第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、コネクタ専業メーカーとして技術革新を推進するとともに多様化するニーズに適合した製品を開発・提供し、エレクトロニクス業界の発展に寄与してまいることを使命としております。

そして、株主の皆様にとっての価値を長期継続的に高めていくことを経営上の最重要課題のひとつとして掲げ、お客様の更なる信頼を得られる電子部品メーカーとしての責任を果たすとともに強固な財務体質を維持し、成長し続けていくことを基本方針としております。

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、経営の基本方針を具現化するべく、高収益にこだわりを持った経営及び事業展開を進めて参ります。目標とする経営指標としては、事業の総合的な収益性が反映されるIFRSベースの営業利益率および資本効率性が反映されるROEとしております。

(3) 中長期的な会社の経営戦略

今後の当社グループを取り巻く経営環境は、企業間競争がより激化するものと思われます。

このような環境の中で当社グループは、常に最先端の技術を追求し、より効率的な資源の配分と集中化を図り、弛まぬ改善・革新に取り組み、情報化のさらなる進展、通信技術の高度化に伴って中長期的に一層の成長・拡大が予想される自動車分野、産業用機器分野、通信用機器分野及びスマートフォンや高度情報端末分野を重点に市場開拓を進め、併せてさらなる製品の安定供給を図るべく、効率性も考慮しながら国内外生産拠点のリスク分散化も行い、企業価値増大に取り組んでまいる所存であります。

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

市場の多様化、製品の短サイクル化による投資回収リスクの高まりや、原材料価格の引き上げ圧力の強まりなど、ますます厳しさを増す経営環境の中で、当社グループは市場ニーズに対応した高付加価値新製品の開発力強化、生産効率化の促進、品質のさらなる向上などコスト競争力を高めるとともに、グローバル化の更なる推進、国内外における販路の開拓等に努めてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

ヒロセグループは以下の「サステナビリティ基本方針」を制定し、日々の企業活動に活かしております。

なお、文中の将来に関する事項につきましては、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

「サステナビリティ基本方針」

ヒロセグループは、「英知をつなげる小さな会社」という企業理念に基づき、人々の英知の結集である製品を「つなぐ」コネクタの専業メーカーとして、コネクタが持つ着脱機能それ自体が環境負荷の軽減に資するとの考えのもと、高品質のコネクタを提供することで持続可能な社会の実現に貢献するとともに、継続的な当社グループの成長を目指してまいります。

●時代や市場の変化に対応しながら常に先を行く開発によりお客様にご満足いただき、製品を通じて豊かな社会の実現に貢献します。

●各国および各地域の法令、国際ルールならびに社内ルールを順守するとともに、社会規範・企業倫理に則り誠実に行動します。

●地域環境保護の重要性を認識し、環境保護および生物多様性の保全に配慮した企業活動を推進します。

 

(1) ガバナンス

代表取締役社長を委員長として“CSR・リスク管理委員会”を設置しています。CSR・リスク管理委員会では毎年リスクアセスメントを行い、優先度が高いリスク項目を特定し、達成目標・対策を決定しています。さらに、CSR・リスク責任者が立てた実行計画を審議・承認し、下部組織としてテーマ別で推進チームを編成し、推進チームが実行計画を具体的に推進しています。CSR・リスク管理委員会は四半期ごとに開催され、実行計画の進捗確認を行うとともに、リスクを評価して対応を決定し、リスクの有効なコントロール活動、リスク管理体制の整備に努めています。

気候変動課題におけるヒロセグループの経営の意思決定は、代表取締役社長および各機能部門の執行責任者からなる“本部長会”と本部長会からの企画提案を受けて決議を行う“取締役会”で成り立っています。2023年度には部門横断組織である“カーボンニュートラル実行プロジェクト”を組織し、CO2の削減および各種イニシアチブ対応への提言・報告に対して、決議・指示を行っています。

 

詳細につきましては、当社が発行している「“統合報告書2023”の39ページ:サステナビリティ、47ページ:気候変動対応のガバナンスとリスクマネジメントおよび65ページ:リスクマネジメント」をご参照ください。

“統合報告書”リンク先:https://www.hirose.com/corporate/ja/ir/integrated-report/

 

(2) 戦略

(a) 気候変動

当社グループは「“つなぐ力”で未来社会を共創する」というありたい姿の実現に向けて、様々な社会課題の解決に取り組んでいます。特に重要な気候変動対策における脱炭素化ではエネルギーの「電化」がキーワードであり、運輸・産業の電化にあたっては接続部品であるコネクタの役割がますます増大します。

当社グループは民生・自動車・一般産機と幅広い領域を手掛けるコネクタメーカーであり、自動車の電動化およびスマートファクトリ―に貢献する製品を生み出すとともに、自社の脱炭素化にも取り組んでいます。

また、当社グループは製品に環境負荷物質を「入れない」「混ぜない」「出さない」取り組みを進めています。環境負荷が少ない部品・原材料を優先して調達することを目的に“ヒロセ電機グループグリーン調達ガイドライン”を制定し、グリーン調達活動を推進しています。製品の設計開発プロセスにおいても環境項目を設けることで、設計時にコネクタに使用する化学物質について確認し、常に環境に配慮した製品開発に努めています。

 

(b) 人的資本多様性

<人財戦略の基本的な考え方>

ヒロセグループでは「人の成長・活性化」こそが会社の継続成長の鍵と位置づけ、「チャレンジする」「一生懸命活き活き働くことができる」進化する企業であり続けることを目指しています。従業員一人ひとりが英知をつなぎ、オリジナル製品を追求してきたことが競争力の源泉であり、ヒロセグループを支えています。事業環境が大きく変化する時代において、イノベーションを生み出し続けるためには、多様かつ優秀な人財がそれぞれの能力を最大限に発揮することが不可欠であり、また、従業員のイノベーションを支える組織作りが必要です。ヒロセグループの中長期的な成長・企業価値向上には従業員の幸せと成長が必要であるという認識のもと、従業員が活き活きと働ける会社の実現を目指しています。

 

<人財育成の仕組み全体像>

「人の成長・活性化」実現のため、「ヒロセ人としてのベースマインドの醸成」「自律型人財の育成」「リーダー人財の育成」「専門人財の育成」の視点で、人財育成の施策を実行していきます。

 

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<人財育成の社内環境整備方針>

当社では、「従業員と会社がチャレンジし続け、ともに成長する」姿に向け、人と組織の成長と活性化、それを支える制度・仕組みづくりに重点を置いています。人権を尊重し、差別のない健全で安全な職場環境の確保に加え、従業員が心身ともに健康で活き活きと働くことのできる社内環境整備に取り組んでいます。

 

詳細につきましては、当社が発行している「“統合報告書2023”の41ページから44ページ:“人財育成・成長”“HIROSE Philosophy”“多様性”」をご参照ください。

“統合報告書”リンク先:https://www.hirose.com/corporate/ja/ir/integrated-report/

 

(3) リスク管理

ヒロセグループは (1) ガバナンスにおいて記載の通り、サステナビリティ関連のリスクおよび機会を評価し、リスクを管理するよう努めています。

なお、当社は気候変動におけるヒロセグループのリスクと機会を以下の通り抽出し、2℃/4℃シナリオに基づいて事業への影響度評価を実施しています。

 

●2℃シナリオ:カーボンニュートラルに向けた各種規制が強化され、取引先もそれに呼応して対応した社会。
再生可能エネルギーや省エネルギーへの対応が不可欠となる。

●4℃シナリオ:現状のまま成り行きで進行した社会。低炭素・脱炭素化は推進されず、物理的リスクが高まる。

 

 

 

リスク/機会

シナリオ

 

評価

リスク

物理
リスク

異常気象の
発生増加

4℃

・サプライチェーン分断による原材料入手難が招くコストアップ

・工場停止による売上減少

気温上昇による
感染症リスク

4℃

・ロックダウンによる製造停止長期化

移行
リスク

各国の政策

2℃

・炭素税導入による負担コストの増加

2℃

・電力制限による工場の稼働停止

顧客要求

2℃

・脱炭素対応が遅れることによるビジネス機会の損失

機会

次世代自動車の普及

2℃

・電費改善のため小型軽量化が進むことによる販売機会の増加

排出量規制の導入

2℃

・蓄電池含む省エネルギー設備需要が高まり、寄与するコネクタの販売機会の増加

中-大

リサイクル・
プラスチック規制

2℃

・規制強化により対応したコネクタの販売機会および付加価値の増加

修理規制の強化

2℃

・修理に不可欠なコネクタの社会的評価向上

 

(4) 指標及び目標

(a) 気候変動

当社グループは (3) リスク管理におけるシナリオ分析の結果から、気候変動影響を1.5℃以下に抑えるための新たなCO2排出量削減目標を2022年度に取締役会で採択し、新規に設定しています。

新目標では自社による排出であるScope1, 2を対象として、2050年度のカーボンニュートラルを目指すとともに、中期的には2027年度の排出量60%削減 (2021年度比) という野心的な目標を掲げて活動しています。

過去からの電化の取り組みの成果によって、当社グループのScope1, 2のCO2排出源はほぼ電力由来のScope2となっており、もっとも効果的な削減策として製造拠点を中心とする再生可能エネルギーの導入を進めています。2022年度の排出量は前年比8%減となり、2021年度をピークとして今後も削減を進める計画です。

 

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一方で、当社グループでは協力会社においても生産を行っているため、Scope3の取り組みも重要です。協力会社ネットワークが広大なため、算定難度が高い領域ではありますが、重要度は高く、優先して取り組みを行います。

 

(b) 人的資本多様性

(2) 戦略に記載した人財戦略の基本的な考え方に基づき、女性やキャリア採用、再雇用の従業員、海外のローカル人財など多様な人財がヒロセグループを支える中核人財として活躍しております。

その中で、女性が活躍できる雇用環境の整備を行うため、当社では以下の行動計画を策定しております。

 

● 2023年, 2024年度 新卒入社における女性の割合を40%以上とする

<取組内容>

・2022年4月~  採用説明会にて、女性が安心して働ける環境である旨のPR強化

・2022年5月~  内定通知時に女性社員をリクルーターとし積極活用

・2022年12月~  採用HP、パンフレットを見直し、女性社員の登場比率を高める

<2023年4月入社実績>

新卒入社における女性の割合:46.7% (30名中14名)

<2024年4月入社実績>

新卒入社における女性の割合:31.8% (44名中14名)

 

●2024年度末までの女性の平均勤続年数を10年とする

<取組内容>

・2022年4月    リモートワーク制度の利用拡大

                年次有給休暇付与日数の改定

・2022年4月~  新人事制度の導入と課題洗い出し

・2022年10月    総合職・一般職転換制度の実施

・2023年4月    年次有給休暇付与日数の改定

・2023年4月~  新人事制度導入後の課題対策案実施

<2024年3月末時点実績>

女性の平均勤続年数:9.31年

 

詳細につきましては、当社が発行している「“統合報告書2023”の44ページ:多様性の尊重、および68ページ:非財務ハイライト」をご参照ください。

“統合報告書”リンク先:https://www.hirose.com/corporate/ja/ir/integrated-report/

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

当社は、このようなリスク (強みの裏返しでもあること) を認識した上で、CSR・リスク管理委員会を設置し、BCP (事業継続計画) を策定、定期的に見直すことにより必要なリスク管理体制を整え、リスク発生の回避及びリスク発生時の影響の極小化に最大限努めております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経済動向変化

当社グループは、グローバルに事業展開しておりますので、様々な要因によって起こりうる世界及び日本経済の景気動向に影響を受けます。

(2) スマートフォン市場への依存

当社グループの主たる事業領域である電子部品事業は、変化の激しいエレクトロニクス業界の需要動向に左右されますが、スマートフォン市場への依存度が比較的高く、その市場動向によって当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

(3) 大口顧客グループからの受注動向

当社グループの売上は、特定の大口顧客グループの受注量に影響を受ける可能性があります。

(4) 当社製品の需要変動

当社製品のうち、需要変動の大きいエレクトロニクス製品に使用されるコネクタについては、実態と乖離する部品需要が発生することもあり、対応次第で在庫リスクとなる可能性があります。

一方、需要が当社予測を急激かつ大幅に上回り、生産体制が追いつかない場合には、納期遅延による損害賠償金の発生や販売機会を逃す可能性があります。

(5) 競合と価格競争

コネクタ業界は、国内外の大手から中小にいたる様々な規模の多数の同業者が存在し、極めて競合的であり、当社もその価格引下げ競争に巻き込まれる可能性があります。

(6) 新製品開発

企業の成長は、マーケティングと技術革新によりますが、顧客製品のライフサイクルは短期から長期まで様々であり、これらの市場変化や技術革新への対応遅れで、差別化する新製品の開発が遅れることにより、販売機会を失う可能性があります。また、開発した新製品が想定に比べて顧客に受け入れられない可能性があります。これらの場合、企業経営に影響が出る可能性があります。

(7) 製品の不具合

予期していない製品の不具合が発生し、品質・信頼性に係る重大な問題が起こった場合、顧客への多額の損害賠償金や売上の減少等の影響が出る可能性があります。

(8) 海外展開に伴うリスク

生産及び販売の拠点を置いている海外の国々では、さまざまな地政学リスク、為替変動・貿易摩擦などの経済的リスク、文化・慣習の相違から発生する労務問題や新型コロナウイルス感染症のような疾病などの社会的リスク及び自然災害リスクが、当社の予想を超える範囲で発生する可能性があります。

(9) 大規模災害

当社グループは、地震・火災・台風・洪水・火山の噴火をはじめとする災害に対して、BCP (事業継続計画) を策定するなどリスクの低減に努めていますが、これらの災害が発生した場合、当社グループの事業活動、特に工場における生産活動に影響を受ける可能性があります。

とりわけ、当社グループの国内生産拠点は東北地方にあり、東日本大震災のような大規模災害が発生した場合、生産設備の破壊、物流機能の麻痺等が生じ、生産能力に影響が出る可能性があります。

これらの災害に対しては保険をかけていますが、起こりうる全ての事象に対してカバーされているわけではなく、またカバーされていたとしても、受け取る保険金が十分ではない可能性があります。

(10) 感染症の拡大によるリスク

当社グループは、新型コロナウイルス感染症をはじめとする感染症の急激な拡大に対して、BCP (事業継続計画) を策定するなどリスクの低減に努めていますが、当社グループの事業活動、特に工場における生産活動及び物流の状況に影響を受ける可能性があります。

 

(11) 為替変動

当社グループは、海外売上収益比率が約7割と高く、外貨建販売のウェイトも増えて来ております。為替変動による損益影響を軽減する為、為替予約や海外売上と海外生産の比率の均衡化等に取組んでおりますが、急激な円高が進んだ場合には業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(12) グループ外の組立外注及び部品・材料供給先に係るリスク

当社グループは、生産の一定部分を複数の外部協力会社に委託しておりますが、委託生産が困難になった場合、生産量の減少やコストアップの要因になる可能性があります。

また、部品・材料メーカーからの供給が滞った場合、生産に支障をきたす可能性があります。

(13) 人財確保に関するリスク/管理運営リスク

従来に増して急激に変化する外部環境に対応するため、従業員の確保および能力向上が必要不可欠であります。このような環境下、各分野で必要となる専門性を持つ従業員や、変化に対応できるリーダーシップを持った従業員の確保、育成が滞る場合および従業員の退職により人財が流出する場合には、当社グループの業績に影響が出る可能性があります。

(14) 労使関係

当社グループには、労働組合がなく、従業員加入の親睦団体「八要会」により、正常かつ円満な労使関係を維持継続しております。この良好な労使関係が崩れた場合、経営上影響が出る可能性があります。

(15) 知的財産

当社グループは技術開発研究等によって得られた成果について、特許などの知的財産権によりこれらの技術の保護を図っています。しかし、他社が当社グループの知的財産を無断で使用し、類似製品を製造することを当社グループとして効果的に防止できない可能性があります。

また、当社グループの製造する製品、または使用している技術が他社の知的財産権を侵害しているとされる可能性があります。

(16) 税制

当社グループは各国の税制に沿って適切な申告・納税をするよう努めていますが、各国税務当局と見解の相違が発生することで追徴の通知を受ける可能性があります。また、当社グループはグローバルにビジネス展開しているため、移転価格税制による追徴の通知を受ける可能性があります。

(17) サイバーセキュリティ

当社グループはサイバー攻撃に備え、ネットワーク環境の監視や、定期的に従業員への情報セキュリティ教育を行うなどのセキュリティ対策を実施しておりますが、サイバー攻撃を受けた場合、当社グループのビジネスに影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

① 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、個人消費・インバウンド需要の回復により、非製造業及び自動車産業の景況感は改善しましたが、原材料・物流コストの増加や世界的な財需要の減速により、設備投資が伸び悩み、特に輸出型の企業では景況感は非常に厳しい状況でした。

海外におきましては、米国の景気は堅調でしたが、インフレ懸念・金融不安は継続し、欧州を含め製造業は不振で、中国では、輸出入がともに低迷しており、世界的な需要の減速から景気の先行きは依然として不透明な状況となっております。

このような状況下当社グループは、主にスマートフォン市場向け、自動車市場向け及び産業用機器市場向けのグローバル事業拡大を進めると共に高度化する市場ニーズへの更なる迅速な対応を目指し、高付加価値新製品の開発・販売・生産体制の強化を推進してまいりましたが、自動車用機器市場向けビジネスは堅調に推移したものの、産業用機器市場向け、民生用機器市場向けビジネスの売上が低迷したため、当連結会計年度の売上収益は、1,655億9百万円(前年同期比9.7%減)、営業利益は340億17百万円(同27.2%減)、税引前利益は387億61百万円(同20.2%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は264億80百万円(同23.6%減)となりました。

 

セグメントの業績を示すと、以下のとおりであります。

(多極コネクタ)

当社の主力製品群であります多極コネクタは、丸形コネクタ、角形コネクタ、リボンケーブル用コネクタ、プリント基板用コネクタ、FPC(フレキシブル基板)用コネクタ、ナイロンコネクタ等多品種にわたります。

主としてスマートフォン、通信機器、カーエレクトロニクス等の分野から計測・制御機器、FA機器及び医療機器などの産業用機器等の分野まで幅広く使用されているコネクタであり、今後の更なる高度情報通信ネットワーク化社会及び環境を考慮した省エネ化社会の進展とともに需要の拡大が見込まれております。

当連結会計年度は、売上収益は1,485億12百万円(前年同期比10.4%減)、営業利益は299億88百万円(同30.7%減)となりました。

 

(同軸コネクタ)

同軸コネクタは、マイクロ波のような高周波信号を接続する特殊な高性能コネクタであり、主にスマートフォンやパソコンなどの無線LANやBluetooth通信のアンテナ接続や自動車でのGPSアンテナ接続として、また無線通信装置や電子計測器の高周波信号接続として使用されるコネクタであります。

なお、光コネクタ、同軸スイッチもこの中に含んでおります。

当連結会計年度は、売上収益は116億76百万円(前年同期比0.2%減)、営業利益は33億1百万円(同14.2%増)となりました。

 

(その他)

以上のコネクタ製品以外の製品としてマイクロスイッチ類及びコネクタ用治工具類を一括しております。

当連結会計年度は、売上収益は53億21百万円(前年同期比7.2%減)、営業利益は7億28百万円(同20.0%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(資金)は、前連結会計年度末と比べて23億12百万円増加して、903億41百万円となりました。

 

a.営業活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、410億49百万円の増加(前年同期は456億48百万円の増加)となりました。

これは、税引前利益387億61百万円や減価償却費及び償却費168億47百万円の計上などによる資金増、法人所得税の支払額146億82百万円による資金減などによるものです。

b.投資活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、139億35百万円の減少(前年同期は64億3百万円の増加)となりました。

これは、有形固定資産の取得による支出320億64百万円による資金減などによるものです。

c.財務活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、281億87百万円の減少(前年同期は341億71百万円の減少)となりました。

これは、配当金の支払額172億15百万円及び自己株式の取得による支出100億15百万円による資金減などによるものです。

 

③ 財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は、有形固定資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ20億94百万円増加して4,034億50百万円となりました。負債は営業債務及びその他の債務の減少等により122億26百万円減少して392億77百万円となりました。また、資本合計はその他の資本の構成要素の増加等により143億19百万円増加して3,641億73百万円となりました。この結果、親会社所有者帰属持分比率は90.3%となり、前連結会計年度末と比べ3.1%増加しました。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

多極コネクタ

134,417

△21.1

同軸コネクタ

10,029

△10.5

その他

4,376

△7.5

合計

148,822

△20.1

(注)金額は、販売価格によっております。

 

b.受注状況

当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前年同期比

(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比

(%)

多極コネクタ

139,806

△5.3

37,135

△19.0

同軸コネクタ

11,376

5.1

3,330

△8.3

その他

4,988

△14.4

674

△33.0

合計

156,170

△5.0

41,139

△18.5

 

 

 

 

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

多極コネクタ

148,512

△10.4

同軸コネクタ

11,676

△0.2

その他

5,321

△7.2

合計

165,509

△9.7

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態および経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の財政状態および経営成績等につきましては、2021年度から2022年度にかけてのコロナ下における好業績の反動を受け、対前年同期と比べ減収減益となりました。

当社グループは、中期経営計画「G-WING」において、コンシューマ、産機、自動車の強い3本柱を形成することで、高収益体制を維持しつつ、中長期的に売上を伸長させていく計画を立てております。現在当社グループが置かれている状況は、この3本柱によるバランスのよいポートフォリオを確立させながら成長を加速させるため、開発・生産拠点の増強を進めるとともに技術者育成のための投資を行っております。これらの施策に加え、コロナ下のサプライチェーンの混乱を脱して新たな成長局面へ移行していく段階にあります。

 

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としましては、国内外の経済動向の変化が挙げられます。現時点では特にスマートフォン市場の動向が当社グループの業績に大きな影響を与えております。当社グループとしましては、「G-WING」の3本柱を強固にしていくことでスマートフォン市場への依存率を減少させてまいります。

その他の当社グループの経営成績に影響を与える要因につきましては、「第2 事業の概況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、親会社所有者帰属持分比率が90.3%と十分な資本を維持しており、外部からの借入金はありません。

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、IFRSベースの営業利益率を重視した経営を行っております。当連結会計年度における営業利益率は20.6%となり、前連結会計年度の25.5%を下回る結果となっております。引き続き、高い営業利益率を安定的に生み出せる体制づくりを行ってまいります。

また、当社グループは中長期的に資本コストを上回るROE (自己資本利益率) の達成を目指しております。具体的には、収益性の改善を進めることで、2027年度までにROE10%の安定的達成を目指してまいります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源および資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、営業キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローの合計が271億14百万円となっており、成長と安定のバランスを図っております。詳細につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要  ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

当社グループの資本の財源および資金の流動性につきましては、親会社所有者帰属持分比率は90.3%と高い水準を維持しており、資金の調達を行わずに事業に必要な資金の流動性を確保していると判断しています。

内部留保資金につきましては、中長期的な視野に立って、今後ますます進展する技術革新に対する研究開発投資、グローバル化に伴う設備投資および経営環境の変化に対応した機動的なM&Aなどに備えるとともに、株主への配当を重要視しております。

株主への利益還元策として、配当による成果の配分を優先的に考えており、長期的な企業価値の拡大と企業体質の強化を図りながら、1株当たり利益を増加させることにより配当の安定的な増加に努めることを基本方針としております。この基本方針の一層の実践を図るため、DOE(株主資本配当率)を株主還元指標として採用し、2024年度より中期的にDOE5%の配当を行うことを目標としております。

また、自己株式の取得については、株主への利益還元策としてとらえており、資本効率の改善を目的に適宜実施を検討してまいります。

なお、当社は自己株式の保有については、発行済株式総数の5%程度を上限とし、それを超過する部分は、原則として毎期消却する旨を自己株式の保有・消却に関する基本方針としております。

 

③ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって必要となる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。重要性がある会計方針及び見積りの詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針、4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりです。金融商品の公正価値及び棚卸資産の正味実現可能価額は社内外の環境の変化により変動する可能性は高いと考えておりますが、当社グループにおける連結財務諸表に大きな影響を与えるほど変動する可能性は極めて低いと考えております。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

記載すべき重要な契約等はありません。

 

 

6【研究開発活動】

エレクトロニクス業界における技術の進歩に伴い、コネクタ技術面においても「小型・高密度化」「高性能」「高品質」「経済性」の要求が高まり、さらに、「高速デジタル信号処理」「超高周波信号の伝送技術」、エネルギー関連対応や環境規制への対応が求められております。

当社グループはこれらの要求に応えるべく、次のような製品開発を行っております。

(1) 多極コネクタ

多極コネクタには、主として機器の外部に実装する丸形コネクタ及び角形コネクタと機器の内部に実装するプリント配線板用コネクタがあります。

丸形コネクタでは、計測機器・通信機器用として小型多芯コネクタの開発、また、サーボモータ・ロボット・工作機械のFA機器用として速着脱タイプの小型防水コネクタ、さらには国内外の基地局用防水コネクタ等産業用製品群の他、監視カメラ・医療機器、その他各種電源用コネクタなど幅広く開発を行っております。

角形コネクタでは、各種産業機器や医療機器用として高速信号対応の多芯コネクタの開発、小型モバイル市場にはオリジナル小型コネクタの充実を図り市場に投入しております。また、蓄電池向けやブスバー接続用として大電流コネクタの開発や各種情報端末用インターフェイスコネクタを国内外の市場向けに各種開発を行っております。

プリント配線板用コネクタでは、高密度・多芯・狭ピッチ用コネクタの開発、またスマートフォン、タブレット等のモバイル機器用の内部実装用コネクタとしてさらに薄型・狭ピッチ基板対基板コネクタ・FPC用コネクタの開発、サーバー・LAN機器に使用するオリジナル高速タイプコネクタの開発、さらにはLED照明用コネクタの開発など、今後成長を期待される機器用コネクタの開発と併せて、環境対策として各種環境規制に適合した製品の充実を図っております。

更に自動車用コネクタとして、高速伝送用コネクタ、ECU向け多極コネクタ、EV・HV(電気自動車・ハイブリッド)向けコネクタなどの開発を行っております。また、車載カメラ用及び車載アンテナ用コネクタやヘッドライト用コネクタ、内部接続用コネクタ、カーナビ用コネクタなどのシリーズ拡充も行っております。

 

(2) 同軸コネクタ

同軸コネクタでは、モバイル・ワイヤレス機器に対応した世界最小アンテナ用超小型コネクタの開発を始め、無線LANのアクセスポイント・携帯電話基地局・マイクロ波通信機器等の無線通信インフラ及び放送機器・計測器等に使用される各種コネクタの開発を行っております。

高周波デバイスでは、スマートフォン用や無線LAN向け世界最小クラス小型同軸スイッチのシリーズ拡充や携帯電話基地局及びマイクロ波通信、放送機器、計測器用終端器や減衰器・避雷器コネクタ等の開発を行っております。

光コネクタでは、医療機器、ロボット等での使用に適した、光-電気変換用アクティブコネクタの開発や、通信インフラ、屋外画像伝送装置等への使用に適した光防水コネクタのシリーズ拡充開発を引き続き推進し、幅広いニーズに応えております。

 

(3) その他

以上のコネクタ製品以外の製品としてマイクロスイッチ類及びコネクタ用治工具類等の開発を行っております。

 

上記の区分ごとに研究開発投資額を関連付けるのは困難な状況でありますが、当グループにおける研究開発費は、7,884百万円であります。この他に研究開発活動の成果として、工具器具などの固定資産で計上したものが、3,484百万円あるため、合わせますと、研究開発投資額は11,368百万円となります。