当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は「環境と人にやさしい技術への貢献」を企業理念に掲げ、研究開発から生産活動などの企業活動の全域にわたり地球環境の保全に取り組んでおります。
当社はこの企業理念のもと、各電子部品の開発・供給を通じてエレクトロニクス産業の発展に寄与することが、企業価値ひいては株主共同の利益の向上につながると考え、基本方針として推進してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループにおきましては、企業価値の向上を図るため資産効率の改善に継続的に取り組んでおり、自己資本利益率(ROE)及び投下資本利益率(ROIC)を重要な指標として位置づけております。
(3)適応力強化による質の高い成長 ― レジリエンス経営の実践
新型コロナウイルス感染症の世界的大流行やロシアによるウクライナ侵攻など、われわれを取り巻く環境は大きく変化しております。このように、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の4つのキーワードで特徴づけられる「VUCAの時代」が到来する中、2023年4月より、「Create Next Value:次の価値を創造しよう、次世代の価値(企業価値、製品価値、新事業)を創造する」を長期目標とし、「困難な環境・状況に直面してもそれに適応し、乗り越え、自ら成長し、希望をもって将来の目標に対して積極的に立ち向かう力をつけていくこと」を中期基本方針とする第10次中期経営計画をスタートいたしました。
適応力強化による質の高い成長を目標とする「レジリエンス経営」を実践し、第10次中期経営計画の達成のために全社一丸となって邁進してまいります。
重点施策
1. 社会から信頼され求められ続けるためのサステナブル経営の実践
2. 創造性と実践力を兼ね備えた革新的人財の育成
3. マーケットインとプロダクトアウトの融合による顧客潜在要求の提供
4. 最適ポートフォリオ(再構成・標準化)とスマートファクトリーによる生産構造改革
① ESG経営の実践
② 人財戦略の強化
③ 商品企画力強化と技術の連動による収益力の向上
④ 最適な生産体制の構築
⑤ 生産性改善によるコスト競争力強化
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後の見通しにつきましては、国内では雇用・所得環境が改善する下で個人消費が持ち直すなど、景気は緩やかな回復基調で推移することが見込まれるものの、世界経済全体では、これまでの欧米地域での金融引き締め政策の影響や、中東情勢・ウクライナ情勢等の地政学リスクなど景気の下振れリスクは依然として存在しており、当社グループを取り巻く経営環境は予断を許さない状況が続くものと予想されます。加えて、サステナビリティに関する取り組みが企業経営の中心的な課題になる中で、環境面においては、世界的に気候変動リスクへの関心が高まる中、カーボンニュートラルを始めとする環境負荷の低減に向けた取り組みが求められるなど、事業活動を通じた社会課題への貢献が求められております。
当社グループに関連するエレクトロニクス市場は、車載市場においては、生産台数の増加に加えて、引き続き電動化・電子化が進み自動車1台当たりの部品搭載数の増加による需要拡大が見込まれます。また、ICT市場においては、生成AIサーバーの急成長や従来型サーバーの在庫調整が終息し、パソコン需要も含めて需要の回復が見込まれます。また、産業機器市場においては、省人化投資や半導体製造装置の回復も期後半に期待されます。
このような状況のもと、当社グループは引き続き第10次中期経営計画の各重点施策を着実に実行に移すことにより、高収益体質への転換を図ってまいります。5つの戦略市場のうち車載市場、ICT市場と産業機器市場を最重要戦略市場と位置づけ、電動車両やAIサーバー等の成長分野に向けてハイブリッドコンデンサを中心とした高付加価値製品の拡販活動を実施してまいります。また、生産工場におけるTPM活動(Total Productive Management)の徹底や生産実行システムの導入等を通じて更なる収益性の向上を図ってまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方
当社は企業理念として「環境と人にやさしい技術への貢献」を掲げており、世の中を支える技術とその発展は環境や人を傷つけるものであってはならないこと、そして、電子部品の開発・製造を通じてモノづくりを支え確かな技術で社会に貢献することを存在意義としております。係る理念に基づくサステナビリティへの取組みは、中長期的には①レジリエンスの強化によるリスクの低減と②質の高い成長力によるキャッシュ・フローの増加をもたらし、持続的な企業価値の向上に資するものと考えております。特に、今般の不確実性の高い事業環境におきましては、変化にいち早く対応する適応力とイノベーションによる競争力の獲得が重要であり、企業価値の源泉である人的資本への投資や気候変動問題への対応等は注力すべき経営課題であると認識しております。
(2)サステナビリティに関する取組(ガバナンス及びリスク管理)
サステナビリティ戦略を含む意思決定と監督は取締役会によって行われております。また、サステナビリティに関連する全社的リスクは、各専門的な知見を集約してリスクマネジメント委員会が行動計画を策定し、その実施状況をモニタリングしております。
なお、委員会は年2回、取締役会及び経営委員会にリスク管理状況を報告しております。
(3)気候変動に関する取組(ガバナンス、戦略、リスク管理並びに指標及び目標)
当社では、気候変動が事業継続に影響を及ぼす重要課題と認識し、2022年3月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(以下「TCFD」)」による提言への賛同を表明いたしました。この枠組みに沿って、気候変動が当社の事業に影響を及ぼすリスク・機会を分析し、経営戦略に反映するとともに、気候変動に関わる財務情報の開示に取り組んでまいります。
なお、詳細につきましては、下記当社ウェブページ「気候変動への取り組み」をご参照ください(2023年度に係る情報の記載につきましては、2024年6月下旬に下記ページを更新予定であります。)。
https://www.chemi-con.co.jp/company/sustainability/environment/tcfd.html
ガバナンス
当社ではリスクマネジメント委員会にて、気候変動に関わる議論や気候変動への取組み状況の評価・管理を行います。リスクマネジメント委員会から取締役会及び経営委員会へ、リスク及び機会を含めた事業に影響する可能性のある気候関連情報について年2回の報告を行い、取締役会が指示・監督を行います。また、気候変動をはじめとする環境リスクや環境課題に関する問題の解決に向けた取組みを環境委員会にて行います。環境委員会では、実行部門への取組み展開、脱炭素や省エネルギーへの取組みの進捗管理を行い経営委員会及びリスクマネジメント委員会へ報告いたします。
戦略
気候変動に関連した当社事業へのリスク・機会は、2021年度TCFD対応メンバーにて、リスク・機会の項目を選定し、2022年度には全執行役員により、リスク・機会の再度見直しを行ったうえで評価を行いました。2023年度は、リスクの影響度と期間について見直しを行い、識別・評価した結果、以下のようになりました。
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リスク/機会 |
項目 |
影響度 |
期間 |
想定される事象と対策 |
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移行リスク |
市場 |
気候変動に関連する顧客要求を満たせない場合のリスク |
大 |
短期 ~ 中期 |
(想定される事象) 1.5℃シナリオでは、気候変動に関連する技術への対応、その他要求事項の増加が想定され、顧客要求を満たせない場合、当社の売上減少が想定される。 (対応策) ①現在当社の最重要戦略市場に含まれる車載市場、産業機器・エネルギー変換市場は、EV化をはじめとする気候変動の緩和へ大きく貢献する市場であり、今後もこれらの市場に対し、新製品を投入するとともに、そのスピードをさらに速めていくことで顧客要求を満たし、リスクへ対応していく。この指標として、研究開発費の売上高比4%を目指し、取り組んでいく。 ②当社ではグリーン調達ガイドラインにて、気候関連リスクに関する取組みを行うようサプライヤーへ示している。新規取引及び更新の際に、物理的リスクが高いサプライヤーに対し、気候関連のリスクを考慮した事業継続計画への見直しや適応策の実施を促すことで、サプライチェーンを通じた取組みを進めていく。 |
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政策/法規制/市況 |
カーボンプライシング導入/電力・燃料・材料費増加 |
大 |
短期 ~ 中期 |
(想定される事象) 1.5℃シナリオでは、気候変動の対応策として、炭素税をはじめとするカーボンプライシングの導入が想定され、直接的・間接的に電力費、燃料費や材料費及び租税課金の増加が想定される。 (対応策) カーボンプライシングへの対応策として、当社では、環境委員会の傘下として、省エネルギー対策小委員会を設置しており、グループ全体での省エネ及び CO2排出量の削減に取組み将来の影響額の低減に努めている。 2050年度カーボンニュートラル実現に向け、再エネ電力の導入を開始。さらなる活用についても検討を進めている。 |
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物理的リスク |
急性 |
異常気象による災害の激甚化 |
小 |
短期 ~ 長期 |
(想定される事象) 4℃シナリオでは、異常気象による豪雨災害などの頻度が高くなることが想定される。 (対応策) 2011年の震災以降、製品・材料ともに複数の事業所での生産体制を採用しており、また、材料においては他社からの購入体制も構築している。さらに、国内事業所の将来にわたる浸水リスクの年間影響額は、算定済みであり、各自治体が発行済みのハザードマップに変更がないか定期的に確認を行っている。国内事業所におけるリスクへの対応は、ハザードマップを基準として考え優先順位を決めた。影響を受ける恐れのある国内製造拠点については、BCP(事業継続計画)の見直しを行い、河川計画規模(L1、10~100年に1度)の災害を受ける可能性の高い事業所については、そのリスクを軽減する対策を開始。想定最大規模(L2、1000年に1度)の災害を受ける可能性がある事業所においても対応策を順次計画・開始し、リスクの低減に努めている。 |
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機会 |
市場 |
顧客要求に対応した製品・サービスの提供 |
大 |
短期 ~ 中期 |
(想定される事象) 1.5℃シナリオでは、温室効果ガスの排出抑制を図るため、設備の導入、機器仕様の変更が進められ、電化や省エネを推し進めていく世界の中で、当社製品の使用機会が増大することが考えられる。 また、当社ではこれまでも電極箔生産における使用電力の積極的削減を進めており、CO2排出量の観点から優位性の高い製品を提供することが可能になると考える。 (対応策) ①現在当社の最重要戦略市場に含まれる車載市場、産業機器・エネルギー変換市場は、EV化をはじめとする気候変動の緩和へ大きく貢献する市場であり、今後もこれらの市場に対し、新製品を投入するとともに、そのスピードをさらに速めていくことで、顧客要求に対応し、事業機会を拡大していく。この指標として、研究開発費の売上高比4%を目指し、取り組んでいく。 ②製品の生産におけるCO2排出量の削減を念頭においた、製品の開発や生産設備の開発・導入を進めていく。 |
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技術 |
新技術の開発による競争優位性の向上 |
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機会 |
レジリエンス |
再エネプログラム・省エネ対策の推進 |
小 |
短期 ~ 中期 |
(想定される事象) 1.5℃シナリオでは、再エネプログラムや省エネ対策を推進することが求められる。 (対応策) 再エネプログラムや省エネ対策を推進しコスト等の低減をはかることで競争力の向上を図る。 |
影響度:売上の5%以上の影響額のあるリスク及び機会を影響度:大として評価しております。
期 間:短期:2025年度まで、中期:2030年度まで、長期:2050年度までを想定しております。
なお、当社では以下のシナリオについて分析を行い、それぞれのシナリオで必要となる対応策の検討を進めております。
1.5℃シナリオ(IPCC SSP 1-1.9及びIEA NZEに基づく)で想定する世界観:2050年又はそれ以降にカーボンニュートラルを達成する為、脱炭素/低炭素社会の実現に向けた社会経済が発展する世界。
4.0℃シナリオ(IPCC SSP 3-7.0及びNGFS(NDCs)に基づく)で想定する世界観:現在行われている気候変動に関する政策が強化されることなく継続されることにより、自然災害の激甚化による社会の適応の必要性が高まる世界。
一部SSP8.5のシナリオ数値を使用し国内事業所のリスク試算をしております。
IPCC SSP:気候変動に関する政府間パネル 共有社会経済経路シナリオ
IEA NZE:国際エネルギー機関におけるネットゼロシナリオ
NGFS(NDCs):気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク 各国が決定する貢献シナリオ
(当社グループ事業所における洪水災害の影響)
当社グループで災害の影響を受ける事業所を特定するとともに対策を開始しております。2022年度は被災した場合、影響の大きな日本ケミコン㈱高萩工場、ケミコン東日本㈱宮城工場での対応策を策定。2023年度より順次対応を開始しております。
・日本ケミコン㈱高萩工場
花貫川に隣接し、計画規模(50年に1度)の浸水深は、0.6m前後とされております。2022年度より計画規模の浸水に対し対応すべく土嚢、止水板等の設置を計画し、対策を進めているとともに、重要設備更新時に高所への設置を並行して進めております。
・ケミコン東日本㈱宮城工場
大崎市ハザードマップによると想定最大規模(1000年に1度)の降雨で2mを超える浸水域に指定されております。当該事業所は過去に浸水被害はありませんが、これに対応するため、2022年度より計画を立て、2023年度より土嚢等の購入を開始いたしました。
また、現在建設中の建屋は、一部防水構造となっており、重要設備は高所へ設置するレイアウトを採用しております。
リスク管理
当社グループでは、リスクマネジメント基本方針を策定し、「リスクマネジメント基本規程」及び各種関連規程に基づいたリスクマネジメント体制の整備・強化に努めております。当社グループは、リスクマネジメント総責任者のもとにリスクマネジメント委員会を設置し、グループ全体の見地から、リスクマネジメントに係わる行動計画の策定やその実施状況のモニタリングなどを行っております。そのなかで、気候変動リスクを事業のリスクとして捉えており、委員会の中で議論がされております。委員会は年2回開催するとともに、取締役会及び経営委員会にリスク管理状況を報告しております。なかでも気候変動リスクについては、担当部門から各事業所、各部門へリスクの低減と機会獲得に向けた方針を展開し、取組み状況のモニタリングを行っております。また、関連部門への支援も実施しております。
指標及び目標
当社では、気候関連のリスクを評価・管理するために、以下の指標と目標を使用いたします。なお、新たに2023年度の活動の中で、海外事業所の目標を決め、活動を開始いたしました。
電機・電子業界で推進する「カーボンニュートラル行動計画」を踏まえ、2030年度に向けてエネルギー原単位改善率年平均1%以上を目標といたします。また、2050年カーボンニュートラル実現に向け、当社生産におけるCO2排出量を2030年度に2013年度基準で、国内46%程度、海外平均29%の削減に挑戦いたします。
国内、海外CO2排出量削減状況
2023年度のCO2排出量については、国内は2013年度35万7千トンでしたが、2023年度23万9千トンと約33%の削減となりました。海外は、2013年度15万2千トンでしたが、2023年度13万7千トンと約10%の削減となっております。
施策について
下記のような取組みを進めてまいります。
電力に関する省エネ :照明のLED化、空調機器更新、生産設備の省エネ化、整流器・変圧器の更新など
熱・燃料に関する省エネ:ボイラーの更新、燃料転換、保温、生産機の蒸気レス化など
再エネ発電の導入 :事業所敷地内への太陽光発電設備を導入し使用するなど
再エネ電力などの購入 :生産事業所での再エネ電力などの購入
2023年より中国の貴弥功(無錫)有限公司にて太陽光パネルでの発電を開始、また2024年1月よりケミコン東日本㈱福島工場にてオンサイトPPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)による太陽光発電を開始いたしました。
2024年度は、Chemi-Con(Malaysia)Sdn.Bhd.へのオンサイトPPAを導入いたします。
CO2排出量削減状況、施策の詳細については、当社ウェブページ「気候変動への取り組み」をご参照ください。
当社の事業活動におけるGHG排出については下記ページをご参照ください。
https://www.chemi-con.co.jp/company/sustainability/environment/data.html
当社の気候変動に関する指標・目標に対する実績については、下記ページをご参照ください。
https://www.chemi-con.co.jp/company/sustainability/environment/target.html
(4)人的資本に関する戦略
上記「(1)サステナビリティに関する考え方」に記載の観点(①レジリエンスの強化によるリスクの低減と②質の高い成長力によるキャッシュ・フローの増加)は、人的資本への効率的な投資においても欠かせないと考えております。大まかな方向性と致しましては、「スキルや知見の獲得・向上・多様化による環境変化への適応力の強化」と「イノベーションの創出による売上の増加と高付加価値製品の開発による利益率の向上」を重要な人的資本戦略と位置付けております。係る戦略課題を解決するため、人材育成方針として「10年後を担う人財」を掲げ、「組織や仕組みの改革を行い境界を越えて挑戦できる人財」の育成を目指します。具体的には下記のような個別戦略を定めております。
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個別戦略 |
概要 |
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教育の充実化・柔軟な労働環境の整備 |
新たな事業領域の創出や変化する環境に対応できる人財育成のためには、教育制度の拡充やそのベースとなる柔軟な労働環境の整備がカギとなると考えます。なぜなら、教育制度の拡充による新たな知見の獲得は、イノベーションによる事業領域の創出の可能性を高めると共に、高付加価値製品の開発によるキャッシュ・フローの向上と環境変化に即応した開発によるレジリエンス強化をもたらすものであるからです。 そのためには、挑戦と変化を是とする仕組みや従業員の健康や満足度を向上させる柔軟な労働環境を整備することが肝要と考えております。 現在、当社グループでは、階層別研修、日本ケミコンビジネススクール、海外駐在実習制度、ITマスター制度、新規事業推進制度並びに在宅勤務制度、フレックス勤務制度、ウェルカムバック制度、DX推進などの諸施策を実施しております。 今後は「1on1ミーティング」等の選択肢を含めた組織活性化の諸施策の導入を検討してまいります。また、従業員が適切な評価を受けることができるよう、適切な人事ローテーションのあり方、360度評価の導入検討、評価者訓練の実施等、人事制度全般の見直しを実施してまいります。 |
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ダイバーシティの推進 |
ダイバーシティの推進はそれ自体社会的価値があるのみならず、知見の結合(イノベーション)を誘発するような多様なアイデアが生まれやすい環境を整備する上でも欠かせないものと考えております。また、多様なバックグラウンドを持つ従業員を活用することは、人的資本の補完性がより強化されることにつながり、意思決定の正確性向上やリスク発現時のコストを低減することも期待できます。 当社はダイバーシティ推進委員会を設置しており、第1期の活動では、ダイバーシティ&インクルージョンの社内周知、ワークライフバランス支援、女性社員同士のネットワーク支援の3つを中心に活動しました。具体的には、以下の様な取組みを実施しました。 ・社内掲示板にて委員会のウェブサイトを立ち上げ、社内報と合わせ社内広報活動に努めました。 ・会社の制度紹介、育児経験談等の仕事と子育て両立支援情報の社内展開に努めました。 ・女性社員座談会や異業種企業のダイバーシティ&インクルージョン推進活動の社外勉強会の実施をしました。 しかしながら、当社のダイバーシティ推進の目標やゴールが不明確であったことや、全社的なダイバーシティ推進の意識・理解不足、現状課題把握のためのデータ・情報不足が課題として残りました。 そのため、活動第2期に当たる今年度のダイバーシティ推進委員会では、第1期の課題を解消すべく、国内の各拠点・事業所から委員を選出し「現状分析」「意識向上」「周知啓蒙」の各ワーキング活動に着手しております。当社グループ内におけるダイバーシティ推進の風土醸成や人材戦略としてのダイバーシティ推進の中長期プラン策定に取り組んでまいります。 |
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採用強化 |
事業戦略に適した中核人材の獲得や優秀な学生の確保は、事業競争力を向上させるため急務と考えております。現在、当社グループでは積極的にインターンシップを推進しております。全国の各大学の研究室やキャリアセンターとのつながりを中心とした関係構築を継続しながらも、新たに若手社員による母校へのリクルーティング活動、特別支援学校との関係構築等、採用施策を更に多様化し、優秀な人材の確保に努めてまいります。 |
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データ活用による人的資本経営 |
人的資本戦略の策定・ブラッシュアップ並びにその開示と対話にはHRテクノロジーによるデータの取得と利活用が欠かせないと考えております。 現在、当社グループでは人的リソースを有効活用するために新たにタレントマネジメントシステムを導入し、蓄積したデータを活用し、適切な人事ローテーションへの反映や従業員満足度調査内容を人事制度改革へ反映させ、各種課題解決に努めてまいります。 |
(5)人的資本に関する指標及び目標
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項目 |
目標 |
実績 |
範囲 |
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中核人材として活躍を期待する主任、係長、管理職補佐クラスの女性比率 |
2025年度末までに 2020年度末の1.5倍 |
2020年度末比で0.97倍 |
単体 |
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新卒採用における外国人比率 |
8.0% |
10.0% |
単体 |
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国内連結 |
当社はグループ全体を通じて人的資本の活用について取組みを進めておりますが、現在、タレントマネジメントシステムの導入・拡大を進めている段階であり、必ずしも連結グループに属する全ての会社が指標のデータ管理を行えておりません。そこで、本社が率先して取組みを進めることを優先して、まずは単体ないし国内連結での開示とさせていただきます。今後は連結会社ベースでの開示を行えるよう取組みを進めてまいります。
当社では、リスクマネジメントを経営が関与する最上位の規格に位置づけております。当社は「リスクマネジメント基本方針」に基づきリスクマネジメント委員会を設立し、グループのリスクを横断的・総括的に管理しております。現に存在するリスクや将来考慮すべき各種リスクを「戦略リスク」「財務リスク」「ハザードリスク」「オペレーショナルリスク」「気候関連リスク」に分類し、年2回リスクマネジメント委員会でとりまとめ、取締役会及び経営委員会に報告しております。
このようにして特定・報告されたリスクのうち、連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性のある主要なリスクには以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経済状況について
当社グループは、コンデンサ及びその他の電子部品の製造・販売を主たる事業としており、事業活動を日本、米州、欧州、アジア等グローバルに展開しております。そのため、当社グループの製品が販売されている国、地域の経済状況の変動は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)為替レートの変動
当社グループの製品は日本国内のほか米州、欧州、アジア等の地域に販売されており、連結売上高に占める海外売上高の割合は、2023年3月期80.8%、2024年3月期79.8%となっております。このため為替予約等によりリスクヘッジを行っておりますが、全てをカバーできる保証はなく、当社グループの業績及び財政状態は為替変動の影響を受ける可能性があります。
また、連結財務諸表を作成するにあたって在外子会社の財務諸表を円換算しておりますが、換算時の為替レートにより、現地通貨における価値に変動がなくても、円換算後の価値が影響を受け、業績及び財政状態が変動する可能性があります。
(3)価格競争
当社グループの主力製品であるアルミ電解コンデンサにおいて、国内外の競合他社との間に生じる価格競争が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。当社グループは、多様な国と市場において事業活動を行っておりますので、そのような国・市場ごとの個別の要因に応じて価格競争リスクに対応する必要があります。国・地域ごとの生産販売コストの変動、材料費の高騰、生産技術のイノベーションなどは係るリスクの要因となります。海外売上比率が高い当社グループは常に国際的な競争に晒されており、価格競争の激化は収益の押し下げのみならず世界シェアの低下を引き起こす可能性があります。当社グループといたしましては、材料開発から製品販売まで一貫した生産体制という強みを活かし、生産システムの効率化等によるコストダウンを推進する一方、高付加価値で高収益な製品の開発や重点市場への拡販により競争力強化を図っております。上記の事業戦略を踏まえ当社グループはリスク対応を実施しておりますが、価格競争の激化は当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)原材料等の価格変動と調達について
足元の急激な円安進行と物流費・人件費の高騰などにより特に日本国内で調達する材料には大きな値上げ圧力がかかっており、アルミ箔や重油をはじめとした原材料等の仕入価格上昇によるコストアップの影響や原材料等の調達困難による製品出荷の停滞等は当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、海外製造会社における現地調達の推進や生産性向上等によるコストダウンの継続や複数社からの購買、サプライヤーの定期的な与信管理を行うなど、リスク回避対策に取り組んでおりますが、急激な原材料等の価格高騰と災害等による広範な原材料不足は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
ウイグル強制労働防止法及びロシア制裁などの米国経済安全保障規制などにより新たな調達リスクが顕在化しております。更には不採算改善などによる製造中止(EOL)も増えており、安定調達を喫緊の課題としてサプライチェーンの強化に取り組んでおります。
(5)製品の欠陥
当社グループは、世界各拠点で、世界的に認められている品質管理基準(UL規格、AEC-Q200など)に従って製造を行っております。
しかし、将来にわたり全ての製品において欠陥が発生しないという保証はありません。また、生産物賠償責任保険に加入しておりますが、この保険が賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。
また、当社は全生産拠点にてISO9001、IATF16949の認証を取得し品質管理の強化を図っておりますが、大規模な製品の欠陥の発生は当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、欠陥の発生の際はその影響を最小限に抑えるべく迅速に対応する体制を構築しております。
(6)法令その他の公的規制等に関するリスク
当社グループが、事業を展開する国内外での進出先における法令その他の公的規制等及びその重要な変更、特に、当該規制等を遵守するための費用負担や当該規制等に違反したと判断された場合における刑事処分、課徴金等の行政処分または損害賠償請求は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの事業は環境法令の適用を受けており、法令等の制定または重要な変更によっては環境責任のリスクを抱える可能性があります。
当社グループは、アルミ電解コンデンサ等の取引に関して、各国競争法当局からの制裁金に関する決定等を受け、その一部については裁判所における対応等を行っております。また、本件に関しましては、上記のほか、他国において複数の原告との間で、当社グループに対してアルミ電解コンデンサ等の取引に関する損害賠償等を求める民事訴訟が係属しております。これらの法的手続きにおいて当社に不利な判断がなされた場合または和解により和解金額を支払う義務を負った場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、電解コンデンサ及びフィルムコンデンサの取引に関する米国での民事訴訟につきましては、当社及び当社の子会社であるUnited Chemi-Con, Inc.(以下「当社ら」といいます)は、集団民事訴訟のクラス原告と既に和解しており、またクラス原告に参加していない複数の原告(個別原告)とも、直前事業年度までに全て和解が成立しております。すなわち、当社らは、諸般の事情を総合的に勘案した結果、2023年7月には、Avnet, Inc.及び個別原告3社に対して、和解金として総額125百万米ドルを支払うことに合意し、2023年9月にも、Arrow Electronics, Inc.との間でも、和解金として総額75百万米ドルを支払うことに合意し、それぞれ和解金を支払いました。これにより、米国において当社らに提起されていた電解コンデンサ及びフィルムコンデンサに関する米国反トラスト法違反等について損害賠償等を求める民事訴訟は全て終結いたしました。
(7)自然災害や突発的事象発生のリスク
地震等の自然災害や突発的事象に起因する、設備の破損、電力・水道の供給困難等による生産の停止は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、感染症の拡大・長期化は市場の減退を引き起こす可能性があるだけでなく、各国政府の方針により休業を求められるなど事業継続に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは従業員やステークホルダーの皆様の安全・健康を第一に考え、情報収集や行政との連携に努めながら、在宅勤務やフレックス勤務等各種感染予防対策の実施に加えてリモートワークツール等の活用により、業務遂行の継続に努めてまいります。
(8)気候関連リスク
地球温暖化に由来する気候関連リスクは、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。現在、主要国において炭素税やカーボンプライシング・排出量取引制度の導入が進められております。係る制度導入により中期的に大きな影響を与える可能性があり、直接的・間接的に追加費用(原材料高騰による追加費用含む)が生じるリスクがあります。また、気候変動への対応に係る顧客要求(環境性能やサステナビリティに係るサプライヤー選定基準等)を当社グループが十分に満たすことができない場合、製品の市場競争力の低下等により、短~中期的に当社売上の減少に影響を与える可能性があります。さらに、自然災害の激甚化や頻度の高まりは、短~長期的にサプライチェーン全体を含む当社グループの生産活動等の事業継続の中断や臨時の追加費用の発生を生じさせるリスクがあります。係るリスクに対応するため、当社グループは省エネルギー対策小委員会主導のもと、グループ全体での省エネやカーボンニュートラルに向けたロードマップを基にしたCO2削減に取り組んでおります。また、事業継続計画の見直しや自然災害による事業活動への影響が大きい事業所の防災設備等を優先的に拡充し、さらに調達・研究開発の面からも顧客要求を充足させる取組みを行うこととしております。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当期における世界経済は、米国では個人消費が堅調に推移するなど景気は回復基調で推移いたしました。一方、欧州ではウクライナ情勢の長期化や金融引き締めの影響等により総じて停滞感が強まり、中国においても不動産市場の調整等の影響から回復ペースが鈍化いたしました。また、日本国内におきましては、世界経済の減速等の影響により企業の生産活動に停滞が見られたものの、底堅い設備投資需要やインバウンド需要の回復などが下支えとなり、景気は緩やかな回復傾向で推移いたしました。
当社グループを取り巻く市場環境につきましては、自動車関連市場は半導体の供給不足緩和により自動車の生産活動が正常化し、加えて電動化・電子化の進展等により堅調に推移いたしました。一方、産業機器関連市場は中国での景況感悪化による設備投資の伸び悩み等により総じて低調に推移しました。また、ICT関連市場はコロナ禍での特需による反動が予想以上に大きく、パソコンやデータセンター向けサーバー等の在庫調整が長引きました。
このような経営環境のもと、当社グループは第10次中期経営計画に掲げた諸施策を着実に実行してまいりました。特に、戦略市場である車載市場やICT市場において、高付加価値な製品の拡販に注力いたしました。また、ハイブリッドタイプのコンデンサに加えて、電気自動車の車載充電器などへの活用が期待されるコイル製品の販売拡大にも取り組んでまいりました。一方で、収益性の向上を図るため、コストアップの要因となっていた一部の製品の生産を終了し、生産効率の高い製品への移行を推進してまいりました。
当期の製品開発については、業界最高の高容量化と従来品からの高リプル電流化を両立した車載用途の導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ「HXKシリーズ」を開発したほか、デジタル家電製品等の電源に使用されるリード形アルミ電解コンデンサにおいて、用途に最適な製品サイズを追加してバリエーションの充実を図るなど、戦略市場での競争力強化を推進いたしました。
加えて、当社は資本政策としてジャパン・インダストリアル・ソリューションズ第参号投資事業有限責任組合との間で出資契約を締結し、種類株式の第三者割当の方法により総額150億円の資金調達を行いました。また、三瑩電子工業株式会社との間で出資契約を締結し、普通株式の第三者割当の方法により、約24億円の資金調達を行いました。この調達資金は、今後需要の増加が見込まれるハイブリッドコンデンサの生産能力の増強を図るための製造棟の建設など中期経営計画における成長分野への設備投資資金に充当いたします。
これらの結果、当期の連結業績につきましては、売上高は1,507億40百万円(前期比6.9%減)となり、営業利益は94億22百万円(前期比27.2%減)、経常利益は79億13百万円(前期比28.0%減)となりました。しかしながら、独占禁止法関連損失の計上などにより、親会社株主に帰属する当期純損失は212億91百万円(前期親会社株主に帰属する当期純利益22億73百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(コンデンサ)
ICT・産機関連の需要が減少したことなどにより、売上高は1,456億98百万円(前期比6.0%減)、セグメント利益は88億24百万円(前期比26.7%減)となりました。
(その他)
CMOSカメラモジュール及びインダクタ(コイル)の需要が減少したことなどにより、売上高は50億41百万円(前期比26.3%減)、セグメント利益は5億97百万円(前期比33.4%減)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
コンデンサ |
141,676 |
△6.3% |
|
その他 |
3,436 |
△24.4% |
|
合計 |
145,112 |
△6.9% |
(注)金額は販売価格によっております。
② 受注実績
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
コンデンサ |
106,930 |
△22.0% |
39,010 |
△49.8% |
|
その他 |
4,311 |
△32.6% |
900 |
△44.8% |
|
合計 |
111,242 |
△22.5% |
39,911 |
△49.7% |
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
コンデンサ |
145,698 |
△6.0% |
|
その他 |
5,041 |
△26.3% |
|
合計 |
150,740 |
△6.9% |
(注)総販売実績に対して10%以上に該当する得意先はありません。
(2)財政状態
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末(以下前期末)比101億79百万円増加し、1,729億21百万円となりました。
流動資産は、現金及び預金の増加を主な要因として、前期末比70億57百万円増加し、1,048億15百万円となりました。
固定資産は、有形固定資産が前期末比59億4百万円増加したことを主な要因として、681億6百万円となりました。
当連結会計年度末の負債の合計は、前期末比72億47百万円増加し、1,193億10百万円となりました。
流動負債は前期末比158億36百万円増加し750億17百万円、固定負債は前期末比85億88百万円減少し、442億93百万円となりました。
有利子負債(短期借入金、長期借入金及びリース債務の合計額)は前期末比191億86百万円増加し、893億95百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産の合計は、第三者割当増資によるA種種類株式及びB種種類株式などの発行による資本金及び資本剰余金の増加、為替換算調整勘定の増加、親会社株主に帰属する当期純損失の計上などにより536億10百万円(前期比29億31百万円増)となりました。
これらの結果、自己資本比率は前期末30.9%から30.7%となり、1株当たり純資産額は2,478円43銭から1,776円97銭となりました。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ191億59百万円増加し、452億95百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、129億59百万円の支出となりました。
主な収入は製品生産用設備に係る減価償却費67億62百万円、売上債権の増減額84億25百万円及び棚卸資産の増減額60億65百万円であり、主な支出は独占禁止法関連支払額329億7百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、48億17百万円の支出となりました。
主な収支は、投資有価証券の売却による収入45億76百万円及び、製品生産用設備を中心とする有形固定資産の取得による支出89億11百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、354億21百万円の収入となりました。
主な収支は、借入金による収入194億73百万円、第三者割当による種類株式及び普通株式の発行による収入174億5百万円などによるものであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入、第三者割当による種類株式及び普通株式の発行などによるものであります。なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は893億95百万円となっております。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、期末時点の状況をもとに、各種の見積りと仮定を用いております。実際の結果につきましては、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りと仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産について、将来の課税所得見積額と実行可能なタックス・プランニングを考慮し、繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合は、繰延税金資産を取崩し、税金費用が計上される可能性があります。
(第三者割当による普通株式及び種類株式の出資契約)
当社は、2023年10月10日開催の当社取締役会において、第三者割当の方法により、三瑩電子工業株式会社に対して総額約24億円の普通株式を発行することを決議するとともに、同社との間で同日付で出資契約書を締結しております。なお、当該出資契約書に基づく上記第三者割当増資に係る払込みは、2023年11月14日に完了しております。
また、当社は、同取締役会において、第三者割当の方法により、ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ第参号投資事業有限責任組合に対して総額100億円のA種種類株式及び総額50億円のB種種類株式を発行することを決議するとともに、同組合との間で同日付で出資契約書を締結しております。なお、当該出資契約書に基づく上記第三者割当増資に係る払込みは、2023年12月27日に完了しております。A種種類株式及びB種種類株式の内容は、「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況 (1)株式の総数等 ②発行済株式」に記載のとおりであります。
当連結会計年度における当社グループの研究開発活動は、社会起点の視座に立ち、環境問題などの社会課題の解決につながる技術開発に重点を置き、材料から製品までの一貫した開発体制による高付加価値製品の開発や、より高い品質レベルの追求、生産技術開発等による環境負荷の更なる低減、新規事業の創出に向けた基礎研究などに取り組みました。全社技術プラットフォームを駆使し、CO2排出削減などカーボンニュートラルの実現に対して原材料削減や生産エネルギー削減に寄与する製品開発を推進したほか、自動車の電動化及び自動運転化を見据えた製品の開発や、ビッグデータと常時つながる社会を支えるインフラ向けに製品の長寿命化に継続して取り組みました。
当連結会計年度の研究開発費の総額は
(コンデンサ)
アルミ電解コンデンサを中心に、積層セラミックコンデンサや電気二重層キャパシタ等の電子部品のほか、製品を構成する材料の研究開発を行いました。
アルミ電解コンデンサでは、チップ形導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサにおいて、業界最大となる大容量化を達成した「HXKシリーズ」を開発いたしました。電動化が進む自動車のECU(電子制御ユニット)の小型軽量化や高機能化に貢献いたします。また、チップ形導電性高分子アルミ固体電解コンデンサでは、既存の「PXGシリーズ」に高容量化したアイテムを追加いたしました。これにより、使用するコンデンサの小型化や使用数量の削減が可能となり、パソコンやサーバー等の機器の小型化に貢献いたします。更に、基板自立形アルミ電解コンデンサでは、データセンターのサーバー電源用途として、製品高さを65mm以上に拡大した製品を開発し、既存の「KHUシリーズ」及び「LHUシリーズ」に追加ラインアップいたしました。コンデンサを横置きに実装することで、機器の薄型化に貢献いたします。
一方、電気二重層キャパシタ「DLCAP™」では、大電力を扱う大型設備向けキャパシタモジュールを開発したほか、自動車の緊急時におけるバックアップ電源用途で販売を拡大しておりますリード形製品の更なる高性能化に向けて、研究開発活動を推進いたしました。
また、電子部品用材料開発におきましては、基礎研究センターを中心に製品の性能向上や新たなデバイスの開発を実現する材料開発に継続して取り組みました。コンデンサ用材料の研究開発におきましては、アルミニウム電極箔、封口ゴム、電解質など、主要材料の更なる高性能化を進めました。特に、コア技術のアルミニウム電極箔の開発では、高耐電圧化、高容量化、品質の安定化、生産性向上のための技術開発等を積極的に推進いたしました。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
(その他)
車載機器や産業機器に使われるインダクタ(コイル)の小形軽量化、高インピーダンス化、独自技術による表面実装化などに取り組みました。
また、ドライブレコーダーや産業機器等に使われるCMOSカメラモジュールでは、小型化や高性能化、高機能化などに引き続き取り組みました。車載用の新製品では、自動運転やADAS(先進運転支援システム)で使用される機器の次世代高速伝送規格「MIPI A-PHY」に準拠したカメラモジュール「NCM25-AC」を業界に先駆けて開発いたしました。また、車両への搭載の義務化が進んでいる後退時車両直後確認装置(バックビューモニター)に向けて、高画素化や視野角の拡大など機能を最適化した「NCM20-W」を開発いたしました。
当連結会計年度における研究開発費の金額は342百万円であります。