第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社は「環境と人にやさしい技術への貢献」を企業理念に掲げ、研究開発から生産活動などの企業活動の全域にわたり地球環境の保全に取り組んでおります。

 当社はこの企業理念のもと、各電子部品の開発・供給を通じてエレクトロニクス産業の発展に寄与することが、企業価値ひいては株主共同の利益の向上につながると考え、基本方針として推進してまいります。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループにおきましては、企業価値の向上を図るため資産効率の改善に継続的に取り組んでおり、自己資本利益率(ROE)及び投下資本利益率(ROIC)を重要な指標として位置づけております。

 

(3)適応力強化による質の高い成長 ― レジリエンス経営の実践

 新型コロナウイルス感染症の世界的大流行やロシアによるウクライナ侵攻など、われわれを取り巻く環境は大きく変化しております。このように、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の4つのキーワードで特徴づけられる「VUCAの時代」が到来する中、2023年4月より、「Create Next Value:次の価値を創造しよう、次世代の価値(企業価値、製品価値、新事業)を創造する」を長期目標とし、「困難な環境・状況に直面してもそれに適応し、乗り越え、自ら成長し、希望をもって将来の目標に対して積極的に立ち向かう力をつけていくこと」を中期基本方針とする第10次中期経営計画をスタートいたしました。

 適応力強化による質の高い成長を目標とする「レジリエンス経営」を実践し、第10次中期経営計画の達成のために全社一丸となって邁進してまいります。

 

重点施策

1. 社会から信頼され求められ続けるためのサステナブル経営の実践

2. 創造性と実践力を兼ね備えた革新的人財の育成

3. マーケットインとプロダクトアウトの融合による顧客潜在要求の提供

4. 最適ポートフォリオ(再構成・標準化)とスマートファクトリーによる生産構造改革

① ESG経営の実践

② 人財戦略の強化

③ 商品企画力強化と技術の連動による収益力の向上

④ 最適な生産体制の構築

⑤ 生産性改善によるコスト競争力強化

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 今後の見通しにつきましては、米国の相互関税を始めとする各種関税措置による世界経済への下押し圧力や、中東・ウクライナ情勢等の地政学リスクの高まりなど、当社グループを取り巻く経営環境は依然として予断を許さない状況が続くものと予想されます。

 このような状況のもと、当社は第10次中期経営計画に定める重点施策を着実に実行してまいります。販売面では引き続き車載市場、産業機器市場、ICT市場の3つの戦略市場への拡販を進めてまいります。他方で車載市場と産業機器市場の本格的な回復は下期以降となる見込みであることから、安定的な成長が期待されるICT市場に一層注力してまいります。また、生産面では高付加価値品を中心に生産能力の増強や生産設備の移管等を通じて最適地生産を実現し、カントリーリスクの高まりに備えてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

 当社は企業理念として「環境と人にやさしい技術への貢献」を掲げており、世の中を支える技術とその発展は環境や人を傷つけるものであってはならないこと、そして、電子部品の開発・製造を通じてモノづくりを支え確かな技術で社会に貢献することを存在意義としております。係る理念に基づくサステナビリティへの取組みは、中長期的には①レジリエンスの強化によるリスクの低減と②質の高い成長力によるキャッシュ・フローの増加をもたらし、持続的な企業価値の向上に資するものと考えております。特に、今般の不確実性の高い事業環境におきましては、変化にいち早く対応する適応力とイノベーションによる競争力の獲得が重要であり、企業価値の源泉である人的資本への投資や気候変動問題への対応等は注力すべき経営課題であると認識しております。

 

(2)サステナビリティに関する取組(ガバナンス及びリスク管理)

 サステナビリティ戦略を含む意思決定と監督は取締役会によって行われております。また、サステナビリティに関連する全社的リスクは、各専門的な知見を集約してリスクマネジメント委員会が行動計画を策定し、その実施状況をモニタリングしております。

 なお、委員会は年2回、取締役会及び経営委員会にリスク管理状況を報告しております。

 

(3)気候変動に関する取組(ガバナンス、戦略、リスク管理並びに指標及び目標)

 当社では、気候変動が事業継続に影響を及ぼす重要課題と認識し、2022年3月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(以下「TCFD」)」による提言への賛同を表明いたしました。この枠組みに沿って、気候変動が当社の事業に影響を及ぼすリスク・機会を分析し、経営戦略に反映するとともに、気候変動に関わる財務情報の開示に取り組んでまいります。

 なお、詳細につきましては、下記当社ウェブページ「気候変動への取り組み」をご参照ください(2024年度に係る情報の記載につきましては、2025年6月下旬に下記ページを更新予定であります。)。

 https://www.chemi-con.co.jp/company/sustainability/environment/tcfd.html

 

 ガバナンス

 当社ではリスクマネジメント委員会にて、気候変動に関わる議論や気候変動への取組み状況の評価・管理を行います。リスクマネジメント委員会から取締役会及び経営委員会へ、リスク及び機会を含めた事業に影響する可能性のある気候関連情報について年2回の報告を行い、取締役会が指示・監督を行います。また、気候変動をはじめとする環境リスクや環境課題に関する問題の解決に向けた取組みを環境委員会にて行います。環境委員会では、実行部門への取組み展開、脱炭素や省エネルギーへの取組みの進捗管理を行い経営委員会及びリスクマネジメント委員会へ報告いたします。

 

 

 戦略

 気候変動に関連した当社事業へのリスク・機会は、2022年度には全執行役員により、リスク・機会の見直しを行ったうえで評価を行いました。2023年度以降は、リスクの影響度と期間について年に1度見直しを行っております。

リスク/機会

項目

影響度

期間

想定される事象と対策

移行リスク

市場

気候変動に関連する顧客要求を満たせない場合のリスク

短期

中期

(想定される事象)

 1.5℃シナリオでは、気候変動に関連する技術への対応、その他要求事項の増加が想定され、顧客要求を満たせない場合、当社の売上減少が想定される。

(対応策)

①現在当社の最重要戦略市場に含まれる車載市場、産業機器・エネルギー変換市場は、EV化をはじめとする気候変動の緩和へ大きく貢献する市場であり、今後もこれらの市場に対し、新製品を投入するとともに、そのスピードをさらに速めていくことで顧客要求を満たし、リスクへ対応していく。この指標として、研究開発費の売上高比4%を目指し、取り組んでいく。

②当社ではグリーン調達ガイドラインにて、気候関連リスクに関する取組みを行うようサプライヤーへ示している。新規取引及び更新の際に、物理的リスクが高いサプライヤーに対し、気候関連のリスクを考慮した事業継続計画への見直しや適応策の実施を促すことで、サプライチェーンを通じた取組みを進めていく。

政策/法規制/市況

カーボンプライシング導入/電力・燃料・材料費増加

短期

中期

(想定される事象)

 1.5℃シナリオでは、気候変動の対応策として、炭素税をはじめとするカーボンプライシングの導入が想定される。例えば日本では、2028年度から化石燃料の輸入業者に炭素に対する賦課金が課される予定であり、さらに他の国においても同様の制度の導入が想定される。これらにより、間接的あるいは直接的に電力費、燃料費や材料費及び租税課金の増加が想定される。

(対応策)

 カーボンプライシングへの対応策として、当社では、環境委員会の傘下として、省エネルギー対策小委員会を設置しており、グループ全体での省エネ及び

CO排出量の削減に取組み将来の影響額の低減に努めている。

 2050年度カーボンニュートラル実現に向け、再エネ電力の導入を開始。さらなる活用についても検討を進めている。

物理的リスク

急性

異常気象による災害の激甚化

短期

長期

(想定される事象)

 4℃シナリオでは、異常気象の発生頻度が増加し、豪雨災害などの規模や影響も一層深刻化すると予測される。

(対応策)

 2011年の震災以降、製品・材料ともに複数の事業所での生産体制を採用しており、また、材料においては他社からの購入体制も構築している。さらに、国内事業所の将来にわたる浸水リスクの年間影響額は、算定済みであり、各自治体が発行済みのハザードマップに変更がないか定期的に確認を行っている。国内事業所におけるリスクへの対応は、ハザードマップを基準として考え優先順位を決めた。影響を受ける恐れのある国内製造拠点については、BCP(事業継続計画)の見直しを行い、河川計画規模(L1、10~100年に1度)の災害を受ける可能性の高い事業所については、そのリスクを軽減する対策を開始。想定最大規模(L2、1000年に1度)の災害を受ける可能性がある事業所においても対応策を順次計画・開始し、リスクの低減に努めている。

機会

市場

顧客要求に対応した製品・サービスの提供

短期

中期

(想定される事象)

 1.5℃シナリオでは、温室効果ガスの排出抑制を図るため、設備の導入、機器仕様の変更が進められ、電化や省エネを推し進めていく世界の中で、当社製品の使用機会が増大することが考えられる。

 また、当社ではこれまでも電極箔生産における使用電力の積極的削減を進めており、CO排出量の観点から優位性の高い製品を提供することが可能になると考える。

(対応策)

①現在当社の最重要戦略市場に含まれる車載市場、産業機器・エネルギー変換市場は、EV化をはじめとする気候変動の緩和へ大きく貢献する市場であり、今後もこれらの市場に対し、新製品を投入するとともに、そのスピードをさらに速めていくことで、顧客要求に対応し、事業機会を拡大していく。この指標として、研究開発費の売上高比4%を目指し、取り組んでいく。

②製品の生産におけるCO排出量の削減を念頭においた、製品の開発や生産設備の開発・導入を進めていく。

技術

新技術の開発による競争優位性の向上

機会

レジリエンス

再エネプログラム・省エネ対策の推進

短期

中期

(想定される事象)

 1.5℃シナリオでは、再エネプログラムや省エネ対策を推進することが求められる。

(対応策)

 再エネプログラムや省エネ対策を推進しコスト等の低減をはかることで競争力の向上を図る。

 影響度:売上の5%以上の影響額のあるリスク及び機会を影響度:大として評価しております。

 期 間:短期:2025年度まで、中期:2030年度まで、長期:2050年度までを想定しております。

 

 なお、当社では以下のシナリオについて分析を行い、それぞれのシナリオで必要となる対応策の検討を進めております。

 

 1.5℃シナリオ(IPCC SSP 1-1.9及びIEA NZEに基づく)で想定する世界観:2050年又はそれ以降にカーボンニュートラルを達成する為、脱炭素/低炭素社会の実現に向けた社会経済が発展する世界。

 4.0℃シナリオ(IPCC SSP 3-7.0及びNGFS(NDCs)に基づく)で想定する世界観:現在行われている気候変動に関する政策が強化されることなく継続されることにより、自然災害の激甚化による社会の適応の必要性が高まる世界。

 一部SSP8.5のシナリオ数値を使用し国内事業所のリスク試算をしております。

 

 IPCC SSP:気候変動に関する政府間パネル 共有社会経済経路シナリオ

 IEA NZE:国際エネルギー機関におけるネットゼロシナリオ

 NGFS(NDCs):気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク 各国が決定する貢献シナリオ

 

(当社グループ事業所における洪水災害の影響)

 当社グループで災害の影響を受ける事業所を特定するとともに対策を開始しております。2022年度は被災した場合、影響の大きな日本ケミコン㈱高萩工場、ケミコン東日本㈱宮城工場での対応策を策定。2023年度より順次対応を開始しております。

 

・日本ケミコン㈱高萩工場

 花貫川に隣接し、計画規模(50年に1度)の浸水深は、0.6m前後とされております。2022年度より計画規模の浸水に対し対応すべく土嚢、止水板等の設置を計画し、対策を進めているとともに、重要設備更新時に高所への設置を並行して進めております。

・ケミコン東日本㈱宮城工場

 大崎市ハザードマップによると想定最大規模(1000年に1度)の降雨で2mを超える浸水域に指定されております。当該事業所は過去に浸水被害はありませんが、これに対応するため、2022年度より計画を立て、2023年度より土嚢等の設置を開始いたしました。

 また、2024年度に竣工した新製造棟は、一部防水構造となっており、重要設備は高所へ設置するレイアウトを採用しております。

 

 リスク管理

 当社グループでは、リスクマネジメント基本方針を策定し、「リスクマネジメント基本規程」及び各種関連規程に基づいたリスクマネジメント体制の整備・強化に努めております。当社グループは、リスクマネジメント総責任者のもとにリスクマネジメント委員会を設置し、グループ全体の見地から、リスクマネジメントに係わる行動計画の策定やその実施状況のモニタリングなどを行っております。そのなかで、気候変動リスクを事業のリスクとして捉えており、委員会の中で議論がされております。委員会は年2回開催するとともに、取締役会及び経営委員会にリスク管理状況を報告しております。なかでも気候変動リスクについては、担当部門から各事業所、各部門へリスクの低減と機会獲得に向けた方針を展開し、取組み状況のモニタリングを行っております。また、関連部門への支援も実施しております。

 

 指標及び目標

 当社では、気候関連のリスクを評価・管理するために、以下の指標と目標を使用いたします。

 電機・電子業界で推進する「カーボンニュートラル行動計画」を踏まえ、2030年度に向けてエネルギー原単位改善率年平均1%以上を目標といたします。また、2050年カーボンニュートラル実現に向け、当社生産におけるCO排出量を2030年度に2013年度基準で、国内46%程度、海外平均29%の削減に挑戦いたします。

 

国内、海外CO排出量削減状況

 CO排出量は、国内は2013年度35万7千トンでしたが、2024年度22万トンと約38%の削減となりました。海外は、2013年度15万2千トンでしたが、2024年度14万3千トンと約6%の削減となっております。

 

施策について

 下記のような取組みを進めてまいります。

  電力に関する省エネ  :照明のLED化、空調機器更新、生産設備の省エネ化、整流器・変圧器の更新など

  熱・燃料に関する省エネ:ボイラーの更新、燃料転換、保温、生産機の蒸気レス化など

  再エネ発電の導入   :事業所敷地内への太陽光発電設備を導入し使用するなど

  再エネ電力などの購入 :生産事業所での再エネ電力などの購入

 2023年より中国の貴弥功(無錫)有限公司にて太陽光パネルでの発電を開始、また2024年1月よりケミコン東日本㈱福島工場にて、2024年11月よりChemi-Con(Malaysia)Sdn.Bhd.にてオンサイトPPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)による太陽光発電を開始いたしました。

 

 CO排出量削減状況、施策の詳細については、当社ウェブページ「気候変動への取り組み」をご参照ください。

 

 当社の事業活動におけるGHG排出については下記ページをご参照ください。

 https://www.chemi-con.co.jp/company/sustainability/environment/data.html

 

 当社の気候変動に関する指標・目標に対する実績については、下記ページをご参照ください。

 https://www.chemi-con.co.jp/company/sustainability/environment/target.html

 

 

(4)人的資本に関する戦略

 上記「(1)サステナビリティに関する考え方」に記載の観点(①レジリエンスの強化によるリスクの低減と②質の高い成長力によるキャッシュ・フローの増加)は、人的資本への効率的な投資においても欠かせないと考えております。大まかな方向性と致しましては、「スキルや知見の獲得・向上・多様化による環境変化への適応力の強化」と「イノベーションの創出による売上の増加と高付加価値製品の開発による利益率の向上」を重要な人的資本戦略と位置付けております。係る戦略課題を解決するため、人材育成方針として「10年後を担う人財」を掲げ、「組織や仕組みの改革を行い境界を越えて挑戦できる人財」の育成を目指します。具体的には下記のような個別戦略を定めております。

個別戦略

概要

教育の充実化・柔軟な労働環境の整備

 新たな事業領域の創出や変化する環境に対応できる人財育成のためには、教育制度の拡充やそのベースとなる柔軟な労働環境の整備がカギとなると考えます。なぜなら、教育制度の拡充による新たな知見の獲得は、イノベーションによる事業領域の創出の可能性を高めると共に、高付加価値製品の開発によるキャッシュ・フローの向上と環境変化に即応した開発によるレジリエンス強化をもたらすものであるからです。

 そのためには、挑戦と変化を是とする仕組みや従業員の健康や満足度を向上させる柔軟な労働環境を整備することが肝要と考えております。

 現在、当社グループでは、階層別研修、日本ケミコンビジネススクール、海外駐在実習制度、ITマスター制度、新規事業推進制度並びに在宅勤務制度、フレックス勤務制度、ウェルカムバック制度、DX推進などの諸施策を実施しております。また、上記のような教育制度や労働環境を整備するのと同時に、昇格に必要なキャリアポイント制度を整備し、従業員の自律的な学習やスキル向上を後押ししています。

 今後は、従業員が適切な評価を受けることができるよう、適切な人事ローテーションのあり方、360度評価の導入検討、評価者訓練の実施、1on1ミーティング等、人事制度全般の見直しを実施してまいります。

ダイバーシティの推進

 ダイバーシティの推進はそれ自体社会的価値があるのみならず、知見の結合(イノベーション)を誘発するような多様なアイデアが生まれやすい環境を整備する上でも欠かせないものと考えております。また、多様なバックグラウンドを持つ従業員を活用することは、人的資本の補完性がより強化されることにつながり、意思決定の正確性向上やリスク発現時のコストを低減することも期待できます。

 当社はダイバーシティ推進委員会を設置しており、活動第2期にあたる2024年度は国内の各拠点・事業所から委員を選出し、「意識調査」「現状分析」「意識向上」「周知啓蒙」の各ワーキンググループに分かれ、主に以下の様な取組みを実施しました。

①ダイバーシティに関する経営層・担当者・従業員へのアンケートの実施並びに意見交換会、インタビューの実施

②D&I検定勉強会の実施と受験

③えるぼし認定取得のためのデータ収集等の各種取組

 しかしながら、社内においてダイバーシティ推進の目的や考え方自体の浸透が十分とはいえないことや、育児介護と仕事の両立の負担があること等が課題として残りました。

 そのため、今後の方針としては、認知度の低さや従業員の働きづらさ等の課題を解消することを中心にダイバーシティの推進に取り組む予定です。

採用強化

 事業戦略に適した中核人材の獲得や優秀な学生の確保は、事業競争力を向上させるため急務と考えております。現在、当社グループでは積極的にインターンシップを推進しております。全国の各大学の研究室やキャリアセンターとのつながりを中心とした関係構築を継続しながらも、新たに若手社員による母校へのリクルーティング活動、特別支援学校との関係構築等、採用施策を更に多様化し、優秀な人材の確保に努めてまいります。

従業員満足度向上

 経営戦略の着実かつ柔軟な実行には、その担い手である従業員の生産性を高めることが重要と考えております。また、当社が目指すべき姿と現状のギャップを把握し、的確な課題認識が無ければ、人材の潜在的価値を伸ばす施策も適切に立案することはできないと考えます。このような観点から、現状の従業員満足度を把握し、当社が抱える課題を析出することを目的として、従業員満足度調査の実施を計画しています。

データ活用による人的資本経営

 人的資本戦略の策定・ブラッシュアップ並びにその開示と対話にはHRテクノロジーによるデータの取得と利活用が欠かせないと考えております。

 現在、当社グループでは人的リソースを有効活用するために新たにタレントマネジメントシステムを導入し、蓄積したデータを活用し、適切な人事ローテーションへの反映や従業員満足度調査内容を人事制度改革へ反映させ、各種課題解決に努めてまいります。

 

(5)人的資本に関する指標及び目標

項目

目標

実績

範囲

中核人材として活躍を期待する主任、係長、管理職補佐クラスの女性比率

2025年度末までに

2020年度末の1.5倍

2020年度末比で1.09倍

単体

新卒採用における外国人比率

8.0%

14.3%

単体

中途採用者管理職比率

2030年度末まで20.0

17.9

国内連結

 

 当社はグループ全体を通じて人的資本の活用について取組みを進めておりますが、現在、タレントマネジメントシステムの導入・拡大を進めている段階であり、必ずしも連結グループに属する全ての会社が指標のデータ管理を行えておりません。そこで、本社が率先して取組みを進めることを優先して、まずは単体ないし国内連結での開示とさせていただきます。今後は連結会社ベースでの開示を行えるよう取組みを進めてまいります。

 

3【事業等のリスク】

 当社では、リスクマネジメントを経営が関与する最上位の規格に位置づけております。当社は「リスクマネジメント基本方針」に基づきリスクマネジメント委員会を設立し、グループのリスクを横断的・総括的に管理しております。現に存在するリスクや将来考慮すべき各種リスクを「戦略リスク」「財務リスク」「ハザードリスク」「オペレーショナルリスク」「気候関連リスク」に分類し、年2回リスクマネジメント委員会でとりまとめ、取締役会及び経営委員会に報告しております。

 このようにして特定・報告されたリスクのうち、連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性のある主要なリスクには以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経済状況について

 当社グループは、コンデンサ及びその他の電子部品の製造・販売を主たる事業としており、事業活動を日本、米州、欧州、アジア等グローバルに展開しております。そのため、当社グループの製品が販売されている国、地域の経済状況の変動は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。米国の関税政策の影響については、関税相当分の売価への一部転嫁や当社のグローバルな生産・販売・物流体制の関税政策に応じた最適化、加えて米国工場を保有する強みを活かした販売戦略の実行などにより、可能な限り影響を回避する方針です。(2)為替レートの変動

 当社グループの製品は日本国内のほか米州、欧州、アジア等の地域に販売されており、連結売上高に占める海外売上高の割合は、2024年3月期79.8%、2025年3月期78.6%となっております。このため為替予約等によりリスクヘッジを行っておりますが、全てをカバーできる保証はなく、当社グループの業績及び財政状態は為替変動の影響を受ける可能性があります。

 また、連結財務諸表を作成するにあたって在外子会社の財務諸表を円換算しておりますが、換算時の為替レートにより、現地通貨における価値に変動がなくても、円換算後の価値が影響を受け、業績及び財政状態が変動する可能性があります。

(3)価格競争

 当社グループの主力製品であるアルミ電解コンデンサにおいて、国内外の競合他社との間に生じる価格競争が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。当社グループは、多様な国と市場において事業活動を行っておりますので、そのような国・市場ごとの個別の要因に応じて価格競争リスクに対応する必要があります。国・地域ごとの生産販売コストの変動、材料費の高騰、生産技術のイノベーションなどは係るリスクの要因となります。海外売上比率が高い当社グループは常に国際的な競争に晒されており、価格競争の激化は収益の押し下げのみならず世界シェアの低下を引き起こす可能性があります。当社グループといたしましては、材料開発から製品販売まで一貫した生産体制という強みを活かし、生産システムの効率化等によるコストダウンを推進する一方、高付加価値で高収益な製品の開発や重点市場への拡販により競争力強化を図っております。上記の事業戦略を踏まえ当社グループはリスク対応を実施しておりますが、価格競争の激化は当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。2025年度は受注環境が好転することが予想されており過度な価格競争は発生しない見通しです。

(4)原材料等の価格変動と調達について

 近年の物流費・人件費、原材料費の高騰などにより特に日本国内で調達する材料には大きな値上げ圧力がかかっており、アルミ箔や薬品をはじめとした原材料等の仕入価格上昇によるコストアップの影響や原材料等の調達困難による製品出荷の停滞等は当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、海外製造会社における現地調達の推進や生産性向上等によるコストダウンの継続や複数社からの購買、サプライヤーの定期的な与信管理を行うなど、リスク回避対策に取り組んでおりますが、急激な原材料等の価格高騰と災害等による広範な原材料不足は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ウクライナ紛争に代表される国家間の武力紛争による地政学的緊張が継続的な調達リスクとして顕在化しております。更には不採算改善などによる製造中止(EOL)も増えており、安定調達を喫緊の課題としてサプライチェーンの強化に取り組んでおります。

(5)製品の欠陥

 当社グループは、世界各拠点で、世界的に認められている品質管理基準(UL規格、AEC-Q200など)に従って製造を行っております。

 しかし、将来にわたり全ての製品において欠陥が発生しないという保証はありません。また、生産物賠償責任保険に加入しておりますが、この保険が賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。

 また、当社は全生産拠点にてISO9001、IATF16949の認証を取得し品質管理の強化を図っておりますが、大規模な製品の欠陥の発生は当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、欠陥の発生の際はその影響を最小限に抑えるべく迅速に対応する体制を構築しております。

(6)法令その他の公的規制等に関するリスク

 当社グループが、事業を展開する国内外での進出先における法令その他の公的規制等及びその重要な変更、特に、当該規制等を遵守するための費用負担や当該規制等に違反したと判断された場合における刑事処分、課徴金等の行政処分または損害賠償請求は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの事業は環境法令の適用を受けており、法令等の制定または重要な変更によっては環境責任のリスクを抱える可能性があります。

 当社を含む被告らは、電解コンデンサ、タンタルコンデンサ及びフィルムコンデンサに関するイスラエル競争法違反等について損害賠償等を求める集団民事訴訟の提起を受け、訴訟対応を継続しておりました。2024年12月、当社は損害賠償等の責任を認めておりませんが、諸般の事情を総合的に勘案した結果、集団訴訟原告団との間で和解金として350万米ドルを支払うことに合意し、和解契約を締結しました。本和解は、裁判所の承認手続きを経て、正式に効力発生します。

 本和解の効力発生により、各国において当社グループに対して現在までに提起されていたアルミ電解コンデンサ等の取引に関する損害賠償等を求める民事訴訟のうち、現在未解決のものは台湾で提訴を受けている案件1件のみとなりますが、重要性のある損失は発生しないと当社では認識しております。

 また、当社の子会社であるSingapore Chemi-Con(Pte)Ltd.(以下「SCC」といいます。)は、Dyson Manufacturing Sdn. Bhd.(以下「Dyson」といいます。)に販売した部品に関して、2024年12月、Dysonより、シンガポール国際商事裁判所において訴訟を提起されました。Dysonは、SCCに対して、1億4554万4762英ポンドの損害賠償等の権利があると主張しております。しかしながら、かかる主張は妥当ではないものと考えており、今後、SCCの責任が否定されるよう、裁判の中で適切に主張・立証していく所存です。

(7)自然災害や突発的事象発生のリスク

 地震等の自然災害や突発的事象に起因する、設備の破損、電力・水道の供給困難等による生産の停止は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、感染症の拡大・長期化は市場の減退を引き起こす可能性があるだけでなく、各国政府の方針により休業を求められるなど事業継続に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは従業員やステークホルダーの皆様の安全・健康を第一に考え、情報収集や行政との連携に努めながら、在宅勤務やフレックス勤務等各種感染予防対策の実施に加えてリモートワークツール等の活用により、業務遂行の継続に努めてまいります。

(8)気候関連リスク

 地球温暖化に由来する気候関連リスクは、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。現在、主要国において炭素税やカーボンプライシング・排出量取引制度の導入が進められております。係る制度導入により中期的に大きな影響を与える可能性があり、直接的・間接的に追加費用(原材料高騰による追加費用含む)が生じるリスクがあります。また、気候変動への対応に係る顧客要求(環境性能やサステナビリティに係るサプライヤー選定基準等)を当社グループが十分に満たすことができない場合、製品の市場競争力の低下等により、短~中期的に当社売上の減少に影響を与える可能性があります。さらに、自然災害の激甚化や頻度の高まりは、短~長期的にサプライチェーン全体を含む当社グループの生産活動等の事業継続の中断や臨時の追加費用の発生を生じさせるリスクがあります。係るリスクに対応するため、当社グループは省エネルギー対策小委員会が中心となり、グループ全体での省エネやカーボンニュートラルに向けたロードマップを基にしたCO削減に取り組んでおります。また、事業継続計画の見直しや自然災害による事業活動への影響が大きいと想定される事業所の防災設備等を優先的に拡充し、さらに調達・研究開発の面からも顧客要求を充足させる取組みを進めております。

(9)転換制限解除事由の発生

 当社定款に基づくA種種類株式及びB種種類株式(以下、総称して「本種類株式」という。)に付されている普通株式を対価とする取得請求権(以下、「取得請求権」という。)について、当社と本種類株式の株主であるジャパン・インダストリアル・ソリューションズ第参号投資事業有限責任組合(以下、「JISファンド」という。)との間で締結した出資契約(以下、「本出資契約」という。)において、2026年3月31日以降においてのみ行使できるとの転換制限が付されておりますが、転換制限解除事由が発生した場合には、2026年3月31日の到来前であっても、JISファンドは取得請求権を行使することができることが合意されております。

 また、当社定款において、本種類株式には譲渡制限が付されておりませんが、本出資契約上、JISファンドは、2026年3月31日までの間に本種類株式を第三者に譲渡する場合には、当社の承認が必要とされているものの、転換制限解除事由が発生した場合には、2026年3月31日の到来前であっても、当社の承認を経ずに本種類株式を第三者に譲渡できることが合意されております。

 この度、2025年3月期の当社の連結営業利益の額が、本出資契約に規定する水準に達しなかったため、転換制限解除事由が生じております。取得請求権が行使された場合には、既存株主の皆様が保有する普通株式について希薄化が生じる可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績

 当期における世界経済は、米国では個人消費が堅調に推移するなど景気は総じて回復基調で推移いたしました。一方、欧州経済は持ち直しの動きが見られましたが、ドイツを始めとした製造業の不振が長期化しており景気回復のペースは緩慢なものとなりました。また、中国においても不動産不況の継続や個人消費の停滞を背景に景気は緩やかな減速傾向が続きました。日本国内におきましても、景気は総じて緩やかな回復基調で推移したものの、企業の生産活動は弱含みで推移いたしました。なお、こうした状況の中で年明け以降、米国の通商政策の見直しにより世界経済の下振れリスクが高まり、先行きの不透明感も強まってまいりました。

 当社グループを取り巻く市場環境につきましては、ICT関連市場は米国IT大手等によるデータセンター投資が拡大し、生成AIサーバーを含むサーバー需要が高まり堅調に推移いたしました。一方、自動車関連市場は、世界的にEV市場の成長が減速したことから、自動車メーカー各社が相次いでEV戦略を見直したことに加え、部品の在庫調整の影響もあり総じて低調に推移いたしました。また、産業機器関連市場は、中国経済の低迷など景気の先行き不透明感により企業の設備投資マインドが減退したことで在庫調整も長期化し、依然として厳しい市場環境が継続いたしました。

 このような経営環境のもと、当社グループは成長が見込まれる車載市場、産業機器市場、ICT市場を戦略市場と位置づけ、ハイブリッドコンデンサ等の高付加価値品の拡販を積極的に進めてまいりました。また、インドに新たな販売拠点を開設し、2024年12月より本格的な営業を開始いたしました。生産面では、ケミコン東日本株式会社宮城工場にハイブリッドコンデンサの製造棟を新設し、同年10月より生産活動を開始いたしました。また、製品や材料の品質管理工程を一部自動化することで人為的ミスによる品質不良の低減を図るなど、引き続きスマートファクトリー化を進めてまいりました。

 当期の製品開発については、発熱量の大きいAIサーバーの普及に伴い、近い将来データセンターにおけるサーバーの冷却方式が「液浸冷却」に移行することをにらみ、液浸冷却に対応したアルミ電解コンデンサを業界で初めて開発いたしました。また、リフロー後の漏れ電流値を業界で初めて保証した導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ「PXYシリーズ」の開発や、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ「HXKシリーズ」の製品サイズ拡充などに取り組みました。

 これらの結果、当期の連結業績につきましては、売上高は1,226億84百万円(前期比18.6%減)となり、営業利益は37億40百万円(前期比60.3%減)、経常利益は15億68百万円(前期比80.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は37百万円(前期親会社株主に帰属する当期純損失212億91百万円)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

(コンデンサ)

 産機関連の需要が減少したことなどにより、売上高は1,180億22百万円(前期比19.0%減)、セグメント利益は33億2百万円(前期比62.6%減)となりました。

(その他)

 車載関連市場における部品在庫の調整等もあり、主にインダクタ(コイル)の需要が減少したことなどにより、売上高は46億62百万円(前期比7.5%減)、セグメント利益は4億38百万円(前期比26.7%減)となりました。

 

 

 生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

コンデンサ

119,277

△15.8

その他

3,438

0.1

合計

122,716

△15.4

(注)金額は販売価格によっております。

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

コンデンサ

118,674

11.0

39,662

1.7

その他

4,893

13.5

1,131

25.7

合計

123,567

11.1

40,793

2.2

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

コンデンサ

118,022

△19.0

その他

4,662

△7.5

合計

122,684

△18.6

(注)総販売実績に対して10%以上に該当する得意先はありません。

 

(2)財政状態

 当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末(以下前期末)比102億19百万円減少し、1,627億2百万円となりました。

 流動資産は、現金及び預金の減少を主な要因として、前期末比181億95百万円減少し、866億20百万円となりました。

 固定資産は、投資その他の資産が前期末比74億60百万円増加したことを主な要因として、760億82百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債の合計は、前期末比132億75百万円減少し、1,060億34百万円となりました。

 流動負債は前期末比143億85百万円減少し606億31百万円、固定負債は前期末比11億9百万円増加し、454億3百万円となりました。

 有利子負債(短期借入金、長期借入金及びリース債務の合計額)は前期末比111億56百万円減少し、782億39百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産は為替換算調整勘定の増加、退職給付に係る調整累計額の増加などにより566億67百万円(前期末比30億56百万円増)となりました。

 これらの結果、自己資本比率は前期末30.7%から34.5%となり、1株当たり純資産額は1,776円97銭から1,902円11銭となりました。

 

(3)キャッシュ・フロー

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ214億30百万円減少し、238億64百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、4億93百万円の支出となりました。

 主な収入は売上債権の増減額27億24百万円などであり、主な支出は棚卸資産の増減額37億73百万円などによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、97億54百万円の支出となりました。

 主な支出は、有形固定資産の取得による支出93億25百万円などであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、119億31百万円の支出となりました。

 主な収支は、借入金による収支105億72百万円などによるものであります。

 

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入、第三者割当による種類株式及び普通株式の発行などによるものであります。なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は782億39百万円となっております。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、期末時点の状況をもとに、各種の見積りと仮定を用いております。実際の結果につきましては、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りと仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

(繰延税金資産)

 当社グループは、繰延税金資産について、将来の課税所得見積額と実行可能なタックス・プランニングを考慮し、繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合は、繰延税金資産を取崩し、税金費用が計上される可能性があります。

 

5【重要な契約等】

(第三者割当による種類株式発行に係る出資契約)

 当社は、当社の株主であるジャパン・インダストリアル・ソリューションズ第参号投資事業有限責任組合(以下「本組合」という。)との間で出資契約書を締結しております。当該出資契約には、当社の役員について候補者を指名する権利を同組合が有する旨の合意や当社の株主総会または取締役会において決議すべき事項について同組合の事前の承諾を要する旨の合意が含まれております。なお、当社は、2023年10月10日開催の当社取締役会において、第三者割当の方法により、本組合に対して総額100億円のA種種類株式及び総額50億円のB種種類株式を発行することを決議し、第三者割当増資に係る払込みは2023年12月27日に完了しております。A種種類株式及びB種種類株式(以下「本種類株式」と総称する。)の内容は、「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況 (1)株式の総数等 ②発行済株式」に記載のとおりであります。

(1)契約の概要

契約締結日

相手先の名称

相手先の住所

合意の内容

2023年10月10日

ジャパン・インダストリアル・ソリューションズ第参号投資事業有限責任組合

東京都千代田区丸の内二丁目2番2号

・取締役指名権

本組合が当社の取締役(社外取締役)1名を指名する権利を有する旨を合意しております。ただし、本組合が所有するB種種類株式が合計3,000株以下となった場合は当該権利は消滅します。

・事前承諾の合意

本組合の事前の書面による承諾のある場合を除き、当社は一定の重要な行為(注)を行うことができない旨を合意しております。ただし、本組合は、当社の判断を最大限尊重し、かかる承諾を不合理に拒絶、留保または遅延してはならないものとされています。また、本組合が所有するB種種類株式が合計3,000株以下となった場合は、かかる事前の承諾は不要となります。

(注)対象となる行為は次のとおりです。

1 定款その他の重要な内部規則の制定、変更又は廃止

2 株式、新株予約権、新株予約権付社債その他当社株式に転換可能な権利の発行又は処分

3 自己株式の取得、株式分割、株式併合又は資本金若しくは準備金の額の変更

4 剰余金の配当その他の剰余金の処分

5 執行役員の追加、変更又は減少

6 組織体制の変更

7 一定額以上の固定資産の取得又は売却等

8 組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転その他の組織再編行為

9 事業の全部又は重要な一部の譲渡、賃貸、委任、廃止又はその他の処分

10 第三者の事業の全部又は重要な一部の譲受け、賃借又は受任

11 業務提携又は資本提携

12 新たな子会社の設立

13 第三者のグループ会社化を伴う当該第三者の株式若しくは持分の取得、又は一定額以上の第三者の株式若しくは持分の取得又は売却等

14 新規借入、又は既存の借入等に係る条件の変更若しくは既存の借入の期限前返済

15 社債の発行

16 投機目的のデリバティブ取引

17 中期経営計画の変更、停止若しくは中止又は新たな中期経営計画の承認

18 一定額以上の費用支出を伴うことが見込まれる外部専門家の起用に係る契約の締結、変更又は更新

19 一定額以上の訴訟の提起等

20 解散

21 倒産処理手続開始の申立て

22 年度予算の承認、修正又は変更

23 その他株主総会の特別決議を要する行為

 

(2)合意の目的

 当社は、2023年10月10日開催の当社取締役会において、資本性の資金調達を通じた資本増強を実施することにより、2014年より継続していたアルミ電解コンデンサ等の取引に関する競争法違反関連の事案についての対応により毀損した当社グループの連結純資産の回復を図りつつ、第10次中期経営計画(2023年度~2025年度)の各最重要施策(今後需要が高まることが予想される導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ事業等について新工場を建設し増産体制を構築すること等)を確実に実施するために必要な資金を確保することが必要不可欠との考えのもと、本組合への本種類株式の発行を通じた第三者割当増資による資金調達を行うことを決議しております。上記合意を含む本出資契約書は、当該第三者割当増資による本組合からの資金調達を実現する目的で締結したものであり、上記合意は、本組合が当社へ資金提供する前提として必要と考える当社へのモニタリングを可能とするものです。

 

(3)取締役会における検討状況その他の当社における当該合意に係る意思決定に至る過程

 当社は、上記(2)記載の資金調達の検討にあたって、リーガル・アドバイザーとして長島・大野・常松法律事務所を、また、フィナンシャル・アドバイザーとしてフロンティア・マネジメント株式会社をそれぞれ起用した上で、かかる資本性の資金調達に応じることができる外部投資家の選定プロセスを実施しました。その上で、当社にとって可能な限り有利な条件での資金調達の実現可能性を追求するべく、各金融投資家から提示された出資条件等について比較検討した結果、本組合の提案が出資総額、出資条件その他の内容を踏まえても、最も当社の資本・資金ニーズに合致した望ましい提案であると考えられたこと、また、本組合は当社のように多額の資本・資金ニーズのある上場会社に対して本種類株式と類似した種類株式の取得を通じた資金提供を実施した実績を豊富に有しており信頼に足る先であると考えられたことから、本組合との間で、資金調達に関する具体的な条件の協議を実施しました。当該協議においては、リーガル・アドバイザー及びフィナンシャル・アドバイザーからの助言を受けつつ、資金調達に係る経済条件に加えて本出資契約の合意内容についても、可能な限り当社にとって有利な条件となるよう本組合との間で交渉を実施しており、その結果、本組合との間で本出資契約について合意に至り、また、当社としては、本組合への種類株式の発行を通じた第三者割当増資による資金調達が、当社の資本・資金ニーズに合致した当該時点において当社が採り得る最善の選択肢であるとの判断に至ったため、2023年10月10日開催の当社取締役会において、本組合との間で本出資契約を締結した上で、第三者割当の方法により、本組合に対して本種類株式を発行することを決議いたしました。

 

(4)合意が当社の企業統治に及ぼす影響

 本組合は、上記のとおり、本件と類似した種類株式による上場会社への投資実績及び過去の投資案件における投資先へのサポート実績があり、当社に対し目標の達成に必要なアドバイス及びガバナンス強化支援を提供し、当社の中長期的な企業価値を向上させるパートナーとして最適であると判断しております。

 上記合意のうち取締役指名権に関する合意については、かかる当社へのガバナンス強化支援の一環として行われるものであり、また、指名対象は社外取締役1名と限定的であるため、当社の企業統治に及ぼす影響は軽微であると判断しております。また、上記合意のうち事前承諾の合意については、経営に対する一定の制約となりうるものの、本組合は、当社の判断を最大限尊重し、事前承諾を不合理に拒絶、留保または遅延してはならないとされていること、また、事前承諾事項に関する本組合との協議を通じて、当社の経営判断能力の強化やより適切かつ効率的な経営資源の管理の実現が期待できることから、やはり当社の企業統治に及ぼす影響は軽微であると判断しております。

 

(第三者割当による普通株式発行に係る出資契約)

 当社は、当社の株主である三瑩電子工業株式会社(以下「三瑩電子工業」という。)との間で出資契約書を締結しております。当該出資契約には、同社による当社株式の譲渡等及び当社株式等の追加取得について当社の事前の承諾を要する旨の合意が含まれております。なお、当社は2023年10月10日開催の当社取締役会において、第三者割当の方法により、同社に対して総額約24億円の普通株式(以下「本普通株式」という。)を発行することを決議し、第三者割当増資に係る払込みは2023年11月14日に完了しております。

(1)契約の概要

契約締結日

相手先の名称

相手先の住所

合意の内容

2023年10月10日

三瑩電子工業株式会社

大韓民国京畿道 城南市中院区サギマッコル路47

・譲渡等の制限

三瑩電子工業は、当社の承諾を得た場合を除き、2026年11月14日までの間、本普通株式について第三者に譲渡、貸与、質入れその他一切の処分ができない旨を合意しております。

・追加取得の制限

三瑩電子工業は、当社の承諾を得た場合を除き、本普通株式を除き、単独でまたは他の者と共同して、株式、新株予約権、新株予約権付社債、新株引受権、転換社債、新株引受権付社債その他当社の株式を新たに取得できる何らの権利の取得を行うことができない旨を合意しております。

 

(2)合意の目的

 三瑩電子工業は、1972年に当社が合弁会社として設立した韓国法人であり、アルミ電解コンデンサの製造販売を事業内容とする企業です。同社は、1976年以降は韓国証券取引所に上場しているものの、有価証券報告書提出日現在においても当社の持分法適用関連会社であるだけでなく、当社は同社の製品購入や同社への材料等の販売を行うなど事業上の関係も有している先です。

 当社は、上記「(第三者割当による種類株式発行に係る出資契約)」記載の資金調達と並行して、主に第10次中期経営計画(2023年度~2025年度)における成長分野への設備投資資金に充当するための追加的な資金調達として、2023年10月10日開催の当社取締役会において、第三者割当の方法により、同社に対して総額約24億円の本普通株式を発行することを決議しております。上記合意を含む本出資契約書は、三瑩電子工業からの資金調達の実施に伴い締結したものであり、上記合意は、三瑩電子工業による本普通株式の譲渡等を制限することで同社との資本提携関係を維持しつつ、三瑩電子工業による当社株式の追加取得を制限することで同社の当社に対する影響力が過剰な水準となる事態を防止する目的で規定しております。

 

(3)取締役会における検討状況その他の当社における当該合意に係る意思決定に至る過程

 上記(1)記載のとおり、三瑩電子工業は、従来より当社と親密な関係にあったこと、同社にとっても当社への出資を通じた当社との関係性強化には経済合理性があると考えられたことから、当社は、上記「(第三者割当による種類株式発行に係る出資契約)」記載の資金調達の可能性を模索する一方で、主に第10次中期経営計画(2023年度~2025年度)における成長分野への設備投資資金に充当するため、追加的な資金調達の可能性を模索すべく、同社に対して当社への出資の可否について打診いたしました。これに対して、三瑩電子工業としても当社への出資を通じた当社との関係性強化には経済合理性がありうるということで、出資について前向きな回答を得たことから、当社は、同社との間で本普通株式による第三者割当増資の可否・出資条件についても協議することと致しました。当該協議においては、リーガル・アドバイザー及びフィナンシャル・アドバイザーからの助言を受けつつ、資金調達に係る経済条件に加えて本出資契約の合意内容についても、可能な限り当社にとって有利な条件となるよう三瑩電子工業との間で交渉を実施しており、その結果、同社との間で本出資契約について合意に至ったことから、追加的に総額23億円程度の資本性の資金調達を実現すべく、2023年10月10日開催の当社取締役会において、三瑩電子工業との間で本出資契約を締結した上で、第三者割当の方法により、三瑩電子工業に対して本普通株式を発行することを決議いたしました。

 

(資金の借入契約)

 当社は、中長期的な財務基盤の安定化を目的として、2024年9月に期限の到来するシンジケート方式でのコミットメントライン110億円と運転資金30億円加えた140億円を新たなシンジケートローンとして長期化を図りました。

(1)形態

トランシェA

トランシェB

トランシェC

(2)金額

6,500百万円

4,500百万円

3,000百万円

合計14,000百万円

(3)契約締結日

2024年9月30日

(4)期間

3年

(5)適用利率

基準金利(変動金利)

基準金利+スプレッド(変動金利)

(6)資金使途

リファイナンス資金及び運転資金

(7)アレンジャー

株式会社三井住友銀行、株式会社三菱UFJ銀行

(8)参加金融機関

株式会社三井住友銀行、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社みずほ銀行、

株式会社日本政策投資銀行、富国生命保険相互会社

(9)保証

無保証

(10)担保

不動産抵当、集合動産担保、投資有価証券質権

無担保

(11)財務制限条項

修正後純資産維持条項

利益維持条項

格付維持条項

(注)2024年4月1日前に締結された借入契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度における当社グループの研究開発活動は、環境問題などの社会課題の解決につながる技術開発に重点を置き、材料から製品までの一貫した開発体制による高付加価値製品の開発や、より高い品質レベルの追求、生産技術開発等による環境負荷の更なる低減、新規事業の創出に向けた基礎研究などに取り組みました。お客様の顕在ニーズの具現化にあたりましては、知的財産を含めた要素技術のプラットフォームを礎に、基礎研究、材料、設備、製品開発、量産に至る一貫体制を活かし、スピード感ある開発を推進いたしました。また、潜在ニーズの具現化には、コンセプト主導型商品の開発に取り組みました。具体的には、若手開発者に顧客の回路技術等のスキルを習得させる目的で2023年4月に立ち上げたCAT(Connecting Application & Technology Development)プロの活動を2024年度には従来業務に落とし込み、顧客の潜在ニーズの具現化に取り組みました。さらに、2022年4月に立ち上げた新規事業推進室が主導して新規事業教育を継続して実施し、より顧客に近い立場で新たな価値の創造に取り組む人材の育成を推進いたしました。

 当連結会計年度の研究開発費の総額は4,228百万円であり、主な研究開発活動は次のとおりであります。

 

(コンデンサ)

 アルミ電解コンデンサを中心に、積層セラミックコンデンサや電気二重層キャパシタ等の電子部品のほか、製品を構成する材料の研究開発を行いました。

 アルミ電解コンデンサでは、業界で初めてサーバーの液浸冷却に対応した製品の開発に成功いたしました。データセンターで稼働するサーバーは発熱量の増加に伴い、より効率の良い冷却方法として液浸冷却方式に移行すると見られております。一方、冷却に使用される冷媒に一般的なアルミ電解コンデンサを浸漬すると、コンデンサが短寿命化することが確認されております。当社は新規材料の開発と独自の構造によりこの課題を解決し、液浸冷却対応のアルミ電解コンデンサを業界に先駆けて開発いたしました。このほか、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサにおきましては、リフロー後の漏れ電流値を業界で初めて規定した「PXYシリーズ」を開発いたしました。実装時の熱ストレスによる漏れ電流の上昇とバラツキを抑制し、はんだリフロー後の漏れ電流について初期規格値以下を保証した初めての製品となります。

 一方、電気二重層キャパシタ「DLCAP」では、自動車の緊急時におけるバックアップ電源用途で需要が拡がるリード形製品の更なる高性能化に向けて、研究開発活動を推進いたしました。

 また、電子部品用材料開発におきましては、基礎研究センターを中心に製品の性能向上や新たなデバイスの開発を実現する材料開発に継続して取り組みました。コンデンサ用材料の研究開発におきましては、アルミニウム電極箔、封口ゴム、電解質など、主要材料の更なる高性能化を進めました。特に、コア技術のアルミニウム電極箔の開発では、高耐電圧化、高容量化、品質の安定化、生産性向上のための技術開発等を積極的に推進いたしました。

 当連結会計年度における研究開発費の金額は3,933百万円であります。

 

(その他)

 車載機器や産業機器に使われるインダクタ(コイル)におきましては、独自の加工プロセスによる小型軽量化、高インピーダンス化のほか独自技術による表面実装化などに取り組みました。

 また、ドライブレコーダーや産業機器等に使われるCMOSカメラモジュールでは、小型化や高性能化、高機能化などに引き続き取り組みました。自動運転を見据えた車載用途の新製品開発では、高精細な映像を遅延なく処理機器に伝送する技術を組み入れたカメラモジュール開発等を推進いたしました。

 当連結会計年度における研究開発費の金額は295百万円であります。