第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、以下の基本理念と行動指針からなる企業理念に沿って経営を行ってまいります。

基本理念

私たち古河電池は、常に挑戦者であり続けることをスローガンとし、公正と誠実をモットーに、株主、従業員、お客様、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーの期待に応えるため、永年にわたり培って来た技術力を核にして、絶え間ない革新を図り、持続的な成長と中長期的企業価値の向上を目指し、真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献します。

行動指針

 私たちは挑戦者である。

・常に高い倫理観をもち、公正、誠実に行動します。

・あらゆる業務において革新、改革、改善に挑戦します。

・現場・現物・現実を直視し、ものごとの本質を捉えます。

・主体的に考え、互いに協力して迅速に行動し、粘り強くやり遂げます。

・組織を超えて対話を重ね、高い目標に向けて相互研鑽に努めます。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループでは、以下の経営指標を目標として掲げております。

指標

2025年3月期

連結業績

2026年3月期

連結業績目標

売上高

(百万円)

84,818

84,000

営業利益

(百万円)

5,500

4,600

営業利益率

(%)

6.5%

5.5%

 

上記経営指標は以下の前提条件に基づいております。

 

2025年3月期

連結業績

2026年3月期

連結業績目標

鉛LME価格

(US$/t)

2,073

2,170

鉛建値

(千円/t)

376

380

為替

(円/US$)

154

143

※2022年5月12日発表の「2022~2025年度 中期経営計画の策定に関するお知らせ」で掲げている目標値に対し鉛の価格や為替等といった前提条件が大きく変動したため、計画の最終年度である2026年3月期につきましては、上記経営指標を目標と定めております

 

(3)中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題

1.中長期的な会社の経営戦略について

当社は中長期的にサステナブル視点で事業を強化・拡大し、お客様や社会から期待に応えられる会社となるべく、(1) SDGsの目標達成に貢献するグローバル戦略の推進、(2) 基幹事業である鉛電池での収益向上、(3) 次世代電池を含む新製品開発と新しいソリューションビジネスの立上げ、(4) サステナブル経営のための人材育成による革新力の蓄積、を基本方針と定めております。

具体的な施策としてソリューションビジネスであるESS(Energy Storage System)事業等新製品の開発・新規事業の立上げや、海外パートナーシップの拡大による事業展開に注力してまいります。

詳細は、2022年5月12日発表の「2022~2025年度 中期経営計画の策定に関するお知らせ」をご確認ください。

 

 

 

 

2.対処すべき課題について

今後の見通しについては、米国の相互関税が世界経済に大きなインパクトを与えるなど、当社グループを取り巻く環境は不透明な状況が続くと予想されます。また、中長期的には、再生可能エネルギー等拡大が見込まれる市場はあるものの、主力事業である国内鉛蓄電池の成長率は鈍化が見込まれております。そのような状況下、生産の効率化等で既存事業の競争力を強めるとともに、主に新興国市場での海外事業の拡大や、新製品や新規事業の立上げ、またそれらを達成するための人材育成を重要な課題ととらえ、施策を行ってまいります。

 

事業別の対処すべき課題は、以下のとおりであります。

自動車事業については、自動車産業が国内においては回復傾向にあるものの、東南アジア市場を中心とした自動車ローン審査の厳格化、並びに中国製EVの拡大により、鉛蓄電池需要の大きな拡大は期待できないと予想されます。一方で先進国市場を中心に、引き続き電動化・自動化・サ-ビス化といった業界の構造再編が進むと見ています。そのような状況下、それぞれの市場において競争力のある製品や品質・サ-ビスを提供すると共に、新たな海外市場の攻略やインドネシア事業の収益力の強化を重要な課題ととらえ、施策を行ってまいります。

産業事業については、再生可能エネルギー関連市場やデータセンター、スマートグリッド向け等の需要の拡大が引き続き見込まれるものの、価格競争が一層激化すると予想されます。そのような状況下、海外市場への展開、また電池の特徴を活かしたソリュ-ションビジネスにつながるESS (Energy Storage System) 事業の立ち上げを進めることを重要な課題ととらえ、実現してまいります。

これらの取り組みへの挑戦を通して、古河電池グループが持てる力を最大化し、市場軸・製品軸両方の事業領域を拡大させていくことで、持続的な成長と中長期的企業価値の向上を目指すとともに、ESG経営を推進することで真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献いたします。そして、より一層必要とされ、親しまれる企業を目指してまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社は、事業活動におけるCO₂排出量の削減活動を進めておりますが、気候変動に関するリスク・機会が経営上の重要課題であることも認識し、TCFD提言に賛同しました。今後も蓄電池や電源製品の製造・販売、更にESS事業も新たな取組みとして加え、真に豊かで持続可能な社会の実現に向け、TCFDを活用した気候変動対策を通して地球環境の保護に努めると共に、ステークホルダーの皆様との信頼関係を強化して企業価値の向上につなげてまいります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社は、気候変動に関する問題を重要課題の一つとして位置づけています。代表取締役社長が委員長を務めるサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ及びマテリアリティに関する重要事項を審議しています。そして、審議した内容を取締役会に定期的に報告しています。

 なお、サステナビリティ委員会のもとにはTCFDに関するワーキンググループを設置し、気候変動に関する取組みを管理・推進しています。

 

(2)戦略

 当社は、気候変動に関するリスクと機会を「移行リスク」「物理リスク」「機会」の区分でシナリオ特定と評価を実施し、IPCC/RCP8.5(平均気温4℃以上上昇)とIPCC/SR1.5(平均気温上昇1.5℃以内)のシナリオとその他の社内外情報を基に事業影響や顕在可能性等を評価検討しました。

区分

分類

時期

事業への影響

対応

顕在可能性と

影響

移行

リスク

規制

短期

カーボンプライシングの導入・拡大による事業収益への影響

・太陽光発電設備を増設し使用電力の一部をグリーン電力(再生可能エネルギー)に変更することによる、CO₂排出量の抑制

1.5℃シナリオ

顕在可能性:高

影響:大

 

4℃シナリオ

顕在可能性:低

影響:小

テクノ

ロジー

・市場

中期

サステナブル対応のための設備導入コストの増加による事業収益への影響

・中長期的に収益へと繋がる設備の導入、並びに工場の再構築

・電池製品の長寿命化、ESSの提供

物理

リスク

慢性

長期

平均気温上昇に伴う職場環境悪化による、職場環境の維持のためのエネルギーコストの増加

・グリーン電力や低炭素設備を使用することによる、気温上昇に対応した職場環境への改善

1.5℃シナリオ

顕在可能性:中

影響:小

 

4℃シナリオ

顕在可能性:高

影響:大

急性

気候変動により異常気象が増加し、被害甚大化で調達先サプライチェーン寸断等に起因する生産停止による損失の拡大

・調達先サプライチェーン寸断対策のための調達先の複数化

・海外拠点のサプライチェーンにおいては、国外からの調達先確保の検討

機会

製品と

サービス

中期

再生可能エネルギー普及拡大による、電力安定供給に貢献できる高効率な蓄電池や蓄電システムの需要増加

・蓄電システムの外注生産検討も含めた生産性の向上

・汎用性の高いESS製品の事業化

1.5℃シナリオ

顕在可能性:高

影響:大

 

4℃シナリオ

顕在可能性:低

影響:小

 

 また、当社における、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針として、人材は企業の持続的な発展や経営戦略の実現に欠かせない要素であると考え、社員一人ひとりの安全と心身の健康を守ることを最優先とし、さらに、個人が自身の能力を最適に発揮し、課題の解決にむけた挑戦意欲を高めることを目指しています。この前提のもと「人権の尊重」・「ダイバーシティの推進」・「人材育成の推進」を経営のマテリアリティ(重要課題)として掲げ、多様な人材がやりがいを持って活躍できる環境や制度の整備に注力しています。

 

(3)リスク管理

 当社は、リスクを「当社グループの事業目的の達成に重要な影響を与え得る損失の危険を伴う不確定要素」と定義しています。気候変動に関する事業活動におけるリスクを気候変動対策推進ワーキンググループで検討し、サステナビリティ委員会での審議、取締役会での承認を経て、リスクマネジメント委員会と連携してリスクを管理しています。

 

 

(4)指標及び目標

 当社は、気候変動に関する指標を温室効果ガス排出量(事業活動における温室効果ガス排出量(Scope1,2))と定め「2030年における国内事業場のGHG排出量の削減目標を2021年度比42%減」に目標設定しました。

 脱炭素社会実現へ貢献するため、CO₂削減の中期計画を策定し、グリーン電力導入や低炭素設備導入などの取組みを実施し、2030年度におけるGHG排出量削減目標の達成に向け、排出量削減を含む省エネ活動を推進してまいります。

 また、当社は、上記(2)戦略において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、2025年度までに「人権の尊重」では「国内グループ会社を含む人権デュー・デリジェンスの実施」、「ダイバーシティの推進」では「女性管理職比率5%以上」、「人材育成の推進」では「階層別研修の対象者の参加率100%」とする目標の達成に向けた活動を推進してまいります。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)為替相場の変動による影響について

①リスクの内容および経営成績、財政状態に与える影響内容

当社グループの取引には外貨による輸出・輸入が含まれており、為替相場の変動が当社グループの売上高、売上原価や営業債権、営業債務等に影響を与える可能性があります。

②顕在化の可能性および発生時期

市場動向によるため顕在化する可能性は高く、また時期については常に発生するリスクが考えられます。

③対応策

外貨での取引を行う場合で取引開始から決済まで期間が長期に及ぶなど、為替変動リスクが高い取引については、為替予約取引を行い、為替変動リスクを回避いたします。

 

(2)主要製品に使用される原材料の価格変動について

①リスクの内容および経営成績、財政状態に与える影響内容

当社グループの主要製品に使用される原材料(鉛・ニッケル)は、その価格変動率が大きく、当社グループの売上高、売上原価や営業債権、営業債務等に影響を与える可能性があります。

②顕在化の可能性および発生時期

市場動向によるため顕在化する可能性は高く、また時期については常に発生するリスクが考えられます。

③対応策

原材料の購入のうち一部についてはコモディティスワップ取引を行い、価格変動リスクを回避しております。

 

(3)海外活動に潜在するリスクについて

①リスクの内容および経営成績、財政状態に与える影響内容

当社グループは、現在海外で生産・販売を行っておりますが、地域によっては政治的及び社会的リスクがあり、当社グループの売上高、売上原価および特別損失や営業債権、営業債務等に影響を与える可能性があります。

②顕在化の可能性および発生時期

一部地域については過去にクーデターが発生しており、今後も発生する可能性は高いと想定されます。また時期については常に発生するリスクが考えられます。

③対応策

グループBCP(事業継続計画)を的確に構築・実行して業務中断に伴うリスクを最小限に抑えるため、平時から準備しております。

なお、ウクライナ情勢については、経済制裁や各国規制等による営業活動への影響はあるものの当社グループの業績及び財政状態に与える影響は軽微と見込んでおります。

 

(4)債権の回収リスクについて

①リスクの内容および経営成績、財政状態に与える影響内容

当社グループは、取引先の業績悪化等により特に取引額の大きい得意先の信用状況が悪化した場合、当社グループの一般管理費や営業債権等に影響を与える可能性があります。

②顕在化の可能性および発生時期

与信管理の徹底により顕在化の可能性は低いと想定しておりますが、景気動向等により急激に可能性が高まる事も想定しております。また時期については常に発生するリスクが考えられます。

③対応策

取引先の信用リスクに対して細心の注意を払い与信管理体制を強化しております。

 

(5)大規模災害等の影響について

①リスクの内容および経営成績、財政状態に与える影響内容

当社グループの製造拠点は、国内では栃木県、福島県にあり、海外ではタイ、インドネシアにあります。東日本大震災では、国内の両事業所が少なからず被害を受け、タイの大洪水では、取引先企業の操業停止の影響を受け一時操業停止となりました。今後、地震や風水害などの自然災害、伝染病・感染症の流行による影響を受け、部品供給が不可能、あるいは遅延する恐れがあり、当社グループの売上高、売上原価および特別損失や営業債権、営業債務等に影響を与える可能性があります。

②顕在化の可能性および発生時期

今後も大規模な災害や感染症の流行等が発生する可能性は高く、また時期については常に発生するリスクが考えられます。

③対応策

BCPを的確に構築・実行して業務中断に伴うリスクを最小限に抑えるため、平時から準備しております。

 

(6)金利の上昇について

①リスクの内容および経営成績、財政状態に与える影響内容

当社グループの有利子負債には、金利変動の影響を受けるものが含まれております。したがって、金利上昇により支払利息が増加する可能性があります。

②顕在化の可能性および発生時期

市場動向によるため顕在化する可能性は高く、また時期については常に発生するリスクが考えられます。

③対応策

返済期間が長期間になる場合等、金利変動リスクが高い取引については、金利スワップ取引を行い金利変動リスクを回避いたします。

 

(7)資産について

①リスクの内容および経営成績、財政状態に与える影響内容

当社グループが保有する資産の一部については時価や事業計画から算定された将来キャッシュ・フローに基づく会計上の見積りにより計上されており、市況や事業環境の悪化によって、当社グループが保有する資産の市場価格が著しく低下する場合や事業計画が達成出来ない場合等においては減損損失や引当金の計上等により当社グループの経営成績、財政状態に影響を与える可能性があります。

②顕在化の可能性および発生時期

市場動向や事業計画の状況によるため顕在化する可能性は高く、また時期については常に発生するリスクが考えられます。

③対応策

市場動向や事業計画の進捗状況について定期的なモニタリングを行っており、早期の兆候把握に努めております。

 

(8)サイバー攻撃等のリスクについて

①リスクの内容および経営成績、財政状態に与える影響内容

サイバー攻撃や不正アクセス等の外的要因や人為的要因等に起因する情報流出による不正使用、システム障害による事業活動停止等のリスクがあり、当社グループの売上高、売上原価および特別損失や営業債権、営業債務等に影響を与える可能性があります。

②顕在化の可能性および発生時期

常に発生するリスクが考えられます。

③対応策

情報セキュリティ基本方針のもと、セキュリティガバナンス強化を行っております。

 

(9)気候変動リスクについて

①リスクの内容および経営成績、財政状態に与える影響内容

気候変動に伴うサステナブル対応のための設備導入や平均気温上昇に伴う職場環境悪化による、職場環境の維持のためのエネルギーコストの増加等のリスクがあり、当社グループの売上高、売上原価および特別損失や営業債権、営業債務等に影響を与える可能性があります。

②顕在化の可能性および発生時期

常に発生するリスクが考えられます。

③対応策

気候変動に関する事業活動におけるリスクを気候変動対策推進ワーキンググループで検討し、サステナビリティ委員会での審議、取締役会での承認を経て、リスクマネジメント委員会と連携してリスクを管理しています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

当社グループの売上高は前期比9,362百万円(12.4%)増加し84,818百万円となりました。

営業利益は前期比2,267百万円増加し5,500百万円(前期は営業利益3,233百万円)、経常利益は前期比2,309百万円増加し5,726百万円(前期は経常利益3,417百万円)となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は前期比330百万円減少し2,244百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益2,574百万円)となりました。

 

②財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末(以下「前期末」という)に比べて3,218百万円増加し68,679百万円となりました。

当連結会計年度末の負債の合計は、前期末比46百万円減少の27,508百万円となりました。

当連結会計年度末における純資産は、前期比3,264百万円増加の41,171百万円となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、4,544百万円のプラスとなりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、3,379百万円のマイナスとなりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、757百万円のプラスとなりました。

当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度に比べ2,653百万円増加し11,463百万円となりました。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

自動車(百万円)

55,742

10.1

産業(百万円)

25,338

17.9

リチウム(百万円)

50

84.9

不動産(百万円)

報告セグメント計(百万円)

81,130

12.4

その他(百万円)

合計(百万円)

81,130

12.4

(注)金額は標準販売価格により表示しております。

 

  b.受注実績

   当社グループは、主力製品である自動車用蓄電池について、主として見込生産を行っているため、受注高、受

  注残高について特記すべき事項はありません。

 

  c.販売実績

   当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

自動車(百万円)

59,197

11.8

産業(百万円)

25,239

14.2

リチウム(百万円)

106

△2.2

不動産(百万円)

263

△2.7

報告セグメント計(百万円)

84,807

12.4

その他(百万円)

10

△3.7

合計(百万円)

84,818

12.4

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、総販売実績に対し、10%以上に該当する販売先が無いため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積もりに用いた仮定のうち重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(a)経営成績の分析

当連結会計年度における世界経済は、欧米の金融引締めや中国の不動産市場の停滞による景気の下振れリスク等により先行き不透明な状況にあります。

我が国経済においては、雇用・所得環境の改善の下、各種政策の効果もあり、景気は緩やかな回復傾向となりました。一方で海外景気の減速が景気の下振れリスクとなっている他、物価上昇の継続、通商政策などアメリカの政策動向、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。

蓄電池業界においては、カーボンニュートラルに向けた、再生可能エネルギーの利用拡大が着実に進み、また、最近は少し動きが鈍化しているとはいえ、世界的に自動車の電動化が進む事は確実なトレンドであります。一方で、円安による資源コストの上昇や地政学的リスクが引き続き課題となり、厳しい経営環境となる事が想定されます。

当社グループにおいては中長期的にサステナブル視点で事業を強化・拡大し、お客様や社会から期待に応えられる会社となるべく、「SDGsの目標達成に貢献するグローバル戦略の推進」「基幹事業である鉛電池での収益向上」「次世代電池を含む新製品開発と新しいソリューションビジネスの立上げ」「サステナブル経営のための人材育成による革新力の蓄積」を推進してまいりました。

 

(経営成績)

当社グループの売上高は前期比9,362百万円(12.4%)増加し84,818百万円となりました。これは、主に自動車向けの販売が堅調に推移した事によります。このうち海外売上高は34,046百万円となり、売上高全体の40.1%となりました。

損益面につきましては、営業利益は原材料並びに部品価格等が高騰したものの、国内外での販売が堅調に推移したことにより前期比2,267百万円増加し5,500百万円(前期は営業利益3,233百万円)、経常利益は前期比2,309百万円増加し5,726百万円(前期は経常利益3,417百万円)となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は前期比330百万円減少し2,244百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益2,574百万円)となりました。

 

セグメント別の状況は以下の通りです。

なお、セグメントの売上高は、セグメント間の内部売上高または振替高2,536百万円を含み、セグメント利益は営業利益ベースの数値であります。

自動車の売上高は前期比6,538百万円(11.9%)増の61,186百万円、セグメント利益は前期比867百万円(27.7%)増の3,994百万円となりました。これは、国内およびタイ・インドネシア市場での販売が堅調に推移したこと等によります。

産業の売上高は前期比3,145百万円(14.1%)増の25,360百万円となりました。セグメント利益は前期比1,431百万円(435.6%)増の1,760百万円となりました。これは、海外を含む鉄道車両向けやデータセンター向けの販売が堅調に推移したこと等によります。

リチウムの売上高は前期比2百万円(△2.1%)減の106百万円、セグメント損失は314百万円(前期はセグメント損失269百万円)となりました。これは、販売は前期同水準でしたが市場の立ち上がり途上であることから損失が発生しております。

不動産の売上高は前期比7百万円(△2.5%)減の283百万円、セグメント利益は前期比13百万円(△18.4%)減の61百万円となりました。これは、賃料収入が減少したこと、また修繕による賃貸原価が前年に比べ増加したことによるためであります。

その他の売上高は前期比96百万円(30.0%)増の417百万円、セグメント損失は0百万円(前期はセグメント損失28百万円)となりました

 

(b)財政状態の分析

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末(以下「前期末」という)に比べて3,218百万円増加し68,679百万円となりました。流動資産は、前期末比2,381百万円増加し39,168百万円となり、固定資産は、前期末比837百万円増加し29,511百万円となりました。

流動資産増加の主な要因は、現金及び預金、有価証券の増加等によるものであります。

固定資産のうち、有形固定資産は、前期末比514百万円増加し25,200百万円となりました。この増加の主な要因は、海外子会社の為替換算影響等によるものであります。

投資その他の資産は、前期末比27百万円減少し2,966百万円となりました。

当連結会計年度末の負債の合計は、前期末比46百万円減少し27,508百万円となりました。

流動負債は、前期末比1,866百万円増加し20,717百万円、固定負債は、前期末比1,912百万円減少し6,790百万円となりました。

有利子負債(短期借入金及び長期借入金の合計額)は、前期末比1,744百万円増加し8,401百万円となりました。

また、当連結会計年度末における自己資本は、前期末比3,162百万円増加し39,829百万円となり、自己資本比率は、前期末の56.0%から58.0%となりました。

 

(c)キャッシュ・フローの分析

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が3,246百万円、減価償却費が3,294百万円、利息及び法人税等の支払額1,109百万円等により全体としては4,544百万円のプラスとなりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出2,825百万円等により3,379百万円のマイナスとなりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増減による収入2,584百万円、長期借入金の返済による支出1,000百万円等により757百万円のプラスとなりました。

以上の結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度に比べ2,653百万円増加し11,463百万円となりました。

なお、当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

(資金需要)

当社グループの資金需要のうち主なものは、原材料の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

(財務政策)

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、投資を目的とした資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。なお、これら運転資金及び設備を目的とした資金につきましては、国内・海外子会社のものを含め当社にて管理しております。

 

(d)経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標等

「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に同一の内容を記載しておりますので、記載を省略しております。

 

5【重要な契約等】

(1)当社は、2024年7月23日に公表いたしました「株式会社AP78による当社株式に対する公開買付けの開始予定に関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ」において公表しているとおり、株式会社AP78(以下「公開買付者」といいます。)との間で、同日付で公開買付者による当社の株券等に対する公開買付け及びその後に実施する取引等に関する当社の義務および公開買付者の義務、契約終了事由を定めた「覚書」を締結いたしました。

なお、本公開買付けの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(追加情報)」に記載しております。

 

(2)当社は、2024年7月23日に公表いたしました「株式会社AP78による当社株式に対する公開買付けの開始予定に関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ」において公表しているとおり、株式会社アドバンテッジパートナーズ、投資事業有限責任組合アドバンテッジパートナーズⅥ号、APCPⅥ,L.P.、CJIP(AP)Ⅵ,L.P.、APCPⅥCo-1,L.P.、CJIP(AP)ⅥCo-1,L.P.、APReiwaF6-A,L.P.、投資事業有限責任組合AP令和F6-B2、東京センチュリー株式会社、TCインベストメント・パートナーズ株式会社、古河電気工業株式会社、サステナブル・バッテリー・ホールディングス株式会社(以下「SBH」といいます。)、株式会社AP78との間で、同日付で本取引実行後のSBH及び当社の経営体制並びに、当社並びにその子会社及び関連会社とSBHの子会社であるエナジーウィズ株式会社の間の業務上の提携の在り方等を定めた「資本業務提携に関する合意書」を締結いたしました。

なお、本公開買付けの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(追加情報)」に記載しております。

 

(3)インドのEXIDE INDUSTRIES LTD.との間で、四輪車用電池及び二輪車用VRLA電池の技術援助契約を締結しております。四輪車用電池は2005年12月1日に締結し、二輪車用VRLA電池は2007年3月9日に締結しており、両契約とも現在継続中であります。

 

(4)米国のEAST PENN MANUFACTURING CO.,INC.との間で、自動車用及び産業用鉛電池にウルトラキャパシタ機能を付与したハイブリッド電池「UltraBattery」の技術援助契約を締結しております。契約期間は2008年8月19日から17年間であります。

 

(5)インドのEXIDE INDUSTRIES LTD.との間で、四輪車用ISS電池の技術援助契約を締結しております。2010年2月1日に締結し現在継続中です。

 

6【研究開発活動】

当社及び当社の関係会社は、自動車、各種産業用二次電池、電源及び応用機器メーカーとして、電気エネルギーの貯蔵・変換と高効率化に関する研究開発を推進し、鉛蓄電池、アルカリ蓄電池、リチウムイオン電池、それらの周辺機器及び電源装置の新製品、新技術、新プロセス、要素・基盤技術、次世代蓄電池技術、環境対応技術の開発を行っております。

また、各種製品の品質・信頼性の改善並びに生産性向上とコストダウンを図るための基盤技術、生産技術、設備技術の開発も積極的に実施しております。

さらに、これらの研究開発活動を通して環境配慮型製品の開発と提供、省エネ生産プロセスの開発を推進し、SDGs達成に貢献する事業活動の一翼を担っております。

当連結会計年度における研究開発費総額は1,961百万円であります。セグメント別の研究開発費の内訳は自動車1,066百万円、産業858百万円、リチウム36百万円となっております。

 

 各分野別の研究の目的、主要課題及び研究成果は次のとおりであります。

 

自動車用鉛蓄電池の分野では、顧客要求に応える現用電池を性能改善した通常車用鉛蓄電池(「Altica[アルティカ]」シリーズ)、アイドリングストップ車用鉛蓄電池(「ECHNO[エクノ] IS UltraBattery」、スタンプフォーム製法による打ち抜き格子体を採用した「ECHNO[エクノ] IS」など)に加え、グローバル標準規格であるEN規格(欧州統一規格)対応鉛蓄電池(「ECHNO[エクノ] EN Premiumシリーズ」、「ECHNO[エクノ] EN High Gradeシリーズ」)に、容量・大電流放電性能と寿命性能を向上させたHEVタクシー対応「LYDEN[ライデン] ENシリーズ」を追加して3ラインナップ化し、国内・海外の新車メーカーの採用拡大と、環境規制に伴うBEV、HEV、及びIS車へと幅広く対応しつつ市販展開の拡大を鋭意進めるなど、幅広い顧客要求に対応しております。

 

産業用鉛蓄電池の分野では、現用電池の性能改善とコストダウンを進めると共に、カーボンニュートラルの実現に資する系統運用、太陽光・風力発電電力需給調整用蓄電池として、サイクルユース用制御弁式鉛蓄電池「FCP」シリーズと、産業用キャパシタハイブリッド型鉛蓄電池「UltraBattery」の市場展開と拡販を進めております。系統安定化用の市場ニーズとしては、“寿命20年”というこれまでにない高い寿命性能が求められており、サイクルユース用制御弁式鉛蓄電池「FCP-S」シリーズを市場展開し拡販を進めております。

当社の今市事業所に設置した太陽光パネルにより発電した電力を「FCP」鉛蓄電池に貯め、事務所設備、電気自動車に使用するESS(電力貯蔵システム)を導入し、運用を続けております。

アルカリ蓄電池では、鉄道車両用電池の性能向上と拡販のため実車試験とベンチ試験を進めております。また、顧客要求に対応した新形電池及び電池関連機器の新製品開発及び基盤技術・生産技術の向上とコストダウンに向けた取り組みを引き続き進めております。

電源機器の分野では、電源装置の品種拡大と性能向上及び特定用途電源の開発を進めております。系統安定化用などサイクルユース用鉛蓄電池の需要の高まりを受けて、既に製品化している鉛蓄電池のSOC(充電状態)を把握するBMU (Battery Monitoring Unit)において、2024年度は、鉛蓄電池用BMUの簡易型SOC算出システム開発を行い、SOC精度向上とコストダウンを両立させた取り組みを進めております。

 

リチウムイオン電池の分野では、積層ラミネート型リチウムイオン電池事業を拡大するため、産業用向け電池開発を進めております。宇宙用途では、当社製リチウムイオン電池が搭載された小型月着陸実証機「SLIM」のミッション達成を受けて宇宙航空研究開発機構(JAXA)より感謝状を拝受し、またSLIMがJAXAと当社を含む12社合同で第54回日本産業技術大賞 文部科学大臣賞を受賞しました。引き続き、小惑星探査機「はやぶさ2」、金星探査機「あかつき」、及び水星磁気圏探査機「みお」の運用を支援しております。

 

一方、厳しさを増す品質、性能、価格競争に対応するため、各種の規格値を満足させつつ、電池設計の見直しや活物質の利用率向上による材料のセービング及び耐久性の向上による寿命性能の改善を図るなど、様々なコストダウン及び基盤技術開発に精力的に取り組んでおります。更に、新設備の導入や新材料の適用による工程品質改善、材料ロスの低減、工程屑鉛のリサイクル、工程の見える化、省エネ、生産プロセスの開発などに加え、工場のDX化や協働ロボット化による省力化・省人化を推進しております。

 

コンピュータシミュレーション技術の活用では、強度解析や電気伝導解析、熱解析などを行うことで製品設計の高度化を図り、また鋳造解析や射出成型解析では工程製造条件の適正化による品質と生産性の向上の検討を行っております。更に3D-CADや各種3D造形機を導入活用することで、試作造形のスピードアップを図り、短期間で製品開発が可能な環境づくりを進めております。また社内の研究開発活動をよりスムーズに行えるよう、研究員に対しCAD/CAM/CAEに関する教育を行っております。