当社は、2022年4月から2025年3月までの3年間の中期経営計画を2022年5月に開示しております。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、創業以来、一貫して創意と誠実を尊ぶ企業文化のもと、「記録と再生」をコアに据えて事業展開してまいりました。
当社グループは、企業理念を表現したタグラインである「Recording Tomorrow」のもと、レコーディング・ソリューション・カンパニーとして音響機器事業、情報機器事業を両輪とし、お客様の要請に応え、法令・規制を遵守して、魅力ある高品質な製品とサービスを提供し続けるとともに、ステークホルダーの皆様にご満足いただけるよう新しい価値を提供し、人・社会・未来に貢献する企業となることを目指しています。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、目標とする重要な経営指標を営業利益とフリーキャッシュ・フローとし、収益性、及びキャッシュフロー改善を目指します。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、「ニッチトップ戦略」を全事業共通の基本戦略としており、各事業とも特定領域でトップシェアを獲得したのち関連製品のシステム・ソリューションを展開することで、現行領域および関連新領域における堅実な事業拡大を図ります。
音響機器事業にてESOTERICブランドとTEACブランドで展開しているプレミアムオーディオは、新たなカテゴリーに挑戦し続け、ブランド価値向上によるファンベースの拡大を目指します。TASCAMブランドで展開している音楽制作・業務用オーディオ機器についても、BtoC事業ではクリエーター向けソリューション、BtoB事業ではミキサーを、それぞれ新たな収益事業軸として育成すべく開発・マーケティング投資を進め、事業成長を目指します。
情報機器事業は、アンプ・指示計を半導体製造装置向けに加え、リチウムイオン電池製造装置向けなど新たに進出した市場へ展開、グローバルに高いシェアを誇る医用画像記録機器は4K対応機器と手術映像管理ソリューションをラインナップに加えシステム提案を進め、機内エンターテインメント機器は海外のシステムパートナー数を増やすことで、それぞれ事業成長と高付加価値化に伴う収益力向上を図ります。
(4)会社の対処すべき課題
当社グループは、創業以来「記録と再生」をコアに据え、技術革新による記録メディアの変遷とともに、常に高い記録品質を付加価値とする機器をお客様に提供し続けてきました。しかしながら、インターネットや通信技術の発展に伴い、個人・法人ともにメディアやその記録再生機器に対するニーズは、減少傾向にあります。当社グループは、そのようなニーズの変化について課題と認識する一方で、競合他社と差別化を図る好機と捉え、音響機器・情報機器の両事業においてネットワーク対応機器およびソリューションの提案・提供を急ぎ、一層の高付加価値化による収益力向上と事業成長を目指します。
当社グループは、記録・再生技術への探究心を原点とした事業活動を通じて環境負荷の低減に努め、持続可能な社会を実現することを使命とし、SDGsの達成に貢献してまいります。具体的には、① 女性管理職比率増加、② 紙使用削減、③ 製品・部品リユース比率の向上を直近で取り組むべきテーマとし、それぞれ短期目標ならびに中長期目標を設定し活動しております。
また、当社グループの長きに亘る重要課題の一つであった株主の皆様に対する利益還元については、当期に配当を再開し、次期についても2024年6月21日開催の株主総会におけるご承認を経て配当を継続いたします。更に資本コストや株価を意識した対応も課題であり、将来に向けた取り組みを検討し、収益力向上と事業成長に取り組んでまいります。
当社グループは、上記のお客様、従業員、社会・環境、株主の皆様の他、金融機関を含むお取引先など全てのステークホルダーに「品質」を約束するブランドとなることで企業価値の持続的成長を目指しており、「品質」向上に向けた短期および中長期の経営課題解決に引き続き取り組んでまいります。
当社は、人々の健康と安全、自然の営みを尊重し、創意と工夫を尊ぶ企業文化のもと、記録・再生技術への探究心を原点とした事業活動を通じて、環境負荷の低減に努め、持続可能な社会を実現することを使命としています。国際社会の一員として、多方面との協力・協調を図り、サステナビリティの達成に貢献してまいります。当社は、2022年4月から2025年3月までの3年間の中期経営計画を2022年5月に開示しており、経営課題と対応方針の中にESG経営として、サステナビリティに関する取組を位置付けております。
<全般>
(1)ガバナンス
当社では、製品の設計・開発・製造、サービス提供を中心とする事業活動のあらゆる場面で、技術的・経済的に可能な範囲で環境に配慮し活動する基本方針とし、取締役会が全体を監督する体制としております。
2021年7月からは、SDGsの視点による取り組みを開始し、事業戦略コミッティ(事業戦略コミッティにつきましては、
(2)リスク・機会の管理方法
テーマは、社内から広く募集し、抽出されたテーマについて、実現可能性、当社事業との親和性、期待される効果、将来の発展性等を勘案し、事業戦略コミッティにおいて、テーマ毎の年次及び中期目標を含めて決定しております。
また、同業他社、ユーザー、廃棄物処理関連事業者等と情報を共有しながら、主にリスク低減効果が期待できる活動から費用・工数を充てて行くこととしております。また、機会についても関連する費用・工数を勘案のうえ、年次事業計画および中期事業計画に照らして親和性のある活動を中心に検討し、事業活動との整合性も高めて行きます。
(3)指標および目標
2022年4月から3年間においては、廃棄物の削減、再生利用促進、再生製品の地域社会への提供等をESG経営目標として掲げ、取り組んでおります。取り組み前の状態を基準として活動成果をモニタリングしており、2022年4月からの3年間の成果につきましては、2025年6月までに開示予定です。
<人的資本経営への取組み>
当社グループは、全てのステークホルダーに「品質」を約束するブランドとなることで企業価値の持続的成長を目指すことを方針としており、その原動力は人材であるとの認識のもと、育成・採用の取組みを進めております。
(1)人材育成方針
人的資本は、当社の経営理念を実現し、当社を持続させて行くために最重要な財産であると認識し、個々の人材が持つ志向と経営戦略との連動を図り、経営目標達成・業績向上のための人的基盤を強化してまいります。このため、スタッフ層に対しては能動的に自らを高めるキャリア構築支援研修を、マネジメント層に対してはスタッフ層が力を発揮するための組織力醸成に向けたトレーニングを展開します。
(2)社内環境整備方針
当社では、年齢、性別、国籍、雇用形態の違いや障がいの有無に関わらず、全従業員が能力を十分に発揮しながら働ける環境づくりに取り組んでおります。
特に、子育て・介護・キャリア開発・社会貢献活動と仕事の両立など、全従業員が多様なライフスタイルに応じた働き方が実現できる制度として、フレックスタイムやテレワークといった柔軟な勤務制度の整備、従業員が家族的責任を果たすための育児・介護・看護等の各種休暇・休職制度の他、利用期限のない積立休暇制度を設け、傷病、介護、不妊治療、育児・看護や社会貢献のために必要な日数を取得できるとしています。
女性の活躍促進に関しては、女性比率の低い当社の実情を鑑み女性の積極的な採用活動を行っております。
また、従業員のエンゲージメントを向上させるため、教育と能力発揮の機会を提供するとともに、安全衛生委員会の活動や労働組合との対話を通して継続的な改善を図ります。また、従業員に対するエンゲージメント調査により、毎年効果測定を行います。
(3)指標および目標
当社では、女性社員比率と女性管理職比率を同等とする目標を掲げております。短期的には、2022年3月末時点における女性社員比率19.9%を2024年3月末までに0.4%増加、同、女性管理職比率8.2%を2025年3月末までに1.5%増加させることを目指し、女性社員の積極登用・積極採用等、女性活躍の推進に取り組んでおります。2024年3月末においては、女性社員比率19.6%、女性管理職比率7.3%となり目標を達成できておりませんが、女性社員数の採用を増やすなどの他、従来の基幹職・一般職の区分を廃止して管理職登用の候補者の裾野を広げるなどの地道な施策を講じながら、より多くの女性社員の登用を図る環境を整備してまいります。
当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性のあるリスクは、主として次のようなものであります。
① 経済状況の変動による影響
1)当社グループ製品の需要への影響
当社グループは、日本、米大陸、欧州、アジア等の地域において民生用、産業用製品の販売を行っており、その地域の市場の経済状況により当社製品の需要は影響を受けます。概ね当社グループの民生用製品はその性格上生活必需品とは言えず、一般消費者の可処分所得、嗜好の変化により需要動向が変化し、また産業用製品は主に顧客の設備投資の状況等により需要が変化します。従いまして、日本、米大陸、欧州、アジア等における景気悪化等経済状況の変動、消費者嗜好の変化等による需要の縮小は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
2)当社グループの取引先への影響
経済状況の急激な変動は当社グループの仕入先や販売先の経営にも影響を与えることがあり、当社グループでは、取引先の評価、代替取引先の手当て、与信管理、債権保全等の措置を講じてはおりますが、影響を完全に排除することは困難であります。従いまして、これら取引先の経営状況も当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
3)当社グループの銀行取引への影響
事業の運営のため取引銀行からの借入金の確保は不可欠でありますが、経済状況の変化により、金融機関の貸出し姿勢が厳しくなり、当社グループの取引金融機関からの新規借入金、借入金の継続に支障をきたす状況となった場合、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
② 為替相場の変動による影響
当社グループは海外における生産・販売活動の比重が高いことから外貨建売上・仕入・費用、外貨建の債権債務の割合が大きく、また海外に子会社を保有していることから、下記のように為替相場の変動によって当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
1)営業損益への影響
当社グループの場合、米ドルにつきましては、生産あるいは仕入での割合が高く、また国内販売に対して、円高は営業損益に好影響を与えますが、ユーロとポンドは概ね販売のみであることから、それらの通貨に対する円高は当社グループの営業損益に悪影響を与え、円安は好影響をもたらします。また、当社グループの海外子会社の収益及び費用は、連結会計年度の月次平均レートにて円換算された収益及び費用を積上げており、通常各国通貨に対する円高は売上高、営業損益に悪影響を与え、円安は好影響をもたらします。
2)金融費用純額への影響
当社グループは外貨建の債権債務を保有することから、期末日の為替レートの変動により為替差益または為替差損が発生し、金融費用純額に影響をもたらします。一般的に米ドルに対する円高は当社グループの金融費用純額に好影響、円安は当社グループの金融費用純額に悪影響をもたらし、ユーロ、ポンドに対する円高は当社グループの金融費用純額に悪影響、円安は当社グループの金融費用純額に好影響をもたらします。
当社グループは売上、仕入による外貨建て債権債務につきましては、為替予約及び通貨オプションにより短期の為替相場の変動リスクをヘッジしておりますが、急激な為替変動により、為替差損が発生する可能性があります。
3)純資産への影響
当社グループの海外子会社に対しては主として現地通貨にて投資を行っており、期末日の為替レートの変動により在外営業活動体の換算差額が変動し、純資産に影響を与えます。一般的に他の現地通貨に対する円高は純資産の減少となり、円安は純資産の増加をもたらします。
③ 事故・災害等の影響
地震等の自然災害、戦争、テロ等の人為的災害、事故、又は新型インフルエンザ等の疫病の各種災害により、当社グループの設備、情報システム、従業員、取引先等の操業に影響が出る可能性があります。これらの災害に際して事業への影響を完全に排除し、復旧対策等を備えることは困難であります。従いまして、このような災害発生時には企業活動が妨げられ、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
④ 訴訟その他の法的手続について
当社グループは、世界各国で事業活動を行っており、事業を遂行する上で訴訟その他の法的手続に関するリスクを有しております。各国の法制度、裁判制度の違いもあることから、訴訟及び規制当局による措置により、当社グループが当事者となる可能性のある訴訟、法的手続きを予想することは困難であります。重大な法的責任又は規制当局による措置は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
⑤ 公的規制について
当社グループの事業活動は、当社グループが事業を行う各国の多様な規制の適用を受けます。このような規制には、投資、貿易、公正な競争、知的財産権、租税、関税、為替、環境・リサイクルに関する規制、安全保障等の理由による輸出制限を含みます。これらの公的規制の変更及び変更に伴う法規制遵守のため、追加的費用が発生した場合、また、万一これらの規制に対する違反等が発生し、罰金、課徴金の納付命令その他の措置が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
⑥ 製品の品質とその責任について
当社グループの生産工場は、世界的に認められている品質管理基準により製品の製造を行っております。しかし、当社グループの製品は、高度、複雑な技術を利用したものが増えており、また、外部の供給者からの調達もあるため品質管理へのコントロールは複雑化していることから、すべての製品について欠陥が発生しないという保証はありません。従いまして、当社グループの製品に欠陥等の問題が生じた場合には、それに関連するコストの発生、当社グループの製品の品質への信頼に影響を及ぼし、経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
⑦ 製品含有化学物質について
当社グループの製品は、多数の素材及び部品から構成されており、部品等を外部の供給者から調達していることにより、含有化学物質のコントロールは複雑化しております。当社グループでは、規制化学物質が基準値を超えて製品に含有されることのないよう、検査、確認の徹底を図っていますが、完全な対応は困難であります。万一当社グループの製品に化学物質含有等の問題が生じた場合には、当該問題から生じた損害について当社グループが責任を負う可能性があるとともに、当社グループの製品への信頼、販売活動、経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
⑧ 個人情報、その他情報の流出について
当社グループは事業活動のため、顧客についての個人情報、技術、営業、その他事業に関する営業秘密を有しております。当社グループにおいては、これらの情報の適切な保護及び管理に努めていますが、万一情報システムの障害、人為的な原因、その他の事態によりこれらの情報が流出した場合は、当社グループの事業活動、経営成績及び財政状態並びに当社グループに対する信頼に悪影響を与える可能性があります。
⑨ 競争による影響
当社グループは、当社グループが事業を行う様々な製品市場と地域市場において、他社との激しい競争に晒されております。当社グループは、新製品の導入や高品質の製品供給等により、顧客満足を得るべく努めていますが、競合他社と品質・性能・価格などについての競争は更に激化することが予想され、その結果、価格の下落等が当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
⑩ キーデバイスや部材調達の遅れ、供給不足による影響
当社グループは、他社からキーデバイスや部材を購入し、また他社に一部の設計を委託しておりますが、当社グループ単独の責によらない予想外の事態が発生し、新製品の市場投入が遅れた場合、また生産用部材の供給不足により需要を満たせない場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
⑪ 知的所有権について
当社グループは様々な知的所有権を使用しており、それらは当社グループ所有のものであるかあるいは当社グループ若しくは当社グループへの部品等の供給元が正当に使用許諾を受けたものであると認識しておりますが、当社グループの認識外で第三者の知的所有権を侵害する可能性があります。知的所有権を巡っての係争が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
⑫ 固定資産の減損の評価について
当社グループが保有する有形固定資産、無形資産については、当該資産が充分なキャッシュ・フローを生まない場合は、減損が発生する可能性があります。
⑬ 財務制限条項
安定的な資金調達を図るため、金融機関との間でシンジケートローン及びコミットメントライン契約を締結しておりますが、本契約には一定の財務制限条項が付されており、当社がこれらに抵触した場合、期限の利益を喪失し、一括返済を求められる等、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑭ 新型コロナウイルスの影響について
新型コロナウイルス感染症については、日本国内においては5類感染症へ移行され経済活動への影響が徐々に低下しております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症が再拡大し、各国政府等の要請により、世界経済・当社の事業活動及び取引先の事業活動が停滞する場合、当社は原材料及び商品調達面、また販売面の両面で当社業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
※ 上記のうち将来に関する事項は、2024年6月21日現在において当社グループが判断したものであります。
※ 上記は当社グループの事業に関する全てのリスクを網羅したものではありません。当社グループは事業展開上、さまざまなリスクがあることを認識し、それらをできる限り回避するように努めております。しかし、経済情勢、市況、金融市場等に様々な変動が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(1)業績等の概要
① 業績
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあり緩やかな回復が続くことが期待されますが、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっております。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。
このような状況の中で当社グループは、音響機器事業のうちハイエンドオーディオ機器事業は、次世代アンプのラインナップ拡充と新規ターンテーブルカテゴリーへの挑戦で更にブランド価値を高め、海外市場を伸ばす事で堅実な成長路線を引き続き目指してまいりました。プレミアムオーディオ機器事業は、引き続き中高級機のReferenceシリーズの更なる強化と、特色のあるアナログ製品や、すべてのカテゴリーにおいて新製品が競合に比べ常に個性的な価値を持つ事を目指し、収益とブランドイメージの向上に努めてまいりました。音楽制作・業務用オーディオ機器事業では、業務用デジタルミキサーのワールドワイド展開により、従来の録音再生機や各種周辺機器とともに、柔軟で質の高いトータルシステムソリューションの提供を強みとしたBtoB事業の拡大に努めてまいりました。また、BtoC事業においては、製品ポートフォリオの選択と集中を進め、付加価値を明確に中高価格帯へ転換し、採算性の向上と市場シェアの拡大を目指してまいりました。情報機器事業においては、当社のコアコンピテンスである「高度な記録と再生技術」をベースに計測、半導体、医療、移動体の各分野において最先端技術を組込んだ製品開発を行い、ニッチトップポジションの獲得を進めてまいりました。今年度は、新製品の4Kメディカルレコーダーの国内外での拡販に加え、新型コロナ感染症の5類への移行を機に、積極的な訪問営業に注力するとともに、直接ユーザーの声を聞くことで、それを反映した新たな商品開発へつなげることを目指してまいりました。
当連結会計年度におきましては、その他に区分する産業用光ドライブ事業の縮小に加え前年度好調であった半導体装置市場が需要減少する一方で、円安進行により原価が上昇、また人的資本やマーケティング活動への投資を進めた事から、売上収益および営業利益は前期と比較して減少しました。また、為替相場の変動に伴い為替差損を222百万円計上した事により、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期と比較して減少し損失となりました。
この結果、当社グループの連結会計年度の売上収益は15,672百万円(前期比0.2%減)、営業利益は445百万円(前期比21.0%減)、親会社の所有者に帰属する当期損失53百万円(前期親会社の所有者に帰属する当期利益305百万円)となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
1) 音響機器事業
音響機器事業の売上収益は10,930百万円(前期比9.1%増)となり、セグメント営業利益は1,247百万円(前期比47.4%増)となりました。
ハイエンドオーディオ機器(ESOTERICブランド)は、クロックジェネレーター、デジタルプレーヤー、プリメインアンプの新製品の上市と社内マスタリングのLPレコードを4タイトルリリースし堅調に推移しました。インドア消費の落ち込みにより国内市場が低調に推移しましたが、欧米での販売は好調に推移した事から前期比で増収となりました。
プレミアムオーディオ機器(TEACブランド)は、オリジナル技術であるVRDSメカニズム搭載のCDプレーヤーなどを上市し堅調に推移しました。中国の景気後退などを要因としたアジア地域での減収を国内市場の増収でカバーし、前期比で増収となりました。
音楽制作・業務用オーディオ機器(TASCAMブランド)は、BtoB事業において、音響設備工事案件の需要増により主力録音再生機の販売が堅調に推移したことに加え、当期より海外展開した業務用ミキサーおよび近年需要が高まっているネットワーク関連機器などの販売が好調となりました。BtoC事業においては、巣ごもり需要収束後も付加価値の高いクリエイター向け主力商品が市場から高く評価され続けており、上市した新製品効果も加わって好調な販売となりました。その結果、音楽制作・業務用オーディオ機器全体では前期比で増収となりました。
2) 情報機器事業
情報機器事業の売上収益は3,933百万円(前期比9.1%減)となり、セグメント営業利益は133百万円(前期比62.2%減)となりました。
計測機器は、データレコーダーにおいては、国内の各計測分野の需要回復による受注増や、警察庁向け生体測定装置の大型案件もあり、好調な推移となりました。センサーおよびデジタル指示計においては、新たに開拓したリチウムイオン電池製造装置向けの出荷が好調に推移したものの、コアとなる半導体市場向けは需要回復の遅れにより低調だったことから、計測機器全体では前期比で減収となりました。医用画像記録再生機器は、4K手術画像記録用レコーダーが国内・海外ともに好調に推移し、大手検査装置メーカーのオプション採用やその他OEM販売も始まりましたが、国内の消化器内視鏡向けレコーダーと欧州のFull HD手術画像記録用レコーダーの販売が減少し、全体としては前期比で減収となりました。機内エンターテインメント機器は、新たな国内顧客を獲得し、コンテンツ販売の本格化も進みましたが、海外顧客向けの保守部品販売が前期で終了したことから、同部門では前期比で減収となりました。ソリューションビジネスは、ネットワーク・インフラの保守や受託開発案件の積上げに加え、大規模PC案件も獲得し、前期比で増収となりました。
② 生産、受注及び販売の実績
1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
音響機器事業 |
3,062 |
△4.1 |
|
情報機器事業 |
1,418 |
△17.2 |
|
その他 |
288 |
△27.3 |
|
合計 |
4,768 |
△10.1 |
(注) 金額は製造原価によっております。
2) 受注実績
当社グループの製品は、原則として需要見込生産であり、該当事項はありません。
3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
音響機器事業 |
10,930 |
9.1 |
|
情報機器事業 |
3,933 |
△9.1 |
|
その他 |
809 |
△40.0 |
|
合計 |
15,672 |
△0.2 |
③ 財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析
1) 財政状態の分析
資産合計
当連結会計年度末における資産合計は11,871百万円と前連結会計年度末と比較して912百万円増加しました。主な増減は、現金及び現金同等物の増加31百万円、営業債権及びその他の債権の増加592百万円、棚卸資産の増加352百万円、無形資産の減少36百万円であります。
負債合計
当連結会計年度末における負債合計は、8,297百万円と前連結会計年度末と比較して450百万円増加しました。主な増減は、社債及び借入金の増加463百万円、営業債務及びその他の債務の増加223百万円、長期未払金の減少178百万円であります。
資本合計
当連結会計年度末における資本合計は、3,574百万円と前連結会計年度末と比較して462百万円増加しました。主な増減は、為替の円安に伴う在外営業活動体の換算差額の増加によるその他の資本の構成要素の増加475百万円、退職給付の再測定から発生した利益剰余金の増加66百万円、親会社の所有者に帰属する当期損失53百万円の計上であります。
2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度と比較して31百万円増加し、1,227百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。
(a) 営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動の結果得られた資金は、116百万円のプラス(前期294百万円のプラス)となりました。主な内訳は、プラス要因として、減価償却費及び償却費486百万円、金融収益及び金融費用373百万円、マイナス要因として、営業債権及びその他の債権の増加402百万円、長期未払金の減少322百万円あります。
(b) 投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動の結果得られた資金は、106百万円のマイナス(前期102百万円のマイナス)となりました。主な内訳は、プラス要因として、有形固定資産及び無形資産の売却による収入1百万円、マイナス要因としては、有形固定資産の取得による支出106百万円であります。
(c) 財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動の結果得られた資金は、69百万円のマイナス(前期333百万円のマイナス)となりました。主な内訳は、プラス要因として、長期借入れによる収入1,400百万円、マイナス要因としては、短期借入金の純増減額504百万円、長期借入金の返済による支出476百万円、リース負債の返済による支出367百万円であります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債及び収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断及び仮定を使用することが必要となります。経営者は、これらの見積り、判断及び仮定を過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、これらの見積り、判断及び仮定は不確実性を伴うため、実際の金額と異なる場合があります。
なお、重要な会計方針及び見積りにつきましては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4)判断及び見積りの使用 及び 3.重要性がある会計方針」に記載しております。
② 経営成績の分析
各事業における経営成績については「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要 ① 業績」及び「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 連結財務諸表注記 5.セグメント情報」をご参照下さい。売上収益、営業利益、当期利益の主要な増減については次のとおりであります。
1)売上収益
当連結会計年度の売上収益は、15,672百万円と前連結会計年度よりも27百万円減少しております。その他の事業の売上収益の減少が大きく影響しました。
2)営業利益
営業利益は、445百万円と前連結会計年度よりも119百万円減少しております。
(a) 販売費及び一般管理費
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、6,581百万円と前連結会計年度と比較して219百万円増加しております。これは、主に人件費の増加73百万円、広告宣伝費の増加57百万円、販売促進費の増加37百万円、旅費交通費の増加35百万円によるものであります。
(b) その他の損益
当連結会計年度のその他の損益は、19百万円の利益と前連結会計年度と比較して38百万円減少しております。
3)当期利益
当期損失は、53百万円と前連結会計年度よりも359百万円減少しております。これは、主に金融費用の増加によるものであります。
(a) 金融収益
金融収益は、8百万円と前連結会計年度よりも3百万円増加しております。これは、主に受取利息の増加によるものであります。
(b) 金融費用
金融費用は、448百万円と前連結会計年度よりも220百万円増加しております。これは、主に支払利息の増加52百万円、為替差損の増加170百万円によるものであります。
(c) 法人所得税費用
法人所得税費用は、58百万円と前連結会計年度よりも22百万円増加しております。これは、主に法人税、住民税及び事業税の減少14百万円、法人税等調整額の増加37百万円によるものであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
運転資金及び設備資金につきましては、自己資金または借入金により調達することとしております。借入金につきましては、2024年3月29日期日となっていた既存のシンジケートローン契約(上限2,540百万円)については終了し、新たにシンジケートローンによるコミットメントライン(上限2,500百万円、2025年3月31日期日)及びタームローン(1,300百万円、2028年3月31日期日)を締結いたしました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要 ③ 財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載のとおりであります。
④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、目標とする重要な経営指標を営業利益とフリーキャッシュ・フローとし、収益性、及びキャッシュ・フロー改善を目指しております。
当社グループは、「BOX+SOLUTION」を戦略骨子とし、機器販売に留まらず、クラウド・IoT・5G等の新技術がもたらす利便性を、ユニークなソリューションとしてエンドユーザーに提供し顧客満足度を高めることで、BtoB事業の安定的な成長を目指すことで、営業利益、フリーキャッシュ・フローの改善を目指していきます。
当連結会計年度において、新たに締結した経営上の重要な契約等は次のとおりです。
(1)借入金契約
|
相手先 |
国名又は地域 |
契約内容 |
|
株式会社りそな銀行 |
日本 |
2024年3月29日期日となっていた株式会社りそな銀行をアレンジャーとするシンジケートローン契約(上限2,540百万円)については終了し、以下のシンジケートローン契約を新たに締結いたしました。 ① 締結日:2024年3月15日 ② アレンジャー兼エージェント:株式会社りそな銀行 ③ 参加金融機関:株式会社りそな銀行、株式会社関西みらい銀行、 株式会社伊予銀行、株式会社八十二銀行、 株式会社足利銀行、株式会社京葉銀行、 首都圏リース株式会社、株式会社千葉銀行 ④ 組成金額: トランシェA(コミットメントライン)2,500百万円 トランシェB(タームローン)1,300百万円 ⑤ 満期日: トランシェA(コミットメントライン)2025年3月31日 トランシェB(タームローン)2028年3月31日 ⑥ 担保の内容:無担保 ⑦ 財務上の特約: ・決算期末日における連結財政状態計算書における自己資本比率を10%以上維持 ・決算期における連結損益計算書における個別開示項目前営業損益の黒字維持 ・東京証券取引市場における上場維持 |
(2)連結子会社の吸収合併
当社は、2023年12月22日開催の取締役会において、当社の完全子会社であるエソテリック株式会社を、2024年4月1日を効力発生日として吸収合併することを決議し、2024年4月1日付で吸収合併いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 注記事項(重要な後発事象)」に記載の通りであります。
当社グループの研究開発活動は、主として提出会社に集中しており、提出会社及び現地販売法人において技術動向・市場動向の情報を集め、提出会社にて開発を担当し、国内外の生産拠点にて生産を行っております。
当連結会計年度における提出会社の研究開発活動は、2事業部に所属し、各事業部に直結した開発部門が市場のニーズに合致した商品をいち早く商品化すべく、研究開発を推進しております。
当連結会計年度の開発人員は94名で、研究開発費として
当連結会計年度の各事業部における主な研究開発の概況と成果は次のとおりであります。
<音響機器事業>
ポータブルオーディオレコーダー市場向けでは、Portacaptureシリーズにつづき32bitフロート録音に対応し超コンパクトで軽量な本体サイズでスマートフォンからのリモートコントロールやカメラとのワイヤレスタイムコード同期に対応したピンマイク付きレコーダーDR-10Lproを市場導入しました。またミキサー市場向けで既に市場導入済みのデジタルミキサーSonicviewのファームウェアおよびSonicview ControlアプリのバージョンアップにてIF-MTR32の新機能"Overdub Mode"に対応、Snapshot recallの高速化、Monitor機能の拡充、Audio Follow Video機能の追加などを行いv1.6.0をリリースしました。設備市場向けには、文教・会議室・商業施設などの音響システムの中核をなすデジタルミキサーとして操作性に優れた60mmフェーダーを搭載しハウリングサプレッサーやアナウンスミューティング(ダッキング)、ミュージックミューティング、マルチバンド出力イコライザー、ディレイなど設備音響システムに欠かせない機能を網羅したMX-D1606を市場導入しました。同時にシステム設計から施工現場での最終調整までをサポートする専用ソフトウェア「TASCAM MX-D CONNECT」をリリースしました。また、タスカムとしては初となる設備向けアンプとして小規模空間向け多用途/多機能、Bluetoothレシーバー搭載ミキシングアンプMA-BT240を市場導入しました。さらにブルーレイ/DVD/CD、SDカードやUSBメモリから様々なフォーマットの動画や静止画、音声ファイルの再生に対応したコンパクトサイズの業務用マルチメディアプレーヤーBD-MP1MK2を市場導入しました。
プレミアムオーディオカテゴリー(TEACブランド)では、Referenceシリーズのラインナップ拡充を図っています。Reference500シリーズでは、独自ディスクリートD/Aコンバーター「TRDD5」搭載のUSB DAC/プリアンプ/ヘッドホンアンプUD-507の設計開発を行いました。上級機種UD-701Nに搭載されているディスクリートDACシステムを500シリーズ用にブラッシュアップ、最適化して搭載しています。また超高音質ヘッドホンとの接続を主目的としたヘッドホンアンプHA-507の設計開発を行いました。こちらの製品は、ハイインピーダンスのヘッドホンもしっかりドライブできるデュアルモノ、フルバランス、高出力ヘッドホンアンプ搭載の純アナログ構成となっています。
ハイエンドオーディオカテゴリー(ESOTERICブランド)では、既存デジタルプレーヤーのクロック回路、オーディオ回路などをブラッシュアップし、音楽再生能力をさらに高めたSEバージョン Grandioso P1X SE/D1X SE/K1X SE、N-01XD SEの4機種を設計開発し市場導入いたしました。また独自のオーブン温度コントロールとディスクリート発振回路のマスターサウンドディスクリートクロックユニットを搭載したクロックジェネレーター G-01XD/G-05の2機種を設計開発し市場導入いたしました。さらに独自電流伝送に対応したインテグレーテッドアンプ2機種 純A級 F-01/AB級 F-02を設計開発し市場導入いたしました。F-01、F-02は、追加設計開発し市場導入を行ったオプション電源ユニットPS-01Fを接続し、プリアンプ回路ブロックの電源を強化することで、さらなる高音質にグレードアップすることができるようになっています。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
<情報機器事業>
機内エンターテイメント機器では、ポータブルストリーミングサーバーPortaStream™ PS-V50を株式会社ソラシドエアへ納入いたしました。株式会社ソラシドエアでは2017年12月から2020年11月まで機内エンターテインメントサービスを提供していましたが、この度サービス再開に向けてこれまでの課題の整理を継続し、サーバーの機種選定からコンテンツ調達の仕組み等全体の見直しを行いPortaStream™ PS-V50の導入に至りました。また、PortaStream™の第2世代となる新製品PS-V50 GEN2を2024年2月より販売開始しました。PS-V50 GEN2は、Wi-Fi6採用による通信の高速化、バッテリーのホットスワップによる長時間連続稼働、LTE・USB・LAN 等の外部インターフェイス機能の強化、オープンプラットフォームによるサードパーティの追加開発の簡便化等の特徴を備えています。
医用画像記録再生機器では、メディカルビデオレコーダーUR-NEXT 4Kを欧米への販売に続き、中国顧客への販売を開始しました。UR-NEXT 4Kは、内視鏡や手術用顕微鏡の4K映像など医療現場で使用されている4Kカメラの映像記録を可能にした、SDI入力映像端子とHDMI入力映像端子のモデルを展開する、4K解像度に対応したメディカルビデオレコーダーです。
当連結会計年度における研究開発費の金額は