第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在の状況に対する判断に基づくものです。

 

(1)経営方針

1955年にコントロールのプロジェクトチームが発足し、1956年に日本で民間初のNCとサーボ機構の開発に成功して以来、ファナックは一貫して工場の自動化を追求しています。

創業期に目指した、小柄でもしっかり根を張った巨人のごとき逞しさがある企業、技術で勝負する企業を希求し続け、「狭い路」を真っ直ぐに歩むことに努めています。

その企業像を実現するために、当社グループは基本理念として「厳密と透明」を掲げています。そこには、企業の永続性、健全性は厳密から生まれ、組織の腐敗、企業の衰退は不透明から始まる、という考えがあります。

ファナックは、基本技術であるNCとサーボ、レーザからなるFA事業と、その基本技術を応用したロボット事業およびロボマシン事業を展開しています。そして、IoT・AI技術をFA・ロボット・ロボマシンの全ての分野に積極的に適用していくことで、お客様がファナック商品をより効率的にご利用いただけるよう取り組みます。

また、生産財のサプライヤであるとの原点に立ち、お客様がファナックの商品をお使いになる限り、保守サービスを提供し続けます。

当社グループはこれらの事業活動を通じて、お客様の工場の自動化と効率化を推進することで国内外の製造業の発展に貢献し、今後も中長期的に拡大が見込まれる工場の自動化分野において、着実な成長を実現していきます。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

①再発防止策の実行に向けた取組

当社が製造・販売するロボカット(ワイヤ放電加工機)において、欧州のEMC指令に基づく整合規格に適合しない態様で試験が行われていたこと(以下「本不適切行為」といいます。)につきましては、2024年11月に社外の有識者から成る特別調査委員会より調査結果報告書を受領いたしました。当社は基本理念である「厳密と透明」をもって法令等の遵守を実践してまいりましたが、本不適切行為により、お客様や関係者の皆様の信頼を損なう事態を招きましたことを、深くお詫び申しあげます。

当社は、特別調査委員会が認定した事実、原因分析および再発防止策の提言を真摯に受け止め、全社一丸となって再発防止策の実行に向けて取り組んでおり、本年3月に、特別調査委員会の調査報告書を踏まえた当社の取組について当社ホームページに掲載しております。

(https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/announce_other/pdf/2025/notice20250325.pdf)

当社は引き続き各取組を着実に実行し、再発防止、信頼の回復に全力で取り組んでまいります。

 

② 経営環境およびその他の対処すべき課題

ファナックの商品は景気変動の影響を大きく受けやすい生産財であることから、短期的な事象に左右されない、長期的な視点に立った経営を続けています。

当社グループを取り巻く経営環境につきましては、地政学的リスクの高まりや、景気減速の懸念等もあり、予断を許さない状況が続くものと思われます。その一方で、工場の自動化への要求は中長期的に拡大することが見込まれます。

当社グループは、「one FANUC」を合言葉に、FA・ロボット・ロボマシンの3事業とサービスが一体となったトータルソリューションの提供、およびグループ一体となった世界のお客様への対応、という当社グループならではの強みを最大限活かしてまいります。特に、CNC工作機械とロボットとの連携、ロボマシンとロボットとの連携を重要テーマの一つと捉え、商品を開発してまいります。

また、ファナックの商品は製造現場でご使用いただく生産財であるとの原点に立ち、お客様の工場におけるダウンタイムを最小にして稼働率向上を図るため、「壊れない」「壊れる前に知らせる」「壊れてもすぐ直せる」ことを商品開発において徹底いたします。また、工場の自動化への要求が拡大する一方、熟練労働者の確保が難しくなる状況に対応するため、使いやすさを一層重視した商品開発にも取り組んでまいります。

そして世界中のどこでもファナックのグローバルスタンダードに沿った高度な保守サービスを提供すること、お客様が使用し続ける限り保守を続ける「生涯保守」を行うこと、を基本理念とした「サービスファースト」を実践してまいります。特に、競合会社が追随することが難しい「生涯保守」については、当社グループの大きな特長として、引き続き注力してまいります。

また、工場の自動化分野という当社の強みを発揮できる分野に絞り込んで研究開発投資を積極的に行い、競争力の高い商品を開発し市場に投入します。あわせて、知的財産の充実を図ります。

さらに、当社グループは、今後も競争力の高い商品を開発し市場投入していくうえで、IoT・AI技術を必要不可欠なものと考えております。これらの技術をFA・ロボット・ロボマシンの全ての分野に積極的に適用していくことで、お客様における生産の効率化を一層推進します。

加えて、ファナックの商品がSDGsの達成に大きく貢献することを目指してまいります。

当社グループは、長期的視点に立ち、商品競争力の強化、セールス・サービス活動の強化、工場の自動化・ロボット化の推進、経費と時間の削減および業務の合理化など、より強い企業にするための基本施策を推し進めます。また、生産財のサプライヤとして、いかなる場合にもお客様への供給責任を果たし、サービス活動を維持することができるよう、生産拠点やサービス拠点の複数化に取り組んでいます。さらに、部品調達先の複数化、適切な部品在庫の保有など、サプライチェーンの強化にも取り組んでいます。

中長期的な成長のためには、人材が最重要であるとの観点に立ち、社員がより働きやすい職場の実現、社員のモチベーションの一層の向上も重要課題として取り組んでまいります。また、将来を見据え、必要な人材の採用や社員の育成の強化のための人的資本への投資を積極的に行います。これらを通じて継続的に人的資本の充実を図ります。

経営に当たっては、営業利益率、経常利益率、ROEなどに加えて、市場シェアも重要な経営指標と捉え、総合的に判断してまいります。また、当社は資本コストを的確に把握し、5年平均でのエクイティ・スプレッド(ROEと資本コストの差)をプラスとすることを目指します。

今後もあらゆる面で当社グループは、基本理念である「厳密と透明」を徹底し、こうした諸施策をグループ一丸となって推し進めることにより、お客様の当社グループへの安心と信頼を高めるとともに、激しい環境変化に適応することで、永続的な企業となるべく努力してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在の状況に対する判断に基づくものです。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンスおよびリスク管理

[ガバナンス]

当社はサステナビリティ全般を重要な経営課題の一つと認識しています。

代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」において、サステナビリティ全般に関する重要な方針や施策について審議・決定を行い、取締役会に報告します。

取締役会は報告内容に基づいて、サステナビリティ全般に関連するリスクと機会の特定と対策が適切に推進されるよう監督を行います。

 

[リスク管理]

当社は、事業の継続性、企業価値の向上、企業活動の持続的発展を阻害するおそれのあるリスクに対処するため、リスクマネジメント委員会およびリスクマネジメント規程を設け、取締役会の監督のもと、適切なリスクマネジメントを行っています。サステナビリティ全般に関するリスクについても、この中に位置づけてリスク管理します。

 

(2)気候変動への取り組みとTCFDに基づく情報開示

COP21(第21回国連気候変動枠組条約締約国会議)で採択されたパリ協定を機に、世界的に脱炭素社会へ向けた動きが広がっています。グローバルに事業を展開している当社グループにとっても、気候変動は重要な経営課題であると認識し、取り組みを推進しています。

こうした中、当社は2021年12月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言(以下、TCFD提言)への賛同を表明しました。

今後もTCFD提言のフレームワークを活用して、継続的に情報開示の質と量を充実させるとともに、気候変動への取り組みを一層推進し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

[戦略]

当社は気候変動に関連するリスクと機会を特定し、それらが当社グループの事業に及ぼす影響を確認するために、FA事業、ロボット事業およびロボマシン事業について、1.5℃シナリオ、2℃シナリオ、4℃シナリオを用いて、中期(2030年)と長期(2050年)を対象にシナリオ分析を実施しました。シナリオ分析にあたり、1.5℃においてはIEA NZE、IPCC RCP1.9など、2℃においてはIEA SDS、IPCC RCP2.6など、4℃においてはIEA STEPS、IPCC RCP8.5などを参照しました。各シナリオに対して、気候変動に関連するリスクと機会を洗い出し、事業への影響度を定量的かつ定性的に検証・評価しました。

このうち、事業へ大きな影響を与えるリスクとして「炭素税の導入によるコスト増」、「原材料価格の上昇によるコスト増」および「消費者の行動変容やEV/FCV化による一部ファナック商品の需要減」を特定し、機会として「省エネ・ロボット化によるファナック商品の需要増」、「EV/FCV化によるファナック商品の需要増」を特定しました。

 


 

1.5℃および2℃シナリオでは、脱炭素化への移行に伴う大きな社会変化が起こる世界が想定されます。炭素税の導入や原材料価格の上昇によりコストが増加する可能性がありますが、省エネ・ロボット化やEV/FCV化が拡大することにより、FA事業、ロボット事業およびロボマシン事業を拡大できると考えます。4℃シナリオでは低炭素化は推進されず、平均気温上昇等の気候変動により自然災害の激甚化が想定されます。これにより生産拠点等が被害を受け、生産にマイナスの影響が生じるとともに復旧コストが増加する可能性がありますので、事業継続計画(BCP)対応を推進し、物理面でのリスクに対応してまいります。

今回、FA事業、ロボット事業およびロボマシン事業についてシナリオ分析を行った結果、分析で使用したいずれのシナリオにおいても、これらの事業は高いレジリエンスを有していると評価しました。今後、特定したリスクへの対応と機会の実現に向けて、取り組みを一層推進してまいります。

また、当社は2030年までにScope1,2排出量を2020年比で42%削減するという中期目標(SBTイニシアチブにより認定取得)を定め、取り組みを推進しています。

この目標に向けて、太陽光パネルや再エネ電力の導入を計画しており、投資額として約90億円を見込んでいます。(金額については、不確実な要素や仮定を含んでおり、実際と異なる可能性があります)

 

[指標・目標]

当社は2050年までに当社グループの事業活動に伴うGHG排出量(Scope1, 2)をゼロにするという長期目標を設定しています。この長期目標の実現に向けて、2030年までに同排出量を42%削減する(2020年比)という中期目標を定めています。Scope3については販売した製品の使用による排出量を2030年までに12.3%削減(2020年比)することを目指します。

 

(3)人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針

[戦略]

当社は、社員を技術革新と価値創造の原動力となる人的財産であると考え、一人ひとりの健康と成長を支援し、安全・安心のもと、やりがいを持って自己実現を図る環境を整えていきます。

 

<人材育成・働きがいの向上>

今後、企業としての持続的成長を実現していくためには、社員一人ひとりが当社の基本理念・組織のビジョンに対する理解を深め、自己の役割を認識した強い個として自律的に行動し、自身のキャリア志向や強みに応じて成長し、相互に関わり合いながらその力を最大限に発揮できる機会を提供することが必要であると考えています。

そのための施策として、以下の取組みを行っています。

① キャリア形成支援

社員の働きがい向上のためには、社員一人ひとりが大切にする価値観に基づくキャリアビジョンを描き、その実現に向けて成長を重ねていくことが必要であると考え、キャリア形成支援に取り組んでいます。

メンバーに対しては、自らの価値観を軸とした成長プランを策定する「若手社員研修」、プロフェッショナルとしての専門領域を追求する「中堅社員研修」を実施し、これからのキャリア形成を思い描く場を設けています。

また、メンバーがキャリアビジョンを上司と共有し、理解と支援を受けるための対話の場として、「1on1面談」を活用しています。これにより、上司とメンバーが組織目標の達成および個人のキャリア形成とその実現に向けて、対話を通じた関係性構築と相互協働の促進を図っています。

② 社内公募制度

新たな人材を必要とする部門が、求める人材要件を明確にし、社内で人材を募集する社内公募を実施しています。

社員が自分のキャリアを見つめ直し、その実現のために新たな仕事にチャレンジする仕組みを設けることで、組織の活性化と個人のエンゲージメントの向上を図っています。

③ エンゲージメントサーベイ

毎年「エンゲージメントサーベイ」を実施し、社員エンゲージメントの状態(エンゲージメントスコア)を確認しています。

調査結果から全社的な傾向と組織ごとの課題を分析し、職場環境の改善活動や、社員一人ひとりの働きがい向上に向けた取組みを積み重ねています。

 

<ダイバーシティ&インクルージョン>

ファナックは、人材の多様性を受け入れ、価値観等の個性を互いに尊重し、各社員が多様な能力を発揮できるようグループ全体で取り組むこと(ダイバーシティ&インクルージョン)で、組織の更なる強化と会社の持続的成長を目指します。

 

(多様な人材の採用・登用)

① 女性社員の積極的採用・登用

・  女性正社員比率10%の目標に向け女性の採用を積極的に進めています。2024年12月に大幅にリニューアルした採用HPでは、社内保育園設置等の当社独自の福利厚生制度の紹介のみならず、ライフステージごとの働き方や1日のスケジュールなど、より具体的に当社で働くイメージが持てるようコンテンツを拡充しました。加えて、女性社員が対談した内容を取りまとめたクロストークの掲載により、当社の多様性推進の状況をよりリアルにイメージできるような工夫も凝らしました。実際の採用活動においても、女性社員による学校訪問やインターンシップ対応の促進、仕事と実生活の両面に関する対話の場を設けるなど、女性割合の向上を目指した取組みも行っています。

・  能力ある女性を積極的に幹部社員に登用します。これにより2.8%(2025年3月末時点)の女性幹部社員比率を2030年までに5%以上とすることを目指しており、女性幹部社員候補者の把握と計画的育成を進めています。

② 経験者採用者・外国人の登用

国籍や文化的背景に関わらず、応募者の能力や適性を重視した公平な採用を行い、柔軟で最適な登用に取り組んでいます。特に経験者採用においては、募集職場のニーズと応募者の希望を丹念に聞き出し、ミスマッチを防いでいます。2025年3月末時点の正社員に占める経験者採用者の割合は、正社員の約4分の1となっており、経験豊富で多様な人材の活躍の場が広がってきています。

 

(多様な人材の活躍する環境整備)

③ ダイバーシティ推進に向けた取組み

性別や年齢、国籍等にかかわらず、全ての社員が安心して働ける企業風土の醸成を目的に2024年1月に「ダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)プロジェクト」を発足させました。本プロジェクトではD&I活動への共感を醸成し、個人の意識変化を促すための各種取組みを推進しています。2024年度は経営層とのラウンドテーブルや全社横断的なディスカッションの場の設置、社員向けアンケートの実施等により、社員同士でより働きがいのある働き方に関する意見交換等の風土醸成活動に取組みました。

また、ダイバーシティ推進の意義・重要性の理解促進と当事者意識の醸成を目的に全役員および社員を対象に、定期的にダイバーシティ研修を実施しています。

④ 仕事と家庭の両立支援

「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画」等の計画に基づき、以下の対応を行っています。

・ 仕事と育児・介護・治療との両立のため、出産休暇、育児休暇、小学校卒業までの短時間勤務などの制度の充実とともに、長時間労働の削減や年次休暇の取得目標(80%以上)の設定、時間単位年休の導入など、男女社員ともに働きやすい環境の整備を進めています。

・ 育児・介護休職制度に関するパンフレットの発行等を通じた全社周知、仕事と育児・介護の両立支援に対する相談窓口の設置を通して、男性社員の育児休業の取得促進を図っています。

(2024年度男性育児休業取得率:91.2%)

・ 仕事と家庭の両立支援に向け、2019年度より本社施設内に社員向けの保育所を開設しました。0歳児の積極的な受け入れ等を通して、育児休職者のキャリア志向に応じた柔軟な職場復帰を支援しています。

⑤ 女性社員間のネットワーク形成

・ 先輩女性社員がメンターとして若手女性社員の悩みについて助言するネットワーク作りを行っています。

 

<健康・福利厚生>

当社のビジョンを達成するためには、事業基盤を支える社員とその家族の健康、幸福が基盤であると考えます。

心身ともに健康で、幸せで豊かな生活を送り、いきいきとやりがいを持って、活躍できる環境を整えていきます。

① 厚生施設・健診体制の充実

体育館などのスポーツ施設、保養所等、各種厚生施設を設置し、社員とその家族の心身の健康を推進しています。

寮・社宅は本社地区をはじめとする全国の主要拠点に保有しています。また、本社地区の健康推進センターでは、専属の産業医、技師、看護師が常駐しているほか、MRI、CT等の各種医療機器を有しており、健康診断においては、これらの機器を活用した脳ドック等の法定以外の検査等の対応を行っています。

また、仕事と治療の両立支援制度を導入し、社員が安心して治療に専念でき、職場復帰しやすい体制を整えています。

② 健康経営の推進

健康づくり推進委員会を設置し、関連部門の意見を取り入れ、全社一体となって健康経営の推進に取り組んでいます。

2025年3月10日に「健康経営優良法人2025」(大規模法人部門)に認定されました(2024年に引き続き3年連続の認定)。

主な活動は以下の通りです。

・健康診断と要精密検査受診率向上、保健指導の充実

・メンタルヘルス不調者への対応強化、セルフケア、ラインケア研修の実施

・ヘルスリテラシー向上を目的とした教育、女性特有の健康関連課題に関する教育の実施

・特定保健指導の実施率向上および配偶者健診の受診率向上

・取引先の健康づくり推進の状況把握と支援

・メルマガの発信、ウォークラリーの実施、喫煙率低下に向けた取組み

・食堂メニューの改善、食生活改善のための情報提供やキャンペーンの企画

 

[指標・目標]

当社グループでは、上記[戦略]において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標および実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

指標

目標

実績(当事業年度)

女性正社員比率

10

7.8

女性幹部社員比率

5

2.8

育休後復職率

100

100

年次休暇取得率

80

84.9

定期健康診断受診率

100

100

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在の状況に対する判断に基づくものです。

 

<1.特に重要なリスク>

 

① 戦争に関するリスク

戦争が発生した場合、当社グループの社員の生命、安全が重大な危険にさらされる可能性があります。また、当社グループでは、海外市場における売上高が連結売上高のうち大きな割合を占めています。アジア、欧州、米州など当社商品の市場規模が大きな地域で戦争が発生した場合、地域によっては商品の販売市場、サプライチェーン、物流等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクが顕在化した場合の影響を少しでも抑えるため、「one FANUC」として当社グループ会社間における連携をより緊密にしていきます。

 

② 自然災害に関するリスク

当社商品はいずれも生産設備として生産現場で使われるものであり、当社商品の大口ユーザでもある自社工場と研究開発との密接な連携による相乗効果によって研究開発と生産技術双方を強化・効率化できる大きな利点があること等から、当社では研究開発部門、工場等を本社地区に集中させてきました。一方で、こうした拠点の集中により、仮に大地震が発生した場合は、被害が甚大になる可能性があります。また、本社地区の近隣に位置する富士山が噴火することは非常に稀と考えられますが、万一噴火した場合の影響は甚大です。これらの他、台風や大雪などの自然災害で大きな影響を受ける可能性があります。

こうした自然災害に関するリスクの顕在化に対応するため、本社工場(山梨県南都留郡忍野村・山中湖村)以外に、壬生工場(栃木県下都賀郡壬生町)、筑波工場(茨城県筑西市)等の新設、拡充による生産拠点の複数化を推進してきました。また、サービス拠点についても、日野支社(東京都日野市)の再構築と名古屋サービスセンタ(愛知県小牧市)の開設により、保守部品の保管倉庫、サービス情報システムのサーバの設置拠点の複数化を行ってきました。

また、データセンタの二重化を行ったほか、本社地区、壬生工場、筑波工場において非常用電源としても使用できるコージェネレーションシステムの導入などを行いました。

当社グループは、今後も、自然災害に関するリスクへの積極的な取り組みを継続的に推進、強化していきます。

 

③ サイバーセキュリティに関するリスク

近年、サイバー攻撃は、手口の高度化、巧妙化等により、その脅威がますます高まっています。サイバー攻撃により、当社グループの生産設備等が被害を受け生産に影響が生じる可能性や、当社の技術上、営業上等の秘密情報が流出する可能性があります。また、IoT関連の商品、サービス、ネットワーク(当社が利用する他社クラウド基盤を含む)を通じて顧客等の製造設備等に被害が生じ、顧客等からの信用を失う可能性があります。これらのサイバーセキュリティに関するリスクは、様々な要因により顕在化し、当社グループの事業戦略や経営成績等に甚大な影響が生じる可能性があります。

このため当社グループは、CISO(チーフ・インフォメーション・セキュリティ・オフィサー)を任命するとともに、情報セキュリティ委員会等を通じて、当社ITシステムに関するセキュリティ対応の枠組み(コンピュータ・セキュリティ・インシデント・レスポンス・チーム(CSIRT))とそれに基づく監視チーム(セキュリティ・オペレーション・センター(SOC))の活動を徹底しています。また、商品の事故対応体制(プロダクト・セキュリティ・インシデント・レスポンス・チーム(PSIRT))の運用と関連認証の取得を順次進めています。これらによりサイバーセキュリティに関するリスクへの対応体制の強化を進めています。

 

④ 競争力低下に関するリスク

当社グループを取り巻く事業環境において、今後以下に挙げるような変化が予想されます。

・ 新興国企業等の技術力、競争力の急速な向上

 ・ 商品単体の信頼性や機能等の競争だけでなく、様々なIoTシステムとの連携を含めた総合的な使い易さ、信頼性等の競争への変化、およびこれらに伴う市場や顧客ニーズの多様化や変化

・ 様々な新技術の台頭による当社グループの競争力の低下

これらの外部環境の変化に柔軟、迅速に対応できない場合、商品の競争力等における当社グループの優位性が失われる結果、競争力低下に関するリスクが顕在化し、当社グループの事業戦略や経営成績等に甚大な影響が生じる可能性があります。

このため当社グループは、これまで培ってきた優位性を活かしつつ事業環境変化に柔軟、迅速に適応できるよう将来を見据えた研究開発をさらに強化するとともに、生産における自動化、ロボット化等を一層推進することにより、競争力の強化に努めていきます。

 

<2.重要なリスク>

 

① 各国の政策、法規制に関するリスク

当社グループでは、海外市場における売上高が連結売上高のうち大きな部分を占めています。日本を含む各国政府による安全保障貿易管理等の様々な政策、規制等の変更および域外適用の拡大は、内容によっては当社グループの事業活動に大きな影響を及ぼします。これら各国政府による法規制等に違反した場合、処罰を受ける可能性があります。

また、各国政府が保護主義等により輸入関税率の引き上げを行った場合、あるいはアンチダンピング課税の賦課決定を行った等の場合には、当社グループの商品の販売が大きな影響を受ける可能性があります。

このように、各国の政策、法規制に関するリスクが顕在化する可能性があるため当社グループは、各国政府の法規制の遵守のための役員・社員への教育や適切なチェック体制・仕組みの整備等に努めていきます。

 

② 部品等の調達に関するリスク

当社グループにおいて、何らかの理由で部品等の調達に不足や遅れが生じた場合、生産に遅延が発生する可能性があります。その結果、顧客等の生産活動にも影響が生じ、信用を失う可能性があります。一方で、不正確な需要予測や不十分な在庫管理により過剰な調達を行った場合、過剰な在庫を抱えたことによる棚卸資産の評価損が発生する可能性があります。このように、部品等の調達に関するリスクが顕在化した場合、当社グループの事業戦略や経営成績等に大きな影響が生じる可能性があります。

このため当社グループは、部品の複数調達先の確保や調達先との関係強化等、サプライチェーンリスクマネジメントの強化などの対策に引き続き努めていきます。

 

③ 人材確保・育成に関するリスク

外部環境の急激な変化によりますます競争が激しくなる中、当社グループが持続可能な発展を続けていくためには、優れた人材を確保・育成することが重要となります。こうした人材の確保・育成が遅れたり、優秀な人材が流出したりする場合、当社グループの競争力が低下する等人材確保・育成に関するリスクが顕在化し、当社グループの発展等に大きな影響が生じる可能性があります。

こうした課題に対処するため、当社グループは、社員の教育の充実、仕事を通じた成長の支援、エンゲージメントの向上、ワークライフバランスの充実など、優れた人材が集まる一層魅力的な企業として、企業文化の継承力を持った人材を育成して適所に配置することに努めていきます。

 

④ コンプライアンスに関するリスク

当社グループにおいて法令違反、社会規範・倫理上の問題や品質不正、企業秘密漏洩等のコンプライアンス問題が生じた場合、当社グループに対する罰則等による直接的影響はもとより、社会的信用・企業イメージの低下等により、事業戦略や経営成績等に大きな影響が生じる可能性があります。

このため当社は、当社および当社グループ会社のコンプライアンス向上に資する活動の企画立案、実行等を行う委員会としてコンプライアンス委員会を設置し、社員教育の実施や内部統制強化に関する対応を実施しています。また、法令遵守を含む、当社商品の品質を全社的に管理する組織として下記の通り品質管理本部を設置し品質管理を強化しています。

 

(再発防止策の実行に向けた取組について)

当社が製造・販売するロボカット(ワイヤ放電加工機)において、欧州のEMC指令に基づく整合規格に適合しない態様で試験が行われていたこと(以下「本不適切行為」といいます。)につきましては、2024年11月に社外の有識者から成る特別調査委員会より調査結果報告書を受領いたしました。当社は基本理念である「厳密と透明」をもって法令等の遵守を実践してまいりましたが、本不適切行為により、お客様や関係者の皆様の信頼を損なう事態を招きました。当社は、特別調査委員会が認定した事実、原因分析および再発防止策の提言を真摯に受け止め、全社一丸となって再発防止策の実行に向けて取り組んでおり、詳細は2025年3月に当社ホームページに掲載しております。再発防止策の柱の一つとして、2025年4月1日付で研究開発本部及び製造統括本部から独立した品質管理本部を新設し商品の法令や規格への適合を含む品質管理について全社的に取組を推進しています。

(https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/announce_other/pdf/2025/notice20250325.pdf)

当社は引き続き各取組を着実に実行し、再発防止、信頼の回復に全力で取り組んでまいります。

 

⑤ 新型ウイルス等の感染症に関するリスク

新型ウイルス等の感染症が発生した場合、当社グループの社員等の健康、安全が脅かされる可能性があります。また、当社グループの社員や家族に感染者が発生した場合、周辺の地域住民への感染拡大やそれによる地域医療への負担の増加など、地域社会に大きな影響を与える可能性があります。

当社グループの部品調達先や加工・組立業務委託先に感染者が発生した場合、当社グループの生産に影響が生じる可能性があります。また、部品調達先の所在する国や地域でロックダウン(都市封鎖)が行われた場合、部品の生産や物流に制限を受け、当社グループの部品調達に大きな支障が生じる可能性があります。

新型ウイルス等の感染症に関するリスクが顕在化した場合、これらの影響を通じて、当社グループの事業戦略や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

このため当社グループは、新型ウイルス等の感染症に対しては、感染拡大防止、部品の複数調達先の確保等サプライチェーンリスクマネジメントの強化などの対策に引き続き努めていきます。

 

 ⑥ ハラスメントに関するリスク

当社グループの職場におけるハラスメントや労働衛生環境を含む人権問題等が生じた場合、社員の健康やメンタルヘルスの悪化等により人材確保・育成に関するリスクが顕在化し、当社グループの発展等に大きな影響が生じる可能性があります。また、社会的信用・企業イメージの低下等により、事業戦略や経営成績等に影響が生じる可能性があります。

このため当社グループは、ハラスメントに関する啓発活動やハラスメント防止の研修の実施、相談窓口の周知・強化等に一層努めていきます。

 

 ⑦ ESGに関するリスク

当社グループは、持続可能な成長のための経営上の課題としてESGを重視しております。また、当社グループのESGへの取り組み状況が顧客等において商品購入時の検討要素とされるなど、ESGは様々なステークホルダーとの関係においても重要な課題となっています。

当社グループによるESGへの対応が不十分な場合、社会的評価が低下する等、ESGに関するリスクが顕在化し、当社グループの事業戦略や経営成績等に影響が生じる可能性があります。

こうした課題に対処するため、当社グループは、ESGへの取り組みを経営上の重要課題と認識し、積極的に強化していきます。

 

<3.その他のリスク>

 

以上の他、例えば以下のようなリスクにより、当社グループの事業戦略や経営成績等に影響が生じる可能性があります。

これらのリスクについても、顕在化の可能性と顕在化した場合の影響や積極的な事業戦略とのバランス等を考慮のうえ、予防、低減、回避等の然るべき対応に努めていきます。

(例)

 ・労働災害に関するリスク

 ・知的財産権の侵害リスク(当社グループの知的財産権が他社に侵害される場合、および当社グループが他社から知的財産権侵害の訴えを起こされる場合)

 ・製造物責任に関するリスク

 ・為替レートの変動リスク

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の業績の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

a. 財政状態

(資産)

資産合計は、前連結会計年度末比109億94百万円増の1兆9,370億31百万円となりました。これは、現金及び預金が675億25百万円増加、棚卸資産が561億7百万円減少したことが主な要因です。

(負債)

負債合計は、前連結会計年度末比96億96百万円減の1,971億41百万円となりました。これは、退職給付に係る負債が112億29百万円減少したことが主な要因です。

(純資産)

純資産合計は、前連結会計年度末比206億90百万円増の1兆7,398億90百万円となりました。これは、利益剰余金が453億81百万円増加、自己株式が302億86百万円増加したことが主な要因です。

 

b. 経営成績

当期(2024年4月1日から2025年3月31日まで)における当社グループを取り巻く状況につきましては、景気が緩やかに回復して設備投資にも持ち直しの動きがみられる一方、欧米におけるインフレや高金利等の影響、中国経済の先行き懸念など、不透明な状況が続きました。

このような厳しい状況が続く中、セールス、研究開発、工場、サービス、事務、全ての部門の総力を挙げて拡販や経費削減等に取り組みました。

また、競争力を高めるための新商品・新機能の開発、生産性向上のための生産効率化、新商品向けの新規設備の導入など、将来の発展に向けた施策は引き続き積極的に進めました。

加えて、世界的に脱炭素社会へ向けた動きが広がる中、グローバルに事業を展開している当社グループにとっても気候変動は重要な経営課題であると認識しており、商品の省エネルギー性能向上に向けた開発を推進しました。また、国際的な非営利団体であるCDPにより、気候変動分野の透明性とパフォーマンスにおけるリーダーシップが認められ、最高評価の「Aリスト企業」に2年連続で選定されました。

2024年度における連結業績は、売上高が7,971億29百万円(前期比0.2%増)、経常利益が1,967億38百万円(前期比8.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が1,475億57百万円(前期比10.8%増)となりました。

なお、当期におきましては、従来よりも剛性・絶対精度を大幅に向上させ、高い軌跡精度を実現した産業用ロボットである「ファナック ロボット M-800」が「第11回ロボット大賞 経済産業大臣賞」を受賞しました。また、様々な環境変化に適応した工作機械の開発を推進し、製造現場での自動化・生産性向上を実現する新たなプラットフォームとなるCNCである「ファナック シリーズ 500i-A」が第67回日刊工業新聞社「十大新製品賞」本賞を受賞しました。

なお、当社グループは、CNCシステムとその応用商品を提供する企業グループとして、単一セグメントの事業を営んでおりますが、商品部門別の状況は以下のとおりです。

 

 

〔FA部門〕

FA部門について、CNCシステムの主要顧客である工作機械業界の需要は、国内や欧州で低調に推移したものの、インドや設備投資に積極的な産業からの需要が旺盛だった中国で堅調に推移し、当社のCNCシステムの売上は増加しました。

FA部門の連結売上高は、1,948億24百万円(前期比8.0%増)、全連結売上高に対する構成比は24.4%となりました。

 

〔ロボット部門〕

ロボット部門については、国内では自動車関連向け、一般産業向け共に堅調に推移し、売上が増加しました。一方、中国では好調だったEV関連向けが下降気味であり、一般産業向けと電子産業向けも低調で売上が減少しました。欧米でも主に自動車関連向けが低調で売上が減少しました。

ロボット部門の連結売上高は、3,295億66百万円(前期比13.5%減)、全連結売上高に対する構成比は41.3%となりました。

 

〔ロボマシン部門〕

ロボマシン部門については、ロボドリル(小型切削加工機)では、主に中国市場が堅調に推移し、売上は増加しました。ロボショット(電動射出成形機)では、中国、中国以外のアジアでの需要増があり、売上が増加しました。ロボカット(ワイヤ放電加工機)では、米州、中国、中国以外のアジアで売上が増加したものの、欧州で売上が減少したため、売上は微増にとどまりました。

ロボマシン部門の連結売上高は、1,375億88百万円(前期比33.1%増)、全連結売上高に対する構成比は17.3%となりました。

 

〔サービス部門〕

サービス部門については、「サービスファースト」の精神のもと、ITを活用したCX(顧客体験)を重視し、顧客満足度の向上をグローバルに推進するサービス体制の強化を図りました。

サービス部門の連結売上高は、1,351億51百万円(前期比3.5%増)、全連結売上高に対する構成比は17.0%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前年度末比247億90百万円減の5,020億91百万円となりました。

 

(各キャッシュ・フローの状況)

営業活動の結果得られた資金は、前年同期比835億9百万円増の2,552億73百万円であり、これは主に棚卸資産の減少によるものです。

投資活動の結果使用した資金は、前年同期比1,205億21百万円増の1,340億84百万円であり、これは主に定期預金の預入によるものです。

財務活動の結果使用した資金は、前年同期比141億4百万円増の1,366億18百万円であり、これは主に自己株式の取得によるものです。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

(当連結会計年度)

生産高(百万円)

前期比(%)

676,696

+0.7

 

(注) 生産高は、販売価格によっております。

 

b. 受注実績

(当連結会計年度)

受注高(百万円)

前期比(%)

796,182

+16.4

 

 

c. 販売実績

(当連結会計年度)

販売高(百万円)

前期比(%)

797,129

+0.2

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

     当連結会計年度は当該割合が10%未満のため記載を省略しております。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

SHANGHAI-FANUC Robotics Co., LTD.

87,454

11.0

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

連結財務諸表の作成にあたっては、期末日における資産、負債および偶発債務ならびに会計期間における収益、費用に影響を与える見積りを必要としておりますが、実際の結果と異なる場合があります。

中でも連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられるものは、以下のとおりであります。

(退職給付債務)

当社グループの従業員退職給付費用および債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用および計上される債務に影響を及ぼします。長期金利の低下や運用利回りの悪化は、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(固定資産の減損)

当社グループは、減損の兆候が見られる固定資産については将来キャッシュ・フローの見積りに基づいて、遊休資産については個別に比較可能な市場価額等に基づいて減損損失の認識の判定を行い、必要に応じて減損処理を実施しております。

将来キャッシュ・フローや回収可能価額の見積りの前提となる将来の収益性の低下や時価の下落等により、減損損失が発生する可能性があり、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

② 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 (経営成績)

2024年度における連結業績は、売上高が7,971億29百万円(前期比0.2%増)、経常利益が1,967億38百万円(前期比8.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が1,475億57百万円(前期比10.8%増)となりました。

当期(2024年4月1日から2025年3月31日まで)における当社グループを取り巻く状況につきましては、景気が緩やかに回復して設備投資にも持ち直しの動きがみられる一方、欧米におけるインフレや高金利等の影響、中国経済の先行き懸念など、不透明な状況が続きました。

このような厳しい状況が続く中、セールス、研究開発、工場、サービス、事務、全ての部門の総力を挙げて拡販や経費削減等に取り組みました。

 

(財政状態)

(資産)

資産合計は、前連結会計年度末比109億94百万円増の1兆9,370億31百万円となりました。これは、現金及び預金が675億25百万円増加、棚卸資産が561億7百万円減少したことが主な要因です。

(負債)

負債合計は、前連結会計年度末比96億96百万円減の1,971億41百万円となりました。これは、退職給付に係る負債が112億29百万円減少したことが主な要因です。

(純資産)

純資産合計は、前連結会計年度末比206億90百万円増の1兆7,398億90百万円となりました。これは、利益剰余金が453億81百万円増加、自己株式が302億86百万円増加したことが主な要因です。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、前年同期比835億9百万円増の2,552億73百万円であり、これは主に棚卸資産の減少によるものです。

投資活動の結果使用した資金は、前年同期比1,205億21百万円増の1,340億84百万円であり、これは主に定期預金の預入によるものです。

財務活動の結果使用した資金は、前年同期比141億4百万円増の1,366億18百万円であり、これは主に自己株式の取得によるものです。

以上のキャッシュ・フローの増減に現金及び現金同等物に係る換算差額93億61百万円を減算し、連結キャッシュ・フローは、247億90百万円の減少となりました。

 

(資本の財源)

当期の所要資金は全て自己資金により充当し、外部からの調達は行っておりません。

 

5 【重要な契約等】

相手会社名

国名

契約品目

契約内容

契約期間

シーメンス社

ドイツ

CNCシステム、CNC自動プログラミング装置、ロボット

特許実施権の相互供与

自 1983年4月19日
至 2025年12月31日

 

 

6 【研究開発活動】

ハードウェア研究開発本部、ソフトウェア研究開発本部、サーボ研究開発本部、ロボット機構研究開発本部、ロボットソフト研究開発本部、ロボットアプリケーション技術本部、ロボドリル研究開発本部、ロボショット研究開発本部、ロボカット研究開発本部では、お客様における製造の自動化と効率化に寄与すべく、高信頼性を基本に、性能の向上や使いやすさを追求した競争力の高い様々な新商品、新機能を開発し、市場に投入しました。

次世代技術研究所では、当社商品に適用される次世代要素技術などの研究開発を行っております。

AIにつきましては、FA・ロボット・ロボマシンの全商品群において、より実用的なAI機能の開発を推進しています。各研究開発本部では、新たなAI機能の開発と、これまでにリリースしたAI機能の改良や適用範囲の拡大に取り組んでいます。次世代技術研究所では、将来を見据えた基礎的なAI機能の研究を行っています。特に近年は、生成AIの活用検討に注力しており、社内業務での活用や一部では商品への応用検討が進められています。このようなAI技術に関する取り組みにより、競合他社との差別化を図ります。

当連結会計年度の研究開発費は、46,666百万円となっております。

 

当連結会計年度における新商品の主な成果は以下のとおりです。

 

CNCにつきましては、最新機種の「ファナック シリーズ 500i-A」にて、最新の高性能ハードウェアのラインナップ追加や、旋盤や自動盤に向けた新しい考え方に基づく旋削機能の実装を行い、適用範囲を拡大しています。また、幅広く工作機械に採用いただいている「ファナック シリーズ 0i-F Plus」では、工程集約に寄与する機能追加や、表示画面の大型化への対応など、機械の付加価値向上につながるレベルアップを行いました。

デジタル技術の活用につきましては、シミュレーションにより加工プロセスを改善するデジタルツイン関連商品のレベルアップを行い、それらを統合的に管理する「FANUC Smart Digital Twin Manager」をリリースしました。また、製造現場のDXを支援するデータ基盤である「FIELD system Basic Package」では、大規模工場での適用に求められる仮想サーバ上での動作を新たにサポートするなど、機能強化を継続しています。

サーボにつきましては「αi-Dシリーズサーボ」に、ハイエンド市場への拡販に寄与する「DDモータDiS-Dシリーズ」および「リニアモータLiS-Dシリーズ」、マシニングセンタ用主軸や旋盤主軸等への拡販に寄与する「ビルトインスピンドルモータBi-Dシリーズ」のラインアップを追加しました。

 

ロボットにつきましては、新機種として、大型パレタイジングロボットM-410/800F-32C、大型ハンドリングロボットM-1000/550F-46A、防爆タイプの協働ロボットCRX-10iA/L Paintを開発しました。また、最新のロボット制御装置R-50iAに対応した新型軽量教示操作盤を開発しました。

M-410/800F-32Cは、従来の700kg可搬パレタイジングロボットM-410iB/700の後継モデルです。可搬能力を800kgに強化し、各軸最高速、動作領域も向上しました。従来ロボット本体の外部に張り出していたケーブルをロボット本体内に収納し、スマートなデザインに一新しました。幅広い産業分野で大型、重量物の搬送作業にご活用いただけます。

大型ハンドリングロボットM-1000シリーズのバリエーションとして、ロングリーチのM-1000/550F-46Aを新たに開発しました。近年、自動車産業で増加している、ギガキャストと呼ばれる大型部品の一体成形工程では、高可搬で広い動作領域を持つロボットのニーズが高まっています。M-1000/550F-46Aはこのような用途に適した550kg可搬、4.6mリーチのロボットです。アーム1本のシリアルリンク構造と4.6mのロングリーチにより、ロボットの上方・後方まで広い動作範囲を実現しました。

協働ロボットCRXシリーズでは、各国、地域での防爆規格に対応した国際規格防爆協働ロボットCRX-10iA/L Paintを開発しました。従来のCRXシリーズ同様、ロボットを直接動かすダイレクトティーチにより簡単に塗装経路を教示できます。防爆仕様が必要な塗装用途でも協働ロボットを活用いただけます。

さらに、新型軽量教示操作盤は、重量は従来比40%減の750g、体積は従来比45%削減と大幅な小型軽量化を実現しました。手になじむエルゴノミックデザインを採用し、長時間の使用でも作業者の負担を軽減します。小型軽量化にも関わらず、従来と同じ高解像度の大画面を採用し見やすい画面表示を実現しています。スマートフォンと同様のタッチ操作が、高感度のタッチパネルにより、作業現場でよく使用される軍手を着用していてもストレスなく行えます。

これらをはじめとする新商品、新機能により、お客様の製造現場の自動化に貢献します。

 

ロボドリル(小型切削加工機)、ロボショット(電動射出成形機)およびロボカット(ワイヤ放電加工機)につきましては、ロボドリルでは「ファナック ロボドリル α-DiB Plusシリーズ」のロボットパッケージ、熱変位補正機能、省エネルギー機能、独自Gコードの改良開発を行い、ロボドリルの使いやすさと生産性を向上しました。ロボショットでは「ファナック ロボショット α-SiBシリーズ」の省エネルギー化に役立つ可塑化エネルギーモニタ、可塑化部用の保温ジャケットを開発しました。樹脂材料を加熱溶融する可塑化部で放出される熱エネルギー損失の見える化と抑制を可能とし、消費電力を削減します。ロボカットでは「ファナック ロボカット α-CiCシリーズ」放電制御の改良により、加工開始点と終了点が重なるアプローチ部の仕上がりを改良することで加工精度を向上し、高精度金型市場への対応を強化しました。