共創プロジェクト「KUMIHIMO Tech Camp with Murata」を海外(ブルガリア)で初めて開催いたしました。新拠点と本社、みなとみらいイノベーションセンター、野洲事業所、横浜事業所などの企画・研究開発拠点との連携を強化するとともに、社外との技術交流や協働開発によるオープンイノベーションを促進することで、業界をリードする革新的な製品や技術を提供してまいります。
最近2連結会計年度における各セグメント別の研究開発活動に要した費用は、下表のとおりであります。
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前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
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金額(百万円) |
金額(百万円) |
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コンポーネント |
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デバイス・モジュール |
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その他 |
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計 |
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