文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当グループ(当社及び当社の関係会社…以下同じ)が判断したものであります。
当連結会計年度における国内外の経済環境は、北米は堅調に推移し、欧州はゆるやかな回復傾向にありました。また、中国では景気減速が続くなど、地域ごとの濃淡はありましたが、全体としては底堅く推移しました。一方で、中東情勢の緊迫化や各国の経済政策の転換による影響等もあり、先行き不透明な状況が継続しました。
当グループは経営理念「創造 貢献」を軸に2030年に向け企業価値を最大化するための基本方針を策定し推進しております。これまで成長の推進力となってきた“新たな価値軸の創造”、経営課題と位置付ける“コアブランドの育成・確立”など価値創造を推進する「コア戦略」と、人材や組織・事業体制などを強化する「基盤戦略」を推進していくことで、カシオらしさを発揮しながら一つひとつ課題を克服し持続的な成長を目指しております。
①収益基盤強化とイノベーション創造
当グループは2024年3月期から2026年3月期までの3ヶ年中期経営計画を推進しており、前半を「収益基盤強化期」と位置付け抜本的な構造改革と筋肉質な基盤づくりに注力してまいりました。2026年3月期は成長軌道への転換を目指す「変革・イノベーション創造期」と位置付け、コア事業の再成長と既存アセットを活用した新規事業の創出、成長戦略の実行力を高める経営基盤の強化に取り組んでまいります。
1)時計事業………………………「G-SHOCK」は、メタルラインを中心とした中・高価格帯カテゴリの拡大と、ブランドマーケティングの強化を継続するとともに、新デザインカテゴリーの創出により収益力の向上を図ってまいります。また、直営店・直販ECビジネスの拡大を推進してまいります。
2)EdTech(教育)事業……関数電卓は、ユーザー体験を高めるべく、ソフト及びハード両面からの商品開発及び学販活動(需要創造)強化による新規ユーザー獲得により、着実な事業収益力の強化に注力してまいります。
3)サウンド(楽器)事業…………構造改革の着実な推進により事業体質強化を行い、高付加価値ジャンルのブランド認知拡大継続による収益性強化を図ってまいります。
4)新規事業………………………技術等の保有資産を活用して、今後の成長市場における戦略的な新事業領域の設定と新事業創出に向けた取り組みを強化してまいります。
事業構造の立て直しにより収益基盤強化を図り、より成長性の高いコア事業、ネクストコア領域へ成長投資していく「変革・イノベーション創造期」へと繋げることで持続的な成長を目指してまいります。
②資本収益性・資本効率性を意識した経営
当グループは、キャピタルアロケーション方針に基づき、バランスシートの効率化によりフリー・キャッシュ・フローの創造に努めるとともに、財務安全性を確保しながら手元資金を有効活用し、コア事業への成長投資及びアライアンス等の戦略投資を促進することで、中長期的な成長とROEの持続的な向上を図ってまいります。また、資本コストを意識した事業活動の推進及び株主還元強化により資本効率性の改善を図ることで、引き続き企業価値の向上を目指してまいります。
③事業を通じたサステナブルな社会への貢献
当グループにとってのサステナビリティとは、「創造 貢献」という経営理念のもと、企業活動を通じて当グループと社会の持続的成長を目指すことと考えております。当グループが提供する多くの製品・サービスは一般消費者向けであり、当グループが持つ技術と創造力をもって、お使いいただく方たちにとって日々の暮らしをより豊かにするとともに、地球環境保全にも貢献することが使命であり、重要であると考えております。
時計事業においては、再生可能な有機資源由来の物質を原料とするバイオマスプラスチックを使用しても過酷な環境下で強度・耐久性を保持する「G-SHOCK」を開発・設計・製造し、販売しております。また、当グループは地球全体の大きな環境問題である「脱炭素社会の実現」を推進しています。国内外の主要拠点での再生可能エネルギーへの切り替えを推し進め、脱炭素2050年実質ゼロに向けたエネルギー戦略を実践しています。さらに、組織や社員のパフォーマンスを最大化し、企業価値向上につながる人的資本経営を強化するなど、マテリアリティの見直しを実施し、企業成長と社会発展の両軸を重視したサステナビリティ経営を引き続き強化してまいります。
④コーポレート・ガバナンス機能の強化・充実
当社は、持続的成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、迅速な意思決定や適切な業務執行とともに、経営監視機能の強化を重要課題と位置付けております。取締役会の実効性をさらに高めコーポレート・ガバナンス体制の充実を図るため、2025年6月27日開催予定の定時株主総会後における取締役会の体制について、社外取締役比率は50%、女性取締役比率は25%といたします。当グループは企業価値の向上と持続的な成長を実現できる強固な経営基盤を形成するべくコーポレート・ガバナンス機能の強化・充実を推進するとともに、引き続き健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成にも努めてまいります。
2024年10月に当社のサーバーがランサムウェア攻撃を受けたことにより、個人情報を含む当社の内部資料に関するデータの一部が流出していることが確認されたほか、当社及び当社の関係会社の重要なシステムが一部使用できなくなったことにより部品の調達、生産、出荷等が一部停止し事業活動に影響が生じました。
当グループではこのような事態が発生したことを厳粛に受け止め、セキュリティの専門家の支援、監修のもと、海外拠点を含むグループ全体のITセキュリティの強化を継続的に実施するとともに、情報管理体制の見直しを行い、ルール徹底のために社内教育を強化することにより再発防止に努めております。
当社の経営理念である「創造 貢献」という考え方は、当社独自の強みを最大限に活かし、時代の変化に合わせて常に新しい文化を創造することで、世の中の役に立ち続ける、ということを意味しています。当グループは、この貢献のための創造を通じて、人々の暮らしの中に溶け込み、必要としてくれる人にとって最も大切な存在となるような、新しい価値を生み出し続ける企業を目指しています。
当グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当グループが判断したものであります。
当グループでは気候変動をはじめとする企業と社会の中長期的な持続可能性に係る事項への対応を経営上の重要課題と認識し、CEO、CHRO、CFOそして、事業運営マネジメントを行う「事業軸」と「機能軸」の各責任者を主なメンバーとする「サステナビリティ委員会」において十分に議論の上、「取締役会」に諮っています。これにより、重要事項に関する経営としての意思決定や、重要事項の推進状況に対する監督が適切になされる体制を整備しています。
当社のコーポレート・ガバナンス体制図は、「
当グループでは、自然災害リスクを含むサステナビリティに係るリスクの識別、優先的に対応すべきリスクの絞り込みについて、「サステナビリティ委員会」の中でより詳細な検討を行ったうえで、年二回取締役会に報告しております。
特に重要と認識されたリスクについては、リスクマネジメントを統轄する「内部統制委員会」の監督の下、関連組織が相互に連携を取りながら適切に対処しております。
(気候変動)
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づき、当グループが直面する気候変動影響がもたらすリスクと機会について、発生可能性と事業影響度から重要度を評価し、シナリオ分析に基づく評価結果を開示(※)しています。特定されたリスクについては、今後の環境変化を踏まえ、定期的に分析を実施してまいります。
(※) 詳細については、当社ウェブサイト(
(人的資本投資)
“人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。”(経済産業省)との考えに基づき、産業構造の変化、技術革新の進展、労働者の就業意識・形態の多様化といった外部環境を踏まえ、当社の状況、経営方針、重点戦略に即した人材(人的資本)に対する基本コンセプトと方針を以下のように定め、それに従った各施策を行います。
経営方針:市場に新たな価値軸を創り出し、唯一無二のブランドに育て上げる
重点戦略:2030年度までに各事業品目に新たな価値軸となるコアブランドを確立し、企業価値を最大化する
基本コンセプトと方針

①健康経営 ~人員構成上の課題より
当社における平均年齢の高まりや年齢中央値、年齢分布などに鑑み、身体的・精神的な充足度、アブセンティーズムやプレゼンティーズム改善への着手を通じた社員一人ひとりのパフォーマンス向上に取り組むことは、会社業績への貢献にも大きく寄与すると考えます。
当社では2022年度に「CASIO健康基本方針」を定め、健康経営への取り組みを強化し、人事部を中心にカシオ健康保険組合など関係部署と連携し幅広い取り組みを進めております。当社は、2025年3月に経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する『健康経営銘柄』に初めて認定されました。また、経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人」において、大規模法人部門の『ホワイト500』に2年連続で認定されております。
人的資本投資KPIとして男性労働者の育児休業及び休暇取得率・健康診断再検査受診率・適正体重維持者率・喫煙率を設定しておりますが、KPIの進捗度合いに鑑み、2023年度に、2030年度目標を健康診断再検査受診率については当初の80%から100%へ、適正体重維持者率については当初の70%から80%へ引き上げました。
今後も、全社一丸となって、健康意識の向上・職場活性化・生活習慣病対策等、9つの重点項目において、引き続き各種健康増進施策を推進します。
②自律人材 ~求められる自律人材とキャリアサポート制度のさらなる充実
当社では、「自ら考え行動し、その成果として会社の成長発展に貢献する」という社員像を求めております。パフォーマンスの高い自律人材に成長してもらうには、自らキャリアを高めたいというキャリア観が必要だとの考えから、2019年より社員の自律的キャリア形成の実現を支援するキャリアサポート制度を開始しました。キャリアサポート制度は、自身のキャリアに対する気づきとインプットを得る機会としての「キャリア研修」を中心に、社内の自発的な異動を支援する「社内公募制度(ジョブチャレンジ)」、より幅広いキャリアの可能性を拡げるために社外転身も視野に含めた「副業兼業制度」、「セカンドキャリア制度」で構成されています。
キャリア研修は、新入社員、2年目社員、30歳、40歳、49歳、55歳を対象に実施しています(2024年度受講実績114名)。KPIとして正社員に占めるキャリア研修実施カバー率を95%と定めておりましたが、2023年度に、あるべき割合として100%へ変更いたしました。社内公募制度では年間30名程度の方が異動しており、自発的なキャリア開発の一助となっております。セカンドキャリア制度も年間20名程度の方が毎年申請しており、副業兼業制度ではこれまで50名程度が社外での活動に従事しております。
今後も自律人材育成のため、正社員に占めるキャリア研修実施カバー率、ジョブチャレンジ実施延べ経験人数をKPIに定め、キャリアサポート制度のさらなる充実に努めてまいります。
③マネジメント強化 ~多様な人材のマネジメントを通じた価値創造
全社で高いパフォーマンスを発揮し続けるためには、社外でも活躍できる優秀な人材(自律人材)に、いかに社内で活躍いただくかが重要です。キャリアサポート制度によって育成した自律人材をいかにマネジメントし、成果を生み出す集団にするかは当社にとって喫緊の課題です。上位層の高いマネジメント能力は、その部下たちの能力に影響を与えます。その観点から、部門長研修を実施することでマネジメントレベルの底上げを図っております。併せて次期役員候補育成人数をKPIとして設定し、部門長クラスを対象とした経営幹部育成施策を実施し、役員候補の人材プールを充実させることで、上位層の質向上に努めています。
また、次期女性所属長候補育成人数をKPIとし、ポジティブアクションとして、女性管理職候補の選抜育成施策を実施しています。併せて上記取り組みの結果指標となる管理職に占める女性労働者の割合と、職位による処遇差が明らかになる正社員の男女の賃金の差異をKPIに設定し、適正な状態になるよう改善してまいります。
(気候変動)
当社は、2050年までに当グループの温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指して、2030年に向けた温室効果ガス排出量の削減目標を策定し、SBT(Science Based Targets)イニシアティブ(※)の認証を取得しました。現在の目標値はパリ協定のWB2℃目標に則っていますが、今後はSBTイニシアティブの基準(1.5℃目標)を含め目標値の見直しを検討してまいります。
(※) 企業の温室効果ガス排出削減目標が、パリ協定が定める水準と整合していることを認定する国際的イニシアティブ
なお、Scope1及びScope2、並びにScope3のいずれも、2023年度実績は目標内で推移しております。
Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
(※) 第三者検証を伴う2024年度の確定値は、検証終了次第、当社ウェブサイト
(https://www.casio.co.jp/csr/environment/data/#02)にて開示を予定しております。
(人的資本投資)
(注) 1 当社においては、指標についての具体的な取り組みを進めているものの、連結グループすべての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、上記指標については、提出会社の実績及び目標を記載しております。
2 健康診断再検査受診率、適正体重維持者率及び喫煙率は臨時従業員を含めた実績及び目標を記載しております。
3 正社員は正規雇用労働者のうち無期雇用契約社員ではない者であります。
4 2024年度は人事諸施策の優先度見直しに伴い、社内公募制度(ジョブチャレンジ)未実施となりましたが、2030年度目標達成に向け、着実に推進してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスク、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、顕在化した場合の影響の内容、当該リスクへの対応策は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当グループが判断したものであります。
(1) 日本経済及び世界経済の状況
当グループの製品は、日本、アメリカ、ヨーロッパ及びアジアなどの世界各国において販売されており、その需要は各国経済状況の影響を受けております。市況が下降した局面においては、売上の減少や過剰在庫などが発生する可能性があり、とりわけ当グループ製品の大部分が個人消費者を対象としているため、各国の個人消費の動向は当グループ事業に大きく影響しております。当該リスクが顕在化する可能性は常にあり、その影響を完全に回避することは困難ではありますが、当該リスクへの対応については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、常に市況の動向を見極めながら事業活動を遂行してまいります。
(2) 戦争、テロ、感染症等の要因による社会的混乱
戦争やテロなど当グループによるコントロールができない事態によって、当グループの各種設備や生産拠点等が壊滅的な損害を被る可能性があります。この場合は、当グループの生産体制等に影響を与え、生産・出荷の遅延、営業活動の停滞などにより、売上高が減少し、また、修繕や代替の為に多大な費用を要する可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性は常にあり、特に、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、中東における地政学リスクの高まりによる世界経済への影響が懸念されます。当該リスクへの対応については、固有の市場状況に応じたきめ細やかなマーケティング活動を展開し、状況に応じて臨機応変な対応に努めるなど、リスク管理を行ってまいります。
(3) 外国為替リスク及び金利リスク
「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載の通り、当グループは世界各地で製品の生産販売を行っており、結果として為替レートの変動による影響を受けております。当グループの利益は、円と対象通貨との為替レートが変動した場合に不利益を受ける可能性があり、また、当グループは金利変動リスクにも晒されており、このリスクは全体的な営業費用、調達コスト、金融資産・負債の価値(特に長期債務)に影響を与える可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は常にあり、その影響を完全に回避することは困難ではありますが、当該リスクへの対応については、為替の変動の影響を軽減し、またこれを回避するために、為替予約取引等の手段を講じてまいります。
(4) 価格変動
当グループの関連業界においては、数多くの企業が国内外の市場シェアをめぐり激しい競争を続けております。短期間における急激な価格変動や、販売価格の下落が長期にわたって続きコストダウン活動がこれに追いつかない場合、当グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクは一部の品目で顕在化しておりますが、当該リスクへの対応については、採算の取れるアイテムの選択、他社との差別化を図って優位性を保持することなどにより、採算を確保するよう努めてまいります。
(5) 新製品
当グループにおいて新製品開発を行うに際し、新製品の開発プロセスは、複雑かつ不確実なものであり様々なリスクを含んでいます。当グループが新たな人気製品を速やかにかつ定期的に発売できなかった場合、あるいは競合他社が当グループと同様の製品を発売し、特にそれが当グループの新製品発売と同時期であった場合は、市場における唯一の先行者、もしくは先行集団の一員として当グループが享受出来たはずの優位性を減少させる可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は現時点では認識しておりません。当該リスクへの対応については、新製品の開発スケジュールの管理徹底、市場への投入時期の見極め等により、優位性を保つよう努めてまいります。
(6) 大口顧客との取引
当グループの大口顧客の戦略変更、製品仕様の変更、もしくは注文の解約やスケジュール変更は、当グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は現時点では認識しておりません。当該リスクへの対応については、顧客との緊密な連携に努めてまいります。
(7) アウトソーシング
当グループは生産効率と営業利益率の改善を目的に、製造・組立工程の相当部分を外部サプライヤーに委託しているため、納入遅延や確実な品質管理が難しくなるといった生産面のリスクが生じる可能性があります。また、当該委託先による関係法令違反や第三者の知的所有権侵害等の問題により、当グループの業績及び製品声価に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は現時点では認識しておりません。当該リスクへの対応については、委託先の選定にあたって、技術力や供給能力などについてあらかじめ厳しく審査を行い、信頼できる取引先の選定に努めてまいります。
(8) 技術開発と技術の変化
当グループの事業分野におけるテクノロジーの急激な変化、市場ニーズの激変等から当グループ製品が予想より早く陳腐化する可能性があり、その場合、当グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は現時点では認識しておりません。当該リスクへの対応については、当グループの事業分野におけるテクノロジー変化の動向を注視し、技術開発の促進に努めてまいります。
(9) 国際活動及び海外進出に関するリスク
「第1 企業の概況 3 事業の内容」及び「第5 経理の状況 1(1) 連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」に記載の通り、当グループの生産・製品販売の大部分は日本国外で行われております。従って、当グループの財政状態及び経営成績等はかなりの程度、海外の政治経済情勢並びに法整備に影響されます。特に予期しない規則や制度の変更、法令の適用は予測が難しく、当グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に米国の関税率引き上げによる当グループ業績への影響が想定されますが、価格対応やサプライチェーン対応など、スピード感をもって実行するとともに、関税政策の動向を継続して注視してまいります。
(10) 知的財産
当グループは基本的に自社開発技術を使用しており、特許、商標、及びその他の知的所有権などの組合せにより、テクノロジーの保護を図っていますが、以下のようなリスクが当グループに該当することもあります。
・競合他社による同様の技術の独自開発
・当グループが出願中の特許申請の不承認
・当グループの知的財産の悪用・侵害を防ぐための手段が有効に機能しない場合
・知的財産に関する法規制が当グループの知的財産を保護するのに不充分である場合
・当グループの将来の製品又は技術が他社の知的財産権を侵害しているとされる場合
当該リスクが顕在化する可能性は現時点では認識しておりません。当該リスクへの対応については、当グループは基本的に自社開発技術を使用し、特許、商標、及びその他の知的所有権などの組合せにより、テクノロジーの保護を図ってまいります。
(11) 製品の欠陥・訴訟問題
当グループは、創業以来重大なクレームや悪評を受けたことはありませんが、将来において当グループ製品の製造物責任や安全性などを問うクレームが発生しないという保証はありません。当該リスクが顕在化する可能性は現時点では認識しておりません。当該リスクへの対応については、消費者製品の製造販売会社として、製品そのものの品質にとどまらず、環境保全やリサイクルまで含めた全てを「カシオの品質」と位置付け、お客様にご満足いただける品質をお届けするのが品質保証の役割と考え、厳正なる品質管理を行ってまいります。
(12) 情報管理に関するリスク
当グループは、事業の推進・展開に関連して多くの個人情報や機密情報を保有しております。当該リスクへの対応については、情報の管理について、社内規程の整備と周知、従業員に対するセキュリティ教育、サイバー攻撃及びシステム障害に関する保全(予防・監視及び対処・復旧準備)等を講じ、情報管理の強化を図っておりますが、予期せぬ事態により情報が流出する可能性は皆無ではありません。情報が漏洩した場合、営業秘密の流出による競争力の低下及び顧客の信用や社会的信用の低下を招き、当グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
以上のようなリスクを認識した上で対応策を講じてまいりましたが、2024年10月に、当社のサーバーがランサムウェア攻撃を受けたことにより、当社及び当社の関係会社の重要なシステムが一部使用できなくなり、部品の調達、生産、出荷等がシステムの復旧まで一定期間停止したことで、事業活動に影響が生じました。システムの停止期間中はこれらの業務に関して代替的な業務プロセスにて対応しておりましたが、安全な環境を再構築しシステムを復旧しました。当グループは、セキュリティの専門家の支援、監修のもと、海外拠点を含むグループ全体のITセキュリティの強化を継続的に実施するとともに、情報管理体制の見直しを行い、ルール徹底のために社内教育を強化することにより再発防止に努めてまいります。
(13) 提携・合弁・戦略的出資
当グループは、事業の推進・展開を図るため、あるいは経営の効率化を目指すために、国内を含むいくつかの国において提携・合弁・戦略的出資を行っております。これらにあたっては事前に、投資回収や収益性などの可能性について様々な観点から検討しておりますが、相手先の経営環境、経営方針や事業環境の変化等により協力体制の確立が困難となる可能性や、充分な成果が期待できない可能性、また業務統合に想定以上の時間を要する場合もあり、提携や買収が当初の目的を達成できず、当グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は現時点では認識しておりません。当該リスクへの対応については、事前に、投資回収や収益性などの可能性について様々な観点から検討するなど、慎重に進めてまいります。
(14) 当グループが保有する有価証券の価値下落
有価証券への投資において株価・金利等の変動により影響を受ける他、基本的な経済全般の不確実性により、当グループの資産額に大きな影響を与える可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は常にあり、その影響を完全に回避することは困難ではありますが、当該リスクへの対応については、保有の意義や合理性について定期的に検証し、慎重に判断してまいります。
(15) その他リスク
上記以外に以下の要因によっても将来的に当グループの事業並びに業績に影響を及ぼす可能性があります。
・IT業界の景気循環性
・必要時における、機器、原材料、利用設備、電力等の妥当なコストでの入手可能性
・退職給付会計に係る法令の改定、制度改訂、運用環境の激変
・税効果会計に係る会計基準の改正、税率変更を含む税制改正
・火災や、地震、洪水などの自然災害(気候変動によって発生するものも含む)や業務上の事故などの発生
なお、当該リスクが顕在化する可能性は現時点では認識しておりません。当該リスクへの対応については、各種事前対策を定めるとともに、法令を遵守し慎重に進めてまいります。
また、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は、変更後の区分に基づいて記載しております。
当連結会計年度における売上高は2,617億円(前期比2.6%減)、営業利益は142億円(前期比0.2%増)、売上高営業利益率は5.4%(前期比0.1ポイント増)となりました。また、経常利益は141億円(前期比21.1%減)、税金等調整前当期純利益は116億円(前期比33.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は80億円(前期比32.3%減)、1株当たり当期純利益は35円22銭(前期比15円69銭減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
当グループ(当社及び連結子会社)は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、前期比143億円減の161億円の収入となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純利益116億円(前期175億円)、減価償却費107億円(前期118億円)、投資有価証券売却益71億円(前期3億円)、運転資金(売上債権、棚卸資産、仕入債務)の減少額65億円(前期58億円)、法人税等の支払額34億円(前期47億円)であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前期2億円の支出に対し46億円の収入となりました。主な内訳は、有形及び無形固定資産の取得による支出83億円(前期99億円)、有形固定資産の売却による収入36億円(前期74億円)、投資有価証券の取得及び売却・償還による純収入109億円(前期19億円)、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出6億円(前期はなし)であります。
これらの結果、フリー・キャッシュ・フローは、前期比94億円減の208億円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前期と比べて29億円支出が増加し、247億円の支出となりました。主な内訳は、長短借入れ及び返済による純支出75億円(前期は純収入28百万円)、自己株式の取得による支出45億円(前期91億円)、配当金の支払額103億円(前期105億円)であります。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前期比42億円減の1,403億円となりました。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
(1) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における国内外の経済環境は、北米は堅調に推移し、欧州はゆるやかな回復傾向にありました。また、中国では景気減速が続くなど、地域ごとの濃淡はありましたが、全体としては底堅く推移しました。一方で、中東情勢の緊迫化や各国の経済政策の転換による影響等もあり、先行き不透明な状況が継続しました。
このような環境のもと、当グループは中期事業計画3ヶ年の前半を「収益基盤強化期」と位置付けており、2年目である当連結会計年度は、「市場に新たな価値軸を創造し、唯一無二のブランドに育て上げる」という思いを根底に、企業価値の向上を図る上で、先ずは事業構造的な課題を解決することが最優先であると判断し、その課題解決のために、事業ポートフォリオの整理、人員構造の適正化、組織風土改革を実行してまいりました。
事業ポートフォリオの整理としては、不採算事業の構造改革を実行し、全社リソースを時計及びコンシューマ事業に集中できるポートフォリオを整備いたしました。人員構造の適正化としては、ポートフォリオの整理とともに筋肉質な事業構造へ転換を図り、組織風土改革としては、パーパス/バリューズを制定し、求める社員像の実現を進めてまいりました。
当連結会計年度の当グループ業績は、増収増益を目指したものの、2024年10月に当社のサーバーがランサムウェア攻撃を受けたことにより、当社及び当社の関係会社の重要なシステムが一部使用できなくなり、部品の調達、生産、出荷等がシステムの復旧まで一定期間停止したことで、事業活動に影響が生じました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は2,617億円、営業利益は142億円、経常利益は141億円、親会社株主に帰属する当期純利益は80億円、1株当たり当期純利益(EPS)は35円22銭となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
減収となりましたが、中国を除く地域は増収となり、「G-SHOCK」の中高価格帯は順調に推移しました。
売上高は1,661億円(前期比0.5%減)、営業利益は202億円(前期比3.0%減)となりました。
(コンシューマ)
サウンド(楽器)は、流通在庫は解消されつつある一方、市況の厳しさが続き、減収となりました。
売上高は820億円(前期比2.9%減)、営業利益は21億円(前期比12.8%増)となりました。
売上高は63億円(前期比11.9%減)、営業利益は3億円の赤字(前期4億円の黒字)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の減少などにより、前期比143億円の減少となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却による収入が減少したものの、投資有価証券の取得及び売却・償還による純収入の増加などにより、前期比48億円の増加となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出が減少したものの、長短借入れ及び返済による純支出の増加などにより、前期比29億円の支出増加となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前期比42億円減の1,403億円となりました。
資本の財源及び資金の流動性については以下のとおりです。
当連結会計年度における資金調達につきましては、キャピタルアロケーション方針に則った施策の進捗及び資金調達コストの上昇を踏まえ、151億円の借入金返済に対し75億円の長期借入を実施した結果、有利子負債残高は前期比74億円減少し、423億円となりました。
当グループの資金需要の主なものは、製品製造のための材料の購入費等の製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用に係わる運転資金及び設備投資資金です。なお、営業費用の主なものは、人件費、研究開発費、広告宣伝費であります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当グループは2024年3月期から2026年3月期までの3ヶ年中期経営計画を推進しており、前半を「収益基盤強化期」と位置付け抜本的な構造改革と筋肉質な基盤づくりに注力してまいりました。2026年3月期は成長軌道への転換を目指す「変革・イノベーション創造期」と位置付け、コア事業の再成長と既存アセットを活用した新規事業の創出、成長戦略の実行力を高める経営基盤の強化に取り組んでまいります。
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高、営業利益、営業利益率及びROEについて、目標を定めており、2026年3月期の目標(米国関税政策影響含まず)は、売上高2,700億円、営業利益240億円、営業利益率8.9%及びROE7~8%水準としております。
当連結会計年度においては、計画が売上高2,620億円、営業利益140億円及び営業利益率5.3%に対し、実績は売上高2,617億円、営業利益142億円及び営業利益率5.4%となり、ROEは3.6%となりました。
当グループ(当社及び連結子会社)は、「創造 貢献」を経営理念に掲げ、独創的な製品の開発を通じて社会に貢献することを目指し、積極的な研究開発活動を行っております。
研究開発体制は、当連結会計年度においては、要素技術から製品・サービスの開発までを一貫して開発本部にて担い、事業イノベーションセンターとNB(New Business)センターの役割および機能を見直すなど、新規事業の早期立上げを進めています。
なお、当連結会計年度における研究開発費は
(時計)
当セグメントに係る研究開発費は
◎ 装着性と耐摩耗性を両立したタフシリコーンバンドの“G-SHOCK”
耐衝撃ウオッチ“G-SHOCK”の新製品として、装着性と耐摩耗性を向上させた新開発のタフシリコーンバンド採用の「FINE METALLIC SERIES」(4モデル)を開発しました。
樹脂素材の中でも柔らかく腕なじみのよいシリコーン素材を使用するには、摩耗に弱いという素材の特性をクリアする必要がありましたが、シリコーン樹脂にウレタン樹脂を重ねるという二層構造にすることで耐摩耗性を高めています。また、バンド強度を高めると同時に、樹脂素材への蒸着処理という新たなデザイン表現を可能にしました。メタルベゼルと一体となった時に遜色のない、メタリックな質感にこだわっています。
◎ 「ガリウムタフソーラー」を採用した“OCEANUS(オシアナス)”
1974年に発売したカシオ初の腕時計「カシオトロンQW02」から50年を記念して、ブランド横断の記念モデル「Zero to One」(6モデル)を開発しました。
中でも、“OCEANUS(オシアナス)”「OCW-SG1000ZE」は、発電を高効率化した「ガリウムタフソーラー」を同ブランドで初めて採用しています。これまで、少数生産の特別な“G-SHOCK”にのみ採用してきたガリウムタフソーラーを、量産化に向けて開発を進め、今回のモデルでの採用に至りました。
ガリウムタフソーラーの採用により、機能面では発電効率が向上し、より速い充電が可能となります。また、デザイン面ではガリウムタフソーラーの高効率な特性を活かし、ソーラー部分を大幅に小型化でき、フェイスデザインの幅が広がりました。これにより、質感の高い不透過の金属文字板や、立体的なフェイスデザインなど独創的な構造を実現しています。
(コンシューマ)
当セグメントに係る研究開発費は
◎ グランドピアノの臨場感溢れる音を実現したエントリーモデル
格調高いキャビネットタイプの電子ピアノ“CELVIANO(セルヴィア―ノ)”の新製品として、グランドピアノの自然な弾き心地と臨場感を手軽に体感できるエントリーモデル「AP-300/AP-S200」を開発しました。
上位機種に搭載している音響・音源コンセプトを受け継いでいるほか、「スマートスケーリングハンマーアクション鍵盤」を搭載し、グランドピアノのように細かなニュアンスまで表現できます。
「AP-300」は、グランドピアノが鳴り響くような自然な臨場感を実現するために、音響技術のエッセンスを上位機種のグランドフォニックサウンドシステムから継承しています。「AP-S200」は、上位機種の設計コンセプトを独自の開放構造とスリムなデザインで両立しました。
(システム)
当セグメントに係る研究開発費は
(その他)
当セグメントに係る研究開発費は
上記以外にセグメントに関連づけられない基礎研究に係る研究開発費は817百万円であり、主な成果は次のとおりであります。
◎ 飼い主になつく癒しのAIペットロボット“Moflin(モフリン)”
日々人と触れ合うことで感情豊かに成長するAIペットロボット“Moflin(モフリン)”を新製品として開発しました。当社が技術・開発ライセンスを供与し実施したスタートアップ企業によるクラウドファンディングでは、想定の30倍を上回る申し込みがあり、高い評価を得ました。
新製品の“Moflin”は、飼い主と深い絆が築けるよう、よく話しかける人を飼い主として認識するだけでなく、撫でる・抱きしめるなどの愛情表現から飼い主が好むしぐさを認識し、自ら進んで行なうようになります。また、育て方次第で形成される性格も幅広く、400万通り以上の個性を実現しました。
また、専用アプリ「MofLife(モフライフ)」により、“Moflin”の現在の感情をアニメーションで視覚的に確認したり、気持ちの変化をグラフやメッセージで把握できます。