当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、真のグローバル企業となり、100周年に向けて持続した成長を続けることができるよう、『The IDEC Way』を制定しております。『The IDEC Way』は、Vision、Mission、Core Valuesの3つの要素で構成しており、その最も重要な基盤として、創業の理念「人間性尊重経営」を位置付け、継承しております。
世界経済の動向は依然不透明な状況にありますが、どのような市場環境であっても、当社グループがグローバル で持続的に成長し、社会課題の解決に貢献していくため、2050年のありたい姿を想定し、そこからバックキャストして2030年のビジョンを策定しております。
人と機械の最適環境を創造し、世界中の人々の安全・安心・ウェルビーイングを実現すること。これは創業以来 変わることのない、私たちの想いであります。当社は、誰もが健康で、幸せに、生き生きと暮らすことのできる社会を実現するための取り組みを推進しております。
(2)目標とする経営指標
当社グループでは、リーマンショックや新型コロナウイルスの感染拡大など、市場環境の変化に合わせて構造改革を推進してまいりました。しかし、これからグローバルで更に事業を拡大し、収益性を向上していくためには、過去の延長線上の取り組みでは限界があります。そのため、新中期経営計画では抜本的な構造改革を全当社グループにおいて推進することで、高収益体質のグローバル企業へと変革し、3年後の2028年3月期に売上高770億円以上、営業利益13%以上の達成を目標としており、実現に向けて以下の施策を軸に、さまざまな構造改革を推進してまいります。また、収益性だけでなく資本効率の向上に向けて、株主資本コストを8%とし、それを踏まえて資本コスト(WACC)を6%に設定しております。これを上回るリターンを創出し、企業価値を向上していくために、ROE(自己資本利益率)とROIC(投下資本利益率)を指標としており、2025年3月期はROE2.8%、ROIC2.1%となりました。今後はROE10%以上、ROIC7%以上を目指しております。ROE、ROICを更に向上していくために、事業・拠点の再編や、今後の改革に繋がる積極的な投資拡大、キャッシュマネジメントなどを行ってまいりました。今後、継続的に資本コスト6%を上回るよう、運転資本、生産設備など資本効率の向上を進めていくとともに、更なる収益性の向上を実現するためにグローバルでの拠点再編や事業改革、DXなどを加速することで、抜本的なコスト低減を推進してまいります。資本コストや株価を意識した経営を実践することで、健全な財務基盤を維持しながら、持続的な企業価値向上を目指します。
(ROICツリー)
(売上高と営業利益率の推移)
事業で稼いだキャッシュについては、DX投資や、顧客ニーズを満たすためのカスタム・ソリューション開発投資、M&Aや新拠点設立などの、インオーガニックな成長のための投資を行うことで、資本効率を向上させつつ、成長を加速させてまいります。また、従来どおり安定的な配当などの株主還元は維持し、株価水準を踏まえて自己株式の取得も機動的に行っております。
中長期的な企業の成長のために必要な各種投資は積極的に行いつつ、収益性の向上と安定的な配当の実施を継続し、株主資本コストを上回ることができるような経営・財務戦略を推進してまいります。
(キャッシュアロケーション)
(3)投資単位の引下げに関する考え方及び方針等
当社は、株式の流動性を高め、個人株主の増加を図ることを資本政策上の重要課題と認識しております。そのため、利益還元の充実に加え、個人株主の皆さまに向けた説明会の開催、分かりやすい株主通信の作成やホームページの拡充などの対応を進めております。
(4)中長期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、2026年3月期から始まる3か年の新中期経営計画を発表いたしました。新中期経営計画では、顧客中心のビジネス構造へと変換し、市場変化への対応力を向上させることで、真のグローバル企業「新生IDEC」へと生まれ変わっていくための取り組みを推進してまいります。
(3年間で進めていく構造改革の施策)
・各地域の顧客ニーズに対応するため、グローバル・マトリックス・マネジメント組織へと刷新
これまで、市場環境の変化により業績が悪化した際には、さまざまな構造改革を行うことで回復させてきました。しかし今後は、市場環境がたとえ変化したとしても、高い収益性を確保できる体制にしていくために、当社グループ全体で基盤整備を行っております。
2025年4月から、当社グループの組織を地域軸と事業・機能軸からなる、グローバル・マトリックス・マネジメント組織体制へと抜本的に見直しました。これまでは、グループ会社ごとに機能別組織があり、日本を中心とした機能を軸としたプロダクトアウトの組織モデルとなっておりました。今後は各地域と、事業・機能ごとに責任者を任命し、事業計画に対する責任を明確化するとともに、グローバルな事業戦略と地域戦略を整合させることで、顧客を軸としたマーケットインの組織モデルへと変わります。
なお、当社とAPEMブランドは異なる市場をターゲットにしているため、ビジネスユニット(BU)を分けた体制としております。本社機能についてもグローバル化を進め、グローバルのリーダーシップは、どこの国からでも行える体制となりました。
各地域に対して、事業とグローバル機能の2軸となる事業運営体制へと変えることで、戦略の立案から実行、ステアリングまで、より迅速な判断を実現する体制にしてまいります。この新しい組織体制により、地域市場の動向に更に効果的に適応できるだけでなく、事業部とグローバル機能が緊密に連携し、イノベーションとオペレーショナル・エクセレンス※を推進できるようになります。
また、地域と事業機能における責任を明確にすることで、意思決定の迅速化を図り、グローバル戦略の実行において、よりシナジーのあるアプローチを創出いたします。
運営方法は、毎月各エリアのBU・機能責任者が集まるBUレビューを行い、その後、各エリアのグループ会社を運営する責任者によって構成する、リージョナルエグゼクティブ会議を行います。それらの結果を踏まえて総合レビューを行うのは、各地域、事業・機能の責任者で構成された、Global Operations Committee(GOC)であります。GOC会議においてグローバルメンバーがレビューし、年度計画や中期計画達成のための軌道修正などのディスカッションを行います。
このような組織の進化により、当社グループの競争力、効率性、グローバルリーダーシップを強化し、より統合された、対応力のあるビジネスフレームワークをつくり、「新生IDEC」実現に向けた取り組みを加速させてまいります。
※オペレーショナル・エクセレンスとは、業務の効率や生産性を高めることで競争優位性を確立し、磨き上げることであります。
・拠点・事業のグローバル最適化の推進
前中計期間から、継続的に事業や拠点の最適化は推進してきましたが、新中期経営計画でもグローバル最適化のための再編を推進してまいります。
グローバル・マトリックス・マネジメント体制への移行に伴い、マーケティングや開発をはじめとする各機能も、地域横断的な体制へと移行し、地産地消を推進してまいります。
さまざまな地域やバックグラウンドを持ったチームによって、グローバルの顧客ニーズをタイムリーにとらえるマーケティング体制を構築いたします。開発体制については、日本、米州、欧州の3極体制とし、差別化要素を明確化して、技術リソースを的確に配分し、開発プロセスもグループで共通化することで、変化への対応力を強化いたします。
拠点再編については、米国にあったIDECとAPEMの拠点を2025年4月に統合し、新本社をカリフォルニア州サンディエゴに建設しております。これまでは当社ブランド製品の現地開発、生産はしていませんでしたが、これからは現地ニーズを踏まえた企画・開発、生産を推進するための組織体制としております。また、メキシコにも組立を行う工場を新設し、北米事業の更なる強化を推進してまいります。
EMEAや日本、アジア地域においても、複数ある生産拠点の統合・集約・新設や、生産移管してまいります。グローバルで拠点再編や、更なる外注の活用を推進することで、生産効率や収益性の向上、リードタイム短縮を実現いたします。
事業の観点では、選択と集中を前提とした事業ポートフォリオ見直しの一環として、「その他」の売上高に含まれていたノンコア事業の再編を2025年3月期に行いました。微細気泡生成システムなどのファインバブル事業は収益化が困難であり、主要事業とのシナジーも期待できないことから、IFBテクノロジーズ株式会社へ事業を承継いたしました。また、太陽光発電関連の事業を行っていた、グループ会社のIDECシステムズ&コントロールズ株式会社の全株式を譲渡しております。
新中期経営計画では、主力の制御機器事業への選択と集中を推進し、「HMI・安全・安心」という当社グループの強みを活かせる事業を軸に、顧客の潜在ニーズに応える製品・サービスを展開することで、持続的な事業成長を実現いたします。
最も強い競争力を持つHMI事業については、当社とAPEMの販売、設計、販売機能を融合することで、売上と収益を向上してまいります。
HMIの次に収益性の高い安全関連については、市場成長性が高いカテゴリーであることから、よりグローバルでの拡大を推進していくため、パートナーシップを含めて安全製品やモビリティサービスなどを中心とした、ソリューション事業を強化してまいります。
その他の事業についても、より収益性を向上させるための取り組みを推進するとともに、グローバルでの不採算製品の統廃合や価格の見直しなども並行して行うことで、事業ポートフォリオの最適化を図ってまいります。
・幅広いコンポーネンツを活かした顧客課題を解決するソリューションの展開
顧客中心のビジネス構造へと転換するための取り組みの一環として、前中計でも行っておりましたソリューション事業の拡大を加速してまいります。
当社ブランドの製品は、多様な業界でご利用いただけるよう幅広くラインアップした汎用製品を、代理店経由で販売するビジネス構造が主流となっていることから、コンポーネンツ販売は従来どおりの販路で今後も継続してまいります。
ソリューション事業については、当社グループのコンポーネンツを活かし、顧客課題を解決するためのカスタム・ソリューション提案を行うことで、高付加価値ビジネスとして強化してまいります。
例えば、2023年に買収したez-Wheelの製品を活用した、AMR・AGV開発キットやアシストシステムなどが一つの例として挙げられますが、当社グループのHMI・安全機器や、ソフトウェアと組み合わせることで、強みを活かした提案をしてまいります。これらのソリューションは、特定のアプリケーションに特化したパッケージとして横展開ができるものから、顧客ごとにフルカスタムしたものまで、多様な展開が可能となります。
安全規制が厳格化するグローバル市場(特に欧州・中国)に対応するため、当社グループによる安全コンサルティングサービスを通じて、お客さまの困りごとの「その先」へ支援を拡げる、サービスによるソリューションについても強化してまいります。
HMI-Xの実現に向けて、顧客視点から生み出されたソリューションを幅広く展開していくことで、売上高に占めるソリューション販売の比率を3年後の2028年3月期に15%以上とすることを目指しております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ
①ガバナンス
当社グループの活動方針を策定する機関として、代表取締役社長が委員長を務め、社外取締役を含む取締役も
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参画するサステナビリティ委員会を設置しております。傘下には、ESGに私たちの強みである「安全:Safety」、「品質:Quality」を加えた「ESG+Sa+Q」の5つの分野の専門委員会を設けております。 各専門委員会は、委員長を執行役員とし、専門知識や経験を持ったメンバーで構成されております。サステナビリティ委員会は年2回開催しており、議論した重要事項については、経営会議や取締役会に報告され、監督される体制となっております。 また、サステナビリティ委員会で議論・決議された内容及びその実践は、サステナビリティリーダーである部門長が職場研修会を通じて、社員一人ひとりに周知・徹底しております。 |
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②戦略
当社グループは『The IDEC Way』に基づき、IDEC Group Code of Conduct(行動基準)、CSR憲章、国連グローバル・コンパクトの10原則を重要な指針として採用しております。国連グローバル・コンパクトは、企業や組織が「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4分野にわたる10の原則に基づき、責任ある創造的なリーダーシップを発揮することで、持続可能な社会の実現を目指す国際的なイニシアティブであります。当社グループは2009年に加盟し、10原則を支持しております。
2018年に設立したCSR委員会(2024年にサステナビリティ委員会へ名称変更)を軸に、事業活動を通じた社会課題の解決に取り組んでおります。具体的にはILO傘下のISSA(International Social Security Association)が推進するVision Zeroキャンペーンへの賛同・登録を通じ、社内外のすべての人々の安全・健康・ウェルビーイングの向上を追究しております。加えて、気候変動などの地球環境問題への対応や、リスクと機会を見据えた将来への備えを進めております。
当社グループは、国際社会の急速な変化や多様化する社会的課題に対応し、競争力の強化と社会的責任の遂行を両立するため、2024年度に構築したグローバルでの連携体制を基盤とし、2026年3月期から2028年3月期を対象とした「サステナビリティ新計画」を策定しました。本計画は、新たな時代を切り拓く「新生IDEC」に向けた2025年3月期からの構造改革、及び中期経営計画と連携しております。各専門委員会はこの計画に沿った具体的な目標を設定し、環境・社会・ガバナンスそして、安全・品質の各領域でのリーダーシップを発揮してまいります。
③リスク管理
サステナビリティ全般に関するリスクと機会は、マテリアリティ分析において、ステークホルダーの重要度と事業としての重要度の両軸でマッピングしており、「気候変動」と「企業基盤」に関わるリスクについては、当社グループのリスクマップに統合して管理しております。
リスクの重要項目については、リスクマネジメント委員会において評価、管理しており、年に1回経営戦略企画本部でリスクと機会を見直すこととしております。
④指標及び目標
2030年の目指すべき姿を実現するための取り組みテーマを設定し、テーマごとにサステナビリティKPIを掲げております。
人的資本については、新中期経営計画に合わせて、課題への対応とKPIの策定を現在進めております。
(気候変動)
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2030年の目指す姿 |
サステナビリティKPI |
2026年3月期~ 2028年3月期の目標 |
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当社グループの技術、製品を活用した顧客・社会の環境負荷低減への貢献 |
環境配慮強化型製品の売上高 |
82億円 |
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自社における再生可能エネルギー活用などによるCO2排出量の削減 |
CO2排出量の削減率 (Scope1&2、2020年3月期比) |
35%減 |
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ステークホルダーへの環境対応開示と協働活動の推進 |
サプライチェーンエンゲージメント率 |
80% |
(2)気候変動
■当社グループの環境経営
当社グループは、人と機械の最適環境を創造し、世界中の人々の安全・安心・ウェルビーイングを実現することを目指しております。また、事業活動の全ての面において地球環境の保全を最重要課題とし、持続可能な社会を次世代に繋げていくことを環境方針として、2024年には「環境基本方針」を刷新いたしました。
環境基本方針を多様なステークホルダーからの社会的要請や企業の社会的責任を果たす指針とし、環境課題の改善に努める中で、当社グループは環境課題の改善が自社の事業活動への貢献にもつなげることを目指した環境目標の設定を検討し、2026年3月期から3か年の中期経営計画刷新に合わせて、新サステナビリティKPIを設定いたしました。
新たなKPIは、2025年3月期末までに目標到達したCO2排出量削減率の数値目標を更に上乗せした項目に加え、環境配慮強化型製品の売上額とサプライチェーンエンゲージメント率の新設2項目の計3項目といたしました。
新KPIの目標到達に向けて当社グループがグローバル一体となっての取り組みを進めるため、2024年度に設立されたグローバル環境マネジメントシステムを活用しております。ここでは、各拠点共通の課題や拠点別の優先課題を設定し、四半期ごとの進捗確認を行い、成功事例の積み上げと共有を進めながらグループ全体での新KPIの達成に向けて取り組んでおります。
環境課題の改善に向けたグローバルでの取り組みと、事業活動への肯定的な影響を開示することで、投資家や株主、顧客だけではなく、さまざまなステークホルダーの関心に応えることが期待されます。これらの取り組みを通じて、地球環境保全と事業活動の持続的な成長の両立を目指してまいります。
■環境に配慮した製品開発
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当社グループでは、製品開発プロセスの最初の段階から、環境配慮を重視する手順で開発を行っております。当社独自の規準に基づいて環境配慮度合いを評価し、貢献度の高い製品は「環境配慮強化型製品」に認定しております。 今中期計画より、これら製品開発における環境配慮活動がもたらす財務的貢献効果を測る指標として、新たに環境配慮強化型製品の売上額をKPIとして設定いたしました。この目標額は、過去に発売した環境配慮強化型製品と、今後中期計画内で発売する新製品の中から、環境配慮 強化型製品と認定されうるものを抽出し、その売上額を想定しております。 |
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■環境配慮強化型製品の例
(非常停止用押ボタンスイッチ「XAシリーズ」)
安全規格ISO 13850:2015(JIS B9703:2019)に対応し、有効/無効な非常停止機器を識別するための照光タイプとモニタ用接点を備えているタイプをラインアップしております。安全機構では第3世代となるセーフティポテンシャル構造を採用し、屋外での使用を想定したType 4X(UL認証)を取得している非常停止用押ボタンスイッチであります。
この製品は、生産現場などでオペレータが危険を感じた場合や、機械設備に異常が発生したり、損害が発生する可能性を感じた場合に、オペレータが手動で操作する「非常停止用」として使用されるスイッチであります。環境配慮面においては、従来品からの短銅化、製品廃棄時への考慮など配慮して開発しております。
■環境配慮ポイント
■CO2排出量削減の取り組み
2023年3月期から2025年3月期までのサステナビリティKPIである、CO2排出量削減率24%減(Scope1&2)については、基準年である2020年3月期の11,943t-CO2から2025年3月期は8,555t-CO2と、削減率24%を達成できました。
2026年3月期からの3か年で、CO2排出量削減率35%(2019年比)の目標を達成するには、国内だけではなく当社グループ全体での取り組みが不可欠であります。Scope1に関しては、社用車の適正台数の見直しや、ハイブリッド・EV車比率の増加、各種熱源の電化に取り組んでまいります。Scope2に関しては、各拠点での消費電力の削減、CO2排出量係数の低い電力会社への切替、省エネとなる空調設備や生産設備への切替を行ってまいります。
■サプライチェーンエンゲージメントの強化
Scope3のCO2削減には、当社グループの取り組みだけではなく、サプライヤーの協力が不可欠になります。実現に向けた取り組みとして、各生産拠点の取引額上位80%のサプライヤーとのエンゲージメントを新中期経営計画のKPIに定め、2026年3月期はグローバルで対象企業のうち、約60社と対話を行う予定であります。
具体的には、サプライヤーとエンゲージメントしたい内容をリスト化し、グローバル環境マネジメントシステムの活動を通じて、国内のみならずグローバルの各購買拠点で、実現可能な項目からエンゲージメントを進めます。毎年エンゲージメントの社数を増やしながら、すでに対話を進めているサプライヤーとも、実現可能な項目の向上を図るよう協力して取り組みます。
サプライヤーとのエンゲージメントの取り組みは、当社のScope3上流で最もCO2排出量が多い購買関係のCategory1の排出量削減に、将来的につながることが期待できます。
■自然への取り組み
・生物多様性
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当社グループの生物多様性リスクの分析と評価を、2025年3月期も実施いたしました。評価ツールには世界自然保護基金(WWF)が開発したRisk Filterを活用し、主要拠点所在国別の生物多様性リスクの定量化と、グループ全体での生物多様性リスク指標の上位10項目のデータを更新いたしました。 周辺地域の生態系に与える影響を把握するために、IDEC本社と事業所(滝野、福崎、尼崎)、物流拠点の5か所で生き物調査を実施いたしました。2024年3月期に本社で取得した、SEGES「そだてる緑」の外部審査機関のアドバイスも得て、生態系被害防止外来種(セイタカアワダチソウ)などの駆除も行いました。 |
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・TNFD(自然関連財務情報開示)
環境関連の情報開示として、当社グループは2022年からTCFD(気候関連財務情報開示)を実施してきましたが、ステークホルダーの要請は気候変動に加えて、生物多様性を始めとするTNFDにまで範囲が広がりつつあります。
当社グループでは、世界自然保護基金(WWF)が開発したBiodiversity Risk Filterを評価ツールに活用した国別生物多様性リスクの分析結果と、Aqueduct Water Risk Atlas 4.0を活用した水リスク分析結果を2023年からウェブサイトに公開しております。
今後はTCFDと合わせて、TNFDフレームワークに基づく自然関連財務情報の開示とリスク機会の評価アプローチ(LEAP)を活用した分析準備を環境戦略委員会で取り組む予定であります。
・環境教育
2025年3月期に社内で実施した環境教育は、イントラネットを活用してTNFDが定義する生物多様性と生き物の解説に加えて、当社の環境配慮強化型製品の紹介や、内部炭素価格(ICP)を活用した環境投資の試算事例を取り上げました。
また、環境マネジメントシステム学習教材や入社時研修教材の中にCDPやEcoVadisの解説、当社の環境への取り組み事例を盛り込んでおります。
■循環型社会の実現
・プラスチック廃棄物削減
当社グループの生産拠点では、生産工程初期の成型過程で発生する、プラスチック材料の端材を破砕・粒状化して再利用するリグラインドや、プラスチック廃棄物の有価引き取りなど、プラスチック廃棄量削減と資源有効利用の取り組みを継続しております。
2025年3月期にキャリアケースの有価引き取りを開始した国内事業所では、2020年3月期比でプラスチック産業廃棄物が86%減となりました。
・産業廃棄物削減
当社グループは産業廃棄物削減率24%(2020年3月期比)を2023年3月期から2025年3月期までの新中期経営計画のサステナビリティKPIの一つに設定し、グローバル全体で産業廃棄物の削減に取り組んでおります。日本、蘇州、台湾の各製造拠点の取り組みが功を奏した結果、2025年3月期末時点で28.7%減を達成することができました(2020年3月期比)。引き続き、当社グループ全体で産業廃棄物の削減に取り組んでまいります。
■外部からの環境評価
当社は、CDP、EcoVadis、FTSE、MSCIなどのESG評価機関からの要請に対応しており、質問書への回答を通じて気候関連財務情報を開示しております。
2025年2月にCDPが公表した「気候変動レポート2024」で、当社は2024年に引き続き「B」スコアと評価されました。EcoVadisにおける2024年の環境部門スコアは75点と、2024年から25ポイント向上いたしました。
また、当社は2021年にTCFDに賛同し、2022年より気候関連財務情報を開示しており、2024年からはIFRS S2号に沿った情報開示を進めております。
・EUでの情報開示(フランス・APEM)
当社グループの中でEMEAを中心に事業拠点を置くAPEMは、CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)要件に取り組むチームを設置し、2026年の開示に向けた準備を進めております。欧州のグループ会社単体としてのEcoVadisの回答準備やダブルマテリアリティの設定準備を進めております。
IFRSサステナビリティ開示基準S2号に沿った情報開示
①ガバナンス
代表取締役社長が委員長を務める、サステナビリティ委員会の専門委員会である環境戦略委員会が中心となり、気候関連財務情報の開示に取り組んでおります。
環境戦略委員会はさまざまな部門の社員で構成され、環境担当上席執行役員のもとで隔月開催されております。環境戦略委員会における決定事項は、サステナビリティ委員会で審議された後、経営会議に上程され報告承認を受け、その後取締役会で報告承認される体制になっております。2026年3月期からの中期計画で設定された目標の進捗は隔月の会議で確認され、進捗が予定どおりでない場合は対応策を検討いたします。
グローバルのガバナンス体制として、2025年3月期からグローバル環境マネジメントシステム運営委員会を発足させました。IDEC本社、国内グループ会社、蘇州、台湾、タイ、APEM各拠点(フランス、英国、デンマーク、チュニジア、米国)で構成しており、四半期ごとに運営委員会を開催しております。委員会では環境課題の進捗確認、廃棄物・環境対応資材・再生プラスチック導入などの情報共有や環境課題の議論などを行っております。
②戦略
当社グループでは、環境戦略を事業戦略の重要な一部と捉え、移行計画を2026年3月期からの中期計画に反映させるべく、環境配慮強化型製品の売上目標額をKPIに導入いたしました。これにより、事業活動における環境貢献度の向上に計画的に取り組みます。
また、サプライチェーンエンゲージメント率のKPI設定やCSR調達ガイドラインとグリーン調達ガイドラインの改定など、サプライヤーとのバリューチェーン構築を加速させております。カーボンニュートラル実現に向けたCO2排出量の削減、産業廃棄物の削減とリサイクル量の増加など、さまざまな環境対応活動にも継続的に取り組んでおります。
こうした移行計画に関わる活動は、当社グループのパーパスである、「世界中の人々の安全・安心・ウェルビーイングの実現」への貢献に対し、環境側面における調和のとれた取り組みとなっております。なお、IFRS S2号に沿った情報開示をはじめとするESG関連情報は、2023年度より有価証券報告書にも掲載しております。
・気候レジリエンス
2025年3月期の当社グループの選定シナリオは、2024年3月期と同様に移行リスクシナリオはWEO2024のSTEPS(2.6℃シナリオ)とNZE(1.5℃シナリオ)を、物理的リスクシナリオはIPCC第5次報告書のRCP2.6(2℃シナリオ)とRCP8.5(4℃シナリオ)を採用し、当社グループの世界観想定時の参考にいたしました。
選定したシナリオを基に、2025年3月期にIDEC本社及びGEMSメンバー各国・地域でワークショップを開催して、さまざまな部門のメンバーでリスクと機会の分析を行いました。ワークショップでは、国際エネルギー機関が発行する「世界エネルギー見通し2024年度版(WEO2024)」、IFRS S2号及び産業別開示トピック、CSRD/ESRS、12MAIG(マテリアリティ評価に関する適用ガイダンス)をリスクと機会検討時の参考資料としました。
これらの検討結果は、移行・物理的リスクの識別、時間的影響や財務上の潜在的影響の特定などに分類し、我々が考える1.5℃/2℃、4℃の世界観として整理いたしました。
・気候変動のリスクと機会
日本及びグローバル環境マネジメントシステム参加各国で実施した、リスク・機会のワークショップで整理した世界観や他の検討結果をもとに、当社グループの見通しに合理的に影響を及ぼすと予想される移行・物理的リスクと機会の項目を設定いたしました。
次に、リスクと機会各項目について、発生確率、影響の程度、財務上の潜在的影響額を算出し、気候関連リスクと機会マップを更新いたしました。
③リスク管理
環境戦略委員会で抽出した気候関連のリスクと機会の項目について、発生確率、影響の程度、財務上の潜在的影響額を検討し、リスクと機会のマップにまとめました。抽出結果、及びマッピングにおいて重要と評価したリスク項目は、当社グループのリスクマップに統合して管理しております。さらにマテリアリティの自然資本に関わるリスクと機会にも反映させております。
環境推進室では、特に環境に関わるリスク管理項目を年度ごとのリスク管理表に展開し、達成指標を定めて達成状況をリスクモニタリング部会に報告しております。
④指標及び目標
CO2排出量の削減に向けて、Scope1&2で2028年3月期までに35%、2031年3月期までに50%削減(いずれも2020年3月期比)を中期計画で目標としております。2023年3月期より導入した内部炭素価格(ICP)については、2026年3月期14,000円/tで価格を設定いたしました。ICPが環境投資の意思決定に与えるインパクトはまだ十分なものではありませんが、環境戦略委員会を中心にICP活用のモデルケースをイントラネットで紹介することで、社内意識の向上を図っております。
2024年3月期から役員報酬制度に導入したパフォーマンスシェアユニット(PSU)では、最大で報酬10%までに相当する譲渡制限付普通株式を取締役及び執行役員に割り当て、非財務指標としてEcoVadisの実績をPSUの算定に用いております。CO2をどれだけ少なくして効率的に利益を稼いだかを表す指標である炭素利益率(ROC)は、営業利益額減少に伴い、減少傾向が続いております。
2025年3月期のCO2排出量に関しては、Scope1と2の合計で2024年3月期より減少しており、2023年3月期以降、継続的に削減できております。
2026年3月期は太陽光発電設備の追加導入は計画にありませんが、2023年3月期に導入した竜野物流センターの自家発電設備が稼働を開始し、2026年3月期のCO2排出量削減に貢献します。さらに、排出係数の低い電力への切り替えや各工場での稼働率向上推進の成果が、CO2削減効果に表れることが期待されます。
Scope3に関しては、主に省電力設計などの製品開発プロセスにおける環境配慮を継続して実施することで、削減に取り組んでまいります。
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2030年の目指す姿 |
サステナビリティKPI |
2026年3月期~ 2028年3月期の目標 |
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当社グループの技術、製品を活用した顧客・社会の環境負荷低減への貢献 |
環境配慮強化型製品の売上高 |
82億円 |
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自社における再生可能エネルギー活用などによるCO2排出量の削減 |
CO2排出量の削減率 (Scope1&2、2020年3月期比) |
35%減 |
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ステークホルダーへの環境対応開示と協働活動の推進 |
サプライチェーンエンゲージメント率 |
80% |
(主要なリスク一覧)
B: 直接費と間接費の増加、C: 製品及びサービスに対する需要減少に起因した売上減少、D: 生産能力低下に起因した売上減少、E: 設備投資の増加
(主要な機会一覧)
(3)人的資本
■人材戦略
当社では4つのマテリアリティの一つとして、「企業基盤:価値創造を促進する経営構造の整備、人権の尊重、組織風土の醸成及び人材の育成」を掲げております。持続的な成長と企業価値向上を実現するためには、企業の活性化や人的資本の強化が必要不可欠となるため、2030年の目指す姿を掲げ、中期経営計画の施策やサステナビリティKPIとも連動させながら、さまざまな取り組みを推進しております。
更なる成長を実現するためには、当社グループ全体で人的資本への投資をより強化していく必要があることから、グローバル人材基盤としてタレントマネジメントシステムを新たに導入し、優秀な人材の発掘・最適配置に取り組む予定であります。その他にも、組織のグローバル化を推進するとともに、グローバルエンゲージメントサーベイなども行ってまいります。
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの取り組みも不可欠と考えており、人材の多様性確保に向けて、キャリア採用やグローバル人材採用を積極的に進めております。日本では、男女間の賃金差異の是正に向けて、女性管理職比率向上に向けた取り組みにも注力しております。中長期の人材戦略としては、重要ポジションの充足とグローバル人材、リーダー人材の育成を掲げており、グループ全社での持続的成長を実現するために、次世代の経営を担う幹部候補者を計画的に選抜、育成しております。
①ガバナンス
■推進体制
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経営戦略と人事戦略を立案していくため、代表取締役直轄の組織として経営戦略企画本部を設置し、関係各部と調整しながら、長期ビジョンや中期経営計画、サステナビリティKPIなどの策定、経営・人事戦略の立案、経営資源マネジメントなどを牽引しております。米国やフランス拠点の担当者とも連携しながら、グローバルでの人材戦略を立案、推進し、重要事項は経営会議に上程して方針決定後、取締役会へ報告しております。 また、全社安全衛生委員会の専門部会として、ディーセントワーク部会を2022年に設置し、働きがいのある職場環境づくりや、社員のウェルビーイング実現に向けた社員満足度向上を目指した取り組みを行っております。 |
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②戦略
■人材育成方針・社内環境整備方針
当社グループは、「世界中の人々の安全・安心・ウェルビーイングを実現すること」を私たちのパーパスとして定めるとともに、「Pioneer the new norm for a safer and sustainable world.(いつも、ずっと、みんなに新しい安心を)」というVisionを『The IDEC Way』で掲げ、全ての人々に幸福と安心をもたらし、より安全で持続可能な社会の実現を目指しております。
当社グループのVisionの実現に向けて、グローバルベースで事業を更に発展させていくとともに、事業活動を通じてさまざまな社会課題の解決に貢献するため、多種多様な強みを持ち、能力を発揮できる人材や、情熱を持って自律的に未来を切り開ける、次世代を担う人材の採用・育成を重点テーマに定めております。今後もダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを積極的に推進し、さまざまな人材育成施策を実施してまいります。
また、当社グループは職場の安全と心身の健康を守るとともに、人権を尊重し、差別のない健全な職場環境の確保に取り組んでおります。
■企業理念の浸透・実践
M&Aの推進などにより、現在連結社員数の約70%は日本以外の拠点となっており、企業理念である『The IDEC Way』の共有は、持続的な成長のために必要不可欠な要素となっております。
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具体的な取り組みとして、社内でのポスター掲示、イントラネットや社内報の活用、クレドカードの配布などを行うとともに、『The IDEC Way』に基づく役割定義とグレード定義した人事制度を採用し、人事評価との紐づけを行っております。 理念の更なる浸透と、実践を促すための取り組みとして、2025年3月期にCore Values部門と、4つのテーマ別部門から選出する、社長賞を刷新しました。Core Value部門では、働く上で具体的に意識するべき考え方・行動である、Principlesに沿って行動した模範的な社員を表彰することで、グループ理念の浸透を図っております。 |
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■社員エンゲージメントの向上
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社員エンゲージメントの向上に向けては、定期的にエンゲージメントサーベイを実施しており、抽出された課題への取り組みを推進してきました。 日本では、2020年3月期と2023年3月期に実施し、代表的な指標である「会社の総合的魅力」、「職場の総合的魅力」のスコアがアップし、その他の多くの項目において改善が見られました。一方で、スコアの低かった(1)人材育成、(2)マネジメント力の強化、(3)人事制度に対する納得性の向上、という3つを主要課題と認識し、改善に向けた取り組みを実施してきました。 2026年3月期に日本で3回目なるサーベイと、APEMグループとしてのグローバルサーベイを実施し、各種施策の検証を行う予定であります。2027年3月期からは、APEMグループと合同でグローバルサーベイを実施し、その結果を踏まえて、課題の抽出や各種施策の検討を行ってまいります。なお、エンゲージメントサーベイでは、企業理念に関する設問を設けており、今後グローバルサーベイを通じて、当社の創業当時から大切にしている「人間性尊重経営」をはじめとした、企業理念の更なる浸透、強化を図ってまいります。 |
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グローバルでの理念の浸透や、社員エンゲージメントの向上により、更なる企業基盤強化を推進してまいります。
■グローバル経営を支える人材の確保・育成・適正配置
事業拡大に向けて、「新生IDEC」を支える人材を継続的に獲得・育成し、グローバルで活躍できる環境を整備する必要があります。当社グループでは、以下を備えた人材を採用しており、常に自分の生産性をどう上げていくかを考え、失敗を恐れずチャレンジしていける社員を育成することで、持続的な成長を実現できる企業を目指しております。
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・グローバル視点での思考を持っている人 ・情熱を持って困難なことにもチャレンジし、業務改革をやり切れる人 ・生産性を常に意識し、継続して生産効率の向上のための努力を惜しまない人 |
今後、人材の育成・活躍を支える制度や情報基盤を、グローバルレベルで整備・展開し、国・地域を超えた配置・育成を推進してまいります。
・教育制度
持続的な成長を支えるために不可欠な、人材への投資を強化しており、研修体系を整備しております。特に英語教育について、これまで自己啓発支援としてきたところ、リスキルプログラムとして集中投資する方針を固めました。具体的には、コーチング付き英語学習や海外留学メニューを拡充し、新入社員研修にも異文化理解プログラムを強化しております。管理職登用の英語力基準も引き上げ、グローバルに活躍できる幹部育成にも取り組んでおります。
さらに、海外グループ拠点と連携して、海外トレーニーや海外出向、海外転籍などを今まで以上に拡充し、グループ一体となってグローバルなビジネス経験が積める環境整備に取り組んでおります。2028年3月期までには、グローバルに幹部候補社員を選抜し、次世代幹部研修を展開することで、グローバル経営を支える後継者育成に取り組んでまいります。
・グローバルタレントマネジメント
グローバル人材基盤として、タレントマネジメントシステムの導入準備を行っております。スキルや経験といった人事データをグローバルで管理することで、人材の見える化や組織力の最大化を推進し、人材の発掘、最適配置に取り組んでまいります。日本では、スキルや経験をベースに、人材の育成計画、e-Learning、組織編成、サーベイ管理などもタレントマネジメントシステムに集約した上で、キャリア開発の推進やエンゲージメントの改善にも取り組みます。
■ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン
多様な人材が人間性を尊重し、人種、肌の色、年齢、性別、性的指向、性同一性と性表現、民族又は国籍、障がいの有無などにかかわらず、活躍できる環境の整備や支援体制の充実に取り組んでおります。
・女性活躍の推進
多様な人材がチャレンジできる環境・風土づくりの一環として、女性活躍に向けた取り組みを推進しております。2025年3月期末までに、当社の女性管理職数を15名とする目標を掲げ、女性活躍推進のキーとなる全部門長を対象とした意識改革研修、女性管理職候補を対象とした選抜型教育などの取り組みを推進し、2024年3月期に前倒しで目標を達成しました。
課題である、日本における男女間の賃金差異是正に向けた取り組みも行っており、女性選抜研修を積極的に実施し、より実効性を高めるとともに、女性管理職の採用も強化して女性登用を進めております。
なお、日本以外の拠点では女性管理職比率は過去から比較的高い状況となっております。
・働きやすい職場環境づくり
DXによる業務効率化や、計画的年休・男性の育児休業取得の奨励、裁量労働制・フレックスタイム制の導入など、柔軟な働き方を可能にする働き方改革を推進しております。
日本における男性の育児休業取得率向上に向けては、取得者インタビューのイントラネットへの掲載や、対象者の上司への周知により、2025年3月期の取得率は92.3%となりました。制度の充実も2026年3月期から実施しており、育児休業を取得する社員だけでなく、業務を引き継ぐ周囲の社員も含めた、誰もが安心して働くことができる職場風土とするための新たな取り組みも実施予定であります。
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「拡充する支援制度(当社)」 ・育児休業から早期復職する女性社員への一時金の支給 ・ベビーシッター代、延長保育料の補助 ・育児休業取得者の引継ぎを行う担当者への特別手当の支給(2027年3月期から実施予定) |
・障がい者の就労機会の創出
2022年3月期より企業グループ算定特例を適用し、2025年3月期末の障がい者雇用率は当社で2.5%、国内グループで3.1%となりました。誰もが活躍できる社内環境整備を推進していくための取り組みとして、障がい者雇用の促進を目的とした「事務サポートチーム」を、2025年3月期IDEC本社に新設しました。
・多様な人材の採用
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グローバルで事業拡大を推進するため、国籍にかかわらず多様な人材を採用しており、主要会議における議事録の多言語化を推進するなど、環境整備にも力を入れております。また、事業革新を推進できるDXやAI人材、お客さまの課題に対して最適なソリューションを提案するソリューション営業や新製品開発などを担える高い専門的知識を持った人材など、新しいスキル・多様な視点を経営に取り込むことを目的として、キャリア人材を積極的に採用しております。 今後も、事業強化のために必要となる専門性や知識を有する人材の採用を、積極的に進めてまいります。 |
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③リスク管理
サステナビリティ全般に関するリスクと機会は、マテリアリティ分析において、ステークホルダーの重要度と事業としての重要度の両軸でマッピングしており、「気候変動」と「企業基盤」に関わるリスクについては、当社グループのリスクマップに統合して管理しております。
リスクの重要項目については、リスクマネジメント委員会において評価、管理しており、年に1回経営戦略企画本部でリスクと機会を見直すこととしております。
④指標及び目標
当社グループのマテリアリティとして、価値創造を促進する経営構造の整備、組織風土の醸成及び人材の育成を掲げており、2030年の目指す姿を定義しております。
新中期経営計画に合わせて、人的資本に関する課題への対応とKPIの策定を現在進めております。
(1)リスクマネジメント体制と運用
当社グループにおけるリスクマネジメント体制を構築し、リスクをあらかじめ回避・軽減・移転等するとともに、万一発生した場合にもその被害を最小限に抑制することを目的に、危機管理規程を制定しております。また、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」傘下の専門委員会として「リスクマネジメント委員会」を設置し、グループ全体での平常時のリスクマネジメントとリスク発生時の対応を行う体制としております。
「リスクマネジメント委員会」には委員会内に「リスクモニタリング部会」と「BCP部会」、「人権部会」、「情報セキュリティ部会」を設け、当社グループ全体でのリスクの選定、評価、リスク低減に向けた取り組みのモニタリングや、BCPの策定、人権課題への対応、情報セキュリティ対策の推進を実施しております。また、同委員会内に「Hotline担当」を設け、内部通報窓口の整備や通報事象への対応を行っております。
「リスクマネジメント委員会」はこれらの取り組み内容を年2回開催される「サステナビリティ委員会」にて報告し、「サステナビリティ委員会」から取締役会に報告を行うとともに、通報案件など重要事象については「リスクマネジメント委員会」から直接取締役会に報告することで、経営層へ適切にリスク情報を報告できる体制を整えております。
リスクモニタリング活動
当社グループの持続的な事業の拡大、企業価値向上にマイナスの影響を与える、又はそのおそれがあると想定される事象を「リスク事象」として想定し、定期的なリスクの特定、評価を実施しております。また、環境戦略委員会において重要と評価した気候変動リスクも「リスク事象」として統合し評価しております。そして、その中で発生確率又は影響度が高いと評価された事象を「高リスク事象」とし、管轄する部門ごとに年間でのリスク低減目標を設定し、上期・下期の半年ごとにその進捗を確認しております。
BCP策定
当社グループにとっての高リスク事象の一つである地震等の自然災害に備えるため、リスクマネジメント委員会の中にBCP(事業継続計画)策定を推進するための部会を立ち上げ、生産部門や対象事業所の関係者と連携しながら、災害発生時対応の基本的方針や初動対応フロー、事業継続計画の策定、訓練を推進しております。
災害時に、対策本部の各担当が初動対応としてどのような動きをとるか想定し、また、そのために必要なマニュアルやチェックリストを作成し、平常時から必要な防災対策などの見直しを進めております。併せて、イントラネットを使って社員一人ひとりの防災意識を高めるための情報発信なども行っております。
(2)高リスク事象の特定プロセス
当社グループの持続的な事業の拡大、企業価値向上にマイナスの影響を与える、又はそのおそれがあると想定される事象を「リスク事象」として想定し、各リスク事象について「発生確率」「被害の大きさ」「影響度」を指標とした評価アンケートを実施し、その結果からリスクマップにプロットして相対的に評価しております。
想定するリスク事象とリスクマップ
※気候変動リスクは環境戦略委員会で高リスクと評価された事象を反映しております。
※リスクは短期~中期で評価し、気候変動リスクで長期と評価されたものは短期~中期で再評価して統合しております。
※赤枠内にプロットされるリスクを高リスク事象と判定しております。
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リスク カテゴリ- |
No |
リスク事象 |
2024年度のリスク評価 |
昨年比 |
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外部要因 リスク |
1 |
拠点地域における震度6弱以上相当の地震による事業拠点の被災 |
南海トラフ地震を踏まえ、昨年度同様、引き続き高リスク事象と評価。 |
- |
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1b |
拠点地域における豪雨・洪水・台風・ハリケーン・火災による事業拠点の被災 |
地震以外にも各種自然災害が想定され、1の派生リスクとして追加。 |
新規 |
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2 |
拠点地域内での紛争やテロの発生 |
昨年度同様、引き続き高リスク事象と評価。 |
- |
||
|
2b |
国家間情勢や治安悪化による駐在者、拠点操業への影響 |
昨年度同様、引き続き高リスク事象と評価。 |
- |
||
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3 |
拠点内での感染症クラスターの発生 |
感染症対策や、ウイルスへの認識変化などを踏まえ影響度は引き続き低下。 |
↓ |
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4 |
外部要因(部品廃番、調達困難)による製品仕様変更 |
昨年度同様、引き続き高リスク事象と評価。 |
- |
||
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内部要因 |
事業 戦略 リスク |
5 |
納期長期遅延につながる部材調達難 |
昨年度同様、引き続き高リスクと評価。 |
- |
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6 |
物流網の寸断 |
物流体制を考慮して項目を追加。現時点では低リスクと評価。 |
新規 |
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7 |
特定販売先への過度な依存 |
当社ビジネスモデルを考慮して項目を追加。現時点では低リスクと評価。 |
新規 |
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8 |
生命身体に影響する可能性のある重大な製品事故の発生 |
影響度の大きさより、昨年同様、引き続き高リスク事象と評価。 |
- |
||
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9 |
製品の性能・データ改ざんによる品質偽装 |
昨年度と同程度に評価。 |
- |
||
|
10 |
使用禁止物質が含まれた製品の流通 |
昨年度と同程度に評価。 |
- |
||
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11 |
戦略投資リスク(M&Aや企業提携など戦略的な投資による財務状況への影響) |
昨年度と同程度に評価。 |
- |
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リソース・ インフラ リスク |
12 |
老朽化・トラブルによる主要生産設備の故障・停止 |
生産設備の重要性を考慮して項目を追加。現時点では低リスクと評価。 |
新規 |
|
|
13 |
重症以上の労働災害の発生 |
職場環境を踏まえ、昨年度より発生確率は若干低下すると評価。 |
- |
||
|
14 |
サボタージュ、ストライキによる業務機能停止 |
昨年度と同程度に評価。 |
- |
||
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15 |
職員の大量退職による人材不足 |
人材の流動性を考慮して項目を追加。高リスク事象と評価。 |
新規 |
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16 |
主要役職員(キーパーソン)の退職、後任者不在 |
人材の流動性を考慮して項目を追加。中程度にリスク評価。 |
新規 |
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17 |
システムダウン、ネットワークダウンなどのインフラの半日以上の停止 |
情報セキュリティ対策が一定程度進行したことで、昨年度より発生確率は低下すると評価。 |
↓ |
||
|
17b |
サイバーアタックによるネットワークの長期停止 |
情報セキュリティ対策が一定程度進行したことで、昨年度より発生確率は低下すると評価。 |
↓ |
||
|
コンプライアンス リスク |
18 |
他社の知的財産権侵害による販売差止め、損害賠償請求 |
昨年度と同程度に評価。 |
- |
|
|
19 |
人権課題(児童労働・強制労働など)への不対応 |
昨年度同様、引き続き高リスク事象と評価。 |
- |
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19b |
ハラスメント発生による職場士気の低下 |
昨年度同様、引き続き高リスク事象と評価。 |
- |
||
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20 |
会計、税務の不適切処理による追徴課税 |
昨年度と同程度に評価。 |
- |
||
|
21 |
社員による高額の横領、背任、贈収賄 |
昨年度と同程度に評価。 |
- |
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リスク カテゴリ- |
No |
リスク事象 |
2024年度のリスク評価 |
昨年比 |
|
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内部要因 |
コンプライアンス リスク |
22 |
上位役職者によるインサイダー取引 |
昨年度と同程度に評価。 |
- |
|
23 |
独禁法、下請法違反事象の発生 |
昨年度と同程度に評価。 |
- |
||
|
24 |
自社の重要情報、他社の秘密情報、個人情報の漏洩 |
情報セキュリティ対策が一定程度進行したことで、昨年度より発生確率は若干低下すると評価。 |
↓ |
||
|
25 |
許認可不備による業務差し止め |
昨年度と同程度に評価。 |
- |
||
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会計・財務 リスク |
26 |
売上債権の回収困難、貸倒 |
昨年度と同程度に評価。 |
- |
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27 |
資産の毀損リスク |
昨年度と同程度に評価。 |
- |
||
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気候変動リスク |
移行 リスク |
① |
原材料のコスト増加 |
製造・調達コストへの直接的な影響と部品調達難によりコスト増加が誘引されることから高リスクと評価。 |
- |
|
② |
顧客や投資家の環境志向の高まり |
長期での影響度は大きいと想定するが、短期~中期におけるリスクは昨年度と同程度に評価。 |
- |
||
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③ |
競合他社に対する既存/新製品の低排出/低炭素技術への移行の遅れ |
環境配慮技術への遅れは将来的な事業リスクにつながると評価。 |
- |
||
|
④ |
カーボンプライシングの動向 |
CO2削減への世界的気運の高まり、規制や法令、制度による影響は大きいと評価。 |
- |
||
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物理 リスク |
⑤ |
自然災害と気温上昇 |
気温変動が自然災害など様々なリスクを誘引するが、短期~中期での確率は低いと評価 |
- |
|
(3)事業等のリスク
上記のとおり想定・評価した「高リスク事象」を含め、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与え、事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下で記載しております。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在における当社グループの判断に基づいております。
①外部要因リスク
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項目 |
リスクの内容 |
主な取り組み |
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拠点地域における震度6弱以上相当の地震による事業拠点の被災 (上記表・マップ中のリスクNo.1)
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大阪府と兵庫県に本社・主要事業所を有する当社グループにとって関西地区での巨大地震発生による事業所被災は大きなリスクであると認識しております。被災により一部又は全部の操業が中断した場合、適切なBCPを備えていなければ生産及び出荷が遅延する可能性や、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生する可能性があり、財政状況や事業展開に与える影響が大きいと考えております。 |
リスクマネジメント委員会内にBCP策定を推進するための部会を立ち上げ、災害発生時対応の対策本部体制、基本的方針や初動対応フロー、事業継続計画の策定、訓練を推進しております。災害時に、対策本部の各担当が初動対応としてどのような動きをとるか想定し、主要な拠点ごとに必要なマニュアルやチェックリストを作成しております。また、定期的な安否確認の訓練も実施しております。 |
|
拠点地域内での紛争やテロの発生(上記表・マップ中のリスクNo.2)
国家間情勢や治安悪化による駐在者、拠点操業への影響(上記表・マップ中のリスクNo.2b) |
グローバルに事業を展開する当社グループにおいて、国家間情勢の大幅な変動、拠点地域内での紛争やテロ、またそれに準じるデモや抗争により、社会や市場が混乱した場合には財政状況や事業展開に与える影響が大きいと考えております。 |
適時に情報を収集するとともに、地域分散などによりリスク回避を図っておりますが、リスクにつながる状況が発生した場合には、例えば紛争地域回避による輸送の遅延や輸送費の高騰などの課題テーマごとのタスクフォースを立ち上げ情報収集と対策を進めております。 |
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外部要因(部品廃番、調達困難)による製品仕様変更(上記表・マップ中のリスクNo.4) |
法規制の影響など様々な要因から部材の調達困難が発生した場合、メーカーとして大きな影響を受ける事象と考えております。 |
タスクフォースを組んで部品の調達状況を把握するとともに、部品変更や仕様変更を進め、リスクの軽減に努めております。 |
②内部要因リスク
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項目 |
リスクの内容 |
主な取り組み |
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納期長期遅延につながるような部材調達困難(上記表・マップ中のリスクNo.5) |
部材調達困難により納期の長期化が生じた場合、売上高の減少や在庫の積み上げなど財政状況経営成績に与える影響が大きいと考えております。 |
タスクフォースを組んで部材の調達状況を把握・管理するとともに、全体での納期調整を行うなど、影響を最小化するための取り組みを推進しております。 |
|
生命身体に影響する可能性のある重大製品事故の発生(上記表・マップ中のリスクNo.8) |
人と機械の最適環境を創造し、世界中の人々の安全・安心・ウェルビーイングを実現することをパーパスとして標榜する当社グループにとって、生命身体に影響する可能性のある重大製品事故の発生は財政状況や事業活動はもちろん、レピュテーションにも大きな影響を与える可能性があります。 |
QMS(Quality Management System)での帳票や手順書の整備を実施するとともに、市場クレームの故障情報を監視し、アラート機能や重大クレーム管理リストなどを整備して異常の早期察知と早期対応を推進しております。 |
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職員の大量退職による人材不足(上記表・マップ中のリスクNo.15) |
当社グループの持続的な成長と企業価値向上を実現するためには、企業の活性化や人的資本の強化が必要不可欠と認識しており、人材が過度に流動的である場合には、当社グループに与える影響が大きいと考えております。 |
性別・年齢・国籍・文化・ライフスタイルなどの多様性を尊重した、働きやすい職場環境づくりを行うことで、さまざまな個性や価値観を持つ社員一人ひとりが能力を十分に発揮できる、組織風土の醸成に取り組んでおります。 構造改革の推進等により業務の効率化を図り、グローバルでの組織体系設計、人事異動などによる適正な人員配置に取り組んでおります。 |
|
人権課題(児童労働・強制労働など)への不対応(上記表・マップ中のリスクNo.19)
ハラスメント発生による職場士気の低下(上記表・マップ中のリスクNo.19b) |
グローバルビジネスでの人権課題の認識の高まりから、人権課題への不対応は不買運動やレピュテーションリスクにつながり影響度が大きいと考えております。 |
人権課題に対する社内研修体系を整備し、従業員の意識醸成を図るほか、人権リスクの評価や人権デューデリジェンスの企画・準備などの取り組みを推進しております。 |
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資産の毀損リスク (上記表・マップ中のリスクNo.27) |
棚卸資産について、実際の将来需要又は市場状況が当社グループの見積りより悪化した場合、評価減が必要となる可能性があります。 |
供給計画・生産計画の策定において、急激な需要変動等機動的に反映し、在庫の長期滞留化リスク軽減に努めております。 |
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固定資産の減損に係る会計基準の適用により、時価の下落や当該資産から得られる将来のキャッシュ・フローの状況によっては減損処理が発生する可能性があります。 |
固定資産の稼働状況、キャッシュ・フローの創出状況等を定期的にモニタリングし、効率的運用を実施しております。 |
|
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APEM社を連結子会社化したことに伴い、のれん及び無形資産である商標権と顧客関連資産を計上しており、景気変動等の影響により収益性が低下した場合、シナジー効果が発揮されず、減損損失が発生する可能性があります。 |
月次・四半期単位等定期的に業績動向・経営状態を確認するとともに、超過収益力の向上を目的としたシナジー効果の最大化に向けた取り組みを強化しております。 |
経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の増加などを背景に、景気は緩やかな回復基調で推移いたしました。一方で、資源価格高騰や円安などによる原材料価格の高騰や、物価上昇の継続、中国における不動産市場の停滞に伴う影響、米国における関税政策の影響による下振れリスクなどの要因もあり、依然として先行きが不透明な状況が続いております。
当社グループにおいては、2026年3月期から改めて取り組んでいく新中期経営計画において、新生IDECとして「顧客中心のビジネス構造への転換」、「グローバルベースでの市場変化への対応力向上」を掲げており、グループ一丸となって持続的な成長を実現するための構造改革を推進してまいります。
このような状況におきまして、当社グループの国内売上高は、市場の過剰在庫は概ね解消されたものの、昨年度から継続している流通在庫調整の影響などにより、前年同期に比べ、26億1千3百万円減収の242億9千4百万円(前年同期比9.7%減)となり、海外売上高は、円安の影響により増加した地域があったものの、国内売上高と同様、市場の過剰在庫は概ね解消されたものの、昨年度から継続している流通在庫調整の影響などにより売上が減少した結果、前年同期に比べ、27億1千8百万円減収の430億8千5百万円(前年同期比5.9%減)となりました。その結果、当連結会計年度の連結売上高は673億8千万円(前年同期比7.3%減)となりました。
利益面においては、減収の影響による利益減により前年同期に比べ、営業利益は26億2千3百万円減益の36億5千2百万円(前年同期比41.8%減)、経常利益は34億4千3百万円減益の34億7千7百万円(前年同期比49.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は26億2千8百万円減益の17億7千8百万円(前年同期比59.6%減)となりました。
以上による当連結会計年度における業績結果は以下のとおりであります。
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2024年3月期 |
2025年3月期 |
比較増減 |
増減率 |
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売上高(百万円) |
72,711 |
67,380 |
△5,331 |
△7.3% |
|
売上総利益(百万円) |
31,019 |
29,437 |
△1,582 |
△5.1% |
|
売上総利益率(%) |
42.7 |
43.7 |
+1.0 |
- |
|
営業利益(百万円) |
6,276 |
3,652 |
△2,623 |
△41.8% |
|
営業利益率(%) |
8.6 |
5.4 |
△3.2 |
- |
|
経常利益(百万円) |
6,920 |
3,477 |
△3,443 |
△49.8% |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益(百万円) |
4,407 |
1,778 |
△2,628 |
△59.6% |
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(為替レート) |
|
|
|
|
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米ドル平均レート(円) |
144.59 |
152.62 |
+8.03 |
- |
|
ユーロ平均レート(円) |
156.74 |
163.87 |
+7.13 |
- |
|
人民元平均レート(円) |
20.13 |
21.11 |
+0.98 |
- |
セグメントごとの経営成績に関しては、次のとおりであります。
①日本
日本においては、ロボット・工作機械などの主要産業での足踏み感や流通在庫調整局面の影響もあり、売上高は前年同期に比べ、44億5千8百万円減収の268億4千6百万円(前年同期比14.2%減)となり、営業利益は前年同期に比べ、11億2千8百万円減益の11億8千3百万円(前年同期比48.8%減)となりました。
②米州
北米地域においては、概ね流通在庫が一定の水準に落ち着き受注も回復傾向にあったものの一部の代理店での過剰在庫が原因となり、売上高は現地通貨ベースで前年同期に対し減少となりました。しかし、ドル高円安に伴い円換算での売上高は前年同期に比べ、2億8千2百万円増収の141億5千2百万円(前年同期比2.0%増)となり、営業利益は前年同期に比べ、4億5千6百万円減益の11億3千8百万円(前年同期比28.6%減)となりました。
③EMEA
欧州市場では、景気低迷や地政学リスクの影響などにより主要産業の需要が落ち込み、売上高は現地通貨ベースで前年同期に対し減少し、9億7千5百万円減収の148億9千5百万円(前年同期比6.1%減)となり、営業損失5億5千9百万円(前年同期は営業利益4億4千8百万円)となりました。
④アジア・パシフィック
アジア・パシフィック地域においては、中国経済や東南アジア地域における景気減速の影響などにより、売上高は前年同期に比べ、1億7千9百万円減収の114億8千5百万円(前年同期比1.5%減)となり、営業利益は前年同期に比べ、6億3千3百万円減益の10億9千5百万円(前年同期比36.6%減)となりました。
また、製品種類別の売上高については、次のとおりであります。
①HMI事業
主力製品であるスイッチ及びプログラマブル表示器において、市場在庫は概ね適正水準まで戻ったものの、上期における流通在庫調整が影響し、21億5百万円減収の318億4千2百万円(前年同期比6.2%減)となりました。
※HMI(Human Machine Interface:人と機械が触れ合う環境)の核となる、「制御用操作スイッチ」や「ジョイスティック」、「表示灯」、「プログラマブル表示器」などの製品群であります。
②インダストリアルコンポーネンツ事業
主力市場であるアジア・パシフィックにおいて、特に中国市場を中心とした景気減速の影響と流通在庫調整が継続し制御用リレーの売上が減少した結果、売上高は前年同期に比べ、3億3千5百万円減収の112億9千4百万円(前年同期比2.9%減)となりました。
※機械や生産ラインなどを制御・操作するための制御盤の中に組み込み、機械・装置の制御部分の基礎として使用される、「スイッチング電源」や「端子台」、「制御用リレー/ソケット」、「サーキットプロテクタ」などの製品群であります。
③オートメーション&センシング事業
主力製品であるプログラマブルコントローラの受注残が解消されましたが、日本、米州における新規注文が減少した結果、売上高は前年同期に比べ、11億9千9百万円減収の87億5百万円(前年同期比12.1%減)となりました。
※産業現場や暮らしの様々なシーンにおける機器の自動化に貢献する各種製品、機械・装置の頭脳の役割をする「プログラマブルコントローラ」や、リテールや物流分野などさまざまな分野で活用されている「自動認識機器」などの製品群であります。
④安全・防爆事業
日本、アジア・パシフィックを中心とした、流通在庫調整及び工作機械・ロボットなどの主要産業の需要減少が影響し、安全関連機器の売上が減少した結果、売上高は前年同期に比べ、6億1百万円減収の110億4千5百万円(前年同期比5.2%減)となりました。
※産業現場の安全を守る「非常停止用押ボタンスイッチ」や「安全スイッチ」、「イネーブル装置」といった「安全関連機器」に加え、石油・化学プラントなど、爆発性のガスが存在する現場での事故を未然に防ぐ「防爆関連機器」などの製品群であります。
⑤システム
アジア・パシフィックにおいて、半導体製造設備・物流関連設備等の制御盤の売上が減少したことにより、売上高は前年同期に比べ、4億9千万円減収の34億7千9百万円(前年同期比12.3%減)となりました。
※顧客ニーズに合わせて当社の製品をシステム化して提供する「各種システム」、安全関連機器・安全技術を組み合わせて最適なシステムを構築する「協働ロボットシステムソリューション」などの製品群であります。
⑥その他
日本におけるその他システム関連製品の需要が減少した結果、売上高は前年同期に比べ、5億9千9百万円減収の10億1千3百万円(前年同期比37.2%減)となりました。
※メガソーラーや太陽光発電用電力マネジメントシステムをはじめとする「再生可能エネルギー事業」などの事業や製品群であります。
(2)キャッシュ・フローの状況
|
|
前連結会計年度(百万円) |
当連結会計年度(百万円) |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
5,504 |
11,248 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△1,922 |
△4,097 |
|
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△4,462 |
△2,905 |
|
現金及び現金同等物に係る換算差額 |
790 |
△91 |
|
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) |
△90 |
4,154 |
|
現金及び現金同等物の期首残高 |
15,070 |
15,040 |
|
現金及び現金同等物の期末残高 |
15,040 |
19,194 |
営業活動によるキャッシュ・フローは、112億4千8百万円の収入(前年同期は55億4百万円の収入)となりました。これは主に、子会社株式売却益を12億円計上した一方で、減価償却費を40億9千1百万円、税金等調整前当期純利益を34億1千万円、事業構造改革費用を26億2千8百万円計上、売上債権及び契約資産が24億8千6百万円減少したことなどによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、40億9千7百万円の支出(前年同期は19億2千2百万円の支出)となりました。これは主に、定期預金の払戻等により25億9千6百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却により21億4千7百
万円の収入があった一方で、固定資産の取得により104億3千2百万円を支出したことなどによるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、29億5百万円の支出(前年同期は44億6千2百万円の支出)となりました。これは主に、借入等により14億3千8百万円の収入があった一方で、配当金の支払いにより38億2千1百万円を支出したことなどによるものであります。
(3)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
日本 |
27,124 |
79.6 |
|
米州 |
2,523 |
98.1 |
|
EMEA |
15,085 |
93.0 |
|
アジア・パシフィック |
9,560 |
77.6 |
|
合計 |
54,293 |
83.3 |
(注)金額は、販売価格によっております。
②受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高 |
受注残高 |
||
|
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
|
日本 |
27,635 |
115.5 |
5,271 |
85.9 |
|
米州 |
13,910 |
117.2 |
2,611 |
91.5 |
|
EMEA |
14,425 |
101.1 |
7,522 |
94.1 |
|
アジア・パシフィック |
12,849 |
121.6 |
4,353 |
145.7 |
|
合計 |
68,821 |
113.5 |
19,758 |
98.9 |
(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
日本 |
26,846 |
85.8 |
|
米州 |
14,152 |
102.0 |
|
EMEA |
14,895 |
93.9 |
|
アジア・パシフィック |
11,485 |
98.5 |
|
合計 |
67,380 |
92.7 |
(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に際し、見積りによる収益・費用の計上を行っております。経営陣は、過去の実績や状況に応じ、合理的と考えられる方法により見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、不確実性を含んでおり、見積りによる数値とは異なる場合があります。
特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
①棚卸資産
当社グループは、連結会計年度末時点において簿価と市場価格の状況を検討し市場価格が下回る場合は評価損を計上しております。実際の市場価格が当社グループの見積りより変動した場合、計上した評価損の過不足が生じる可能性があります。
また、従来より、一定期間を超えて在庫として滞留する棚卸資産についても簿価を切り下げており、在庫実態に変化が生じた場合には、同様に棚卸資産の簿価を切り下げることとなります。
②貸倒引当金
当社グループは、債権の回収不能時に発生する損失の見積額について貸倒引当金を計上しておりますが、債権先の財政状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要になる場合があります。
③繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について回収可能性が高いと考えられる金額へ減額するために、評価性引当額を計上しておりますが、繰延税金資産の全部又は一部を将来回収できないと判断した場合、当該判断を行った期に法人税等調整額として計上いたします。
④退職給付費用
従業員退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づき算出しております。実際の結果が前提条件と異なる場合及び今後この前提条件が変化した場合には、変化した年度以降の退職給付費用が大きく増減する場合があります。
⑤固定資産の減損損失
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準における資産のグルーピング方法として、工場その他の事業用施設等については、継続して収支を把握している単位かつ独立したキャッシュ・フローを生み出す単位で、遊休資産については、当該資産単独で区分する方法を採用しており、将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、又は遊休状態で今後も使用する見込みがない場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。
⑥のれん及び商標権・顧客関連資産
当社グループは、のれん及び商標権・顧客関連資産に関してその効果の発現する期間を見積り、その期間で均等償却しております。その資産性の評価について検討し、将来において当初想定した収益が見込めなくなった場合に、簿価の切り下げを行う可能性があります。
(2)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
①売上高
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の増加などを背景に、景気は緩やかな回復基調で推移いたしました。一方で、資源価格高騰や円安などによる原材料価格の高騰や、物価上昇の継続、中国における不動産市場の停滞に伴う影響、米国における関税政策の影響による下振れリスクなどの要因もあり、依然として先行きが不透明な状況が続いております。
当社グループにおいては、2026年3月期から改めて取り組んでいく新中期経営計画において、新生IDECとして「顧客中心のビジネス構造への転換」、「グローバルベースでの市場変化への対応力向上」を掲げており、グループ一丸となって持続的な成長を実現するための構造改革を推進してまいります。
このような状況におきまして、当社グループの国内売上高は、市場の過剰在庫は概ね解消されたものの、昨年度から継続している流通在庫調整の影響などにより、前年同期に比べ、26億1千3百万円減収の242億9千4百万円(前年同期比9.7%減)となり、海外売上高は、円安の影響により増加した地域があったものの、国内売上高と同様、市場の過剰在庫は概ね解消されたものの、昨年度から継続している流通在庫調整の影響などにより売上が減少した結果、前年同期に比べ、27億1千8百万円減収の430億8千5百万円(前年同期比5.9%減)となりました。その結果、当連結会計年度の連結売上高は673億8千万円(前年同期比7.3%減)となりました。
なお、当連結会計年度における対米ドルの平均レートは、152.62円(前年同期は144.59円で8.03円の円安)、対ユーロの平均レートは、163.87円(前年同期は156.74円で7.13円の円安)、対人民元の平均レートは、21.11円(前年同期は20.13円で0.98円の円安)となりました。
②損益状況
売上原価は前年同期に比べ、37億4千8百万円減少し、379億4千3百万円(前年同期比9.0%減)となりました。販売費及び一般管理費は10億4千万円増加し、257億8千4百万円(前年同期比4.2%増)となりました。
利益面においては、営業利益は前年同期に比べ、販売費及び一般管理費の増加や減収の影響による利益減により、26億2千3百万円減益の36億5千2百万円(前年同期比41.8%減)、経常利益は前年同期に比べ、為替差益が減少したことなどにより、34億4千3百万円減益の34億7千7百万円(前年同期比49.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期に比べ、26億2千8百万円減益の17億7千8百万円(前年同期比59.6%減)となりました。
(3)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析
①財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産の額は、前連結会計年度末より7千8百万円増加し、1,072億1千6百万円となりました。これは主に、棚卸資産が29億7千1百万円、売上債権が26億4千4百万円減少した一方で、北米事業の強化に向け米国拠点を統合し、新社屋設置のための建物や土地の取得などにより有形固定資産が44億5千万円増加したことや、現金及び預金が15億7千9百万円増加したことなどによるものであります。
負債の額は、前連結会計年度末より22億7千4百万円増加し、434億6百万円となりました。これは主に、借入金が12億8千4百万円、未払費用が9億5千万円増加したことなどによるものであります。
純資産の額は、利益剰余金が20億5千万円減少したことなどにより、前連結会計年度末より21億9千6百万円減少し、638億1千万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末より41億5千4百万円増加し、191億9千4百万円となりました。
なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、112億4千8百万円の収入(前年同期は55億4百万円の収入)となりました。これは主に、子会社株式売却益を12億円計上した一方で、減価償却費を40億9千1百万円、税金等調整前当期純利益を34億1千万円、事業構造改革費用を26億2千8百万円計上、売上債権及び契約資産が24億8千6百万円減少したことなどによるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、40億9千7百万円の支出(前年同期は19億2千2百万円の支出)となりました。これは主に、定期預金の払戻等により25億9千6百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却により21億4千7百万円の収入があった一方で、固定資産の取得により104億3千2百万円を支出したことなどによるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、29億5百万円の支出(前年同期は44億6千2百万円の支出)となりました。これは主に、借入等により14億3千8百万円の収入があった一方で、配当金の支払いにより38億2千1百万円を支出したことなどによるものであります。
(5)戦略的現状と見通し及び今後の方針
2026年3月期は、売上高は687億円(前年同期比2.0%増)、営業利益47億5千万円(前年同期比30.0%増)、営業利益率6.9%の達成を目指しております。
事業環境は大きく変化しており、自動化や生産性向上の必要性の高まりとともに、働く人々の安全とウェルビーイング意識も向上しております。新中期経営計画の達成に向けて、そのような課題に対して当社が培ってきた強みを活かした以下のような事業展開を行ってまいります。
・「自動化・省力化」人口動態変化に適用するための労働力低下への対応
・「新技術の導入」ロボット導入や新技術の進化による常に変化する環境への迅速な対応
・「AI技術の習得・活用」人間の能力を高め、効率性を高めるAIの新たな可能性
・「協調安全の推進」人と機械が共存する柔軟な環境の提供
今後より注力していく業界としては、イノベーション牽引の観点から自動車業界や、成長性の観点からAMRやロボットなどの業界に加え、HMI環境の変化が加速している搬送・建設機械業界などに注力し、装置への搭載だけでなく、エンドユーザーやシステムインテグレータと一緒に取り組むことで、各業界で積極的にソリューションを提案し、競争力を強化してまいります。
(連結子会社間の吸収合併)
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」(重要な後発事象)に記載しております。
当社グループにおける研究開発は、主として当社とAPEMグループで行っており、各連結子会社は当社及びAPEMグループで開発されたものを製造並びに販売することを主としております。したがって、当社グループにおける研究開発活動は、主として日本とEMEA並びに米州で行っております。
当社では、時代のニーズに対応した最適な製品・ソリューションを提供するために、"Pioneer the new norm for a safer and sustainable World.(いつも、ずっと、みんなに新しい安心を)"をVisionとして掲げ、機械の操作スイッチをはじめとする制御機器開発で培ってきたコア技術を活用してきました。また新たなコンセプトとして、HMI-X[Human-Machine Interface Transformation]を掲げております。これはHMIの考え方を更に進化させた新コンセプトであり、人と機械、機械と機械などが、IoTの進展などにより相互にネットワークでつながることで、人と機械が共存する環境の実現となります。そして工場などの製造現場やくらしの身近な場面において、人と機械が向き合う接点をより安全に、そして快適にするといった安全・安心・ウェルビーイングの実現と追求を目指した、技術並びに製品の開発を推進しております。
なお、当連結会計年度の研究開発費は
主な研究開発活動の成果を示すと次のとおりであります。
主力製品であるHMI事業では、2022年に当社が提唱した「HMI-X」を具現化した製品「FT1J形プログラマブル表示器一体型コントローラ」を開発しました。この製品は小型装置への組み込みに最適な4.3インチのディスプレイを搭載、プログラマブル表示器とPLCを一体化した製品で、それぞれを個別に取り付ける場合と比較して、1/2といった大幅な省スペースを実現しており、加えてUSB・スピーカと接続して音で製造現場の作業者へ情報を伝達することや、USB・Wi-Fiドングルと接続して無線通信を用いた自由度の高い機械配置など、人と機械の関係に最適なインターフェースを提供しております。当製品は、狭額ベゼル、省配線、デュアルCPUによる高速な制御処理、PID制御、水滴による誤動作防止と手袋操作対応、遠隔監視やデータ蓄積、耐環境性能、バッテリレスといった特徴を持ち、「小型の装置メーカ」、「食品・包装機械」、「ファン・ポンプを用いた機械」、「化学機械・成形機」、「工作・金属加工機械」といった市場に適した製品となります。また同時に、コントローラ機能を取り除いた「HG1J形プログラマブル表示器」も開発し、小型表示器製品の利益率改善と、開発プラットフォーム統一による開発効率の改善を実現しております。
またISO13850規格に対応した照光式非常停止用押ボタンスイッチ(ボタン色:白、点灯色:赤)を搭載する「HT3P/HT4P形セーフティコマンダ白ハンドル照光E-STOP」を追加開発しました。ロボットティーチング用に使用されることが多いHT3P/HT4P形セーフティコマンダに、白ハンドル照光E-STOP を搭載することで、お客さまの作業環境における安全性と利便性の向上と、競合製品との差別化を図ることができ、今後も急速に発展するロボット、AGV、AMR業界を中心に活用して頂くことが可能であります。
安全・防爆事業(安全事業)では、中国市場向けに「HR8Sシリーズ安全リレーモジュール」を開発しました。当製品はロボット業界、半導体業界、射出成型機、半導体製造装置(ソーラー関連)市場等に求められている低価格、かつ差別化可能な豊富な機能・技術を有しております。1台で非常停止、安全スイッチ、非接触スイッチ及びマットスイッチ等の安全機器を入力可能なマルチファンクション機能、故障診断表示機能、電子的に汎用リレーの接点を故障検出する独自技術(※特許取得済)、NFC仕様をラインアップに追加により専用携帯アプリによる安全機器を自由に設定、当社既存品より20%省スペースといった特徴を持っております。機能安全認証(TUV SAAR)を取得したことにより、安全製品に対する市場需要の拡大、また産業安全意識の向上と海外出荷率の上昇している中国国内エンドユーザーが最終製品に本製品を組込み、海外へ輸出するニーズにも対応可能としております。
また24種類の機能安全認証済みのロジックを搭載した「FS1B形セーフティコントローラ」を開発しました。この製品は、プログラム不要、容易なロジック選択機能、省スペース化(幅25%サイズダウン)、省配線を実現しており、さらにロジック選定を簡易にするためWeb版オフラインロジックシミュレータ、認証済み搭載ロジックによるユーザーの検証工数削減、複数台のリレーモジュールで構築する安全回路を当製品1台に集約、入力ファンクションの変更をFS1Bに接続された入力機器の状態から自動認識可能といった特徴を持っております。出力点数が20点を超えない小規模なレベルのI/O構成を持つ「工作・射出成形機械」、「半導体製造装置」、「食品・包装機械」業界などへの販売を見込んでおります。
安全・防爆事業(防爆事業)では、「EB3P形本質安全防爆構造表示灯/照光押ボタンスイッチ/照光セレクタスイッチ/ブザー」に「ø16 LBシリーズ」をバリエーション追加しました。EB3Pシリーズは本質安全防爆構造を採用しているため、顧客側で任意のコントロールボックスを選定することができ、海外市場においても防爆認証が不要な単純機器として使用可能であります。今回の追加により、日本国内では初めてø16表示灯、照光押ボタンスイッチ、照光セレクタスイッチが防爆エリアで使用できるようになり、従来の機種と合わせるとø16、ø22、ø30の幅広いユニットサイズよりお客さまの多様な用途に合わせた対応が可能となります。
また、アンプ内蔵小型光電センサSA2E形のサイズと性能をそのままに防爆化し、本質安全防爆構造EB3S形センサバリアと接続して使用する「SA2E-EX形本質安全防爆構造アンプ内蔵小形光電センサ」を開発しました。本製品は、他社防爆光電センサの体積比約1/5のサイズという小形化を実現しており、充填機など取付けスペースが限られる装置や、搬送、塗装業界の要望に対応しております。高い耐環境性能(使用周囲温度-30℃~+55℃まで対応しており、低温防爆倉庫でも使用可能)、接地工事不要、エアパージユニットで粉塵が多い環境でも安定検出、といった特徴を備えております。また、日本をはじめIECEx、ATEX、北米FM、中国Ex-CCC、台湾TSの防爆認証を取得しており、グローバルでの販売が可能であります。
オートメーション&センシング事業では、工場の生産ライン、ビル管理システム、発電所及びプラントでの使用に適した、リモートI/Oシステム対応「SX8Rバスカプラモジュール」を開発しました。当製品は、当社のFC6A形プログラマブルコントローラのI/Oモジュールと組み合わせることで、リモートI/Oシステム構築を可能としております。I/Oモジュールは省設置スペース、各社PLCや制御ボードのスレーブI/Oとして接続、異なるネットワークに同時接続、広い温度範囲(-25~+65℃)、PLC規格準拠(IEC/EN61131-2)、UL規格対応といった特徴をもっており、当製品をリモートI/Oボックスとして使用、制御ボードやPLCが設置された制御盤との接続、離れた場所にある各種入出力機器との配線工数を削減、配線ミスの軽減、LANケーブルによるノイズ耐性強化などの効果を得ることができます。
APEMグループでは、当連結会計年度において、製品品質向上や納期遵守率改善等に注力し、製品品質向上に関しては、7件の新製品に係るプロジェクトや9件の顧客とのプロジェクトを実施いたしました。また、継続的な技術開発活動の結果、2件の特許を登録し、また、コスト削減の更なる推進にも取り組みました。
当社との協業につきましても、最初の共同開発製品である次世代のQシリーズ表示灯に加えて、新製品の開発と製品化への活動も推進しております。
当社グループにおけるグローバル開発体制の構築に向けて、APEMグループにおいても、製品開発プロセスの統一、製品ライフサイクルの管理等に取り組んでまいります。