第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在における当社グループの判断に基づいております。

(1)経営方針

 当社グループは創業以来、制御技術や安全技術を核とするさまざまな製品やサービスを社会に提供しておりますが、IDECグループが真のグローバル企業となり、100周年に向けて持続した成長を続けることができるよう、2019年に新たな理念として『The IDEC Way』を制定いたしました。『The IDEC Way』は、Vision、Mission、Core Valuesの3つの要素で構成しており、その最も重要な基盤として、創業の理念「人間性尊重経営」を位置づけ、継承しております。

 全世界のIDECグループ社員が「One IDEC」として同じ価値観を共有し、私たちの使命を達成していくために、一人ひとりが『The IDEC Way』を実践し、絶え間ない挑戦や変革を続けることで、真のグローバル企業として新たなステージへ飛躍してまいります。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、従来より目標とする主たる経営指標として「ROEの向上」を掲げており、さらには1株当たり当期純利益(EPS)を重視した経営計画を策定しております。ROEについては、「10%以上」を目標としており、営業利益率の向上とEPSとあわせて、常に高い目標に挑戦してまいります。なお、上記の数値目標は当社グループが現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、将来様々な要因によって目標を達成できない可能性があります。

 

(3)投資単位の引下げに関する考え方及び方針等

 当社は、株式の流動性を高め、個人株主の増加を図ることを資本政策上の重要課題と認識しております。そのため、利益還元の充実に加え、個人株主の皆さまにわかりやすい株主通信の作成やホームページの拡充などの対応を進めております。

 

(4)中長期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 IDECが持続的な成長を続け、真のグローバル企業として新たなステージへと飛躍するため、成長戦略の推進、収益性の向上、経営基盤の強化の3つを基本戦略として掲げ、取り組みを進めております。

成長戦略の推進

 HMI(Human-Machine Interface)のグローバルNo.1カンパニーになるとともに、世界一安全・安心を追究・実現する企業となるため、成長に紐づく新製品の投入や、地域・事業軸での事業拡大を推進しております。そのための施策として、APEM社とのシナジー拡大に向けた取り組みに加え、次世代の安全思想である「協調安全/Safety2.0」の考え方に立ち、多様な安全関連機器のアプリケーションをご提案することで、社会課題に則した安全・安心ビジネスのさらなる拡大を目指しております。

 また、IDECの安全関連機器と協働ロボット、最適なビジョンセンサ、人工知能、無人搬送車などを組み合わせた、協調安全ロボットシステムなど新規事業の拡大も図っております。

収益性の向上

 材料や製品の統合、品目の削減による生産性の向上に加え、生産・販売・物流拠点の最適化や生産の自動化をグローバルに実施しております。その他にも、業務プロセスを見直すことで業務生産性の向上を図るとともに、事業の選択と集中などを推進することで、高収益体質への変革を推進いたします。

経営基盤の強化

 グローバルなIT基盤やRPA(Robotic Process Automation)の導入といった、デジタル化による働き方改革を積極的に推進しております。また、従業員意識調査結果等を踏まえた人事制度改革や、人材マネジメントシステムの強化を図ることで、企業価値の最大化を目指してまいります。

CSRへの取り組み

 2018年に設置した「CSR委員会」においては、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3分野に、安全(Safety)・品質(Quality)の2分野を加えた5つの分野「ESG+Sa+Q」を重点分野として、CSR委員会の下に各分野の専門委員会を設け、施策検討や推進に取り組み、またCSR室を中心に、各種社会貢献・地域貢献活動を推進しております。

 CSR活動を推進することに加え、事業活動を通じた社会課題の解決を通して「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」の達成に寄与いたします。

2【事業等のリスク】

 以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在における当社グループの判断に基づいております。

項目

リスクの内容

主な取り組み

たな卸資産

実際の将来需要又は市場状況が当社グループの見積りより悪化した場合、評価減が必要となる可能性がある。

供給計画・生産計画の策定において、急激な需要変動等機動的に反映し、在庫の長期滞留化リスク軽減に努めている。

固定資産

固定資産の減損に係る会計基準の適用により、時価の下落や当該資産から得られる将来のキャッシュ・フローの状況によっては減損処理が発生する可能性がある。

固定資産の稼働状況、キャッシュ・フローの創出状況等を定期的にモニタリングし、効率的運用を実施している。

のれん及び無形資産

APEM社を連結子会社化したことに伴い、のれん及び無形資産である商標権と顧客関連資産を計上しており、景気変動等の影響により収益性が低下した場合、シナジー効果が発揮されず、減損損失が発生する可能性がある。

月次・四半期単位等定期的に業績動向・経営状態を確認するとともに、超過収益力の向上を目的としたシナジー効果の最大化に向けた取り組みを強化している。

業務提携・

戦略的投資

外部企業との事業の合弁や戦略的提携を行っております。事業が適切な計画の下で予定どおり進まなかった場合や、当社グループの市場の動向、提携先企業の業績状況によって、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。

投資を伴う買収等の業務提携を行う際には、デューディリジェンスなどを通じて相手方企業の分析を行い、リスク等を加味したうえで適切な投資額となるよう努めている。

海外進出

日本国内での製品の生産のほか、競争力のある製品の製造とコスト削減のために、米国、中国、台湾、タイの海外拠点にて製品の生産を行っており、この海外拠点においては、以下のようなリスクが存在する。
①予期しない法規や税制の変更
②人財の採用と確保の難しさ
③技術的なインフラの未整備による影響
④予知せぬ経済力、社会的な情勢の変化等

適時に情報を収集するとともに、地域分散などにより、リスク回避を図っている。

為替変動

当社グループの事業では約5割を海外の市場にて販売しており、為替変動に伴うリスクがある。

為替変動のリスクを回避するため通貨ヘッジ取引を行い、短期的な変動による悪影響を最小限にとどめるよう努めている。

知的財産権

技術革新のスピードが加速していること、また、当社グループは事業活動をグローバルに展開していることによる知的財産権の係争が発生する可能性がある。

開発プロセスの中に、他社の特許等の知的財産権の調査を組み込んでおり、係争のリスクが減少するよう努めている。

災害等

国内外の拠点において、地震及び洪水等の自然災害、火災、戦争及びテロ行為、感染症の流行、労働災害等が起こった場合、その一部又は全部の操業が中断し、生産及び出荷が遅延する可能性や、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生する可能性がある。

適正な在庫を確保し、また、主要部材については複数購買するよう努めている。

※新型コロナウイルス感染症の拡大による影響
 世界的規模で拡大している新型コロナウイルス感染症に対して、当社グループでは、感染予防や拡大防止に向けた対策を実施し、また、グループ全体の生産・販売・在庫・物流などの状況把握に努め、事業活動への影響の低減を図っております。しかしながら、今後、感染がさらに拡大し長期化した場合、また、各国政府によるロックダウン等の政策が決定された場合などに、生産拠点の一時稼働停止、販売・サービス活動の休止、需要の低迷などにより、当社グループの販売生産活動及び業績並びに財政状態に影響を与える可能性があります。

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

(1)財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度においては、新型コロナウイルスの感染拡大による全世界的な経済の低迷の影響を受けて、当社グループを取り巻く事業環境は年度当初より上半期中は厳しい状況で推移致しましたが、第3四半期以降、主力全地域で市況は急速に回復し、特に第4四半期は、主力のスイッチ事業を中心に受注・売上高は前年同四半期を上回る状況で推移いたしました。

 その結果、国内売上高は246億3千8百万円(前年同期比12.1%減)となり、海外売上高は293億4千4百万円(前年同期比3.2%減)となり、いずれも四半期を追うごとに減収幅は縮小しております。

 利益面においては、主に売上高が減少したことによりそれぞれ、営業利益は前年同期に比べ、6億6千2百万円減益40億4千1百万円(前年同期比14.1%減)となり、経常利益は前年同期に比べ、5億8百万円減益41億4百万円(前年同期比11.0%減となりましたが、第4四半期(2021年1月~3月)3ヵ月間の営業利益は、前年同四半期に比べ増益となっております。

 なお、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期に比べ、2億2百万円減益28億3百万円(前年同期比6.7%減となりました。

 また、当連結会計年度における対米ドルの平均レートは、106.10円(前年同期は108.72円で2.62円の円高)、対ユーロの平均レートは、121.88円(前年同期は122.03円で0.15円の円高)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績に関しては、次のとおりであります。

① 日本

 日本においては、半導体関連業界向けなどのシステム関連製品が依然として好調に推移しており、自動車関連業界や工作機械・ロボット業界等当社主力市場における需要も回復傾向にありますが、上半期での落ち込みの影響は大きく、売上高は、前年同期に比べ、31億9千1百万円減収の272億9百万円(前年同期比10.5%減)となり、営業利益は、前年同期に比べ、5億6百万円減益の20億3千3百万円(前年同期比19.9%減)となりました。

② 米州

 北米地域においては、新型コロナウイルスの感染拡大による経済低迷の影響はまだまだ残ってはおりますが、需要は概ね回復しております。円高の影響もあるため、売上高は、前年同期に比べ、7億9千6百万円減収の86億8千1百万円(前年同期比8.4%減)となりましたが、固定費の削減効果もあり、営業利益は、前年同期に比べ、ほぼ同額の5億4千4百万円(前年同期比0.0%減)となりました。

③ 欧州、中東及びアフリカ(以下、EMEA)

 欧州においては、新型コロナウイルスの感染拡大による経済低迷の影響が最も深刻でありましたが、需要は相当程度回復しており、第3四半期以降の売上高は、前年同四半期を上回る状況で推移しております。一方で、当連結会計年度全体では、年央までの制御用操作スイッチなどスイッチ事業の需要の大幅な減少の影響は大きく、売上高は、前年同期に比べ、15億4千5百万円減収の88億3千1百万円(前年同期比14.9%減)となり、営業損益は、前年同期に比べ、8億3千8百万円減益の2億5千2百万円の損失となりました。

④ アジア・パシフィック

 アジア・パシフィック地域においては、中国での需要が急速に回復し、主力製品であるスイッチ事業の制御用操作スイッチやインダストリアルコンポーネンツ事業の制御用リレーの売上が増加した結果、売上高は前年同期に比べ、11億6千2百万円増収の92億6千万円(前年同期比14.4%増)となり、営業利益は、前年同期に比べ7億6百万円増益の15億1千7百万円(前年同期比87.2%増)となりました。

 

 また、製品種類別の売上高については、次のとおりであります。

① スイッチ事業

 アジア・パシフィックにおいては特に中国において急速に需要が回復し、日本、米州、EMEAにおいても、第3四半期以降の需要は相当程度回復しておりますが、年央までの中国を除く各地域での需要の大幅な減少の影響は大きく、売上高は、前年同期に比べ、22億7千4百万円減収の250億5千4百万円(前年同期比8.3%減)となりました。

※HMI(Human Machine Interface:人と機械が触れ合う環境)の核となる、「制御用操作スイッチ」や「ジョイスティック」、「表示灯」などの製品群です。

② インダストリアルコンポーネンツ事業

 主力市場である米州での売上が減少した一方で、中国市場での制御用リレーの売上が増加した結果、売上高は、前年同期に比べ、5億3千5百万円減収の98億3百万円(前年同期比5.2%減)となりました。

※機械や生産ラインなどを制御・操作するための制御盤の中に組み込み、機械・装置の制御部分の基礎として使用される、「スイッチング電源」、「端子台」、「制御用リレー/ソケット」、「サーキットプロテクタ」などの製品群です。

③ オートメーション事業/センシング事業

 日本において、前年同期に比べ自動認識機器の売上高が大幅に減少したことに加え、米州においては、プログラマブル表示器やプログラマブルコントローラの需要が減少した結果、売上高は、前年同期に比べ、7億5千5百万円減収の82億3百万円(前年同期比8.4%減)となりました。なお、第3四半期以降は、前年同四半期を上回る状況で推移しております。

※産業現場や暮らしのさまざまなシーンにおける機器の自動化に貢献する各種製品、機械・装置の頭脳の役割をする「プログラマブルコントローラ」や、快適な機械・装置の操作環境を実現する「プログラマブル表示器」に加え、リテールや物流分野などさまざまな分野で活用されている「自動認識機器」などの製品群です。

④ 安全・防爆事業

 第3四半期以降の需要は全地域において回復しておりますが、年央までの中国を除く各地域での需要の大幅な減少の影響は大きく、売上高は、前年同期に比べ、1億4千4百万円減収の65億1千3百万円(前年同期比2.2%減)となりました。

※産業現場の安全を守る「安全スイッチ」や「イネーブル装置」といった「安全関連機器」に加え、石油・化学プラントなど、爆発性のガスが存在する現場での事故を未然に防ぐ「防爆関連機器」などの製品群です。

⑤ システム

 日本において、デジタル機器・半導体業界等の急速な需要拡大を受け、半導体・液晶製造装置用等の制御盤の売上が増加したことにより、売上高は、前年同期に比べ、3億4千2百万円増収の32億4千4百万円(前年同期比11.8%増)となりました。

※顧客ニーズに合わせてIDECの製品をシステム化して提供する「各種システム」などの製品群です。

⑥ その他

 日本において、メガソーラーや太陽光発電用電力マネジメントシステムの売上が大幅に減少した結果、売上高は、前年同期に比べ、10億5百万円減収の11億6千3百万円(前年同期比46.3%減)となりました。

※IDECの強みである安全関連機器・安全技術を組み合わせて最適なシステムを構築する「協働ロボットシステムソリューション」や、メガソーラーや太陽光発電用電力マネジメントシステムをはじめとする「再生可能エネルギー事業」に加え、太陽光併用型農業プラントのトータルソリューションを提供する「次世代農業ソリューション」、幅広い分野での応用研究が進んでいる「ウルトラファインバブル(微細気泡)発生装置」などの事業や製品群です。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

 

前連結会計年度(百万円)

当連結会計年度(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

6,928

7,443

投資活動によるキャッシュ・フロー

△2,037

△3,147

財務活動によるキャッシュ・フロー

△3,605

△3,672

現金及び現金同等物に係る換算差額

△160

393

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

1,124

1,016

現金及び現金同等物期首残高

12,868

13,993

現金及び現金同等物期末残高

13,993

15,009

 営業活動によるキャッシュ・フローは、74億4千3百万円の収入となりました。これは主に、法人税等を14億2千万円納付した一方で、税金等調整前当期純利益を42億5千1百万円、減価償却費を29億8千1百万円計上したことによるものです。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、31億4千7百万円の支出となりました。これは主に、国内外子会社における工場の新設等での固定資産の取得による支出が33億9千5百万円あったことによるものです。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、36億7千2百万円の支出となりました。これは主に、自己株式の取得により20億3千4百万円、配当金の支払いにより15億2千9百万円を支出したことによるものです。

 

(3)生産、受注及び販売の実績

①生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

日本

28,205

92.0

米州

3,237

88.3

EMEA

9,543

91.9

アジア・パシフィック

8,437

115.7

合計

49,423

95.0

(注)1 金額は、販売価格によっております。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

②受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

受注残高

金額(百万円)

前年同期比(%)

金額(百万円)

前年同期比(%)

日本

29,163

98.5

5,789

150.9

米州

9,187

100.5

1,895

148.5

EMEA

8,754

90.9

3,150

103.3

アジア・パシフィック

10,759

125.1

3,368

155.9

合計

57,864

101.5

14,203

137.6

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

③販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

日本

27,209

89.5

米州

8,681

91.6

EMEA

8,831

85.1

アジア・パシフィック

9,260

114.4

合計

53,983

92.5

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(1)重要な会計方針及び見積り

 当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に際し、見積りによる収益・費用の計上を行っております。経営陣は、過去の実績や状況に応じ、合理的と考えられる方法により見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、不確実性を含んでおり、見積りによる数値とは異なる場合があります。

 特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。

 なお、新型コロナウイルス感染症による経済への影響については、今後とも不透明な部分はあるものの、ワクチン接種の拡大状況や経済活動再開の動き等を踏まえ、当社グループとしては、新型コロナウイルス感染症の経済への影響は、今後はさらに薄れ、経済活動正常化の動きは活発化するものと仮定しております。連結財務諸表及び財務諸表に計上されているのれん及び商標権・顧客関連資産の減損及び繰延税金資産の回収可能性については、上述した仮定をもとに、新型コロナウイルス感染症の影響も考慮した事業の見通しに基づき、見積り及び判断を行っております。なお、現時点で当社グループの会計上の見積りに及ぼす影響は重要でないと判断しております。

① たな卸資産

 当社グループは、連結会計年度末時点において簿価と市場価格の状況を検討し市場価格が下回る場合は評価損を計上しております。実際の市場価格が当社グループの見積りより悪化した場合、計上した評価損の過不足が生じる可能性があります。

 また、従来より一定期間を超えて在庫として滞留するたな卸資産についても簿価を切り下げており、在庫実態に変化が生じた場合には、同様にたな卸資産の簿価を切り下げることとなります。

② 貸倒引当金

 当社グループは、債権の回収不能時に発生する損失の見積額について貸倒引当金を計上しておりますが、債権先の財政状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要になる場合があります。

③ 繰延税金資産

 当社グループは、繰延税金資産について回収可能性が高いと考えられる金額へ減額するために、評価性引当額を計上しておりますが、繰延税金資産の全部又は一部を将来回収出来ないと判断した場合、当該判断を行った期に調整額を費用として計上いたします。

④ 退職給付費用

 従業員退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づき算出しております。実際の結果が前提条件と異なる場合及び今後この前提条件が変化した場合には、変化した年度以降の退職給付費用が大きく増加する場合があります。

⑤ 固定資産の減損損失

 当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準における資産のグルーピング方法として、工場その他の事業用施設等については、継続して収支を把握している単位かつ独立したキャッシュ・フローを生み出す単位で、遊休資産については、当該資産単独で区分する方法を採用しており、将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、または遊休状態で今後も使用する見込みがない場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。

⑥ のれん及び商標権・顧客関連資産

 当社グループは、のれん及び商標権・顧客関連資産に関してその効果の発現する期間を見積り、その期間で均等償却しております。その資産性の評価について検討し、将来において当初想定した収益が見込めなくなった場合に、評価の切り下げを行う可能性があります。

 

(2)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 売上高

 当連結会計年度においては、新型コロナウイルスの感染拡大による全世界的な経済の低迷の影響を受けて、当社グループを取り巻く事業環境は年度当初より上半期中は厳しい状況で推移致しましたが、第3四半期以降、主力全地域で市況は急速に回復し、特に第4四半期は、主力のスイッチ事業を中心に受注・売上高は前年同四半期を上回る状況で推移いたしました。

 その結果、国内売上高は246億3千8百万円(前年同期比12.1%減)となり、海外売上高は293億4千4百万円(前年同期比3.2%減)となり、いずれも四半期を追うごとに減収幅は縮小しております。
 なお、当連結会計年度における対米ドルの平均レートは、106.10円(前年同期は108.72円で2.62円の円高)、対ユーロの平均レートは、121.88円(前年同期は122.03円で0.15円の円高)となりました。

② 損益状況

 売上原価は、前年同期に比べ、21億1千5百万円減少し、311億9千9百万円(前年同期比6.3%減)となりました。これは主に新型コロナウイルスの感染拡大による全世界的な経済の低迷の影響などにより、売上高が減少したことによるものです。販売費及び一般管理費は、15億9千4百万円減少し、187億4千2百万円(前年同期比7.8%減)となりました。利益については、主に売上高が減少したことによりそれぞれ、営業利益は前年同期に比べ、6億6千2百万円減益40億4千1百万円(前年同期比14.1%減)となり、経常利益は前年同期に比べ、5億8百万円減益41億4百万円(前年同期比11.0%減となりましたが、第4四半期(2021年1月~3月)3ヵ月間の営業利益は、前年同四半期に比べ増益となっております。

 なお、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期に比べ、2億2百万円減益28億3百万円(前年同期比6.7%減となりました。

 

(3)経営成績に重要な影響を与える要因について

① 市場の動向

 当社グループは、主要販売品目の性格上、設備投資需要の動向の影響を受けております。

② 為替の変動

 当社グループは、製品の約5割を海外の市場にて販売しております。為替変動のリスクを回避するため通貨ヘッジ取引を行い、短期的な変動による悪影響を最小限にとどめるよう努めておりますが、その影響を受ける可能性もあるため、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析

① 財政状態の分析

 当連結会計年度末の総資産の額は、前連結会計年度末より12億2千6百万円増加し、882億5千2百万円となりました。これは主に、商標権、顧客関連資産及びのれん等の無形固定資産が主に償却により7億7百万円減少したものの、現金及び預金が借入等により27億8千9百万円増加したことによるものです。

 負債の額は、前連結会計年度末より9億3百万円増加し、451億4千万円となりました。これは主に、短期借入金を中心に流動負債が82億8千万円減少した一方で、長期借入金が93億7千万円増加したことによるものです。

 純資産の額は、自己株式が取得により20億2千万円増加(純資産の減少)したものの、為替換算調整勘定が11億6千2百万円増加したことと、利益剰余金が12億7千1百万円増加したことにより、前連結会計年度末より3億2千2百万円増加し、431億1千1百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末より10億1千6百万円増加し、150億9百万円となりました。

 なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は、次のとおりであります。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、74億4千3百万円の収入となりました。これは主に、法人税等を14億2千万円納付した一方で、税金等調整前当期純利益を42億5千1百万円、減価償却費を29億8千1百万円計上したことによるものです。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、31億4千7百万円の支出となりました。これは主に、国内外子会社における工場の新設等での固定資産の取得による支出が33億9千5百万円あったことによるものです。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、36億7千2百万円の支出となりました。これは主に、自己株式の取得により20億3千4百万円、配当金の支払いにより15億2千9百万円を支出したことによるものです。

 

(5)戦略的現状と見通し及び今後の方針

 世界の経済情勢は、新型コロナウイルスの感染拡大による全世界的な経済の低迷の影響から徐々に回復していくものと予測しておりますが、その終息後も特に製造業における職場の在り方は劇的に変化するものと予想しております。

 具体的には、労働集約型の生産現場は、人の安全性を確保するという観点から協働型ロボット等の導入がより一層進み、自動化技術もさらに高度化すると考えられ、世界一生産現場の安全に寄与することを標榜している当社グループにとっては、飛躍的に事業拡大する最大の機会であると考えております。

 こうした状況のもと当社グループでは、基盤事業でのより一層の収益性向上、安心安全機器及びシステムに関連する事業分野・ロボットシステムインテグレーション事業分野・環境分野等も含めた事業拡大に取り組んでまいります。

 

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

5【研究開発活動】

 当社グループにおける研究開発は、当社とAPEMグループで行っており、各連結子会社は当社及びAPEM SASで開発されたものを製造並びに販売することを主としております。したがって、当社グループにおける研究開発活動は、主として日本とEMEAで行っております。

 当社では、私たちが目指す未来であるVisionとして、“Pioneer the new norm for a safer and sustainable world”を掲げています。当社がものづくりの未来と新たな可能性を創造し、全ての人々に幸福と安心をもたらす、より安全で持続可能な社会の実現を目指しております。本社/技術研究センターを研究・開発・生産テクノロジーの拠点として、制御、安全、環境などのコア技術を基軸に、産官学など外部技術を融合させて、技術並びに製品の開発を推進しております。

 なお、当連結会計年度の研究開発費は2,343百万円であり、売上高の4.3%となっております。

 主な研究開発活動の成果を示すと次のとおりであります。

 主力製品であるスイッチ事業及びインダストリアルコンポーネンツ事業では、Φ22HW/CW/YWシリーズに新しい配線方式であるPush-in式を2段型とした2段コンタクトブロックタイプ(2接点)及びダイレクトアダプタを開発・発売しました。φ22コントロールユニットのPush-in式第4弾の発売であり、Push-in化が進んでいる欧米・日本を中心にグローバルに販売を行ないます。スプリング式(Push-in及びスプリングクランプ)配線方式は、作業者の作業熟練度に依存しない安定した品質の配線作業が簡単で短時間に配線できる機能となっています。更に照光タイプコントロールユニットに搭載しているLED球に関連して、業界初となるひとつのLED球で6色のユニット(ひとつのLED球+6色のレンズ)が構成可能なLSRD高電圧LED球を開発しました。これを前述のφ22HW-Push-inシリーズ照光ユニットに導入し、さらに当社の主力機種であるφ22~30HW,TW,TWS,TWN,TWNDシリーズ表示灯、照光系ユニットに順次導入を行ないます。LSRD球は色変更がレンズのみで可能、明るく鮮やかな色合いによる視認性の向上といった特徴があり、更に高電圧タイプではトランスが不要となりユニットの短胴化など省スペース化を実現しています。

 FA市場への新しいHMI機器として、φ22スマートRFIDリーダ「KW2D形」を開発しました。Φ22mmサイズ、市販ICカード/専用タグ、FA環境に合わせて防水/防塵/防油性能、金属パネル取り付け時でも読み取り可、側面からの視認性あり、ユーザーの用途に合わせたアクセス権限設定、PLCなどの上位機器との通信機能といった特徴を持ち、鍵付セレクタなどよりも一段高いセキュリティ権限管理、人の出入り履歴管理及び入退室管理や材料管理を実現しています。更に、市販タブレット(画面サイズ8~11インチ、厚み~24mm)に安全機能(非常停止スイッチ、イネーブルスイッチ等)を簡単に搭載することを可能としたセーフティコマンダ「HT3P形」製品を開発しました。国際安全規格の観点では安全機能が要求されており、人間工学を考慮した人の利き手を問わない操作性、USB充電ポート、IP54保護構造、落下耐性1.2mの堅牢性といった特徴を持ち、ロボット、AGV、半導体製造装置市場といった市場へと今後展開、提案を行なっていきます。

 工作機械内向けとして、LED 照明ユニット「LF3D形」を開発しました。当製品は従来品(LF1D/LF2D形)と比較し小型、薄型、軽量、金属加工物への光源の映り込みやマルチシャドウの低減による加工部の傷や凹凸など細かな部分が検知可能であり、加工物が見やすく加工精度向上に貢献しています。調光機能(グレアセーブモード)の搭載によりメンテナンス時のまぶしさの低減を実現しており、日本市場でのさらなるシェアの拡大をはじめ、海外での市場拡大を進めます。

 安全・防爆事業では、安全柵での高いロック強度と高い堅牢性を持つロック強度5000N対応ソレノイド安全スイッチHS1T形用スライドハンドル形アクチュエータ「HS9Z-EH1L」を市場投入しました。当製品は他社に無い「スリムタイプ」でかつ「強ロック強度」を実現しています。汎用用途にはHS5シリーズ、ヘビーデューティ用途にはHS1Tシリーズとしたポジショニングで幅広い分野をカバーしています。

 オートメーション/センシング事業では、高性能・高信頼性でコンパクト・高効率を実現したメタルスイッチング電源、スイッチングパワーサプライ「PS3V形」を開発しました。当製品は、4方向に取付けが可能であり、省スペース化(100Wタイプでは体積32%減)、Push-in式配線方式にも対応しています。成長産業である再生可能エネルギー、EV等の自動車産業、制御・計測関連機器をはじめとする幅広い市場に展開していきます。

 市販のUSBモバイルバッテリーと接続する事で、電源の取り回しが困難な生産現場、机上などでセンサの性能チェックを行なうことができるUSB接続ポケッタブルセンサチェッカー「SA1P形」を開発しました。当製品は、携帯型であり、机上や工場現場等、どこでもDC24Vを機器に給電することができ、信号入力表示灯、ブザーを内蔵し、入力信号に同調することで点灯と音でチェックを行なうことが可能です。

 PLCではDC12V対応したFC6A CPU moduleを開発しました。DC12Vの制御電圧、仕様変更に柔軟に対応、サイズコンパクト化(従来製品40点I/O CPUモジュールに比べ約4割減)を実現しており、主に北米市場を中心としたソリューション提案を予定していますが、他のエリアにおいても市場での新しいアプリケーションを掘り起こし、IDEC製品統合によるシェアの拡大を進めていきます。

 APEMグループでは、当連結会計年度には特にジョイスティックの触覚技術及び人間工学に基づく操作性の向上に注力しました。また、FNRシリーズロッカースイッチ、プリント基板用非常停止ボタンスイッチ、ジョイスティックの新ハンドルなどの12の新製品を発売しました。その他、20件の新規製品開発と約200件の既存製品のカスタマイズに取り組んでおり、今後も顧客とより結びつきを強め、さらなるシェアの拡大に取り組んでいきます。