第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は、以下のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

1964年の創業時に「ウシオが社員の英知によって成長し、一人ひとりの人生の中になくてはならない生きがいのような存在になっていけたら」との想いのもと「四つの基本方針」を策定しました。

 

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また、創業以来「光」が持つ可能性を信じ、光を「あかり」としてだけではなく、「エネルギー」として利用することで社会課題や世の中の技術革新に貢献することを事業方針としています。

 

(2)新成長戦略

2030年の目指す姿に向け、2024年5月に新成長戦略「Revive Vision 2030」を発表しました。「Revive」に「大きな変革をもって目指す姿を実現する」という想いを込め策定しました。

新成長戦略では、2024年度から2026年度をPhaseⅠ、2027年度から2030年度をPhaseⅡとしており、係数目標として2026年度にROE8%以上、2030年度にROE12%以上を設定し、達成を目指します。また、目標に向け着実に計画を進めていくための方針として、「経営効率を重要視した成長戦略」を掲げています。具体的な方針は次のとおりです。

成長・開発投資及びリソースを成長分野であるIndustrial Process事業へ集中

規模を追わず利益率を追求

成長投資と資本効率を両立

これらの方針のもと、新成長戦略の目標を達成するために、より実効性の高い「事業戦略」と「財務戦略」を策定しました。

 

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事業戦略

・ポートフォリオ変革の実行(不採算事業のてこ入れ)

事業ポートフォリオの変革の方向性については、経営資本配分の最適化により、注力事業(領域)へ積極的に投資しつつ、将来性等を鑑みた不採算事業の見極めを進めていきます。また、加重平均資本コスト(WACC)を見据えたハードルレートの設定などにより明確な事業評価を行い、メリハリのある投資計画への見直しを行うとともに、創業からのウシオの文化と強みであるグローバル・ニッチトップの考えのもと、「光」に関わる技術的強みを活かせ、かつ、高い付加価値の提供が可能な領域に経営資本をシフトしていきます。これらのポートフォリオ変革を実行することで、収益性向上の実現を目指します。なお、各セグメントのポートフォリオ変革実行のイメージは以下のとおりです。

 

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・半導体アドバンスドパッケージ事業の成長拡大

新成長戦略では、Industrial Process事業を注力事業と位置づけ、成長投資やリソースを同事業へ集中し、成長拡大を目指します。特に、半導体アドバンスドパッケージに関連する露光装置事業を成長ドライバーと考え、注力していきます。AI進展やIoTの拡大に伴う半導体アドバンスドパッケージのニーズの高まりに対し、露光装置のフルラインアップ化により、同市場におけるリーディングカンパニーを目指します。2023年12月に公表したアプライドマテリアルズ社との業務提携により、新たにデジタルリソグラフィ装置を製品ラインアップへ加えることで、同市場でのシェアを拡大させ、2030年に向け成長を拡大してまいります。

 

参考:アプライドマテリアルズ社との業務提携後の製品ポートフォリオのイメージ

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財務戦略

新成長戦略では、ROE向上の目標を掲げ、その実現に向けた資本最適化の取り組みを行っていきます。財務規律を重視した経営を推進かつ資産効率を改善すること及び有価証券の売却による金融資産の事業資産及び株主還元への振替えを加速することで、ROE目標の達成を目指します。

資本効率改善に向けた取り組みとしては、PhaseⅠでは1株当たり70円の下限配当を設定し、自社株投資を3年間合計で500~600億円実施する予定です。また、PhaseⅡでは機動的な自社株投資等を実施することで、自己資本を2,000億円以下に維持します。

バランスシートについては、成長投資を拡大しつつも、財務規律を重視した経営を推進かつ資産効率の改善を行います。有価証券の売却を通じ、金融資産の事業資産及び株主還元への振替えを加速させます。また、事業拡大により運転資本の増加を計画していますが、各資産回転率のモニタリングを強化するなどのバランスシートマネジメントを行っていきます。

これらの取り組みにより、ROEの向上とともに、PBRの改善・向上を目指します。

 

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(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

直近では米国の関税措置の影響が懸念事項として浮上しました。直接的な追加関税に対しては対策を講じることで、その影響を軽減できる見込みですが、間接的な影響や不透明な市況環境の変動が想定されるため、引き続き動向を注視する必要があります。

また当社グループを取り巻く事業環境において、注力事業であるIndustrial Process事業では、生成AI関連の半導体市場は成長しているものの、データセンター向け汎用サーバーやパソコン、スマートフォン、自動車向け等の半導体市場は低調であり、設備投資の先延ばしなどの影響が継続しています。FPD関連市場も低調に推移しており、当社を取り巻く事業環境は昨年時点から大きな回復は見せておらず、厳しい環境が続いております。しかしながらROEやPBRの低迷など企業価値向上に向けた課題を含め、対処すべき課題としては昨年から変化していないため、これらの課題解決を目指すべく2024年5月に発表した新成長戦略「Revive Vision 2030」の遂行に引き続き注力してまいります。

本戦略は「経営効率を重視した成長戦略」を基本方針とし、成長分野であるIndustrial Process事業を注力事業と位置づけ、成長・開発投資及びリソースを集中させるとともに、自社株投資や配当による資本圧縮を行うことで、成長投資と資本効率の両立を目指し、FY2026にROE8%以上を達成、早期のPBR1倍超を目指してまいります。これらに向けてより実効性の高い事業戦略と財務戦略を策定し、その実行に向けた取り組みを進めています。

また、ESG経営の強化にも注力しています。省エネルギー・省資源、廃棄物削減・リサイクル化など持続的な環境負荷低減に積極的に取り組むほか、コーポレート・ガバナンスやコンプライアンス体制の強化による内部統制システムの充実、さらにBCP(事業継続計画)などリスク管理体制の整備を通じて、安定した事業継続を図っています。

加えて、新成長戦略に基づく人財戦略を推進しており、注力事業であるIndustrial Process事業にリソースを集中させるため、リスキリングや人財育成を進めています。また、セカンドライフ支援制度の拡充などを通じて人件費のコントロールを行い、経営効率の改善にも努めています。

新成長戦略では、「事業戦略」、「財務戦略」及び「ESG経営」の三つの戦略を同時に推進することで、着実な改革を実現し、企業価値を持続的に高めるとともに、あらゆるステークホルダーからの信頼に応えてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社は、サステナビリティ経営推進にあたり、2021年度よりESG経営の強化に着手、2022年度より「ESG推進本部」(現:サステナビリティ推進部門)を新設しました。

当社のESG経営は、企業理念を具現化するためのものであり、「人々の幸せと社会の発展を支える」ことを共通の目的としています。社会が抱える問題を解決する「『光』のソリューションカンパニー」になるために、「5つの経営のフォーカス」を設定し、取り組むべき事項について、バランスのとれた運営を推進します。

 

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① ガバナンス

サステナビリティ経営のガバナンスとして、代表取締役社長を議長とし、取締役、執行役員等の経営陣が参画する経営会議の中でESG経営への取り組み内容や方針を決定しています。この方針に従い、サステナビリティ推進部署が経営と現場とのアライメント機能として、各事業部・各事業所やグループ各社と連携の上、計画・施策を展開しています。また、各専門委員会や各拠点のサステナブルな取り組みを共有する個別会議を通じて、周知や社内の情報共有を行っています。ESGに関する重大事項については、取締役会への報告がなされます。

 

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② リスク管理

リスク全般に関しては、グループ全体を対象とする全社的リスク管理体制のもと、リスクマネジメントプロセスを導入し、リスク管理委員会が軸となり、PDCAサイクルを回しております。当社グループでは経営理念の実践及び企業価値の向上を阻害する恐れのある事象を「リスク」と認識し、さらに、その中でESGリスクについても特定し、対応を進めています。

リスク管理規程に基づき全66項目のリスクについて、具体的なシナリオを想定した上で影響度と発生頻度の2軸でリスクを定性・定量の両面から年1回評価しています。各事業部・本部及び国内・海外の各グループ会社でアセスメントを実施し、その結果をリスク管理委員会事務局で収集・集計し、回答部署の責任者へのヒアリングも実施します。得られたデータ・情報・ヒアリング結果から重要リスク候補を選定し、リスク管理委員会へ提案し、承認された重要リスクについて取締役会へ報告しています。

リスク管理体制は、代表取締役社長を委員長とし、委員長が事業部長・本部長・部門長・グループ会社のエリア責任者から選出した委員で構成されるリスク管理委員会を設置しており、グローバルなリスク管理体制を構築しています。

その後、リスクオーナーが対策計画書を立案し、適切な措置を講じます。リスク管理委員会事務局はリスク対応状況をモニタリングし、定期的にリスク管理委員会で審議して取締役会へ報告し、グループ全体のガバナンスの強化に努めています。

なお、ここに含まれない経営戦略に関わるリスクについてはリスクの性質からリスク管理委員会での管理下ではなく、経営陣が参加する会議や各事業部での判断のもとリスクマネジメントしています。

 

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※ウシオグループのリスクマネジメントは国際標準規格であるISO 31000:2018を参照しています。

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(2)重要なサステナビリティ項目

① 人的資本

当社グループでは、当社が掲げる5つの経営のフォーカスのうち「ビジョンに近付くための人財の質向上」及び「成果を上げやすい職場環境作り」の2項目を人的資本経営の取組の中核に据え、各種戦略を策定しています。

 

a.ガバナンス

人的資本に関しては、取締役会の監督の下、人事総務部門と関係委員会・部署において協議の上、計画立案・施策推進を行っております。進捗や課題は経営会議にて定期的に報告、議論し、年1回以上は取締役会において報告を行っております。

 

b.リスク管理

人的資本においては、人財確保や技術・ノウハウ等の継承に関わる「グローバル人財戦略」を重要リスクと定め、人事総務部門で策定された施策、実施計画に対してモニタリングを行っています。施策、実施計画の進捗は、リスク管理委員会にて選定された他の重要リスクとともに、取締役会にて年1回以上報告しています。

 

c.戦略

<人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針>

当社グループは、企業理念にある「会社の繁栄と社員一人ひとりの人生の充実を一致させること」の実現に向け、経営方針・事業戦略の実現に向けた人事・労務施策を展開し、企業価値創出を加速させることを目指しています。

そのために、ウシオ電機の社員としてどのようにありたいかを定めた「人事ビジョン」や、ビジョンを実現するための「求める人財像・人財要件」を定義・明文化し、このような人財を育成するために、育成体系を構築し、社員一人ひとりの成長を支援しています。

 

ⅰ.人財の採用と育成

当社では多様な学術領域の知識を核に、ウシオの強みを理解し、ソリューションに展開できる技術バックグラウンドとビジネスマインドの双方を持った自発性のある人財の拡充に取り組んでいます。

当社の教育研修では、階層別研修に加えて、自ら学ぶ意欲を持った人財を支援するための自薦型の「ウシオラーニングプレイス」を導入しています。このプログラムでは、従業員が自身のキャリアプランに応じて必要なスキルを主体的に習得できる環境を整備し、個々の成長をサポートしています。

また、グローバルな重要ポジションのリーダー人財を育成すべく、GHCC(Global Human Capital Committee)、及び人財育成委員会の2軸で当社グループの将来を担う社員を選抜し、人財育成を実施しています。両委員会は定期的に連携を図り、グループ全体の人財戦略の方向性に沿って次世代リーダーの育成に取り組んでいます。

 

ⅱ.ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)

D&I推進は「成果を上げやすい職場環境作り」の重要取組課題に位置づけています。特に女性の活躍推進については、「2026年までに女性管理職の割合をグループ全体で15%以上、単体で10%以上とする」ことを目標に、多角的な施策を展開しています。

さらに、推進のスピードアップを図るため、2024年4月に人事部内にD&I推進課を新設し、有志社員による「D&I風土づくり委員会」の活動と連携しています。2023年2月より同委員会が主催する「女性社員向けキャリアデザインセミナー」には、2024年7月までに180名を超える女性社員が参加しており、自身の強みや伸ばすべきポイントを認識し、キャリアに関して自ら考えることに繋がっています。

 

ⅲ.従業員エンゲージメントの向上

当社グループは、エンゲージメントを「会社や職場の同僚との関係に価値を感じ、積極的に貢献したいと考えている状態」と定義し、その状態を示す設問に肯定的な回答をしている社員の割合をエンゲージメントスコアとして可視化、定点観測しています。2021年度に当社にて実施したエンゲージメントサーベイを皮切りに、2022年度以降は国内外グループ会社へと実施対象を拡大しています。

エンゲージメントサーベイを継続して実施・分析することで課題を明確化し、エンゲージメントの向上に向けた社内環境整備を進め、「ビジョンに近づくための人財の質向上」及び「成果を上げやすい職場環境作り」の実現を目指します。

 

 

ⅳ.社員の健康と安全衛生

会社の持続的な成長を支える最も重要な経営資源は「人財」であると考えており、労働時間の適正化やワークライフバランスの推進、休職後の職場復帰支援、就業と治療の両立支援策など、社員が安心・安全かつ働きやすい職場環境づくりに努めています。

「健康経営戦略マップ」により経営課題とその解決に必要な健康課題への取り組みを可視化し、社員一人ひとりが心身の健康維持・増進と働きがいを実感、挑戦し続けることのできる職場環境を整備していきます。その実現に向け、「生活習慣の改善(カラダの健康)」「メンタルヘルスの向上(ココロの健康)」「生産性の向上(仕事の健康)」の3つを目標指標とし、定量目標の設定と周知活動を推進していきます。

2024年度は、健康に関する基礎的な知識習得を目的としたeラーニングの実施や、生活習慣改善のきっかけづくりを目的とした運動イベント等の具体的な施策を実施しました。

 

指標及び目標

戦略

項目

範囲

目標

2026年度

実績

(2024年度)

ダイバーシティ&インクルージョン

女性管理職比率

単体

10%

6.8%

グループ

15以上

17.3

働きがい

エンゲージメントサーベイ

グループ

63

61

社員の健康

健康優良法人

単体(※1)

認定維持

認定維持

安心・安全

労災度数率

単体

0

0

グループ(※2)

0

0

※『人財の育成と採用』に関連する指標及び目標の一部については策定予定。

※1健康優良法人は現在ウシオ電機単体で認定を取得。今後『社員の健康』に関するグループ目標を策定予定。

※2グループ会社は単体及び国内の事業所規模100人以上の会社とする。

 

 

② 気候変動

a.ガバナンス

サステナビリティ推進部署と関連する委員会で検討した気候関連課題について、代表取締役社長が議長を務め、取締役、執行役員等の経営陣が参画する「経営会議」にて年4回以上審議し、年1回以上の頻度で審議結果を取締役会へ報告しています。また、取締役会では気候関連目標及びそれに対する進捗のモニタリングを実施しています。

役員報酬の算定方法の評価指標にはESG目標の達成度も盛り込まれ、環境を含むESG評価スコアに連動する報酬制度を導入しております。

 

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b.リスク管理

リスク管理においては、リスクの種類ごとに責任部門及び対応責任者となる取締役または執行役員を任命しています。気候変動リスクは、全社で導入している「リスクマネジメントプロセス」の下で定期的に識別し、リスク管理委員会(委員長:代表取締役社長)にて評価・モニタリングされ、重大と評価されたリスクは取締役会へ報告されます。

また、気候変動に関する機会はサステナビリティ推進部署が中心となり関係部署及びグループ会社に係る機会を網羅的に抽出する仕組みを構築し、重要度と妥当性などから識別、評価しています。モニタリングとして定期的に経営会議に報告し、重要と評価された機会は取締役会へ報告されます。

 

c.戦略

ⅰ.気候変動シナリオの選択

IEA(国際エネルギー機関)等が公表している気候変動シナリオから1.5-2℃シナリオ、及び4℃シナリオを選択し、2050年における気候変動の影響を分析しました。

 

ⅱ.分析のプロセス

各事業へ影響する主な気候変動リスク・機会を外部情報に基づいて整理し、それぞれのリスク・機会に関する将来予測データを収集しました。これに基づいて、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会と気候変動に起因する物理リスクについて事業影響を試算し、当社事業に2050年までに影響を与えうる重要なリスクと機会を特定しています。

 

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ⅲ.シナリオ分析結果

重要度の高いリスク・機会の財務影響を分析した結果、特に気温が上昇する4℃シナリオにおいては、拠点が洪水等で被災することによる影響が大きいことを特定しました。併せて、該当する生産拠点への適切な保険手配により、気候変動リスクが財務へ与える影響を軽減できることを確認しました。

 

<気候変動領域における主なリスク・機会>

リスク・機会の種類

時間軸*2

リスク・機会の概要・

財務影響*3

リスク・機会の対応策

リスク

移行リスク

炭素価格、各国の炭素排出目標・政策

炭素税負担

中期

GHG排出への炭素税の賦課により、操業コストが1.5℃シナリオでは2.0億円、2℃シナリオでは1.6億円増加する。*1

再エネ導入などによるGHG削減

原材料価格の上昇

銅価格

長期

低炭素技術(太陽光発電やEVバッテリー等)に関連する需要の増加に伴い、各鉱物の需給が逼迫。その結果、各鉱物の価格が上昇し、原材料コストが増加する。

サプライチェーン管理の強化

亜鉛価格

モリブデン価格

物理リスク

水不足

渇水による逸失利益

中期

水不足に伴う取水制限により、製品生産が遅延・停止し、逸失利益が発生する。

水不足リスクのある一部拠点での循環水採用

異常気象の激甚化

洪水による物損・逸失利益

短中期

洪水により生産拠点が被災し、製品生産が遅延・停止。物損コスト及び逸失利益が4℃シナリオでは66.8億円発生する一方で、被害額のうち66.7億円は保険により補填可能。

事業継続計画(BCP)の構築によるレジリエンス強化

保険料の増加

短中期

洪水・台風の激甚化による生産拠点の被災リスクの増加に伴い、保険料が上昇。保険コストが増加する。

状況に応じた保険内容の見直し

機会

製品・

サービス

事業創出本部

短中期

製品の環境性能向上、及びカーボンフットプリント削減に係る関心の高まりと需要増加により、環境配慮製品開発が拡大する。

高い地球温暖化係数を持つN20ガス分解システムの開発

Industrial Process事業

短中期

財務影響度

GHG排出量の削減に貢献する環境対応車(EV車等)や家電製品、電子機器に使用される半導体の需要拡大に伴った関連製品の販売が拡大する。

半導体関連製品(パッケージ向け露光装置、超高圧UVランプ等)の開発と提供

Visual Imaging事業

短中期

省エネ需要の高まりにより電力効率の高い光源への切り替え、新規導入が拡大する。

より良い電力効率製品への改善に向けた取り組み、開発

資源の効率化

短中期

製造プロセス、流通プロセスの効率化によるエネルギーコストの削減

・エネルギー目標の達成

・高効率設備や輸送手段の切り替え、新規導入

エネルギー源

短中期

省エネ推進による再生可能エネルギーの低コスト化と活用機会の拡大

・再生可能エネルギーへの切り替え

・自社工場の太陽光発電の設置

その他

短中期

脱炭素に取り組む企業として社会的評価が高まることによる投資機会の増加

・GHG排出削減量の開示

・規制動向や関連機関の動向への対応

 *1 IEAによる炭素価格の予測値と当社の各国におけるGHG排出量から試算

 *2 時間軸 短期:1年以内、中期:1~3年、長期:3年以上

 *3 財務への影響度 高:売上1,000億円以上、中:売上100億円~1,000億円、低:売上100億円未満

 

 

ⅳ.機会創出

当社グループは、「5つの経営のフォーカス」の一つとして「社会課題を解決する『光』イノベーション事業の創出」を掲げております。そのマテリアリティに基づき、事業創出本部では「新たな価値の創造と提供を通じて社会課題を解決する」というミッションを掲げる、当社グループが持つ「光」及びその周辺技術を活用したソリューションの提案を推進しております。さらに、既存製品を含む今後市場に提供する製品において環境配慮型製品の開発を追求するとともに、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に向けた取り組みを強化し、持続可能な社会の構築に貢献してまいります。

 

指標及び目標

(ⅰ)実績

・GHG排出量(Scope1、2、3)※1

・環境配慮型製品、スーパーグリーン製品の売上高※2

 

※1:GHG排出量実績について、以下ウェブサイトにて全連結範囲で、地域別、スコープ別に開示しています。排出量はGHGプロトコルに基づき算定しています。

(2025年3月期の実績値は「ウシオレポート2025」に開示し、併せてサステナビリティサイトにも掲載予定。)https://www.ushio.co.jp/jp/sustainability/data/esg_data/environmental/

 

※2:当社では環境性能を向上させた製品を「環境配慮型製品」として認定し、その中でも既存製品とは一線を画した革新的環境対応技術を採用した製品を「スーパーグリーン製品」として認定しています。

https://www.ushio.co.jp/jp/sustainability/esg/contribution_to_society/#page_content07

 

(ⅱ)目標

近年の気候変動に関する国際的見地から、当社では2018年にSBT(Science Based Targets)目標を設定し、認定されました。この目標値は定期的に見直しを行い、現在SCOPE1+SCOPE2については、2030年度までに2017年度比で55%、SCOPE3については同48.3%のGHG排出量削減を目標値としています。事業所での活動等によるCO排出削減のみならず、環境配慮型製品の開発により、SCOPE3にあたる製品使用段階でのCO排出削減も進めてまいります。さらに現在、2050年までに当社グループでSCOPE1+SCOPE2においてカーボンニュートラルを達成する目標の設定を検討しています。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月26日)現在において当社グループが判断したものであり、また、当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではありません。

 

(1)各事業領域におけるリスク

① Industrial Process事業におけるリスク

本事業では、製品及びサービスの競争力を強化するため、半導体パッケージ及びプリント基板・電子部品市場、検査装置市場といった成長分野において、関連製品の採用拡大及び新規採用に向け、研究開発投資を継続的に行っています。しかしながら、研究開発投資において想定した成果が十分かつ迅速にもたらされない可能性、または競合他社に技術開発を先行されてしまう可能性があります。これらは、当社グループの業績及び財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。

また、世界各国の経済動向や米国関税措置による影響、各事業分野における事業環境変化により、消耗品が搭載される機器の需要及び装置の稼働状況やサプライチェーンにおいて、想定を超える大幅な変化が生じた場合、収益力の低下につながる可能性があります。

今後の技術動向や市場環境変化及び取引先動向を早期に情報取得できる体制を構築し、柔軟に事業体制及び技術開発動向変化に対応していく考えです。

② Visual Imaging事業におけるリスク

本事業では、取引先として映画館や公共施設、企業、アミューズメントパーク、代理店等がありますが、市況環境の変化により取引先の経営状況の悪化が加速した場合、取引先が契約の条項を履行できなくなる可能性があり、当社グループの業績及び財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。中長期的には映画館市場において、映像コンテンツのストリーミングサービスの充実・普及拡大、消費者のコンテンツ消費行動・スタイルの変化により、シネマチェーンの存続に影響を与えるほどの大きな業界構造変化が起こるなど、プロジェクターを中心とした映像装置の需要に大きな変化が生じた場合や、シネマ用ランプにおける固体光源への代替が想定以上の速さで進む場合においては、当社グループの業績及び財務状況に重要な影響を及ぼす可能性があります。

また、世界各国の経済動向や米国関税措置による影響、各事業分野における事業環境変化により、消耗品が搭載される装置の需要及び稼働状況やサプライチェーンにおいて、想定を超える大幅な変化が生じた場合、収益力の低下につながる可能性があります。

 

なお、今後、当社グループは、技術の進展を含む事業環境変化から常に長期的な需要予測を更新し、それに応じて柔軟に対応いたします。具体的には、需要予測を基に、それに見合った生産等の体制へ柔軟に変化させていくことや、既存技術や製品を活用した競争優位のある製品を新規市場で展開するなどの新規事業創出に力を入れてまいります。

 

(2)各事業領域共通のリスク

重要リスク

リスクシナリオ

リスク対応策

サプライチェーン

・仕入れ先の廃業、原産国の法規制強化等による原材料・部品・購入品の供給遅延、途絶で操業停止等が発生する。

・資源の枯渇及び需給の逼迫などにより原価が上昇する。

・各部材毎に現状分析し、見える化したリスクに対して代替化案、バックアップ案を明確にする。

・グループの集中購買と分散購買含めて調達方針を立案する。

・価格高騰対応は適正価格査定と適正価格転嫁ができる仕組み作りを行う。

事業継続対応

・特定の国との政治的対立により現地の事業活動が制約を受けるなどにより、売上が激減する。

・地震、津波や噴火により、人的被害や工場、倉庫、事務所、設備・システム等に損害が発生、また、事業も中断する。

・各事業部からの事業方向性情報を元に各拠点の持つ強みを活かした拠点間連携によって適地生産、適地販売の観点で事業継続の取組強化を推進する。

・マニュアルに基づいた防災初動訓練とBCP訓練、自衛消防隊訓練の定期開催、備蓄品や防災設備の更新を行う。

海外危機管理

・戦争、紛争、政情不安などが発生し、当社グループ事業に悪影響が発生する。また、従業員等が巻き込まれ安全が脅かされる可能性がある。

・海外拠点と連携を強化し、定期的にリスク情報を収集できる仕組みを構築する。

・対応、判断すべき事項を整理し、報告ルールや情報共有ラインを整備する。

グローバル人財戦略

・特定の専門知識やスキルを持つ人財を採用することができず、企業として事業成長の停滞や競争力の低下等を招く懸念がある。

・豊富な経験を有する職員が業務を通じて培ってきた技術やノウハウが継承されず、生産性や競争力が失われていく。

・事業部や技術分野スペシャリストの協力を仰ぎ、グローバルな人財戦略、人事制度を構築し、施策を実行する。

・事業戦略に基づいた人財要件を明確にし、適切な報酬体系等を検討することにより、高度専門人財などの確保を目指していく。

情報セキュリティ管理

・内部の不正行為、サイバー攻撃などの外部からの悪意ある攻撃により情報の漏洩、改ざん、消失またはITシステムの停止を引き起こし、当社グループの信用低下、事業活動上の損失、賠償責任、事業の中断等が発生する。

・グループで統一した「グループ情報セキュリティポリシー」の浸透を図るため、グループ各社のセキュリティレベルに応じた教育・啓蒙活動を推進する。

・サイバー攻撃対策として検知率の高いツールとログ監視サービスの導入を推進し、グループ全体の情報セキュリティを強化する。

・定期的に情報セキュリティアセスメントを実施し、グループ情報セキュリティポリシーの遵守状況の確認と課題抽出を行う。

気候変動対応

・気候変動に係るリスクや具体的な活動状況をTCFDに則って情報開示する対応が遅れる

・取引先等からのCO₂排出量の削減要請に応えられず、取引の解除や企業イメージが低下する。

・サステナビリティに関する重要項目である気候変動の情報開示内容の拡充を行う。

・削減要請に伴う適切なGHG排出量の開示及び透明性・正確性を担保する為、GHG排出量第三者保証の取得及びCDPによる開示対応を行う。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、景気は緩やかな回復傾向にあるものの、ウクライナ情勢等の地政学リスクの継続や中国経済成長鈍化の長期化など、不透明な状況が続きました。

このような環境のもと、半導体・電子デバイス・プリント基板市場においては、世界的にパソコンやスマートフォンなどの需要が緩やかに回復し稼働は安定的に推移したものの、関連する設備投資は抑制傾向が継続しています。また、サーバー市場においては、生成AI関連に牽引され新たな需要の高まりが見られるものの、既存のデータセンター向けサーバーでは、投資の抑制及び延期が継続しています。フラットパネルディスプレイ市場においては、スマートフォンやタブレット端末用の有機ELディスプレイの需要は高まりつつあるも、液晶パネルの需要の低調により、液晶パネルメーカー各社の稼働は低調に推移しています。映像関連市場においては、ハリウッドストライキに起因するコンテンツ不足の影響などにより、映画館の稼働が低迷し、一時的な設備投資意欲の減退が発生しています。一般映像機器市場においては、イベント等での高度な映像演出ニーズの高まりにより、堅調な市況が継続しています。

 

a.財政状態

(資産)

当連結会計年度末における資産は、2,973億4百万円となり、前連結会計年度末に比べ402億4千1百万円減少いたしました。主な増加要因は、設備投資による機械装置及び運搬具の増加であります。一方、主な減少要因は、光学装置や映像装置の販売による棚卸資産の減少及び投資有価証券の売却による減少であります。

 

(負債)

当連結会計年度末における負債は、967億9千4百万円となり、前連結会計年度末に比べ37億7千6百万円減少いたしました。主な増加要因は、配当支払や自己株式購入等の資金需要による長期借入金の増加であります。一方、主な減少要因は、仕入高の減少や前連結会計年度の末日が金融機関の休日であったこと等による仕入債務の減少及び投資有価証券の売却による繰延税金負債の減少であります。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産は、2,005億9百万円となり、前連結会計年度末に比べ364億6千5百万円減少いたしました。主な減少要因は、配当支払並びに自己株式消却による利益剰余金の減少及び投資有価証券の売却によるその他有価証券評価差額金の減少であります。

 

b.経営成績

当連結会計年度は、売上高は1,776億1千6百万円(前年同期比1.0%減)、営業利益は88億2千5百万円(前年同期比32.0%減)、経常利益は124億5千1百万円(前年同期比22.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は67億9千7百万円(前年同期比37.0%減)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

(Industrial Process事業)

[露光用ランプ]

パソコンやスマートフォン等の最終製品の需要は緩やかに回復しつつあり、半導体後工程における生成AI関連需要にも支えられ、設置済み装置の稼働が堅調に推移したことで半導体向け中心に販売が増加したことや、円安による為替効果もあり、増収となりました。

 

[OA用ランプ]

セットメーカー各社の在庫調整が終わり、需要が堅調に推移したことや、円安による為替効果により、増収となりました。

 

[光学機器用ランプ]

液晶パネル向けの販売は減少も、スマートフォンやタブレット端末用の有機ELディスプレイ向けで販売が増加したことや、円安による為替効果により、増収となりました。

 

[光学装置(露光装置)]

既存のデータセンター向けサーバーの需要は低調であり、パソコンやスマートフォン等の最終製品の需要は緩やかに回復しつつあるものの、生成AI関連を除く先端パッケージ基板で過剰キャパシティ状態が継続していることから、投資抑制や延期が続き、投影露光装置及び直描式露光装置の販売が減少し、減収となりました。

 

[光学装置(その他)]

EUVリソグラフィマスク検査用EUV光源の稼働低下により保守メンテナンスサービス収入が減少し、減収となりました。

 

なお、利益面では、投資案件の絞り込みにより販管費を抑制するも、露光装置の販売減少及び将来に向けた先行投資拡大により、減益となりました。

 

以上の結果、Industrial Process事業の売上高は789億3千2百万円(前年同期比3.9%減)、セグメント利益は96億2千3百万円(前年同期比11.5%減)を計上いたしました。

 

(Visual Imaging事業)

[プロジェクター用ランプ]

主にハリウッドストライキに起因するコンテンツ不足の影響により映画館の稼働が低下し、シネマプロジェクター用クセノンランプの販売が減少しました。また、一般映像向けプロジェクター用ランプにおいて、固体光源化が進んだ影響により販売が減少し、減収となりました。

 

[映像装置(シネマ)]

ハリウッドストライキに起因するコンテンツ不足の影響等による一時的な投資意欲減退が発生し、デジタルシネマプロジェクターの販売が減少も、円安による為替効果により、増収となりました。

 

[映像装置(一般映像)]

前連結会計年度に計上した大型案件の減少により販売が減少も、その他のイベント等を中心とした高度な映像演出ニーズが堅調に推移したほか、円安による為替効果もあり、増収となりました。

 

なお、利益面では、事業ポートフォリオ変革の実施において、将来の収益構造改善に向けた製品ラインアップの見直しによる一時的な棚卸資産評価損を計上したことや、販管費(主に人件費)が増加したことから、減益となりました。

 

以上の結果、Visual Imaging事業の売上高は809億6百万円(前年同期比0.4%増)、セグメント利益は7億2千9百万円(前年同期比87.6%減)を計上いたしました。

 

(Life Science事業)

植物育成向けナトリウムランプの販売が増加し、増収となりました。また、有望案件への投資集中によるコスト抑制で収益性が改善したことにより、増益となりました。

 

以上の結果、Life Science事業の売上高は61億1千万円(前年同期比17.2%増)、セグメント損失は10億7千9百万円(前年同期はセグメント損失23億2千9百万円)を計上いたしました。

 

(Photonics Solution事業)

半導体向けデバイス等の販売が増加し、増収となりました。また、投資案件の見直しによるコスト抑制で収益性が改善したことにより、増益となりました。

 

以上の結果、Photonics Solution事業の売上高は103億1千1百万円(前年同期比0.6%増)、セグメント損失は4億1千5百万円(前年同期はセグメント損失15億1千3百万円)を計上いたしました。

 

(その他事業)

客先製造ラインの稼働回復に伴い、点灯装置の販売が増加した一方、主に販管費が増加し、減益となりました。

 

以上の結果、その他事業の売上高は13億8千2百万円(前年同期比4.1%増)、セグメント利益は8千2百万円(前年同期比39.4%減)を計上いたしました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ25億2百万円減少し599億9千5百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、204億2千4百万円の収入(前連結会計年度は89億6千6百万円の収入)となりました。

この主な内訳は、税金等調整前当期純利益の計上140億6百万円、減価償却費の発生78億7千1百万円及び棚卸資産の減少145億5千8百万円による収入と、仕入債務の減少63億6百万円及び法人税等の支払70億4千8百万円の支出によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、27億1千9百万円の収入(前連結会計年度は53億9千4百万円の収入)となりました。

この主な内訳は、定期預金の払戻49億5百万円及び投資有価証券の売却及び償還118億8千6百万円による収入と、定期預金の預入31億5千3百万円及び有形固定資産の取得136億4千1百万円の支出によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、249億9千3百万円の支出(前連結会計年度は134億8千9百万円の支出)となりました。

この主な内訳は、長期借入れ100億円による収入と、自己株式の取得290億8千2百万円及び配当金の支払51億4千1百万円の支出によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

 前年同期比(%)

Industrial Process事業(百万円)

59,313

73.8

Visual Imaging事業(百万円)

57,737

100.8

Life Science事業(百万円)

3,461

106.4

Photonics Solution事業(百万円)

10,179

106.6

報告セグメント計(百万円)

130,692

86.9

その他(百万円)

567

57.6

 合計(百万円)

131,259

86.7

 (注)上記金額は販売価格にて算定しており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

b.受注実績

当社グループの生産は過去の販売実績及び市場調査による需要の予測並びに将来の予測等を考慮し、生産計画を設定し、これに基づいて勘案された見込生産であります。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

 前年同期比(%)

Industrial Process事業(百万円)

78,925

96.1

Visual Imaging事業(百万円)

80,897

100.5

Life Science事業(百万円)

6,108

117.2

Photonics Solution事業(百万円)

10,311

100.7

報告セグメント計(百万円)

176,242

98.9

その他(百万円)

1,373

105.2

 合計(百万円)

177,616

99.0

 (注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 新成長戦略1年目の振り返り

半導体市況の長期的な低迷の影響が続く中、新成長戦略に掲げた事業ポートフォリオ変換の各施策を着実に推進した結果、新成長戦略の初年度である2024年度(2025年3月期)は、期初計画を上回る成果を達成しました。

 

■新成長戦略(1年目の振り返り)_総括

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(事業戦略)

① 半導体アドバンスドパッケージ市場での成長加速

将来の成長拡大を見据え、計画通りに先行投資を実施しました。特に、今後の主力製品となるDLT装置は、2025年度(2026年3月期)から計画通り売上に貢献する見込みです。

 

② 成長分野であるIP事業の拡大

2024年度の売上高は計画通りに推移しました。加えて、開発案件の絞り込みを進めたことで収益性が向上し、営業利益は期初計画を大幅に上回る結果となりました。一方で、半導体市況の低迷による業績への影響は2025年度以降も続く見込みのため、引き続き市場動向とその影響を注視してまいります。

 

③ 不採算事業のてこ入れと事業ポートフォリオの変革

2024年度は概ね計画通りに進捗し、事業の取捨選択を進めた結果、一定の成果を実現しました。事業効率化のための取捨選択や不採算事業への投資見直し、案件の絞り込みを行い、期初計画に対して31億円のコスト削減を達成しました。事業ポートフォリオ変換は2025年度以降も継続し、PhaseⅠの完遂を目指して今後のアクションプランを策定し、着実に推進していきます。

 

④ 開発投資方針

不採算事業を中心に開発案件の絞り込みを実施しました。特にEUV事業では一部投資を抑制し、成長分野へのリソースシフトを図りました。その結果、当初PhaseⅠ期間で520億円を計画していた開発投資を115億円見直し、405億円としました。

 

(財務戦略)

自社株投資は期初計画通り300億円を実施し、PhaseⅠの残り2年間(2025~2026年度)においても、方針に則って200~300億円の実施を予定しています。配当金についても方針に則り、1株当たり70円(PhaseⅠ期間の下限配当)へ増配しました。また、有価証券(政策保有株式を含む)の売却を161億円実施し、棚卸資産の圧縮も進めた結果、総資産は前期末比で402億円減少、純資産は364億円圧縮しました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.財務・資本政策の基本的な方針

当社グループは、財務の健全性・安定性、資本効率の向上、安定的・継続的な株主還元のバランスを追求するとともに、企業価値向上のために経営資源を適切に配分することを財務戦略の基本方針としております。

株主還元については、株主の皆様に対する利益還元が企業として最重要課題の一つであることを常に認識し、安定的な配当の実施に加え、資本効率、業績、キャッシュ・フローの状況等を勘案しながら自己株式の取得を行っております。なお、自己株式については、保有上限を発行済株式総数の5%を目途とし、その部分を上回る自己株式については毎期消却することを基本方針としております。

 

b.資金需要及び資金調達について

当社グループの資金需要として、原材料、商品等の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用に加え、設備投資、研究開発及びM&Aのための資金や配当支払、自己株式の取得等を見込んでおります。

当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、短期運転資金は基本的に自己資金によって賄い、設備投資やM&A等の長期運転資金の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの借入も活用しております。なお、当連結会計年度末における借入金の残高は380億2千7百万円となっております。

当社グループは当連結会計年度末において現金及び現金同等物599億9千5百万円を保有しており、また、換金性の高い金融資産も保有していることから、将来の予測可能な資金需要に対して不足が生じる事態に直面する懸念は少ないと認識しております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債及び収益・費用に影響を与える見積りが必要とされますが、これらの見積りについては、過去の実績、現在の状況に応じ合理的な根拠を有した仮定や基準を設定した上で実施しております。しかしながら、事前に予測不能な事象の発生等により実際の結果が現時点での見積りと異なることも考えられます。

当社グループにおける連結財務諸表作成のための重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

a.固定資産の減損

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産または資産グループについて、回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により前提条件が変更された場合には、損失が発生する可能性があります。

 

b.繰延税金資産の回収可能性

当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価に際し、課税主体ごとに将来の課税所得または税金等調整前損益を合理的に見積っております。繰延税金資産の回収可能性は主に将来の課税所得または税金等調整前損益の見積りに依存するため、これらの見積り額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

c.退職給付債務及び退職給付費用

当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算されております。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しております。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。

 

 

5【重要な契約等】

重要な契約として特記すべき事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、産業用の光源の開発・製造を中核として光学系技術をはじめ、エレクトロニクスやメカトロニクスなど、光を利用・応用していく上で不可欠なさまざまな周辺技術の開発を推し進め、光のユニット化、光の装置・システム化へと事業を展開しております。新市場・新技術の動向を常に把握し、戦略的な研究開発活動を行うとともに、各研究開発部門が相互に連携・連動しながら数々の新しい光源及び光の関連装置やソリューションを生み出す体制となっております。当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は12,835百万円であり、Industrial Process事業及びVisual Imaging事業を中心に行っております。

当連結会計年度の主な成果は、次のとおりであります。

 

(Industrial Process事業)

・最先端ICパッケージ基板向け投影露光装置及び環境配慮型露光装置の研究開発

DX、AI及び5Gなどの進展に伴うデータセンター向け半導体用パッケージ技術は、大学やコンソーシアムで盛んに研究され「More than Moore」として期待されています。

その中で、近年は微細化と高速伝送・電力効率改善を目的として、従来の有機基板より強度と電気特性に優れたガラス基板技術の研究が進んでいます。当社もお客様の新たな技術課題に対応する為、ガラス基板用露光装置の開発を完了し、2024年に初号機を上市しました。

現在は、更なるお客様の技術課題にお応えすべく、高品質の次世代露光装置の開発に注力しています。また環境対応にも積極的に取り組んでおり、環境負荷を大幅に低減した環境配慮型露光装置の開発も進めています。

今後も社会のニーズを的確に捉えた露光装置を開発・上市することで、社会やお客様に貢献してまいります。

 

・アドバンスド・パッケージ基板向け新型DI(Direct Imaging/直描式)露光装置開発

アドバンスド・パッケージ基板は、近年みられるムーアの法則に基づくスケーリング鈍化傾向に対抗し、デバイス密度向上とそれによる機能拡張を果たせる唯一の解決策として期待されています。グループ会社である株式会社アドテックエンジニアリングでは、アドバンスド・パッケージ基板向けに求められる、DI露光機による超高精細パターン描画を実現し、合わせて生産効率の向上も目指した新型DI露光装置IP-NX7000を2024年末に上市しました。また市場から求められているi線対応機の開発も進めています。

Industrial Process事業に係る研究開発費は6,612百万円であります。

 

(Visual Imaging事業)

・高輝度プロジェクター及びLEDディスプレイ等の映像表示装置の開発

グループ会社であるCHRISTIEグループでは、映画館向けや、テーマパークなどエンタープライズ用途の高輝度プロジェクターやLEDディスプレイなどの映像表示装置の研究開発に継続的に取り組んでおります。

プロジェクターでは、高輝度・高精細・広色域、更には省電力への要求を実現するレーザー光源等を採用し、その上で新しい技術やデバイスを取り入れ、先進的なプロジェクターの開発を進めています。また、付加価値向上のため、プロジェクターでマルチ画面やマッピングなどに柔軟に、そして簡単に対応するための自動調整を可能にするソフトウェアやコンテンツ送出などの周辺機器、ネットワークをベースとした画像の伝送・合成等を行う周辺機器など、映像全体をトータルなソリューションとして提供できる機材やソフトも開発提供しております。

加えて、近年、用途が拡大しているLEDディスプレイ市場向けにおいては、広色域で設置容易性を追求した独自のマイクロタイルLEDディスプレイの開発も進めております。

今後も、観客の映像体験の向上や展示者の運営の簡素化、効率化を実現する研究開発を進めてまいります。

Visual Imaging事業に係る研究開発費は3,417百万円であります。

 

(Life Science事業)

・パルス分光の開発

当社グループでは、パルス分光技術の開発と、当技術を近赤外分光に応用した非破壊全数検査機の製品開発を行っております。当技術は従来の分光法と比べ微弱光の分光を高速・短時間に実現できることが特徴であり、医薬品検査や半導体検査への導入で革新的な品質管理の仕組みを提供するものとして開発を進めております。2024年度においては、前述の検査応用分野において、必要な検査速度で試験的に分光検査を実施し有用である結果を示したとともに、光源モジュールと受光モジュールの品質・性能向上のための開発を行いました。今後も上市に向けて製品開発を進めてまいります。

Life Science事業に係る研究開発費は1,232百万円であります。

 

(Photonics Solution事業)

・Violet-LDの開発

当社グループでは、直描式露光装置、バイオ・メディカル、光センシング、光計測、AR/MRグラス等に応用されるGaN系半導体レーザ(LD)の開発を通じ、各アプリケーションにおける課題解決及び技術革新に貢献しております。2024年度においては、波長405nmで業界最高出力となる400mWのシングルモードLDの開発に成功し、サンプル出荷を開始しました。本製品は高度な結晶成長技術及び独自の光閉じ込め構造を採用しており、400mWという高光出力領域においても横シングルモード発振を維持しつつ、使用温度-5℃から85℃の広い範囲に渡って均一で安定したビーム品質と高い信頼性を有しております。今後もアプリケーションの技術発展に貢献し、社会課題を解決できる製品開発を行ってまいります。

 

・車載LDの開発

当社グループでは、高輝度、高効率、小型、長寿命という半導体レーザーの特長を活かし、様々な分野のアプリケーション拡大を図っておりますが、近年、自動車の電動化や自動運転技術の進展に伴い、LDを使用した車内プロジェクションや路面投影、ヘッドアップディスプレイ(HUD)など車載用途での技術開発が進んでおります。

2024年度においては、赤色LDの開発において、結晶成長の技術開発及び活性層の設計最適化により、高温動作時の特性と信頼性の大幅な改善を実現し、波長642nmという赤色短波長帯で200mWの高い光出力を実現し、車載用途で求められる高温85℃から低温-40℃まで動作が可能なLDを開発完了しました。今後も技術革新を続け、より高性能な製品を提供しお客様のニーズに応えるとともに、光技術を通じて社会に貢献してまいります。

Photonics Solution事業に係る研究開発費は1,420百万円であります。

 

(その他事業)

その他事業に係る研究開発費は151百万円であります。